説明

画像形成方法およびインクジェット記録装置

【課題】記録媒体上に形成された画像の光沢性に優れ、画像の滲みを低減でき、色濃度の高い画像が得られる画像形成方法を提供すること。
【解決手段】インクジェット記録装置を用いて、放射線硬化型インク組成物を吐出可能な吐出ヘッドから、放射線硬化型インク組成物の液滴を記録媒体上に吐出する第1工程と、活性放射線を照射可能な照射手段によって、前記液滴に該活性放射線を照射する第2工程と、を含み、前記活性放射線が照射された放射線硬化型インク組成物の液滴のうち、前記第2工程における、前記活性放射線の積算照射エネルギーが最も高い液滴と、前記活性放射線の積算照射エネルギーが最も低い液滴と、の積算照射エネルギーの差は、前記放射線硬化型インク組成物を90%硬化させるために必要な照射エネルギー(E90)[mJ/cm]の30%以上50%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成方法およびインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紫外線、電子線その他の放射線によって硬化する放射線硬化型インクの開発が進められている。このような放射線硬化型インクは、プラスチック、ガラス、コート紙等のインクを吸収しないまたはほとんど吸収しない非吸収メディアに対する記録において、速乾性を有することを理由の1つとして用いられている。放射線硬化型インクは、例えば、重合性モノマー、重合開始剤、顔料その他の添加剤等から構成されている。
【0003】
とろこで、このような放射線硬化型インクを用いて、インクジェット記録装置により記録媒体上に放射線硬化型インクの液滴を吐出した後、活性放射線を照射することによりインクを硬化させて、記録媒体上に画像を形成することが知られている。
【0004】
このように放射線硬化型インクを用いて形成された画像は、放射線硬化型インクの吐出タイミングや放射線の照射条件等によって、滲みが生じたり、光沢性や色濃度が低下することが知られている。
【0005】
例えば、特許文献1には、放射線硬化型インクの吐出タイミングや照射エネルギーにより、記録媒体上に形成された画像の光沢度等が変化することが記載されている。特許文献2には、光硬化型インクの硬化率を制御することによって、異なる色同士の色混じりが少なく、高精細な画像が得られることが記載されている。また、特許文献3には、異なる色の放射線硬化型インクを吐出した際に、異なる色同士が混ざることを抑制するために、色毎に活性放射線の照射タイミングを制御することについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−211651号公報
【特許文献2】特許第4147943号
【特許文献3】特開2007−276248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した画像形成方法によって形成された画像は、光沢性が十分ではなかったり、滲みが発生したり、色濃度が低い場合があった。
【0008】
本発明に係る幾つかの態様は、前記課題を解決することで、記録媒体上に形成された画像の光沢性に優れ、画像の滲みを低減でき、色濃度の高い画像が得られる画像形成方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0010】
[適用例1]
本発明に係る画像形成方法の一態様は、
インクジェット記録装置を用いて、放射線硬化型インク組成物を吐出可能な吐出ヘッドから、放射線硬化型インク組成物の液滴を記録媒体上に吐出する第1工程と、
活性放射線を照射可能な照射手段によって、前記液滴に該活性放射線を照射する第2工程と、
を含み、
前記活性放射線が照射された放射線硬化型インク組成物の液滴のうち、前記第2工程における、前記活性放射線の積算照射エネルギーが最も高い液滴と、前記活性放射線の積算照射エネルギーが最も低い液滴と、の積算照射エネルギーの差は、前記放射線硬化型インク組成物を90%硬化させるために必要な照射エネルギー(E90)[mJ/cm]の30%以上50%以下であることを特徴とする。
【0011】
適用例1の画像形成方法によれば、記録媒体上に形成された画像の光沢性に優れ、画像の滲みを低減でき、色濃度の高い画像が得られる。
【0012】
[適用例2]
本発明に係る画像形成方法の一態様は、
インクジェット記録装置を用いて、放射線硬化型インク組成物を吐出可能な吐出ヘッドから、複数種の放射線硬化型インク組成物の液滴を記録媒体上に吐出する第1工程と、
活性放射線を照射可能な照射手段によって、前記液滴に該活性放射線を照射する第2工程と、
を含み、
前記複数種の放射線硬化型インクは、前記活性放射線が照射された同一種の放射線硬化型インク組成物の液滴のうち、前記第2工程における、前記活性放射線の積算照射エネルギーが最も高い液滴と、前記活性放射線の積算照射エネルギーが最も低い液滴と、の積算照射エネルギーの差は、前記放射線硬化型インク組成物を90%硬化させるために必要な照射エネルギー(E90)[mJ/cm]の30%以上50%以下であることを特徴とする。
【0013】
適用例2の画像形成方法によれば、複数種の放射線硬化型インク組成物を記録媒体上に吐出しても、記録媒体上に形成された画像の光沢性に優れ、画像の滲みを低減でき、色濃度の高い画像が得られる。
【0014】
[適用例3]
適用例1または適用例2において、
前記吐出ヘッドが所定方向に沿って移動を行いながら、前記第1工程および前記第2工程を行い、
前記照射手段は、前記吐出ヘッドの前記所定方向の少なくとも一方の側に設けられていることができる。
【0015】
適用例3の画像形成方法によれば、吐出ヘッドの移動にともなって、液滴に活性放射線を照射することができる。
【0016】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか1例において、
前記活性放射線が照射された放射線硬化型インク組成物の液滴のうち、
前記活性放射線の積算照射エネルギーが最も高い液滴は、前記照射手段による前記活性放射線の照射回数が最も多く、
前記活性放射線の積算照射エネルギーが最も低い液滴は、前記照射手段による前記活性放射線の照射回数が最も少ないことができる。
【0017】
適用例4の画像形成方法によれば、照射手段による前記活性放射線の照射回数が最も多い液滴と最も少ない液滴とが存在する場合において、記録媒体上に形成された画像の光沢性に優れ、画像の滲みを低減でき、色濃度の高い画像が得られる。
【0018】
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか1例において、
n回の主走査によって画像を形成する場合において、前記E90は、前記照射手段によって照射される1回あたりの照射エネルギーをEとすると、下記式(1)を満たすことができる。
【0019】
4(n−1)E≦E90≦20(n−1)E/3 (ただし、nは2以上の整数を示す。)・・・(1)
【0020】
適用例5の画像形成方法によれば、上記式(1)を用いることにより、放射線硬化型インク組成物の組成を調製したり、放射線硬化型インク組成物を選択したりすることが容易になる。
【0021】
[適用例6]
適用例1ないし適用例5のいずれか1例において、
前記E90は、180[mJ/cm]以上250[mJ/cm]以下であることができる。
【0022】
適用例6の画像形成方法によれば、放射線硬化型インク組成物の組成を調製したり、放射線硬化型インク組成物を選択したりすることがより容易になる。
【0023】
[適用例7]
適用例2において、
n回の主走査によって画像を形成する場合において、前記E90は、前記照射手段によって照射される1回あたりの照射エネルギーをEとすると、前記複数種の放射線硬化型インク組成物間のE90の差(ΔE90)は、下記式(2)を満たすことができる。
【0024】
0≦ΔE90≦8(n−1)E/3 (ただし、nは2以上の整数を示す。)・・・(2)
【0025】
適用例7の画像形成方法によれば、上記式(2)を用いることにより、記録媒体上に複数種の放射線硬化型インク組成物の液滴を吐出しても、すべての液滴に適した活性放射線の照射条件を容易に設定することができ、良好な画像を得ることができる。
【0026】
[適用例8]
適用例2または適用例7において、
前記複数種の放射硬化型インク組成物間におけるE90[mJ/cm]の差(ΔE90)は、70[mJ/cm]以内であることができる。
【0027】
適用例8の画像形成方法によれば、記録媒体上に複数種の放射線硬化型インク組成物の液滴を吐出しても、すべての液滴に適した活性放射線の照射条件をより容易に設定することができ、良好な画像を得ることができる。
【0028】
[適用例9]
適用例1ないし適用例8のいずれか1例において、
前記第2工程において、前記活性放射線の積算照射エネルギーが最も高い液滴と、前記活性放射線の積算照射エネルギーが最も低い液滴と、に照射される積算照射エネルギーは、それぞれE90未満であることができる。
【0029】
[適用例10]
本発明に係るインクジェット記録装置の一態様は、
記録媒体上に放射線硬化型インク組成物の液滴を吐出する吐出ヘッドと、
前記液滴に活性放射線を照射する活性放射線照射装置と、
を有し、
前記活性放射線が照射された放射線硬化型インク組成物の液滴のうち、前記活性放射線の積算照射エネルギーが最も高い液滴と、前記活性放射線の積算照射エネルギーが最も低い液滴と、の積算照射エネルギーの差が、前記放射線硬化型インク組成物を90%硬化させるために必要な照射エネルギー(E90)[mJ/cm]の30%以上50%以下にする制御手段を備えることを特徴とする。
【0030】
適用例10のインクジェット記録装置によれば、光沢性に優れ、画像の滲みを低減でき、色濃度の高い画像を記録することができる。
【0031】
[適用例11]
本発明に係る画像形成方法の一態様は、
インクジェット記録装置を用いた画像形成方法において、
