説明

画像処理装置

【課題】低消費電力モードから通常モードへ復帰する際に、ユーザにとってより適切な状態で復帰させることができる画像処理装置を提供する。
【解決手段】起動処理部403は、電力制御部401による低消費電力モードから通常モードへの移行の際に、スナップショット格納部402に格納されたスナップショットを読み出して作業メモリ上に復帰させる。時刻取得部404は、起動処理部403による復帰に対応する起動時刻を取得する。退避処理部405は、通常モードから低消費電力モードへの移行の際に、作業メモリのスナップショットを当該起動時刻と対応づけてスナップショット格納部402に格納する。スナップショット選択部406は、低消費電力モードから通常モードへの移行の際に、当該移行時刻と上記起動時刻とに基づいて、スナップショット格納部402に格納されたスナップショットの中から起動処理部403が読み出すスナップショットを選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常モードと、前記通常モードに比べて消費電力量が少ない低消費電力モードとを含む複数の電力供給モードを切り替え可能な画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オフィス等において、複数の機能を備える複合機(MFP:Multi Function Peripheral)が使用されている。複合機は、LAN(Local Area Network)等のネットワークを通じてパーソナルコンピュータ等の情報処理端末と接続された状況で使用されることが多い。そして、情報処理端末から入力された画像データを用紙上に印刷するプリンタ装置として機能したり、情報処理端末から入力された画像データをファクシミリ送信するファクシミリ装置として機能したり、情報処理端末において使用される画像データを取得する画像読取装置として機能したり、文書画像データを検索可能に蓄積する文書管理装置として機能したりする。
【0003】
また、このような複合機では、環境負荷軽減のため、未使用時等に、複合機の全体に電力を供給する通常モードから、消費電力量を少なくした低消費電力モード(スリープモード)へ、電力供給モードを切り替える機能が広く採用されている。そして、このような機能を有する複合機への適用を目的として、低消費電力モードから通常モードへの復帰に関する種々の技術が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0004】
特許文献1は、ユーザにより登録されたデータをハードディスク記憶手段から読み出して記憶する切替メモリと、低消費電力モードから通常モードへの復帰に伴い、ハードディスク記憶手段へ電力供給が開始されると、切替メモリに登録されたユーザ登録データを表示手段に選択可能に表示するアクセス切替手段とを備える画像形成装置を開示している。この技術では、電力供給の開始からハードディスク記憶手段の動作準備が完了するまでの、ハードディスク記憶手段からデータを読み出すことができない期間内であっても、ユーザ登録データの使用が可能になる。
【0005】
また、特許文献2は、上述のような電力供給モードの切り替えの際に低消費電力モードに移行する直前の画面データを記憶する画面記憶部を備える表示制御装置を開示している。この技術では、低消費電力モードに移行していた時間が所定時間内であるときは、同一ユーザによる連続的な操作であると推定し、画面記憶部の画面データを読み出して表示装置に表示する。また、所定時間内でないときは、同一ユーザによる連続的な操作でないと推定し、初期画面を表示装置に表示する。これにより、電力供給モードの切り替えが頻繁に発生する場合でも、操作の連続性を確保している。
【0006】
さらに、特許文献3は、複合機の全体制御を行う主制御部とLCD(Liquid Crystal Display)パネルの制御を行う操作部制御部を備える複合機において、ブート処理データや復帰時初期画面データを、主制御部の記憶媒体ではなく、操作部制御部の不揮発性記憶媒体に保存する構成を開示している。より具体的には、ブート処理データを不揮発性のNOR型フラッシュメモリに保存するとともに、復帰時初期画面データを不揮発性のNAND型フラッシュメモリに保存し、復帰時にこれらからブート処理データ、復帰時初期画面データを読み出すことで復帰時間の短縮を実現している。また、特許文献3では、復帰時初期画面データを生成する画面生成部を備え、画面生成部が、複合機が低消費電力モードに移行する際に取得された複合機の周辺機器構成やトナー残量等の機器情報を取得して当該機器情報を反映させた復帰時初期画面データを生成するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−204428号公報
【特許文献2】特開2007−086230号公報
【特許文献3】特開2009−135873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、複数の機能を有する複合機等では、ファクシミリ送信、複写、印刷、文書蓄積、データ送信等の各機能を実行する際に、ユーザは、多くの設定項目について所望のパラメータを設定できるようになっている。そのような多項目に対する設定をユーザが容易にできるように、複合機では、各種設定を行うための操作画面を機能ごとに有することが通常になっている。
【0009】
このような複合機に、例えば、特許文献1が開示する技術を適用した場合、低消費電力モードから通常モードへ復帰する際に表示部に表示される操作画面は、ユーザが予め指定したデータになる。すなわち、当該指定に変更がなされない限り、復帰時には、同一の操作画面が表示部に表示されることになる。この場合、通常モードに復帰した複合機が有するいずれかの機能を使用しようとするユーザにとって、表示された操作画面が適切な操作画面であるか否かは不明である。
【0010】
また、特許文献2が開示する技術を適用した場合、通常モードへの復帰時に表示部に表示される操作画面は、同一ユーザによる連続的な操作であると推定されるときは、当該ユーザが操作していた画面になるが、同一ユーザによる連続的な操作でないと推定されるときは、初期画面が表示される。すなわち、異なるユーザによる使用と推定される状況下では、復帰時に、単一の操作画面が表示部に表示されることになる。この場合も、通常モードに復帰した複合機が有するいずれかの機能を使用しようとするユーザにとって、表示された操作画面が適切な操作画面であるか否かは不明である。
【0011】
さらに、特許文献3が開示する技術を適用した場合、復帰時に表示部に表示される操作画面は、低消費電力モード移行時の機器情報を反映した復帰時初期画面データである。この構成では、低消費電力モードに移行する際の機器情報が、復帰時に表示部に表示されることになる。この場合、機器情報が表示されることはユーザによって利点であるが、通常モードに復帰した複合機が有するいずれかの機能を使用しようとするユーザにとって、表示された操作画面が適切な操作画面であるか否かは不明である。
