説明

画像処理装置

【課題】複数の制御部を備える画像処理装置の構成において利便性を向上させること。
【解決手段】複数のCPU31A,31Bは、互いに異なる複数の動作モードである省電力モードと高速モードにて画像処理を実行可能であって、RAM33の空き領域の大きさに応じて上記したいずれかの動作モードにて機能を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データに対して画像処理をする画像処理装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の制御部を備える画像形成装置がある(特許文献1参照)。この画像形成装置は、印刷部等の各部を制御するメイン制御部と、外部機器とのインターフェイスを制御するサブ制御部とを備え、省電力モード中はメイン制御部を停止しサブ制御部のみ動作させる構成になっている。これにより省電力モードにおける一層の電力消費低減を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−101609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来の画像処理装置では、動作する複数の制御部の動作形態に応じて、有効とされる機能が予め固定されており、利便性が悪く更なる改良が望まれていた。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、複数の制御部を備える構成において利便性を向上させることが可能な画像処理装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明の画像処理装置は、画像データに対する画像処理を伴う機能を実行可能な画像処理装置であって、前記機能を実行させるための実行指示を受け付ける受付部と、前記画像データを書き込み可能な空き領域を有する記憶部と、前記記憶部の空き領域の大きさを検出する検出部と、前記受付部によって受け付けられた実行指示に従って前記画像データを画像処理し、前記記憶部の領域に当該画像データを書き込みした後に画像データに対する機能の実行を制御する複数の制御部と、を備え、前記複数の制御部は、少なくとも一つの制御部の起動状態を切り替えることによって画像処理能力が互いに異なる複数種類の制御形態で前記機能を実行可能であって、前記検出部が検出した空き領域の大きさに応じて前記複数種類の制御形態のうちから1つの制御形態を選択し前記機能の実行を制御する。
【0007】
上記構成を採用すれば、記憶部の空き領域に応じて制御形態を選択することが可能であるので、適切な制御形態にて記憶部の空き領域を使用することが可能となる。従って、複数の制御形態であっても画像データに対する機能実行を行うことが可能であるため、複数の制御部を備える構成にて利便性を向上させることが出来る。
【0008】
さらに、本発明の画像処理装置は、前記制御形態に基づく前記画像データを画像処理する時間と、前記記憶部の空き領域に基づく画像データを書き込む時間と、から、当該画像データを書き込む時間が当該画像データを画像処理時間より短いか否かを判断する時間判断部を備え、前記複数の制御部は、前記時間判断部が肯定判断をする制御形態を選択し前記機能の実行を制御しても良い。
【0009】
画像データを画像処理する時間は制御形態に応じて異なるため、上記構成を採用すれば
、書込み時間に対して画像処理時間が短ければ、機能の実行時間を出来るだけ短くすることが可能である。
【0010】
さらに、本発明の画像処理装置は、前記複数の制御部は、前記時間判断部が肯定判断をする制御形態のうちから最も消費電力の低い制御形態を選択し前記機能の実行を制御しても良い。
【0011】
上記構成を採用すれば、制御形態の中で最も消費電力の低い制御形態で機能が実行されるため、消費電力を抑えて機能を実行可能である。
【0012】
さらに、本発明の画像処理装置は、前記記憶部に書き込まれている画像データの種類が、ユーザによる指示及び設定された実行時間の少なくとも一方を契機に機能を実行する待機データであるか否かを判断するデータ判断部と、前記検出部は、前記記憶部に書き込まれている画像データが待機データであることに応じて、前記空き領域を待機データのデータ量分減少して空き領域の大きさを検出しても良い。
【0013】
記憶部に書き込まれている画像データが待機データである場合、長い時間その待機データが削除されずに記憶部に書き込まれたまま空き領域が変化しないことがあるため、その様な状況に応じて空き領域が減ったと検出する必要がある。従って、上記構成を採用すれば、適切な状況で適切な制御形態が選択される。
