説明

画像加熱装置および画像形成装置

【課題】回転接触式の外部加熱定着装置において、定着装置の寿命まで加熱回転体の汚れの堆積を防ぎ、加熱回転体の汚れによる定着不良や汚れの吐き出しによる画像不良を防止する。
【解決手段】加熱回転体表面に付着する汚れは、トナーと逆極性である転写バイアスと同極性となるため、加熱回転体の表面電位をトナーと逆極性に制御することで、加熱回転体への汚れの付着を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電子写真方式を採用した複写機やプリンター、あるいはファクシミリ等の記録材上に画像形成可能な画像形成装置に搭載される画像加熱装置に関する。画像加熱装置としては、記録材に形成された未定着画像を定着する定着装置や、記録材に定着された画像を加熱することにより画像の光沢度を向上させる光沢処理加熱装置等が挙げられる。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式で用いられるトナーの定着装置には、従来から熱ローラ方式、フィルム加熱方式などが知られている。近年では、更なる立ち上げ時間の短縮、高速化や低消費電力化のために、上記の定着方式に対して種々の改善が試みられている。一つとしては、加熱体を定着ローラ外表面に配置し、定着ローラの外表面のみを加熱する定着方式(以下、外部加熱定着方式と記す)が提案されている。
【0003】
定着ローラの外表面のみを加熱することで、所定温度に立ち上げるまでの時間を短縮すると共に、消費電力を低減することが可能である。また、この外部加熱定着方式の定着装置としては、加熱体を定着ローラ外表面に接触させる接触式と、ハロゲンヒータなどで接触せずに定着ローラの外表面を加熱する非接触式とに大別される。接触式の外部加熱定着装置は、セラミックヒータなどの熱源を定着ローラに接触させ熱を伝えるため、非接触式に比べ熱の伝搬効率が高い。
【0004】
更に接触式の中には、定着ローラ外表面に加熱体を摺動させる摺動接触式と、加熱体の周囲に回転体を設け(以下加熱回転体)、加熱回転体を介して定着ローラに加熱体の熱を伝える回転接触式に分けられる。回転接触式は、定着ローラの表面の移動と共に、加熱体を内包した加熱回転体が移動するため、摺動接触式に比べ定着ローラを傷めにくく、また摩擦力が小さいため駆動トルクを抑えることができる利点がある。
電子写真方式の定着装置では記録材である記録紙の上へトナーを定着する際に、定着ローラ、加圧ローラなど定着部材に僅かな量のトナーと紙粉などの汚れが付着する場合がある。
【0005】
定着部材に付着したトナーと紙粉の多くは、次の紙のトナーの定着の際に紙上へ転移するため、基本的に定着部材にトナーや紙粉が堆積しない。しかし、接触式の外部加熱定着装置においては、定着ローラ外表面に加熱体(若しくは加熱回転体)が接触しているため、定着ローラに付着したトナーや紙粉などの汚れは加熱体に転移することがある。
【0006】
外部加熱定着方式で定着ローラと加熱体の接触部には記録材である紙が通らないため、加熱体にトナーや紙粉などの汚れが付着してしまうと加熱体から除去されにくい。記録材である紙の上へのトナーの定着が繰り返されると、加熱体表面にトナーや紙粉などの汚れが堆積してしまう場合があり、酷く汚れた場合には加熱体の熱が定着ローラ外表面に伝わりにくくなる。そして、記録材である紙上のトナーの溶融不足で紙上へのトナーの定着性が劣化(定着不良)することや、加熱体から汚れが吐き出されることで紙上に汚れが転移し画像印字面を汚してしまうなどの画像不良が発生することがあった。
【0007】
摺動接触式の場合は、定着ローラ外表面に加熱体が摺動しているため、定着ローラ表面に付着したトナーや紙粉などの汚れは、加熱体により掻き取られ摺動接触部に堆積しやすい。そのため、摺動接触部の汚れの堆積を防止するために、摺動接触部にクリーニングウェブを用い、摺動接触部の汚れが酷くなる前に摺動接触部の更新を行なう機構を設けたりする(特許文献1)。あるいは、定着ローラの回転を正逆切り替えるなどで摺動接触部の汚れを吐き出すクリーニングモードを設けたりしている(特許文献2)。
【0008】
一方、回転接触式の場合は、加熱回転体が定着ローラに対して回転するため、定着ローラ表面に付着した汚れが加熱回転体に掻き取られることが無く、加熱回転体に汚れが堆積しにくい利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−186327号公報
【特許文献2】特開2005−250453
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の回転接触式の外部加熱定着装置において、紙上へのトナーの定着する際に定着ローラに付着した僅かな量のトナーと紙粉などの汚れが、加熱回転体と接触するときに僅かに加熱回転体に付着する。紙上へのトナーの定着が繰り返されると、回転接触式の外部加熱定着装置においても加熱回転体表面に汚れが堆積する場合があった。
【0011】
加熱回転体に堆積する汚れの量が多くなると、加熱回転体の熱が定着ローラ表面に伝わり難くなり紙へのトナーの定着性が劣化する。また、場合によっては、加熱回転体の汚れが定着ローラに再び付着し、画像上に汚れが転移して画像不良となることがあった。
【0012】