【0012】
すなわち、上記特許文献1〜3が開示する技術では、低消費電力モードから通常モードへ復帰した複合機の状態が、ユーザにとって適切な状態であるか否かが何ら考慮されることなく復帰されている。
【0013】
本発明は、このような従来技術の課題を鑑みてなされたものであり、低消費電力モードから通常モードへ復帰する際に、通常モードに復帰した複合機が有するいずれかの機能を使用しようとするユーザにとって、より適切な状態で復帰させることができる、画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の目的を達成するために、本発明に係る画像処理装置は以下の技術的手段を採用している。すなわち、本発明は、複数の機能を実行可能であり、各機能に応じた操作画面を有する画像処理装置であって、電力制御部、作業メモリ、スナップショット格納部、起動処理部、時刻取得部、退避処理部およびスナップショット選択部を備える。複数の機能とは、例えば、複写等の画像形成、画像読取、ファクシミリ送信、ネットワーク送信等を含む。電力制御部は、通常モードと、当該通常モードに比べて消費電力量が少ない低消費電力モードとを含む複数の電力供給モードを切り替える。作業メモリには、通常モードにおいて、画像処理装置の機能を実現するためのデータが展開される。スナップショット格納部は、不揮発性記憶媒体からなり、作業メモリに格納されたデータのイメージデータであるスナップショットを格納する。起動処理部は、電力制御部により低消費電力モードから通常モードに移行される際に、スナップショット格納部に格納されたスナップショットを読み出し、当該スナップショットを作業メモリ上に復帰させる。時刻取得部は、起動処理部による復帰に対応する起動時刻を取得する。退避処理部は、電力制御部により通常モードから低消費電力モードに移行される際に、作業メモリのスナップショットを、時刻取得部が取得した起動時刻と対応づけてスナップショット格納部に格納する。そして、スナップショット選択部は、電力制御部により低消費電力モードから通常モードに移行される際に、当該移行の時刻と上記起動時刻とに基づいて、スナップショット格納部に格納されたスナップショットの中から起動処理部が読み出すスナップショットを選択する。
【0015】
この画像処理装置によれば、低消費電力モードから通常モードに移行する際に、その移行時刻に応じた状態で復帰させることができる。例えば、オフィス等で使用される複合機等では、時間帯によって、使用される機能に偏りが発生する。これは、オフィス等では、ユーザが実施する業務に、日常的に実施される業務が存在し、このような日常的業務は、毎日、特定の時間帯に実施される傾向にあることに起因する。上記構成を有する画像形成装置によれば、低消費電力モードから通常モードに移行する際に、その時間帯に復帰された画像処理装置が、その後、低消費電力モードに移行した際の状態で、通常モードに復帰されることになる。例えば、過去の対応する時間帯に、画像処理装置が低消費電力モードから通常モードに復帰され、ファクシミリ機能が使用されて、そのまま低消費電力モードに移行していた場合、画像処理装置の表示部には、ファクシミリ機能の操作画面が表示される。したがって、上記構成を採用することで、低消費電力モードから通常モードへ復帰する際に、画像処理装置を使用しようとするユーザにとって、従来技術に比べてより適切な状態で復帰させることが可能になる。また、スナップショットを作業メモリ上に復帰させる構成であるため、オペレーティングシステムやアプリケーションソフトを順次起動する構成に比べて、短時間で画像形成装置を操作可能な状態に復帰できることになる。
【0016】
上記画像処理装置が上記複数の機能を実現するための複数のユニットを含む場合、優先起動部および機能選択部をさらに備える構成を採用することができる。ここで、優先起動部は、低消費電力モードから通常モードに移行される際に、優先指定された機能を実現する画像処理装置のユニットを優先的に実行可能状態にする。また、機能選択部は、通常モードから低消費電力モードに移行される際に、優先起動する機能を選択する。この構成では、通常モードから低消費電力モードに移行される際に、退避処理部が、スナップショットを、機能選択部が選択した機能と対応づけてスナップショット格納部に格納する。そして、低消費電力モードから通常モードに移行される際に、スナップショット選択部が、選択したスナップショットに対応づけられた機能を優先起動させる機能として優先起動部に指定する。なお、ユニットとは、互いに独立して電力が供給されるように構成された、画像処理装置の構成要素を意味し、1つの機能が1のユニットまたは複数のユニットの組み合わせにより実現される。
【0017】
この構成によれば、特定の時間帯に、日常業務等で使用される可能性の高い画像処理装置の機能を、優先して起動させることが可能になる。その結果、画像処理装置の使用をより速やかに開始することができる。また、当該構成において、低消費電力モードから通常モードに移行された後に、画像処理装置に対してなされた操作の履歴を保持する履歴保持部をさらに備える構成を採用することもできる。この構成では、機能選択部は、退避処理部がスナップショットの格納を開始する時点で履歴保持部に保持された操作履歴に基づいて、優先起動させる機能を選択する。この構成では、例えば、低消費電力モードから通常モードに移行後、ある機能が使用され、その後、他の操作がなされた場合でも、通常モードに移行後に最初に使用された機能を優先起動する機能として指定することができる。これらの構成では、優先起動部が、優先指定された機能に対応する操作画面を、ユーザによる画像処理装置への指示の入力に使用される表示部に表示させることが好ましい。これにより、復帰されたスナップショットに基づいて表示部に表示される操作画面に対応する機能と、優先起動する機能とが相違する場合でも、通常モードへの復帰時に、優先起動する機能に対応する操作画面を表示部に表示することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低消費電力モードから通常モードへ復帰する際に、通常モードに復帰した画像処理装置が有するいずれかの機能を使用しようとするユーザにとって、従来に比べてより適切な状態で画像処理装置を復帰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態における複合機の全体構成を示す概略構成図
【図2】本発明の一実施形態における複合機の操作パネルを示す模式図
【図3】本発明の一実施形態における複合機のハードウェア構成を示す図
【図4】本発明の一実施形態における複合機を示す機能ブロック図
