説明

画像受容材料

【課題】プリンタ内で比較的小径のロールに巻かれてた場合であっても画像受容シート部が剥れず、プリンタ内において走行不良を起こすことのない画像受容材料を提供する。
【解決手段】剥離用シート基材とその片面上に設けられた離型剤層とを有するセパレータ部、及び受容用シート基材とその片面に設けられた粘着剤層とを有する画像受容シート部を有し、前記セパレータ部の離型剤層と該画像受容シート部の該粘着剤層とが対向するように且つ剥離可能に積層されており、該画像受容シート部にハーフカットが設けられている、シールタイプの画像受容材料において、プリンタ内での給排紙方向に略直交する方向に設けられているハーフカットの前方に応力緩和部を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写シートから、熱により溶融もしくは昇華して移行する染料を受容する染料受容層を有する被熱転写シート、インクジェットインクを受容するインク受容層を有するインクジェット被記録シート、トナーを受容する被記録シートなどの画像受容材料であって、ハーフカット処理が施されたシールタイプの画像受容材料に関するものであり、プリンタ内で比較的小径の搬送ロールに巻かれた場合であっても、画像受容シート部が剥れず、プリンタ内において走行不良を起こすことのない、枚葉状もしくはロール状の画像受容材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、サーマルプリント方式、特に鮮明なフルカラー画像がプリント可能な染料熱転写プリント方式が注目されている。染料熱転写プリント方式においては、熱転写シートの染料層と被熱転写シート(印画紙)の染料染着性樹脂を含む染料受容層とを重ね合わせ、その重ね合わせ部分をサーマルヘッド等から所望画像に応じて加熱することにより、染料層の染料を染料受容層に転写して画像を形成している。最近では、転写記録後の被熱転写シートを各種物品に自由に貼り付けられるようにするために、粘着剤層を設けたシールタイプの被熱転写シートも市販されている。
【0003】
このようなシールタイプの被熱転写シートは、剥離用シート基材に離型剤層が設けられたセパレータ部と、受容用シート基材の片面に粘着剤層と他面に染料受容層とが設けられた画像受容シート部とを有し、それらが、離型剤層と粘着剤層とが対向し且つそれらの間で剥離可能に積層された構成を有している。使用に際しては、画像が形成された画像受容シート部を、セパレータ部から剥離し、画像受容シート部を各種物品に貼り付けるものである。
【0004】
このようなシールタイプの被熱転写シートに求められる品質は、画像記録濃度が高いこと、転写記録をスムーズに行えること、転写画像記録後に画像受容シート部とセパレータ部とを容易且つ正確に剥離できること、等である。剥離に関しては、転写画像記録部分領域を容易に剥離できるように画像受容シート部或いはセパレータ部にハーフカット処理を施すことが知られている(特許文献1)。
【0005】
また、剥離シート上に、粘着層を有する複数のラベルが、粘着層側から仮接着されている単純な粘着ラベルシートも古くから使用されている。このような粘着ラベルシートの製造方法の一つとして、剥離シートの全面に粘着シートを仮接着し、剥離シートをカットしないようにラベル部分だけをダイカッティングしてハーフカットを設け、不要部分を取り去るというものがある。この場合、不要部分を取り去る際にラベルが部分的に、場合により不要部分と共にラベル全体が剥がれたりすることを防止するため、粘着シートのラベル相当部分以外にハーフカット線を入れることが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭64−82988号公報(第1頁、第1図又は第2図)
【特許文献2】特開昭50−155200号公報(第1−3頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されたような従来のハーフカット処理は、「高速化・小型化したプリンタで転写記録をスムーズに行うこと」、及び「転写記録後に画像が形成された画像受容シート部とセパレータ部とを容易に剥離させること」との両立に問題があった。具体的には、画像が形成された画像受容シート部とセパレータ部との剥離を容易なものとするために、ハーフカットを深くしたり、粘着剤層の粘着性レベルを下げたり、あるいは離型剤層の離型性を向上させたりするが、転写記録前後の給排紙の際にプリンタ内で比較的小径の搬送ロールに巻かれた場合に、被熱転写シートの画像受容シート部の剛性が高いと画像形成領域がハーフカット部から剥がれ出し(ハーフカット剥がれが生じ)、意図した画像が得られなくなる場合があった。