本発明の目的は、回転接触式で外部加熱する画像加熱装置において、加熱回転体の汚れの堆積を防ぎ、加熱回転体の汚れによる定着不良や汚れの吐き出しによる画像不良が発生しない画像加熱装置およびこれを用いた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係わる画像加熱装置の代表的な構成は、回転部材と、前記回転部材の外表面に圧接して前記回転部材を外部加熱する加熱回転体と、
を有し、前記加熱回転体からの熱エネルギーを前記回転部材を介してトナー画像を担持した記録材に付与する画像加熱装置において、前記加熱回転体の前記外表面に接する表面電位を前記トナーの極性と逆特性である前記記録材の汚れの極性と同じ極性とする極性付与手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、加熱回転体の表面電位をトナーの極性と逆の極性に制御することで、トナーとは逆極性の汚れが加熱回転体表面に付着するのを抑制できる。そのため加熱回転体の汚れによる定着不良や汚れの吐き出しによる画像不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態として極性付与手段にバイアス印加を用いた定着装置の概略図である。
【図2】(a)は加熱回転体に付着する汚れの極性を調査する極板を備えた装置を示す図、(b)は極板にマイナス電位を印加した図、(c)は極板にプラス電位を印加した図である。。
【図3】第2の実施形態における定着装置の概略図である。
【図4】第3の実施形態における定着部材の表面電位の極性と大小関係を示す図である。
【図5】その他の実施形態として極性付与手段にダイオードを用いた定着装置の概略図である。
【図6】その他の実施形態として極性付与手段に帯電装置を用いた定着装置で、(a)は非接触型、(b)は接触型を示す図である。
【図7】その他の実施形態としてハロゲンヒータを内包した定着装置の概略図である。
【図8】その他の実施形態として加圧部材にパッドを用いた定着装置の概略図である。
【図9】画像形成装置全体の概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
《第1の実施形態》
(画像形成装置)
被加熱体である記録材上の未定着トナー画像を形成する画像形成装置の一例を、図9を用いて説明する。本実施形態における画像形成装置50は、記録材搬送ベルト9上に担持した記録材P上に、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの4色のトナー像を順次転写することで、一つの画像を形成する方式である。
【0017】
像担持体である感光ドラム1の周面には、回転方向(矢印R1方向)に沿って順に、帯電器2、レーザ光を感光ドラム1に照射する露光装置3、現像器5、記録材搬送ベルト9を介して転写ローラ10、および、感光ドラムクリーナー16が配置されている。まず、感光ドラム1は、その表面が帯電器2によってマイナス極性に帯電される。次に帯電された感光ドラム1は、露光手段3の露光Lにより表面に静電潜像が形成(露光された部分は表面電位が上がる)される。
【0018】
本実施形態のトナーは各色共にマイナス極性に帯電されており、まず1色目のイエロートナーが入った現像器5によって、ドラム1上の静電潜像部にのみマイナストナーがマイナス電位のドラム1に電位差によって付着する。これにより、ドラム1上にイエローのトナー像が形成される。一方、記録材搬送ベルト9は、二つの支持軸(駆動ローラ12、テンションローラ14)に支持され、図中矢印R4方向に回転する駆動ローラ12によって、矢印R3方向に回転する。記録材Pは、給紙ローラ4によって給紙されると、プラス極性のバイアスが印加された吸着ローラ6によって帯電され、記録材搬送ベルト9上に静電吸着し搬送される。
【0019】
記録材Pが転写ニップN1に搬送されると、記録材搬送ベルト9に従動回転する転写部としての転写ローラ10に、不図示の電源からトナーの極性とは逆の極性であるプラス極性の転写バイアスが印加される。そして、ドラム1上のイエロートナー像は、転写ニップ部N1において記録材P上に転写される。転写後のドラム1は、弾性体ブレードを有する感光ドラムクリーナー16によって表面の転写残トナーが除去される。
【0020】
以上の帯電、露光、現像、転写、クリーニングの一連の画像形成プロセスを、1色目イエロー Y30、2色目マゼンタ M30、3色目シアンC30、4色目ブラックK30の各現像カートリッジについて順次行う。これにより、記録材搬送ベルト9上の記録材Pに4色のトナー像を形成する。画像形成部で4色の未定着トナー画像を担持した記録材Pは、定着装置100に搬送され、画像加熱装置としての定着装置で表面のトナー像の定着が行なわれる。
【0021】
(定着装置)
次いで、本実施形態の定着装置100について図1を用いて説明する。本実施形態の定着装置100は、上述のように立ち上げ時間の短縮や低消費電力化を目的とした回転接触式の外部加熱定着装置である。回転部材である定着ローラ110の外周面には、定着ローラ110にバックアップ部材である加圧ローラ111(加圧部材)が対向し、定着ニップN1を形成している。一方、加圧ローラ111の反対側からは、定着ローラ110の外表面に加熱回転体112が圧接し、接触加熱部N2を形成している。
【0022】
