画像処理装置用の搬送装置
【課題】 画像検査装置による検査工程へ搬送対象物(キャップ)を搬送する際にその向きを揃える。
【解決手段】 第1ベルトの上に第3ベルトが重ねられている。第1ベルト及び第3ベルトと第2ベルトは対向し、これらでキャップを挟んで搬送する。第1ベルトの速度<第2ベルトの速度<第3ベルトの速度という関係が有るので、符号100乃至102ではキャップは右回転し、符号103から104にかけてキャップは左回転する。第1ベルトは、キャップに設けられた突起に接触する位置に設けられているので、その位置(符号104)になると第1ベルトにより回転に規制がかけられ、キャップの向きが一定となる。このように、キャップの向きがばらばらであっても、ベルトで挟んで搬送する際にキャップの向きを揃えることができる。
【解決手段】 第1ベルトの上に第3ベルトが重ねられている。第1ベルト及び第3ベルトと第2ベルトは対向し、これらでキャップを挟んで搬送する。第1ベルトの速度<第2ベルトの速度<第3ベルトの速度という関係が有るので、符号100乃至102ではキャップは右回転し、符号103から104にかけてキャップは左回転する。第1ベルトは、キャップに設けられた突起に接触する位置に設けられているので、その位置(符号104)になると第1ベルトにより回転に規制がかけられ、キャップの向きが一定となる。このように、キャップの向きがばらばらであっても、ベルトで挟んで搬送する際にキャップの向きを揃えることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像処理装置用の搬送装置に関し、特に円筒形のキャップなどの搬送対象物(検査対象物)の回転位置を揃えることができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2004−167553号公報「キャリアを有するフープ状製品の連続画像検査用送り駆動装置」 特許文献1は、測定の信頼を高め、判定誤差によるラインの停止頻度を低減し、安定したフープ(hoop:「輪」「たが」の意)状製品の連続画像検査用送り駆動装置を開示する。
【0003】
すなわち、キャリアを有するフープ状製品を左右各一対のローラ同士又は該一対のローラに形成した鍔同士で圧接状態で該製品のキャリア部を起立状に挟んだ状態で立て送り搬送し、前記ローラを回転自在に支承する片持ちピンのそれぞれは揺動フレームに対し垂直にそれぞれ植設し、該揺動フレームは固定支持部材に対し回動可能に枢着し、該揺動フレーム及び前記ローラの回動角は前記フープ状製品が起立状態で前記製品を検査する搬送方向時及び該搬送方向から再検査するための逆搬送方向に搬送される時にキャリア部が挟持する前記ローラ又は鍔から離脱しないような所定の角度だけ進行方向に振るような角度に設定したことを特徴とするキャリアを有するフープ状製品の連続画像検査用送り駆動装置を開示する。
【0004】
特許文献1の発明によれば、キャリアを有するフープ状製品が起立状態で製品を検査する搬送方向時及び該搬送方向から再検査するための逆搬送方向に搬送される時にキャリア部が挟持するローラ又は鍔から離脱しないような所定の角度だけ進行方向に振るような角度に設定することで、フープ状製品を送り戻し再検査することにより測定の判定誤りを少なくし測定の信頼性を高めることができる。また、判定誤差によるラインの停止頻度を低減し、連続画像検査用送り駆動装置として安定した装置が簡単に得られる。さらに、左から右方向又は右から左方向へのフープ状製品の送り時に搬送ローラ又はローラに形成した鍔同士で挟まれたフープ状製品は送り方向にローラが傾斜することとなるために、フープ状製品が搬送中に離脱することがなく安定して送ることができ、送り線位置変化などの現象が発生することも解消される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像検査装置は、フープ状以外にもさまざまな形状の製品(物体)の検査に使用される。例えば、円筒形でその一部に突起が設けられたキャップの検査にも使用されている。当該キャップは、典型的には、食酢や醤油などのビンの蓋として使用される開閉可能なヒンジ(蝶番)付キャップである。
【0006】
画像処理装置を用いてキャップの外周(側面・外上面・内下部側面・内下部底面)を検査する場合において、その検査精度を向上させるために、キャップの回転方向の位置を揃えることが求められる。例えば、次々と運ばれてくる多数のキャップそれぞれについて、そのヒンジの部分が一定の方向に向くように整列させる必要がある。キャップに設けられたヒンジなどの突起の位置が定まらないと、画像検査を行う際に当該突起による影が生じ、この影を欠点(異物或いは変形等)として誤った画像処理を行うことになる。
【0007】
上記理由から、前工程から画像検査装置による検査工程へ多数の搬送対象物(キャップ)が供給されるときに、その回転方向が無作為(全くバラバラ)であったとしても、画像検査の際、すなわちカメラによる撮影の際にはその回転方向を効率的に揃えることが求められている。画像検査を効率的に行う為にその回転方向を揃えるための位置規制を高速で行うことが求められている。
【0008】
このような観点から、前工程から画像検査装置による検査工程へ搬送対象物(キャップ)を搬送する際において、併せて搬送対象物の整列を行うことが好ましい。画像検査工程の直前に搬送対象物を回転させて整列させる工程を新たに設けることは、工程の増加を意味し、検査速度の高速化、経済性などの点で好ましくない。しかし、搬送の際に搬送対象物の整列を行うことのできる画像処理装置用の搬送装置は知られていなかった。
【0009】
本発明は、前工程から画像検査装置による検査工程へ、円筒形(回転体)であってその表面に突起が設けられている搬送対象物を搬送する際に前記搬送対象物の向きを揃えることのできる画像処理装置用の搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、互いに対向して設けられた第1ベルト及び第2ベルトを備え、表面にひとつ又は複数の突起が設けられている略回転体形状の搬送対象物を前記第1ベルトと前記第2ベルトで挟んで搬送するとともに、搬送する際に前記搬送対象物の向きを揃える搬送装置であって、
前記第1ベルトは、前記搬送対象物の前記突起のいずれかに接触する位置に設けられ、
前記第2ベルトは、前記搬送対象物の前記突起のいずれにも接触しない位置に設けられ、
前記第1ベルトの速度と前記第2ベルトの速度が異なり、これにより前記搬送対象物は搬送中に回転され、前記搬送対象物の前記突起のいずれかが前記第1ベルトに接触することで前記搬送対象物は回転規制を受けることを特徴とするものである。
【0011】
前記第1ベルトは、その内側に、前記第1ベルトを支持する複数のベルトガイドプーリーと、前記ベルトガイドプーリーが取り付けられるベルトサポートブロックとを備え、
前記第2ベルトは、その内側に、前記第2ベルトを支持する複数のベルトガイドプーリーと、前記ベルトガイドプーリーが取り付けられるベルトサポートブロックとを備え、
前記第1ベルトのベルトガイドプーリーと前記第2ベルトのベルトガイドプーリーはそれぞれ正対せず、予め定められたずれ量Wだけずれて向き合うように配置されたものである。
【0012】
前記第1ベルトに重ねられ、かつ、前記第2ベルトに対向して設けられた第3ベルトをさらに備え、前記第3ベルトは前記第1ベルトよりも短く、その始点は前記第1ベルトの途中に位置し、前記第3ベルトの速度は、前記第1ベルトの速度と前記第2ベルトの速度のいずれよりも大きく、前記搬送対象物は、前記第2ベルト及び前記第3ベルトに挟まれて回転されるものである。
【0013】
前記第1ベルト乃至前記第3ベルトは、例えば、断面略V字状の骨部がその内側に設けられている。
【0014】
前記第2ベルトは、その内側に、前記第2ベルトを支持する複数のベルトガイドプーリーと、前記ベルトガイドプーリーが取り付けられるベルトサポートブロックとを備え、
前記第3ベルトは、その内側に、前記第3ベルトを支持する複数のベルトガイドプーリーと、前記ベルトガイドプーリーが取り付けられる可動式のベルトサポートブロックと、前記ベルトサポートブロックを保持するひとつ又は複数のベルトサポートブロックガイドと、前記ベルトサポートブロックガイドに取り付けられたベルトサポートブロック押さえバネとを備え、前記ベルトサポートブロック押さえバネにより前記ベルトサポートブロックに圧力を加えることで前記ベルトガイドプーリーを前記第3ベルトの内側に密着させ圧力を加えるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
発明の実施の形態1.
