説明

画像形成システム

【課題】 複数の印刷データの印刷指令があった時に、そのターゲットの画像形成装置が他のコマンドの処理中等でビジーの場合に、同一ネットワーク上にあるアイドル中の状態にあるほかの画像形成装置で展開することが可能で、その展開したデータをその画像形成装置に転送し直して蓄積し、印刷することが可能な画像形成システムを提供する。
【解決手段】 ホストパソコン1と画像形成装置2がネットワーク接続された画像形成システムにおいて、複数の印刷データの印刷指令があった時に、その対象の画像形成装置が他の印刷データを処理中でビジーの場合に、同一ネットワーク上にあるアイドル中の状態にあるほかの画像形成装置または、同一PDLで印刷中の画像形成装置で印刷データを展開する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホストパソコンと画像形成装置がネットワーク接続された画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図4は一般的な画像形成システムの構成図である。複数のホストパソコン1(1−1〜1−4)と複数のプリンタ装置(画像形成装置)2(2−1、2−2)とがハブ3を介して接続されることで、画像形成システムが構成されている。
従来は、各ネットワーク上に接続されたパソコン1より印刷が通知された場合には、その順番どおりに印刷されており、例えば、複数のPDL(PS、PCLなどのインタプリタ)の切り替えが生じた場合には、その都度、PDLの切り替え、初期化処理が必要になる。例えば、カレントのプリンタ装置2−1における印刷待ちのデータが5つあり、最初のデータはPDL1、2番目はPDL2、3番目はPDL1、4番目はPDL2、5番目はPDL1だとする。
通常のシーケンスで印刷を行えば、印刷データが変わるごとに、PDL切り替え(終了、起動、初期化、終了)の処理が4回必要となる。この印刷待ちの順番を前もって変更、もしくは知ることができれば、1回のPDLの切り替えで済ませることが可能となる。
同様な技術としては、スプールされたジョブの印刷時間を取得するものがある(例えば、特許文献1参照)。また、印刷時間を取得し、短い印刷時間のものを割り込みで、長い印刷時間のものの間に印刷し、効率の良い印刷を提供するものがある(例えば、特許文献2参照)。
特許文献3記載の技術は、スプールされたジョブに対して、解像度やPDLごとにソートをかけており、その場合は、展開後のデータをソートするものであり、ソートによる効果がさほど得られない。
【0003】
また、特許文献4記載の技術は、上記問題点を解決しており、PDLの切り替え回数を削減することにより、効率のよい印刷環境を提供しているが、同一ネットワーク上に複数の画像形成装置が存在した場合及び、該画像形成装置が、HDD等の記憶場媒体を所有していない場合に対しては考慮されていない。
図5は一般的なプリンタ装置のブロック図である。複数のネットワークを介して接続されたプリンタ装置2は、ネットワークインタフェース31と、印刷データ管理部32と、印刷データ解析部33と、印刷データ蓄積部34と、印刷データソート部35と、プリント制御部36と、エンジンインタフェース37と、エンジン38とを備える。
ネットワークインタフェース31は、ホストパソコン1から送られるPDLの種類及び印刷データサイズを取得し、印刷データ管理部32は、取得したPDLの情報及び印刷データサイズによって、同一PDLの印刷データをまとめて展開するようにジョブスプールとPDLの使用のスケジューリングを決定する。
印刷データ解析部33は、決定したジョブスプールとPDLの使用のスケジュールにより展開処理を行い、印刷データ蓄積部34は、受信した印刷データと印刷データ解析部33によって展開されたデータを蓄積し、さらに印刷データソート部35は、展開処理したデータを受信した順に結合してプリント制御部36に印刷データを出力する。
【特許文献1】特開2000−276312公報
【特許文献2】特開2000−322209公報
【特許文献3】特開2000−330748公報
【特許文献4】特開2003−067154公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術は、同一画像形成装置のみでスプール・展開・印刷を行うものであり、同一ネットワーク上に複数の画像形成装置が存在する環境においては、すべての資源を効率よく使用しているとは言いがたい。また、HDD等の記憶媒体を持たない画像形成装置では利用できない。
本発明は、複数の印刷データの印刷指令があった時に、そのターゲットの画像形成装置が他のコマンドの処理中等でビジーの場合に、同一ネットワーク上にあるアイドル中の状態にある他の画像形成装置で展開することが可能で、その展開したデータをその画像形成装置に転送し直して蓄積し、印刷することが可能な画像形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、ホストパソコンと画像形成装置がネットワーク接続された画像形成システムにおいて、複数の印刷データの印刷指令があった時に、その対象の画像形成装置が他の印刷データを処理中でビジーの場合に、同一ネットワーク上にあるアイドル状態にある他の画像形成装置または、同一PDLで印刷中の画像形成装置により印刷データを展開することを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の画像形成システムにおいて、前記展開した画像データを展開終了後、対象の画像形成装置に前記展開した画像データを転送することを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1に記載の画像形成システムにおいて、その展開した画像データを一旦、展開した画像形成装置に蓄積し、印刷時に前記蓄積データを前記画像形成装置より取得することを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成システムにおいて、印刷データを展開する画像形成装置を決定する際に、該画像形成装置の性能によって転送・展開先を決定することを特徴とする。
