説明

画像取得装置および画像取得システム

【課題】 撮像素子と光学素子が近接した構成において、撮像素子と光学素子との間の輻射及びその他の伝熱による影響を抑制し、高解像度の画像が取得できる画像取得装置を提供すること。
【解決手段】 被検物を結像する結像光学系と、結像光学系により結像された被検物を撮像する撮像素子501を含む撮像部と、を備える画像取得装置において、結像光学系と撮像部との間に配置される反射膜522、を有する真空断熱材520を備えており、反射膜522は、撮像素子501への入射光が通過する有効領域以外に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像取得装置および画像取得システムに関する。
【背景技術】
【0002】
病理学の分野等で、被検物を撮像することによりデジタル画像を画像取得装置で取得し、そのデジタル画像を高解像度で表示装置に表示する画像取得システムが注目されている。
【0003】
画像取得装置では被検物を高解像度で高速に撮像することが求められており、そのためには、被検物のなるべく広い領域を高解像度で一度に撮像する必要がある。そこで、広視野かつ高解像度の対物レンズを用い、その視野内に撮像素子群を配置した画像取得装置が提案されている(特許文献1)。
【0004】
撮像素子は温度が高くなると暗電流によるノイズの影響を受け画像が劣化する傾向がある。したがって、高画質な画像を取得するには、撮像素子を冷却して使用することが重要となる。撮像素子の冷却手段としては、素子の裏面に熱電素子を配置する方法が知られており、例えばペルチェ素子を用いると0℃以下まで冷却することができる。一方、対物レンズなどの光学素子は、画像取得を行う環境の温度に合わせて(たとえば、室温に合わせて20℃程度で)設計される。温度の異なる2つの部材が近接すると伝熱により影響し合うので、撮像素子と光学素子が近接する場合、光学素子の温度が設計値よりも大きく低下し、その結果、熱歪により光学性能が劣化し高解像度の画像が取得出来なくなる。
【0005】
特許文献2には、発熱プレート上の検体を高温状態で観察する場合に、発熱プレートの熱が対物レンズに伝熱しないように、空気流を形成するプロテクターを対物レンズと発熱プレート間に配置する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−003016号公報
【特許文献2】特登録03096038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載されているプロテクターには透明なガラスが用いられているため、輻射による伝熱を抑制できない。また、断熱効果を得るために多くの空気を流す必要があるので流路径が大きくなってしまい、対物レンズと検体を近接させることができないといった課題がある。よって、撮像素子と対物レンズとが近接した構成の画像取得装置において、特許文献2に記載のプロテクターを配置することは困難となる。
【0008】
そこで、本発明の例示的な目的は、撮像素子と光学素子とが近接した構成において、撮像素子と光学素子との間の輻射及びその他の伝熱による影響を抑制し、高解像度の画像が取得できる画像取得装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての画像取得装置は、被検物を結像する結像光学系と、該結像光学系により結像された前記被検物を撮像する撮像素子を含む撮像部と、を備え、前記結像光学系と前記撮像部との間に配置される不透明部、を有する伝熱抑制手段を備えており、前記不透明部は、前記撮像素子への入射光が通過する有効領域以外に配置されることを特徴とする。
【0010】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下、添付の図面を参照して説明される好ましい実施形態によって明らかにされる。
【発明の効果】
【0011】
近接する撮像素子と光学素子との間の輻射及びその他の伝熱を抑制し、高解像度の画像が取得できる画像取得装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】画像取得システム100の図である。
【図2】プレパラート30の図である。
【図3】対物レンズ40の図である。
【図4】撮像ユニット50の図である。
【図5】実施例1を説明するための撮像ユニット周辺の概略断面図である。
【図6】実施例2を説明するための撮像ユニット周辺の概略断面図である。
