説明

画像処理装置

【課題】文字や絵などの図形が重畳された画像を、文字や絵などが判読可能となるように圧縮する画像処理装置を得る。
【解決手段】画像処理装置100は、文字列描画回路102とエンコード回路103とを備える。文字列描画回路102は、画像処理回路101から観察画像を取得して、観察画像に図形を重畳して重畳画像を作成する。図形は、文字等の様々な形状を含む。文字等は、患者の情報、画像処理パラメータ、内視鏡装置200のエラーメッセージ、施術者の情報、内視鏡装置200のシステム時間、及びストップウォッチ等の、観察に必要な情報や、観察対象に関連する情報を表す。エンコード回路103は、CPU221からの信号に応じて、文字列描画回路102から重畳画像を取得し、重畳画像を圧縮して圧縮画像を作成する。文字列描画回路102が観察画像に重畳する図形の表示形式は、重畳画像を圧縮するフォーマットに応じて決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文字や絵などの図形を画像に重畳することが可能な画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
取得した画像を圧縮して圧縮画像を作成する画像処理装置が知られている。圧縮画像のフォーマットとして、JPEG、JPEG2000、TIFF、及びBMP、あるいはAVI、MPEG、H.264、WMVが用いられる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−255109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
文字などの微細な情報を含む画像を画像処理装置が圧縮する場合がある。文字は、例えば、被写体像の属性や撮影条件などの情報を表す。この場合、圧縮画像に含まれる文字が圧縮によってつぶれてしまい、ユーザが判読できないことがある。ユーザが判読できないと、画像に含まれる被写体の属性等がわからなくなってしまい、圧縮画像を有効に利用することができなくなる。
【0005】
本発明はこれらの問題に鑑みてなされたものであり、文字や絵などの図形が重畳された画像を、文字や絵などが判読可能となるように圧縮する画像処理装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願第1の発明による画像処理装置は、被写体の観察画像を取得する取得部と、観察画像に図形を重畳して重畳画像を作成する重畳処理部と、重畳画像を圧縮して圧縮画像を作成する圧縮処理部とを備え、重畳処理部は、圧縮処理部が行う圧縮の形式に応じて、重畳する図形の表示形式を変更することを特徴とする。
【0007】
重畳処理部は、圧縮処理部が行う圧縮の形式に応じて、重畳する図形と周囲の画像とのコントラストを変更することが好ましい。
【0008】
重畳処理部は、圧縮処理部が行う圧縮の形式に応じて、重畳する図形と周囲の画像との色差を変更してもよい。
【0009】
重畳処理部は、圧縮処理部が行う圧縮の形式に応じて、重畳する図形の周囲の色をその図形とは異なる単色に変更してもよい。
【0010】
重畳処理部は、圧縮処理部が行う圧縮の形式に応じて、重畳する図形を構成する線をその線とは異なる色で縁取ってもよい。
【0011】
重畳処理部は、圧縮処理部が行う圧縮の形式に応じて、重畳する図形の大きさを変更してもよい。
【0012】
図形は文字であって、重畳画像の圧縮率が大きくなるとき、重畳処理部は文字の大きさを大きくしてもよい。
【0013】
重畳処理部は、圧縮処理部が行う圧縮の形式に応じて、重畳する図形を構成する線の太さを変更してもよい。
【0014】
図形は文字であって、重畳画像の圧縮率が大きくなるとき、重畳処理部は文字の大きさを大きくしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、文字や絵などの図形が重畳された画像を、文字や絵などが判読可能となるように圧縮する画像処理装置を得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本願発明による画像処理装置のブロック図である。
【図2】モニタの画面を示した図である。
【図3】モニタの画面を示した図である。
【図4】モニタの画面を示した図である。
【図5】モニタの画面を示した図である。
【図6】画像キャプチャ処理を示したフローチャートである。
【図7】動画記録処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態である画像処理装置100について添付図面を参照して説明する。
【0018】