所定の方向に沿って移動する主走査を行いながら放射線硬化型インク組成物を吐出可能な吐出ヘッドから、前記放射線硬化型インク組成物の液滴を記録媒体上に吐出する吐出工程と、
前記吐出ヘッドの所定の方向の両端に設けられ前記吐出ヘッドと共に移動して、活性放射線を照射可能な第1照射手段から、前記記録媒体上の液滴に活性放射線を照射する第1照射工程と、
前記記録媒体を搬送する副走査方向に設けられ、活性放射線を照射可能な第2照射手段から、前記副走査方向に搬送された前記記録媒体上の液滴に活性放射線を照射する第2照射工程と、
を有し、
前記吐出工程および前記第1照射工程は、複数回繰り返され、
前記第1照射工程によって照射される前記活性放射線の積算照射エネルギーが最も高い液滴と、前記第1照射工程によって照射される前記活性放射線の積算照射エネルギーが最も低い液滴と、の積算照射エネルギーの差は、前記放射線硬化型インク組成物を90%硬化させるために必要な照射エネルギー(E90)[mJ/cm]の30%以上50%以下であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施形態に係る画像形成方法に使用可能なインクジェット記録装置の斜視図。
【図2】図1に示した活性放射線照射装置の正面図。
【図3】図2のA−A矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に本発明の好適な実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
【0034】
1.第1実施形態
1.1.画像形成方法
本発明の一実施形態に係る画像形成方法は、インクジェット記録装置を用いて、放射線硬化型インク組成物を吐出可能な吐出ヘッドから、放射線硬化型インク組成物の液滴を記録媒体上に吐出する第1工程と、活性放射線を照射可能な照射手段によって、前記液滴に該活性放射線を照射する第2工程と、を含み、前記活性放射線が照射された放射線硬化型インク組成物の液滴うち、前記第2工程における、前記活性放射線の積算照射エネルギーが最も高い液滴と、前記活性放射線の積算照射エネルギーが最も低い液滴と、の積算照射エネルギーの差は、前記放射線硬化型インク組成物を90%硬化させるために必要な照射エネルギー(E90)[mJ/cm]の30%以上50%以下であることを特徴とする。また、本発明において「画像」とは、ドット群から形成される印字パターンを示し、テキスト印字、ベタ印字も含める。なお、本実施形態に係る画像形成方法は、同一組成の放射線硬化型インク組成物のみを用いて画像を形成する際に適用される。
【0035】
以下、本実施形態に係る画像形成方法について説明する。
【0036】
1.1.1.第1工程
第1工程は、インクジェット記録装置を用いて、放射線硬化型インク組成物を吐出可能な吐出ヘッドから、放射線硬化型インク組成物の液滴を記録媒体上に吐出する工程である。
【0037】
本実施形態に係る画像形成方法に用いるインクジェット記録装置としては、例えば、図1に示すものを用いることができる。図1は、本実施形態に係る画像形成方法に使用可能なインクジェット記録装置の斜視図である。
【0038】
図1に示したインクジェット記録装置20は、記録媒体Pを副走査方向SSに送るモーター30と、プラテン40と、放射線硬化型インク組成物を微少粒径の液滴にしてヘッドノズルから噴射して記録媒体P上に吐出する吐出ヘッド52と、該吐出ヘッド52を搭載したキャリッジ50と、キャリッジ50を主走査方向MSに移動させるキャリッジモーター60と、吐出ヘッド52から放射線硬化型インク組成物の液滴を吐出して記録媒体P上に付着させた液滴に活性放射線を照射する一対の活性放射線照射装置90A、90Bと、を備えている。
【0039】
キャリッジ50は、キャリッジモーター60に駆動される牽引ベルト62によって牽引され、ガイドレール64に沿って移動する。
【0040】
吐出ヘッド52は、キャリッジ50に搭載されており、キャリッジ50の移動方向(以下、「主走査方向」ともいう。)MSへの動作に伴って、主走査方向MSに移動する主走査を行う。
【0041】
また、吐出ヘッド52は、放射線硬化型インク組成物を吐出可能である。図1の例では、吐出ヘッド52は、4色のインクを噴射するフルカラー印刷用のシリアル型ヘッドであり、各色ごとに多数のヘッドノズルが備えられている。かかる吐出ヘッド52が搭載されるキャリッジ50には、吐出ヘッド52の他に、吐出ヘッド52に供給される黒色インクを収容したブラックインク容器としてのブラックカートリッジ54と、吐出ヘッド52に供給されるカラーインクを収容したカラーインクとしてのカラーインクカートリッジ56とが搭載されている。各カートリッジ54、56に収容されているインクは、後述する放射線硬化型インク組成物である。
【0042】
本実施形態の第1工程において、吐出ヘッド52から吐出される液滴量は、1pl以上20pl以下であることが好ましい。液適量が上記範囲内であることによって、吐出安定性が良好であり、高画質の画像を得ることができる。
【0043】
キャリッジ50のホームポジション(図1の右側の位置)には、停止時に吐出ヘッド52のノズル面を密閉するためのキャッピング装置80が設けられている。印刷ジョブが終了してキャリッジ50がこのキャッピング装置80の上まで到達すると、図示しない機構によってキャッピング装置80が自動的に上昇して、吐出ヘッド52のノズル面を密閉する。このキャッピングにより、ノズル内のインクの乾燥が防止される。キャリッジ50の位置決め制御は、例えば、このキャッピング装置80の位置にキャリッジ50を正確に位置決めするために行われる。
【0044】
このようなインクジェット記録装置20を使用することにより、記録媒体上に放射線硬化型インク組成物の液滴を吐出することができる。また、インクジェット記録装置20によれば、第1工程と後述する第2工程とを別個の装置で行うことなく、第1工程と後述する第2工程とを一の装置で連続的に行うことが可能となる。
【0045】
1.1.2.第2工程
第2工程は、活性放射線を照射可能な照射手段によって、前記液滴に該活性放射線を照射する工程である。以下、前述したインクジェット記録装置20を用いて、活性放射線の照射を行う場合について説明する。
【0046】
活性放射線を照射可能な照射手段としては、例えば図1および図2に示す活性放射線照射装置が挙げられる。図2は、図1に示した活性放射線照射装置90A(図2の190Aに相当)、90B(図2の190Bに相当)の正面図である。図3は、図2のA−A矢視図である。
【0047】
図1ないし図3に示すように、活性放射線照射装置190A、190Bは、キャリッジ50の移動方向に沿った両側端にそれぞれ取り付けられている。
【0048】
図2に示すように、吐出ヘッド52の向かって左側に取り付けられた活性放射線照射装置190Aは、キャリッジ50が右方向(図2の矢印B方向)に移動する右走査時に、記録媒体P上に吐出された液滴に対して活性放射線照射を行う。一方、吐出ヘッド52の向かって右側に取り付けられた活性放射線照射装置190Bは、キャリッジ50が左方向(図2の矢印C方向)に移動する左走査時に、記録媒体P上に吐出された液滴に対して活性放射線照射を行う。
【0049】
各活性放射線照射装置190A、190Bは、キャリッジ50に取り付けられて、活性放射線光源192をそれぞれ1個ずつ整列支持した筐体194と、活性放射線光源192の発光および消灯を制御する(図示しない)光源制御回路とを備えている。図2および図3に示すように、活性放射線照射装置190A、190Bには、活性放射線光源192がそれぞれ1個ずつ設けられているが2個以上設けてもよい。活性放射線光源192としては、LED(Light Emitting Diode)またはLD(Laser Diode)のいずれかを使用することが好ましい。これにより、活性放射線光源として水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、その他のランプ類を使用した場合と比較して、フィルター等の装備のために活性放射線光源が大型化することを回避することができる。また、フィルターによる吸収で出射された活性放射線強度が低下することがなく、放射線硬化型インク組成物を効率良く硬化させることができる。
【0050】
また、各活性放射線光源192は、出射される波長が同じものでもよいし、異なっていてもよい。活性放射線光源192としてLEDまたはLDを使用する場合、出射される活性放射線の波長は350〜430nm程度の範囲のいずれかとすればよい。
【0051】
活性放射線照射装置190A、190Bによれば、図2に示すように、吐出ヘッド52からの吐出により記録媒体P上に付着させた液滴に対して、吐出ヘッド52近傍の記録媒体P上を照射する活性放射線光源192により活性放射線192aが照射され、少なくとも液滴の表面を硬化させて、記録媒体上に画像を形成することができる。
【0052】
本実施形態の画像形成方法において、記録媒体上に形成された画像の膜厚が、1μm以上30μm以下となるように形成することができる。記録媒体上に形成された画像の膜厚が上記範囲内であると、記録媒体のカールや画像の皺等を低減でき、良好な画像を得ることができる。
【0053】
以下、本実施形態における第1工程および第2工程を複数回繰り返すことによって、所望の領域に画像を形成する方法について、詳細に説明する。
【0054】
まず、キャリッジ50を右方向(図2の矢印B方向)に移動させながら、記録媒体P上に第1液滴を吐出して、活性放射線照射装置190Aによって活性放射線を第1液滴に照射する。次いで、記録媒体Pを副走査方向SSに移動させる副走査を行う。副走査における記録媒体Pの移動距離は、吐出ヘッド52の記録に用いるノズル列の副走査方向における距離よりも短い。なお、本実施形態における副走査方向SSは、主走査方向MSに直交しているがこれに限定されず、記録媒体Pが搬送される方向によって決定されるものである。
【0055】