【図5】本発明の一実施形態における複合機が実施する低消費電力モード切替手順の一例を示すフロー図
【図6】本発明の一実施形態における複合機が実施する優先機能選択手順の一例を示すフロー図
【図7】本発明の一実施形態における複合機が実施する通常モード復帰手順の一例を示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながらより詳細に説明する。以下では、デジタル複合機として本発明を具体化する。本実施形態のデジタル複合機は、画像読取機能、画像形成機能(複写機能およびプリンタ機能)、ファクシミリ送受信機能、ネットワーク送受信機能を含む複数の機能を実行可能に構成されている。また、このデジタル複合機は、複合機の全体に電力を供給する通常モードと、複合機の一部のみに電力を供給することにより消費電力量を少なくした低消費電力モード(スリープモード)とを含む複数の電力供給モードを切り替え可能に構成されている。
【0021】
図1は本実施形態におけるデジタル複合機の全体構成の一例を示す概略構成図である。図1に示すように、複合機100は、画像読取部120および画像形成部140を含む本体101と、本体101の上方に取り付けられたプラテンカバー102とを備える。本体101の上面には原稿台103が設けられており、原稿台103はプラテンカバー102によって開閉されるようになっている。また、プラテンカバー102は、原稿搬送装置110を備えている。
【0022】
原稿台103の下方には、画像読取部120が設けられている。画像読取部120は、走査光学系121により原稿の画像を読み取りその画像のデジタルデータ(画像データ)を生成する。原稿は、原稿台103や原稿搬送装置110に載置することができる。走査光学系121は、第1キャリッジ122や第2キャリッジ123、集光レンズ124を備える。第1キャリッジ122には線状の光源131およびミラー132が設けられ、第2キャリッジ123にはミラー133および134が設けられている。光源131は原稿を照明する。ミラー132、133、134は、原稿からの反射光を集光レンズ124に導き、集光レンズ124はその光像をラインイメージセンサ125の受光面に結像する。この走査光学系121において、第1キャリッジ122および第2キャリッジ123は、副走査方向135に往復動可能に設けられている。第1キャリッジ122および第2キャリッジ123を副走査方向135に移動することによって、原稿台103に載置された原稿の画像をイメージセンサ125で読み取ることができる。
【0023】
原稿搬送装置110にセットされた原稿の画像を読み取る場合、画像読取部120は、第1キャリッジ122および第2キャリッジ123を画像読取位置に合わせて一時的に固定し、画像読取位置を通過する原稿の画像をイメージセンサ125で読み取る。イメージセンサ125は、受光面に入射した光像から、例えば、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の各色に対応する原稿の画像データを生成する。
【0024】
生成された画像データは、画像形成部140において用紙に印刷することができる。また、ネットワークアダプタ161によりネットワーク162を通じて他の機器へ送信することもできる。さらには、FAXアダプタ163により公衆通信回線164を通じてファクシミリ送信することもできる。
【0025】
画像形成部140は、画像読取部120で得た画像データや、ネットワーク162に接続された他の機器(図示せず)からネットワークアダプタ161が受信した画像データや、公衆通信回線164を通じてFAXアダプタ163が受信した画像データを用紙に印刷する。
【0026】
画像形成部140は、感光体ドラム141を備える。感光体ドラム141は一定速度で一方向に回転する。感光体ドラム141の周囲には、回転方向の上流側から順に、帯電器142、露光器143、現像器144、中間転写ベルト145が配置されている。帯電器142は、感光体ドラム141表面を一様に帯電させる。露光器143は、一様に帯電した感光体ドラム141の表面に、画像データに応じて光を照射し、感光体ドラム141上に静電潜像を形成する。現像器144は、その静電潜像にトナーを付着させ、感光体ドラム141上にトナー像を形成する。中間転写ベルト145は、感光体ドラム141上のトナー像を用紙に転写する。画像データがカラー画像である場合、中間転写ベルト145は、各色のトナー像を同一の用紙に転写する。なお、RGB形式のカラー画像は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)形式の画像データに変換され、各色の画像データが露光器143に入力される。
【0027】
画像形成部140は、手差しトレイ151、給紙カセット152、153、154等から、中間転写ベルト145と転写ローラ146との間の転写部に用紙を給送する。手差しトレイ151や各給紙カセット152、153、154には、様々なサイズの用紙を載置または収容することができる。画像形成部140は、ユーザの指定した用紙や、自動検知した原稿のサイズに応じた用紙を選択し、選択した用紙を給送ローラ155により手差しトレイ151やカセット152、153、154から引き出す。引き出した用紙は搬送ローラ156やレジストローラ157で転写部に送り込む。トナー像を転写した用紙は、搬送ベルト147により定着器148に搬送される。定着器148は、ヒータを内蔵した定着ローラ158および加圧ローラ159を有しており、熱と押圧力によってトナー像を用紙に定着する。画像形成部140は、定着器148を通過した用紙を排紙トレイ149へ排紙する。
【0028】
図2は複合機が備える操作パネルの外観の一例を示す図である。ユーザは、操作パネル200を用いて、複合機100に複写開始やその他の指示を与えたり、複合機100の状態や設定を確認したりすることができる。操作パネル200には、タッチパネル付きディスプレイ201や操作キー203が配置されている。ディスプレイ201は、操作ボタンやメッセージ等を表示する液晶ディスプレイ等からなる表示面と、当該表示面上の押圧位置を検出するセンサとを備える。押圧位置の検知方法は特に限定されない。抵抗膜方式、静電容量方式、表面弾性波方式、電磁波方式等、任意の方式を採用することができる。ユーザは、自身の指やタッチペン202を使用して、ディスプレイ201を通じて入力を行うことができる。
【0029】