【0014】
さらに、本発明の画像処理装置は、前記検出部は、前記記憶部に書き込まれている待機データの実行時間が規定時間以内であることに応じて、前記空き領域を待機データのデータ量分減少せず空き領域の大きさを検出しても良い。
【0015】
上記構成を採用すれば、待機データであっても規定時間後に機能が実行される画像データであれば空き領域を減らす必要性が少ないため、適切に空き領域を検出可能である。
【0016】
さらに、本発明の画像処理装置は、前記複数の制御部は、前記機能を実行していない際に、前記複数種類の制御形態のうちから1つの制御形態を選択しても良い。
【0017】
受付部が実行指示を受け付けている際には、複数の制御部が機能を実行するために記憶部の空き領域が刻々と変化する。従って、上記構成を採用すれば、実行指示を受け付けていなく記憶部の空き領域の変化が少ない期間にて制御形態を適切に選択ことが可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数の制御部を備える構成において利便性を向上させることが可能な画像処理装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、画像形成システムの電気的構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、画像処理及び書込処理のタイムチャートである。
【図3】図3は、実施形態1の動作モード選択処理を示すフローチャートである。
【図4】図4は、実施形態2の動作モード選択処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態1>
本発明の実施形態1について図を参照して説明する。
【0021】
1.画像処理システムの電気的構成
図1は、画像処理システム1の電気的構成を示すブロック図である。画像処理システム1は、端末装置10(例えばパーソナルコンピュータ)とプリンタ30(画像処理装置の一例)とを備える。
【0022】
(1)端末装置
端末装置10は、CPU11、ROM12、RAM13、HDD(ハードディスクドライブ)14、キーボードやポインティングデバイス等を有する操作部15、液晶ディスプレイ等を有する表示部16、通信回線20に接続されるネットワークインターフェイス17等を備えている。HDD14には、OSや、印刷用の画像データを作成可能なアプリケーションソフト、プリンタ30を制御するためのプリンタドライバなどの各種プログラムが記憶されており、CPU11は、ROM12から読み出したプログラムに従って、その処理結果をRAM13に記憶させながら、端末装置10の動作を制御する。
【0023】
(2)プリンタ
プリンタ30は、例えばプリント機能、コピー機能、スキャナ機能など複数の機能を実行可能な複合機であり、第1CPU31A及び第2CPU31B(複数の制御部、検出部、時間判断部、データ判断部の一例)、ROM32、RAM33(記憶部の一例)を備える。
【0024】
ROM32には、プリンタ30の動作を制御するための各種プログラム等が記録されており、各CPU31A,31Bは、ROM32から読み出したプログラムに従って、その処理結果をRAM33に記憶させながら、プリンタ30の動作を制御する。
【0025】
第1CPU31Aは、第2CPU31Bよりも高性能であって且つ消費電力が大きい。具体的には、第1CPU31Aの動作周波数(例えば400[MHz])は、第2CPU31Bの動作周波数(例えば100[MHz])よりも高い。このため、第1CPU31Aは、第2CPU31Bに比べて、高速に処理することが可能である。
【0026】
また、プリンタ30は、更にネットワークインターフェイス21(受付部の一例)、NVRAM(Non−Volatile RAM)34、操作部35(受付部の一例)を備えており、更に、スキャナ部36、ファクシミリ部37、画像処理部38、印刷部39など、各種のデバイスを備えている。
【0027】
ネットワークインターフェイス21は、通信回線20を介して端末装置10等の外部機器に接続されており、相互にデータ通信が可能となっている。操作部35は、複数のボタンを有し、ユーザによって各機能の実行指示などの各種の入力操作が可能である。更に操作部35は、表示部(例えば液晶ディスプレイ)やランプ等を有し、各種の設定画面や動作状態等を表示することが可能である。
【0028】