【図7】実施例3を説明するための撮像ユニット周辺の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の好ましい実施例を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、画像取得システム100の図である。図1に基づいて、本実施例の画像取得システム100について説明する。画像取得システム100は、被検物(プレパラート)の画像を取得し、その画像を表示するためのシステムである。
【0015】
画像取得システム100は、プレパラート30を撮像する画像取得装置としての顕微鏡1と、顕微鏡1で取得したデジタル画像を表示する表示装置3を備える。
【0016】
まず、顕微鏡1について説明する。
【0017】
顕微鏡1は、プレパラート30を照明する照明ユニット10と、プレパラート30を結像する対物レンズ40と、プレパラート30を撮像する撮像ユニット50を有する。ステージ20は、プレパラート30を保持し移動させる部材である。
【0018】
照明ユニット10は、光源部(不図示)と、光源部からの光をプレパラート30へ導く照明光学系(不図示)とを含む。光源部の光源としては、白色光源またはLED光源などを用いることができる。本実施例における光源は、RGBの各波長を持つLEDを備え、各波長の光が切り替え可能な構成としている。ここで、白色光源を用いる場合は、カラーフィルタとの組み合わせによりRGBの各波長の光を生成する構成としてもよい。
【0019】
ステージ20は、プレパラート30を保持する保持部(不図示)と、保持部をXY方向に移動させるXYステージ22と、保持部をZ方向に移動させるZステージ24とを含む。ここで、Z方向は、対物レンズ40の光軸方向に相当し、XY方向は、その光軸に垂直な方向に相当する。XYステージ22およびZステージ24には、照明ユニット10からの光を通過させるための開口が設けられている。
【0020】
図2(a)は、プレパラート30の上面図、(b)は断面図である。被検物の一例であるプレパラート30は、図2に示したように、カバーガラス301と試料302とスライドガラス303で構成される。スライドガラス303上に配置された試料302(組織切片等の生体サンプルなど)は、カバーガラス301および接着剤304で密封されている。スライドガラス303上には、例えばスライドガラスの識別番号およびカバーガラスの厚さなどプレパラート30(試料302)を管理するのに必要な情報が記録されたラベル(バーコード)333が貼付されていてもよい。なお、本実施例では、画像取得の対象となる被検物としてプレパラート30を例示したが、例えば、外観検査(異物の付着、キズの検査等)を行う目的で、基板などを被検物としても良い。
【0021】
図3は、対物レンズ40の図である。対物レンズ40は、プレパラート30を所定の倍率で拡大して撮像ユニット50の撮像面上に結像するための結像光学系である。具体的には、図3に示したように、対物レンズ40は、レンズおよびミラーを含み、物体面Aを撮像面B上に結像する。本実施例において、対物レンズ40はプレパラート30と撮像ユニット50の撮像面とが光学的に共役となるように配置されており、物体面A上の物体がプレパラート30に相当し、撮像面Bは撮像ユニット50の撮像部555(詳細は後述)の表面に相当する。対物レンズ40の物体面側の開口数NAは0.7以上が好ましい。また、対物レンズ40は、物体面上の少なくとも10mm×10mmの領域を一度に良好に結像することができるように構成されていることが好ましい。対物レンズ40の光学設計は、画像取得が行われる環境の温度を参考にして行われる。たとえば、平均的な環境温度が20℃のとき、20℃を基準として設計される。この場合、光学性能が保障される対物レンズ40の温度は10℃〜30℃程度であり、この温度範囲で画像取得を行うことが必要となる。
【0022】