ディスプレイ201は、ボタン表示部204、メッセージ表示部205およびステータス表示部206を有する操作画面を表示する。ボタン表示部204には、複数のタブ208が用意されており、各タブにはそのタブのカテゴリーに応じた操作ボタンが配列されている。「簡単設定」タブは、基本的な設定に使用される操作ボタンを有する。図2の例では、用紙サイズ、複写倍率、濃度、印刷面、ページ集約、後処理を設定するための操作ボタンが配列されている。例えば「濃度」ボタン207を押圧する操作をユーザが行うと、濃度を選択するための「薄い」、「ふつう」、「濃い」等の選択ボタンを有するポップアップ画面がその操作ボタン上に重ねて表示され、ユーザの選択(押圧)によりその濃度が設定される。図2の例では、「簡単設定」タブの他、「原稿/用紙/仕上げ」タブ、「カラー/画質」タブ、「レイアウト/編集」タブ、「応用/その他」タブも設けられている。ユーザは、タブボタン208を選択する操作を行うことによって、これらのタブの表示に切り替えることができる。一つのタブが選択されている間、操作画面上で他のタブやその要素は隠れている。
【0030】
メッセージ表示部205には、複写が可能か否か、複写部数などの設定をユーザに通知するメッセージが表示される。また、ステータス表示部206には、必要に応じて装置ステータス情報が表示される。この表示には、複合機100が備える各種センサの検知結果が反映される。装置ステータス情報とは、装置は動作可能な状態にあるが、異常への対応を促す警告をユーザに通知するメッセージを意味する。例えば、用紙残量が少ない旨、原稿台103が汚れている旨、ファクシミリのメモリ受信が設定されている場合にファックス文書がメモリに格納された旨等が含まれる。また、用紙切れや搬送ジャム等が装置ステータス情報に含まれてもよい。
【0031】
操作キー203は、電源キー209、テンキー210やスタートキー211、クリアキー212等を含む。例えば、電源キー209は、複合機100のON、OFFの切り替えに使用される。なお、ここでは、電源ONが上記通常モードに対応し、電源OFFが低消費電力モードに対応する。テンキー210は、複写部数の指定や複写倍率の設定に用いることができる。ユーザがそれらの設定をすると、複合機100は、メッセージ表示部205に、例えば、「コピーできます(設定あり)」のようなメッセージを表示し、ユーザによる設定が行われたことを通知する。スタートキー211は、複写や画像印刷の開始指示に使用される。ユーザは、自身でした設定を解除する場合、クリアキー212を操作する。ユーザによる設定を機械が受け付けているかどうかは上述のメッセージで判断することができるので、その設定が不要になればクリアキー212を操作すればよい。
【0032】
なお、図2では、複合機100の機能として、「Copy」(画像読取部120における画像データの生成および画像形成部140における画像データの印刷)が、操作キー203により選択された場合にディスプレイ201に表示される操作画面を例示している。「Send」(ネットワークアダプタ161を通じた画像データの送信およびFAXアダプタ163を通じた画像データの送信)や「Document Box」(画像読取部120における画像データの生成)等の他の機能が選択された場合には、選択された機能に応じた操作画面がディスプレイ201に表示される。
【0033】
図3は、複合機における制御系のハードウェア構成図である。本実施形態の複合機100は、CPU(Central Processing Unit)301、RAM(Random Access Memory)302、ROM(Read Only Memory)303、HDD(Hard Disk Drive)304および原稿搬送装置110、画像読取部120、画像形成部140における各駆動部に対応するドライバ305が内部バス306を介して接続されている。ROM303やHDD304等はプログラムを格納しており、CPU301はその制御プログラムの指令にしたがって複合機100を制御する。例えば、CPU301はRAM302を作業領域として利用し、ドライバ305とデータや命令を授受することにより上記各駆動部の動作を制御する。また、HDD304は、画像読取部120により得られた画像データ、他の機器からネットワークアダプタ161を通じて受信した画像データ、FAXアダプタ163を通じて受信した画像データの蓄積にも用いられる。なお、本実施形態では、RAM302が、複合機100の各機能を実現するためのデータが展開される作業メモリとして機能し、HDD304がRAM302に格納されたデータのイメージデータ(RAMイメージ)であるスナップショットを格納するスナップショット格納部として機能する。
【0034】
内部バス306には、操作パネル200や各種のセンサ307も接続されている。操作パネル200は、ユーザの操作を受け付け、その操作に基づく信号をCPU301に供給する。また、ディスプレイ201は、CPU301からの制御信号にしたがって上述の操作画面を表示する。センサ307は、プラテンカバー102の開閉検知センサや原稿台103上の原稿検知センサ、定着器148の温度センサ、搬送される用紙または原稿の検知センサなど各種のセンサを含む。CPU301は、例えばROM303に格納されたプログラムを実行することで、以下の各手段(機能ブロック)を実現するとともに、これらセンサからの信号に応じて各手段の動作を制御する。
【0035】
図4は、本実施形態の複合機の機能ブロック図である。図4に示すように、本実施形態の複合機100は、電力制御部401、スナップショット格納部402、起動処理部403、時刻取得部404、退避処理部405、スナップショット選択部406を備える。また、表示制御部411、操作認識部412、動作制御部413、計時部414を備える。
【0036】
表示制御部411は、上述の操作画面をディスプレイ201の表示面に表示する。表示制御部411は、操作画面に含まれる、操作ボタンやメッセージ等の各要素の表示位置を示す情報(例えば、表示面上の座標)を保持している。ディスプレイ201の表示面に対してなされた操作は、ディスプレイ201の押圧位置を検出するセンサにより検出され、その押圧位置の座標が操作認識部412に取得される。操作認識部412は、表示制御部411が保持する画面要素の座標と押下位置とに基づいてユーザの操作内容を認識する。また、操作認識部412は、操作パネル200の操作キー203の押下も認識する。
【0037】
動作制御部413は、例えば、操作認識部412が認識した指示に基づいて、画像読取部120における画像データの生成、画像形成部140における画像データの印刷、ネットワークアダプタ161を通じた画像データの送受信、FAXアダプタ163を通じた画像データの送受信等を実行する。なお、複合機100では、画像読取部120、画像形成部140、ネットワークアダプタ161、FAXアダプタ163にはそれぞれ独立して電力供給が可能なユニットとして構成されており、動作制御部413の指示に応じて、互いに独立して、電力が供給される動作状態と電力供給が停止された停止状態とが切り替えられるユニットとして構成されている。また、計時部414は、時刻を計時し、その時刻情報を出力するタイマーで構成される。計時部414は、少なくとも、1日(24時間)の中のどの時刻かが計時できればよいが、本実施形態では、年、月、日、時、分、秒を計時可能な構成になっている。