スキャナ部36は、図示しない原稿の画像を読み取って読取データとしての画像データを生成する。ファクシミリ部37は、図示しない外部のファクシミリ装置との間でファクシミリデータとしての画像データを送受信する。
【0029】
画像処理部38は、スキャナ部36からの読取データやネットワークインターフェイス21で受信した印刷データなど、各種の画像データに対する画像処理(例えば印刷処理可能なデータに変換する処理など)を実行する。画像処理の具体的な例として、端末装置10から受信した印刷データを印刷部39で印刷処理可能なビットマップデータに変換する処理や、スキャナ部36で読み取った読取データをファクシミリ部37で外部のファクシミリ装置に送信可能なファクシミリデータに変換する処理等がある。印刷部39は、例え
ば電子写真方式またはインクジェット方式により、上記画像データに基づく画像をシート(例えば用紙、OHPシート)に印刷する。
【0030】
2.動作モード
2つのCPU31A,31Bは、制御能力が互いに異なる「高速処理モード」、「省電力モード」の2つの動作モードにてプリンタ30を制御し、機能を実行することが出来る。
【0031】
「高速処理モード」は、第1CPU31Aだけが起動状態になっており、第2CPU31Bがスリープ状態になっている動作モードである。「起動状態」とはデバイスを制御可能な状態をいい、「スリープ状態」とは、例えばNVRAM34へのアクセスが不能であり、起動状態のCPUや外部機器10等からの信号(例えば起動割り込み信号)のみ検知可能な状態をいう。
【0032】
「省電力モード」は、第2CPU31Bだけが起動状態になっており、第1CPU31Aはスリープ状態になっている動作モードである。
【0033】
尚、これら2つの動作モードは、それぞれの制御形態において上述した全ての機能を実行可能である。
【0034】
上述した様に、第1CPU31Aは第2CPU31Bに対して、動作周波数が高く且つ消費電力の大きいCPUであるため、「高速処理モード」は「省電力モード」に対して、各処理速度が速く且つ消費電力が大きくなる動作モードである。
【0035】
3.各機能の概要
上記したデバイスは単独又は協働して以下の機能を実行する。
【0036】
「プリント機能」は、ネットワークインターフェイス21が端末装置10から印刷データを受信し、印刷部39が印刷対象画像をシートに印刷する機能である。この機能では、印刷データを受信した後、画像処理部38がその印刷データを印刷部39にて印刷可能なビットマップデータへ変換し(画像処理の一例)、そのビットマップデータをRAM33に記憶する(書き込む)。その後、印刷部39にてRAM33内のビットマップデータを印刷する。
【0037】
「コピー機能」は、操作部35がユーザによるコピー指示を受け付け、スキャナ部36が原稿の読取データを生成し、印刷部39が読取画像をシートに印刷する機能である。この機能では、読取データを生成した後、画像処理部38がその読取データを印刷部39にて印刷可能なビットマップデータへ変換し(画像処理の一例)、そのビットマップデータをRAM33に記憶する(書き込む)。その後、印刷部39にてRAM33内のビットマップデータを印刷する。
【0038】
「スキャン機能」は、操作部35がユーザによるスキャン指示を受け付け、スキャナ部36が原稿の読取データを生成し、RAM33に記憶する。
【0039】
「ファクシミリ送信機能」は、操作部35がユーザによるファクシミリ送信指示を受け付け、例えば上記スキャン機能にて生成した読取データを、ファクシミリ部37が外部のファクシミリ装置にファクシミリデータとして送信する。この機能では、ファクシミリ送信指示を受け付けると、スキャン機能にて生成した読取データを画像処理部38がファクシミリ部37にて送信可能なファクシミリデータへ変換し(画像処理の一例)、そのファクシミリデータをRAM33に記憶する(書き込む)。その後、ファクリミリ部37にて
RAM33内のファクリミリデータを送信する。
【0040】
「ファクシミリ受信機能」は、ファクリミリ部37にて受信したファクリミリデータを、RAM33に記憶する。
【0041】
「ファクリミリ印刷機能」は、操作部35がユーザによるファクシミリ印刷指示を受け付け、印刷部39が上記ファクリミリ受信機能にて受信したファクシミリデータに基づく画像をシートに印刷する。この機能では、ファクシミリ受信機能にて受信しRAM33に記憶されているファクリミリデータを、画像処理部38が印刷部39にて印刷可能なビットマップデータへ変換し(画像処理の一例)、そのビットマップデータをRAM33に記憶する(書き込む)。その後、印刷部39にてRAM33内のビットマップデータを印刷する。
【0042】
