説明

画像形成体

【課題】 本発明は、銀行券、パスポート、カード、商品タグ、ブランドプロテクション等の偽造防止、改竄防止が必要とされる貴重品に適用する画像形成体に関するものである。
【解決手段】 光反射性層及び光透過性層が積層された基材に、前記光透過性層の表面に特定間隔で配列された画素によって基本画像が形成され、前記基本画像は第1の領域と第2の領域に区分けされ、前記画素は、特定の深さを有する凹状又は貫通孔で、且つ、前記画素のエッジ部は前記光透過性層の表面よりも隆起した隆起部が形成され、前記第1の領域を形成する画素と前記第2の領域を形成する画素は、形状、大きさ又は画素の角度が異なってなる画像形成体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行券、パスポート、カード、商品タグ、ブランドプロテクション等の偽造防止、改竄防止が必要とされる貴重品に適用する画像形成体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銀行券、パスポート、カード、商品タグ、ブランドプロテクション等の貴重品は、その性質上、偽造、変造されにくいことが要求される。この防止策として、これらの貴重品を傾けて観察することにより潜像画像を認識できるようにして真偽判別を行う技術が知られている。凹版印刷物の画線構成を利用するもの、穿孔の形状変化を利用するもの、凹凸の深さを利用するもの等が挙げられる。
【0003】
前記凹版印刷物の画線構成を利用し、潜像画像を出現させるもの、例えば、凹版印刷された万線に潜像画像となる画線部を高い画線で構成し、その他の万線を潜像画像となる画線部より低い画線で構成している。印刷物は真上から観察した場合に潜像画像は視認できないが、傾けて観察すると潜像画像が発現するものが開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
前記穿孔の形状変化を利用し、潜像画像を出現させるもの、例えば、基材に、背景部を構成する微細な穿孔と、情報部を構成する穿孔を形成し、背景部の穿孔と情報部の穿孔を、穿孔の形状、寸法及び画素の角度の少なくとも一つ以上が異なるように形成し、真偽判別形成体を反射光で観察した場合に背景部と情報部は区分けして視認できないが、透過光で傾けて観察した場合に背景部と情報部は区分けして視認されてなる技術が開示されている(特許文献2参照)。
【0005】
前記凹凸の深さを利用するもの、例えば、互いに平行に微細な溝条と微細な突条とを交互に多数本刻設したマーク形成部を有したカードにおいて、前記突条の一部分を他の部分に対して盛り上げて形成することにより当該盛り上がり部分によって所定のマークを画成したことを特徴とするカードが開示されている(特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】特公昭56−19273号公報(第1−14頁、第1−20図)
【特許文献2】特許第3385461号公報(第1−5頁、第1−3図)
【特許文献3】実開平02−127478号公報(第1−8頁、第1−4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特公昭56−19273号公報又は実開平02−127478号公報は、総じて潜像領域を形成する画線とその周辺の背景領域を形成する画線の凹凸を異ならせて形成し、基材を傾けで観察した場合に潜像領域が初めて視認されるものであるが、基材を観察する方向又は基材を傾ける角度が限定され、傾ける角度が浅い角度では潜像領域を視認することが困難であった。潜像領域を形成する画線とその周辺の背景領域を形成する画線の凹凸を異ならせて形成するため、作製する段階で手間がかかり、凹凸差の違いにより潜像画像の出現性にノウハウが必要であった。また、仮に、浅い角度で潜像領域が視認できるものを作製するには潜像領域を形成する画線とその周辺の背景領域を形成する画線の凹凸差を大きくしなければならないため、実質上、作製困難であり、例え、作製可能であったとしても、その凹凸差によって基材に対して真上から観察した場合においても潜像領域が視認されてしますおそれがあった。特許第3385461号公報は透過光で傾けて観察した場合に背景部と情報部は区分けして視認されるため、反射光では視認されることがないため、視認できる状況が限られていた。また、従来は総じて観察する方向によって異なった潜像画像を出現させることは困難であった。更に、視認される潜像領域の明暗は変化することはなかった。
