説明

画像形成方法および画像形成システム

【課題】対象物上に高精度なトナー画像を容易に形成する。
【解決手段】トナーが分散されたトナー液中において、現像部材6の矩形領域641と電極部材24の電極面240との間に現像部材6に向かってトナーが移動する電界が形成され、電極部63と電極面240との間に電極部材24に向かってトナーが移動する電界が形成されることにより、現像部材6の矩形領域641にトナーが付着してトナー画像が形成される。続いて、非極性溶媒中において、現像部材6の矩形領域641とガラス基板の被転写面との間に被転写面に向かってトナーが移動する電界が形成され、電極部63と被転写面との間の電位差が0とされることにより、現像部材6上のトナー画像がガラス基板の被転写面に転写され、ガラス基板の被転写面上に現像部材6の矩形領域641に対応するトナー画像を高精度かつ容易に形成することが実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物上にトナー画像を形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
TV装置やコンピュータの表示部に用いられる液晶表示装置には、従来よりカラーフィルタが利用されている。ガラス基板上にカラーフィルタのフィルタ層を形成する手法として、例えば、フォトリソグラフィ技術を用いて感光性樹脂から形成された基板上のパターンを染色する染色法や、顔料等の色素を分散した感光性樹脂を利用する顔料分散法、基板上に透明導電層(例えば、ITO(Indium-Tin-Oxide:酸化インジウムスズ))のパターンを形成して電着により着色パターンを形成する電着法が知られている。しかしながら、これらの手法では、煩雑なフォトリソグラフィプロセスを伴うことによりフィルタ層の形成に長時間を要してしまい、カラーフィルタの製造コストの削減を図ることが困難となっている。また、凹版法、凸版法、シルクスクリーン法等によりインクを基板上に直接印刷する印刷法や、吐出口からインクの微小液滴を基板上に吐出するインクジェット法によりフィルタ層を形成することも試みられているが、高精度なカラーフィルタを製造するには適正な特性を有するインクが必要となり、このようなインクは現在開発途上である。
【0003】
一方、ガラス基板に設けられた透明光導電層を帯電させた後に光を照射して静電潜像を形成し、静電潜像にトナーを付与してカラーフィルタのフィルタ層を形成する電子写真法も知られている(例えば、特許文献1ないし4参照)。電子写真法では、感光性材料の塗布等の煩雑な工程を経ることがないためフォトリソグラフィ技術を伴う手法よりも短時間かつ低コストで所望のセル形状や配列のフィルタ層を形成することが可能となる。
【特許文献1】特開昭48−16529号公報
【特許文献2】特開昭56−69604号公報
【特許文献3】特開昭56−117210号公報
【特許文献4】特開昭63−234203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記電子写真法においてフィルタ層を形成する際にも、全てのガラス基板における透明光導電層の形成や、透明光導電層の帯電および露光による静電潜像の形成等の工程が最低限必要となってしまう。また、感光ドラムの周囲に配置された帯電器、潜像形成部および現像部により感光ドラムの感光体上に静電潜像を形成した後、トナー画像を形成し、感光体上のトナーをガラス基板に転写して、ガラス基板上にフィルタ層を形成することも考えられるが、カラーフィルタに求められる精度にて感光体上に静電潜像を形成したり、感光体上のトナー画像をガラス基板に高精度に転写するには様々な工夫が必要となる。したがって、カラーフィルタのフィルタ層のトナー画像をガラス基板上により容易に形成するには、上記手法とは異なる新規な手法が必要となる。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、対象物上に高精度なトナー画像を容易に形成することが可能な新規な手法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、板状またはフィルム状の対象物上にトナー画像を形成する画像形成方法であって、a)トナー画像に対応する第1領域と前記第1領域以外の第2領域とが設定された現像面を有する現像部材を、微小間隙を空けて電極部材の電極面と前記現像面とを対向させつつトナーが分散されたトナー液中に配置する工程と、b)前記第1領域と前記電極面との間において前記トナーが前記現像面へと向かう電界が形成され、前記第2領域と前記電極面との間において前記トナーが前記電極面へと向かう電界が形成される、または、電界の大きさが0とされるように、前記第1領域、前記第2領域および前記電極面にそれぞれ第1現像電位、第2現像電位および第3現像電位を付与する工程と、c)前記トナーが前記第1領域に付着した前記現像部材を非極性溶媒中に配置し、被転写面を有する対象物を、微小間隙を空けて前記被転写面と前記現像面とを対向させつつ前記非極性溶媒中に配置する工程と、d)前記第1領域と前記被転写面との間において前記トナーが前記被転写面へと向かう電界が形成され、前記第2領域と前記被転写面との間において前記トナーが前記現像面へと向かう電界が形成される、または、電界の大きさが0とされるように、前記第1領域、前記第2領域および前記対象物にそれぞれ第1転写電位、第2転写電位および第3転写電位を付与する工程とを備える。