尚、スキャン機能の実行後にRAM33に記憶されている読取データは、例えば端末装置10からのスキャンデータ取り込み指示により、画像処理部38が読取データをJPGデータに変換し(画像処理の一例)、そのJPGデータをRAM33に記憶し(書き込む)、端末装置10に送信することも可能である。
【0043】
また、プリント機能やファクシミリ送信機能には予約機能があり、ユーザが指定する実行時刻に印刷又はファクシミリ送信が可能である。この実行時刻は、端末装置10の操作部15やプリンタ30の操作部35等にてユーザによる予約登録指示により指定することが可能である。
【0044】
尚、予約機能で機能が実行される画像データは、操作部15,35による予約登録指示が指示されることで、画像処理部38にて画像処理され、ビットマップデータ又はファクリミリデータとしてRAM33に記憶され、実行時刻になるまで待機する。
【0045】
尚、以上の機能を実行するためにユーザが実行指示をした対象の画像データをジョブと呼称する。さらに、上記した予約機能を実行するジョブを予約ジョブ(待機データの一例)、実行指示した直後に機能を実行するジョブを通常ジョブと呼称する。
【0046】
4.画像処理とRAMの概要
上述したように画像処理部38にて画像処理を実行した後の画像データ(ビットマップデータ、ファクシミリデータ等)は、RAM33に書き込まれる(記憶される)。この時、RAM33の空き領域に基づくデータ量の画像データを記憶することが可能である。例えば、RAM33の空き領域が大きい場合、画像データを多量に記憶可能であり、逆にRAM33の空き領域が小さい場合、画像データを少量しか記憶できない。
【0047】
従って、RAM33の空き領域に応じて、画像データを画像処理する単位データ量が定まっており、空き領域に応じて一つの画像データを分割して画像処理をする。尚、この時RAM33の空き領域全体が単位データ量の値と一致しているわけではない。
【0048】
また、RAM33に画像データを書き込む(記憶する)書込処理における単位データ量辺りの速度はRAM33の性能(スペック)に依存するため、同じRAM33に画像データを書き込む場合、動作モードが変化しても(CPUの動作周波数が変化しても)書込処理時間が変化することはない。
【0049】
さらに、本発明では、RAM33への書込処理時間は、書き込むデータ量の大きさに対する影響よりもRAM33の性能に大きく依存する。従って、単位データ量が変化しても、RAM33への書込処理時間はほとんど変化しない。以上により、動作モードや単位デ
ータ量が変化してもRAM33への書込処理時間は一定であることを前提にして、以下を説明する。
【0050】
一方、画像処理部38による画像処理は、CPUの動作周波数により単位データ辺りの画像処理速度が変化する。従って、本実施形態の様に動作モードに応じて動作周波数が異なると(各CPU31A,31Bに応じて動作周波数が異なると)、画像処理部38を制御する動作モードによって画像処理時間が異なる。具体的には、高速モードによる画像処理時間の方が、省電力モードによる画像処理時間よりも短時間に画像処理可能である。
【0051】
図2に、上述した動作モードに基づく画像処理及び書込処理の関係を示す。図2では横軸を時間軸に取っており、図面上右方向に時間が経過している状態を表している。また、例えば「A−1」などで示されている領域は、「データAという画像データを分割した1つ目のデータ」という意味である。尚、この分割したデータのデータ量が上述した単位データ量のデータ量にて構成されている。
【0052】
また、図2(A)で示される処理においては、データAという画像データを3つのデータに分割して画像処理又は書込処理を実行している。同様に、図2(B)で示される処理においては、同じくデータAという画像データを4つのデータに分割して各処理を実行している。さらに、上述したように高速モードの方が省電力モードよりも短時間で画像処理を実行している。
【0053】
図2に示すように、画像データを処理する際には、単位データ毎に画像処理を連続的に実行し、1つの単位データに対する画像処理が終了したことに応じて、書込処理が実行される。画像処理は連続的に実行されるが、書込処理は単位データに対する画像処理が終了したことに応じて実行されるため、例えば図2(A)における省電力モードによる書込処理の様に、「A−1」から「A−2」及び「A−3」の書込処理が待機することもある。
【0054】
まず図2(A)を参照して、RAM33の空き領域が大きい場合に高速モード及び省電力モードにて画像処理及び書込処理を説明する。この場合、RAM33の空き領域が大きいため画像処理する単位データ量が大きい。従って、データAの画像データを3つに分割して処理する。