図4は、撮像ユニット50の上面図である。撮像ユニット50は、図4に示したように、2次元配列された複数の撮像素子501からなる撮像部555を含み、対物レンズ40の像面のうちの領域Fを一度に撮像できる構成となっている。この撮像部555により、図3で示した撮像面Bを形成している。撮像素子501としては、CCDやCMOS等を用いることができる。撮像ユニット50に搭載される撮像素子の数は、対物レンズ40の像面の面積に応じて適宜決定される。撮像素子の配置も、対物レンズ40の像面の形状や撮像素子の形状・構成などによって適宜決定される。本実施例では、説明を分かり易くするために、撮像部555としてX−Y方向に5×4個のCMOSが並んでいるものを用いる。一般的な撮像ユニット50では、複数の撮像素子501の各々において、撮像領域541の周囲に基盤面542が存在するため、撮像領域541どうしを隙間なく隣接して配置することは不可能である。そのため、撮像ユニット50での1回の撮影で得られる画像は、撮像領域541どうしの隙間に対応する部分が抜け落ちたものとなってしまう。そこで本実施例の画像取得装置では、この撮像領域541どうしの隙間を埋めるため、ステージ20を移動してプレパラート30と撮像部555との相対位置を変更しながら撮像を複数回行うことで、抜けのない試料302の画像を取得する構成としている。この動作を高速に行うことにより、撮像に要する時間を短縮しつつ、広い領域の撮像を行うことができる。なお、撮像ユニット50は、不図示の本体フレーム、あるいは、不図示の対物レンズ40の鏡筒によって保持されている。
【0023】
図1の説明に戻る。制御装置2は、CPU、メモリ、ハードディスクなどを含むコンピュータによって構成される。制御装置2は、撮像における制御を行うとともに、撮像したプレパラート30の像のデータを処理することで、デジタル画像を作成する。具体的には、制御装置2は、ステージ20をXY方向に移動しながら複数回撮像した画像どうしの位置合わせを行い、それらの画像を接続し、隙間の無い試料302の画像を作成する。また、本実施例の画像取得装置では光源部からのRGBの夫々の色ごとに試料302の像の撮像を行っているため、制御装置2でそれらの像のデータを合成することで試料302のカラー画像を作成する。
【0024】
次に、撮像素子501の冷却手段について説明する。本発明に係る画像取得装置においては、熱電素子により撮像素子501を冷却することで、暗電流によるノイズを低減した高画質な画像を取得することができる。以下、図5を用いて具体的に説明する。
【0025】
図5(a)は、図4のBB断面図である。撮像素子501は、基板502を介して熱電素子であるペルチェ素子510と熱的に接続しており、ペルチェ素子510により冷却される。ペルチェ素子510は、基板502と熱伝導性の高い金属ブロック511(たとえば、銅、アルミやヒートパイプ)で挟まれた構成となっており、固定部材503(ネジなど)により強固に固定される。ペルチェ素子510は、低温側を基板502、高温側を金属ブロック511に取り付けられ、ペルチェ素子510と基板502及び、ペルチェ素子510と金属ブロック511の各接触面には、熱伝導性シートあるいは熱伝導性グリスが塗布される。保持部504は、金属ブロック511と定盤560を連結し撮像素子501を保持する。ヒートパイプ512は、金属ブロック511と放熱フィン513の間に設けられており、撮像素子501とペルチェ素子510で発熱した熱を放熱フィン513に輸送し放熱する。放熱フィン513の冷却は、放熱する熱量、温度、設計スペースなどの条件に合わせて、自然対流方式、ファンを用いた強制対流方式、あるいは、水冷方式を適宜に選択すればよい。
【0026】
また、ペルチェ素子510に印加する電流値は、撮像素子501が所望の管理温度T1になるように、温度センサ514に基づいて制御部505により制御される。管理温度T1は、撮像素子501の仕様によって適宜決められる値であり、本実施例では5℃程度である。なお、定盤560は、不図示の本体フレーム、あるいは、不図示の対物レンズ40の鏡筒によって保持されている。なお、本実施例では、撮像素子501の冷却手段としてペルチェ素子510を用いているが、ヒートシンクやフィンを基板502に配置して水冷や空冷を用いて冷却してもよい。一方、対物レンズ40は画像取得が行われる環境の温度T2(本実施例では20℃程度)で光学設計される。したがって、撮像素子501と対物レンズ40が近接している場合、対物レンズ40の温度が下がり、熱歪や屈折率変化により光学性能が劣化する。そこで、本実施例では、撮像素子501への入射光570を遮らないように、撮像素子501と対物レンズ40との間に伝熱抑制手段を配置する。その結果、撮像素子501と対物レンズ40との間の伝熱を抑制し、各々を所望の温度であるT1及びT2に管理することができ、高画質な画像を取得できる。
【0027】
