説明

画像分類支援を行う荷電粒子線装置

【課題】半導体製造工程におけるプロセスマージン評価において、人手による作業負担を軽減すること。
【解決手段】ウェーハ上の観察対象の画像から得られた情報に基づいて前記観察対象の良否を自動的に判定し、判定結果を画面に表示するステップ402、観察対象の良否をユーザの指示に基づき修正することが必要な観察対象を判定結果の中から抽出して表示するステップ403、抽出して表示された観察対象に対する判定結果をユーザの指示に基づき修正する処理するステップ404を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程のプロセスマージン評価に用いる荷電粒子線装置、画像処理装置、およびこれらで実行されるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体あるいは液晶など、基板上に微細なパターンを形成する製造工程において、製造装置の条件出しや、製造過程における状態変化のモニタリングとして、形成されたパターンの形状評価が行われている。特に、露光装置の条件出しやモニタリングに対しては、露光装置のフォーカスやドーズの条件をウェーハ面内で変化させてパターン形成し、形成されたパターンを用いて評価を行う。このような評価用ウェーハは、FEM(Focus Exposure Matrix)ウェーハと呼ばれる。
【0003】
FEMウェーハを用いた条件出しやモニタリングにおいて、評価対象となるパターンはホットスポットと呼ばれ、設計データに基づくシミュレーションにより決定される。特許文献1には、測長SEM(Scanning Electron Microscope)を用いて、FEMウェーハ上のパターン評価を行い、どのチップの露光条件が正常であり、どのチップの露光条件が異常であるかを視覚的に判断する発明が開示されている。
【0004】
従来、シミュレーションによってホットスポットを抽出し、抽出されたホットスポットに対応するウェーハ上の位置を実際に観察することで欠陥になっているかを判断し、ホットスポットの危険度が評価されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−205017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、観察対象となるパターンの微細化と、それに伴う製造工程の複雑化により、シミュレーションによるホットスポットの抽出が不十分である事例が増加傾向にある。具体的には、シミュレーションにより、評価すべきポイントが抽出されない場合や、抽出されたホットスポット候補が多すぎて、全点評価が困難である事例である。ホットスポット候補が多すぎる場合には、シミュレーション結果上位のホットスポット候補に限定して評価することになるが、評価すべきホットスポットが評価対象から漏れてしまう事例が増加している。一方、評価されるホットスポット候補を増やせば評価漏れの防止には有効だが、ホットスポット候補が実際に欠陥となっているか否かの判断は人手による評価にゆだねられていて、この人手による評価作業がボトルネックとなるため、評価可能な点数は限定される。
【0007】
また欠陥検査装置や欠陥レビュー装置ではコンピュータによる欠陥判定および分類を行っているが、人手による作業に比べて精度が低い。ホットスポット候補の評価には欠陥判定および分類の精度が高いことが要求されるため、評価作業をこれらの装置により完全に自動化することは困難である。
【0008】
本発明は、観察された画像の評価の手間を低減しつつ、評価の精度を向上させることで、観察対象の評価を効率良く実施することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の荷電粒子線装置は、ウェーハ上の観察対象の画像から得られた情報に基づいて前記観察対象の良否を自動的に判定し、判定結果を画面に表示し、観察対象の良否をユーザの指示に基づき修正することが必要な観察対象を判定結果の中から抽出して表示し、抽出して表示された観察対象に対する判定結果をユーザの指示に基づき修正する処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、人手による目視確認作業の負担を軽減することができるので、観察対象の画像評価の作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】SEM式観察装置の構成図。
【図2】分類処理部の構成図。
【図3】FEMウェーハ例。
【図4】FEMウェーハ評価のフローチャート。
【図5】プロセスウィンドウ確定処理のフローチャート。
【図6】NGチップ自動判定処理のフローチャート。
【図7】ADCパラメータ設定の概念図および画面構成図。
【図8】ADCパラメータ設定画面の例。
【図9】MDC支援処理のフローチャート。
【図10】MDC支援処理のウェーハマップ表示例。
【図11】OK/NGチップ判定処理のフローチャート。
【図12】MDC支援処理におけるウェーハマップ遷移例。
【図13】MDC支援処理における画面構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
以下に説明する実施例では、荷電粒子線装置の一態様として、SEM式観察装置を例にとって説明するが、これに限られることはなく、例えば、SEM式パターン測長装置(CD−SEM)に適用することも可能である。
【0014】
SEM式観察装置とは、光学式あるいはSEM式検査装置といった、上位の欠陥検査装置で検出された欠陥座標を入力情報とし、この座標における高解像SEM画像を取得するための装置である。また、設計データに基づくシミュレーションにより抽出されたホットスポット座標を入力情報として用いることもできる。さらに、これらの装置は取得した画像に対してADC(Automatic Defect Classification)あるいはMDC(Manual Defect Classification)により分類評価する機能を有している。ADCやMDCはSEM式観察装置とネットワークで接続された画像処理装置でも行うことができる。