画像処理装置100は、内視鏡装置200に内蔵される。そこで、図1を用いて内視鏡装置200の概略について説明する。内視鏡装置200は、被験者の体内に挿入される内視鏡スコープ210と、被験者の体外に設けられて画像処理を行う内視鏡プロセッサ220と、内視鏡プロセッサ220に接続される表示装置であるメインモニタ260とを主に備える。
【0019】
内視鏡スコープ210は、被験者の体内に挿入される可撓部の先端に撮像素子211を備える。撮像素子211は観察対象物を撮像して観察画像を出力し、内視鏡プロセッサ220に送信する。メインモニタ260は、画像を表示する画面261を備え、DVI−D規格によって内視鏡プロセッサ220と接続される。画面261は、メインモニタ260が撮像素子211を介して得た観察画像を静止画又は動画として表示する。
【0020】
内視鏡プロセッサ220は、画像処理装置100、内視鏡プロセッサ220の動作を制御するCPU221、画像を記録するハードディスクである画像記録装置222、外部からのデータの入力を制御するデータ入力部223、及び外部へのデータの出力を制御するデータ出力部224とを主に備える。CPU221は、画像処理装置100、画像記録装置222、データ入力部223、及びデータ出力部224と配線により電気的に接続され、画像処理装置100は画像記録装置222と電気的に接続される。
【0021】
画像処理装置100は、内視鏡スコープ210から観察画像を受信して、観察画像に所定の画像処理を施す。所定の画像処理では、観察画像に文字を重畳させたり、観察画像を圧縮したりする。これらの動作の詳細については後述する。
【0022】
CPU221は、画像処理装置100に様々な画像処理を実行させたり、処理された観察画像を画像記録装置222に記憶させたりする。
【0023】
内視鏡プロセッサ220には、内視鏡プロセッサ220の側面に取り付けられるデータ表示デバイスであるサブモニタ226、及びデータ入力デバイスであるキーボード225が接続される。
【0024】
キーボード225はデータ入力部223に接続される。ユーザがキーボード225を用いて文字情報を入力すると、データ入力部223は、文字情報を所定の形式に変換してCPU221に送信する。
【0025】
サブモニタ226はデータ出力部224に接続され、内視鏡プロセッサ220に文字情報を入力するために必要な文字情報や、画像などを表示する。データ出力部224は、サブモニタ226に表示する文字情報や画像などをCPU221から受信して、サブモニタ226に出力する。
【0026】
ユーザはサブモニタ226に表示された情報を見てからキーボード225を操作して、内視鏡装置200に対して動作指示を行う。
【0027】
次に、画像処理装置100の構成について説明する。
【0028】
画像処理装置100は、取得部を成す画像処理回路101と、CPU221に接続される重畳処理部を成す文字列描画回路102と、CPU221に接続される圧縮処理部を成すエンコード回路103とを備える。
【0029】
画像処理回路101は、撮像素子211と電気的に接続され、観察画像を取得し、所定の画像処理を施す。
【0030】
文字列描画回路102は、CPU221からの信号に応じて、画像処理回路101から観察画像を取得して、観察画像に図形を重畳して重畳画像を作成する。ここで、図形は、文字等の様々な形状を含む。文字等は、患者の情報、画像処理パラメータ、内視鏡装置200のエラーメッセージ、施術者の情報、内視鏡装置200のシステム時間、及びストップウォッチ等の、観察に必要な情報や、観察対象に関連する情報を表す。
【0031】
エンコード回路103は、CPU221からの信号に応じて、文字列描画回路102から重畳画像を取得し、重畳画像を圧縮して圧縮画像を作成する。重畳画像を圧縮するフォーマットは、重畳画像が静止画である場合、例えばBitmap、JPEG、JPEG2000、又はTIFFが用いられ、動画である場合、例えばAVI、MPEG、H.254、H.264、MotionJPEG、又はWMVが用いられる。文字列描画回路102が観察画像に重畳する図形の表示形式は、重畳画像を圧縮するフォーマットに応じて決定される。
【0032】
次に、図2から5を用いて重畳画像について説明する。
【0033】
図2は、圧縮されないときの重畳画像を表示した画面261を示す。説明の容易のため、観察画像は灰色のみで示される。
【0034】
重畳画像の左上には、ユーザの名称「ABC」が「USER:ABC」として表示され、右下には画像処理パラメータが「NR Level:5」として表示される。ここでは、エンコード回路103が重畳画像を圧縮しないため、文字列描画回路102はユーザの名称及び画像処理パラメータの表示形式を変更していない。
【0035】