【0008】
本発明は、このような従来の問題を解決することを目的としたもので、潜像領域を形成する画素とその周辺の背景領域を形成する画素の凹凸差を形成しなくとも、基材を傾ける角度が浅い角度で潜像領域を視認可能であり、反射光で潜像画像が視認され、観察する方向によって異なった潜像画像を出現させることが可能であり、潜像画像を視認するために観察する方向が特定されることなく、基材を傾ける角度によって視認される潜像領域の明暗が変化する画像形成体を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
光反射性層及び光透過性層が積層された基材に、前記光透過性層の表面に特定間隔で配列された画素によって基本画像が形成され、前記基本画像は第1の領域と第2の領域に区分けされ、前記画素は、特定の深さを有する凹状又は貫通孔で、かつ、前記画素のエッジ部は前記光透過性層の表面よりも隆起した隆起部が形成され、前記第1の領域を形成する画素と前記第2の領域を形成する画素は、形状、大きさ又は画素の角度が異なってなる画像形成体である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の画像形成体は、可視光下で肉眼で水平方向に徐々に傾けて観察した場合に、潜像領域の明暗(つまり、潜像画像がポジ画像からネガ画像に変化、ネガ画像からポジ画像に変化)は変化し、潜像画像の出現の有無、ネガポジの変化の有無によって真偽判別が可能となる。よって、特別な真偽判別装置等を用いることなく、誰でもその場で上記効果が得られるか否かによって真偽判別することができる。
【0011】
更に、本発明の画像形成体は複数の潜像画像を埋め込むことが可能であり、観察する方向によって異なった潜像画像を出現させることが可能である。
【0012】
光反射性層及び光透過性層が積層された基材に光反射性層及び光透過性層が積層された基材に、背景画像を形成する画素と潜像画像を形成する画素は、形状、大きさ又は画素の角度が異なって形成するため、背景画像を形成する画素と潜像画像を形成する画素の凹凸差を付けることなく、基材を傾ける角度が浅い角度で潜像領域を視認可能である。また、溝状の点群及び/又は線群はレーザで作製可能なため、貴重品個々に異なった情報(可変情報)を形成することができる。
【0013】
以上のことから、本発明の画像形成体は、真偽判別効果が高く、微細な形状で形成するため改ざん、複製防止効果のあり、銀行券、パスポート、カード、商品タグ、ブランドプロテクション等の偽造防止、改ざん防止が必要とされる貴重品に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は以下に述べる実施するための最良の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0015】
(第1の例)
図1に画像形成体A1とそのX−X’断面図を示す。図1(a)に示すように光反射性層1a及び光透過性層1bが積層された基材1に、光透過性層の表面にX方向はピッチP1の間隔で及び、Y方向はピッチP2の間隔で配列された画素5によって基本画像2が形成され、基本画像は背景画像(第1の領域)3と潜像画像(第2の領域)4に区分けされ、画素5は、特定の深さを有する凹状で、かつ、画素5のエッジ部は光透過性層1bの表面よりも隆起した隆起部6からなる。背景画像を形成する画素5aと潜像画像を形成する画素5bは、形状が異なっている。背景画像を形成する画素5aは隆起部6aを有し、潜像画像を形成する画素5bは隆起部6bを有している。図面では画素5aは円形状であり、画素5bは楕円形状である。画素の形状は限定されるものではなく、背景画像を形成する画素5aと潜像画像を形成する画素5bは、形状が異なっていればよい。X方向のピッチP1の間隔と、Y方向のピッチP2の間隔は同一でも異なっていても良い。図1(b)の画像形成体A1のX−X’断面図に示すように、背景画像を形成する画素5aと潜像画像を形成する画素5bの深度は同一である。しかしながら本発明はこれに限定されることなく、背景画像を形成する画素5aと潜像画像を形成する、画素5bの深度は異なっていてもよい。
【0016】