最悪の場合には、紙詰まりなどの走行不良が発生する場合もあった。このため、被熱転写シートが比較的小径のロールに巻かれた場合でもハーフカット剥がれが生じにくくするために、ハーフカットを浅くしたり、粘着剤層の粘着性を高くしたり、あるいは離型剤層の離型性を低下させることが試みられているが、いずれも、熱転写記録後、画像が形成された画像受容シート部とセパレータ部との剥離が困難になるという可能性が否定できない。また、画像受容シート部の剛性を低めることも考えられるが、被熱転写シートのコシがなくなり、得られる画像品質が損なわれるおそれがあり、また、サーマルヘッド印加圧に耐えられなくなり、被熱転写シートが折れ曲がり、走行不良が発生する可能性がある。
【0008】
また、特許文献2に記載された粘着ラベルの製造方法では、製造時の粘着ラベルの剥がれを問題にしているだけであり、そもそも粘着ラベルを、熱転写プリンタやインクジェットプリンタ、あるはレーザープリンタに装着して画像形成すること自体を想定しておらず、そのような画像形成時のハーフカット剥がれの問題は全く認識されていない。従って、そのような問題を回避するために、粘着シートのラベル相当部分以外のどのような位置にどのようなハーフカット線を設けるかについては、具体化されていない。
【0009】
このようなプリンタ内における被熱転写シートのハーフカット剥がれの問題は、他の画像受容材料、例えば、インクジェット被記録シート、トナーを受容する被記録シート等の、シールタイプの画像受容材料に共通して生ずる問題である。
【0010】
本発明の目的は、以上のような従来技術の問題を解決しようとするものであり、プリンタ内で比較的小径の搬送ロールに巻かれた場合であっても画像受容シート部が剥れず、プリンタ内において走行不良を起こすことのない画像受容材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の画像受容材料は、給排紙時における最小径の搬送ロールの径が5〜50mmであるプリンタで画像形成するためのシールタイプの画像受容材料であって、セパレータ部と、画像受容シート部とを備える。また、セパレート部は、剥離用シート基材と、剥離用シート基材の片面上に設けられた離型剤層とからなり、画像受容シート部は、受容用シート基材と、受容用シート基材の片面に設けられた粘着剤層とからなる。そして、粘着剤層と離型剤層とが対向することにより、セパレータ部と画像受容シート部とが積層されている。
画像受容シート部には、矩形状輪郭にハーフカットが設けられている。さらに、プリンタ内での給排紙方向に略直交する方向に設けられているハーフカットの前方、且つ、矩形状のハーフカットの外側に、給排紙方向に略直交する方向に設けられているハーフカットと略平行なダミーハーフカットが設けられている。また、ハーフカットとダミーハーフカットとの距離は、プリンタ内の最小径の搬送ロールの径の1/1〜1/5であり、ダミーハーフカットの長さは、画像受容シート部の幅の40%以上100%未満である。
【0012】
本発明の画像受容材料において、ハーフカット及びダミーハーフカットのそれぞれの深さは、画像受容シート部の厚みの100〜150%とすることが好ましい。
【0013】
本発明の画像受容材料は、その画像受容シート部の受容用シート基材に、熱転写プリンタ、インクジェットプリンタ、レーザープリンタ等で直接画像形成してもよいが、熱転写シートとして使用する場合には、画像受容シート部における該粘着剤層の反対側の受容用シート基材面上に、熱により溶融もしくは昇華して移行する染料を受容する染料受容層が設けられていることが好ましい。また、インクジェット被記録シートとして使用する場合には、画像受容シート部における該粘着剤層の反対側の受容用シート基材面上に、インクジェットインクを受容するインク受容層が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の画像受容材料によれば、「転写記録後、画像が形成された画像受容シート部とセパレータ部とを容易に剥離させること」、及び「転写記録前後の給排紙工程時において、プリンタ内で径の小さいロールに巻かれた場合にその径にて発生する被熱転写シートの剛度による負荷でのハーフカット剥がれを防止すること」の両立化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の画像受容材料の一例の被熱転写シートの平面図である。