なお、本明細書中において、キャリッジ50を主走査方向MSの一方向に移動させながら液滴を吐出し、液滴に活性放射線を照射する1回の主走査のことを1パスという。
【0056】
その後、キャリッジ50を左方向(図2の矢印C方向)に移動させながら上記第1工程に示す方法によって記録媒体P上に第2液滴を吐出して、活性放射線照射装置190Bによって活性放射線を第2液滴に照射する1回の主走査(1パス)をさらに行う。このとき、記録媒体上の第1液滴は、活性放射線照射装置190Aおよび活性放射線照射装置190Bによって活性放射線が照射される。次に、記録媒体Pを副走査方向SSに移動させる副走査をさらに行う。
【0057】
以上までの動作で、第1液滴は、2回のパスによって活性放射線が照射され、1パス目に1回、2パス目に2回の合計3回の活性放射線の照射が行なわれる。また、第2液滴は、1回のパスによって活性放射線が照射され、1回の活性放射線の照射が行なわれる。
【0058】
このような動作をさらに繰り返し行うことによって、記録媒体の所定領域(副走査方向に吐出ヘッド52のノズル列の距離分の幅を持ち、主走査方向に延びる領域)に液滴の集合からなる画像を形成することができる。パスと副走査の繰り返しによるn回のパスによって、吐出ヘッド52のノズル列と記録媒体上の第1液滴との副走査方向の位置が重ならないような位置関係になることにより、所定領域への画像の形成が完了する。画像の形成の完了までに、1パス目に吐出された第1液滴はn回のパスにより照射を受ける。このとき、n回目のパスによって吐出された第n液滴は1回のパスにより照射を受ける。画像を形成する液滴のうち、吐出ヘッド52の記録に用いるノズル列のうちの副走査方向の最上流に位置するノズルにより吐出された液滴が第1液滴であり、吐出ヘッド52の記録に用いるノズル列のうちの副走査方向の最下流の位置するノズルにより吐出された液滴が第n液滴である。
【0059】
第1液滴は、画像を形成する液滴中、画像の形成において照射を受けたパス数の最も多い液滴であり、照射回数が最も多い液滴である。一方、第n液滴は画像の形成において、照射を受けたパス数の最も少ない液滴であり照射回数が最も少ない液滴である。
【0060】
上記の画像の形成において行われる照射によって、各液滴は、ドットの滲みや混色の発生が抑制できる程度まで硬化される。本明細書では、このような状態まで液滴が硬化されることを「仮硬化」と称する。つまり、上記の画像の形成の完了時には、画像を形成する各液滴は、少なくとも仮硬化している。なお、仮硬化は、放射線硬化型インク組成物の液滴に、該液滴の硬化率が90%未満になるまで活性放射線を照射することにより行われる。このとき、仮硬化された液滴に与えられた積算照射エネルギーは、後述する放射線硬化型インク組成物を90%硬化させるために必要な照射エネルギー(E90)[mJ/cm]未満である。
【0061】
上述の画像の形成による照射によって各液滴は仮硬化されている。画像が形成された記録媒体には、この後、各液滴をさらに硬化させるための照射を行うことができる。本明細書では、このような状態まで液滴が硬化されることを「本硬化」と称する。なお、本硬化は、放射線硬化型インク組成物の液滴に、該液滴の硬化率が90%以上になるように活性放射線を照射することにより行われる。このとき、本硬化までに液滴に与えられた積算照射エネルギーは、後述する放射線硬化型インク組成物を90%硬化させるために必要な照射エネルギー(E90)[mJ/cm]以上である。本硬化によって、実用上の使用に問題がない程度まで液滴を硬化させることができる。
【0062】
本実施形態の画像形成方法に用いるインクジェット記録装置20は、記録媒体Pの移動方向である副走査方向SSの下流側に、別途、本硬化のための活性放射線照射手段(図示せず)を備えていてもよい。これにより、全てのパスを終えて記録媒体への画像の形成が完了した後に、本硬化のための活性放射線照射手段から液滴に放射線を照射することによって、記録媒体P上の液滴を本硬化させることができる。
【0063】
副走査方向SSの下流側に設けられる本硬化用の活性放射線照射手段は、副走査方向SSに送られた記録媒体P上の液滴に活性放射線を照射できる位置に設けられていればよく、例えば、キャリッジ50であって、かつ、吐出ヘッド52の下流側(記録媒体Pの移動方向である副走査方向SS)に設置することができる。あるいは、キャリッジ50に設けられず、キャリッジにおける副走査方向SSの下流側に設けられていてもよい。本硬化用の活性放射線照射手段としては、活性放射線照射装置190A(190B)と同様の装置を用いることができる。
【0064】
なお、本硬化は、上記の副走査方向SSの下流側に設けられた本硬化のための活性放射線照射手段によって行われることに限られず、上記の活性放射線照射装置190Aおよび活性放射線照射装置190Bによっても行うことができる。
【0065】
1.1.3.活性放射線の照射条件
本実施形態の画像形成方法における活性放射線の照射条件について、以下詳細に説明する。
【0066】
本実施形態の画像形成方法は、活性放射線が照射された放射線硬化型インク組成物の液滴うち、活性放射線の積算照射エネルギーが最も高い液滴と、活性放射線の積算照射エネルギーが最も低い液滴と、の積算照射エネルギーの差は、放射線硬化型インク組成物を90%硬化させるために必要な照射エネルギー(E90)[mJ/cm]の30%以上50%以下であることを特徴とする。
【0067】
液滴に照射される積算照射エネルギーは、同一種の放射線硬化型インク組成物の液滴であっても、パス数、照射条件、液滴の吐出のタイミング、液滴の着弾箇所等によって、液滴毎に異なる場合がある。例えば、上記「1.1.2.第2工程」の所定領域に画像を形成する方法において、2パスで画像形成(印刷)を終了すると、第1液滴は3回、第2液滴は1回、活性放射線が照射されることになる。そのため、活性放射線照射装置190Aおよび190Bの照射強度が一定であると、第1液滴に照射される積算照射エネルギーは、第2液滴に照射される積算照射エネルギーよりも高くなる。このように、液滴毎に積算照射エネルギーのばらつきが発生すると、画像の滲みが発生したり、画像の光沢性や色濃度が低下する場合がある。
【0068】
そのため、活性放射線が照射された放射線硬化型インク組成物の液滴うち、活性放射線の積算照射エネルギーが最も高い液滴と、活性放射線の積算照射エネルギーが最も低い液滴と、の積算照射エネルギーの差を、放射線硬化型インク組成物を90%硬化させるために必要な照射エネルギー(E90)[mJ/cm]の30%以上50%以下の範囲内とすることによって、画像の滲みを低減でき、画像の光沢性に優れ、色濃度の高い画像を形成することができる。
【0069】
一方、上記の積算照射エネルギーの差がE90の30%未満であると、吐出された一部の液滴の硬化が不十分となるため、硬化の不十分な液滴が他の液滴の着弾箇所にまで濡れ広がり、画像の滲みが発生したり、画像の色濃度が低下する場合がある。
【0070】
また、上記の積算照射エネルギーの差がE90の50%を超えると、一部の液滴が急激に硬化されることによって、液滴が十分に濡れ広がらなくなり、画像の光沢性が低下したり、画像の色濃度が低下する場合がある。
【0071】
本発明における放射線硬化型インク組成物を90%硬化させるために必要な照射エネルギー(E90)[mJ/cm]とは、放射線硬化型インク組成物中における重合性化合物の転化率を90%にするために必要な活性放射線の照射エネルギーのことをいう。放射線硬化型インク組成物に含まれる重合性化合物の転化率が90%以上になると、放射硬化型インク組成物が十分に硬化され、記録媒体上に実用上の使用に問題のない良好な画像を得ることができる。また、転化率は、FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)を用いて、特定の吸収スペクトルのピークにおける吸光度の変化値から求めることができる。
【0072】
本実施形態における画像形成方法は、所定の画像を形成するために必要なパス数が設定されているインクジェット記録装置において、液滴間の積算照射エネルギーの差が上記範囲内になるように活性放射線の照射強度を設定すると、良好な画像が容易に得られる点で優れている。
【0073】
また、本実施形態における画像形成方法は、活性放射線照射装置における活性放射線の照射強度が決められているインクジェット記録装置において、液滴間の積算照射エネルギーの差が上記範囲内になるようにパス数を設定すると、良好な画像が容易に得られる点で優れている。
【0074】
記録媒体上に吐出された液滴に照射される積算照射エネルギーは、図1〜図3のように、吐出ヘッド52が主走査方向MSに往復運動可能であり、照射手段が吐出ヘッド52の移動方向に沿って吐出ヘッド52の両側に設けられている場合において、以下のように求めることができる。
【0075】
例えば、n回(ただし、nは2以上の整数)のパスで画像を形成する場合には、活性放射線の積算照射エネルギーが最も高い液滴(以下、「Li」ともいう。)と、活性放射線の積算照射エネルギーが最も低い液滴(以下、「Lf」ともいう。)と、に対する活性放射線の照射回数が次のようになる。
【0076】
照射手段が吐出ヘッド52の両側に設けられているので、Liに照射される活性放射線の照射回数は、n回のパスで、(2n−1)回である。また、Lfに照射される活性放射線の照射回数は、照射手段の片側からのみ活性放射線が照射されるので、1回である。なお、パスの回数nは、記録媒体上の各液滴が活性放射線の照射を受けたパスの回数であり、1からnまでのn種類の、照射を受けた回数が異なる液滴が存在しうる。
【0077】
以上のことから、照射手段から照射される1回あたりの照射エネルギーをE[mJ/cm]とすると、Liに照射される積算照射エネルギー(以下、「Ei」ともいう。)は、下記式(A)で表される。また、Lfに照射される積算照射エネルギー(以下、「Ef」ともいう。)は、下記式(B)で表される。
【0078】
Ei=E×(2n−1) ・・・(A)