以下、図5を用いて、本実施例の伝熱抑制手段について具体的に説明する。本実施例では、伝熱抑制手段として、不透明部である反射膜522を有する真空断熱材520を用いており、これにより輻射及びその他の伝熱を抑制することができる。真空断熱材520は、撮像素子501とレンズ401との間に配置されている。なお、レンズ401は、対物レンズ40を構成するレンズのうち撮像素子501に最も近接するレンズである。真空断熱材520は、容器内に略真空の閉空間523を有する構成となっており、容器に透明な平板ガラス521a、521b(厚さ数mm以下)を用いることで、撮像素子501への入射光を透過できるようにしている。真空の場合、熱伝導及び対流は生じないため、それらによる伝熱を防止することができる。また、閉空間523の厚み方向のサイズに下限はないので、真空断熱材520の厚みは、平板ガラス521a、521bの加工や強度などの制約から決まる。したがって、本実施例の真空断熱材520は、平板ガラス521a、521bの間に流体(空気、水など)を流す構成の断熱材よりも厚みを小さくできる利点がある。
【0028】
なお、真空においても輻射による伝熱が発生する。よって、真空断熱材520を配置しても、撮像素子501とそれに近接するレンズ401との間で伝熱が生じてしまう。そこで本実施例では、真空断熱材520に不透明部として反射膜522を形成することで、輻射による伝熱を抑制している。反射膜522は、閉空間523の表面において、撮像素子501への入射光が通過する有効領域524以外に蒸着されている。反射膜522には輻射率の低い(0.5以下の)、不透明な材料が用いられているため、反射膜522が蒸着されている領域は、蒸着されていない有効領域524よりも輻射による伝熱量が小さい。よって、平板ガラス521aから平板ガラス521bに流入する熱量を低減することができる。
【0029】
また、平板ガラス521aの下面において、撮像素子501への入射光が通過する有効領域524以外には、輻射率の高い(0.5以上の)光吸収膜525が形成されている。したがって、撮像素子501に結像しない入射光571が反射膜522で反射して、撮像素子501に入射するのを抑制できる。なお、光吸収膜525は平板ガラス521aの下面に限定されず、平板ガラス521bの上面や側面にも塗布されてもよい。
【0030】
以上、本実施例の画像取得装置は、伝熱抑制手段として真空断熱材520を備えることで、近接した撮像素子501とレンズ401との間の伝熱を抑制することができ、各々を所望の温度に管理することができる。特に本実施例の伝熱抑制手段は、撮像素子501への入射光が通過する有効領域以外に不透明部である反射膜522を形成することで、輻射による伝熱を抑制できるので、高画質な画像を取得できる。
【実施例2】
【0031】
以下、図6を参照して、本発明の別の実施例について説明する。以下の説明において、上述した実施例と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略もしくは省略する。図6(a)は図4のBB断面図である。本実施例における伝熱抑制手段は、不透明部である発熱ヒータ602と、温度センサ601とヒータ制御部603で構成される。発熱ヒータ602には導電板、導電性膜や導線などの薄型ヒータを用いることができる。発熱ヒータ602は、撮像素子501への入射光が通過する有効領域以外に形成され、透明な平板ガラス604(厚み数mm)の下面に配置される。ここで、発熱ヒータ602は導電板等の不透明な部材で形成されているので、撮像素子501とそれに近接するレンズ401との間の輻射による伝熱を抑制することができる。
【0032】
また、ヒータ制御部603によって発熱ヒータ602へ印加する電力を制御することにより、発熱ヒータ602の温度を制御することができる。このことにより、温度センサ601に基づいてレンズ401の温度を光学性能の保障される温度T2に保つことができるため、熱伝導及び対流によるレンズ401の温度低下を抑制することができる。なお、撮像素子501は、実施例1と同様にペルチェ素子510を用いて所望の温度T1に制御される。
【0033】
ところで、撮像素子501の管理温度T1がレンズ401の管理温度T2より低い場合は、撮像素子501において結露が発生する恐れがある。しかし、本実施例においては、平板ガラス604と壁面605で形成されるケース606が、撮像素子501とペルチェ素子510を取り囲み、その内部に乾燥空気608(露点が温度T1未満の空気)が封入されている。したがって、撮像素子501の管理温度T1が周辺空気の露点以下であったとしても結露が発生することはない。なお、ケース606は、撮像素子501に結露する恐れのない場合、すなわち撮像素子501の周辺空気の露点がT1未満の場合は取り外すことが可能である。また、撮像素子501に結像しない入射光571の反射を抑制するために、発熱ヒータ602の表面には光吸収膜を形成してもよい。