【0038】
また、電力制御部401は、複合機100の全体に電力を供給する通常モードと、複合機100の一部のみに電力を供給することにより消費電力量を少なくした低消費電力モードとを含む複数の電力供給モードを切り替える。通常モードから低消費電力モードへの移行、および低消費電力モードから通常モードへの移行は、予め登録されている条件を満足する場合に実行される。例えば、通常モードから低消費電力モードへの移行の条件として、複合機100への指示が入力されない状態が予め指定された一定時間継続すること、を採用することができる。このような時間経過は、計時部414が出力する時刻情報に基づいて認識することができる。また、低消費電力モードから通常モードへの移行の条件として、複合機100への指示が入力されたこと、を採用することができる。ここで、複合機100への指示は、ユーザによる操作パネル200を介した指示(例えば、電源キー209の押下)を意味する。ネットワークアダプタ161を介した画像データの受信やFAXアダプタ163を介した画像データの受信によっても、複合機100はデータ受信のために低消費電力モードから離脱する必要があるが、このような場合は、ユーザが操作画面を通じて複合機100に何らかの指示を与える必要はない。すなわち、ディスプレイ201に操作画面を表示する必要がなく、画像データの受信に必要な構成要素のみに電力を供給すればよい。したがって、本実施形態では、複合機100の全体に電力を供給する通常モードへは移行せず、ネットワークデータ受信モードやFAXデータ受信モード等の専用の電力供給モードに移行する構成を採用している。
【0039】
なお、低消費電力モードでは、複合機100の一部のみに電力を供給することで、低消費電力モードから他の電力供給モードへの移行条件を満たすか否かを検知することができる状態に、複合機100は維持される。例えば、上記復帰条件を満たすか否かの検知に無関係なセンサ(例えば、プラテンカバー開閉検知センサや原稿検知センサ等)、RAM302、HDD304、各ユニット(画像読取部120、画像形成部140、ネットワークアダプタ161、FAXアダプタ163)等への電力供給が停止される。また、CPU301に対しても、上記検知に必要な最小限の電力のみが供給される。なお、計時部414は、低消費電力モードにおいても計時を継続することが好ましい。しかしながら、例えば、ネットワークアダプタ161を通じたインターネット時刻の受信や、標準周波数報時電波の受信等により、通常モードに復帰時に装置外部から正確な時刻を取得可能であれば、計時部414への電力供給を停止してもよい。
【0040】
スナップショット格納部402は、不揮発性記憶媒体であれば任意の媒体を使用可能であるが、本実施形態では上述のようにHDD304によって構成されている。スナップショット格納部402は、複合機100が通常モードにあるときに、複合機100の各種機能を実現するためのデータが展開される作業メモリであるRAM302のスナップショットを格納する。上述のように、スナップショットは、RAM302に格納されているデータのイメージデータ(RAMイメージ)である。
【0041】
起動処理部403は、電力制御部401により低消費電力モードから通常モードに移行される際に、スナップショット格納部402に格納されたスナップショットを読み出してRAM302上に復帰させる。このとき、時刻取得部404は、計時部414から時刻情報を取得し、当該時刻情報を起動処理部403による復帰に対応する時刻(以下、起動時刻という。)として保持する。また、本実施形態では、後述のように、複数のスナップショットが格納される構成であるため、スナップショット格納部402から読み出されるスナップショットは、スナップショット選択部406により選択される構成になっている。
【0042】
退避処理部405は、電力制御部401により通常モードから低消費電力モードに移行される際に、RAM302のスナップショットをスナップショット格納部402に格納する。このとき、退避処理部405は、時刻取得部404から、当該低消費電力モードへの移行の直前になされた、低消費電力モードから通常モードへの移行に対応する起動時刻を取得する。そして、取得した起動時刻と対応づけてスナップショットを格納する。スナップショットと起動時刻とは紐付けされていればよく、起動時刻の保存場所は特に限定されない。本実施形態では、起動時刻はスナップショットとともにスナップショット格納部402に格納される構成になっている。
【0043】
なお、スナップショット選択部406は、電力制御部401により低消費電力モードから通常モードに移行される際に、当該移行の時刻と上記起動時刻とに基づいて、スナップショット格納部402に格納されたスナップショットの中から起動処理部403が読み出すスナップショットを選択する。
【0044】
また、本実施形態の複合機100は、優先起動部407、機能選択部408および履歴保持部409をさらに備える。優先起動部407は、電力制御部401により低消費電力モードから通常モードに移行される際に、複合機100の各種機能を実現するユニット(ここでは、画像読取部120、画像形成部140、ネットワークアダプタ161、FAXアダプタ163)のうち、優先指定された機能を実現するユニットを優先的に実行可能状態にする。また、機能選択部408は、電力制御部401により通常モードから低消費電力モードに移行される際に、優先起動する機能を選択する。特に限定されないが、本実施形態では、機能選択部408は、履歴保持部409に保持された、操作履歴に基づいて優先起動させる機能を選択する。なお、履歴保持部409は、電力制御部401により低消費電力モードから通常モードに移行された後に、複合機100に対してなされた操作の履歴を保持している。
【0045】
機能選択部408が選択した優先機能を示す情報は、電力制御部401による通常モードから低消費電力モードへの移行の際に、退避処理部405がスナップショット格納部402に格納するスナップショットと対応づけられる。スナップショットと優先機能を示す情報とは紐付けされていればよく、優先機能を示す情報の保存場所は特に限定されない。本実施形態では、優先機能を示す情報はスナップショットとともにスナップショット格納部402に格納される構成になっている。
【0046】
スナップショット選択部406は、電力制御部401による低消費電力モードから通常モードへの移行の際に、上述のようにして自身が選択したスナップショットに対応づけられた機能を優先起動させる機能として優先起動部408に指定する。
【0047】