【0079】
Ei=E ・・・(B)
【0080】
また、Ei[mJ/cm]と、Ef[mJ/cm]と、は、下記式(C)を満たす。
【0081】
0.3≦(Ei−Ef)/E90≦0.5 ・・・(C)
【0082】
以上の式(A)〜式(C)から、E90の取り得る値の範囲は、下記式(1)によって表すことができる。
【0083】
4(n−1)E≦E90≦20(n−1)E/3 (ただし、nは2以上の整数を示す。)・・・(1)
【0084】
本実施形態の画像形成方法に用いるインクジェット記録装置において、照射手段から照射される1回あたりの照射エネルギーをE[mJ/cm]と、所定の画像を形成するためのパス数nが決定していると、上記式(1)を用いることにより、放射線硬化型インク組成物の組成を調製したり、放射線硬化型インク組成物を選択したりすることが容易になる。
【0085】
本実施形態の画像形成方法に用いる複数種の放射線硬化型インク組成物の(E90)[mJ/cm]は、放射線硬化型インク組成物の組成によって異なり特に限定されるものではないが、例えば、180[mJ/cm]以上250[mJ/cm]以下であることがより好ましい。
【0086】
1.2.放射線硬化型インク組成物
次に、本実施形態に係る画像形成方法に用いる放射線硬化型インク組成物について、詳細に説明する。
【0087】
1.2.1.重合性化合物
本実施形態に係る放射線硬化型インク組成物は、重合性化合物を含有する。重合性化合物としては、以下に示す単官能モノマー、二官能モノマー、三官能モノマー、ウレタンアクリレートオリゴマー、アミノアクリレート等が挙げられる。
【0088】
単官能モノマーとしては、特に限定されないが、例えば(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル(メタ)アクリレート、(2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンフォルマルモノ(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの重合性化合物は、1種単独で用いることもできるし、2種以上併用して用いてもよい。なお、本明細書中において、(メタ)アクリレートという記載は、アクリレートまたはメタクリレートを示すものである。
【0089】
二官能モノマーとしては、特に限定されないが、例えばアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、脂環式構造を有するジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン等が挙げられる。また、脂環式構造を有するジ(メタ)アクリレートとしては、例えばトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの重合性化合物は、1種単独で用いることもできるし、2種以上併用して用いてもよい。
【0090】
三官能モノマーとしては、特に限定されないが、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリ(メタ)アクリレート、グリセリンPO変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0091】
また、他の重合性化合物としては、N−ビニル化合物を含んでいてもよい。N−ビニル化合物としては、N−ビニルフォルムアミド、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、およびそれらの誘導体等が挙げられる。
【0092】
また、重合性化合物として、ウレタン系オリゴマーを含んでいてもよい。ウレタン系オリゴマーとは、分子中にウレタン結合とラジカル重合可能な不飽和二重結合とを一以上有するものをいう。ここで、本実施形態において用いられるオリゴマーとは、相対分子質量(分子量と同義である。)の小さい分子から実質的あるいは概念的に得られる単位の少数回、一般的には約2回ないし20回程度の繰り返し構造をもつ中程度の大きさの相対分子質量を有する分子をいう。
【0093】
ウレタン系オリゴマーとしては、ポリオールと、ポリイソシアネートおよびポリハイドロオキシ化合物と、の付加反応により生じるオリゴマーを挙げることができる。また、ウレタン系オリゴマーとしては、例えば、ポリエステル系ウレタンアクリレート、ポリエーテル系ウレタンアクリレート、ポリブタジエン系ウレタンアクリレート、ポリオール系ウレタンアクリレート等を挙げることができる。具体的には、ウレタン系オリゴマーとしては、CN963J75、CN964、CN965、CN966J75(いずれもSARTOMER社から入手可能)等を挙げることができる。
【0094】
また、重合性化合物として、アミノアクリレートを含んでいてもよい。アミノアクリレートとしては、二官能(メタ)アクリレートと、アミン化合物と、を反応させて得られるものを挙げられる。
【0095】
二官能アクリレートとしては、例えば、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、チオビスフェノールのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、臭素化ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート等のビスフェノールアルキレンオキシド付加物ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0096】
アミン化合物としては、例えば、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、n−ペンチルアミン、イソペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ドデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−オクタデシルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン等の単官能アミン化合物、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,12−ドデカメチレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、メンタンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシルノメタン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、スピロアセタール系ジアミン等の多官能アミン化合物を挙げることができる。また、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等の高分子量タイプの多官能アミン化合物も挙げることができる。
【0097】
重合性化合物の含有量は、放射線硬化型インク組成物の全質量に対して、20質量%以上であることが好ましく、20質量%以上95質量%以下であることがより好ましい。
【0098】
1.2.2.光重合開始剤
本実施の形態に係る放射線硬化型インク組成物は、光重合開始剤を含有してもよい。光重合開始剤とは、記録媒体の上に吐出された放射線硬化型インク組成物に活性放射線を照射することによって、前述した重合性化合物の共重合反応を開始させる機能を有する化合物の総称である。
【0099】
光重合開始剤としては、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等の公知の光重合開始剤が挙げられる。これらの中でも、前述した反応成分との相溶性に優れた2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、広域な吸光特性を有するビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等の分子開裂型や、ジエチルチオキサントン等の水素引き抜き型が好ましい。アシルフォスフィンオキサイド系の光重合開始剤が好ましい理由は、光開裂の前後で発色団の構造が大きく変化するため吸収の変化が大きく、フォトブリーチング(光退色)と呼ばれる吸収の短波長が見られるからである。また、吸収がUVからVL領域まで及ぶにもかかわらず黄変が起こりにくく、内部硬化にも優れているからである。このため、透明な厚膜や隠蔽力の大きい顔料入り塗膜に対して特に好ましい。チオキサントン系の光重合開始剤が好ましい理由は、光開裂後の反応系内に残存する酸素と反応して系内の酸素の濃度を下げる作用があるからである。酸素濃度が下がる分だけ、ラジカル重合阻害の程度が低減できるので、表面硬化性を改善することができる。さらにアシルフォスフォン系の光重合開始剤とチオキサントン系の光重合開始剤とを併用するのが特に好ましい。これらの光重合開始剤は、1種単独で用いることもできるが、2種以上組み合わせて用いることによりそれぞれの特性を最大限に引き出すことが可能となる。
【0100】
光重合開始剤の含有量は、放射線硬化型インク組成物の全質量に対して、好ましくは1質量%以上20質量%以下、より好ましくは5質量%以上15質量%以下である。
【0101】
1.2.3.その他の添加剤
本実施の形態に係る放射線硬化型インク組成物は、必要に応じて、顔料、分散剤、スリップ剤、光増感剤、重合禁止剤等の添加剤を含有することができる。
【0102】
本実施の形態に係る放射線硬化型インク組成物は、そのままでもいわゆるクリアインクとして機能することができるが、さらに顔料を添加してもよい。本実施の形態において使用可能な顔料としては、特に制限されないが、無機顔料や有機顔料が挙げられる。無機顔料としては、酸化チタンおよび酸化鉄に加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。一方、有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キノフラロン顔料等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等を使用することができる。