【0055】
空き領域が大きい場合に高速モードで画像処理及び書込処理を実行する場合、単位データ量辺り画像処理時間に対して書込処理時間が長い。即ち、書込処理速度に対して画像処理速度が速いため、書込処理が連続的に実行可能である。一方、省電力モードで画像処理及び書込処理を実行する場合、単位データ辺りの画像処理時間に対して書込処理時間が短い。即ち、書込処理速度に対して画像処理速度が遅いため、書込処理が連続的に実行不可能であり各単位データの書込処理を実行するために待機時間が出来てしまう。従って、画像処理及び書込処理を総合した処理時間は高速モードにて実行した方が短い。
【0056】
次に図2(B)を参照してRAM33の空き領域が小さい場合に高速モード及び省電力モードにて画像処理及び書込処理を説明する。この場合、RAM33の空き領域が小さいため画像処理する単位データ量が小さい。従って、データAの画像データを4つに分割して処理する。
【0057】
この例では、空き領域が小さい場合は、どちらの動作モードであっても画像処理時間に対して書込処理時間が長い。即ち、書込処理速度に対して画像処理速度が速いため、書込処理が連続的に実行可能であるため、画像処理及び書込処理を総合した処理時間は、どちらの動作モードであっても同様の時間である。
【0058】
以上のように、RAM33の空き領域に応じて各モードにおける画像処理時間及び書込処理時間の長短の関係が変化するため、動作モードを適切に選択することで、プリンタ30の好適な動作を実現可能である。
【0059】
5.動作モード選択処理
本発明の動作モード選択処理に関して説明する。
【0060】
図3は、プリンタ30の動作モードに基づいて起動状態であるいずれかのCPU31A,31Bが実行する受信処理を示すフローチャートである。例えばプリンタ30が起動後、定期的に当該処理を実行する。
【0061】
動作モード選択処理では、S101で端末装置10から送信された印刷データをネットワークインターフェイス21で受信したか否か、又はユーザにより操作部35から実行指示がなされたことでスキャナ部36にて読み取った読取データ等のジョブを受信したか否か等、ジョブを受信したか否かを判断する。尚、このジョブは通常ジョブであっても予約ジョブであっても良い。ここで受信していないと判断した場合(S101:NO)、当該動作モード選択処理を終了する。
【0062】
一方、受信したと判断した場合(S101:YES)、S102でプリンタ30によってプリント機能やコピー機能等の上記したいずれかの機能が実行されているか否かを判断する。ここで、機能が実行中であると判断した場合(S102:YES)、機能の実行が完了するまでS102の判断を続け、機能が実行中でない又は機能の実行が完了したことを判断した場合(S102:NO)、S103でRAM33の空き領域を算出する。この空き領域の算出により上記した単位データ量が定まるため、以下の処理に用いる画像処理時間も算出可能である。
【0063】
その後、S104で省電力モードにて単位データ量を画像処理する画像処理時間に対してRAM33への書込処理をする書込処理時間の方が長いか否かを判断する。ここで、長いと判断した場合(S104:YES)、S105にて動作モードとして省電力モードを選択し動作モードを切り替える。一方、長いと判断した場合(S104:NO)、S106にて動作モードとして高速モードを選択し動作モードを切り替える。
【0064】
S105又はS106の処理が終了したことにより動作モードが切り替わると、次にS107でS101にて受信したジョブに応じた機能の実行が開始され、当該動作モード選択処理を終了する。
【0065】
以上のように、本実施形態では、ジョブを受信したタイミングでRAM33の空き領域を検出し(S103)、空き領域に基づいた動作モードを選択し当該動作モードに切り替えて(S105又はS106)、受信したジョブに対する機能を実行する(S107)。
【0066】
尚、第1又は第2CPU31A,31Bにて実行される、S103の処理は本発明の検出部に相当し、S104の判断は本発明の時間判断部に相当する。
【0067】
6.本実施形態の効果
本実施形態によれば、RAM33の空き領域の大きさに基づく単位データ量の画像処理時間と、RAM33への書込処理時間と、を比較し動作モードを選択することで、画像処理及び書込処理を総合的に速く処理することが可能であるため、結果的に機能を実行する時間を短くすることが可能である。
【0068】