図2(a)は、画像形成体A1に対してX1又はX2方向から入射角45°の可視光下において肉眼で垂直方向から観察した場合の図である。図2(b)に示すように入射光I1は背景画像3を形成する画素5aの表面よりも隆起した隆起部6a上では、一部が乱反射I2し、反射光I3が得られる。入射光I1’は潜像画像4を形成する画素5b上の表面よりも隆起した隆起部6bでは、一部が乱反射光I2’し、反射光I3’が得られる。潜像画像4を形成する画素5bの隆起部6bは、背景画像3を形成する画素5aの隆起部6aより、乱反射光I2’は乱反射光I2よりも乱反射光量が多く、反射光I3’は反射光I3よりも反射光量が少ない。このようなことから潜像画像4を形成する画素5bの隆起部6bと背景画像3を形成する画素5aの隆起部6aでは乱反射光量に大きな差異が生じる。よって、潜像画像4上は背景領域3上よりも明度が低く視認される。また、光反射性層1aは反射光I3’及び反射光I3を強くするために設けられ、光反射性層1aがない基材で形成すると潜像画像が視認し難い状況になる。
【0017】
図3は、図2(b)に示すように画像形成体A1に対してX1又はX2方向から入射角45°の可視光下において肉眼で垂直方向から水平方向に徐々に傾けて観察した場合の図である。ただし、図1(a)に示すように入射光がX1のとき、観察方向はX2であり、入射光がX2のとき、観察方向はX1である。垂直方向から観察した場合は、背景画像3を形成する画素5aの隆起部6aでは、潜像画像4を形成する画素5bの隆起部6bより、反射光の光量が多くなり、潜像画像4を形成する画素5bの隆起部6bよりも明度が高く視認され、潜像画像はネガ画像として視認される。更に傾けて観察すると、背景画像3を形成する画素5aの隆起部6aの反射光の光量と潜像画像4を形成する画素5bの隆起部6bの反射光の光量が同一又はほぼ同一となり、背景画像3と潜像画像4が区分けして視認できない状況になり、基本画像2のみが視認される。更に水平方向に傾けて観察すると、背景画像3を形成する画素5aの隆起部6aでは、潜像画像4を形成する画素5bの隆起部6bより、反射光の光量が徐々が少なくなり、潜像画像4を形成する画素5bの隆起部6bよりも明度が低く視認され、潜像画像はポジ画像として視認される。このようなことから、可視光下において肉眼で垂直方向から水平方向に徐々に傾けて観察した場合に潜像画像4はポジ画像からネガ画像に連続して徐々に反転する。ただし、画像形成体A1に対してY1又はY2方向から入射角45°の可視光下において肉眼で垂直方向から水平方向に徐々に傾けて観察した場合(入射光がY1のとき、観察方向はY2であり、入射光がY2のとき、観察方向はY1である)、潜像画像4を形成する画素5bの隆起部6bは、背景画像3を形成する画素5aの隆起部6aより、乱反射光I2’は乱反射光I2よりも乱反射光量が少なく、反射光I3’は反射光I3よりも反射光量が多く視認されるため、ネガ画像からポジ画像に連続して徐々に反転する。
【0018】
(第2の例)
図4に画像形成体A2とそのX−X’断面図を示す。図4(a)に示すように光反射性層1a及び光透過性層1bが積層された基材1に、光透過性層の表面にX方向はピッチP1の間隔で及び、Y方向はピッチP2の間隔で配列された画素5によって基本画像2が形成され、基本画像は背景画像(第1の領域)3と潜像画像(第2の領域)4に区分けされ、画素5は、特定の深さを有する凹状で、かつ、画素5のエッジ部は光透過性層1bの表面よりも隆起した隆起部6からなる。背景画像を形成する画素5aと潜像画像を形成する画素5bは、大きさが異なっている。背景画像を形成する画素5aは隆起部6aを有し、潜像画像を形成する画素5bは隆起部6bを有している。X方向のピッチP1の間隔と、Y方向のピッチP2の間隔は同一でも異なっていても良い。背景画像を形成する画素5aと潜像画像を形成する画素5bは、大きさが異なっている。図面では、画素5a及び画素5aは円形状であるが、画素の形状は特に限定されるものではない。また、背景画像を形成する画素5aよりも、潜像画像を形成する画素5bの方が大きい径を有しているが、潜像画像を形成する画素5bよりも、背景画像を形成する画素5aの方が大きい径を有していてもよい。ただし、背景画像を形成する画素5aの径と潜像画像を形成する画素5bの径の関係は1/2又は2倍の範囲内であることが望ましい。X方向のピッチP1の間隔と、Y方向のピッチP2の間隔は同一でも異なっていても良い。図4(b)の画像形成体A2のX−X’断面図に示すように、背景画像を形成する画素5aと潜像画像を形成する画素5bの深度は同一である。しかしながら本発明はこれに限定されることなく、背景画像を形成する画素5aと潜像画像を形成する、画素5bの深度は異なっていてもよい。