【0103】
本実施の形態で使用可能な顔料の具体例のうち、カーボンブラックとしては、C.I.ピグメントブラック7が挙げられ、例えば、三菱化学株式会社から入手可能なNo.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等が、コロンビアケミカルカンパニー社から入手可能なRaven5750、同5250、同5000、同3500、同1255、同700等が、また、キャボット社から入手可能なRegal400R、同330R、同660R、MogulL、同700、Monarch800、同880、同900、同1000、同1100、同1300、同1400等が、また、デグッサ社から入手可能なColorBlackFW1、同FW2、同FW2V、同FW18、同FW200、ColorBlackS150、同S160、同S170、Printex35、同U、同V、同140U、SpecialBlack6、同5、同4A、同4等が挙げられる。
【0104】
また、本実施の形態に係る放射線硬化型インク組成物をイエローインクとする場合に使用可能な顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、120、128、129、138、150、151、154、155、180、185、213等が挙げられる。
【0105】
また、本実施の形態に係る放射線硬化型インク組成物をマゼンタインクとする場合に使用可能な顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、168、184、202、209、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
【0106】
また、本実施の形態に係る放射線硬化型インク組成物をシアンインクとする場合に使用可能な顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:4、16、22、60等が挙げられる。
【0107】
また、本実施の形態に係る放射線硬化型インク組成物をグリーンインクとする場合に使用可能な顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン7、8、36等が挙げられる。
【0108】
また、本実施の形態に係る放射線硬化型インク組成物をオレンジインクとする場合に使用可能な顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ51、66等が挙げられる。
【0109】
また、本実施の形態に係る放射線硬化型インク組成物をホワイトインクとする場合に使用可能な顔料としては、例えば、塩基性炭酸鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム等が挙げられる。
【0110】
本実施の形態で使用可能な顔料の平均粒子径は、好ましくは10nm以上200nm以下の範囲であり、より好ましくは50nm以上150nm以下の範囲である。
【0111】
本実施の形態に係る放射線硬化型インク組成物に添加し得る顔料の添加量は、放射線硬化型インク組成物の全質量に対して、0.1質量%以上25質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下である。
【0112】
本実施の形態に係る放射線硬化型インク組成物は、前述した顔料の分散性を高める目的で分散剤を添加してもよい。本実施の形態で使用可能な分散剤としては、Solsperse3000、5000、9000、12000、13240、17000、24000、26000、28000、36000(以上、ルーブリゾール社製)、ディスコールN−503、N−506、N−509、N−512、N−515、N−518、N―520(以上、第一工業製薬株式会社製)等の高分子分散剤が挙げられる。
【0113】
本実施の形態に係る放射線硬化型インク組成物は、スリップ剤を添加してもよい。本実施の形態で使用可能なスリップ剤としては、好ましくはシリコーン系界面活性剤であり、より好ましくはポリエステル変性シリコーンまたはポリエーテル変性シリコーンである。具体的には、ポリエステル変性シリコーンとしては、BYK−347、同348、BYK−UV3500、同3510、同3530(以上、ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられ、ポリエーテル変性シリコーンとしては、BYK−3570(ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0114】
本実施の形態に係る放射線硬化型インク組成物は、光増感剤を添加してもよい。本実施の形態で使用可能な光増感剤としては、アミン化合物(脂肪族アミン、芳香族基を含むアミン、ピペリジン、エポキシ樹脂とアミンの反応生成物、トリエタノールアミントリアクリレートなど)、尿素化合物(アリルチオ尿素、o−トリルチオ尿素など)、イオウ化合物(ナトリウムジエチルジチオホスフェート、芳香族スルフィン酸の可溶性塩など)、ニトリル系化合物(N,N−ジエチル−p−アミノベンゾニトリルなど)、リン化合物(トリ−n−ブチルフォスフィン、ナトリウムジエチルジチオフォスファイドなど)、窒素化合物(ミヒラーケトン、N−ニトリソヒドロキシルアミン誘導体、オキサゾリジン化合物、テトラヒドロ−1,3−オキサジン化合物、ホルムアルデヒドまたはアセトアルデヒドとジアミンの縮合物など)、塩素化合物(四塩化炭素、ヘキサクロロエタンなど)等が挙げられる。
【0115】
本実施の形態に係る放射線硬化型インク組成物は、重合禁止剤を添加してもよい。本実施の形態で使用可能な重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール等が挙げられる。
【0116】
1.2.4.物性
(1)粘度
本実施形態に係る放射線硬化型インク組成物の20℃における粘度は、好ましくは5mPa・s以上50mPa・s以下であり、より好ましくは20mPa・s以上40mPa・s以下である。放射線硬化型インク組成物の20℃における粘度が前記範囲内にあると、ノズルから放射線硬化型インク組成物が適量吐出され、放射線硬化型インク組成物の飛行曲がりや飛散を一層低減することができるため、インクジェット記録装置に好適に使用することができる。なお、粘度の測定は、粘弾性試験機MCR−300(Pysica社製)を用いて、20℃の環境下で、Shear Rateを10〜1000に上げていき、Shear Rate200時の粘度を読み取った。
【0117】
(2)表面張力
本実施形態に係る放射線硬化型インク組成物の20℃における表面張力は、好ましくは20mN/m以上30mN/m以下である。放射線硬化型インク組成物の20℃における表面張力が前記範囲内にあると、放射線硬化型インク組成物が撥液処理されたノズルに濡れにくくなる。これにより、ノズルから放射線硬化型インク組成物が適量吐出され、放射線硬化型インク組成物の飛行曲がりや飛散を一層低減することができるため、インクジェット記録装置に好適に使用することができる。なお、表面張力の測定は、自動表面張力計CBVP−Z(協和界面科学社製)を用いて、20℃の環境下で、白金プレートをインクで濡らした時の表面張力を確認した。
【0118】
1.3.記録媒体
本実施形態に係る画像形成方法に用いる記録媒体としては、インク非吸収性または低吸収性であることが好ましい。本実施形態の画像形成方法を用いると、記録媒体がインク非吸収性または低吸収性であっても、良好な画像を形成することができる。
【0119】
インク非吸収性の記録媒体として、例えば、インクジェット印刷用に表面処理をしていない(すなわち、インク吸収層を形成していない)プラスチックフィルム、紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているものやプラスチックフィルムが接着されているもの等が挙げられる。ここでいうプラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。インク低吸収性の記録媒体として、アート紙、コート紙、マット紙等の印刷本紙が挙げられる。
【0120】
ここで、本明細書において「インク非吸収性または低吸収性の記録媒体」とは、「ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である記録媒体」を示す。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙−液体吸収性試験方法−ブリストー法」に述べられている。なお、本明細書では、インク非吸収性または低吸収性の記録媒体を「プラスチックメディア」ともいう。
【0121】
2.第2実施形態
本実施形態に係る画像形成方法は、インクジェット記録装置を用いて、放射線硬化型インク組成物を吐出可能な吐出ヘッドから、複数種の放射線硬化型インク組成物の液滴を記録媒体上に吐出する第1工程と、活性放射線を照射可能な照射手段によって、前記液滴に該活性放射線を照射する第2工程と、を含み、前記複数種の放射線硬化型インクは、前記活性放射線が照射された同一種の放射線硬化型インク組成物の液滴のうち、前記第2工程における、前記活性放射線の積算照射エネルギーが最も高い液滴と、前記活性放射線の積算照射エネルギーが最も低い液滴と、の積算照射エネルギーの差は、前記放射線硬化型インク組成物を90%硬化させるために必要な照射エネルギー(E90)[mJ/cm]の30%以上50%以下である。
【0122】
