説明

画像処理装置

【課題】 身長の異なるユーザに対して操作性を損なうことがない画像処理装置を提供する。
【解決手段】 画像処理装置1の本体の前面に異なる高さに複数の操作パネル2を設け
検出手段3が検出したユーザの身長に応じて、特定の操作パネル2のみをユーザが画像処理装置を操作することができる操作可能状態にする。このとき、他の操作パネルは操作不能状態にする。
これにより、ユーザは画像処理装置1の正面に立つだけで、身長に応じて自動的に選択された適切な高さの操作パネル2を操作することができ、ユーザの操作性を向上させることができる。
また、ユーザが上記操作不能状態にした操作パネルを操作した場合に、当該操作パネルを操作可能状態にする構成を採用すれば、ユーザが必要に応じて使用する操作パネルを選択することも可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ及びこれらの複合機等の画像処理装置に関し、特に、身長の低いユーザの操作性を考慮した操作パネルを備えた画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、後掲の特許文献1に、ユーザの身長(高さ)を検知し、この検知結果に基づいて画像処理装置等の機器全体あるいはユーザが操作する部位を昇降させる自動昇降装置が開示されている。この構成により、例えば、身長の異なる多数の人や車椅子使用者等が混在する中で装置が使用されるような状況下で、機器全体あるいは操作部が、検知したユーザの身長に基づいて自動的に昇降され、ユーザの操作性を向上させている。
【特許文献1】特開平9−110399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に開示された構成は、機器全体、あるいは操作部を昇降自在とする機構や、自動的に昇降させるための駆動手段を設ける必要があり、装置の構成が複雑になってしまう。また、昇降中の装置を操作することは、ユーザの安全性を考えた場合は好ましくないため、ユーザは昇降が完了するまで機器を操作できないことになる。
【0004】
また、機器全体を昇降させる駆動手段は、大きな重量を昇降させる必要があり非常に大きな電力を消費することになる。
【0005】
本発明は、上記従来の事情に基づいて提案されたものであって、大電力を消費することなく、簡単な構成で、身長の異なるユーザに対して機器の操作性を向上させることができる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために以下の手段を採用している。すなわち、本発明は、操作パネルを備えた画像処理装置において、異なる高さに設けられた複数の操作パネルと、
ユーザの高さを検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果に基づいて特定の操作パネルのみを操作可能状態にするパネル選択手段とを備えた構成とする。このとき、特定の操作パネル以外の操作パネルは操作不能状態になる。
【0007】
ここで、操作可能状態とは、ユーザがその操作パネルにより画像処理装置の操作が可能な状態であり、操作不能状態とは、ユーザがその操作パネルを操作しても画像処理装置を操作できない状態である。
【0008】
本構成によれば、予め画像処理装置に異なる高さに複数設けた操作パネルから、ユーザの高さに適した操作パネルが選択されて操作可能状態となるため、例えば、身長の低いユーザに対する画像処理装置の操作性を向上させることができる。
【0009】
また、上記構成において、ユーザが操作不能状態の操作パネルを操作したとき、パネル選択手段が当該操作された操作パネルのみを操作可能状態にする構成としてもよい。このようにすれば、例えば、ユーザが自動的に操作可能状態となった特定の操作パネルと異なる操作パネルを使用したいときに、所望の操作パネルを直ちに操作可能とすることができ、利便性を向上させることができる。
【0010】
さらに、各操作パネルを、操作可能状態を示す操作可能位置と操作不能状態を示す操作不能位置とにわたって移動させる移動手段を備える構成とし、前記パネル選択手段の選択結果に基づいて、移動手段が操作不能状態の操作パネルを操作不能位置に移動させてもよい。
【0011】
この構成によれば、ユーザは、操作可能な操作パネルがどれであるかを一見して見分けることが可能となる。ここで、操作不能位置とは、例えば、操作パネルの一部または全体が画像処理装置内に格納された状態や、操作パネルが画像処理装置に対して上方、または、下方に傾倒させた状態である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、予め画像処理装置に異なる高さで設けられた複数の操作パネルの中から、検出手段が検出したユーザの身長に適した操作パネルのみを、パネル選択手段が操作可能状態とするので、ユーザの操作性を向上させることができる。