【0019】
(第3の例)
図5に画像形成体A3とそのX−X’断面図を示す。図5(a)に示すように光反射性層1a及び、光透過性層1bが積層された基材1に、光透過性層の表面にX方向はピッチP1の間隔で及びY方向はピッチP2の間隔で配列された画素5によって基本画像2が形成され、基本画像は背景画像(第1の領域)3と潜像画像(第2の領域)4に区分けされ、画素5は、特定の深さを有する凹状で、かつ、画素5のエッジ部は光透過性層1bの表面よりも隆起した隆起部6からなる。背景画像を形成する画素5aと潜像画像を形成する画素5bは、配置される角度が異なっている。つまり、背景画像を形成する画素5aと潜像画像を形成する画素5bは、形状が同一で、互いに配置角度が異なっている。図面では画素5a及び画素5aは楕円形状である。また、背景画像を形成する画素5aの配置される角度0度に対して、潜像画像を形成する画素5bは、配置される角度を90度としているが、本発明は、これに限定されることなく、配置される角度が180度以外であれば良い。つまり、異方性を持っていればよい。また、X方向のピッチP1の間隔と、Y方向のピッチP2の間隔は同一でも異なっていても良い。背景画像を形成する画素5aは隆起部6aを有し、潜像画像を形成する画素5bは隆起部6bを有している。よって、この場合の画素の形状は正方形、正六角形、正八角形、円形以外の形状で、つまり、楕円形、長方形等の縦方向の径と横方向の径で長さが異なった形状である必要がある。図5(b)の画像形成体A3のX−X’断面図に示すように、背景画像を形成する画素5aと潜像画像を形成する画素5bの深度は同一である。しかしながら本発明はこれに限定されることなく、背景画像を形成する画素5aと潜像画像を形成する、画素5bの深度は異なっていてもよい。
【0020】
第2の例は、画像形成体A2に対してX1、X2、Y1又はY2方向から入射角45°の可視光下において肉眼で垂直方向から水平方向に徐々に傾けて観察した場合(入射光がX1のとき、観察方向はX2であり、入射光がX2のとき、観察方向はX1であり、入射光がY1のとき、観察方向はY2であり、入射光がY2のとき、観察方向はY1である)、ポジ画像からネガ画像に連続して徐々に反転する。第3の例は、画像形成体A3に対してX1又はX2方向から入射角45°の可視光下において肉眼で垂直方向から水平方向に徐々に傾けて観察した場合(入射光がX1のとき、観察方向はX2であり、入射光がX2のとき、観察方向はX1である)、ポジ画像からネガ画像に連続して徐々に反転する。更に、第3の例は、画像形成体A3に対してY1又はY2方向から入射角45°の可視光下において肉眼で垂直方向から水平方向に徐々に傾けて観察した場合(入射光がY1のとき、観察方向はY2であり、入射光がY2のとき、観察方向はY1である)、ネガ画像からポジ画像に連続して徐々に反転する。
【0021】
(第4の例)
図6に画像形成体A4とそのX−X’断面図を示す。図6(a)に示すように光反射性層1a及び光透過性層1bが積層された基材1に、光透過性層の表面にX方向はピッチP1の間隔で及び、Y方向はピッチP2の間隔で配列された画素5によって基本画像2が形成され、基本画像は背景画像(第1の領域)3、第1の潜像画像(第2の領域)4a、第2の潜像画像(第3の領域)4bに区分けされ、画素5は、特定の深さを有する凹状で、かつ、画素5のエッジ部は光透過性層1bの表面よりも隆起した隆起部6からなる。背景画像を形成する画素5aは、第1の潜像画像4aを形成する画素5b1と第2の潜像画像4bを形成する画素5b2と、形状が異なっており、第1の潜像画像4aを形成する画素5b1は、第2の潜像画像4bを形成する画素5b2と、配置される角度が異なっている。つまり、第1の潜像画像4aを形成する画素5b1と、第2の潜像画像4bを形成する画素5b2は、形状が同一で、互いに配置角度が異なっている。図6では、画素5aは円形状であり、画素5b1、画素5b2は楕円形状である。画素の形状は限定されるものではない。また、第1の潜像画像4aを形成する画素5b1の配置される角度0度に対して、第2の潜像画像4bを形成する画素5b2は、配置される角度を90度としているが、本発明はこれに限定されることなく、配置される角度が180度以外であれば良い。つまり、異方性を持っていればよい。図6(b)の画像形成体A4のX−X’断面図に示すように、背景画像を形成する画素5a、第1の潜像画像4aを形成する画素5b1及び第2の潜像画像4bを形成する画素5b2の深度は同一である。しかしながら本発明はこれに限定されることなく、背景画像を形成する画素5a、第1の潜像画像4aを形成する画素5b1及び第2の潜像画像4bを形成する画素5b2の深度は、異なっていてもよい。