第2実施形態に係る画像形成方法は、複数種の放射線硬化型インク組成物の液滴を記録媒体上に吐出する点が、第1実施形態に係る画像形成方法と異なっている。つまり、第2実施形態に係る画像形成方法は、複数色の放射線硬化型インク組成物を用いる、いわゆるカラー印刷に用いることができる。
【0123】
以下、本実施形態における画像形成方法を説明するが、上述の第1実施形態と同様の部材、機能を有するものについては、その説明を省略する。また、本実施形態の画像形成については、上述の第1実施形態と同様の作用効果を有することができ、同様の作用効果についてはその記載を省略する。
【0124】
本実施形態における吐出ヘッドは、記録媒体上に複数種の放射線硬化型インク組成物の液滴を記録媒体上に吐出する。複数種の放射硬化型インク組成物としては、含有されている材料が放射線硬化型インク組成物毎に異なっているものを用いてもよいし、含有されている材料が放射線硬化型インク組成物毎に同一であっても、その組成比が異なるものを用いてもよい。具体的には、カラー印刷を行う場合には、互いに色相の異なる2色以上の液滴を記録媒体上に吐出する。
【0125】
第2実施形態に係る画像形成方法は、所定の画像を形成するための必要なパス数が設定されているインクジェット記録装置において、複数種の放射線硬化型インク組成物の液滴を記録媒体上に吐出しても、同一種の液滴間の照射エネルギーが上記範囲内になるように活性放射線の照射強度を設定すると、良好な画像が容易に得られる点で優れている。
【0126】
また、第2実施形態に係る画像形成方法は、活性放射線照射装置における活性放射線の照射強度が決められているインクジェット記録装置において、複数種の放射線硬化型インク組成物の液滴を記録媒体上に吐出しても、同一種の液滴間の積算照射エネルギーの差が上記範囲内になるようにパス数を設定すると、良好な画像が容易に得られる点で優れている。
【0127】
また、第1実施形態と同様に、本実施形態の画像形成方法に用いる複数種の放射線硬化型インク組成物の(E90)[mJ/cm]は、下記式(1)を満たすことができる。
【0128】
4(n−1)E≦E90≦20(n−1)E/3 (ただし、nは2以上の整数を示す。)・・・(1)
【0129】
本実施形態の画像形成方法に用いるインクジェット記録装置において、照射手段から照射される1回あたりの照射エネルギーをE[mJ/cm]と、所定の画像を形成するためのパス数nが決定していると、上記式(1)を用いることにより、放射線硬化型インク組成物の組成を調製したり、放射線硬化型インク組成物を選択したりすることが容易になる。
【0130】
本実施形態の画像形成方法に用いる複数種の放射線硬化型インク組成物の(E90)[mJ/cm]は、放射線硬化型インク組成物の組成によって異なり特に限定されるものではないが、例えば、180[mJ/cm]以上250[mJ/cm]以下であることがより好ましい。また、E90が上記範囲内の放射線硬化型インク組成物を用いると、複数種の液滴を記録媒体上に吐出しても、すべての液滴に適した活性放射線の照射条件を容易に設定できる。
【0131】
また、複数種の放射線硬化型インク組成物間の(E90)[mJ/cm]の差(ΔE90)は、上記式(1)を用いて、下記式(2)で表すことができる。
【0132】
0≦ΔE90≦8(n−1)E/3 (ただし、nは2以上の整数を示す。)・・・(2)
【0133】
放射線硬化型インク組成物は、含まれる材料によって、硬化に必要な積算照射エネルギーが異なる場合がある。そのため、照射手段から照射される1回あたりの照射エネルギーをE[mJ/cm]と、所定の画像を形成するためのパス数nが決定していると、上記式(2)を用いることにより、記録媒体上に複数種の放射線硬化型インク組成物の液滴を吐出しても、すべての液滴に適した活性放射線の照射条件を容易に設定することができ、良好な画像を得ることができる。
【0134】
本実施形態の画像形成方法に用いる複数種の放射線硬化型インク組成物間の(E90)[mJ/cm]の差(ΔE90)は、70[mJ/cm]以内であることがより好ましい。
【0135】
複数種の放射線硬化型インク組成物間のE90の差(ΔE90)が70[mJ/cm]以内にあることにより、記録媒体上に複数種の放射線硬化型インク組成物の液滴を吐出しても、すべての液滴に適した活性放射線の照射条件をより容易に設定することができ、良好な画像を得ることができる。
【0136】
3.第3実施形態
本実施形態に係るインクジェット記録装置は、記録媒体上に放射線硬化型インク組成物の液滴を吐出する吐出ヘッドと、前記液滴に活性放射線を照射する活性放射線照射装置と、を有し、前記活性放射線が照射された放射線硬化型インク組成物の液滴のうち、前記活性放射線の積算照射エネルギーが最も高い液滴と、前記活性放射線の積算照射エネルギーが最も低い液滴と、の積算照射エネルギーの差が、前記放射線硬化型インク組成物を90%硬化させるために必要な照射エネルギー(E90)[mJ/cm]の30%以上50%以下にする制御手段を備える。
【0137】
本実施形態に係るインクジェット記録装置は、例えば、第1実施形態で説明したインクジェット記録装置20を用いることができる。以下、本実施形態におけるインクジェット記録装置について、上述したインクジェット記録装置20を用いて説明するが、上述の第1実施形態と同様の部材、機能を有するものについては、その説明を省略する。
【0138】
本実施形態に係るインクジェット記録装置は、制御手段を有する。制御手段としては、インクジェット記録装置20に搭載された制御回路(図示せず)を用いることができる。制御回路は、活性放射線の積算照射エネルギーが最も高い液滴と、活性放射線の積算照射エネルギーが最も低い液滴と、の積算照射エネルギーの差が、放射線硬化型インク組成物を90%硬化させるために必要な照射エネルギー(E90)[mJ/cm]の30%以上50%以下になるように制御する。
【0139】
具体的には、制御回路は、活性放射線照射装置90A(90B)から照射される照射エネルギーがあらかじめ設定されている場合において、所定の画像を形成するためのパス数を制御することができる。
【0140】
一方、所定の画像を形成するためのパス数があらかじめ決定している場合には、上述した光源制御回路(図示せず)を用いて、活性放射線照射装置90A(90B)の照射エネルギーを制御したり、活性放射線照射装置90A(90B)の発光や消灯のタイミングを制御したりすることができる。
【0141】
本実施形態に係るインクジェット記録装置20は、活性放射線の積算照射エネルギーが最も高い液滴と、活性放射線の積算照射エネルギーが最も低い液滴と、の積算照射エネルギーの差が、放射線硬化型インク組成物を90%硬化させるために必要な照射エネルギー(E90)[mJ/cm]の30%以上50%以下になるように制御されたものである。そのため、本実施形態に係るインクジェット記録装置20は、光沢性に優れ、画像の滲みを低減でき、色濃度の高い画像を記録することができる。
【0142】
さらに、前述の第2実施形態で説明したインクジェット記録装置を、第3実施形態に用いてもよい。この場合、上述に加えて、複数種の放射線硬化型インク組成物間のE90の差(ΔE90)が、前述の式(2)の関係になるように、パス数の設定や活性放射線照射装置90A(90B)の照射エネルギーの制御を行うことで、光沢性に優れ、画像の滲みを低減でき、色濃度の高いカラー画像を記録することができる。
【0143】
4.第4実施形態
本発明の一実施形態に係る記録物は、前述した画像形成方法によって記録されたものである。記録媒体の上に記録した画像は、前述した画像形成方法によって記録されたものであるので、滲みが少なく、画像の光沢性に優れ、色濃度が高い。
【0144】
5.その他の実施形態
前述の各実施形態においては、吐出ヘッド52の所定方向の両側に光源(190A、190b)を備え、所定方向に沿った両方向へ往復移動する主走査によって画像を形成する、いわゆる双方向画像形成によって画像を形成している。しかし、これに限られず、吐出ヘッド52の所定方向の一方の側にのみ光源を備え、所定方向の1つの方向(前記一方の側とは反対の側の方向)への主走査によって液滴の吐出を行って画像を形成する、いわゆる単方向画像形成を行ってもよい。この場合、吐出ヘッド52を所定方向に主走査する方向とは反対の方向へ移動させる際には、液滴の吐出を行わずに吐出ヘッド52を元の位置に戻す動作を行う。この場合においても吐出ヘッド52の戻し動作に伴い、吐出ヘッド52の所定方向の一方の側に設けられた1つの光源によって、液滴への照射が行われるため、前述の積算照射エネルギーが最も高い液Liの積算照射エネルギーEiは前述の式(A)となる。この場合、戻し動作に伴う液滴への照射も上述した第2工程に含まれる。
【0145】
6.実施例
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0146】
6.1.顔料分散液の調整
着色剤としてブラック顔料(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、商品名「MICROLITH−WA Black C−WA」)18質量部、分散剤としてSolsperse36000(LUBRIZOL社製)1.2質量部に、単官能モノマーとしてのフェノキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社、商品名「V#192」)を加えて全体を100質量部とし、混合撹拌して混合物とした。この混合物を、サンドミル(安川製作所株式会社製)を用いて、ジルコニアビーズ(直径1.5mm)と共に6時間分散処理を行った。その後、ジルコニアビーズをセパレータで分離することにより、ブラック顔料分散液を得た。また、同様にして、シアン顔料分散液、マゼンタ顔料分散液、およびイエロー顔料分散液を得た。
【0147】
6.2.放射線硬化型インク組成物の調製