加熱回転体112に内包された加熱ヒータ113が接触加熱部N2で定着ローラ110表面を外部加熱するようになっている。そして、この外部加熱手段からの熱エネルギーを定着ローラ110を介してトナー画像を担持した記録材Pに付与し画像加熱する。即ち、未定着トナー画像Tが転写された記録材Pが、定着ニップN1に搬送されると、定着ローラ110の表面の熱は、未定着トナー像Tと記録材Pに伝わり、記録材P表面にトナー画像Tが定着されるようになっている。
【0023】
(定着ローラ)
定着ローラ110は外径φ20mmであり、接地されたφ12mmの鉄製の芯金117の外側にシリコーンゴムを発泡した厚さ4mmの弾性層116(発泡ゴム)が形成されている。定着ローラ110は、熱容量が大きく、熱伝導率が大きいと、外表面から受ける熱が定着ローラ110内部へ吸収され易く、表面温度が上昇しにくくなる。即ち、できるだけ低熱容量で熱伝導率が低く、断熱効果の高い材質の方が、定着ローラ110表面温度の立ち上がり時間を短縮できる。
【0024】
上記シリコーンゴムを発泡した発泡ゴムの熱伝導率は0.11〜0.16W/m・Kであり、0.25〜0.29W/m・K程度のソリッドゴムよりも熱伝導率が低い。また、熱容量に関係する比重はソリッドゴムが約1.05〜1.30であるのに対して、発泡ゴムが約0.75〜0.85であり、低熱容量でもある。従って、この発泡ゴムは、上記定着ローラ110表面温度の立ち上がり時間を短縮できる。定着ローラ110の外径は小さい方が熱容量を抑えられるが、小さ過ぎると接触加熱部N1の幅が狭くなってしまうので適度な径が必要である。
【0025】
本実施形態では、外径をφ20mmとした。弾性層116の肉厚に関しても、薄過ぎれば金属製の芯金に熱が逃げるので適度な厚みが必要であり、本実施形態では、弾性層116の厚さを4mmとした。弾性層116の上には、トナーの離型層として、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)からなる離型層118が形成されている。離型層118はチューブを被覆させたものでも表面を塗料でコートしたものであっても良いが、本実施形態では、耐久性の優れるチューブを使用した。
【0026】
離型層118の材質としては、PFAの他に、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン樹脂(FEP)等のフッ素樹脂や、離型性の良いフッ素ゴムやシリコーンゴム等を用いても良い。定着ローラ110の表面硬度は、低いほど軽圧で接触加熱部N1の幅が得られるが、低すぎると耐久性が劣化するため、本実施形態では、Asker−C硬度(4.9N荷重)で、40〜45°とした。定着ローラ110は、不図示の回転手段により、図中矢印R2方向に、表面移動速度60mm/secで回転するようになっている。
【0027】
(加圧ローラ)
加圧ローラ111は、定着ローラ110の熱を奪わないように、低熱容量で低熱伝導率のものが好ましく、本実施形態では、定着ローラ110と同様の構成のものを用いた。外径はφ20mmであり、接地されたφ12mmの鉄製の芯金121の外側に厚さ4mmの発泡ゴム弾性層122が形成され、最表層にはPFAからなる離型層123が設けられている。加圧ローラ111は、加圧ローラ加圧バネ124によって軸受け125を介し、図中矢印A2方向に147Nの力で加圧され、幅7mmの定着ニップN1を形成し、定着ローラ110に従動回転(図中矢印R3)する。
【0028】
(加熱回転体)
本実施形態では、加熱体である加熱ヒータ113がヒータホルダー119に保持され、この周囲に加熱回転体である加熱フィルム112(無端状のベルト部材)が設けられた構成となっている。ヒータホルダー119は、加圧バネ114によって図中矢印A1方向に147Nの力で加圧されるようになっており、加熱フィルム112を介して定着ローラ110に加圧され、幅7.5mmの加熱ニップN2が形成されている。
加熱フィルム112は、定着ローラ110の図中矢印R2方向の回転により加熱ニップN2で力を受け、図中矢印R1方向に従動回転する。
【0029】
加熱回転体である加熱フィルム112は、半径方向に異なる複数の層から形成され、フィルムの強度を保つための基層126と表面への汚れ付着低減のための離型層127からなる。そして、加熱回転体の最も内側の層と最も外側の層の少なくともいずれか一方の層が導電層となっており、この導電層にバイアスが印加される。基層126の材質は、加熱ヒータ113の熱を受けるため耐熱性が必要であり、また加熱ヒータ113と摺動するため強度も必要である。このため、SUS(Stainless Used Steel:ステンレス鋼)などの金属やポリイミドなどの耐熱性樹脂を用いると良い。
【0030】
金属は樹脂に比べると強度があるため薄肉化でき、また熱伝導率も高いため、加熱ヒータ113の熱を定着ローラ110へ伝達しやすい。樹脂は金属に比べると比重が小さいため熱容量が小さく温まりやすい利点がある。また樹脂は塗工成型により薄肉のフィルムが成型できるため安価に成型できる。本実施形態では、加熱フィルム112の基層126の材質としてポリイミド樹脂を用い、熱伝導率を向上させるため及び導電性を付与するためカーボン系のフィラーを添加して用いた。
【0031】