請求項5記載の発明は、上記請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像形成システムにおいて、転送先画像形成装置をユーザー指定できる画像形成システムを主要な特徴とする。
請求項6記載の発明は、上記請求項1乃至5のいずれか一項に記載の画像形成システムにおいて、印刷データを展開する画像形成装置により展開可能なPDLを指定できることを特徴とする。
請求項7記載の発明は、上記請求項1乃至6のいずれか一項に記載の画像形成システムにおいて、印刷データを展開する画像形成装置または、展開済み印刷データを保存しておく領域が、管理サーバである画像形成システムを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ネットワーク上の複数の画像形成装置を活用した効率のよい印刷環境を提供することができる。また、さらにHDD等の記憶媒体を所有しない画像形成装置においても、効率のよい印刷環境を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る画像形成システムにおいて、プリンタコントローラを詳細に示すブロック図である。
プリンタ装置2は、プリンタコントローラ11、エンジン12、SDインタフェース13を備える。エンジン12は、プリンタコントローラ11からのビデオ信号及び制御信号により感光体上に静電潜像を作り、現像し、また給紙部より転写紙を給紙し、転写及び定着して画像を形成する。SDインタフェース13は着脱可能な外部記録メディアへのインタフェース(または挿入スロット)である。このスロットにカードを挿入した際、電圧の変化等でカードが挿入されているかどうかを認識できる。
プリンタコントローラ11は、実際のページ記述言語により変換された印刷データを、本体もしくはドライバなどにより設定された印刷補正モードの条件下で、ビデオデータに変換してエンジン12へ出力する装置の総称で、以下のようなモジュール構想を持っている。
RAM21はCPU24が処理するときのワークメモリ、ホストパソコン1からのデータをページ単位に管理して一時記憶するバッファ、バッファに記憶されたデータを実際の印字パターンに変換しビデオデータを記憶するビットマップメモリ等に使われている。ROM(PROGRAM)22は制御プログラムを格納する。フォントROM23は実際に使われるさまざまなフォントを有する。
CPU24及びASIC25は、ROM23のプログラムにしたがってホストパソコン1からのデータ(印字データ)などを処理する。エンジンインタフェース26は、プリンタコントローラ11からエンジン12への制御信号、プリンタコントローラ11へのエンジンステータス信号のインタフェースである。
【0008】
ホストインタフェース27は、ホストパソコン1からプリンタ装置2へのデータ送信、また、プリンタ装置2からホストパソコン1へのステータス信号、データ受信用のインタフェースである。HDD28は、文書データ情報、文書データ、印刷データ等を保存しておく。NIC28はネットワーク接続するためのインタフェースである。タイマ29は常に現在時間を計測する。
ホストパソコン1からのプリント命令またはホストパソコン1から受け取ったデータが1ページを超えたとき、プリンタコントローラ11はまず、中間コードをビデオデータに変換し、それが終了したらエンジンインタフェース26を介して、エンジン12にプリント開始命令を出力する。この操作を繰り返し、実際にホストパソコン1からのデータがエンジン12を通して印字される。
印刷データを受信した場合、その印刷データが、どのPDLによる印刷データかの判別を行い、現在印刷データを受信した画像形成装置が、そのデータと同じPDLで印刷を行っていた場合には、そのままその印刷データを受信・蓄積し、通常通りの印刷を行う。
他の画像形成装置で展開したほうが時間の短縮ができる場合、または、受信した印刷データが、例えば異なるPDLの印刷データであった場合には、同一ネットワーク上に接続された、現在アイドル中の画像形成装置または、そのPDLと同じPDLで処理を行っている画像形成装置を検索する。その検索により該当する画像形成装置が存在する場合には、その印刷データを対象画像形成装置に転送し、印刷データの展開処理を行う。
また、展開処理が終了後、展開して処理した画像形成装置が、その印刷データを再度、先の印刷データを受信した画像形成装置に展開済みとして、転送・蓄積を行う。上記は、複数の印刷データのみではなく、ひとつの印刷データに複数のPDLの切り替えコマンドが含まれている場合も対象とする。
展開済みデータは必ずテンポラリ領域に蓄積を行っているため、そのエリアから、保存されている印刷順情報に従って、印刷データ管理部・印刷データ蓄積部及び印刷データソート部により、印刷を行えば、印刷依頼順に出力が可能になる。
【0009】