【図2】本発明の画像受容材料の一例の被熱転写シートの断面図である。
【図3】本発明の画像受容材料の一例の被熱転写シートとプリンタ内の搬送ローラとの関係図である。
【図4】本発明の画像受容材料の一例の熱転写シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の画像受容材料の一例である被熱転写シートを図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の被熱転写シートの一例の平面図である。この被熱転写シート1の染料受容層6側表面には、矩形状に画像受容シート部を剥がせるように、矩形状輪郭にハーフカット9が設けられている。更に、ハーフカット9の中で、プリンタ内での給排紙方向11に略直交する方向に相当する部分のハーフカット12の少なくとも前方に、ハーフカット12と略平行に応力緩和部としてダミーハーフカット10が設けられている。この被熱転写シート1の積層構造は、図2(図1のX−Y断面図)に示すように、剥離用シート基材2と、その片面に設けられた離型剤層3とからなるセパレータ部4に、受容用シート基材5と、その片面に設けられた染料受容層6と、その他面に設けられた粘着剤層8とからなる画像受容シート部7が、離型剤層3と粘着剤層8が対向するように且つ剥離可能に積層されている構造を有する。このような構造を有するために、本発明の被熱転写シート1は、画像が形成された画像受容シート部7とセパレータ部4とを容易に剥離することができ、しかも図3に示すように、プリンタの給排紙時においてプリンタ内で比較的小径の搬送ロール13に巻かれた場合でも、その径にて発生する被熱転写シート1の剛度による負荷を、応力緩和部であるダミーハーフカット10にて緩和でき、給排紙時のハーフカット剥がれを防止することができる。
【0018】
また、ハーフカット12とダミーハーフカット10との間の距離hは、プリンタ内の搬送ロールの内、最小径ロールの径dの好ましくは2/1〜1/10、より好ましくは1/1〜1/5とする(図3)。これは、即ち前記の距離hが、プリンタ内の搬送ロールの内、最小径ロールの径の2/1より大きいと、その径にて発生する被熱転写シートの剛度による負荷がダミーハーフカット10ではなくハーフカット12にかかり、ハーフカット剥がれが発生する可能性があり、一方、1/10より小さいと、その径にて発生する被熱転写シート1の剛度による負荷の緩和が不十分になりハーフカット剥がれが生じる可能性があるからである。プリンター内の搬送ロール径としては、最小径ロールの径が小さい程、本発明の効果が大きく、一般的には5〜50mm程度であり、例えば、ハーフカット12とダミーハーフカット10との間の距離hは、1〜50mmが好ましく、1〜20mmがより好ましい。
【0019】
また、該ダミーハーフカット10の幅は、プリンタ内での給排紙方向11に直交する方向における被熱転写シート1の幅の好ましくは少なくとも40%であり、より好ましくは少なくとも50%で100%未満とする。これは、前記のダミーハーフカットの幅が40%未満であると、プリンタ内で比較的小径の搬送ロールに巻かれた場合に、その径にて発生する被熱転写シートの剛度による負荷の緩和が不十分になりハーフカット剥がれが生じる可能性があり、一方、100%(幅いっぱい)であると、ダミーハーフカット10で画像受容シート部7とセパレータ部4とが剥離してしまう可能性があるからである。
【0020】
また、ハーフカット12とダミーハーフカット10の深さは、画像受容シート部7が、セパレート部4から良好に剥離できる深さであればよく、例えば、画像受容シート部7の受容用シート基材5までがカットされていることが好ましいが、画像受容シート部7の100%〜150%がカットされていることがより好ましく、100%〜120%がカットされていることが特に好ましい。これは、前記の深さが浅すぎると、転写記録後に画像が形成された画像受容シート部7とセパレータ部4とを容易に剥離させることが困難になる傾向があり、また、深すぎると印画時のサーマルヘッドの加熱にムラが生じ、画像ムラが発生する可能性があるからである。
【0021】