基層126の厚さは薄いほど加熱ヒータ113の熱を定着ローラ110表面に伝達しやすいが強度が低下するため20μm〜100μm程度が好ましく、本実施形態では60μmとした。加熱フィルム112の離型層127の材質は、加圧ローラ111の離型層123と同様、PFA、PTFE、FEP等の離型性の良好なフッ素樹脂を用いると好ましく、本実施形態ではフッ素樹脂の中でも離型性と耐熱性に優れるPFAを用いた。離型層127は薄いほど加熱ヒータ113の熱を定着ローラ110表面に伝達しやすいため、1μm〜20μm程度が好ましく、本実施形態では10μmとした。
【0032】
(加熱ヒータ)
加熱ヒータ113は、幅6mmで厚さ1mmのアルミナの基板表面に、Ag/Pd(銀パラジウム)の通電発熱抵抗層をスクリーン印刷により10μm塗工し、その上に発熱体保護層としてガラスを50μmの厚さで覆ったものを用いた。加熱ヒータ113の背面には通電発熱抵抗層の発熱に応じて昇温したセラミック基板の裏の温度を検知するための温度検知素子115が配置されている。この温度検知素子115の信号に応じて、長手方向端部にある不図示の電極部から通電発熱抵抗層に流す電流を適切に制御することで、加熱ヒータ113の温度を調整している。
【0033】
そして、加熱ヒータ113の熱は、加熱ニップN2を介して定着ローラ110の表面を加熱する。上述のように未定着トナー像Tが転写された記録材Pが、定着ニップN1に搬送されると、定着ローラ110の表面の熱は、未定着トナー像Tと記録材Pに伝わり、記録材P表面にトナー像Tが定着されるようになっている。
【0034】
(加熱回転体に付着する汚れの極性)
上述のように、記録材P上のトナー像Tが定着されるときに、記録材Pとトナー像Tに接触する定着ローラ110には、記録材の汚れ(紙粉など)、あるいは記録材の汚れ(紙粉など)にトナーの汚れが混ざった汚れが僅かな量ながら付着する。
この紙粉の汚れは、特に炭酸カルシウムを多く含んだ記録材で発生しやすい。記録材は画像形成装置の給紙部や紙搬送部で摺擦されると毛羽立つことがあり、記録材の繊維が分離し易い状態になる。記録材が定着ニップN1に搬送され、定着ローラ110と接触したときに、その記録材の繊維が定着ローラ110へ付着することがある。
【0035】
記録材中に炭酸カルシウムが多く含まれると、記録材の繊維と共に炭酸カルシウムの粉が定着ローラへ転移し易いため、記録材の繊維と炭酸カルシウムの粉からなる紙粉汚れが発生しやすいのである。定着ローラ110に付着したトナーと紙粉などの汚れは、加熱ニップN2部で一部加熱フィルム112へ転移する場合がある。記録材Pへのトナー像Tの定着が繰り返されると、加熱フィルム112の汚れが堆積する。この加熱フィルム112に堆積する汚れについて、汚れの極性を調査した。
【0036】
汚れの極性の調査方法を図2に示す。図2(a)に示すように、バイアスを印加する極板140とアースに接地した極板141の間に、加熱フィルム112表面から採取した汚れYを置き、極板140にプラス極性とマイナス極性を切り替えられる高圧電源142によりバイアスを印加した。極板140と極板141の極板間距離Xは20mmとし、高圧電源142により極板140に±500Vのバイアスを印加した時の極板間の汚れYの動きを観察した。
【0037】
極板140に−500Vを印加した時の概略図を図2(b)に、+500Vを印加した時の概略図を図2(c)に示す。極板140に−500Vを印加すると汚れYは極板140に移動し、極板140に+500Vを印加すると汚れYは極板140から極板141へ移動した。汚れYはマイナスに引き付けられ、プラスに反発することがわかった。これは汚れYの極性がプラス極性であることを意味している。定着ローラ110へ付着する紙粉汚れは、転写時に受けたプラスバイアスによりプラス極性に帯電した記録材Pから発生するためプラス極性である。
【0038】
一方、定着ローラ110へ付着するトナー汚れは基本的にマイナス極性である。但し、定着時に定着ニップN1で記録材Pから定着ローラ110へ付着するトナーは、以下の理由により、マイナス極性が弱いトナーか若しくはプラス極性に反転したトナーであると考えられる。
【0039】
即ち、転写時に感光ドラム1上から記録材P上へ転写されたトナー像は基本的にマイナス極性であり、プラス極性に帯電した記録材P上と静電的に付着している。しかし、定着ニップN1を通過するときに、記録材P上から定着ローラ110へ転移すると言うことは、記録材Pとの静電的付着力よりも定着ローラ110との付着力の方が強くなった場合に転移するということである。このため、定着ローラ110に付着しトナー汚れとなるようなトナーは、記録材P上のトナー像の中でもマイナス極性が弱いトナーか、転写時にプラス極性に反転したトナーと考えられる。
【0040】
加熱回転体に付着する汚れYは、プラス極性の紙粉汚れと、マイナス極性が弱いトナー若しくはプラス極性のトナー汚れが混ざった汚れであるため、汚れYの極性はトナーと逆極性のプラス極性として堆積するのである。
【0041】
(加熱回転体及び定着ローラの表面電位と加熱回転体の汚れの関係)
次いで、本発明の特徴である加熱回転体の表面電位について説明する。本発明は、加熱回転体の表面電位がトナーの極性と逆の極性になるように制御している。上記のように、加熱回転体表面に付着する汚れの極性はトナーとは逆極性であり、加熱回転体表面を汚れと同一極性とすることで、汚れが付着するのを抑制している。本実施形態のトナーの極性はマイナス極性であり、本実施形態では加熱回転体の表面電位をトナーとは逆極性であるプラス極性に制御している。
【0042】