【0013】
また、上記従来技術のような昇降用の駆動手段が必要ないため、大電力を消費することもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を画像処理装置の1つである複写機を例に、図面に従って詳細に説明する。なお、図1は本発明にかかる画像処理装置の概略斜視図であり、図2は本発明にかかる画像処理装置の要部の機能ブロック図である。また、図3は本発明にかかる画像処理装置で行われる処理のフロー図である。
【0015】
本発明に係る複写機1は、従来の複写機と同じく、スキャナ部が読み込んだ画像データに、必要に応じて画像処理を施した後、用紙上に当該画像データを形成する機構を備えるとともに、複写機1に対して、ユーザが上記画像処理の条件等の指示を入力する操作パネル2を備える。
【0016】
本発明では、図1に示すように、上記操作パネル2が、複写機1の本体の前面に異なる高さで複数設けられる。図1では、2つの操作パネル2a、2bを備え、複写機1の前面に、複写機1の上面とほぼ面一になる高さ(例えば、床面からの高さが100cmの位置)に身長の高い者用として第1の操作パネル2aを設けるとともに、第1の操作パネル2aから30cm程度下方の高さ(例えば、床面からの高さが70cmの位置)に身長が低い者用として第2の操作パネル2bを備えた構成を例示している。また、図1に示すように、両操作パネル2は、略直方体の本体から前面に突出する状態で設けられており、その上面には、一般的な画像処理装置が備える操作パネルと同様、液晶パネルPと幾つかの操作ボタンBを備えている。
【0017】
また、複写機1の前面には、複写機1の正面に人がいるか否かを検出するセンサ3(検出手段)が設けられる。センサ3は、特定の高さに物体があるか否かを検出できる構成であれば特に限定されるものではなく、例えば、光センサ、超音波センサ、赤外線センサ等を用いることができる。本実施の形態では、発光素子と受光素子とが同方向を向いた構造を有し、発光素子から光を検出物に照射して、その反射光を受光素子が受光するか否かにより、物体の有無を検出するようにしている。すなわち、複写機1の正面にいるユーザによって発生した反射光が検出された場合にセンサ3はオンとなり、ユーザがいることを検出できるようになっている。
【0018】
上記センサ3は、図1に示すように、上記第1の操作パネル2aと第2の操作パネル2bにそれそれ対応づけて設けている。すなわち、第1の操作パネル2aに対応する第1のセンサ3aが、操作パネル2aを使用するユーザを検出するために設けられており、第2の操作パネル2bに対応する第2のセンサ3bが、操作パネル2bを使用するユーザを検出するために設けられている。
【0019】
例えば、身長が140cm以上のユーザに操作パネル2aを使用させる場合は、センサ3aは、複写機1を操作するユーザがいると想定した位置の床面から140cmの高さに光が照射できる状態で設置すればよい。図1では、センサ3aを複写機1前面の幅方向中央部の上端付近(操作パネル2aの根元)に設けている。
【0020】
また、センサ3bは、身長が140cmより低いユーザを検出できればよく、図1の例では、複写機1を操作するユーザがいると想定した位置の50cmの高さに光を照射できる状態、すなわち、複写機1前面の幅方向中央部の床面から50cmの高さの位置に設けている。
【0021】
さて、上記構成の複写機1において、センサ3の検出信号は、図2に示すように、マイクロコンピュータ等からなるパネル選択手段4に入力されるようになっている。
【0022】
この状態で複写機1の正面にユーザが立つと、このユーザを検出してセンサ3bがオンとなる。パネル選択手段4は、センサ3bがオンであると認識すると(図3 S1Yes)、センサ3aがオンであるか否かを確認する(図3 S2)。
【0023】
センサ3aがオンである場合(図3 S2Yes)、上述の例では、ユーザの身長が140cm以上であるので、パネル選択手段4は身長の高いユーザ用に設けられた操作パネル2aのみを操作可能状態にする(図3 S3)。ここで、操作可能状態とは複写機1を操作できる状態であり、ユーザは操作パネル2aを操作して複写を実行することができる。
【0024】
すなわち、図2に示すように、パネル選択手段4が、各操作パネル2a、2bの信号の入出力を制御するパネル制御手段5に操作パネル2aを操作可能状態にする指示を入力し、この指示に基づいて、パネル制御手段5が操作パネル2aの液晶パネルの電源をオンにするとともに、操作パネル2aの操作に応じた信号を、複写機構を制御する複写制御手段6に伝達する状態になる。