本発明に用いられる受容用シート基材5としては、コート紙、アート紙、上質紙などの紙基材、紙基材にポリエチレン等の樹脂をラミネートしたラミネート紙、並びにポリエステル、ナイロン、ポリオレフィン(例えばポリプロピレン)などのフィルムなどが挙げられる。これらは2枚以上積層されていてもよい。また受容用シート基材5が発泡体であってもよく、あるいは発泡層を有していてもよい。
【0022】
受容用シート基材5をパルプ抄紙により形成する場合、原料パルプには格別の限定はなく、針葉樹や広葉樹の化学パルプや機械パルプなどの木材パルプ、並びにポリエチレン、ポリプロピレンなどを原料とした合成パルプ等を用いることができ、これらを組み合わせて用いてもよい。また、これらのパルプの他に、アクリル繊維、レーヨン繊維、フェノール繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維などの有機繊維類、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維等の無機繊維類など各種の繊維を混抄することができる。なお、異種繊維を混抄する場合には、その抄紙性を実用上可能なレベルに維持するという観点から、パルプ配合量を50質量%以上とすることが好ましく、これによって優れた地合い、強度を有する受容用シート基材を得ることができる。
【0023】
本発明に用いられる剥離用シート基材2としてはグラシン紙、あるいは上質紙などにポリエチレンなどをラミネートしたポリラミネート紙、ポリプロピレンを主成分とする合成紙、並びにポリエチレンテレフタレートフィルムなどを用いることができる。
【0024】
セパレータ部4の離型剤層3は、例えばシリコーン系離型剤を剥離用シート基材2の片面上にグラビアコーター、バーコーター等によって塗布し乾燥することにより形成できる。この場合、離型剤の塗工量(固形分)又は離型剤層の乾燥後厚みは、好ましくは0.3〜1.5g/m又は0.2〜2.0μm、より好ましくは0.5〜1.2g/m又は0.5〜1.5μmである。これは、離型剤層3の塗工量(固形分)又は離型剤層の乾燥後厚みが0.3g/m未満又は0.2μm未満であると、離型剤層3の剥離性にばらつきが生じるおそれがあり、塗工量が1.5g/mより多くなると又は層厚が2.0μmより厚くなると離型効果が飽和し、経済的に不利になることがある。
【0025】
画像受容シート部7の粘着剤層8は、例えばアクリル系、合成ゴム系、天然ゴム系、シリコーン系などの粘着剤を、受容用シート基材5の片面に塗工し、乾燥させて形成してもよく、あるいはセパレータ部4の離型剤層3の表面に形成し、受容用シート基材5をその染料受容層6の反対面から貼り合わせてもよい。粘着剤には必要に応じて、架橋剤や充填剤を添加することもできる。
【0026】
粘着剤層8は、画像受容シート部7とセパレータ部4との剥離力(ここで、剥離力とは、被熱転写シートを20mm幅にカットし、その画像受容シート部7をセパレータ部4から一定の速度で90°の引っ張り角度にて引き剥がす時に要する負荷(mN/20mm)と定義される。)が、300mm/分の剥離スピードで測定した場合に、50〜250mN/20mmになるように調節されることが好ましく、100〜200mN/20mmになるように調節されることがより好ましい。これは、この剥離力が50mN/20mm未満の場合、プリンタ内部やその他の影響で画像受容シート部7が擦過された場合に剥離し易くなり、逆に250mN/20mmより大きい場合には画像受容シート部7とセパレータ部4との剥離が困難になるおそれがあるからである。
【0027】
粘着剤層8の剥離力を調節する手段としては、使用する粘着剤、離型剤、必要により、架橋剤、充填剤の種類及び粘着剤層の塗布量又は厚みなどを適宜に設定すること等が上げられる。粘着剤層の塗布量又は厚み(乾燥後)としては、好ましくは10〜30g/m又は5〜40μm、より好ましくは10〜20g/m又は8〜20μmである。粘着剤塗布量又は粘着剤層の乾燥後厚みが、10g/m未満又は5μm未満の場合には粘着力が不安定になり、30g/mより多い又は40μmより厚いと加圧時に粘着剤のはみ出しが生じるおそれがある。
【0028】
染料受容層6を構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、UV硬化樹脂等の染着性樹脂を使用できる。例えばポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、尿素樹脂、セルロース樹脂、ポリビニルアルキルアセタール樹脂、その他上記の共重合体等を単独、あるいは組み合わせて使用することができる。