発明の実施の形態1に係る装置について図面を参照して説明を加える。
図1は、発明の実施の形態1に係る画像処理装置用の搬送装置の概略平面図である。
図2は、発明の実施の形態1に係る画像処理装置用の搬送装置の概略断面図である。図2は、図1のA−A線矢視断面図である。
【0016】
図1及び図2において、符号1はベルトA(又は第1ベルト)、符号2はベルトB(又は第2ベルト)、符号3はベルトC(又は第3ベルト)、符号4はベルトD(第4ベルト)を示す(なお、以下の記載において、ベルトA(第1ベルト)乃至ベルトD(第4ベルト)を単にベルト1乃至4と記す)。なお、ベルト(belt)とは、2個の車輪(プーリー)にかけ渡して、他方に動力を伝える平帯状の物であり、その上に品物を載せて運ぶ装置(ベルトコンベヤー)としても用いられるものである。
【0017】
各ベルト1乃至4は両端に設けられたプーリー11、21、31、41により適度な張力が与えられるとともに、当該プーリーの回転(図1に示された白抜き矢印がその回転方向を示す)により駆動され、予め定められた方向(図中の矢印の方向)に移動する。図1の右側から搬送対象物(キャップ)が供給され、同図の左側へ送り出される。その際には、以下に説明するように、各ベルトの作用により搬送対象物(キャップ)の向きが整列されるようになる。すなわち、図1に示した装置は、同図右側の前工程から同図左側の画像検査装置による検査工程へ、円筒形(回転体)に突起が設けられている搬送対象物(キャップ:検査対象物)を搬送するとともに、その際にその向きを揃えることのできる装置である。
【0018】
図2からわかるように、ベルト4は、最も下側に設けられ、この上に搬送対象物が載置されて、図1の矢印の方向へ移動するようになっている。ベルト1及びベルト3とベルト2は対向して配置され、これらの間を搬送対象物が移動するようになっている。言い換えれば、搬送対象物は、ベルト1及びベルト3とベルト2に挟まれた状態で、ベルト4の作用と相俟って、図1の矢印の方向へ移動するように構成されている。ベルト1は、ベルト3の上側に設けられている。
【0019】
ベルト1は、ベルト3よりも少し引っ込むように配置されている。すなわち、ベルト2からベルト3までの距離(間隔)よりも、ベルト2からベルト1までの距離(間隔)のほうが若干大きい。
【0020】
図1からわかるように、ベルト1乃至ベルト3の長さは同じではない。すなわち、ベルト1が最も長く、ベルト3が最も短い。ベルト2はこれらの中間である。ベルト1とベルト2の始点(図1における右側の端)はほぼ同じであるが、ベルト1の終点(同左側の端)は、ベルト2の終点よりもはるかに後(図1における左側)の、ベルト4の終点付近に位置している。ベルト3の始点はベルト1の途中に位置し、その終点はベルト2の終点のやや後(ベルト1の終点のずっと前)に位置している。
【0021】
なお、図面では表示を省略しているが、本装置は、プーリー11,21,31、41を駆動するモーターを備えている。
【0022】
ベルト1乃至4の移動方向は前述したとおりであり、すべてのベルトは搬送対象物を一定の方向へ(図1で言えば右から左へ)搬送するように、図示しないモーターで駆動されている。ベルト1乃至4の動作速度をそれぞれf1乃至f4とすると、f3>f2>f1=f4という関係が有る。すなわち、ベルト3が最も速く、ベルト1及び4は最も遅い。ベルト2はその中間である。このような速度差は、搬送対象物を搬送する際に搬送対象物を回転させ、その向きを揃えることを実現するために定められている。
【0023】
図3は、発明の実施の形態1に係る画像処理装置用の搬送装置が対象としている搬送対象物Zの斜視図である。搬送対象物Zは、上蓋のX部と本体のY部がヒンジ(蝶番)T1で結合され開閉できる形態のキャップであり、同図はその閉じた状態を示している。このキャップはプラスチック製で、典型的には、食酢や醤油など液体の調味料等のビンの蓋として使用される。本発明の実施の形態に係る装置で扱う搬送対象物Zは、次の特徴を備えるものである。
(ア)その外形は略回転体形状(典型的には円筒形)をしている。
(イ)その回転体形状の一部に、回転方向に沿って凸部(突起)が設けられている。例えば、図3の円筒形のキャップの場合であれば、ヒンジ(蝶番)T1、及び、これと反対側に設けられたキャップの開閉を容易に行うための突起T2が設けられている。なお、突起はひとつだけ設けられる場合もあり、また、図3のように複数設けられる場合もある。
【0024】
図4は、発明の実施の形態1に係る画像処理装置用の搬送装置の詳細断面図である。同図(a)はベルト1及びベルト3の隙間に突起T2が位置した状態を示し、同図(b)は突起T1に起因する回転規制の説明図である(点線はキャップの仮想的な状態を示す)。図4を参照してベルト1乃至3の上下位置関係について説明を加える。
【0025】
ベルト1乃至3は断面が略V字状(ベルトの骨部)をなしており、その中央付近の厚みが最も大きく、その端部(淵)では厚みは薄い。ベルト2は、キャップの突起T1,T2よりも下側に位置している。ベルト2はキャップの突起T1,T2と接触することはない(したがってベルト2はキャップの回転を規制しない)。ベルト3の位置はベルト2とほぼ同じである(したがってベルト3もキャップの回転を規制しない)。ベルト1はベルト3の上に位置し、これらの間には隙間が設けられている。ベルト1とベルト3の隙間で、キャップのツバ部T2を逃げる事になる。図4(a)に示すように、ベルト1及びベルト3はキャップのツバ部T2に接触することはない(したがってキャップのツバ部T2は回転の規制とは無関係である)。これに対し、図4(b)に示すように、ベルト1はキャップのヒンジ部T1に接触する位置に設けられている。したがって、同図において※の矢印で示す個所で、ベルト1とヒンジ部T1が干渉し、これによりベルト1はキャップの回転を規制する機能を果たす。すなわち、ベルト1はキャップの回転を一定の位置で止め、これにより搬送されるキャップの回転位置を揃える機能を果たすのである。なおまれではあるが、キャップの回転位置によってはベルト1を乗り越えて回転することもある。この現象(楔現象)及びその対策については後述する。最終的に位置を揃えるために用いるベルト3はベルト2と対向していることが効果的である。
【0026】
次に、発明の実施の形態1に係る装置の動作について図5乃至図10を参照して説明を加える。図5中で、符号aはベルト4の始点からベルト1及び2の始点までの領域、符号bはベルト1及び2の始点からベルト2の終点までの領域、符号cはベルト3の始点からベルト3の終点までの領域、符号dはベルト3の始点からベルト1の終点までの領域を示す。ベルト1乃至4は、図中の矢印の方向に動作している。
【0027】
(第1工程)
領域aにおいて、搬送対象物Z(以下、キャップ)はベルト4により搬送され、その側面に接触するように配置されたベルト1及び2の始点に送り込まれる。こうして、キャップは領域bに入る。
【0028】
(第2工程)
図5の右側から送り込まれるキャップの向きはばらばらであり、ベルト1及び2の始点(領域bの始点)においては、キャップの突起部T1、T2はどの方向を向いているか定まらない状態である。
領域bにおいて、側面からキャップを挟み込む2つのベルト1及び2の速度差f2>f1によりキャップが回転され(図6乃至図9に示すように、平面図において右に回転する)、回転位置決めの準備作業が行われる。
領域bでキャップが回転される挙動は、領域bに到達したキャップの状態(回転位置)に応じて大きく2つに分けられる。
【0029】
(1)キャップの回転方向挙動1(図6参照)
図6は、キャップのヒンジ部T1がベルト1に食い付くような角度で進入した場合のキャップの回転方向の挙動を示す。キャップのヒンジ部T1がベルト1に食い付くような角度で進入した場合には、図10(a)に示す楔現象が発生するので(同図の※)、ベルト1による回転規制を受けず、ベルト1を乗り越えてキャップは回転を続ける(符号100乃至102)。楔現象は、領域bの始点(ベルト1の始点)でキャップのヒンジ部T1がベルト1に接触したときに生じる。ベルト4により図中の矢印方向へ送り出されているため、領域bの始点でヒンジ部T1がベルト1の側面に押し当てられることになる。このとき、キャップはまだ回転していないためヒンジ部T1は逃げることができず、ベルト1の淵部がヒンジ部T1に押されて折れ曲がり、図10(a)に示すようになる(同図の※)。領域bの始点でこのような状態になると、キャップは回転規制を受けることなく回転することができて、ベルト1をヒンジ部T1が超えるようになる(符号100乃至102)。