【0015】
ここで、ADCとは、取得した画像から得られる欠陥の特徴量等の情報を用いて後述する荷電粒子線装置の分類処理部で自動的に欠陥の属性を分類する処理であり、MDCとは取得した画像をユーザに提示して、インターフェースから入力されたユーザの判断結果に従って欠陥の属性を分類する処理である。ADCまたはMDCによる分類評価とは、欠陥候補が真の欠陥であるか、どのような種類の欠陥か、などに基づき取得した画像を分類または評価し、当該画像を取得した位置座標を含む観察対象(例えばチップ)が良品であるか否かを判定する処理である。
【0016】
人手による目視確認に基づくMDCと比較すると、ADCの分類性能は必ずしも十分ではない場合がある。本実施例では、ADCの性能不足を補うためにMDCを併用し、MDCの前処理としてADCを活用することで、分類結果の信頼性を向上させている。
【0017】
図1は、本実施例のSEM式観察装置の全体構成を示す模式図である。図1のSEM式観察装置は、電子銃101、レンズ102、偏向器103、対物レンズ104、試料105、二次粒子検出器109などの光学要素により構成される電子光学系、観察対象となる試料を保持する試料台をXY面内に移動させるステージ106、当該電子光学系に含まれる各種の光学要素を制御する電子光学系制御部110、二次粒子検出器109の出力信号を量子化するA/D変換部111、ステージ106を制御するステージ制御部112、全体制御部113、画像処理部114、キーボード、マウスなどの操作部115、光学顕微鏡119、ディスプレイ等の表示部120などにより構成されている。また、電子光学系、電子光学系制御部110、A/D変換部111、ステージ106、ステージ制御部112は、SEM画像の撮像手段である走査電子顕微鏡を構成する。
【0018】
電子銃101から発射された一次電子ビーム107は、レンズ102で集束され、偏向器103で偏向された後、対物レンズ104で集束されて、試料105に照射される。一次電子ビーム107が照射された試料105から、試料の形状や材質に応じて二次電子や反射電子等の二次粒子108が発生する。発生した二次粒子108は、二次粒子検出器109で検出された後、A/D変換部111でデジタル信号に変換される。デジタル信号に変換された二次粒子検出器の出力信号を画像信号と称する場合もある。A/D変換部111の出力信号は、画像処理部114に入力されSEM画像を形成する。画像処理部114は、生成したSEM画像を使用して欠陥検出などの画像処理を実行するADR(Automatic Defect Review)処理部117を備える他、各種の画像処理を実行する。
【0019】
レンズ102、偏向器103、対物レンズ104など、電子光学系内部の光学要素の制御は、電子光学系制御部110で行われる。試料の位置制御は、ステージ制御部112で制御されたステージ106で実行される。全体制御部113は、SEM式観察装置全体を統括的に制御する制御部であり、操作部115、記憶装置116からの入力を解釈し、電子光学系制御部110、ステージ制御部112、画像処理部114等を制御し、必要に応じて表示部120、記憶装置116に処理結果を出力する。また、欠陥の自動分類処理は全体制御部113により実行され、全体制御部113はADCを行うための分類処理部118を備えている。分類処理部118は、ADR処理部により抽出されたSEM画像あるいは記憶装置116に蓄積された画像を用いてADCを実行する。
【0020】
以上説明したADR処理部117または分類処理部118は、ハードウェア、ソフトウェアいずれの方式でも実現可能である。ハードウェアによりADR処理部117または分類処理部118を構成する場合には、ADRあるいはADCに必要な処理を実行する複数の演算器を配線基板上、あるいは1つの半導体チップないしパッケージ内に集積することにより実現できる。ソフトウェアによりADR処理部117または分類処理部118を構成する場合には、ADR処理部117または分類処理部118内に高速な汎用CPUを搭載し、ADRあるいはADCの処理を行うプログラムを実行させることにより実現できる。
【0021】
なお、以下に示す本実施例の処理はプログラムによっても実現可能であり、本発明のプログラムをインストールすることにより既存のSEM式観察装置をアップグレードすることができる。
【0022】
図2は、図1の分類処理部118の詳細図を示している。図2に示す分類処理部118は、図1の全体制御部113に設けられたCPUが、所定のプログラムを実行することにより実現される複数の機能ブロックにより構成されており、ADC処理の全体を制御する分類制御部202、欠陥分類に必要な前処理を行う画像処理部203、画像処理部203で前処理された画像データを用いて実際の欠陥分類処理を実行する分類処理部204などを含んで構成されている。以上の機能ブロックをハードウェアで実現することも可能であり、その場合には、分類制御部202、画像処理部203および分類処理部204を実現する演算器が集積された半導体装置が全体制御部113内に設けられることになる。
【0023】
分類処理部118には、画像処理部203で前処理された画像データが格納される画像情報記憶部201と、分類処理部204で実行された分類結果が格納される分類情報記憶部205が接続されている。分類情報記憶部205には、ADCの結果を検証するための検証データとして、MDCの結果情報も格納される。これらの記憶部は、記憶装置116内に設けられたパーティション、論理ボリュームあるいはファイルシステムなどに対応する。また、分類処理部118には、キーボード207やマウス208によって構成される操作部115、ADCの処理結果や装置に指示を与えるためのGUI(Graphical User Interface)が表示される表示部206が接続される。
【0024】