【0029】
また、これらの染着性樹脂の重量平均分子量は、分子量が小さすぎると脆くなり、染料受容層形成時に塗膜特性が悪化するおそれがあり、分子量が大きすぎると染着性樹脂を含有する塗料の粘度が高くなり、塗工しにくくなるので、好ましくは1万〜100万程度、より好ましくは10万〜100万程度である。
【0030】
使用する染着性樹脂の製造方法にはとくに制限はなく、懸濁重合、塊状重合、溶液重合、乳化重合等任意の重合様式により得る事ができる。
【0031】
また染料受容層6には、その皮膜特性や耐熱性を向上させるために、硬化剤を使用することができる。例えば、エポキシ系硬化剤、イソシアネート系硬化剤等を挙げることができる。中でも無黄変タイプの多官能イソシアネート化合物が好ましい。このような多官能イソシアネート化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)などを挙げることができる。また、ビューレットやアダクトタイプ等のポリイソシアネート化合物を使用してもよい。これらは、単独で使用してもよく、複数種を併用してもよい。
【0032】
一方、染料受容層6には、その白色度を向上させるために、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化亜鉛等の無機顔料や蛍光増白剤を添加することができる。
【0033】
また、染料受容層6の中に離型剤を添加してもよい。離型剤としては、例えば、メチルスチレン変性シリコーンオイル、オレフィン変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイルのようなシリコーンオイルや、フッ素系離型剤等が挙げられる。
【0034】
更に、染料受容層6には、プリンタ内で走行時に静電気が発生することを防止するために帯電防止剤を適用することができる。帯電防止剤としては、例えば、陽イオン型界面活性剤(第4級アンモニウム塩、ポリアミン誘導体等)、陰イオン型界面活性剤(アルキルベンゼンスルホネート、アルキル硫酸エステルナトリウム塩等)、両性イオン型界面活性剤もしくは、非イオン型界面活性剤等の各種の界面活性剤を使用することができる。これらの帯電防止剤は、染料受容層6に添加あるいは、染料受容層6の表面にコーティングすればよい。
【0035】
また、染料受容層6には、必要に応じて可塑剤を添加することができる。例えば、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル、多価フェノールエステル等を挙げることができる。この他、保存性を向上させるため紫外線吸収剤や酸化防止剤等を適宜配合することができる。例えば、紫外線吸収剤には、例えばベンゾフェノン系、ジフェニルアクリレート系、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤が挙げられ、酸化防止剤には、例えばフェノール系、有機硫黄系、リン酸系の酸化防止剤が挙げられる。
【0036】
染料受容層6の厚みは、薄すぎると染料の受容容量が少なくなり、染料が染料受容層6の表面に局在化して耐光性等が劣化するおそれがあり、厚すぎると染料を転写するために必要な熱量を得るのが困難となり、転写画像の最高濃度が低下するおそれがあるので、好ましくは2〜20μm、より好ましくは3〜10μmである。
【0037】
染料受容層6の形成方法には特に制限は無く、バーコーター、グラビアコーター、コンマコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター等のコーターを使い、常法にしたがって染料受容層形成用塗液を塗工し、乾燥すればよい。
【0038】
本発明の画像受容材料をインクジェット被記録シートとして使用する場合には、図2における染料受容層6をインクジェットインクを受容するインク受容層に代えればよい。このようなインク受容層としては、公知のインクジェット記録用印画紙のインク受容層と同じ構成とすることができ、例えば、ブチラール系樹脂等のインク受容性樹脂に必要に応じて充填剤を配合して成膜したものを挙げることができる。
【0039】
また、図2における画像受容シート部7から染料受容層6を省略した画像受容材料は、レーザープリンタでトナー画像を形成する場合に好ましく使用することができる。
【0040】