本実施形態の加熱回転体である加熱フィルム112の基層126は導電性であり、この導電性の基層126に外部高圧電源130からプラスバイアスを印加することで加熱フィルム112の表面電位をプラス極性に制御する。外部高圧電源130の末端には、基層126と同様のPI材質にカーボンを添加することで導電化した導電樹脂が設けられており、この導電性樹脂が加熱フィルム112内側の基層126に摺動しながらバイアスを印加する摺動接点の構成となっている。基層126に外部高圧電源130からバイアスを印加した場合、加熱フィルム112の表面電位には外部高圧電源130の電位と同じ電位となる。
【0043】
一方、本実施形態では定着ローラ110の表面電位も制御している。定着ローラ110の表面電位は、非接触の帯電装置190により加熱フィルム112のプラス極性とは逆極性のマイナス極性に制御し、電界の向きを加熱回転体である加熱フィルム112から定着ローラ110へ向けている。非接触の帯電装置190は一般的なコロナ帯電装置であり、外部高圧電源131からマイナスバイアスが印加される帯電ワイヤー191とアースに接地されたシールド192からなり、定着ローラ110の表面である離型層118を非接触でマイナス極性に帯電する。
【0044】
ここで、加熱フィルム112及び定着ローラ110の表面電位を変化させたときの加熱フィルム112に付着する汚れの調査結果を以下に示す。加熱フィルム112の汚れの調査は、加速的に行うために紙粉汚れが発生しやすい記録材として炭酸カルシウムを20Wt%以上含む記録材を用い、この記録材を500枚印字耐久した時点の加熱フィルム112の汚れを相対的に比較した。
【0045】
印字パターンは、トナーが記録材上へ定着し難く、定着ニップN1で記録材上のトナーが定着ローラ110へ付着(オフセット)し易いパターンとして、ハーフトーンの印字パターンを用いた。加熱フィルム112及び定着ローラ110の表面電位をそれぞれ不図示の高圧電源により、+500V、+250V、±0V、−250V、−500Vと変化させ、上記500枚の印字耐久を行ったときの加熱フィルム112の汚れの比較を行った。加熱フィルムの汚れの比較結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
汚れの評価は10段階評価で行い、相対比較で一番汚れているものを「1」とし、汚れがこれよりも軽微になるにつれ数字を大きく示し、一番汚れていないものを「10」として評価した。またカッコ内の値は、加熱フィルムと定着ローラの表面電位差を示し、(加熱フィルムの表面電位−定着ローラの表面電位)の計算で、電界の向きとしてはプラス表記が加熱フィルムから定着ローラへ向いていることになる。加熱フィルムの汚れの傾向としては、定着ローラの表面電位が何Vの場合であっても、加熱フィルムの表面電位をプラス極性寄りにした方が加熱フィルムの汚れレベルが良化する傾向である。
【0048】
これは加熱フィルムの表面電位をプラス極性寄りにすると、電界の向きと強度がより加熱フィルムから定着ローラの方向へ向かい、プラス極性の汚れは加熱フィルムから定着ローラの方向へ静電気力を受ける。このため、加熱フィルムにプラス極性の汚れが付着し難くなるためである。一方で、定着ローラの表面電位は、加熱フィルムの表面電位が何Vの場合であっても、マイナス極性寄りになる方が加熱フィルムの汚れレベルは良化する傾向である。
【0049】
これも、定着ローラの表面電位をマイナス極性寄りにすると、電界の向きと強度がより加熱フィルムから定着ローラの方向へ向かうため、プラス極性の汚れは加熱フィルムから定着ローラの方向へ向かうように静電気力を受ける。そのためプラス極性の汚れは加熱フィルムに付着し難くなるのである。
【0050】
(加熱フィルムの表面電位−定着ローラの表面電位)
加熱フィルムの表面電位−定着ローラの表面電位の電位差、すなわち加熱フィルムから定着ローラの方向への電界の強さは、大きいほどプラス極性の汚れに与える静電気力が増えるため、加熱フィルム112表面にプラス極性の汚れが付着しにくくなる。しかし、大きすぎると加熱フィルムと定着ローラで放電が発生する場合や、電流リークが発生する恐れがあるため、この(加熱フィルムの表面電位−定着ローラの表面電位)の電位差は+100V〜+3kV程度が好ましい。
【0051】
本実施形態では、一例として加熱フィルム112の表面電位をトナーと逆極性の+500Vとし、定着ローラ110の表面電位はマイナス極性の−500Vに制御することでその電位差を+1kVとした。
【0052】
(本実施形態の効果)
加熱フィルム112の表面電位をトナーと逆極性の+500Vにし、定着ローラ110の表面電位を−500Vにした本実施形態の構成と、比較例とを比較した。比較例は、外部高圧電源130、131をオフとし、加熱フィルム112と定着ローラ110の表面電位を0V(加熱フィルムの表面電位−定着ローラの表面電位=0V)にしたものである。そして、印字耐久を行い加熱フィルム112の汚れの比較を行なった。汚れの比較は、各構成において定着装置100の寿命の2倍である10万枚まで印字耐久を行い、加熱フィルムの汚れによる定着不良及び汚れの吐き出しによる画像不良の発生有無を調査した。
【0053】