撮像手段である走査電子顕微鏡で取得された観察画像の画像情報は、画像情報記憶部201に保存されている。ここで画像情報とは例えば、撮像手段により取得された観察画像だけでなく、撮像時の光学条件や撮像モードなどの観察条件、観察位置座標など観察点に関する情報、観察チップ、ショットに関する情報などの付帯情報、更には観察画像を画像処理部で処理した画像などを含む。まず、分類制御部202は画像情報記憶部201から画像情報を読み込み、画像処理部203に転送する。画像処理部203は、転送された画像情報から分類処理に必要な観察画像の各種特徴量、例えば、欠陥部分の寸法、形状、輝度分布、テクスチャなど、あるいは、背景パターンの寸法、形状、輝度分布、テクスチャなど、更には、欠陥部分と背景パターンとの位置関係など、対応するデータを求め、画像情報記憶部201に保存する。
【0025】
次に、分類制御部202は画像情報記憶部201に保存された観察画像の特徴量データを読み込み、分類処理部204に転送する。分類処理部204は、所定の分類モデルに基づき欠陥の分類処理を行い、処理結果を分類情報記憶部205に保存する。
【0026】
分類モデルには教示型とルールベース型がある。教示型は、正しい分類結果と対応付けられた特徴量データの教示によって、自動的に分類器を構成するものである。例えば、教示データに基づく特徴量空間において、境界を定義することで特徴量空間を分割して各カテゴリに対応させ、分類対象がどの特徴量空間に属するかを判定することで、カテゴリに分類することができる。また、特徴量空間の境界を定義する手法としては、特徴量空間上での距離がもっとも近い教示済み欠陥のカテゴリへ分類する方法や、教示データに基づいて各欠陥カテゴリの特徴量分布を推定しておき、分類しようとする欠陥の特徴量の生起確率が最も高いカテゴリへ分類する方法などがある。これらが教示型分類の基本型である。
【0027】
一方、ルールベース型とは、例えば、if−then−elseで記述されるルールに従って分類する方法であり、分類対象とする欠陥の集合を二つに分けることを繰り返して最終的に各カテゴリに分類する二分木構造の分類モデルが典型的なものである。エキスパートシステムやBRMS(Business Rules Management System)として実用化されている。
【0028】
半導体あるいは液晶検査・観察装置におけるADCにルールベース型アルゴリズムを適用する場合には、欠陥部分の凹凸、欠陥部分と背景パターンとの位置関係などを基本ルールとして定義することが多い。他にも、教示型とルールベース型を組み合わせたハイブリッド型などが実用化されている。
【0029】
分類モデルに基づく欠陥分類を行うためのプログラムは、記憶装置116内に格納されており、全体制御部113内のCPUがこのプログラムを実行することにより、分類処理部204の分類処理機能が実現される。各種処理の実行指示や処理対象データの選択などは、キーボード207やマウス208によって構成される操作部115から指示することができる。以上の指示内容、分類処理、保存などの実行過程は表示部206に表示され、装置ユーザは表示内容を確認することにより、ADCの処理内容を確認することができる。なお、分類処理部118は、必ずしも全体制御部113の内部に備えられている必要はなく、例えばSEM式観察装置とネットワークで接続されたコンピュータ等、全体制御部113とは独立して設けられた情報処理手段により実現してもよい。更に、同じADC処理を全体制御部113に接続された複数台の情報処理手段により並列処理することも可能である。
【0030】
MDC作業も分類処理部で実行できるが、分類処理部とは別の構成、例えば、画像情報記憶部201や分類情報記憶部205にアクセスできるPCなどをネットワークに接続して用いても良い。SEM式観察装置はクリーンルーム内に設置されるので、ユーザの操作を必要とするMDC処理を遠隔操作とすることでクリーンルームの外部からでも処理を行うことができる。ここでは、図2の分類処理部をMDC作業に使用する場合に例に説明する。画像情報記憶部201および分類情報記憶部205から読み込んだ情報を、分類制御部202において、MDC作業効率向上を目的として適切な表示形式に変換して、表示部206に表示する。具体的な変換方法、表示方法の詳細は後述するが、ウェーハマップ、観察画像、ADC結果、MDC結果などを表示する。操作者は、表示部206に表示された情報をもとに、入力デバイスであるキーボード207やマウス208を用いて、ADC結果をMDC結果に基づき修正、あるいは確定するための情報を入力することができる。
【0031】
図3は、評価に用いるFEMウェーハの一例である。ホットスポット評価による露光装置の条件出しやプロセスモニタリングにおいて、FEMウェーハが用いられる。図のように、フォーカス位置条件301とドーズ量条件302を変化させて製造した評価パターンを解析することで、露光装置の条件出しやモニタリングを行う。通常、フォーカス位置条件301とドーズ量条件302はウェーハ面内で単調に変化するように、FEMウェーハは製造されている。本実施例は、FEMウェーハ等、試料面内に所定の傾向をもって不良品チップが分布している試料に対して特に有効である。以下では、このようなFEMウェーハを観察する場合を例として説明するが、FEMウェーハに限定されない。例えば通常のウェーハにおいてもウェーハ外周部などウェーハの特定部分に欠陥が多く不良品チップが多い場合など、本実施例の分類、評価方法が有効である。また、FEMウェーハを用いる場合には、ショットあるいはチップの配列情報が入力情報として、例えば、図2の画像情報記憶部201や分類情報記憶部205に保存される。このような情報が入力されない場合には、観察対象の座標情報などをもとに、グルーピング処理を実行すればよい。グルーピング処理とは、チップやショット配列に相当する単位で、ウェーハを評価に適した領域、すなわち良否判定を行う観察対象ごとに分割することを示している。直接的にチップやショット情報がない場合でも、画像撮像時の付帯情報として、チップやショットピッチとして情報が入力されている場合には、これらの情報を用いることができる。チップ情報だけでなく、ショット情報がある場合には、露光時のマスクの傾きなど、より詳細な解析、モニタリングが可能となる。また、チップやショット配列に相当する情報がない場合には、領域分割するサイズや分割数をユーザに入力させても良いし、過去の評価実績や評価対象における観察点の分布から、適当な分割数を推定して提示してもよい。このようなグルーピング処理は、ADC制御部を備えた分類制御部202などで実行することができる。