なお、図1〜図3に示した本発明の実施態様は、ハーフカット12の前方に設けるべき応力緩和部の例として、ダミーハーフカット10を用いたものであるが、応力緩和部の形態は、このようなダミーハーフカット形状に限られない。例えば、図4(a)に示すように、ハーフカット12の前方に、剛度を基材の5〜50%程度にした応力緩和部14を形成することで本発明の目的を達成することもできる。この応力緩和部14は、剥離シート用基材2及び/又は、受容用シート基材5の種類の変更、または、これらに発泡基材を用いた場合は、応力緩和部の発泡率の増加により作成することが可能である。更に、図4(b)に示すように、応力緩和部15の厚みを他領域の厚みの5〜70%程度にすることでも本発明の目的を達成することは可能である。また、図1〜図3に開示した実施形態では、応力緩和部としてのダミーカット10をハーフカット12の形成面と同じ面に設けたが、図4(c)に示すように、ハーフカット12の前方で剥離シート用基材2側に、応力緩和部16として、セパレータ部4の一部又は全部を除去した領域を設けてもよい。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
なお、走行性の評価には昇華型熱転写ロール型プリンタUP−DR100(ソニー社製)を用いた。この場合の被熱転写シートの走行工程における最小径ロールの径は10mmであった。
【0043】
参考例(シールタイプ被熱転写シート(ロールタイプ)の作成)
<画像受容シート部の作成>
(染料受容層の形成)
ポリエチレンテレフタレートを主成分として形成された、50μm厚の発泡フィルム(商標:50E63S、東レ社製)を受容用シート基材として用い、その片面上に、表1の組成の塗料−1を乾燥厚が5μmとなるようにグラビアコーティング法にて塗工し、乾燥することにより染料受容層を形成した。
【0044】
【表1】

【0045】
(粘着剤層の形成)
染料受容層が形成された受容用シート基材の反対面上に、粘着剤(商標:オリバインBPS−4891、東洋インキ社製)を乾燥厚が15μmとなるように塗布し、乾燥することにより粘着剤層を形成した。これにより、画像受容シート部を作成した。なお画像受容シート部の厚さは70μmであった。
【0046】
<セパレータ部の作成>
ポリエステルを主成分とし、発泡構造と100μmの厚さを有するフィルム(商標:W900J、三菱ポリエステル社製)を剥離用シート基材として用い、その一方の面にシリコーン系離型剤(商標:KS−830、信越化学工業社製)を乾燥後厚:0.5μmになる様にダイコーティング法により塗工し、乾燥して離型剤層を形成した。これにより、セパレータ部を作成した。
【0047】
<シールタイプ被熱転写シート(ロールタイプ)の作成>
上記で得たセパレータ部の離型剤層と、画像受容シート部の粘着剤層とを重ね合わせ貼着し、シールタイプ被熱転写シートを得た。こうして得られたシールタイプ被熱転写シートを、幅:127mmで長さ:15mに断裁し、シールタイプ被熱転写シートロール(1)を得た。
【0048】
実施例1
シールタイプ被熱転写シートロール(1)の画像受容シート部の染料受容層側に、不連続ハーフカットを設け、幅方向のハーフカットと平行になるようにダミーハーフカットを設けた。この時、ハーフカット及びダミーハーフカットの深さを70μm(画像受容シート部の厚みの100%)とし、ハーフカットとダミーハーフカットの距離を10mm(最小ロール径の1/1)とし、ダミーハーフカットの長さを63.5mmとした(幅の50%)。
【0049】
実施例2
シールタイプ被熱転写シートロール(1)の画像受容シート部の染料受容層側に、不連続ハーフカットを設け、幅方向のハーフカットと平行になるようにダミーハーフカットを設けた。この時、ハーフカット及びダミーハーフカットの深さを84μm(画像受容シート部の厚みの120%)とし、ハーフカットとダミーハーフカットの距離を10mm(最小ロール径の1/1)とし、ダミーハーフカットの長さを63.5mmとした(幅の50%)。
【0050】
実施例3
シールタイプ被熱転写シートロール(1)の画像受容シート部の染料受容層側に、不連続ハーフカットを設け、幅方向のハーフカットと平行になるようにダミーハーフカットを設けた。この時、ハーフカット及びダミーハーフカットの深さを70μm(画像受容シート部の厚みの100%)とし、ハーフカットとダミーハーフカットの距離を2mm(最小ロール径の1/5)とし、ダミーハーフカットの長さを63.5mmとした(幅の50%)。
【0051】
実施例4