【0030】
キャップのヒンジ部T1がベルト1に食い付く角度で進入した場合は、キャップの回転方向の挙動は図6の符号100乃至103のようになる。すなわち、ヒンジ部T1は回転規制を受けることなく、回転を継続する。符号100乃至103はキャップの右回転を示す。
【0031】
(2)キャップの回転方向挙動2(図7参照)
図7は、キャップのヒンジ部T1がベルト1に食い付かない角度で進入した場合のキャップの回転方向の挙動を示す。
キャップのヒンジ部T1がベルト1に食い付かない角度で進入した場合は、キャップの回転方向の挙動は図7の符号110乃至113のようになる。すなわち、キャップが回転するとそのヒンジ部T1がベルト2の位置に到達する(符号111)が、ベルト2は、ベルト1と異なり、キャップの回転をヒンジで規制しないので、キャップはさらに回転を続け(符号112)、最終的にベルト1にヒンジ部T1が接触して回転が止まる(符号113)。この状態を図10(b)に示す(同図※、ヒンジ角部T1−1がベルト1に接触することでキャップの回転が停止している。なお同図は図7の符号113の状態そのものを示していないが、回転規制の点は同じである)。なお、領域bの始点と領域cの始点の間の距離が長ければキャップは十分に回転し、図7の符号113で示すようにその回転が止まるが、短ければそうならないこともある。本発明では、図7に示すようにキャップの回転が規制される位置まで回転を続けることは必須ではない。符号110乃至113はキャップの右回転を示す。
【0032】
領域bにおける回転準備作業は、これに続く第3工程の前処理であり、第3工程で全てのキャップを所定の回転位置に整列させるためのものである。第3工程の始まり(領域cの始点)において、キャップが特定の方向を向いていると整列できないことがある(前述の楔現象)。これを避けるために、キャップが当該特定の方向以外を向くように、第2工程でキャップに回転を加えるのである。
【0033】
(第3工程)
領域cでは、上述のように領域bの回転準備作業により予備的に位置決めされたキャップを、ベルト3とベルト2の速度差=f3−f2(f3>f2)によりキャップを回転させ、最終的な位置決めを行う。上記速度差から領域cではキャップは左に回転する(上記第2工程とは反対)。ベルト3は、ベルト1よりもベルト2側に設けられているので、領域cではベルト3による駆動力が支配的になる。
【0034】
図8は、符号100乃至103の間で回転を規制されたキャップ(図6参照)を、符号104で一気に回転位置決めを行う様子を示す。すなわち、符号104でキャップは左側に回転し、そのヒンジ部T1がベルト2の位置に到達する。その位置でキャップの向きは固定される(図10(b)参照)。
【0035】
図9は、符号110乃至113の間で回転を規制されたキャップ(図7参照)を、符号114で一気に回転位置決めを行う様子を示す。すなわち、符号114でキャップは左側に回転し、そのヒンジ部T1がベルト2の位置に到達する。その位置でキャップの向きは固定される(図10(b)参照)。符号114のキャップの向きは、符号104のキャップの向きと同じである。
【0036】
第3工程により、投入されたさまざまな向きのキャップが、図8の符号104又は図9の符号114のいずれかの状態になる。これら2つの状態は同じ回転位置である。したがって、上記工程により全てのキャップの回転方向は同じになり、整列された状態で次の工程へ送り出されるようになる。
【0037】
なお、図8の符号103から符号104の間でせいぜい45度程度キャップが左回転するに過ぎないが、図9の符号113から符号114の間では225度程度キャップが左回転している。したがって、第3工程の長さ(ベルト3の長さ)は、第2工程で予備的に整列されたキャップを整列されるために必要な回転角度(225度程度)よりも大きな角度でキャップを回転させる程度のものであることが好ましい。
【0038】
(第4工程)
領域bの終点でベルト2が終わり、キャップの回転は止まる(そのときの向きは図8の符号104及び図9の符号114)。領域bの終点以降もキャップはベルト1及び/又はベルト3に接触しているので回転力を受けるが、その回転方向は左回転なのでベルト1による回転規制が有効であり、キャップの向きが乱れることはない。そして、領域cの終点でベルト3が終わり、領域dの終点でベルト1が終わる。この間、キャップはベルト4により移動を続け、その終点で次の工程へ渡される。
【0039】
以上詳細に説明したように、発明の実施の形態1に係る装置によれば、平面搬送ベルトに回転方向が無作為に供給されるヒンジキャップ(円筒の外周に凸部があるキャップ)のヒンジ部を一定方向に規制することが可能になり、画像処理装置を用いた自動検査における性能を大きく向上することが可能になる。
【0040】
平面的に配置されたベルト1乃至3により、搬送中にキャップを回転させることが可能であるばかりでなく、下部に搬送ベルト(ベルト4)が無い構成でもキャップを搬送することができるようになる。例えば、ベルト4をなくし、ベルト1とベルト2の終点を一致させるようにすることにより、搬送ベルトが存在しなくてもキャップの搬送が可能になる。搬送ベルトが存在しなければ、ベルト1とベルト2の上下にそれぞれカメラを設置し、キャップの上面及び底面の両方を同時に撮影することもできる。キャップを反転すること無くキャップ全体の検査が実施可能となり、自動画像検査を実現する上で大きな貢献と効果を発揮する。
【0041】
発明の実施の形態2.
ベルトの側面でワーク(搬送対象物)を挟み込んで搬送する方式において、弾性体(ゴム、スポンジ等)のベルトを使用し、その弾性を利用して挟み込むという機能を満足させる方式となっている。
【0042】
このような方式には、ベルトに使用する弾性体が経時変化或いは磨耗等で損傷することで、搬送の信頼性を長時間において維持することが困難あることと、塵埃などが発生しワークの品質問題等を発生させる、という問題がある。
【0043】
発明の実施の形態2は、ベルトの側面でワークを挟み込んで搬送する方式に好適な手段を提供するものである。
【0044】
図11は、ヒンジキャップを最終位置決めする為の高速度のベルト3と中速度のベルト2の構成を示す概略図である。図12は、図11のA部の拡大図である。図11及び図12を用いて発明の実施の形態2に係る装置について説明する。
【0045】
図12を参照すると、ベルト2を支持するベルトガイドプーリー221は、ベルトサポートブロック(固定)222に取り付けられている。ベルトガイドプーリー221は可動しない。ベルト3を支持するベルトガイドプーリー321は、ベルトサポートブロック(可動)322に取り付けられている。このベルトサポートブロック(可動)322は、2本のベルトサポートブロックガイドピン324により保持されている。ベルトサポートブロックガイドピン324にそれぞれ挿入されたベルトサポートブロック押さえバネ323によりベルトサポートブロック321に圧力を加えることで、ベルトガイドプーリー321をベルト3の内側に密着させ圧力を加えている。このような構成により、ベルト3に内側から常に圧力を加えているので、ベルト3とベルト2の間にキャップZが進入した際に、これを適切に保持出来る構造となっている。
【0046】
キャップが進入していない場合は、ベルト3が一定の位置になるような機構がベルトサポートブロック(可動)322に設けてある。
【0047】
図11及び図12では、ベルト2,3をプーリー221、321で受けているが、プーリー221、321を用いない構成も可能である。例えば、ベルトサポートブロック222、322の材質を滑りの良いものにして、これでベルト2,3を保持するようにしてもよい。
【0048】
以上のように、発明の実施の形態2によれば、側面でワークを挟み込んで搬送する方式の長寿命化と塵埃の発生を防止でき、搬送の信頼性向上を実現できる。
【0049】
発明の実施の形態3.