【0034】
以上、本実施例の画像取得装置は、撮像素子501への入射光が通過する有効領域以外に配置される発熱ヒータ602、を含む伝熱抑制手段により、撮像素子501と近接するレンズ401との間の伝熱による影響を抑制することができる。したがって、撮像素子501と近接するレンズ401を各々所望の温度に管理することができるので、高画質な画像を取得できる。
【実施例3】
【0035】
以下、図7を参照して、本発明の別の実施例について説明する。以下の説明において、上述した実施例と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略もしくは省略する。図7(a)は図4のBB断面図である。本実施例における伝熱抑制手段は、不透明部である銅板705を含み、ペルチェ素子510、金属ブロック511、ヒートパイプ512、放熱フィン513、温度センサ701、702、制御部703、放熱ファン704から構成される。銅板705は、撮像素子501とレンズ401との間で、熱伝導手段であるヒートパイプ512により保持されており、撮像素子501への入射光が通過する有効領域には開口706が形成されている。銅板705の下面には、撮像素子501に結像しない入射光571の反射を抑制するために光吸収膜が施されている。なお、銅板705は、銅に限らずアルミ板やヒートパイプなどの不透明で熱伝導性の良い部材であればよく、これにより、撮像素子501とそれに近接するレンズ401との間の輻射による伝熱を抑制することができる。
【0036】
放熱ファン704は、強制対流により放熱フィン513を介してヒートパイプ512の放熱を促進する冷却機構である。放熱ファン704の回転数は、制御部703により、レンズ401と基板502に取り付けられた温度センサ701および702に基づいて制御される。なお、本実施例では、冷却機構として放熱ファン704による空冷を用いているが、制御部703により循環ポンプ内の冷媒の流量を制御する液冷を用いてもよい。さらに、温調機を併用することも可能であり、その場合、ファンあるいは循環ポンプは、温調された冷媒(空気、液体)を供給することにより放熱フィン513を冷却する。ヒートパイプ512は、ペルチェ素子510の高温側と接触している金属ブロック511と連結しており、撮像素子501とペルチェ素子510で発生する熱を放熱フィン513に輸送し放熱する。本実施例では、ヒートパイプ512は、基板502を貫通して銅板705と熱的に接続しているので、基板502とは熱的に分離している。このとき、銅板705の温度はペルチェ素子510の高温側の温度T3と略同一になる。よって、銅板705の温度T3は放熱ファン704の回転数で制御することが可能であり、回転数を上げると温度T3は下がることになる。したがって、制御部703が温度センサ701に基づいて放熱ファン704の回転数を制御することにより、レンズ401が管理温度T2となるように銅板705の温度T3を制御できるため、熱伝導及び対流によるレンズ401の温度低下を抑制することができる。
【0037】
また、撮像素子501の温度は、実施例1、2と同様にペルチェ素子510に印加する電流値により制御できる。すなわち、温度センサ702に基づいて撮像素子501が管理温度T1になるように、制御部703が電流値を制御する。
【0038】
なお、管理温度T1、T2などの条件に応じては、撮像素子501に結露が生じる恐れがある。その場合は図6と同様に乾燥空気を封入したケースで撮像素子501を囲むことで、結露の発生を抑止できる。このとき、ケースの底部は、撮像素子501と銅板705との間に挿入され、撮像素子501への入射光570が通過する領域には透明ガラスを有するものを用いることができる。また、ケースの底部にはヒートパイプ512が貫通できるように開口が形成され、ケースとヒートパイプ512の隙間は弾性体で封止される。
【0039】
以上、本実施例の画像取得装置は、撮像素子501への入射光が通過する有効領域以外に配置される銅板705、を含む伝熱抑制手段により、撮像素子501と近接するレンズ401との間の伝熱による影響を抑制することができる。したがって、撮像素子501と近接するレンズ401を各々所望の温度に管理できるので、高画質な画像を取得できる。また、撮像素子501とペルチェ素子510の排熱を利用してレンズ401を加熱しているので、ヒータなどに較べて温調に使用する電力を削減できる。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0041】