シールタイプ被熱転写シートロール(1)の画像受容シート部の染料受容層側に、不連続ハーフカットを設け、幅方向のハーフカットと平行になるようにダミーハーフカットを設けた。この時、ハーフカット及びダミーハーフカットの深さを70μm(画像受容シート部の厚みの100%)とし、ハーフカットとダミーハーフカットの距離を10mm(最小ロール径の1/1)とし、ダミーハーフカットの長さを126mmとした(幅の99%)。
【0052】
実施例5
シールタイプ被熱転写シートロール(1)の画像受容シート部の染料受容層側に、不連続ハーフカットを設け、幅方向のハーフカットと平行になるようにダミーハーフカットを設けた。この時、ハーフカット及びダミーハーフカットの深さを70μm(画像受容シート部の厚みの100%)とし、ハーフカットとダミーハーフカットの距離を20mm(最小ロール径の2/1)とし、ダミーハーフカットの長さを63.5mmとした(幅の50%)。
【0053】
実施例6
シールタイプ被熱転写シートロール(1)の画像受容シート部の染料受容層側に、不連続ハーフカットを設け、幅方向のハーフカットと平行になるようにダミーハーフカットを設けた。この時、ハーフカット及びダミーハーフカットの深さを70μm(画像受容シート部の厚みの100%)とし、ハーフカットとダミーハーフカットの距離を1mm(最小ロール径の1/10)とし、ダミーハーフカットの長さを63.5mmとした(幅の50%)。
【0054】
実施例7
シールタイプ被熱転写シートロール(1)の画像受容シート部の染料受容層側に、不連続ハーフカットを設け、幅方向のハーフカットと平行になるようにダミーハーフカットを設けた。この時、ハーフカット及びダミーハーフカットの深さを70μm(画像受容シート部の厚みの100%)、ハーフカットとダミーハーフカットの距離は10mm(最小ロール径の1/1)とし、ダミーハーフカットの長さは50.8mmとした(幅の40%)。
【0055】
実施例8
シールタイプ被熱転写シートロール(1)の画像受容シート部の染料受容層側に、不連続ハーフカットを設け、幅方向のハーフカットと平行になるようにダミーハーフカットを設けた。この時、ハーフカット及びダミーハーフカットの深さを70μm(画像受容シート部の厚みの100%)とし、ハーフカットとダミーハーフカットの距離を10mm(最小ロール径の1/1)とし、ダミーハーフカットの長さは127mmとした(幅の100%)。
【0056】
比較例1
シールタイプ被熱転写シートロール(1)の画像受容シート部の染料受容層側に、不連続ハーフカットを設けたが、ダミーハーフカットは設けなかった。この時、ハーフカットの深さを70μm(画像受容シート部の厚みの100%)とした。
【0057】
比較例2
シールタイプ被熱転写シートロール(1)の画像受容シート部の染料受容層側に、不連続ハーフカットを設けたが、ダミーハーフカットは設けなかった。この時、ハーフカットの深さを63μm(画像受容シート部の厚みの90%)とした。
【0058】
比較例3
シールタイプ被熱転写シートロール(1)の画像受容シート部の染料受容層側に、不連続ハーフカットを設け、幅方向のハーフカットと垂直となるようにダミーハーフカットは設けた。この時、ハーフカット及びダミーハーフカットの深さを70μm(画像受容シート部の厚みの100%)とし、ハーフカットとダミーハーフカットの距離を10mm(最小ロール径の1/1)とし、ダミーハーフカットの長さを63.5mmとした(幅の50%)。
【0059】
評価
実施例1〜8及び比較例1〜3のシールタイプ被熱転写シートロールについて「走行性」、「剥離性」、「濃度ムラ」を以下に説明するように評価した。得られた結果を表2に示す。
【0060】
走行性
シールタイプ被熱転写シートロール10mを、昇華型熱転写ロール型プリンタ(UP−DR100、ソニー社製)に装着し、そのプリンタ内の走行性を以下の基準で評価し、ランク分けした。
【0061】
ランク 基準
○: プリンタ内においてハーフカット剥がれの発生が無い場合
△: シールタイプ被熱転写シートロール10m中にハーフカット剥がれの発生が若干あるが、プリンタ内での走行性には実用上問題がない場合
×: シールタイプ被熱転写シートロール10m中にハーフカット剥がれがあり、プリンタ内での走行性に実用上問題がある場合
【0062】
剥離性
シールタイプ被熱転写シートロールに対しプリンタ印字後、そのハーフカット部分領域を手で剥離した場合の状態を、以下の基準で評価し、ランク分けした。
【0063】