発明の実施の形態2は、キャップを挟み込んで搬送する場合に、幅方向に十分な余裕を必要とする際に有効な手段であるが、機構部が複雑になり設備費が嵩んでしまう。発明の実施の形態3は、それほど幅方向に余裕を必要としない場合に簡便な手段で側面を挟み込んで搬送することを実現するものである。
【0050】
図13は、低速度のベルト1と中速度のベルト2の構成を示す概略図である。図14は、図13のA部の拡大図である。図13及び図14を用いて発明の実施の形態3に係る装置について説明する。
【0051】
図14を参照すると、ベルト2を支持するベルトガイドプーリー221は、ベルトサポートブロック(固定)222に取り付けられている。ベルトガイドプーリー221は可動しない。ベルト1を支持するベルトガイドプーリー121は、ベルトサポートブロック(固定)122に取り付けられている。ベルトガイドプーリー121も可動しない。
【0052】
しかし、ベルトガイドプーリー121の中心と、ベルトガイドプーリー221の中心は一致せず、図示するようにWだけ中心をずらして配置されている。別の言い方をすれば、ベルトガイドプーリー121とベルトガイドプーリー221は正対しているのではなく、少しずれて向き合っている。このように構成することでキャップZに常に圧力を掛けることが可能となり、キャップを挟んで搬送することが実現できる。
【0053】
なお、図14中の※1の部分は、ベルト2が押し出されることになり、この対応が必要となるが、ベルトの伸び方向の弾性的に或いは自動的にベルトの挙動に対応できる機構(自動張力調整)を設けることで解決できる。
【0054】
キャップの外径に大きな変動が無い場合のキャップを挟み込んで搬送する方式として、発明の実施の形態2と同等の効果が期待できる。
【0055】
なお、発明の実施の形態に係る装置の特徴を改めて箇条書きにすると以下のようになる。
【0056】
(1)ベルト1とベルト2は対向して設けられ、これらで搬送対象物を挟んで搬送する。
【0057】
(2)ベルト1の移動速度とベルト2の移動速度が異なっている。そのため、搬送対象物は、搬送中に回転する。その回転速度は移動速度の違いに依存する。
【0058】
(3)ベルト1とベルト2が対向する位置(入口)に搬送対象物が到達すると、これらにより挟まれることで、本発明の実施の形態に係る装置による搬送が開始される。
【0059】
(4)回転しながら搬送される搬送対象物は、一定の回転位置、すなわち搬送対象物に設けられた凸部がベルト1に接触してそれ以上の回転を妨げられる位置に到達すると、回転を抑止され、当該回転位置を保ったまま搬送される。搬送対象物は、ベルト1とベルト2の終点(出口)に到達すると、本発明の実施の形態に係る装置から開放される。
【0060】
(5)上記(1)乃至(4)の作用により、入口においてばらばらの方向を向いていた搬送対象物が、出口においてその回転位置が整列された状態で出てくる。本発明の実施の形態に係る装置により、円筒形状であって外周部に突起のある搬送対象物の位置決めを効率的かつ高速に実施することができる。
【0061】
(6)ベルト1とベルト2の間隔は、搬送対象物を挟むことができる程度である。例えば、搬送対象物の直径よりもやや小さい程度である。
【0062】
(7)ベルト1及びベルト2が搬送対象物に加える圧力は、搬送対象物を挟んで搬送できる程度であり、かつ、回転しながら搬送される搬送対象物が、一定の回転位置(搬送対象物に設けられた凸部がベルト1に接触してそれ以上の回転を妨げられる位置)に到達すると回転を抑止される程度の大きさである。上記圧力が小さすぎると搬送対象物を搬送できないし、上記圧力が大きすぎると、ベルトと搬送対象物の間の摩擦が大きくなりすぎ、上記一定の回転位置に到達してもベルトと搬送対象物がスリップすることがなくなり、したがって回転が抑止されなくなる。これでは搬送対象物の回転位置の整列を行うことができない。ベルト1及びベルト2が搬送対象物に加える圧力は、上記観点から決定されるべきである。例えば、搬送対象物を搬送するために必要な最小の圧力をp1、上記一定の回転位置に到達したときにベルトと搬送対象物がスリップしなくなる最小の圧力(これより小さければスリップが生じる圧力)をp2とすれば、ベルト1及びベルト2が搬送対象物に加える圧力pは、p1<p<p2のように選択するとよい。
【0063】
(8)ベルト1及びベルト2による搬送距離は、搬送対象物が上記一定の回転位置に到達するまで回転できる程度の長さである(これよりも多少長いほうがよい)。ベルト1とベルト2の移動速度の差は、ベルト1及びベルト2による搬送距離内において、搬送対象物が上記一定の回転位置に到達するまで回転できる程度のものである(差は多少大きいほうがよい)。すなわち、搬送距離とベルト1とベルト2の移動速度の差は、搬送対象物が上記一定の回転位置に到達するまで回転できるという観点から決定されるべきである。例えば、ベルト1及びベルト2による搬送距離をそれに要する時間Tで表し、ベルト1とベルト2の移動速度の差をこれにより搬送対象物に与えられる回転角速度ωで表し、任意の回転位置で入口に到達した搬送対象物が上記一定の回転位置に到達するのに要する最大の回転角度θとしたとき、ωT>θであるように設定すれば、ベルト1及びベルト2による搬送において搬送対象物は必ずθ以上回転するので、全ての搬送対象物は上記一定の回転位置の状態で発明の実施の形態に係る装置から開放され、上記(5)の作用効果を奏する。
【0064】
(9)ベルト3とベルト2の関係も上記と同様である。ベルト3は、最終的な位置決めを行うものであるので、ベルト1よりも短く、ベルト3の始点はベルト1の途中にある。短距離で搬送対象物を大きく回転させてもよいので、その速度差は大きくできる(ベルト1とベルト2による回転角速度ω<ベルト3とベルト2による回転角速度ω’)。ベルト3及びベルト2が搬送対象物に加える圧力は、ベルト1及びベルト2が搬送対象物に加える圧力よりも大きくする。
【0065】
なお、図中に示したベルト4は、なくてもよい。搬送対象物Zは、ベルト1及びベルト3とベルト2で挟まれて搬送されるので、ベルト4を備えなくてもよい。
【0066】
ベルト3は、搬送対象物の位置がどのような状態にあってもその回転位置を整列させることができるものであり、実用上価値の高いものである。ベルト1とベルト2のみで構成した場合も、一定の条件(楔現象が発生しない)のもとで搬送対象物の回転位置を整列させることができる。ベルト1とベルト2のみによる構成も、本発明に含まれる。
【0067】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】発明の実施の形態に係る搬送装置の概略平面図である。
【図2】発明の実施の形態に係る搬送装置の概略断面図である。
【図3】発明の実施の形態に係る搬送装置が搬送する対象物(一例)の斜視図である。
【図4】発明の実施の形態に係る搬送装置の上下方向の配置の詳細説明図である。
【図5】発明の実施の形態に係る搬送装置の動作説明図(概略平面図)である。
【図6】発明の実施の形態に係る搬送装置の動作説明図(楔現象が発生した場合の搬送対象物の回転の様子を示す)である。
【図7】発明の実施の形態に係る搬送装置の動作説明図(楔現象が発生しない場合の搬送対象物の回転の様子を示す)である。
【図8】発明の実施の形態に係る搬送装置の動作説明図(図6の続き)である。
【図9】発明の実施の形態に係る搬送装置の動作説明図(図7の続き)である。
【図10】図10(a)は発明の実施の形態に係る搬送装置において楔現象が発生した状態の説明図、同図(b)は楔現象が発生せずに搬送対象物が回転規制を受けた状態の説明図である。
【図11】発明の実施の形態2に係る高速度のベルトと中速度のベルトの構成を示す概略図である。
【図12】図11の部分拡大図である。
【図13】発明の実施の形態3に係る低速度のベルトと中速度のベルトの構成を示す概略図である。
【図14】図13の部分拡大図である。
【符号の説明】
【0069】
1 低速度の第1ベルト(ベルトA)
11 第1ベルト駆動用プーリー
12 ベルト支持(固定タイプ)
121 ベルトガイドプーリー
122 ベルトサポートブロック(固定)
2 中速度の第2ベルト(ベルトB)
21 第2ベルト駆動用プーリー
22 ベルト支持(固定タイプ)
221 ベルトガイドプーリー
222 ベルトサポートブロック(固定)
3 高速度の第3ベルト(ベルトC)
31 第3ベルト駆動用プーリー
32 ベルト支持(可動タイプ)
321 ベルトガイドプーリー
322 ベルトサポートブロック(可動)
323 ベルトサポートブロック押さえバネ
324 ベルトサポートブロックガイドピン(ベルトサポートブロックガイド)
4 低速度の第4ベルト(ベルトD)
41 第4ベルト駆動用プーリー
T1 突起(ヒンジ部)
T2 突起(ツバ部)
X 上蓋
Y 下蓋
Z 搬送対象物(キャップ、検査対象物)
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像処理装置用の搬送装置に関し、特に円筒形のキャップなどの搬送対象物(検査対象物)の回転位置を揃えることができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2004−167553号公報「キャリアを有するフープ状製品の連続画像検査用送り駆動装置」 特許文献1は、測定の信頼を高め、判定誤差によるラインの停止頻度を低減し、安定したフープ(hoop:「輪」「たが」の意)状製品の連続画像検査用送り駆動装置を開示する。
【0003】
すなわち、キャリアを有するフープ状製品を左右各一対のローラ同士又は該一対のローラに形成した鍔同士で圧接状態で該製品のキャリア部を起立状に挟んだ状態で立て送り搬送し、前記ローラを回転自在に支承する片持ちピンのそれぞれは揺動フレームに対し垂直にそれぞれ植設し、該揺動フレームは固定支持部材に対し回動可能に枢着し、該揺動フレーム及び前記ローラの回動角は前記フープ状製品が起立状態で前記製品を検査する搬送方向時及び該搬送方向から再検査するための逆搬送方向に搬送される時にキャリア部が挟持する前記ローラ又は鍔から離脱しないような所定の角度だけ進行方向に振るような角度に設定したことを特徴とするキャリアを有するフープ状製品の連続画像検査用送り駆動装置を開示する。