【0032】
なお、以下ではホットスポットや欠陥候補検出位置の座標の画像を取得し、ADCおよびMDC処理によって取得した画像を分類し、その結果に基づいて当該座標を含むチップの良否判定を行う例を説明するが、上述のグルーピング処理をすることで、チップ単位の良否判定に代えて、製造工程での露光単位であるショットごとに良否判定してもよいし、良否判定の単位をユーザが予め指定できるようにしてもよい。
【0033】
図4は、FEMサンプル評価の手順を示すフローチャートである。まず、シミュレーションによるホットスポット抽出、あるいは検査装置による高感度検査による欠陥抽出により画像取得を行う座標を決定する(ステップ401)。次に、画像取得を行う座標の高精細画像を観察装置で取得する(ステップ402)。このとき、手動操作による画像取得も可能であるが、大量の画像を取得するので、ADRによる自動取得の方が好ましい。ADCを用いて取得した観察画像を分類し、画像取得を行った座標を含むチップの良否を評価する(ステップ403)。ADCによる分類は必ずしも正しいとは限らないので、最後に、ADC結果を基に、ユーザにMDCによる評価を促し、ユーザによる分類または評価結果に従って、ADCによる判定結果の修正を行う(ステップ404)。以上の処理により、どのような条件で露光したチップが良品であるかが分かるので、最適な露光条件の抽出、あるいはプロセスウィンドウの確定をすることができる。なお、プロセスウィンドウとは処理条件の許容幅のことであり、露光条件をプロセスウィンドウ内に設定することで良品チップを製造することができる。ADCおよびMDC作業は、画像情報記憶部201や分類情報記憶部205に保存された情報を用いて、分類制御部202により制御される。特にMDC作業の場合は、操作者による入力作業を伴う。具体的には、表示部206に表示されたADCによる良否判定結果をもとに、この良否判定結果から抽出された観察対象に対してキーボード207やマウス208入力により、分類結果を確定する。
【0034】
図5は、ADR/ADCを活用したプロセスウィンドウ確定処理の詳細手順を示すフローチャートである。まず、ADRによりホットスポットまたは上位の検査装置から入力された欠陥候補位置の観察画像を自動取得する(ステップ501)。ADCを用いて、取得した観察画像を分類し、観察画像を取得した位置を含むチップを評価する(ステップ502)。次に、ADC結果に基づきNGチップ(不良品チップ)を確定させる(ステップ503)。具体的には、チップ内で許容される欠陥数を予め閾値として設定しておき、閾値を超える欠陥が発生している場合をNGチップと判定し、閾値を超える欠陥が発生していない場合をOKチップ(良品チップ)とする。一般的には、一つでも欠陥が発生した場合は、NGチップとする場合が多いが、ADCの分類精度や評価目的によって閾値設定を変えられるシステムの方が好ましい。また、複数の閾値を導入することで、OK/NGの2段階ではなく、OK/不明/NGの3種類など、3種類以上の分類に対応することもできる。
【0035】
また、ここではADC処理によりNGチップを確定する例を示しているが、反対にOKチップを確定するようにしてもよい。この場合には後述するMDC処理によりNGチップを再判定することとなる。
【0036】
ADCの分類結果を信用して、プロセスウィンドウを確定する運用であれば、この段階(ステップ503)で処理を終了するが、分類定義の難易度によっては、ADCの分類正解率は必ずしも100%ではないので、MDCによる確認作業が必要な場合がある(ステップ504)。本実施例によれば、MDC作業を最小限にすることができるので、MDCによる確認を前提とした運用を提案することができる。MDCによる確認は、ADC処理によってNGチップと判定されたチップ以外に限定すればよい。すなわち、ADC処理においてOKチップと判定されたチップがMDC処理すべき対象として抽出される。ステップ505では、抽出されたMDC処理すべき対象のチップに含まれる座標位置において取得された画像が表示され、ユーザによって当該画像の欠陥候補が分類される。ユーザの分類結果に従って、MDC処理部が当該画像に対するADC判定結果を修正し、その結果、そのチップに対する評価が修正される。
【0037】
また、ADCでOKチップと判定されたチップに対して人手による再確認を前提としている場合には、多少の欠陥見逃しは許容するが、欠陥が無いのに欠陥ありと誤判定する、いわゆる過検出を防止するように、ADCの分類パラメータを調整するのがよい。逆に、ADCでNGチップと判定されたチップに対して人手による再確認を前提としている場合には欠陥の過検出は許容するが、欠陥見逃しを防止するようにADC分類パラメータを調整するのがよい。すなわち、MDC処理する予定の観察対象に対してはADCの誤判定を許容するが、ADC処理結果を信用する予定の観察対象に対しては誤判定を許さないようにADCのパラメータを調整することが重要である。具体的なパラメータの調整方法は、図7を用いて後述する。このようにパラメータ調整すれば、仮に欠陥見逃しが発生した場合でも、MDCにより正しい判定結果に修正できるので、最終結果であるプロセスウィンドウは、取得した全ての画像に対してMDCで分類した結果と同一となることが期待できる(ステップ506)。
【0038】