定着性は濃度低下率で表し、以下の方法で算出する。測定器はマクベス反射濃度計RD914を用い、紙上に定着されたハーフトーン画像を、シルボン紙を5枚重ねたところに荷重0.4N/cmで5往復擦った前後の濃度を測定する。本実施形態では、ハーフトーン濃度として擦る前の濃度D1が約0.7のものを用いた。擦った後の濃度をD2とすると、濃度低下率は(D1−D2)/D1により算出される。
【0054】
印字耐久5000枚、1万枚、2.5万枚、5万枚、7.5万枚、10万枚の各時点でブラック単色のハーフトーン画像を印字し、上記濃度低下率の測定を行い定着性の評価を行った。濃度低下率が10%未満の場合を良好な定着性とし○、10%以上20%未満を△、濃度低下率が20%以上のものを定着不良として×と評価した。また、定着性の判断基準は装置の仕様によるものであり、必要とされる定着性は装置によって適宜決めることができる。
【0055】
加熱フィルムの汚れの吐き出しによる画像不良は、汚れの吐き出しによる画像不良が無かった場合を○、画像不良が発生した場合を×として評価した。結果を表2に示す。加熱フィルム112の表面電位をトナーと逆極性の+500Vにし、定着ローラ110の表面電位を−500Vにした本実施形態の構成では、定着装置の寿命の2倍である10万枚まで定着不良及び汚れの吐き出しによる画像不良の発生は無かった。一方、加熱フィルム112と定着ローラ110の表面電位を0Vにした場合、1万枚から加熱フィルム112の汚れによる定着性の低下が見られ、5万枚以降で定着不良と画像への汚れの吐き出し(画像不良)が確認された。
【0056】
【表2】

【0057】
加熱フィルム112に付着する汚れは、上述のようにトナーと逆極性である転写バイアスと同極性となるため、加熱フィルム112の表面電位もトナーと逆極性に制御することで、加熱フィルム112への汚れの付着を抑制することができる。また、加熱フィルム112の表面電位と定着ローラ110の表面電位を制御し、汚れが加熱フィルムから定着ローラへ向かう方向へ電位差を設けることで、より加熱フィルム112への汚れの付着を防止することができる。
【0058】
《第2の実施形態》
本実施形態においては、加熱回転体へ汚れの付着を抑制すると共に、加圧部材への汚れの付着も抑制している。未定着トナー像を形成する画像形成装置については、第1の実施形態と同じく一般的であり説明を省略する。また定着装置においても、基本構成は第1の実施形態と同じく回転接触式の外部加熱定着装置であり、同じ部材については、同一の符号で示し説明を省略する。本実施形態では第1の実施形態と同様にトナーが定着ローラから加熱回転体へ力を受ける方向に定着ローラの表面電位を制御する構成に加え、トナーが定着ローラから加圧部材へ力を受ける方向に加圧部材の表面電位も制御している。
【0059】
(加圧部材の表面電位と電界の向き)
回転接触式の外部加熱定着装置は、上述のように加熱回転体に汚れが付着することがあるが、一方で、加圧部材にも汚れが付着する場合がある。上述のように記録材P上のトナー像Tが定着ニップN1で定着されるときに、記録材Pとトナー像Tに接触する定着ローラ110には僅かな量のトナーと紙粉などの汚れが付着する。定着ローラ110に付着した汚れは、加熱ニップN2に到達する。
【0060】
しかし、加熱回転体の表面電位をトナーと逆極性にすることで、定着ローラ110に付着したトナーと逆極性の汚れは、加熱ニップ部N2部で加熱回転体に転移されにくくなる。そして、殆どが定着ローラ110表面に付着したまま加熱ニップN2を通過する。定着ローラ110に表面に付着したトナーと逆極性の汚れは定着ニップN1に再び到達すると、定着ニップN1部で一部加圧部材へ転移する場合がある。このように記録材Pへのトナー像Tの定着が繰り返されると、加圧部材に汚れが堆積する可能性がある。
【0061】
本実施形態では、第1の実施形態と同様にトナーと逆極性の汚れが加熱回転体から定着ローラへ力を受ける方向に加熱回転体と定着ローラの表面電位に電位差を設け加熱回転体の汚れを抑制する。これと共に、トナーと逆極性の汚れが加圧部材から定着ローラへ力を受ける方向に加圧部材と定着ローラの表面電位に電位差を設け、加圧部材への汚れの付着を抑制している。
【0062】
本実施形態の定着装置の概略図を図3に示す。本実施形態の定着装置の基本構成は、第1の実施形態と同じ構成であり説明を省略する。第1の実施形態と同様に、トナーと逆極性(プラス極性)の汚れが加熱フィルム112表面に付着するのを抑制するため、加熱フィルム112の表面電位は外部高圧電源130によりプラス極性に制御される。更に加熱フィルム112から定着ローラへ電界が向くように、定着ローラ110の表面電位が制御されている。
【0063】
本実施形態では更にプラス極性の汚れが加圧部材である加圧ローラ111表面に付着しにくいように、加圧ローラ111から定着ローラ110の方向へ電界の向きを制御している。加熱フィルム112の表面電位の極性をトナーと逆極性に制御しながら、電界の向きを加熱フィルム112から定着ローラ110の方向と、加圧ローラ111から定着ローラ110の方向へ向けるには、図4のA〜Cに示すような3通りの方法がある。
【0064】
Aの方法は、加熱フィルム112と定着ローラ110と加圧ローラ111の定着部材の表面電位の極性を全てトナーと逆極性にし、定着ローラ110の表面電位を加熱フィルム112と加圧ローラ111の表面電位よりも小さくする方法である。Bの方法は、加熱フィルム112の表面電位の極性をトナーと逆極性とし、定着ローラ110と加圧ローラ111の表面電位の極性をトナーと同極性にし、加圧ローラ111より定着ローラ110のマイナス電位を大きくする方法である。