また、S104にて省電力モードにおける画像処理時間と書込処理時間とを比べている
。これは、前述したように省電力モードによる画像処理時間が、高速モードによる画像処理時間よりも長い時間かかってしまうため、省電力モードにおける画像処理時間よりも書込処理時間の方が長いようであれば、必ず高速モードであっても画像処理時間よりも書込処理時間の方が長い関係となる。
【0069】
その様な事情の上でS104の処理を実行することで、例えば高速モードと省電力モードとのどちらの動作モードであっても、画像処理時間よりも書込処理時間の方が長いようであれば(例えば図2(B)の状態)、省電力モードが優先的に選択される。この時、省電力モードの方が高速モードよりも消費電力が低いため、総合的な処理時間が同等の場合は、より消費電力の低い動作モードでプリンタ30を動作させることが可能である。
【0070】
また、S103にてRAM33の空き領域を算出するタイミングは、S102によって機能の実行がなされていないと判断された後である。従って、RAM33の空き領域が機能の実行によって刻々と変化することの無いタイミングで空き領域を算出することが可能であるので、余り変化の無い状態でRAM33の空き領域を算出することが可能である。
【0071】
<実施形態2>
本発明の実施形態2について図を参照して説明する。尚、前記実施形態1に対して本実施形態2における相違は、動作モードを選択するタイミングである。従って、実施形態1と同一符号を付して重複する説明を省略し、異なるところのみを次に説明する。
【0072】
7.動作モード選択処理
図4は、プリンタ30の動作モードに基づいて起動状態であるいずれかのCPU31A,31Bが実行する受信処理を示すフローチャートである。例えばプリンタ30が起動後、定期的に当該処理を実行する。
【0073】
本実施形態の動作モード選択処理では、前記実施形態1の動作モード選択処理とは異なり、予約ジョブに対してのみこの動作モード選択処理が動作する。即ち、受信したジョブが通常ジョブである場合、動作モード選択処理は動作せず、例えば通常ジョブを受信したら、直ぐに図3のS107と同様に機能の実行が開始される。従って、以下の説明の対象となるジョブは予約ジョブのみである。
【0074】
本実施形態の動作モード選択処理では、S201で端末装置10から送信された予約ジョブをネットワークインターフェイス21で受信したか否か、又はユーザにより操作部35から実行指示がなされたことでスキャナ部36にて読み取った読取データ等の予約ジョブを受信したか否か等、予約ジョブを受信したか否かを判断する。
【0075】
ここで受信したと判断した場合(S201:YES)、S202で現在動作している動作モードにて予約ジョブを画像処理しRAM33に書込処理をする。一方、S201で予約ジョブを受信していないと判断した場合(S201:NO)、S203で予約ジョブの実行タイミングであるか否かを判断する。ここで実行タイミングでないと判断した場合(S203:NO)、当該動作モード選択処理が終了する。しかしなら実行タイミングであると判断した場合(S203:YES)、対象の予約ジョブに対して前記実施形態1の動作モード選択処理における図3のS107と同様に機能の実行を開始する。
【0076】
次にS202又はS107の処理が終了したら、前記実施形態1の動作モード選択処理における図3のS102と同様に機能が実行中であるかを判断して、実行中でない又は機能の実行が完了したことを判断した場合(S102:NO)、S204でRAM33内の予約ジョブが規定時間内に実行されるか否かを判断する。ここで規定時間以内に実行されると判断される場合(S204:YES)、S205で対象の予約ジョブのデータ量分、
仮想的に空き領域を空けて空き領域を大きくする。
【0077】
一方、S204でRAM33内の予約ジョブが規定時間内に実行されないと判断される場合(S204:NO)、又はS205の処理が終了すると、前記実施形態1の動作モード選択処理における図3のS103からS106と同様に機能の実行を開始する。更にS105又はS106にて動作モードの選択及び動作モードの切り替えが終了すると、当該動作モード選択処理が終了する。
【0078】
以上のように動作モード選択処理を処理することで、予約ジョブを受信したことでRAM33に当該予約ジョブを書き込むためRAM33の空き領域が小さくなるタイミング、又は予約ジョブが実行されることでRAM33の空き領域が大きくなるタイミングで、動作モードを切り替えることが可能となる。従って、予約ジョブに関する動作に対して、RAM33の空き領域が大きく変化するタイミングで動作モードを選択し切り替えることが可能である。