図6は、NGチップ自動判定処理のフローチャートであり、図5のステップ503に対応した処理の具体例である。通常、一つのチップの中に複数の欠陥候補が含まれているので、それぞれの欠陥候補の座標位置で取得した観察画像のそれぞれに対して、ADCを実行する(ステップ601)。ADC結果がDOI(Defect of Interest)、すなわち検出対象としている欠陥でない場合は、「異常なし」にカウントし(ステップ603)、DOIの場合は、「異常あり」にカウントする(ステップ604)。例えば、製造装置の発塵などが、検査装置で欠陥として検出され、観察装置で撮像されるが、FEMサンプルを使った条件出しやモニタリングにおいては、無視すべき欠陥、すなわちDOIではないため、「異常なし」にカウントする。「異常あり」にカウントすべき欠陥とは、露光条件を変化させたために発生する、パターン異常である。このような判定基準に基づき、「異常」の有無判定を対象チップ内の全画像に対して実行する(ステップ605)。
【0039】
次に、チップ内の「異常あり」の総数が閾値を超えなかった場合は「OKチップ」と認定し(ステップ607)、閾値を超えた場合は「NGチップ」と認定する。上記処理を全チップについて実行することで(ステップ609)、ADCを活用してNGチップを自動判定することができる。
【0040】
図7は、MDC作業を最小化するのに適したADC分類パラメータを設定するための、GUI(Graphical User Interface)構成の一例である。図7に示すように、OKチップを白色で、NGチップを網掛けで示したマップを表示部に表示する。マップ表示することでウェーハ面内の良品/不良品チップの分布を容易に確認することができる。特に本実施例で説明しているFEMウェーハではウェーハ面内で露光条件を単調に変化させているので、図7に示すように良品/不良品チップの分布は単調に変化して二分できることが予想される。このような場合、分布を直感的に認識するのに、マップ表示が最も適している。
【0041】
また、OKチップとNGチップ、または欠陥あり画像と欠陥なし画像の数、またはこれらの割合を表す表やグラフを、マップ表示に代えて、またはマップ表示と合わせて、表示するようにしてもよい。本実施例ではさらに、これらのマップ表示や表とあわせて、ADC処理に用いるパラメータを調整するためのADCパラメータ調整手段を設ける。図7では、設定対象のパラメータを「欠陥検出感度」として表示しているが、欠陥/ノイズ弁別閾値や、その他の特徴量算出パラメータでも良い。ADCパラメータ調整手段によってユーザがパラメータ調整すると、ADCによる判定結果を示すマップの表示や表などが連動して、調整後のパラメータでADCにより判定したときの結果に更新される。ユーザのパラメータ調整に追従してリアルタイムでADC判定結果が更新されるのが操作性の観点から望ましいが、ADCパラメータを確定する確定ボタン(図示省略)を押すと画面が更新されるようにしてもよい。
【0042】
「(b)標準設定」を標準的な初期設定とすると、「(a)見逃し防止設定」は欠陥検出感度を下げることにより、ADC結果に基づくNGチップは減少し、OKチップが増加している。このように、NGチップの見逃しを防止することを重視する場合には、欠陥検出感度を低く設定して、確実にNGチップを判定し、NGチップか否か判定が難しいチップについてはADC処理ではOKチップ候補として判定し、OKチップの可能性があるものを再度MDCで確認する。こうすることで、欠陥の見逃しを防止することが効率よく実現できる。例えば、OKチップの集合であるプロセスウィンドウを確定することが目的である場合には、ADCでOKチップを広めに検出するようにパラメータを最適化し、MDCで確認するのが効率よく、かつ確実性も確保できる。
【0043】
一方で、プロセスウィンドウの確定よりも、最適条件を抽出することを重視する場合には、OKチップ分布の中心を求めることが目的となる。このような場合には、「(c)最適条件判定設定」のように、欠陥検出感度を上げて積極的に欠陥検出することで、ADC結果に基づくOKチップ候補を最小限にして、OKチップ候補のみをMDC作業すれば、MDC作業の手間を最小限にすることができる。
【0044】
このように、どちらの運用に対しても、パラメータ変更と、それに対応したウェーハマップ上でのOK/NGチップ分布の変化が視覚的に確認できれば、パラメータ設定が容易になる。特に、FEMウェーハ評価では、露光装置の条件を意図的に振っているので、経験的にどのようなプロセスウィンドウになるかが予想できるため、予想可能なウェーハマップ上のOK/NGチップ分布を参考にして、一般に調整が難しいと言われているADCパラメータを調整できることは、操作者の作業負担の軽減につながる。ADCパラメータと、パラメータ設定値に対応した、ウェーハマップ上のOK/NGチップ分布に加えて、OK/NGチップの数や発生率、更には、それぞれのチップ内に存在する観察画像数や比率なども、ADCパラメータ調整を容易にする情報として有効である。
【0045】
図8は、ADCパラメータを最適化するために、ウェーハマップ上での欠陥分布と画像をあらわすGUIの一例である。このように、ADCパラメータと、パラメータ設定値に対応した、ウェーハマップ上のOK/NGチップ分布に加えて、更に、観察画像を表示して、観察画像上の欠陥位置やADC結果の変化を、パラメータ設定値と対応させて表示するのも効果的である。なお、図8では黒色に選択されたチップに含まれる欠陥の画像の一つを表示する例を示しているが、マップ表示からチップを選択できるようにするとよい。またはチップIDによりチップを選択してもよい。また、表示する欠陥画像は欠陥IDやチップ座標を選択することで切り替えられるようにしてもよいし、欠陥の画像は複数並べて表示されてもよい。更には分類結果を一覧表示してもよい。
【0046】
本実施例によれば、ADCパラメータ設定とウェーハマップ上の欠陥分布とを連携表示し、パラメータの設定値を変更した際にウェーハマップの欠陥分布の変化を参考にすることで、目的に応じた最適パラメータを簡単に設定することが可能となる。