【0065】
Cの方法は、加熱フィルム112と加圧ローラ111の表面電位の極性をトナーと逆極性にし、定着ローラ110の表面電位をトナーと同極性にする方法である。トナーと逆極性の汚れが加熱フィルムから定着ローラへ力を受ける方向と、加圧ローラから定着ローラへ力を受ける方向に、電位差が同じだけ設けられればA〜Cいずれの方法であっても、加熱フィルムと加圧ローラへの汚れの抑制効果は同じである。
【0066】
しかし、互いに接触する部材間で極性が異なるCの方法は、各部材の制御バイアスの絶対値が小さくても大きい電位差を設けられる。このため、本実施形態ではCの方法も用い、加熱フィルムと加圧ローラの表面電位をプラス極性、定着ローラの表面電位をマイナス極性に制御した。本実施形態では、加圧ローラ111の表面電位をトナーと逆極性に制御する手段として、定着ローラ110の表面電位の制御手段190と同様、非接触の帯電装置150(図3)を用いた。
【0067】
外部高圧電源132によりトナーと逆極性のプラス極性のバイアスが印加され加圧ローラ111の表面電位はプラス極性に帯電されるようになっている。
【0068】
(加圧ローラの表面電位−定着ローラの表面電位)
加圧ローラの表面電位−定着ローラの表面電位の電位差、すなわち加圧ローラから定着ローラの方向への電界の強さは、大きいほどプラス極性の汚れに与える静電気力が増えるため、加圧ローラ111表面にプラス極性の汚れが付着しにくくなる。しかし、大きすぎると加圧ローラ111と定着ローラ110で放電が発生する場合などノイズの発生しやすくなるため、この電位差は+100V〜+3kV程度が好ましい。
【0069】
本実施形態では、第2の実施形態と同様に加熱フィルム112の表面電位は+500V、定着ローラ110の表面電位は−500Vに制御し、加圧ローラ111の表面電位を+500Vに制御した。これにより、加圧ローラ111と定着ローラ110の表面電位の電位差を+1kVとした。
【0070】
(本実施形態の効果)
本実施形態の構成においても、第1の実施形態と同様の通紙耐久試験を行った。加熱フィルム112の表面電位をトナーと逆極性に制御していることに加え、加熱フィルム112から定着ローラ110の方向へ電界の向き制御を行った。これにより、加熱フィルムの汚れを抑えることができ、定着装置の寿命の2倍である10万枚まで定着不良及び加熱フィルムの汚れの吐き出しによる画像不良の発生は無かった。また、加圧ローラ111から定着ローラ110の方向へ電界の向きを制御しているため、加圧ローラ111の汚れの付着も防止することができた。
【0071】
《その他の実施形態》
(トナー極性)
本発明に関し、上述した実施形態においてトナーをマイナス極性とし、加熱回転体を逆極性であるプラス極性として説明したが、トナーをプラス極性とする場合も加熱回転体を逆極性であるマイナス極性とすることにより同様に適用できる。この場合、汚れの極性はトナーと逆極性であるマイナス極性となることで、加熱回転体への付着が抑制される。また加熱ローラ、加圧ローラなどの極性付与も上述した実施形態と逆の極性とすれば良い。
【0072】
(極性付与手段)
加熱回転体の表面電位の極性付与手段として、外部高圧電源により加熱回転体の基層からバイアスを印加することで加熱回転体の表面電位を制御する手段について説明したがこの手段に限ったものでは無い。例えば、図5に示すように、加熱回転体とアースの間にダイオード144を設けても良い。加熱回転体112で発生したマイナス極性の電子は、N形からP形に図中矢印Y方向へ移動するため、加熱回転体112にはプラス電荷が残り、加熱回転体112表面はプラス極性に帯電する。このようにダイオードを用いることで定着器構成が単純化できる。
【0073】
また、図6に示すように加熱回転体の表面から帯電手段により、表面電位の極性をトナーと逆極性に制御しても良い。図6(a)はコロナ帯電方式の帯電装置160を用い非接触で加熱フィルム112の表面をトナーと逆極性に帯電させた場合の模式図である。回転する加熱フィルム112に対して、バイアス印加する摺動接点など摺動する箇所が無いため、加熱フィルム112を傷つけることが無い。また図6(b)は、帯電ローラ161による接触帯電方式である。帯電ローラ161は加熱回転体に対して従動回転するため、図6(a)同様に、加熱フィルム112を傷つけにくい。
【0074】
また加熱回転体の表層(離型層)にカーボン系フィラーにより導電化することで、加熱回転体表面へ直接バイアスを印加し表面電位を制御しても良い。
【0075】
なお、上記表面電位の制御手段は、加熱回転体の表面電位制御手段に限った手段ではなく、定着ローラや加圧部材の表面電位手段として、上記方法を用いても良い。
【0076】
(加熱回転体)
第1の実施形態から第2の実施形態においては、加熱回転体、定着ローラ、加圧部材について、同一の構成で説明したがこの構成に限ったものでは無い。例えば、加熱回転体としては、図7に示すように加熱体として加熱ヒータ113の替わりにハロゲンヒータ170を回転体中心に内包した熱ローラ171を用いても良い。この場合も熱ローラ171の表面電位をトナーと逆極性に制御することで、熱ローラ171表面の汚れの付着を防止することができる。
【0077】