表1に記載の組成(質量%)となるように、重合性化合物、光重合開始剤、スリップ剤、重合禁止剤を混合し完全に溶解させた後、これに前記ブラック顔料分散液をブラック顔料の濃度が表1に記載の濃度となるように撹拌しながら滴下した。滴下終了後、常温で1時間混合撹拌し、さらに5μmのメンブランフィルターでろ過して、ブラック放射線硬化型インク組成物を得た。また、同様にして、シアン放射線硬化型インク組成物、マゼンタ放射線硬化型インク組成物、およびイエロー放射線硬化型インク組成物を得た。
【0148】
なお、表1で使用した成分は、下記のとおりである。
(1)重合性化合物
・フェノキシアクリレート(大阪有機化学工業株式会社、商品名「V#192」)
・ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(日立化成工業株式会社製、商品名「FA512AS」)
・ジシクロペンテニルアクリレート(日立化成工業株式会社製、商品名「FA511AS」)
・N−ビニルカプロラクタム(BASF社製、商品名「N−ビニルカプロラクタム」)
・アミノアクリレート(ダイセル・サイテック株式会社製、商品名「EBECRYL 7100」)
・トリプロピレングリコールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名「APG−200」)
・ジプロピレングリコールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名「APG−100」)
(2)重合禁止剤
・p−メトキシフェノール(関東化学株式会社製)
(3)スリップ剤
・BYK−UV3500(ビックケミー・ジャパン株式会社製、ポリエーテル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサン)
(4)光重合開始剤
・IRGACURE 819(チバ・ジャパン株式会社製、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、光重合開始剤)
・DAROCUR TPO(チバ・ジャパン株式会社製、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、光重合開始剤)
・DETX(日本化薬株式会社製、光重合開始剤)
(5)分散剤
・Solsperse36000(LUBRIZOL社製)
(6)顔料
・MICROLITH−WA Black C−WA(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、ブラック顔料)
・IRGALITE BLUE GLVO(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、シアン顔料)
・CROMOPHTAL PinkPT(SA) GLVOチバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、マゼンタ顔料
・IRGALITE YELLOW LBGチバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、イエロー顔料
【0149】
6.3.放射線硬化型インク組成物のE90の測定
放射線硬化型インク組成物を90%硬化させるために必要な活性放射線の照射エネルギー(E90)[mJ/cm]は、FT−IR(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、製品名「MAGNA−IR 860 Nicolet」)を用いて、活性放射線の照射前後の各放射線硬化型インク組成物おけるビニル基の吸収スペクトルのピーク(810cm−1)から求めた。
【0150】
具体的には、まず、照射前の810cm−1のピーク高さAと、照射後の810cm−1のピーク高さAと、をIRスペクトルから求め、下記式(3)を用いて硬化率を計算した。
【0151】
硬化率(%)=100×(1−A/A) ・・・(3)
これにより、放射線硬化型インク組成物が硬化率90%になるときにおける活性放射線の照射エネルギー(E90)[mJ/cm]を求めた。得られた各放射線硬化型インク組成物のE90値を表1に示す。
【0152】
なお、放射線硬化型インク組成物の照射エネルギーの測定は、UV−LED(後述の実施例で使用したものと同じもの)から放射線硬化型インク組成物までの距離を、後述する実施例における紫外線照射装置内のUV−LEDから記録媒体までの距離と同じ距離にして行った。そして、活性ピーク波長395nmの上記UV−LEDを放射線硬化型インク組成物に照射して、放射線硬化型インク組成物の照射エネルギーの測定を行った。照射エネルギー[mJ/cm]は、上記UV−LEDによって照射される被照射表面における照射強度[mW/cm]を測定し、これと照射継続時間[s]との積から求めた。また、照射強度の測定は、紫外線強度計UM−10、受光部UM−400(コニカミノルタセンシング(株)製)でおこなった。
【0153】
【表1】

【0154】
6.4.評価試験
6.4.1.滲み性の試験試験
(1)固定パス条件下での記録物の作製
インクジェットプリンターPX−G5000(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、上記の放射線硬化型インク組成物を各色毎にそれぞれのノズル列に充填した。次に、常温、常圧下で、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各色が接触するようにPETフィルム上に液滴を吐出すると共に、キャリッジの両サイドに搭載した紫外線照射装置内のUV−LEDから照射強度が2mW/cm〜39mW/cmの範囲内の395nmの紫外線を照射した後、副走査方向にPETフィルムを送る操作を行った。
【0155】
このような動作を5回(5パス)行って、PETフィルム上にベタパターン画像を形成した後、ベタパターン画像全体に積算光量が400mJ/cm以上になるように紫外線を照射して、ベタパターン画像を完全に硬化させる硬化処理を行った。なお、印刷条件は、解像度720×720dpi・液滴量14plとした。
【0156】
以上のようにして、PETフィルム上にCMYKの各色が接触するようにベタパターン画像が印刷された記録物を作製した。
【0157】
(2)照射強度一定下での記録物の作製
インクジェットプリンターPX−G5000(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、上記の放射線硬化型インク組成物を各色毎にそれぞれのノズル列に充填した。次に、常温、常圧下で、CMYKの各色が接触するようにPETフィルム上に液滴を吐出すると共に、キャリッジの両サイドに搭載した紫外線照射装置内のUV−LEDから照射強度が6mW/cmの395nmの紫外線を照射した後、副走査方向にPETフィルムを送る操作を行った。
【0158】
このような動作を複数回(複数パス)行って、PETフィルム上にベタパターン画像を形成した後、ベタパターン画像全体に積算光量が400mJ/cm以上になるように紫外線を照射して、ベタパターン画像を完全に硬化させる硬化処理を行った。なお、印刷条件は、解像度720×720dpi・液滴量14plとした。
【0159】
以上のようにして、PETフィルム上にCMYKの各色が接触するようにベタパターン画像が印刷された記録物を作製した。
【0160】
(3)記録物の評価方法
得られた記録物について、色毎に他色との接触部分における滲みを観察して評価した。なお、評価基準の分類については、以下のとおりである。
○:他色への滲みなし
△:他色への滲みがわずかに認められる
×:他色への滲みが認められる
【0161】
6.4.2.光沢性の評価試験
(1)固定パス条件下での記録物の作製
インクジェットプリンターPX−G5000(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、上記の放射線硬化型インク組成物を各色毎にそれぞれのノズル列に充填した。次に、常温、常圧下で、PETフィルム上に液滴を吐出すると共に、キャリッジの両サイドに搭載した紫外線照射装置内のUV−LEDから照射強度が1.5mW/cm〜39mW/cmの範囲内の395nmの紫外線を照射した後、副走査方向にPETフィルムを送る操作を行った。
【0162】
このような動作を5回(5パス)行って、PETフィルム上に単一色からなるベタパターン画像を形成した後、ベタパターン画像全体に積算光量が400mJ/cm以上になるように紫外線を照射して、ベタパターン画像を完全に硬化させる硬化処理を行った。なお、印刷条件は、解像度720×720dpi・液滴量14plとした。
【0163】
以上のようにして、PETフィルム上に単一色からなるベタパターン画像が印刷された記録物を作製した。
【0164】
(2)照射強度一定下での記録物の作製
インクジェットプリンターPX−G5000(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、上記の放射線硬化型インク組成物を各色毎にそれぞれのノズル列に充填した。次に、常温、常圧下で、PETフィルム上に液滴を吐出すると共に、キャリッジの両サイドに搭載した紫外線照射装置内のUV−LEDから照射強度が6mW/cmの395nmの紫外線を照射した後、副走査方向にPETフィルムを送る操作を行った。
【0165】
このような動作を複数回(複数パス)行って、PETフィルム上にベタパターン画像を形成した後、ベタパターン画像全体に積算光量が400mJ/cm以上になるように紫外線を照射して、ベタパターン画像を完全に硬化させる硬化処理を行った。なお、印刷条件は、解像度720×720dpi・液滴量14plとした。
【0166】
以上のようにして、PETフィルム上に単一色からなるベタパターン画像が印刷された記録物を作製した。
【0167】
(3)記録物の評価方法
JIS Z8741に基づいて、光沢度計MULTI Gloss 268(コニカミノルタ株式会社製)を用いて、得られた画像の60度における鏡面光沢度を測定した。得られた画像の光沢度の評価基準は以下のとおりであり、B以上の評価で光沢が認められるものである。