図5は、上述した複合機100が実施する通常モードから低消費電力モード切替手順の一例を示す図である。当該手順は、例えば、複合機100が通常モードになったことをトリガとして開始する。なお、複合機100が通常モードになる場合は、電力制御部410による電力供給モードの移行のほか、複合機100の主電源をOFF状態からON状態に切り替えたとき(外部から複合機100への電力供給を開始したとき)等がある。
【0048】
当該手順が開始すると、まず、電力制御部401は、上述した低消費電力モードへの移行条件を満足するまで待機する(ステップS501No)。低消費電力モードへの移行条件を満足するまでの間に複合機100に対して操作がなされた場合、操作認識部412は、当該操作を履歴保持部409に記録する。特に限定されないが、本実施形態では、複合機100に対してなされた操作として、操作パネル200を通じた操作を履歴保持部409に記録する構成になっている。
【0049】
電力制御部401は、低消費電力モードへの移行条件が満たされたことを検知すると、退避処理部405に対して、退避処理の実行を指示する(ステップS501Yes)。当該指示を受けた退避処理部405は、時刻取得部404から上述した起動時刻を取得する。また、機能選択部408から優先機能を示す情報を取得する(ステップS502)。なお、機能選択部408による優先機能の選択手順については後述する。
【0050】
起動時刻および優先機能を示す情報を取得した退避処理部405は、作業メモリであるRAM302のスナップショットをスナップショット格納部402へ格納する(ステップS503)。退避処理部405はスナップショットの格納が完了するまで格納処理を継続し(ステップS504No)、スナップショットの格納を完了すると、その旨を電力制御部401へ通知する(ステップS504Yes)。
【0051】
本実施形態では、スナップショット格納部402にスナップショットが制限なく格納されてHDD304の記憶容量を浪費することを避けるため、スナップショットの格納数に制限を設けている。すなわち、1日(24時間)を複数の時間帯に区分し、各区分の時間帯に属するスナップショットの格納数に上限を設けている。
【0052】
例えば、1区分の時間幅を2時間とし、午前8時を起点として24時間を12個の時間帯に区分する事例を説明する。この場合、起動時刻が8時15分であるスナップショット(以下、スナップショットAという。)と、起動時刻が9時40分であるスナップショット(以下、スナップショットBという。)とは同一の区分に属する。スナップショットAが先行してスナップショット格納部402に格納されている状態で、退避処理部405が、スナップショットBを格納する場合、退避処理部405は、まず、同一の時間区分において先に格納されているスナップショット数を確認する。そして、当該スナップショット数が各区分に設定されたスナップショット上限数を超えている場合には、退避処理部405は、スナップショットBを格納する際に、同一の時間区分において先行して格納されているスナップショットのうち最も古いスナップショットを削除する。例えば、本実施形態では、各区分に属するスナップショットの上限数を「1」に設定しているため、退避処理部405は、スナップショットBを格納する際に、同一の時間区分において先行して格納されているスナップショットAを削除する。すなわち、スナップショット格納部402において、1の区分に属するスナップショットは1つだけ格納される。
【0053】
スナップショット格納部402に格納されている各時間区分に属するスナップショット数は、退避処理部405が、時間区分とスナップショット数とを対応づけて記録するテーブルを保持し、スナップショットを格納する際に、当該テーブル中のスナップショット数を更新することで容易に管理可能である。また、各時間区分の上限数が「2」以上である場合は、当該テーブルに、スナップショットを特定するための情報と、その格納の先後関係とを記録すればよい。なお、各時間区分の時間幅は同一でなくてもよく、各区分に設定される上限数が異なっていてもよい。これにより、より詳細なスナップショット管理を実行可能になる。
【0054】
退避処理部405からの通知を受けた電力制御部401は、動作制御部413に低消費電力モードへの移行を指示する(ステップS505)。当該指示を受けた動作制御部413は、低消費電力モードから他の電力供給モードへの移行条件が満たされたことの検知に必要な電力供給を除いて複合機100の構成要素への電力供給を停止し、手順が終了する。なお、本実施形態では、低消費電力モードへの移行に伴い、履歴保持部409が保持している操作履歴も消去される。
【0055】
ここで、機能選択部408による優先機能の選択手順について説明する。図6は、機能選択部408が実行する優先機能選択手順の一例を示す図である。当該手順は、例えば、退避処理部405からの優先機能を示す情報の取得要求をトリガとして開始する。なお、上述のように、複合機100が通常モードになった後、低消費電力モードへの移行条件を満足するまでの間に、操作パネル200を介して複合機100に対してなされた操作の履歴は履歴保持部409に記録されている。
【0056】
退避処理部405から優先機能を示す情報の取得要求を受けた機能選択部408は、履歴保持部409を参照し、通常モードとなった後、その時点までに実行された機能の有無を確認する(ステップS601)。実行された機能が存在する場合、機能選択部408は、通常モードになった後、最初に実行された機能を優先機能として選択する(ステップS601Yes、S603)。
【0057】
一方、実行された機能が存在しない場合、機能選択部408は、複合機100にオートクリア機能が設定されているか否かを確認する(ステップS601No、S602)。オートクリア機能とは、複合機100に対する操作がなされない状態が予め登録された指定時間(以下、オートクリア時間という。)に到達したときに、複合機100を、予め指定されているデフォルト状態に戻す機能である。オートクリア機能が設定されている場合、オートクリア時間が経過すると、例えば、テンキー210等を通じて設定された複写部数や複写倍率等の設定がすべて解除されて、複合機100はデフォルト設定の状態になる。なお、本実施形態では、オートクリア機能が設定される場合、オートクリア時間は、低消費電力モードへの移行条件として指定される時間よりも短い時間に設定される。
【0058】
複合機100にオートクリア機能が設定されている場合、機能選択部408は、オートクリア機能が作動する直前にディスプレイ201に表示されていた操作画面に対応する機能を優先機能として選択する(ステップS602Yes、S604)。また、複合機100にオートクリア機能が設定されていない場合、機能選択部408は、スナップショットの格納開始時にディスプレイ201に表示されていた操作画面に対応する機能を優先機能として選択する(ステップS602No、S605)。
【0059】