【0022】
図7(a)は、画像形成体A4に対してX1又はX2方向から入射角45°の可視光下において肉眼で垂直方向から観察した場合の図である。入射光I1は背景画像3を形成する画素5aの表面よりも隆起した隆起部6a上では、一部が乱反射I2し、反射光I3が得られる。入射光I1’は第1の潜像画像4aを形成する画素5b1上の表面よりも隆起した隆起部6b1では、一部が乱反射光I2’し、反射光I3’が得られる。入射光I1”は第2の潜像画像4bを形成する画素5b2上の表面よりも隆起した隆起部6b1では、一部が乱反射光I2”し、反射光I3”が得られる。第1の潜像画像4aを形成する画素5b1の隆起部6b1は、背景画像3を形成する画素5aの隆起部6aより、乱反射光I2’は乱反射光I2よりも乱反射光量が多く、反射光I3’は反射光I3よりも反射光量が少ない。よって、第1の潜像画像4aを形成する画素5b1の隆起部6b1と背景画像3を形成する画素5aの隆起部6aでは乱反射光量に大きな差異が生じる。よって、第1の潜像画像4a上は背景領域3上よりも明度が低く視認される。第2の潜像画像4bを形成する画素5b2の隆起部6b2は、背景画像3を形成する画素5aの隆起部6aより、乱反射光I2“は乱反射光I2よりも乱反射光量が多く、反射光I3”は反射光I3よりも反射光量が少ない。よって、第2の潜像画像4bを形成する画素5b2の隆起部6b2と背景画像3を形成する画素5aの隆起部6aでは乱反射光量に大きな差異が生じる。よって、第2の潜像画像4b上は、背景領域3上よりも明度が低く視認される。
【0023】
図8は、図7(b)に示すように画像形成体A4に対してX1又はX2方向から入射角45°の可視光下において肉眼で垂直方向から水平方向に徐々に傾けて観察した場合の図である。ただし、図6(a)に示すように入射光がX1のとき、観察方向はX2であり、入射光がX2のとき、観察方向はX1である。垂直方向から観察した場合は、背景画像3を形成する画素5aの隆起部6aでは、第1の潜像画像4aを形成する画素5b1の隆起部6b1より、反射光の光量が多くなり、第1の潜像画像4aを形成する画素5b1の隆起部6b1よりも明度が高く視認され、第1の潜像画像4aはネガ画像として視認される。また、背景画像3を形成する画素5aの隆起部6aでは、第2の潜像画像4bを形成する画素5b2の隆起部6b2より、反射光の光量が徐々に少なくなり、第2の潜像画像4bを形成する画素5b2の隆起部6b2よりも明度が低く視認され、第2の潜像画像4bはポジ画像として視認される。更に傾けて観察すると、背景画像3を形成する画素5aの隆起部6aの反射光の光量、第1の潜像画像4aを形成する画素5b1の隆起部6b1の反射光の光量、第2の潜像画像4bを形成する画素5b2の隆起部6b2の反射光の光量が同一又はほぼ同一となり、背景画像3、第1の潜像画像4a及び第2の潜像画像4bが区分けして視認できない状況になり、基本画像2のみが視認される。さらに、水平方向に傾けて観察すると、背景画像3を形成する画素5aの隆起部6aでは、第1の潜像画像4aを形成する画素5b1の隆起部6b1より、反射光の光量が徐々に少なくなり、第1の潜像画像4aを形成する画素5b1の隆起部6b1よりも明度が低く視認され、第1の潜像画像4aはポジ画像として視認される。また、背景画像3を形成する画素5aの隆起部6aでは、第2の潜像画像4bを形成する画素5b2の隆起部6b2より、反射光の光量が徐々に多くなり、第2の潜像画像4bを形成する画素5b2の隆起部6b2よりも明度が高く視認され、第2の潜像画像4bはネガ画像として視認される。このようなことから、可視光下において肉眼で垂直方向から水平方向に徐々に傾けて観察した場合に第1の潜像画像4aはポジ画像からネガ画像に連続して徐々に反転する。第2の潜像画像4bはネガ画像からポジ画像に連続して徐々に反転する。ただし、画像形成体A4に対してY1又はY2方向から入射角45°の可視光下において肉眼で垂直方向から水平方向に徐々に傾けて観察した場合(入射光がY1のとき、観察方向はY2であり、入射光がY2のとき、観察方向はY1である)、第1の潜像画像4aを形成する画素5b1の隆起部6b1は、背景画像3を形成する画素5aの隆起部6aより、乱反射光I2’は乱反射光I2よりも乱反射光量が少なく、反射光I3’は反射光I3よりも反射光量が多く視認されるため、ネガ画像からポジ画像に連続して徐々に反転する。また、第2の潜像画像4aを形成する画素5b2の隆起部6b2は、背景画像3を形成する画素5aの隆起部6aより、乱反射光I2’は乱反射光I2よりも乱反射光量が多く、反射光I3’は反射光I3よりも反射光量が多く視認されるため、ポジ画像からネガ画像に連続して徐々に反転する。