【0168】
A:光沢度70以上
B:光沢度50以上70未満
C:光沢度30以上50未満
D:光沢度30未満
【0169】
6.4.3.色濃度の評価試験
上記「5.4.2.光沢性の評価試験」で得られた画像について、測色器(製品名:Spectrolino,GretagMacbeth社製)を用いて、光学濃度(OD値)を測定した。得られた画像の評価基準は、以下の通りである。
【0170】
OD値1.8以上:色濃度が高く、発色性が良好
OD値1.8未満:色濃度が低く、発色性が悪い
【0171】
6.5.評価結果
以上の評価結果を表2〜表7に記載した。表2〜表4の記録物は、パス数を5パスに固定して、紫外線照射装置から照射される照射強度を変えて作製されたものである。また、表5〜表7の記録物は、紫外線照射装置の照射強度を6mJ/cmに固定して、パス数を変化させて作製されたものである。
【0172】
表2〜表7において、Eiは、キャリッジの両サイドに搭載した紫外線照射装置内のUV−LEDから照射された積算照射エネルギーの最も高い液滴の積算照射エネルギー(mJ/cm)を示す。また、Efは、キャリッジの両サイドに搭載した紫外線照射装置内のUV−LEDから照射された積算照射エネルギーの最も低い液滴の積算照射エネルギー(mJ/cm)を示す。
【0173】
表2〜表7の評価結果から、実施例1〜25の何れかの条件を用いて、前述の第1実施形態によって画像記録を行うことにより、各実施例の放射線硬化型インク組成物を用いた良好な画像の記録を行うことができる。このように、パス数nと、1回当たりの照射エネルギーEと、放射線硬化型インク組成物を90%硬化させるために必要な照射エネルギーE90と、を好ましい関係となるように設定することで良好な画像を記録することができる。
【0174】
また、表2〜表7の評価結果から、実施例3、実施例5、実施例6、および実施例10の条件、または、実施例14、実施例16、実施例19、および実施例24の条件を用いて、前述の第2実施形態による画像の記録を行うことで、複数種の放射線硬化型インク組成物を用いた良好なカラー画像の記録をおこなうことができる。このように、パス数nと、1回当たりの照射エネルギーEと、複数の各放射線硬化型インク組成物のE90の差(ΔE90)と、を好ましい関係となるように設定することで良好な画像の記録を行うことができる。
【0175】
なお、前述の第3実施形態では、前述の式(1)や式(2)を満たすように、パス数nの設定や1回当たりの照射エネルギーの制御を行っているが、式(1)や式(2)を満たすようなE90を有する放射線硬化型インク組成物の選択を行ってもよい。
【0176】
【表2】

【0177】
【表3】

【0178】
【表4】

【0179】
【表5】

【0180】
【表6】

【0181】
【表7】

【0182】
表2、表5に記載の画像形成方法により作製された実施例1〜実施例25の記録物は、他色との滲みがなく、光沢性に優れ、色濃度が高いものであることが確認できた。
【0183】
表2の評価結果から、所定の画像を形成する際にパス数が固定されている装置において、EiとEfとの差がE90の30%以上50%以下の値になるように放射線照射装置の照射強度を設定することにより、良好な画像を有する記録物が得られることが示された。
【0184】
また、表5の評価結果から、放射線照射装置の照射強度があらかじめ設定されている際に、EiとEfとの差がE90の30%以上50%以下の値になるようにパス数を設定することにより、良好な画像を有する記録物が得られることが示された。
【0185】
表2の実施例3、実施例5、実施例6、実施例10の記録物は、紫外線照射装置の照射強度を同一にして作製されたものであり、良好な画像を備えている。これにより、複数の放射線硬化型インク組成物毎に異なる照射強度を設定しなくても、すべての放射線硬化型インク組成物が共通して良好な画像を形成できる照射強度を設定することが可能であることが示された。
【0186】
また、表5の実施例14、実施例16、実施例19、実施例24の記録物でも同様に、放射線硬化型インク組成物毎に異なる照射強度を設定しなくても、すべての放射線硬化型インク組成物が共通して良好な画像を形成できる同一の照射強度を設定できることが示された。
【0187】
表3〜表4、表6〜表7の画像形成方法により作成された比較例1〜比較例47の記録物は、EiとEfとの差がE90の30%以上50%以下の範囲外であるため、他色との滲み、光沢性、色濃度の少なくとも1つが優れないものであった。
【符号の説明】
【0188】
20…インクジェット記録装置、30…モーター、40…プラテン、50…キャリッジ、52…吐出ヘッド、54…ブラックインクカートリッジ、56…カラーインクカートリッジ、60…キャリッジモーター、62…牽引ベルト、64…ガイドレール、80…キャッピング装置、90A(190A)、90B(190B)…活性放射線照射装置、192、193…活性放射線光源、194…筐体、P…記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット記録装置を用いて、放射線硬化型インク組成物を吐出可能な吐出ヘッドから、放射線硬化型インク組成物の液滴を記録媒体上に吐出する第1工程と、
活性放射線を照射可能な照射手段によって、前記液滴に該活性放射線を照射する第2工程と、
を含み、
前記活性放射線が照射された放射線硬化型インク組成物の液滴のうち、前記第2工程における、前記活性放射線の積算照射エネルギーが最も高い液滴と、前記活性放射線の積算照射エネルギーが最も低い液滴と、の積算照射エネルギーの差は、前記放射線硬化型インク組成物を90%硬化させるために必要な照射エネルギー(E90)[mJ/cm]の30%以上50%以下である、画像形成方法。
【請求項2】
インクジェット記録装置を用いて、放射線硬化型インク組成物を吐出可能な吐出ヘッドから、複数種の放射線硬化型インク組成物の液滴を記録媒体上に吐出する第1工程と、
活性放射線を照射可能な照射手段によって、前記液滴に該活性放射線を照射する第2工程と、
を含み、
前記複数種の放射線硬化型インクは、前記活性放射線が照射された同一種の放射線硬化型インク組成物の液滴のうち、前記第2工程における、前記活性放射線の積算照射エネルギーが最も高い液滴と、前記活性放射線の積算照射エネルギーが最も低い液滴と、の積算照射エネルギーの差は、前記放射線硬化型インク組成物を90%硬化させるために必要な照射エネルギー(E90)[mJ/cm]の30%以上50%以下である、画像形成方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記吐出ヘッドが所定方向に沿って移動を行いながら、前記第1工程および前記第2工程を行い、
前記照射手段は、前記吐出ヘッドの前記所定方向の少なくとも一方の側に設けられている、画像形成方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
前記活性放射線が照射された放射線硬化型インク組成物の液滴のうち、
前記活性放射線の積算照射エネルギーが最も高い液滴は、前記照射手段による前記活性放射線の照射回数が最も多く、
前記活性放射線の積算照射エネルギーが最も低い液滴は、前記照射手段による前記活性放射線の照射回数が最も少ない、画像形成方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
n回の主走査によって画像を形成する場合において、前記E90は、前記照射手段によって照射される1回あたりの照射エネルギーをEとすると、下記式(1)を満たす、画像形成方法。
4(n−1)E≦E90≦20(n−1)E/3 (ただし、nは2以上の整数を示す。)・・・(1)
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
前記E90は、180[mJ/cm]以上250[mJ/cm]以下である、画像形成方法。
【請求項7】
請求項2において、
n回の主走査によって画像を形成する場合において、前記E90は、前記照射手段によって照射される1回あたりの照射エネルギーをEとすると、前記複数種の放射線硬化型インク組成物間のE90の差(ΔE90)は、下記式(2)を満たす、画像形成方法。
0≦ΔE90≦8(n−1)E/3 (ただし、nは2以上の整数を示す。)・・・(2)
【請求項8】
請求項2または請求項7において、
前記複数種の放射硬化型インク組成物間におけるE90[mJ/cm]の差(ΔE90)は、70[mJ/cm]以内である、画像形成方法。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項において、
前記第2工程において、前記活性放射線の積算照射エネルギーが最も高い液滴と、前記活性放射線の積算照射エネルギーが最も低い液滴と、に照射される積算照射エネルギーは、それぞれE90未満である、画像形成方法。
【請求項10】
記録媒体上に放射線硬化型インク組成物の液滴を吐出する吐出ヘッドと、
前記液滴に活性放射線を照射する活性放射線照射装置と、
を有し、
前記活性放射線が照射された放射線硬化型インク組成物の液滴のうち、前記活性放射線の積算照射エネルギーが最も高い液滴と、前記活性放射線の積算照射エネルギーが最も低い液滴と、の積算照射エネルギーの差が、前記放射線硬化型インク組成物を90%硬化させるために必要な照射エネルギー(E90)[mJ/cm]の30%以上50%以下にする制御手段を備えた、インクジェット記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−224960(P2011−224960A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198048(P2010−198048)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】