図3は、圧縮されるときの重畳画像を表示した画面261を示す。説明の容易のため、観察画像は灰色のみで示される。
【0036】
重畳される文字は図2と同様であるが、文字と異なる色で塗りつぶされた矩形領域271が文字の外周に設けられる。矩形領域271の色及び輝度は、文字の周囲と文字とのコントラスト及び色差を大きくするような色が選択される。
【0037】
コントラストを大きくするためには、矩形領域271の輝度と文字の輝度との差を大きくする。例えば、文字が白色のときは、矩形領域271は黒色で塗りつぶされる。これにより、周囲の画像と文字とのコントラストが大きくなる。他方、色差を大きくするためには、文字を構成する3つの色成分と矩形領域271を構成する3つの色成分との間において、2つ以上の色成分の差を大きくする。例えば、文字が青色のときは、矩形領域271は黄色で塗りつぶされる。これにより、周囲の画像と文字との色差が大きくなる。
【0038】
図4は、圧縮されるときの重畳画像を表示した画面261を示す。説明の容易のため、観察画像は灰色のみで示される。
【0039】
重畳される文字のフォントは図2と同様であるが、文字の大きさ及び文字を構成する線の太さが図2と異なる。図2よりも文字が大きくされ、文字を構成する線の太さが太くされる。これにより、文字を構成する線が圧縮の影響により潰れてしまう可能性を低減することができる。
【0040】
図5は、圧縮されるときの重畳画像を表示した画面261を示す。説明の容易のため、観察画像は灰色のみで示される。
【0041】
重畳される文字のフォントは図2と同様であるが、文字を構成する線の周囲に縁取りが設けられる。縁取りの色は、文字を構成する線とは異なる色であって、文字とのコントラスト又は色差が大きくなるような色が用いられる。例えば、文字が白色のときは、縁取り273は黒色で縁取られる。これにより、周囲の画像と文字とのコントラスト又は色差が大きくなる。
【0042】
文字の色と周囲の画像の色との間におけるコントラスト又は色差が大きければ、文字及びその周囲の画像における高周波成分が大きくなる。画像圧縮フォーマットは、一般に、高周波成分が大きい部分の圧縮率を低くする。よって、重畳画像を圧縮したとき、文字及びその周囲の画像は圧縮率が低くなって、文字の形状が崩れてしまうことを防止できる。
【0043】
次に、図6を用いて画像キャプチャ処理について説明する。画像キャプチャ処理は、メインモニタ260に動画が表示されているときに、ユーザがキーボード225を操作して、静止画をキャプチャする命令を内視鏡装置200に入力したときに開始される。
【0044】
始めのステップS61では、静止画の圧縮方式に基づいて、観察画像に重畳する文字の大きさを文字列描画回路102が決定する。そして、決定された大きさの文字を観察画像に重畳する。
【0045】
次のステップS62では、エンコード回路103が動画を静止させる。
【0046】
次のステップS63では、エンコード回路103が静止された動画を静止画としてキャプチャして圧縮し、圧縮画像を作成する。そして、圧縮画像を画像記録装置222に送信する。画像記録装置222は静止画を記録する。
【0047】
次のステップS64では、エンコード回路103が動画の静止を解除して、メインモニタ260に再び動画を表示させる。
【0048】
次のステップS65では、文字列描画回路102がフォントの大きさをもとの大きさに戻す。そして処理が終了する。
【0049】
次に、図7を用いて動画記録処理について説明する。画像キャプチャ処理は、メインモニタ260に動画が表示されているときに、ユーザがキーボード225を操作して、動画を記録する命令を内視鏡装置200に入力したときに開始される。
【0050】
始めのステップS71では、動画の圧縮方式に基づいて、観察画像に重畳する文字を変更する。動画圧縮方式としてH.254又はMotionJPEGが用いられるとき、黒色で塗りつぶされた矩形領域271を文字列描画回路102が観察画像に重畳する。動画圧縮方式としてH.264が用いられるとき、文字の大きさを1.5倍にして、さらに黒色で塗りつぶされた矩形領域271を文字列描画回路102が観察画像に重畳する。
【0051】
次のステップS72では、エンコード回路103が動画の記録を開始する。動画は画像記録装置222に記録される。
【0052】
次のステップS73では、動画の記録を停止する命令が内視鏡装置200に入力されたか否かをCPU221が判断する。動画の記録を停止する命令は、ユーザがキーボード225を操作することにより行われる。停止命令が入力されるまで、ステップS73が反復され、停止命令が入力されると、動画の記録を停止する命令をエンコード回路103にCPU221が送信し、処理はステップS74に進む。
【0053】