【0025】
このとき、操作パネル2bは複写機1を操作できない操作不能状態になる。操作不能状態は、単に、操作パネルに電力を供給する電源ラインに設けたスイッチをオフとし、当該操作パネルを動作できない状態にする構成を採用することができる。しかしながら、本実施の形態では、後述の理由により、パネル制御手段5が、パネル選択手段4の指示に基づいて、操作不能状態にする操作パネル2bの液晶パネルの電源をオフにするとともに、操作パネル2bの操作に応じた信号を終端する構成を採用している。
【0026】
したがって、複写制御手段6には、操作可能状態にある操作パネル2aの操作に応じた信号のみが入力されることになる。
【0027】
さて、複写を完了したユーザが複写機1の正面から立ち去ると、センサ3bはオフになる。パネル選択手段4は、センサ3bがオフであると認識すると(図3 S4Yes)、パネル制御手段5に指示を出力し、操作パネル2aを操作不能状態にする(図3 S5)。逆に、センサ3bがオンである限りは、操作パネル2aの操作可能状態が継続される(図3 S4No)。
【0028】
その後、センサ3bがオフである限り、両操作パネル2a、2bの操作不能状態が継続され(図3 S1No)、例えば、複写機1の正面に別のユーザが立つことによりセンサ3bがオンとなった場合に、上述のステップS1以降の動作が繰り返される。なお、複写機1に電源投入した直後の初期状態では、両操作パネル2a、2bはともに動作不能状態にすればよい。
【0029】
一方、パネル選択手段4が、上記センサ3aがオンであるか否かを確認するステップ(図3 S2)において、センサ3aがオフであった場合は(図3 S2No)、身長が140cmより低いユーザを検出している状態であり、パネル選択手段4は、パネル制御手段5を介して、身長の低いユーザ用に設けられた操作パネル2bを操作可能状態にするとともに操作パネル2aを操作不能状態にする(図3 S6)。
【0030】
このように操作パネル2bのみが操作可能状態にある場合も、上述の複写を完了したユーザが複写機1の正面から立ち去り、センサ2bがオフしたときには(図3 S7Yes)、パネル制御手段5は、パネル選択手段4の指示に基づいて操作パネル2bを操作不能状態にする(図3 S8)。
【0031】
なお、本実施の形態では、パネル選択手段4が操作パネル2aまたは操作パネル2bを操作可能状態とした後、例えば、身長が高いと判定されたユーザがかがむ動作をしたり、身長が低いと判定されたユーザの背後を身長の高い者が通過したりする等、見かけ上の身長の変化により、操作可能状態な操作パネル2が切替わることがないように、複写機1の正面にユーザがいるか否かのみをセンサ3bで検出するようにしている。
【0032】
以上説明したように、本発明にかかる複写機1は、複写機1本体の前面に、それぞれ高さが異なる位置に設けられた複数の操作パネル2の中から、センサ3が検出したユーザの身長に適した特定の操作パネル2のみを操作可能状態とする。すなわち、老人、子供、車椅子使用者等の身長の低いユーザには、そのユーザに使いやすい高さの操作パネルが自動的に選択されるため、ユーザの操作性を向上させることができる。このとき、他の操作パネルは操作不能状態になっているので、他の者が他の操作パネルを操作することによる誤操作が生じるおそれもない。
【0033】
また、上記従来技術のような駆動手段が必要ないため、消費電力を著しく増大させることもない。
【0034】
ところで、上記構成では、図3のステップS2において自動的に操作可能状態になった操作パネルとは異なる操作パネルを使用する方が、ユーザにとって操作性がよい状況が発生することが考えられる。例えば、操作パネル2bを操作することが好ましいユーザが複写機1の正面に立っていたときに、そのユーザの背後を身長の高い者が偶然通ったために身長の高いユーザ用の操作パネル2aが選択された場合や、身長の低いユーザが検出され操作パネル2bが選択されたが、実際の操作は操作パネル2aを使用することが好ましい身長の高い付き添いの者が行う場合などである。
【0035】
そこで、本実施の形態では、図3のステップS3として示した操作パネル2aが操作可能状態となっている状況で、図4に示す処理が行われる。
【0036】
すなわち、操作パネル2aが操作可能状態となっている場合に、ユーザが操作不能状態になっている操作パネル2bの任意のボタン、あるいは、特定のボタンが操作すると、このボタン操作の信号を認識したパネル制御手段5は、パネル選択手段4にその旨を通知する(図4 S11Yes)。上述のように、本実施の形態では、操作不能状態の操作パネル2bは、液晶パネルの電源がオフされるだけであり、操作不能状態にある操作パネルの任意のボタン、あるいは、特定のボタンの操作に応じた信号をパネル制御手段5が認識することは可能である。