【0024】
上記画像形成体A1乃至A4を形成する画素は特定の深さを有する凹状であるが、本発明の画像形成体を形成する画素は、光反射性層及び光透過性層が積層された基材を貫通している貫通孔でも良い。また、上記に説明したように背景画像を形成する画素、潜像画像を形成する画素は、画素の形状、画素の大きさ又は画素の角度が異なっている必要がある。
【0025】
本発明の画像形成体の背景画像を形成する画素の深度、潜像画像を形成する画素の深度、第1の潜像画像を形成する画素の深度、第2の潜像画像を形成する画素の深度は、光反射性層及び光透過性層が積層された基材の厚さによっても異なるが、50μm〜300μm程度が好ましい。また、本発明の画像形成体の背景画像を形成する画素の幅、潜像画像を形成する画素の幅、第1の潜像画像を形成する画素の幅、第2の潜像画像を形成する画素の幅は、50μm〜500μm程度が好ましい。これらの画素はレーザ加工機で形成することが可能であり、レーザの熱によって画素のエッジ部に光透過性層の表面よりも隆起した隆起部が形成される。隆起部の高さは、基材表面から10μm以上程度、高く形成されれば良い。画素の点の形状は、特に限定されることはなく、円形、多角形及び特殊な形状の溝の少なくとも一つで形成することができる。多角形又は特殊な形状の溝を用いることによって、複製されにくくなるため偽造防止効果が向上する。
【0026】
光反射性層及び光透過性層が積層された基材の光反射性層は、アルミニウム箔、金箔、銀箔等の表面反射率の高い金属箔が使用でき、金属箔と同様の材質を光透過性基材の裏面に金属蒸着させても良い。また、ホログラムを用いることにより、偽造防止の向上を図ることができる。
【0027】
光反射性層及び光透過性層が積層された基材の光透過性層は、透明な基材が好ましいが、光を透過できる基材であれば良く、色彩を有する半透明の基材も使用することができる。材質は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロンポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル等が用いられる。
【0028】
光反射性層及び光透過性層が積層された基材の厚さは、特に限定されるものでなく60μm程度の薄い基材から、760μm程度のカード基材等でも有効である。また、基材の裏面に接着層を設けて貴重品に貼付可能となる。貴重品に貼付された画像形成体を剥離しようとすると溝状の点群、溝状の線群が破壊され、不正に再利用することができなくなる。
【0029】
本発明の基本画像、背景画像、潜像画像は、文字、数字、記号及び絵柄の少なくとも一つであることにより、特定方向から観察した場合に容易に真偽判別することが可能である。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の内容は、これらの実施例の範囲に限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)
厚さ約180μmのポリエチレン基材の裏面にアルミ蒸着し、ポリエチレン基材から成る光反射性層、アルミ蒸着した光透過性層を有する基材を得た。潜像画像(文字T)は、アルミ蒸着していないポリエチレン基材の表面に楕円形状の直径約100μm、幅約60μm、深度約150μmの凹状の画素をピッチ約200μmで一定間隔でレーザ加工機によって画素群を形成し、レーザの熱によって画素のエッジ部は、光透過性層の表面よりも隆起した隆起部が形成された。潜像画像(文字P)の周辺領域の背景画像部は、円形状の直径約100μm、深度約150μmの凹状の画素をピッチ約200μmで一定間隔でレーザ加工機によって画素群を形成し、レーザの熱によって画素のエッジ部は、光透過性層の表面よりも隆起した隆起部が形成された。潜像画像の画素の形状は楕円形状であり、背景画像の画素の形状は円形状であり、互いに画素の形状が異なっている。潜像画像と背景画像によって基本画像を形成し、画像形成体B1を作製した。図9に示す画像形成体B1をX1の方向又はX2の方向から可視光下において肉眼で垂直方向から水平方向に徐々に傾けて観察した場合に潜像画像(文字T)はポジ画像からネガ画像に連続して徐々に反転して観察できた。図9に示す画像形成体B1をY1の方向又はY2の方向から可視光下において肉眼で垂直方向から水平方向に徐々に傾けて観察した場合に潜像画像(文字T)は、ネガ画像からポジ画像に連続して徐々に反転して観察できた。