【0004】
特許文献1の発明によれば、キャリアを有するフープ状製品が起立状態で製品を検査する搬送方向時及び該搬送方向から再検査するための逆搬送方向に搬送される時にキャリア部が挟持するローラ又は鍔から離脱しないような所定の角度だけ進行方向に振るような角度に設定することで、フープ状製品を送り戻し再検査することにより測定の判定誤りを少なくし測定の信頼性を高めることができる。また、判定誤差によるラインの停止頻度を低減し、連続画像検査用送り駆動装置として安定した装置が簡単に得られる。さらに、左から右方向又は右から左方向へのフープ状製品の送り時に搬送ローラ又はローラに形成した鍔同士で挟まれたフープ状製品は送り方向にローラが傾斜することとなるために、フープ状製品が搬送中に離脱することがなく安定して送ることができ、送り線位置変化などの現象が発生することも解消される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像検査装置は、フープ状以外にもさまざまな形状の製品(物体)の検査に使用される。例えば、円筒形でその一部に突起が設けられたキャップの検査にも使用されている。当該キャップは、典型的には、食酢や醤油などのビンの蓋として使用される開閉可能なヒンジ(蝶番)付キャップである。
【0006】
画像処理装置を用いてキャップの外周(側面・外上面・内下部側面・内下部底面)を検査する場合において、その検査精度を向上させるために、キャップの回転方向の位置を揃えることが求められる。例えば、次々と運ばれてくる多数のキャップそれぞれについて、そのヒンジの部分が一定の方向に向くように整列させる必要がある。キャップに設けられたヒンジなどの突起の位置が定まらないと、画像検査を行う際に当該突起による影が生じ、この影を欠点(異物或いは変形等)として誤った画像処理を行うことになる。
【0007】
上記理由から、前工程から画像検査装置による検査工程へ多数の搬送対象物(キャップ)が供給されるときに、その回転方向が無作為(全くバラバラ)であったとしても、画像検査の際、すなわちカメラによる撮影の際にはその回転方向を効率的に揃えることが求められている。画像検査を効率的に行う為にその回転方向を揃えるための位置規制を高速で行うことが求められている。
【0008】
このような観点から、前工程から画像検査装置による検査工程へ搬送対象物(キャップ)を搬送する際において、併せて搬送対象物の整列を行うことが好ましい。画像検査工程の直前に搬送対象物を回転させて整列させる工程を新たに設けることは、工程の増加を意味し、検査速度の高速化、経済性などの点で好ましくない。しかし、搬送の際に搬送対象物の整列を行うことのできる画像処理装置用の搬送装置は知られていなかった。
【0009】
本発明は、前工程から画像検査装置による検査工程へ、円筒形(回転体)であってその表面に突起が設けられている搬送対象物を搬送する際に前記搬送対象物の向きを揃えることのできる画像処理装置用の搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、互いに対向して設けられた第1ベルト及び第2ベルトを備え、表面にひとつ又は複数の突起が設けられている略回転体形状の搬送対象物を前記第1ベルトと前記第2ベルトで挟んで搬送するとともに、搬送する際に前記搬送対象物の向きを揃える搬送装置であって、
前記第1ベルトは、前記搬送対象物の前記突起のいずれかに接触する位置に設けられ、
前記第2ベルトは、前記搬送対象物の前記突起のいずれにも接触しない位置に設けられ、
前記第1ベルトの速度と前記第2ベルトの速度が異なり、これにより前記搬送対象物は搬送中に回転され、前記搬送対象物の前記突起のいずれかが前記第1ベルトに接触することで前記搬送対象物は回転規制を受けることを特徴とするものである。
【0011】
前記第1ベルトは、その内側に、前記第1ベルトを支持する複数のベルトガイドプーリーと、前記ベルトガイドプーリーが取り付けられるベルトサポートブロックとを備え、
前記第2ベルトは、その内側に、前記第2ベルトを支持する複数のベルトガイドプーリーと、前記ベルトガイドプーリーが取り付けられるベルトサポートブロックとを備え、
前記第1ベルトのベルトガイドプーリーと前記第2ベルトのベルトガイドプーリーはそれぞれ正対せず、予め定められたずれ量Wだけずれて向き合うように配置されたものである。
【0012】
前記第1ベルトに重ねられ、かつ、前記第2ベルトに対向して設けられた第3ベルトをさらに備え、前記第3ベルトは前記第1ベルトよりも短く、その始点は前記第1ベルトの途中に位置し、前記第3ベルトの速度は、前記第1ベルトの速度と前記第2ベルトの速度のいずれよりも大きく、前記搬送対象物は、前記第2ベルト及び前記第3ベルトに挟まれて回転されるものである。
【0013】
前記第1ベルト乃至前記第3ベルトは、例えば、断面略V字状の骨部がその内側に設けられている。
【0014】
前記第2ベルトは、その内側に、前記第2ベルトを支持する複数のベルトガイドプーリーと、前記ベルトガイドプーリーが取り付けられるベルトサポートブロックとを備え、
前記第3ベルトは、その内側に、前記第3ベルトを支持する複数のベルトガイドプーリーと、前記ベルトガイドプーリーが取り付けられる可動式のベルトサポートブロックと、前記ベルトサポートブロックを保持するひとつ又は複数のベルトサポートブロックガイドと、前記ベルトサポートブロックガイドに取り付けられたベルトサポートブロック押さえバネとを備え、前記ベルトサポートブロック押さえバネにより前記ベルトサポートブロックに圧力を加えることで前記ベルトガイドプーリーを前記第3ベルトの内側に密着させ圧力を加えるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
発明の実施の形態1.
発明の実施の形態1に係る装置について図面を参照して説明を加える。
図1は、発明の実施の形態1に係る画像処理装置用の搬送装置の概略平面図である。
図2は、発明の実施の形態1に係る画像処理装置用の搬送装置の概略断面図である。図2は、図1のA−A線矢視断面図である。
【0016】
図1及び図2において、符号1はベルトA(又は第1ベルト)、符号2はベルトB(又は第2ベルト)、符号3はベルトC(又は第3ベルト)、符号4はベルトD(第4ベルト)を示す(なお、以下の記載において、ベルトA(第1ベルト)乃至ベルトD(第4ベルト)を単にベルト1乃至4と記す)。なお、ベルト(belt)とは、2個の車輪(プーリー)にかけ渡して、他方に動力を伝える平帯状の物であり、その上に品物を載せて運ぶ装置(ベルトコンベヤー)としても用いられるものである。
【0017】
各ベルト1乃至4は両端に設けられたプーリー11、21、31、41により適度な張力が与えられるとともに、当該プーリーの回転(図1に示された白抜き矢印がその回転方向を示す)により駆動され、予め定められた方向(図中の矢印の方向)に移動する。図1の右側から搬送対象物(キャップ)が供給され、同図の左側へ送り出される。その際には、以下に説明するように、各ベルトの作用により搬送対象物(キャップ)の向きが整列されるようになる。すなわち、図1に示した装置は、同図右側の前工程から同図左側の画像検査装置による検査工程へ、円筒形(回転体)に突起が設けられている搬送対象物(キャップ:検査対象物)を搬送するとともに、その際にその向きを揃えることのできる装置である。
【0018】
図2からわかるように、ベルト4は、最も下側に設けられ、この上に搬送対象物が載置されて、図1の矢印の方向へ移動するようになっている。ベルト1及びベルト3とベルト2は対向して配置され、これらの間を搬送対象物が移動するようになっている。言い換えれば、搬送対象物は、ベルト1及びベルト3とベルト2に挟まれた状態で、ベルト4の作用と相俟って、図1の矢印の方向へ移動するように構成されている。ベルト1は、ベルト3の上側に設けられている。
【0019】
ベルト1は、ベルト3よりも少し引っ込むように配置されている。すなわち、ベルト2からベルト3までの距離(間隔)よりも、ベルト2からベルト1までの距離(間隔)のほうが若干大きい。
【0020】
図1からわかるように、ベルト1乃至ベルト3の長さは同じではない。すなわち、ベルト1が最も長く、ベルト3が最も短い。ベルト2はこれらの中間である。ベルト1とベルト2の始点(図1における右側の端)はほぼ同じであるが、ベルト1の終点(同左側の端)は、ベルト2の終点よりもはるかに後(図1における左側)の、ベルト4の終点付近に位置している。ベルト3の始点はベルト1の途中に位置し、その終点はベルト2の終点のやや後(ベルト1の終点のずっと前)に位置している。
【0021】
なお、図面では表示を省略しているが、本装置は、プーリー11,21,31、41を駆動するモーターを備えている。
【0022】
ベルト1乃至4の移動方向は前述したとおりであり、すべてのベルトは搬送対象物を一定の方向へ(図1で言えば右から左へ)搬送するように、図示しないモーターで駆動されている。ベルト1乃至4の動作速度をそれぞれf1乃至f4とすると、f3>f2>f1=f4という関係が有る。すなわち、ベルト3が最も速く、ベルト1及び4は最も遅い。ベルト2はその中間である。このような速度差は、搬送対象物を搬送する際に搬送対象物を回転させ、その向きを揃えることを実現するために定められている。
【0023】
図3は、発明の実施の形態1に係る画像処理装置用の搬送装置が対象としている搬送対象物Zの斜視図である。搬送対象物Zは、上蓋のX部と本体のY部がヒンジ(蝶番)T1で結合され開閉できる形態のキャップであり、同図はその閉じた状態を示している。このキャップはプラスチック製で、典型的には、食酢や醤油など液体の調味料等のビンの蓋として使用される。本発明の実施の形態に係る装置で扱う搬送対象物Zは、次の特徴を備えるものである。