【0037】
操作パネル2bが操作されたことを認識したパネル選択手段4は、操作パネル2bを操作可能状態にするとともに(図4 S12)、操作パネル2aを操作不能状態にする(図4 S13)。なお、操作不能状態にある操作パネル2bの操作が行われなかった場合には、操作パネル2aの操作可能状態が維持される(図4 S11No)。
【0038】
また、図3のステップS6に示した操作パネル2bが操作可能状態となっている状況では、図5に示すように、ユーザが操作不能状態になっている操作パネル2bの特定のボタン、あるいは、任意のボタンを操作すると(図5 S21Yes)同様の処理が行われる。すなわち、パネル選択手段4が、操作パネル2aを操作可能状態にするとともに(図5 S22)、操作パネル2bを操作不能状態にする(図5 S23)。この場合も、操作パネル2aの操作が行われなかったときには、操作パネル2bの操作可能状態が維持される(図5 S21No)。
【0039】
したがって、ユーザが、自動的に選択された操作パネルと異なる操作パネルを使用したい場合には、所望の操作パネルを操作することで、直ちにその操作パネルを操作可能状態に変更できる。
【0040】
なお、上記説明では、複写機1が2つの操作パネルを備える構成としたが、3以上の操作パネルを備えてもよいことはいうまでもない。また、上記で説明した、操作パネルの構造は、具体例を示したものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。したがって、本発明の効果を奏する範囲において、任意に設計することが可能である。
【0041】
加えて、各操作パネルに、操作可能状態を示す操作可能位置と操作不能状態を示す操作不能位置とにわたって移動させる移動手段を設け、パネル選択手段が操作不能状態とした操作パネルを操作不能位置に移動させる構成を採用することも可能である。
【0042】
ここで、操作不能位置とは、例えば、操作パネルの一部または全部が複写機1の前面から、複写機1の本体内部に格納された状態や、操作パネルが複写機1の前面に対して上方、または、下方に傾倒させた状態である。また、操作可能位置とは、図1に示すような、通常の使用状態の位置である。
【0043】
これにより、ユーザはどの操作パネルが操作可能であるかを、容易に認識することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、身長の低いユーザの操作性を向上させるという効果を有し、複写機、プリンタ、ファクシミリ、及びこれらの複合機等の装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の画像処理装置の概略斜視図。
【図2】本発明の画像処理装置の要部機能ブロック図。
【図3】本発明のフロー図。
【図4】本発明のフロー図。
【図5】本発明のフロー図。
【符号の説明】
【0046】
1 複写機(画像処理装置)
2 操作パネル
3 センサ(検出手段)
4 パネル選択手段
5 パネル制御手段
6 複写制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作パネルを備えた画像処理装置において、
異なる高さに設けられた複数の操作パネルと、
ユーザの高さを検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づいて特定の操作パネルのみを操作可能状態にし、他の操作パネルを操作不能状態にするパネル選択手段と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記操作不能状態の操作パネルが操作されたときに、前記パネル選択手段は操作された操作パネルのみを操作可能状態にする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
さらに、各操作パネルを、操作可能状態を示す操作可能位置と操作不能状態を示す操作不能位置とにわたって移動させる移動手段を備え、
前記移動手段が、前記パネル選択手段の選択結果に基づいて、操作不能状態の操作パネルを操作不能位置に移動させる請求項1または2に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−10866(P2006−10866A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−185361(P2004−185361)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】