【0047】
次に、ADCの判定結果を用いてMDC作業を軽減する方法について説明する。
【0048】
図9は、ADCとMDCを併用する際に、MDC作業の負担を軽減するためのMDC支援処理のフローチャートであり、図4のステップ404、図5のステップ505に対応している。既述のように、ADC結果に基づきNGチップを確定し、OKチップ候補のみをMDCにより目視確認する例を説明する。このとき、欠陥抽出感度を低めに設定すれば、OKチップ候補が増えるためMDC作業負担は増加するが、目視確認により、確実にOKチップを抽出することができる。
【0049】
具体的な処理フローについて説明する。まず、全てのOKチップ候補に対して、ADCに基づき、隣接するNGチップの数をカウントする(ステップ901)。説明を簡単にするためADC結果としているが、ADC結果にMDC結果が混在していても良い。ここでは、隣接するNGチップの数が多いほど該当チップがNGチップになる危険度が高いと判断しているが、他の方法により危険度を求めてもよい。例えば、チップ内の観察画像それぞれについて、ADC処理の際に求められた特徴量から、「異常あり」と判定される可能性を定量化して、危険度としてもよい。
【0050】
次に、カウント数が最大のチップ、すなわちMDC処理が必要なチップのうち危険度が一番高いチップから順に選択して表示し(ステップ902)、選択チップに対してMDCを実行する(ステップ903)。MDC処理では、前述したように、選択されたチップ内の欠陥候補画像を表示部に表示して、ユーザが当該画像が真に欠陥であるか否かを判断し、操作部を通してユーザの判断結果を入力し、この入力に基づいてMDC制御部がADC判定結果を修正する。
【0051】
ここでは、カウント数が最大のチップから順にMDCを実行するフローを記しているが、目的に応じて、カウント数が最小のチップから順にMDCを実行してもよい。MDC処理の順番を決めることで漏れなく全てのOKチップを確認することができる。MDCが必要な観察対象の漏れを無くすという観点では、例えば、図10で後述するように、目視確認済みであるか否かを、ウェーハマップ上に視覚的に判断できる形式で表示することで、確認漏れを防止してもよい。また、カウント数が最大のチップから順にMDCを実行する利点については、図10を用いて後述する。
【0052】
MDCで確認した結果、選択されたチップ内でユーザに真に欠陥であると判断された数が予め設定された閾値を超えた場合には(ステップ904)、その時点で当該チップをNGチップと判定し(ステップ905)、当該チップの判定結果をNGに確定する。これによってチップ内の残りの画像に関しては、MDCによる目視確認を省略することができる。一般的には、チップ内に一つでも欠陥が発生している場合にはNGチップと判定するため、チップ内の全画像を目視確認するのと比べて目視確認作業を省略することができる。特に、NGチップに隣接する境界チップにおいては、欠陥候補数が多く、かつ、欠陥が発生している可能性が高いので、大幅に目視確認作業を省略できる。
【0053】
一方、選択されたチップ内でユーザに真に欠陥であると判断された数が予め設定された閾値を超えなかった場合には(ステップ904)、チップ内の残りの画像に対して、目視確認を継続する(ステップ906)。チップ内の全観察画像を目視確認が終了して、ユーザに真に欠陥であると判断された数が閾値を超えなかった場合には、当該チップをOKチップとして確定する(ステップ907)。このような手順で、全チップに対してOK/NGチップ判定を実行する(ステップ908)。
【0054】
図10は、OK/NGチップの区別、OKチップ候補に関しては、隣接するNGチップ数でNGチップになる可能性の大小を示し、更には、確認済みであることを判別容易な形式で表示した例である。
【0055】
まず、「(a)初期表示」では、OKチップは白色で、NGチップはハッチング表示しているので、OKチップとNGチップを容易に区別することができる。また、白色で表示したOKチップ候補はADCによる判定結果だけでは良否判定が確定していないチップであり、MDC処理が必要とされる。図10のOKチップ候補には隣接するNGチップ数を表示しており、NGチップになる可能性の大小が視覚的に判別できる。隣接チップの数の多さは各チップに付された色で表示されてもよい。
【0056】
「(b)判定済み強調表示」では、MDCによる判定済みチップを強調表示している。本例では、MDC判定済みのNGチップは黒色で、MDC判定済みのOKチップは数値表示無しの白色で表示することで、判定前、すなわちADC結果に基づくOK/NGチップ判定結果と区別できるようにしている。
【0057】
次に、図9のステップ902、903で説明したように、隣接するNGチップが多い順、すなわちNGチップになる可能性が高い順にMDCする利点を説明する。
【0058】
図10の「(c)OKチップ自動判定前」のように、隣接するNGチップ数がゼロで、かつ隣接するチップが全て目視確認済みの場合には、「(d)OKチップ自動判定後」のように、目視確認せずにOKチップと判定することが可能である。FEMサンプルの特性上、図3のように、フォーカス位置やドーズ量を単調に変化させている場合には、OKチップの内側にNGチップが孤立して発生することは稀であることから、OKチップで囲われたチップはOKチップと自動判定してよい。NGチップに隣接するチップ数が多い、すなわちNGチップとの境界から順にNG/OKチップを確定することにより、図10(c)(d)のように、OKチップを自動判定できる場合がある。OKチップも自動判定することで、更に目視確認する量を減らし、MDC作業負担を軽減することができる。
【0059】