(ア)その外形は略回転体形状(典型的には円筒形)をしている。
(イ)その回転体形状の一部に、回転方向に沿って凸部(突起)が設けられている。例えば、図3の円筒形のキャップの場合であれば、ヒンジ(蝶番)T1、及び、これと反対側に設けられたキャップの開閉を容易に行うための突起T2が設けられている。なお、突起はひとつだけ設けられる場合もあり、また、図3のように複数設けられる場合もある。
【0024】
図4は、発明の実施の形態1に係る画像処理装置用の搬送装置の詳細断面図である。同図(a)はベルト1及びベルト3の隙間に突起T2が位置した状態を示し、同図(b)は突起T1に起因する回転規制の説明図である(点線はキャップの仮想的な状態を示す)。図4を参照してベルト1乃至3の上下位置関係について説明を加える。
【0025】
ベルト1乃至3は断面が略V字状(ベルトの骨部)をなしており、その中央付近の厚みが最も大きく、その端部(淵)では厚みは薄い。ベルト2は、キャップの突起T1,T2よりも下側に位置している。ベルト2はキャップの突起T1,T2と接触することはない(したがってベルト2はキャップの回転を規制しない)。ベルト3の位置はベルト2とほぼ同じである(したがってベルト3もキャップの回転を規制しない)。ベルト1はベルト3の上に位置し、これらの間には隙間が設けられている。ベルト1とベルト3の隙間で、キャップのツバ部T2を逃げる事になる。図4(a)に示すように、ベルト1及びベルト3はキャップのツバ部T2に接触することはない(したがってキャップのツバ部T2は回転の規制とは無関係である)。これに対し、図4(b)に示すように、ベルト1はキャップのヒンジ部T1に接触する位置に設けられている。したがって、同図において※の矢印で示す個所で、ベルト1とヒンジ部T1が干渉し、これによりベルト1はキャップの回転を規制する機能を果たす。すなわち、ベルト1はキャップの回転を一定の位置で止め、これにより搬送されるキャップの回転位置を揃える機能を果たすのである。なおまれではあるが、キャップの回転位置によってはベルト1を乗り越えて回転することもある。この現象(楔現象)及びその対策については後述する。最終的に位置を揃えるために用いるベルト3はベルト2と対向していることが効果的である。
【0026】
次に、発明の実施の形態1に係る装置の動作について図5乃至図10を参照して説明を加える。図5中で、符号aはベルト4の始点からベルト1及び2の始点までの領域、符号bはベルト1及び2の始点からベルト2の終点までの領域、符号cはベルト3の始点からベルト3の終点までの領域、符号dはベルト3の始点からベルト1の終点までの領域を示す。ベルト1乃至4は、図中の矢印の方向に動作している。
【0027】
(第1工程)
領域aにおいて、搬送対象物Z(以下、キャップ)はベルト4により搬送され、その側面に接触するように配置されたベルト1及び2の始点に送り込まれる。こうして、キャップは領域bに入る。
【0028】
(第2工程)
図5の右側から送り込まれるキャップの向きはばらばらであり、ベルト1及び2の始点(領域bの始点)においては、キャップの突起部T1、T2はどの方向を向いているか定まらない状態である。
領域bにおいて、側面からキャップを挟み込む2つのベルト1及び2の速度差f2>f1によりキャップが回転され(図6乃至図9に示すように、平面図において右に回転する)、回転位置決めの準備作業が行われる。
領域bでキャップが回転される挙動は、領域bに到達したキャップの状態(回転位置)に応じて大きく2つに分けられる。
【0029】
(1)キャップの回転方向挙動1(図6参照)
図6は、キャップのヒンジ部T1がベルト1に食い付くような角度で進入した場合のキャップの回転方向の挙動を示す。キャップのヒンジ部T1がベルト1に食い付くような角度で進入した場合には、図10(a)に示す楔現象が発生するので(同図の※)、ベルト1による回転規制を受けず、ベルト1を乗り越えてキャップは回転を続ける(符号100乃至102)。楔現象は、領域bの始点(ベルト1の始点)でキャップのヒンジ部T1がベルト1に接触したときに生じる。ベルト4により図中の矢印方向へ送り出されているため、領域bの始点でヒンジ部T1がベルト1の側面に押し当てられることになる。このとき、キャップはまだ回転していないためヒンジ部T1は逃げることができず、ベルト1の淵部がヒンジ部T1に押されて折れ曲がり、図10(a)に示すようになる(同図の※)。領域bの始点でこのような状態になると、キャップは回転規制を受けることなく回転することができて、ベルト1をヒンジ部T1が超えるようになる(符号100乃至102)。
【0030】
キャップのヒンジ部T1がベルト1に食い付く角度で進入した場合は、キャップの回転方向の挙動は図6の符号100乃至103のようになる。すなわち、ヒンジ部T1は回転規制を受けることなく、回転を継続する。符号100乃至103はキャップの右回転を示す。
【0031】
(2)キャップの回転方向挙動2(図7参照)
図7は、キャップのヒンジ部T1がベルト1に食い付かない角度で進入した場合のキャップの回転方向の挙動を示す。
キャップのヒンジ部T1がベルト1に食い付かない角度で進入した場合は、キャップの回転方向の挙動は図7の符号110乃至113のようになる。すなわち、キャップが回転するとそのヒンジ部T1がベルト2の位置に到達する(符号111)が、ベルト2は、ベルト1と異なり、キャップの回転をヒンジで規制しないので、キャップはさらに回転を続け(符号112)、最終的にベルト1にヒンジ部T1が接触して回転が止まる(符号113)。この状態を図10(b)に示す(同図※、ヒンジ角部T1−1がベルト1に接触することでキャップの回転が停止している。なお同図は図7の符号113の状態そのものを示していないが、回転規制の点は同じである)。なお、領域bの始点と領域cの始点の間の距離が長ければキャップは十分に回転し、図7の符号113で示すようにその回転が止まるが、短ければそうならないこともある。本発明では、図7に示すようにキャップの回転が規制される位置まで回転を続けることは必須ではない。符号110乃至113はキャップの右回転を示す。
【0032】
領域bにおける回転準備作業は、これに続く第3工程の前処理であり、第3工程で全てのキャップを所定の回転位置に整列させるためのものである。第3工程の始まり(領域cの始点)において、キャップが特定の方向を向いていると整列できないことがある(前述の楔現象)。これを避けるために、キャップが当該特定の方向以外を向くように、第2工程でキャップに回転を加えるのである。
【0033】
(第3工程)
領域cでは、上述のように領域bの回転準備作業により予備的に位置決めされたキャップを、ベルト3とベルト2の速度差=f3−f2(f3>f2)によりキャップを回転させ、最終的な位置決めを行う。上記速度差から領域cではキャップは左に回転する(上記第2工程とは反対)。ベルト3は、ベルト1よりもベルト2側に設けられているので、領域cではベルト3による駆動力が支配的になる。
【0034】
図8は、符号100乃至103の間で回転を規制されたキャップ(図6参照)を、符号104で一気に回転位置決めを行う様子を示す。すなわち、符号104でキャップは左側に回転し、そのヒンジ部T1がベルト2の位置に到達する。その位置でキャップの向きは固定される(図10(b)参照)。
【0035】
図9は、符号110乃至113の間で回転を規制されたキャップ(図7参照)を、符号114で一気に回転位置決めを行う様子を示す。すなわち、符号114でキャップは左側に回転し、そのヒンジ部T1がベルト2の位置に到達する。その位置でキャップの向きは固定される(図10(b)参照)。符号114のキャップの向きは、符号104のキャップの向きと同じである。
【0036】
第3工程により、投入されたさまざまな向きのキャップが、図8の符号104又は図9の符号114のいずれかの状態になる。これら2つの状態は同じ回転位置である。したがって、上記工程により全てのキャップの回転方向は同じになり、整列された状態で次の工程へ送り出されるようになる。
【0037】
なお、図8の符号103から符号104の間でせいぜい45度程度キャップが左回転するに過ぎないが、図9の符号113から符号114の間では225度程度キャップが左回転している。したがって、第3工程の長さ(ベルト3の長さ)は、第2工程で予備的に整列されたキャップを整列されるために必要な回転角度(225度程度)よりも大きな角度でキャップを回転させる程度のものであることが好ましい。
【0038】
(第4工程)
領域bの終点でベルト2が終わり、キャップの回転は止まる(そのときの向きは図8の符号104及び図9の符号114)。領域bの終点以降もキャップはベルト1及び/又はベルト3に接触しているので回転力を受けるが、その回転方向は左回転なのでベルト1による回転規制が有効であり、キャップの向きが乱れることはない。そして、領域cの終点でベルト3が終わり、領域dの終点でベルト1が終わる。この間、キャップはベルト4により移動を続け、その終点で次の工程へ渡される。
【0039】
以上詳細に説明したように、発明の実施の形態1に係る装置によれば、平面搬送ベルトに回転方向が無作為に供給されるヒンジキャップ(円筒の外周に凸部があるキャップ)のヒンジ部を一定方向に規制することが可能になり、画像処理装置を用いた自動検査における性能を大きく向上することが可能になる。
【0040】
平面的に配置されたベルト1乃至3により、搬送中にキャップを回転させることが可能であるばかりでなく、下部に搬送ベルト(ベルト4)が無い構成でもキャップを搬送することができるようになる。例えば、ベルト4をなくし、ベルト1とベルト2の終点を一致させるようにすることにより、搬送ベルトが存在しなくてもキャップの搬送が可能になる。搬送ベルトが存在しなければ、ベルト1とベルト2の上下にそれぞれカメラを設置し、キャップの上面及び底面の両方を同時に撮影することもできる。キャップを反転すること無くキャップ全体の検査が実施可能となり、自動画像検査を実現する上で大きな貢献と効果を発揮する。
【0041】
発明の実施の形態2.