【0079】
尚、第1又は第2CPU31A,31Bにて実行される、S103の処理は本発明の検出部に相当し、S104の判断は本発明の時間判断部に相当する。
【0080】
8.本実施形態の効果
本実施形態によれば、RAM33の空き領域の大きさに基づく単位データ量の画像処理時間と、RAM33への書込処理時間と、を比較し動作モードを選択することで、画像処理及び書込処理を総合的に速く処理することが可能であるため、結果的に機能を実行する時間を短くすることが可能である。
【0081】
また、S104にて省電力モードにおける画像処理時間と書込処理時間とを比べている。これは、前述したように省電力モードによる画像処理時間が、高速モードによる画像処理時間よりも長い時間かかってしまうため、省電力モードにおける画像処理時間よりも書込処理時間の方が長いようであれば、必ず高速モードであっても画像処理時間よりも書込処理時間の方が長い関係となる。
【0082】
その様な事情の上でS104の処理を実行することで、例えば高速モードと省電力モードとのどちらの動作モードであっても、画像処理時間よりも書込処理時間の方が長いようであれば、省電力モードが優先的に選択される。この時、省電力モードの方が高速モードよりも消費電力が低いため、総合的な処理時間が同等の場合は、より消費電力の低い動作モードでプリンタ30を動作させることが可能である。
【0083】
また、S103にてRAM33の空き領域を算出するタイミングは、S102によって機能の実行がなされていないと判断された後である。従って、RAM33の空き領域が機能の実行によって刻々と変化することの無いタイミングで空き領域を算出することが可能であるので、余り変化の無い状態でRAM33の空き領域を算出することが可能である。
【0084】
さらに、S204にてRAM33内の予約ジョブが規定時間内に実行される場合、当該予約ジョブは直ぐに機能が実行されRAM33内からジョブが消去される可能性が高い。従って、予め直ぐに機能が実行される予約ジョブを判断しそのデータ量分RAM33の空き容量を空ける事で、前もって適切な動作モードを選択し切り替えることが可能である。
【0085】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0086】
(1)上記実施形態では、複合機であるプリンタ30を例に挙げたが、本発明の「画像処理装置」はこれに限れない。例えばスキャナ機能やファクシミリ機能を有しないプリンタや、ファクシミリ装置単体、画像読取装置単体であってもよい。要するに、画像データに対する機能を実行可能な画像処理装置であればよい。
【0087】
(2)上記実施形態では、プリント機能、コピー機能、スキャン機能、ファクシミリ送信機能などを例に挙げたが、本発明の機能はこれに限られない。例えば画像データをNVRAM34に蓄積する画像蓄積機能、スキャンデータなどから特定画像を抽出する特定画像抽出機能、メール機能や、端末装置10から画像データを受信し、その受信した画像データに基づくファクシミリデータを外部のファクシミリ装置に送信する、PCファックス機能などでもよい。
【0088】
(3)上記実施形態では、2つのCPU31A,31Bを備えるプリンタ30を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られず、3つ以上のCPUを備える画像処理装置でもよい。
【0089】
(4)上記実施形態では、2つの制御形態を異ならせる方法として、それぞれの制御形態で起動状態とするCPU31A,31Bの性能を異ならせたが、本発明はこれに限られない。例えば、起動状態とするCPUの数を異ならせる方法でもよい。複数のCPUが起動状態の場合には、それら複数のCPUが協働してデバイスを制御して機能を実行する。協働の形態としては、例えば複数のCPUが共通のデバイス(例えば画像処理部38)を分担して制御する形態がある。また、一機能を複数のデバイスで実行する場合には、各CPUがそれぞれ個別のデバイス(例えば画像処理部38と印刷部39)を制御する形態がある。また、複数のCPUの性能を異ならせて、各制御形態では互いに異なるCPUを起動状態とする方法でもよい。
【0090】
(5)上記実施形態では、動作モード選択処理にて画像データに対して省電力モードにおける画像処理時間と書込処理時間とを比較しているが(図3及び図4のS104)、単純にRAM33の空き領域の大きさを検知し、規定の空き領域の大きさと比較することで動作モードを選択して切り替えても良い。
【0091】