図2は本発明の画像形成システムにおける第1の動作例を示すフロー図である。まず、印刷データ(情報)を受信し(S1)、その情報を元に、図5の印刷データ管理部32において、スケジューリング機能が有効である場合には、PDLのスケジューリングを決定し、該画像形成装置の状態をチェックし(S2、S3)、カレントPDLと同じ場合(S4でY)や、他の画像形成装置に転送してデータ展開するよりも、現在のままで印刷を行った場合のほうが速いと判断できた場合には、そのまま印刷を行う(S5〜S7)。
それ以外の場合には、転送先画像形成装置の検索を行い(S8)、該当画像形成装置が発見できた場合には(S9でY)、その該当画像形成装置にデータの転送を行い、その画像形成装置での展開処理が終了した後、その展開済みデータを受信・蓄積する(S10〜S12)。その後、通常通り、印刷順にデータをソートして印刷する。
また、該画像形成装置が、展開済みデータを蓄積するエリア等を持っていない場合には、画像展開先画像形成装置にその展開済みデータを保存しておき、必要に応じて展開済みデータを吸い上げて、印刷順にソートして印刷を行えるようにする。
【0010】
図3は本発明の画像形成システムにおける第2の動作例を示すフロー図である。蓄積管理テーブルは、どこの画像形成装置にどのデータが登録・処理されているか管理しており、そのテーブルを基にデータのリンク先を取得でき、そのテーブルに展開済み印刷待ちデータが存在した場合には、その印刷データを先のリンク先に基づいて取得し、印刷データ管理部32で管理されている印刷順にしたがって印刷を行う。その管理テーブルに展開済み印刷待ちデータ、もしくは展開未完了印刷待ちデータが無くなった時点で終了となる。
複数の該当する転送先画像形成装置が存在した場合には、その画像形成装置の性能(使用頻度、アウトプット能力)によって転送先を判断することができ、また、その情報は各画像形成装置自身が所有しており、必要に応じてその情報を取得することができるものとする。
さらに、上記のように動的に割り振るだけでなく、あらかじめ画像形成装置に転送先をユーザーが操作部やWEB等で登録することができ、また、その転送先を指定する際に、対象PDL等の詳細情報を指定できるものとし、検索等でのオーバーヘッドをなくすような設定ができるようにする。
複数の画像形成装置が存在しない環境では、そのネットワーク上にあるサーバーパソコンで上記のような画像展開処理や、テンポラリ領域への一時保存等ができるものとし、必要に応じてそこから展開済み印刷データを取得できるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成システムにおいて、プリンタコントローラを詳細に示すブロック図。
【図2】本発明の画像形成システムにおける第1の動作例を示すフロー図。
【図3】本発明の画像形成システムにおける第2の動作例を示すフロー図。
【図4】一般的な画像形成システムの構成図。
【図5】一般的なプリンタ装置のブロック図。
【符号の説明】
【0012】
1 ホストパソコン
2 プリンタ装置(画像形成装置)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホストパソコンと画像形成装置がネットワーク接続された画像形成システムにおいて、複数の印刷データの印刷指令があった時に、その対象の画像形成装置が他の印刷データを処理中でビジーの場合に、同一ネットワーク上にあるアイドル状態にある他の画像形成装置または、同一PDLで印刷中の画像形成装置により印刷データを展開することを特徴とする画像形成システム。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成システムにおいて、前記展開した画像データを展開終了後、対象の画像形成装置に前記展開した画像データを転送することを特徴とする画像形成システム。
【請求項3】
請求項1に記載の画像形成システムにおいて、その展開した画像データを一旦、展開した画像形成装置に蓄積し、印刷時に前記蓄積データを前記画像形成装置より取得することを特徴とする画像形成システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成システムにおいて、印刷データを展開する画像形成装置を決定する際に、該画像形成装置の性能によって転送・展開先を決定することを特徴とする画像形成システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像形成システムにおいて、転送先画像形成装置をユーザー指定できることを特徴とする画像形成システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の画像形成システムにおいて、印刷データを展開する画像形成装置により展開可能なPDLを指定できることを特徴とする画像形成システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の画像形成システムにおいて、印刷データを展開する画像形成装置または、展開済み印刷データを保存しておく領域が管理サーバであることを特徴とする画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−76220(P2006−76220A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−264659(P2004−264659)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】