ベルトの側面でワーク(搬送対象物)を挟み込んで搬送する方式において、弾性体(ゴム、スポンジ等)のベルトを使用し、その弾性を利用して挟み込むという機能を満足させる方式となっている。
【0042】
このような方式には、ベルトに使用する弾性体が経時変化或いは磨耗等で損傷することで、搬送の信頼性を長時間において維持することが困難あることと、塵埃などが発生しワークの品質問題等を発生させる、という問題がある。
【0043】
発明の実施の形態2は、ベルトの側面でワークを挟み込んで搬送する方式に好適な手段を提供するものである。
【0044】
図11は、ヒンジキャップを最終位置決めする為の高速度のベルト3と中速度のベルト2の構成を示す概略図である。図12は、図11のA部の拡大図である。図11及び図12を用いて発明の実施の形態2に係る装置について説明する。
【0045】
図12を参照すると、ベルト2を支持するベルトガイドプーリー221は、ベルトサポートブロック(固定)222に取り付けられている。ベルトガイドプーリー221は可動しない。ベルト3を支持するベルトガイドプーリー321は、ベルトサポートブロック(可動)322に取り付けられている。このベルトサポートブロック(可動)322は、2本のベルトサポートブロックガイドピン324により保持されている。ベルトサポートブロックガイドピン324にそれぞれ挿入されたベルトサポートブロック押さえバネ323によりベルトサポートブロック321に圧力を加えることで、ベルトガイドプーリー321をベルト3の内側に密着させ圧力を加えている。このような構成により、ベルト3に内側から常に圧力を加えているので、ベルト3とベルト2の間にキャップZが進入した際に、これを適切に保持出来る構造となっている。
【0046】
キャップが進入していない場合は、ベルト3が一定の位置になるような機構がベルトサポートブロック(可動)322に設けてある。
【0047】
図11及び図12では、ベルト2,3をプーリー221、321で受けているが、プーリー221、321を用いない構成も可能である。例えば、ベルトサポートブロック222、322の材質を滑りの良いものにして、これでベルト2,3を保持するようにしてもよい。
【0048】
以上のように、発明の実施の形態2によれば、側面でワークを挟み込んで搬送する方式の長寿命化と塵埃の発生を防止でき、搬送の信頼性向上を実現できる。
【0049】
発明の実施の形態3.
発明の実施の形態2は、キャップを挟み込んで搬送する場合に、幅方向に十分な余裕を必要とする際に有効な手段であるが、機構部が複雑になり設備費が嵩んでしまう。発明の実施の形態3は、それほど幅方向に余裕を必要としない場合に簡便な手段で側面を挟み込んで搬送することを実現するものである。
【0050】
図13は、低速度のベルト1と中速度のベルト2の構成を示す概略図である。図14は、図13のA部の拡大図である。図13及び図14を用いて発明の実施の形態3に係る装置について説明する。
【0051】
図14を参照すると、ベルト2を支持するベルトガイドプーリー221は、ベルトサポートブロック(固定)222に取り付けられている。ベルトガイドプーリー221は可動しない。ベルト1を支持するベルトガイドプーリー121は、ベルトサポートブロック(固定)122に取り付けられている。ベルトガイドプーリー121も可動しない。
【0052】
しかし、ベルトガイドプーリー121の中心と、ベルトガイドプーリー221の中心は一致せず、図示するようにWだけ中心をずらして配置されている。別の言い方をすれば、ベルトガイドプーリー121とベルトガイドプーリー221は正対しているのではなく、少しずれて向き合っている。このように構成することでキャップZに常に圧力を掛けることが可能となり、キャップを挟んで搬送することが実現できる。
【0053】
なお、図14中の※1の部分は、ベルト2が押し出されることになり、この対応が必要となるが、ベルトの伸び方向の弾性的に或いは自動的にベルトの挙動に対応できる機構(自動張力調整)を設けることで解決できる。
【0054】
キャップの外径に大きな変動が無い場合のキャップを挟み込んで搬送する方式として、発明の実施の形態2と同等の効果が期待できる。
【0055】
なお、発明の実施の形態に係る装置の特徴を改めて箇条書きにすると以下のようになる。
【0056】
(1)ベルト1とベルト2は対向して設けられ、これらで搬送対象物を挟んで搬送する。
【0057】
(2)ベルト1の移動速度とベルト2の移動速度が異なっている。そのため、搬送対象物は、搬送中に回転する。その回転速度は移動速度の違いに依存する。
【0058】
(3)ベルト1とベルト2が対向する位置(入口)に搬送対象物が到達すると、これらにより挟まれることで、本発明の実施の形態に係る装置による搬送が開始される。
【0059】
(4)回転しながら搬送される搬送対象物は、一定の回転位置、すなわち搬送対象物に設けられた凸部がベルト1に接触してそれ以上の回転を妨げられる位置に到達すると、回転を抑止され、当該回転位置を保ったまま搬送される。搬送対象物は、ベルト1とベルト2の終点(出口)に到達すると、本発明の実施の形態に係る装置から開放される。
【0060】
(5)上記(1)乃至(4)の作用により、入口においてばらばらの方向を向いていた搬送対象物が、出口においてその回転位置が整列された状態で出てくる。本発明の実施の形態に係る装置により、円筒形状であって外周部に突起のある搬送対象物の位置決めを効率的かつ高速に実施することができる。
【0061】
(6)ベルト1とベルト2の間隔は、搬送対象物を挟むことができる程度である。例えば、搬送対象物の直径よりもやや小さい程度である。
【0062】
(7)ベルト1及びベルト2が搬送対象物に加える圧力は、搬送対象物を挟んで搬送できる程度であり、かつ、回転しながら搬送される搬送対象物が、一定の回転位置(搬送対象物に設けられた凸部がベルト1に接触してそれ以上の回転を妨げられる位置)に到達すると回転を抑止される程度の大きさである。上記圧力が小さすぎると搬送対象物を搬送できないし、上記圧力が大きすぎると、ベルトと搬送対象物の間の摩擦が大きくなりすぎ、上記一定の回転位置に到達してもベルトと搬送対象物がスリップすることがなくなり、したがって回転が抑止されなくなる。これでは搬送対象物の回転位置の整列を行うことができない。ベルト1及びベルト2が搬送対象物に加える圧力は、上記観点から決定されるべきである。例えば、搬送対象物を搬送するために必要な最小の圧力をp1、上記一定の回転位置に到達したときにベルトと搬送対象物がスリップしなくなる最小の圧力(これより小さければスリップが生じる圧力)をp2とすれば、ベルト1及びベルト2が搬送対象物に加える圧力pは、p1<p<p2のように選択するとよい。
【0063】
(8)ベルト1及びベルト2による搬送距離は、搬送対象物が上記一定の回転位置に到達するまで回転できる程度の長さである(これよりも多少長いほうがよい)。ベルト1とベルト2の移動速度の差は、ベルト1及びベルト2による搬送距離内において、搬送対象物が上記一定の回転位置に到達するまで回転できる程度のものである(差は多少大きいほうがよい)。すなわち、搬送距離とベルト1とベルト2の移動速度の差は、搬送対象物が上記一定の回転位置に到達するまで回転できるという観点から決定されるべきである。例えば、ベルト1及びベルト2による搬送距離をそれに要する時間Tで表し、ベルト1とベルト2の移動速度の差をこれにより搬送対象物に与えられる回転角速度ωで表し、任意の回転位置で入口に到達した搬送対象物が上記一定の回転位置に到達するのに要する最大の回転角度θとしたとき、ωT>θであるように設定すれば、ベルト1及びベルト2による搬送において搬送対象物は必ずθ以上回転するので、全ての搬送対象物は上記一定の回転位置の状態で発明の実施の形態に係る装置から開放され、上記(5)の作用効果を奏する。
【0064】
(9)ベルト3とベルト2の関係も上記と同様である。ベルト3は、最終的な位置決めを行うものであるので、ベルト1よりも短く、ベルト3の始点はベルト1の途中にある。短距離で搬送対象物を大きく回転させてもよいので、その速度差は大きくできる(ベルト1とベルト2による回転角速度ω<ベルト3とベルト2による回転角速度ω’)。ベルト3及びベルト2が搬送対象物に加える圧力は、ベルト1及びベルト2が搬送対象物に加える圧力よりも大きくする。
【0065】
なお、図中に示したベルト4は、なくてもよい。搬送対象物Zは、ベルト1及びベルト3とベルト2で挟まれて搬送されるので、ベルト4を備えなくてもよい。
【0066】
ベルト3は、搬送対象物の位置がどのような状態にあってもその回転位置を整列させることができるものであり、実用上価値の高いものである。ベルト1とベルト2のみで構成した場合も、一定の条件(楔現象が発生しない)のもとで搬送対象物の回転位置を整列させることができる。ベルト1とベルト2のみによる構成も、本発明に含まれる。
【0067】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】発明の実施の形態に係る搬送装置の概略平面図である。