(6)上記実施形態では、RAM33の空き領域の大きさに応じて単位データ量が定まっているが、単位データ量は予め定められた一定値であっても良い。この場合、RAM33の空き容量がその単位データ量よりも小さくなることで、例外的に単位データ量が空き領域と同等のデータ量となる。
【0092】
(7)上記実施形態では、第1CPU31Aが高性能且つ消費電力が大きく、第2CPU31Bが低性能且つ消費電力が小さいが、本発明はこれに限られない。即ち、第1CPU31Aが高性能且つ消費電力が小さく、第2CPU31Bが低性能且つ消費電力が大きくても良い。尚この場合、動作モード選択処理において優先的に選択されるCPUは、消費電力の小さい第1CPU31となる。
【0093】
(8)上記実施形態2では、RAM33内の予約ジョブが規定時間内に実行されるか否かの判断(図4のS204)を、予約ジョブを受信したタイミング、及び予約ジョブを実行するタイミングに判断しているが、本発明はこれに限られない。即ち、定期的にRAM33内の予約ジョブを検出して、上記判断を実行しても良い。
【符号の説明】
【0094】
1 画像処理システム
10 端末装置
11 CPU
15 操作部
20 通信回線
21 ネットワークインターフェイス
30 プリンタ
31A 第1CPU
31B 第2CPU
33 RAM
35 操作部
36 スキャナ部
37 ファクシミリ部
38 画像処理部
39 印刷部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに対する画像処理を伴う機能を実行可能な画像処理装置であって、
前記機能を実行させるための実行指示を受け付ける受付部と、
前記画像データを書き込み可能な空き領域を有する記憶部と、
前記記憶部の空き領域の大きさを検出する検出部と、
前記受付部によって受け付けられた実行指示に従って前記画像データを画像処理し、前記記憶部の領域に当該画像データを書き込みした後に画像データに対する機能の実行を制御する複数の制御部と、
を備え、
前記複数の制御部は、少なくとも一つの制御部の起動状態を切り替えることによって画像処理能力が互いに異なる複数種類の制御形態で前記機能を実行可能であって、前記検出部が検出した空き領域の大きさに応じて前記複数種類の制御形態のうちから1つの制御形態を選択し前記機能の実行を制御することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記制御形態に基づく前記画像データを画像処理する時間と、前記記憶部の空き領域に基づく画像データを書き込む時間と、から、当該画像データを書き込む時間が当該画像データを画像処理時間より短いか否かを判断する時間判断部を備え、
前記複数の制御部は、前記時間判断部が肯定判断をする制御形態を選択し前記機能の実行を制御することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記複数の制御部は、前記時間判断部が肯定判断をする制御形態のうちから最も消費電力の低い制御形態を選択し前記機能の実行を制御することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記記憶部に書き込まれている画像データの種類が、ユーザによる指示及び設定された実行時間の少なくとも一方を契機に機能を実行する待機データであるか否かを判断するデータ判断部と、
前記検出部は、前記記憶部に書き込まれている画像データが待機データであることに応じて、前記空き領域を待機データのデータ量分減少して空き領域の大きさを検出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記検出部は、前記記憶部に書き込まれている待機データの実行時間が規定時間以内であることに応じて、前記空き領域を待機データのデータ量分減少せず空き領域の大きさを検出することを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記複数の制御部は、前記機能を実行していない際に、前記複数種類の制御形態のうちから1つの制御形態を選択することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−120040(P2011−120040A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276150(P2009−276150)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】