図11を用いてチップ内の複数の画像をMDCの優先度順に並び替える例を説明する。図11は、MDC作業の際に、最も「異常あり」らしい画像から順に目視確認することで、目視作業の負担を最小限にする方法を示すフローチャートである。選択されたチップ内には、通常、複数の画像が存在するので、優先度の高い画像からMDC処理することによって欠陥の分類評価を確定させるとよい。本実施例では、優先度は画像に含まれる欠陥候補の危険度、すなわち欠陥候補がDOIである可能性の高さで判断する。以下では、欠陥候補の危険度を「異常あり」らしさと表現する。図11は、図9のステップ903に対応し、MDC作業の負担を低減するための、具体的な手順を示している。まず、選択したチップ内で最も「異常あり」らしい画像を選択する。
【0060】
「異常あり」らしさの判定基準の一例としては、欠陥候補のサイズが分かりやすい。一般に、ADCでは様々な特徴量を求め、これらの特徴量を軸に持つ空間である特徴量空間における、特徴量分布から欠陥の種類を特定する。特徴量には例えば、欠陥部分の寸法、形状、輝度分布、テクスチャなど、あるいは背景パターンの寸法、形状、輝度分布、テクスチャなど、更には欠陥部分と背景パターンとの位置関係などがある。このうち欠陥サイズを用いる場合には、例えば、欠陥画像と正常画像との差分を抽出して、差分面積の和を欠陥サイズに相当する特徴量とし、簡単のため、この特徴量のみで「異常あり」を判断するものとする。この場合、パターンのエッジラフネスなど、異常ではなく製造公差と考えるべき差分も抽出される可能性があるが、差分面積の和が大きいほど、「異常あり」らしい、すなわち欠陥の可能性が高いと考えることができるので、最も差分面積の和が大きいものから順に選択して(ステップ1101)、選択画像に対してMDCを実行することになる(ステップ1102)。ここでは、単純に一つの特徴量、欠陥サイズに相当する特徴量で「異常あり」らしさを判定しているが、複数の特徴量を求め、特徴量空間における特徴量分布に基づいて、「異常あり」らしさを判定する方法を用いても良い。
【0061】
次に、ユーザの目視確認により「異常あり」と「異常なし」の数をカウントする(ステップ1104、ステップ1105)。「異常あり」にカウントした場合には、チップ内の「異常あり」数が閾値を超えていないかを判定して(ステップ1106)、閾値を超えた場合には、チップ内の残りの画像は目視確認作業を実行せずに、NGチップとしてその時点で判定結果を確定し(ステップ1108)、当該チップに対するMDC処理を終了する。
【0062】
ステップ1103で「異常なし」にカウントした場合には(ステップ1105)、チップ内の全画像に対してユーザによる目視確認済みかを判定し(ステップ1109)、全画像が確認されている場合には、チップ内の「異常あり」数が閾値を超えなかったため、該当チップはOKチップとして判定する(ステップ1110)。このように、最も「異常あり」らしい画像から順に確認して、「異常あり」の数が閾値を超えた時点でNGチップと認定し、残りの画像に対する確認作業を省略することにより、目視確認作業をさらに軽減することができる。本実施例では、ADC処理をMDC処理の前処理として行うので、ADCによって自動的に欠陥候補の危険度を判断し、MDC処理の順番を決めることができる。
【0063】
図12は、図9のフローに対応するマップ表示の例である。すなわち、ADC結果に基づきNGチップを確定し、ADCでOKチップと判定されたOKチップ候補のそれぞれに対して隣接するNGチップ数をカウントして表示し、NGチップになる可能性が高いと予想されるチップから順に、MDCによる目視確認を実行した場合の、ウェーハマップ遷移例を示している。
【0064】
まず、隣接するNGチップ数が最大のチップ1201を最初のMDC対象チップとして選択する。ユーザはこのチップ内の欠陥候補に対する画像を確認して「異常あり」の画像か否かを判断する。「異常あり」数が閾値を超えた時点(1202)で、該当チップをNGチップとする判定が確定し、OK/NGチップの判定処理を終了する。具体的な手順、および目視確認作業の負担を最小化する方法に関しては、図9、図11で説明したとおりである。
【0065】
MDC処理によりNGチップであると確定されたチップ1203は、図10で説明したように、確認ずみであることが分かるようにMDC未処理のチップと視覚的に区別して表示し、あらためて隣接するNGチップ数をカウントする。NGチップが新たに確定されたことで確定されたNGチップに隣接するチップのカウント数が変わるからである。隣接するNGチップ数の再カウントの結果、OK候補チップであってMDCが未処理であるチップのうちカウント数が最大のチップ1204に対して、同様にMDC処理を実施する。このように、NGチップであると確定した時点で、該当チップのMDC作業を終了することで作業負担を軽減できる。さらに、新たにNGチップが確定したときに当該NGチップ以外の危険度情報を更新することで、最新の危険度情報に基づき、効率よくMDC作業することが可能となる。
【0066】
次に、「異常あり」数が閾値を超えなかった場合について説明する。「異常あり」数が閾値を超えなかった場合(1205)には、該当チップをOKチップ1206であると確定し、確認済みであることが分かるように表示して、次のチップ確認作業に移行する。この場合には、既にカウントされているNGチップの数に変化がないので、新たにMDC未処理のチップに対して隣接するNGチップの数をカウントしなおす必要はない。
【0067】
図13は、上述したようなMDC処理をユーザが効率よく行うためのGUI例である。MDC作業を行う際には、ウェーハマップ1301、欠陥候補の観察画像1302を連携させて表示させるのが好ましい。前述のように、ウェーハマップはOK/NGチップの区別がつくように表示し、さらに、危険度、確認済みチップ、着目チップに関する情報を付加すると、MDC作業を効率向上に効果的である。観察画像には、ADCで検出した欠陥領域をオーバーレイ表示するのがよい。また、ADCで判定された欠陥種類によって欠陥候補画像を選択的に表示するフィルタリング手段1303を付加すれば、ADC結果に基づいて、確認したい観察画像のみを表示することもできる。ここではADC結果としているが、MDC結果が混在していてもよい。さらに、MDC結果の入力方法は、図のようにMDC結果選択欄1304で分類コードを選択する方式でも、分類コードをキーボード等の入力デバイスから直接入力する方式でもよい。その他、着目しているチップ番号1305や、着目している観察画像のID1306もあわせて表示し、これらをユーザが指定することで、MDC対象とするチップや表示する欠陥候補画像を選択できる構成とすると効果的である。