【図2】発明の実施の形態に係る搬送装置の概略断面図である。
【図3】発明の実施の形態に係る搬送装置が搬送する対象物(一例)の斜視図である。
【図4】発明の実施の形態に係る搬送装置の上下方向の配置の詳細説明図である。
【図5】発明の実施の形態に係る搬送装置の動作説明図(概略平面図)である。
【図6】発明の実施の形態に係る搬送装置の動作説明図(楔現象が発生した場合の搬送対象物の回転の様子を示す)である。
【図7】発明の実施の形態に係る搬送装置の動作説明図(楔現象が発生しない場合の搬送対象物の回転の様子を示す)である。
【図8】発明の実施の形態に係る搬送装置の動作説明図(図6の続き)である。
【図9】発明の実施の形態に係る搬送装置の動作説明図(図7の続き)である。
【図10】図10(a)は発明の実施の形態に係る搬送装置において楔現象が発生した状態の説明図、同図(b)は楔現象が発生せずに搬送対象物が回転規制を受けた状態の説明図である。
【図11】発明の実施の形態2に係る高速度のベルトと中速度のベルトの構成を示す概略図である。
【図12】図11の部分拡大図である。
【図13】発明の実施の形態3に係る低速度のベルトと中速度のベルトの構成を示す概略図である。
【図14】図13の部分拡大図である。
【符号の説明】
【0069】
1 低速度の第1ベルト(ベルトA)
11 第1ベルト駆動用プーリー
12 ベルト支持(固定タイプ)
121 ベルトガイドプーリー
122 ベルトサポートブロック(固定)
2 中速度の第2ベルト(ベルトB)
21 第2ベルト駆動用プーリー
22 ベルト支持(固定タイプ)
221 ベルトガイドプーリー
222 ベルトサポートブロック(固定)
3 高速度の第3ベルト(ベルトC)
31 第3ベルト駆動用プーリー
32 ベルト支持(可動タイプ)
321 ベルトガイドプーリー
322 ベルトサポートブロック(可動)
323 ベルトサポートブロック押さえバネ
324 ベルトサポートブロックガイドピン(ベルトサポートブロックガイド)
4 低速度の第4ベルト(ベルトD)
41 第4ベルト駆動用プーリー
T1 突起(ヒンジ部)
T2 突起(ツバ部)
X 上蓋
Y 下蓋
Z 搬送対象物(キャップ、検査対象物)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向して設けられた第1ベルト及び第2ベルトを備え、表面にひとつ又は複数の突起が設けられている略回転体形状の搬送対象物を前記第1ベルトと前記第2ベルトで挟んで搬送するとともに、搬送する際に前記搬送対象物の向きを揃える搬送装置であって、
前記第1ベルトは、前記搬送対象物の前記突起のいずれかに接触する位置に設けられ、
前記第2ベルトは、前記搬送対象物の前記突起のいずれにも接触しない位置に設けられ、
前記第1ベルトの速度と前記第2ベルトの速度が異なり、これにより前記搬送対象物は搬送中に回転され、前記搬送対象物の前記突起のいずれかが前記第1ベルトに接触することで前記搬送対象物は回転規制を受けることを特徴とする画像処理装置用の搬送装置。
【請求項2】
前記第1ベルトは、その内側に、前記第1ベルトを支持する複数のベルトガイドプーリーと、前記ベルトガイドプーリーが取り付けられるベルトサポートブロックとを備え、
前記第2ベルトは、その内側に、前記第2ベルトを支持する複数のベルトガイドプーリーと、前記ベルトガイドプーリーが取り付けられるベルトサポートブロックとを備え、
前記第1ベルトのベルトガイドプーリーと前記第2ベルトのベルトガイドプーリーはそれぞれ正対せず、予め定められたずれ量Wだけずれて向き合うように配置されたことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置用の搬送装置。
【請求項3】
前記第1ベルトに重ねられ、かつ、前記第2ベルトに対向して設けられた第3ベルトをさらに備え、前記第3ベルトは前記第1ベルトよりも短く、その始点は前記第1ベルトの途中に位置し、前記第3ベルトの速度は、前記第1ベルトの速度と前記第2ベルトの速度のいずれよりも大きく、前記搬送対象物は、前記第2ベルト及び前記第3ベルトに挟まれて回転されることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置用の搬送装置。
【請求項4】
前記第1ベルト乃至前記第3ベルトは、断面略V字状の骨部がその内側に設けられていることを特徴とする請求項3記載の画像処理装置用の搬送装置。
【請求項5】
前記第2ベルトは、その内側に、前記第2ベルトを支持する複数のベルトガイドプーリーと、前記ベルトガイドプーリーが取り付けられるベルトサポートブロックとを備え、
前記第3ベルトは、その内側に、前記第3ベルトを支持する複数のベルトガイドプーリーと、前記ベルトガイドプーリーが取り付けられる可動式のベルトサポートブロックと、前記ベルトサポートブロックを保持するひとつ又は複数のベルトサポートブロックガイドと、前記ベルトサポートブロックガイドに取り付けられたベルトサポートブロック押さえバネとを備え、前記ベルトサポートブロック押さえバネにより前記ベルトサポートブロックに圧力を加えることで前記ベルトガイドプーリーを前記第3ベルトの内側に密着させ圧力を加えることを特徴とする請求項3記載の画像処理装置用の搬送装置。
【請求項1】
互いに対向して設けられた第1ベルト及び第2ベルトを備え、表面にひとつ又は複数の突起が設けられている略回転体形状の搬送対象物を前記第1ベルトと前記第2ベルトで挟んで搬送するとともに、搬送する際に前記搬送対象物の向きを揃える搬送装置であって、
前記第1ベルトは、前記搬送対象物の前記突起のいずれかに接触する位置に設けられ、
前記第2ベルトは、前記搬送対象物の前記突起のいずれにも接触しない位置に設けられ、
前記第1ベルトの速度と前記第2ベルトの速度が異なり、これにより前記搬送対象物は搬送中に回転され、前記搬送対象物の前記突起のいずれかが前記第1ベルトに接触することで前記搬送対象物は回転規制を受けることを特徴とする画像処理装置用の搬送装置。
【請求項2】
前記第1ベルトは、その内側に、前記第1ベルトを支持する複数のベルトガイドプーリーと、前記ベルトガイドプーリーが取り付けられるベルトサポートブロックとを備え、
前記第2ベルトは、その内側に、前記第2ベルトを支持する複数のベルトガイドプーリーと、前記ベルトガイドプーリーが取り付けられるベルトサポートブロックとを備え、
前記第1ベルトのベルトガイドプーリーと前記第2ベルトのベルトガイドプーリーはそれぞれ正対せず、予め定められたずれ量Wだけずれて向き合うように配置されたことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置用の搬送装置。
【請求項3】
前記第1ベルトに重ねられ、かつ、前記第2ベルトに対向して設けられた第3ベルトをさらに備え、前記第3ベルトは前記第1ベルトよりも短く、その始点は前記第1ベルトの途中に位置し、前記第3ベルトの速度は、前記第1ベルトの速度と前記第2ベルトの速度のいずれよりも大きく、前記搬送対象物は、前記第2ベルト及び前記第3ベルトに挟まれて回転されることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置用の搬送装置。
【請求項4】
前記第1ベルト乃至前記第3ベルトは、断面略V字状の骨部がその内側に設けられていることを特徴とする請求項3記載の画像処理装置用の搬送装置。
【請求項5】
前記第2ベルトは、その内側に、前記第2ベルトを支持する複数のベルトガイドプーリーと、前記ベルトガイドプーリーが取り付けられるベルトサポートブロックとを備え、
前記第3ベルトは、その内側に、前記第3ベルトを支持する複数のベルトガイドプーリーと、前記ベルトガイドプーリーが取り付けられる可動式のベルトサポートブロックと、前記ベルトサポートブロックを保持するひとつ又は複数のベルトサポートブロックガイドと、前記ベルトサポートブロックガイドに取り付けられたベルトサポートブロック押さえバネとを備え、前記ベルトサポートブロック押さえバネにより前記ベルトサポートブロックに圧力を加えることで前記ベルトガイドプーリーを前記第3ベルトの内側に密着させ圧力を加えることを特徴とする請求項3記載の画像処理装置用の搬送装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−254109(P2007−254109A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−81574(P2006−81574)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(599066148)株式会社 デクシス (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(599066148)株式会社 デクシス (3)
【Fターム(参考)】
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