【0032】
(実施例2)
厚さ約180μmのポリエチレン基材の裏面にアルミ蒸着し、ポリエチレン基材から成る光反射性層、アルミ蒸着した光透過性層を有する基材を得た。潜像画像(文字T)は、アルミ蒸着していないポリエチレン基材の表面に円形状の直径約150μm、深度約150μmの凹状の画素をピッチ約200μmで一定間隔でレーザ加工機によって画素群を形成し、レーザの熱によって画素のエッジ部は、光透過性層の表面よりも隆起した隆起部が形成された。潜像画像(文字T)の周辺領域の背景画像部は、円形状の直径約100μm、深度約150μmの凹状の画素を約ピッチ200μmで一定間隔でレーザ加工機によって画素群を形成し、レーザの熱によって画素のエッジ部は、光透過性層の表面よりも隆起した隆起部が形成された。潜像画像の円形状の画素の直径は直径約150μmであり、背景画像の円形状の画素の直径は直径約100μmであり、互いに画素の大きさが異なっている。潜像画像と背景画像によって基本画像を形成し、画像形成体B2を作製した。図10に示す画像形成体B2をX1の方向又はX2の方向から可視光下において肉眼で垂直方向から水平方向に徐々に傾けて観察した場合に潜像画像(文字T)は、ポジ画像からネガ画像に連続して徐々に反転して観察できた。図10に示す画像形成体B2をY1の方向又はY2の方向から可視光下において肉眼で垂直方向から水平方向に徐々に傾けて観察した場合に潜像画像(文字T)はネガ画像からポジ画像に連続して徐々に反転して観察できた。
【0033】
(実施例3)
厚さ約180μmのポリエチレン基材の裏面にアルミ蒸着し、ポリエチレン基材から成る光反射性層、アルミ蒸着した光透過性層を有する基材を得た。潜像画像(文字T)は、アルミ蒸着していないポリエチレン基材の表面に楕円形状の直径約100μm、幅約60μm、深度約150μmの凹状の画素をピッチ約200μmで一定間隔でレーザ加工機によって画素群を形成し、レーザの熱によって画素のエッジ部は、光透過性層の表面よりも隆起した隆起部が形成された。潜像画像(文字T)の周辺領域の背景画像部は、潜像画像で形成した画素と同一形状の画素を、潜像画像を形成する画素の配置される角度を0度とした場合に、45度を回転して一定間隔でレーザ加工機によって画素群を形成し、レーザの熱によって画素のエッジ部は、光透過性層の表面よりも隆起した隆起部が形成された。潜像画像の画素の配置される角度は0度であり、背景画像の画素の配置される角度は45度であり、互いに画素の配置される角度が異なっている。潜像画像と背景画像によって基本画像を形成し、画像形成体B3を作製した。図11に示す画像形成体B3をX1の方向又はX2の方向から可視光下において肉眼で垂直方向から水平方向に徐々に傾けて観察した場合に潜像画像(文字T)はポジ画像からネガ画像に連続して徐々に反転して観察できた。図11に示す画像形成体B3をY1の方向又はY2の方向から可視光下において肉眼で垂直方向から水平方向に徐々に傾けて観察した場合に潜像画像(文字T)はネガ画像からポジ画像に連続して徐々に反転して観察できた。
【0034】
(実施例4)
厚さ約180μmのポリエチレン基材の裏面にアルミ蒸着し、ポリエチレン基材から成る光反射性層、アルミ蒸着した光透過性層を有する基材を得た。第1の潜像画像(文字T)は、アルミ蒸着していないポリエチレン基材の表面に楕円形状の直径約100μm、幅約60μm、深度約150μmの凹状の画素を約ピッチ200μmで一定間隔でレーザ加工機によって画素群を形成し、レーザの熱によって画素のエッジ部は、光透過性層の表面よりも隆起した隆起部が形成された。第2の潜像画像(文字L)は、第1の潜像画像で形成した画素と同一形状の画素を、潜像画像を形成する画素の配置される角度を0度とした場合に、45度を回転して一定間隔でレーザ加工機によって画素群を形成し、レーザの熱によって画素のエッジ部は、光透過性層の表面よりも隆起した隆起部が形成された。