【符号の説明】
【0068】
101 電子銃
102 レンズ
103 偏向器
104 対物レンズ
105 試料
106 ステージ
107 一次電子ビーム
108 二次粒子
109 二次粒子検出器
110 電子光学系制御部
111 A/D変換部
112 ステージ制御部
113 全体制御部
114 画像処理部
115 操作部
116 記憶装置
117 ADR処理部
118 分類処理部
119 光学顕微鏡
120、206 表示部
201 画像情報記憶部
202 分類制御部
203 画像処理部
204 分類処理部
205 分類情報記憶部
207 キーボード
208 マウス
301 フォーカス位置条件
302 ドーズ量条件
1201、1204 危険度最大チップ
1203 NG確定チップ
1206 OK確定チップ
1301 ウェーハマップ
1302 欠陥候補画像
1303 フィルタ設定欄
1304 MDC結果選択欄
1305 チップ番号表示部
1306 ID選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハ上の複数の観察対象に含まれる予め指定された座標位置に荷電粒子線を照射することで前記座標位置の画像を取得し、前記画像から得られた情報に基づいて前記観察対象の良否を判定する荷電粒子線装置において、
前記画像から得られた情報に基づいて前記画像を分類することで前記観察対象の良否を判定するADC処理部と、
前記ADC処理部による前記画像の分類結果をユーザの指示に従って修正するMDC処理を行うMDC処理部と、
前記ADC処理部による判定結果を表示する表示部と、を備え、
前記MDC処理部は、前記ADC処理部による判定結果に基づいてMDC処理すべき観察対象を抽出し、
前記表示部は、前記MDC処理部によって抽出された観察対象に含まれる座標位置の画像をMDC処理すべき対象として表示することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項2】
請求項1に記載の荷電粒子線装置であって、さらに、
前記ADC処理部で判定に用いられるパラメータを調整するパラメータ設定手段を有し、
前記表示部は、少なくとも前記観察対象の良否を区別して表示したマップを表示し、
前記パラメータが変更されると、前記パラメータの値に応じて前記ADC処理部による判定結果が更新されることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項3】
請求項2に記載の荷電粒子線装置であって、
前記ADC処理部による判定結果は、良否マップ、良品数、不良品数、良品発生比率、不良品発生比率、観察画像、観察画像の欠陥領域情報、基準画像、ADC結果のうち一つ以上によって表されることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項4】
請求項1に記載の荷電粒子線装置であって、
前記ウェーハはウェーハ面内で露光条件を単調に変化させることで製造されたウェーハであることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項5】
請求項1に記載の荷電粒子線装置であって、
前記ADC処理部による観察対象の良否判定結果に基づき、前記MDC処理が行われる観察対象の順序を決定する手段を有することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項6】
請求項5に記載の荷電粒子線装置であって、
前記順序は、隣接する観察対象の良否判定結果、または前記観察対象に含まれる前記座標位置の画像から得られた情報に基づいて決定されることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項7】
請求項1に記載の荷電粒子線装置であって、
前記ADC処理部による前記座標位置における異常発生の危険度に基づき、前記MDC処理が行われる画像の順序を決定する手段を有することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項8】
請求項1に記載の荷電粒子線装置であって、さらに、
前記試料の位置情報に基づいて、前記試料上の領域を前記観察対象ごとにグループ分けする手段を備えたことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項9】
請求項1に記載の荷電粒子線装置であって、
前記MDC処理部は、前記観察対象に含まれる欠陥数が予め定めたしきい値を越えた時点で当該観察対象の良否判定を確定することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項10】
ウェーハ上の複数の観察対象に含まれる予め指定された座標位置に荷電粒子線を照射することで得られた前記座標位置の画像から得られた情報に基づいて、前記観察対象の良否を判定する画像処理装置で実行されるプログラムが記録された記録媒体であって、
前記画像から得られた情報に基づいて前記画像を分類することで前記観察対象の良否を前記画像処理装置で判定し、
前記画像処理装置で判定された結果を表示し、
前記結果に基づいて抽出された観察対象に含まれる座標位置の前記画像の分類結果をユーザの指示に従って修正するMDC処理を行うことを特徴とするプログラムが記録された記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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