40 対物レンズ
401 レンズ
501 撮像素子
505 制御部
510 ペルチェ素子
511 金属ブロック
512 ヒートパイプ
513 放熱フィン
520 真空断熱材
602 発熱ヒータ
603 ヒータ制御部
705 銅板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検物を結像する結像光学系と、
該結像光学系により結像された前記被検物を撮像する撮像素子を含む撮像部と、
を備える画像取得装置において、
前記結像光学系と前記撮像部との間に配置される不透明部、を有する伝熱抑制手段を備えており、
前記不透明部は、前記撮像素子への入射光が通過する有効領域以外に配置される
ことを特徴とする画像取得装置。
【請求項2】
前記撮像素子を冷却するための冷却手段と、該冷却手段に印加する電流を制御することにより前記撮像素子の温度を制御する制御部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像取得装置。
【請求項3】
前記冷却手段は、前記撮像素子と熱的に接続された熱電素子からなることを特徴とする請求項2に記載の画像取得装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記撮像素子の温度を前記結像光学系の温度よりも低くなるように制御することを特徴とする請求項2または3に記載の画像取得装置。
【請求項5】
前記伝熱抑制手段は、真空の閉空間を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像取得装置。
【請求項6】
前記不透明部は、輻射率が0.5以下の反射膜であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像取得装置。
【請求項7】
前記伝熱抑制手段の表面において、前記撮像素子への入射光が通過する有効領域以外に、輻射率が0.5以上の光吸収膜を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像取得装置。
【請求項8】
前記不透明部はヒータであり、該ヒータに印加する電力を制御することにより該ヒータの温度を制御するヒータ制御部を有しており、該ヒータ制御部は前記ヒータの温度を制御することにより前記結像光学系の温度を制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像取得装置。
【請求項9】
前記ヒータの表面に、輻射率が0.5以上の光吸収膜を有することを特徴とする請求項8に記載の画像取得装置。
【請求項10】
前記熱電素子の熱を前記不透明部に伝導させる熱伝導手段と、
冷媒を供給することによって該熱伝導手段を冷却する冷却機構と、を備え、
前記制御部は、前記冷却機構が供給する冷媒の流量および温度の少なくともいずれか一方を制御して前記熱伝導手段の温度を制御することにより前記不透明部の温度を制御し、かつ前記不透明部の温度を制御することにより前記結像光学系の温度を制御することを特徴とする請求項3に記載の画像取得装置。
【請求項11】
前記撮像部は、複数の撮像素子を含むことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の画像取得装置。
【請求項12】
前記不透明部は、前記複数の撮像素子の夫々への入射光が通過する各有効領域同士の間に配置されることを特徴とする請求項11に記載の画像取得装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の画像取得装置と、
該画像取得装置で取得された前記被検物の画像を表示する表示装置と、
を備えることを特徴とする画像取得システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−37033(P2013−37033A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170289(P2011−170289)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】