以上のように、機能選択部408は、通常モードにおいて、操作パネル200を通じて複合機100が有するいずれかの機能が実行された場合、通常モードになった後、最初に実行された機能を優先機能として選択し、実行された機能が存在しない場合、その通常モードになったときの機能(通常モードへの復帰時にディスプレイ201に表示されていた操作画面に対応する機能)を優先機能として選択する。
【0060】
以上のようにして、低消費電力モードに移行した複合機100は、上述の通常モードへの移行条件が満たされた場合、低消費電力モードから通常モードへの復帰動作を開始する。図7は、複合機100が実施する低消費電力モードから通常モードへの切替手順の一例を示す図である。当該手順は、例えば、ユーザによる操作パネル200を介した指示(例えば、電源キー209の押下)が満たされたことをトリガとして開始する。すなわち、当該指示を検知した操作認識部412が、電力制御部401にその旨を通知することにより手順が開始する。
【0061】
当該手順が開始すると、電力制御部401は、起動処理部403に対して、通常モードへの復帰処理の実行を指示する。当該指示を受けた起動処理部403は、スナップショット選択部406に、スナップショット格納部402から読み出すべきスナップショットの選択を指示する。当該指示を受けたスナップショット選択部406は、計時部414からその時点の時刻を取得し、当該時刻と各スナップショットに対応づけられている起動時刻とに基づいて読み出すべきスナップショットを選択する(ステップS701)。本実施形態では、上述の時間区分ごとに1のスナップショットが格納されているため、スナップショット選択部406は、取得した時刻が属する時間区分のスナップショットを読み出すべきスナップショットとして選択する。このとき、スナップショット選択部406は、選択したスナップショットに対応づけられている、優先機能を示す情報を取得する。なお、取得した時刻が属する時間区分に対応するスナップショットがスナップショット格納部402に格納されていなかった場合、スナップショット選択部406は、隣接する時間区分、さらには他の時間区分に属するスナップショットの中から、例えば、取得した時刻により近い起動時刻が対応づけられたスナップショットを読み出すべきスナップショットとして選択すればよい。また、同一の時間区分に複数のスナップショットを格納する構成を採用する場合は、スナップショット選択部406は、例えば、取得した時刻により近い起動時刻が対応づけられたスナップショットを読み出すべきスナップショットとして選択すればよい。
【0062】
スナップショット選択部406は、以上のようにして選択したスナップショットを特定する情報を示す情報を起動処理部403に通知する(ステップS702Yes)。また、優先機能を示す情報を優先起動部407に通知する。一方、スナップショットがスナップショット格納部402に格納されていなかった場合、その旨を起動処理部403に通知する(ステップS702No)。この場合、起動処理部403は、その旨を電力制御部401に通知する。当該通知を受けた電力制御部401は、予め決められている起動手順(例えば、主電源がOFF状態からON状態になった場合の起動手順)にしたがって複合機100を構成する各要素に電力供給を開始し、複合機100を通常モードへ移行させる(ステップS707)。
【0063】
スナップショット選択部406から優先機能を示す情報が入力された優先起動部407は、動作制御部413を通じて、入力された優先機能を最優先で起動させる(ステップS703)。このとき、動作制御部413は、優先機能を実行するためのユニットに、他のユニットに優先して電力を供給することにより、すべてのユニットを同時並行に起動する場合に比べて短時間でそのユニットを起動する。例えば、優先機能がファクシミリ送信であった場合、画像読取部120とFAXアダプタ163が他に優先して起動されることになる。
【0064】
また、スナップショット選択部406から読み出すべきスナップショットを特定する情報が入力された起動処理部403は、入力された情報にしたがってスナップショット格納部402からスナップショットを読み出し、作業メモリであるRAM302上に読み出したスナップショットを展開する(ステップS704)。また、このとき、起動処理部403は、電力制御部401へスナップショットを展開する旨を通知する。当該通知により電力制御部401は、予め決められている起動手順と異なる起動であることを認識し、動作制御部413による優先機能の起動の完了後に、他のユニットの起動を指示する。
【0065】
起動処理部403はスナップショットの展開が完了するまで展開処理を継続し(ステップS705No)、スナップショットの展開が完了すると、その旨を優先起動部407へ通知する(ステップS705Yes)。このとき、優先起動部407は、表示制御部411に対して優先起動した機能に対応する操作画面を表示させる(ステップS706)。
【0066】
以上説明したように、この複合機100では、低消費電力モードから通常モードに移行する際に、その移行時刻に応じた状態で復帰させることができる。そのため、例えば、特定の時間帯に特定の機能を使用する日常的業務を実施するようなオフィスでは、当該時間帯に複合機100を低消費電力モードから通常モードに復帰させると、従来に比べて、日常的業務で使用する機能の使用に、より適した状態で復帰されることになる。また、スナップショットを作業メモリ上に復帰する構成であるため、オペレーティングシステムやアプリケーションソフトを順次起動する構成に比べて、短時間で複合機100を操作可能状態にすることができる。
【0067】
また、複合機100では、その日常的業務で使用する機能が優先して起動する。そのため、すべての機能を同時並行に起動し、その起動が完了するまで使用することができなかった従来構成に比べて、日常的業務で使用する機能が使用可能になるまでの複合機100の起動時間を短くすることができる。すなわち、操作可能状態に短時間で復帰できることとの相乗効果により、従来に比べてより速やかに複合機100の使用を開始することができる。また、仮に、復帰されたスナップショットに基づいてディスプレイ201に表示される操作画面に対応する機能と、優先起動する機能とが相違する場合でも、通常モードへの復帰時に、優先起動された機能に対応する操作画面をディスプレイ201に表示することもできる。
【0068】
さらに、機能選択部408が履歴保持部409に格納された操作履歴に基づいて優先機能を選択する構成であるため、例えば、低消費電力モードから通常モードに移行した複合機100においてある機能が使用され、その後、他の操作がなされた場合でも、低消費電力モードに移行したときの複合機100の状態に関わらず、通常モードに移行後に最初に使用された機能を優先起動する機能として指定することができる。
【0069】