第1の潜像画像の画素の配置される角度は0度であり、第2の潜像画像の画素の配置される角度は45度であり、互いに画素の配置される角度が異なっている。第1の潜像画像(文字T)及び第2の潜像画像(文字L)の周辺領域の背景画像部は、円形状の直径約100μm、深度約150μmの凹状の画素をピッチ約200μmで一定間隔でレーザ加工機によって画素群を形成し、レーザの熱によって画素のエッジ部は、光透過性層の表面よりも隆起した隆起部が形成された。第1の潜像画像(文字P)及び第2の潜像画像(文字L)潜像画像の画素の形状は楕円形状であり、背景画像の画素の形状は円形状であり、互いに画素の形状が異なっている。第1の潜像画像、第2の潜像画像及び背景画像によって基本画像を形成し、画像形成体B4を作製した。図12に示す画像形成体B4をX1の方向又はX2の方向から可視光下において肉眼で垂直方向から水平方向に徐々に傾けて観察した場合に第1の潜像画像(文字Tはポジ画像からネガ画像に連続して徐々に反転して観察でき、第2の潜像画像(文字Lはネガ画像からポジ画像に連続して徐々に反転して観察できた。図12に示す画像形成体B4をY1の方向又はY2の方向から可視光下において肉眼で垂直方向から水平方向に徐々に傾けて観察した場合に第1の潜像画像(文字T)は、ネガ画像からポジ画像に連続して徐々に反転して観察でき、第2の潜像画像(文字L)は、ポジ画像からネガ画像に連続して徐々に反転して観察できた。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1に画像形成体A1とそのX−X’断面図を示す図である。
【図2】図2は、画像形成体A1に対してX1又はX2方向から入射角45°の可視光下において肉眼で垂直方向から観察した場合の図である。
【図3】図3は、図2(b)に示すように画像形成体A1に対してX1又はX2方向から入射角45°の可視光下において肉眼で垂直方向から水平方向に徐々に傾けて観察した場合の図である。
【図4】図4に画像形成体A2とそのX−X’断面図を示す図である。
【図5】図5に画像形成体A3とそのX−X’断面図を示す図である。
【図6】図6に画像形成体A4とそのX−X’断面図を示す図である。
【図7】図7は、画像形成体A4に対してX1又はX2方向から入射角45°の可視光下において肉眼で垂直方向から観察した場合の図である。
【図8】図8は、図7(b)に示すように画像形成体A4に対してX1又はX2方向から入射角45°の可視光下において肉眼で垂直方向から水平方向に徐々に傾けて観察した場合の図である。
【図9】画像形成体B1を示す図である。
【図10】画像形成体B2を示す図である。
【図11】画像形成体B3を示す図である。
【図12】画像形成体B4を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 基材
1a 光反射性層
1b 光透過性層
2 基本画像
3 背景画像(第1の領域)
4 潜像画像(第2の領域)
4a 第1の潜像画像(第2の領域)
4b 第2の潜像画像(第3の領域)
5a 背景画像を形成する画素5a
5b 潜像画像を形成する画素5b
5b1 第1の潜像画像4aを形成する画素
5b2 第2の潜像画像4bを形成する画素
6、6a、6b、6b1、6b2 隆起部
A1、A2、A3、A4、B1、B2、B3、B4 画像形成体
F 深度
H 厚さ
I1、I1’、I1” 入射光
I2、I2’、I2” 乱反射
I3、I3’、I3” 反射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反射性層及び光透過性層が積層された基材に、前記光透過性層の表面に特定間隔で配列された画素によって基本画像が形成され、前記基本画像は第1の領域と第2の領域に区分けされ、
前記画素は、特定の深さを有する凹状又は貫通孔で、かつ、前記画素のエッジ部は、前記光透過性層の表面よりも隆起した隆起部が形成され、
前記第1の領域を形成する画素と前記第2の領域を形成する画素は、形状、大きさ又は画素の角度が異なってなる画像形成体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2006−224416(P2006−224416A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−40065(P2005−40065)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】