なお、加熱回転体が加熱体(加熱ヒータ113、ハロゲンヒータ170など)を内包するものに限らず、加熱フィルム112を電磁誘導的に発熱させる励磁コイルを加熱回転体である加熱フィルム112の外側に設けても良い。
【0078】
(定着ローラ)
定着ローラについても、絶縁のシリコーンゴムの構成について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、弾性層にカーボンフィラーを添加した導電性シリコーンゴムを用い、外部高圧電源などによりその芯金からトナーとは逆極性のバイアスが印加することで表面電位を制御しても良い。
【0079】
(加圧部材)
加圧ローラについても、絶縁のシリコーンゴムの構成について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、弾性層にカーボンフィラーを添加した導電性シリコーンゴムを用い、外部高圧電源などによりその芯金からトナーとは逆極性のバイアスが印加することで表面電位を制御しても良い。
【0080】
また加圧部材として、加圧ローラを用いた構成について説明してきたが、本発明はこれに限らず、図8のように回転しないパッド部材180などの加圧部材を用いても良い。
【符号の説明】
【0081】
110・・定着ローラ、111・・加圧ローラ、112・・加熱回転体、113・・加熱ヒータ、114・・加圧バネ、115・・温度検知素子、116・・弾性ゴム層、
117・・芯金、118・・離型層、119・・ヒータホルダー、130、131・・外部高圧電源、190・・コロナ帯電器、P・・記録材、T・・トナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部材と、
前記回転部材の外表面に圧接して前記回転部材を外部加熱する加熱回転体と、
を有し、前記加熱回転体からの熱エネルギーを前記回転部材を介してトナー画像を担持した記録材に付与する画像加熱装置において、
前記加熱回転体の前記外表面に接する表面電位を前記トナーの極性と逆極性である前記記録材の汚れの極性と同じ極性とする極性付与手段を有することを特徴とする画像加熱装置。
【請求項2】
前記記録材の汚れは、紙粉汚れ、あるいは前記紙粉汚れに前記トナーの汚れが混ざった汚れであることを特徴とする請求項1に記載の画像加熱装置。
【請求項3】
前記極性付与手段はバイアス印加手段であることを特徴とする請求項1に記載の画像加熱装置。
【請求項4】
前記極性付与手段は前記トナーと同じ極性の電荷が前記加熱回転体からアースへ移動する方向にダイオードであることを特徴とする請求項1に記載の画像加熱装置。
【請求項5】
前記極性付与手段は前記加熱回転体と接触する或いは非接触の帯電装置であることを特徴とする請求項1に記載の画像加熱装置。
【請求項6】
前記加熱回転体は、半径方向に異なる複数の層から形成され、該加熱回転体の最も内側の層と最も外側の層の少なくともいずれか一方の層が導電層であることを特徴とする請求項1に記載の画像加熱装置。
【請求項7】
前記トナーが前記回転部材から前記加熱回転体の方向へ静電気力を受けるように、前記回転部材の表面電位と前記加熱回転体の表面電位に電位差を設けることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像加熱装置。
【請求項8】
前記回転部材の表面電位の極性は、前記トナーの極性と同極性であることを特徴とする請求項7に記載の画像加熱装置。
【請求項9】
前記回転部材の表面電位の極性は、前記トナーの極性と逆の極性であることを特徴とする請求項7に記載の画像加熱装置。
【請求項10】
前記回転部材と接触してニップ部を形成するバックアップ部材を有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像加熱装置。
【請求項11】
前記トナーが前記回転部材から前記バックアップ部材の方向へ静電気力を受けるように、前記回転部材の表面電位と前記バックアップ部材の表面電位に電位差を設けることを特徴とする請求項10に記載の画像加熱装置。
【請求項12】
前記バックアップ部材の表面電位の極性は、前記トナーの極性と逆の極性であることを特徴とする請求項10に記載の画像加熱装置。
【請求項13】
前記バックアップ部材が加圧ローラであることを特徴とする請求項10に記載の画像加熱装置。
【請求項14】
前記バックアップ部材が回転しないパッド部材であることを特徴とする請求項10に記載の画像加熱装置。
【請求項15】
前記加熱回転体は加熱体を内包することを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の画像加熱装置。
【請求項16】
記録材に未定着トナー画像を形成する画像形成部と、前記未定着トナー画像を前記トナーと逆極性で記録材に転写する転写部と、前記未定着トナー画像を加熱定着する定着部とを有する画像形成装置であって、前記定着部が請求項1乃至15のいずれか1項に記載の画像加熱装置であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−128262(P2012−128262A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280733(P2010−280733)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】