ランク 基準
○: 容易に剥離できた場合
△: 若干抵抗があるが剥離させるのに不具合が無い場合
×: 剥離が困難又は全く剥離しない場合
【0064】
濃度ムラ
昇華型熱転写ロール型プリンタUP−DR100(ソニー社製)を使用し、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色素及びラミネートフィルム(L)からなる熱転写シート(ソニー(株)製 UPC−R35)を用い、シールタイプのロール状の被熱転写シートに対しライトグレーベタ印画を行った。このときハーフカット部の濃度ムラを以下の基準で評価し、ランク分けした。
【0065】
ランク 基準
○: 濃度ムラの発生が無い場合
△: 濃度ムラが若干発生するが、品位が損なわれるほどではない場合
×: 濃度ムラが発生し、品位が損なわれる場合
【0066】
【表2】

【0067】
実施例1〜8及び比較例1〜2の結果から、プリンタ内での給排紙方向に直交する方向に設けられているハーフカットと平行にダミーハーフカットを設けると、剥離性、濃度むらに加えて走行性が改善されることが分かる。
【0068】
なお、実施例5及び実施例6の結果から、ハーフカットとダミーハーフカットとの間の距離が、プリンタ内の最小径の搬送ロールの径の1/1〜1/5の範囲を外れると、走行性が低下する傾向があることがわかる。また、実施例7及び実施例8の結果から、ダミーハーフカットの長さが、プリンタ内での給排紙方向に直交する方向における被熱転写シートの幅の50%以上〜100%未満の範囲を外れると、走行性が低下する傾向があることがわかる。
【0069】
比較例3の結果から、ダミーハーフカットを幅方向のハーフカットに対し垂直に設けた場合には、走行性が改善されないことがわかる。
【符号の説明】
【0070】
1…被熱転写シート、2…剥離用シート基材、3…離型剤層、4…セパレータ部、5…受容用シート基材、6…染料受容層、7…画像受容シート部、8…粘着剤層、9,12…ハーフカット、10…ダミーハーフカット、11…給排紙方向、13…搬送ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給排紙時における最小径の搬送ロールの径が5〜50mmであるプリンタで画像形成するためのシールタイプの画像受容材料であって、
セパレータ部と、
画像受容シート部とを備え、
前記セパレート部が、剥離用シート基材と、前記剥離用シート基材の片面上に設けられた離型剤層とからなり、
前記画像受容シート部が、受容用シート基材と、前記受容用シート基材の片面に設けられた粘着剤層とからなり、
前記粘着剤層と前記離型剤層とが対向することにより、前記セパレータ部と前記画像受容シート部とが積層され、
前記画像受容シート部に矩形状輪郭にハーフカットが設けられ、
前記プリンタ内での給排紙方向に略直交する方向に設けられているハーフカットの前方、且つ、前記矩形状のハーフカットの外側に、前記給排紙方向に略直交する方向に設けられているハーフカットと略平行なダミーハーフカットが設けられ、
前記ハーフカットと前記ダミーハーフカットとの距離が、前記プリンタ内の最小径の搬送ロールの径の1/1〜1/5であり、
前記ダミーハーフカットの長さが前記画像受容シート部の幅の40%以上100%未満である
画像受容材料。
【請求項2】
前記ハーフカット及び前記ダミーハーフカットのそれぞれの深さが、前記画像受容シート部の厚みの100〜150%である請求項1記載の画像受容材料。
【請求項3】
前記画像受容シート部における前記粘着剤層の反対側の受容用シート基材面上に、熱により溶融もしくは昇華して移行する染料を受容する染料受容層、又はインクジェットインクを受容するインク受容層が形成されている請求項1又は2記載の画像受容材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−163250(P2009−163250A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13353(P2009−13353)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【分割の表示】特願2003−76524(P2003−76524)の分割
【原出願日】平成15年3月19日(2003.3.19)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】