次のステップS74では、エンコード回路103が動画の記録を停止する。
【0054】
次のステップS75では、文字列描画回路102がフォントの大きさをもとの大きさに戻す。そして処理が終了する。
【0055】
本実施形態によれば、画像に重畳された文字や絵などの図形が判読可能となるように画像を圧縮することができる。
【0056】
なお、図3において、矩形領域271には画像が表示されても良い。このとき、矩形領域及び文字以外の領域は動画を表示し、矩形領域271は静止画を表示する。これにより、動画に含まれる画像の変化によって文字が見づらくなることを防止できる。
【0057】
図4では、文字の大きさ及び文字を構成する線の太さを同時に変更したが、いずれか一方のみを変更しても良い。また、文字の大きさを変更するのでなく、文字のフォントを変更しても良い。フォントは、圧縮しても見えやすいフォントが好適である。
【0058】
また、MPEG4を用いて重畳画像を圧縮すると、一般に赤色が潰れてしまう傾向がある。そのためMPEG4を用いるときは緑又は青で文字を描画してもよい。
【0059】
内視鏡装置200を用いて蛍光観察を行うとき、緑がかった画像を得る。そのため、文字の色を赤色にしても良い。文字の色と周囲の色との色差を大きくできる。同様にして、文字の色と周囲の色とのコントラスト又は色差が大きくなるように、光源の色に応じて文字の色を変更しても良い。
【0060】
画像キャプチャ処理では文字の大きさのみを変更したが、前述のように、文字を構成する線の太さ、文字のフォント等を変更し、あるいは矩形領域271又は文字に縁取りを設けても良い。
【符号の説明】
【0061】
100 画像処理装置
101 画像処理回路
102 文字列描画回路
103 エンコード回路
200 内視鏡装置
210 内視鏡スコープ
211 撮像素子
220 内視鏡プロセッサ
221 CPU
222 画像記録装置
223 データ入力部
224 データ出力部
225 キーボード
226 サブモニタ
260 メインモニタ
261 画面
271 矩形領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の観察画像を取得する取得部と、
前記観察画像に図形を重畳して重畳画像を作成する重畳処理部と、
前記重畳画像を圧縮して圧縮画像を作成する圧縮処理部とを備え、
前記重畳処理部は、前記圧縮処理部が行う圧縮の形式に応じて、重畳する図形の表示形式を変更する画像処理装置。
【請求項2】
前記重畳処理部は、前記圧縮処理部が行う圧縮の形式に応じて、重畳する図形と周囲の画像とのコントラストを変更する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記重畳処理部は、前記圧縮処理部が行う圧縮の形式に応じて、重畳する図形と周囲の画像との色差を変更する請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記重畳処理部は、前記圧縮処理部が行う圧縮の形式に応じて、重畳する図形の周囲の色をその図形とは異なる単色に変更する請求項2又は3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記重畳処理部は、前記圧縮処理部が行う圧縮の形式に応じて、重畳する図形を構成する線をその線とは異なる色で縁取る請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記重畳処理部は、前記圧縮処理部が行う圧縮の形式に応じて、重畳する図形の大きさを変更する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記図形は文字であって、前記重畳画像の圧縮率が大きくなるとき、前記重畳処理部は文字の大きさを大きくする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記重畳処理部は、前記圧縮処理部が行う圧縮の形式に応じて、重畳する図形を構成する線の太さを変更する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記図形は文字であって、前記重畳画像の圧縮率が大きくなるとき、前記重畳処理部は文字の大きさを大きくする請求項8に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−138668(P2012−138668A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288139(P2010−288139)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】