加えて、作業メモリ上のデータをHDD等の不揮発性記憶媒体に格納する構成であるため、低消費電力モード時の消費電力を極めて小さくすることができる。
【0070】
なお、上記では、機能選択部408が履歴保持部409に格納された操作履歴に基づいて優先機能を選択する構成について説明したが、機能選択部408は、時間帯に応じて予め指定された機能を選択する等、他の手法によって優先機能を選択する構成であってもよい。
【0071】
また、上述の実施形態では、優先起動部407および機能選択部408を備える構成を説明したが、これらの要素は、本発明に必須の要素ではない。例えば、複合機の前からユーザが立ち去ったことを、センサ等を使用して検知する機能を有する複合機では、ユーザが立ち去った後、直ちに、低消費電力モードに移行する構成を採用することができる。この場合、低消費電力モード移行時のスナップショットを起動時刻とともに格納し、上記実施形態のように、低消費電力モードから通常モードへ移行する際の時刻と、スナップショットに対応づけられた起動時刻とに基づいて、読み出すスナップショットを選択することで、少なくとも、従来に比べて、日常的業務で使用する機能の使用に、より適した状態で複合機を復帰させることができる。また、所定時間の経過により低消費電力モードに移行する複合機であっても、当該所定時間を短く設定することで、同様の効果を得ることができる。
【0072】
以上のように、本発明によれば、低消費電力モードから通常モードへの復帰の際に、通常モードに復帰した画像処理装置が有するいずれかの機能を使用しようとするユーザにとって、従来に比べてより適切な状態で復帰させることが可能になる。
【0073】
なお、上述した実施形態は本発明の技術的範囲を制限するものではなく、既に記載したもの以外でも、本発明の範囲内で種々の変形や応用が可能である。例えば、図5〜図7に示したフローチャートは、等価な作用を奏する範囲において、各ステップの順序を適宜変更可能である。
【0074】
また、複合機がユーザ、あるいはユーザが所属する組織情報を識別する認証機能を有している場合、上記スナップショットは、ユーザごと、あるいは組織情報ごとに格納されてもよい。これにより、より適切な状態で複合機を通常モードに復帰させることができる。
【0075】
さらに、上述の実施形態では、スキャナ機能、印刷機能および送信機能を有するデジタル複合機として本発明を具体化したが、このようなデジタル複合機に限らず、複数の機能を有する任意の画像処理装置に本発明を適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明によれば、低消費電力モードから通常モードへ復帰する際に、ユーザにとって従来に比べてより適切な状態で復帰させることができ、画像処理装置として有用である。
【符号の説明】
【0077】
100 複合機(画像処理装置)
120 画像読取部
140 画像形成部
161 ネットワークアダプタ
163 FAXアダプタ
201 ディスプレイ(表示部)
302 RAM(作業メモリ)
304 HDD(スナップショット格納部)
401 電力制御部
402 スナップショット格納部
403 起動処理部
404 時刻取得部
405 退避処理部
406 スナップショット選択部
407 優先起動部
408 機能選択部
409 履歴保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の機能を実行可能であり、各機能に応じた操作画面を有する画像処理装置であって、
通常モードと、前記通常モードに比べて消費電力量が少ない低消費電力モードとを含む複数の電力供給モードを切り替える電力制御部と、
前記通常モードにおいて、画像処理装置の機能を実現するためのデータが展開される作業メモリと、
不揮発性記憶媒体からなり、前記作業メモリに格納されたデータのイメージデータであるスナップショットを格納するスナップショット格納部と、
前記電力制御部により前記低消費電力モードから前記通常モードに移行される際に、前記スナップショット格納部に格納されたスナップショットを読み出し、当該スナップショットを前記作業メモリ上に復帰させる起動処理部と、
前記起動処理部による復帰に対応する起動時刻を取得する時刻取得部と、
前記電力制御部により前記通常モードから前記低消費電力モードに移行される際に、前記作業メモリのスナップショットを、前記時刻取得部が取得した起動時刻と対応づけて前記スナップショット格納部に格納する退避処理部と、
前記電力制御部により前記低消費電力モードから前記通常モードに移行される際に、当該移行の時刻と前記起動時刻とに基づいて、前記スナップショット格納部に格納されたスナップショットの中から前記起動処理部が読み出すスナップショットを選択するスナップショット選択部と、
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記画像処理装置が前記複数の機能を実現するための複数のユニットを含み、
前記低消費電力モードから前記通常モードに移行される際に、優先指定された機能を実現する前記画像処理装置のユニットを優先的に実行可能状態にする優先起動部と、
前記通常モードから前記低消費電力モードに移行される際に、前記優先起動する機能を選択する機能選択部と、
をさらに備え、
前記通常モードから前記低消費電力モードに移行される際に、前記退避処理部が、前記スナップショットを、前記機能選択部が選択した機能と対応づけて前記スナップショット格納部に格納するとともに、前記低消費電力モードから前記通常モードに移行される際に、前記スナップショット選択部が、選択したスナップショットに対応づけられた機能を優先起動させる機能として前記優先起動部に指定する、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記低消費電力モードから前記通常モードに移行された後に、前記画像処理装置に対してなされた操作の履歴を保持する履歴保持部をさらに備え、前記機能選択部は、前記退避処理部がスナップショットの格納を開始する時点で前記履歴保持部に保持された操作履歴に基づいて、前記優先起動させる機能を選択する、請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記優先起動部が、優先指定された機能に対応する操作画面を、ユーザによる画像処理装置への指示の入力に使用される表示部に表示させる、請求項2または3記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−249220(P2012−249220A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121348(P2011−121348)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】