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成方法であって、e)前記d)工程により前記被転写面に転写された前記トナーを前記非極性溶媒外にて前記被転写面に定着させる工程と、f)前記トナーの色を変更しつつ前記a)工程ないし前記e)工程を繰り返す工程とをさらに備え、前記対象物が絶縁性を有する透明部材であり、前記被転写面上に形成されるトナー画像が、カラーフィルタのフィルタ層である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の画像形成方法であって、前記f)工程により前記a)工程ないし前記e)工程を繰り返す際に同一の前記現像部材が用いられ、前記c)工程が繰り返される毎に、前記現像面に対する前記被転写面の相対位置が、カラーフィルタのフィルタ層の色の配列に合わせて前記現像面に沿って変更される。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の画像形成方法であって、前記対象物の前記被転写面に、ブラックマトリクスが予め形成されている。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の画像形成方法であって、前記ブラックマトリクスが導電性または半導電性を有し、前記d)工程において、前記ブラックマトリクスと前記現像面との間にて前記トナーが前記現像面へと向かう電界が形成される、または、電界の大きさが0とされるように、前記ブラックマトリクスに第4転写電位が付与される。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成方法であって、前記現像部材が、板状の導電性または半導電性の基材の一の主面上に、導電性材料または半導電性材料にて前記第1領域または前記第2領域に対応する電極部が絶縁層を介して形成されたものである。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の画像形成方法であって、前記トナーの極性に対して前記第1現像電位の極性が逆極性である、または、前記第1現像電位が接地電位である。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の画像形成方法であって、前記トナーの極性に対して前記第3転写電位の極性が逆極性である、または、前記第3転写電位が接地電位である。
【0014】
請求項9に記載の発明は、板状またはフィルム状の対象物上にトナー画像を形成する画像形成システムであって、トナー画像に対応する第1領域と前記第1領域以外の第2領域とが設定された現像面を有する現像部材の前記第1領域にトナーを付着させる現像装置と、前記第1領域に付着した前記トナーを対象物の被転写面に転写する転写装置とを備え、前記現像装置が、前記トナーが分散されたトナー液が貯溜される現像用容器と、前記トナー液中において、微小間隙を空けて電極部材の電極面と前記現像面とを対向させつつ前記現像部材を保持する現像用保持部と、前記現像面の前記第1領域と前記電極面との間において前記トナーが前記現像面へと向かう電界が形成され、前記第2領域と前記電極面との間において前記トナーが前記電極面へと向かう電界が形成される、または、電界の大きさが0とされるように、前記第1領域、前記第2領域および前記電極面にそれぞれ第1現像電位、第2現像電位および第3現像電位を付与する現像電位付与部とを備え、前記転写装置が、非極性溶媒が貯溜される転写用容器と、前記非極性溶媒中において、微小間隙を空けて前記現像面と前記対象物の前記被転写面とを対向させつつ前記現像部材および前記対象物を保持する転写用保持部と、前記現像面の前記第1領域と前記被転写面との間において前記トナーが前記被転写面へと向かう電界が形成され、前記第2領域と前記被転写面との間において前記トナーが前記現像面へと向かう電界が形成される、または、電界の大きさが0とされるように、前記第1領域、前記第2領域および前記対象物にそれぞれ第1転写電位、第2転写電位および第3転写電位を付与する転写電位付与部とを備える。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の画像形成システムであって、前記転写装置により前記被転写面上に転写された前記トナーを前記被転写面に定着させる定着装置をさらに備え、前記対象物が絶縁性を有する透明部材であり、前記被転写面上に形成されるトナー画像が、カラーフィルタのフィルタ層である。
【0016】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の画像形成システムであって、前記対象物の前記被転写面に、ブラックマトリクスが予め形成されている。
【0017】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の画像形成システムであって、前記ブラックマトリクスが導電性または半導電性を有し、前記転写電位付与部が、前記ブラックマトリクスと前記現像面との間において、前記トナーが前記現像面へと向かう電界が形成される、または、電界の大きさが0とされるように、前記ブラックマトリクスに第4転写電位を付与する。
【0018】
請求項13に記載の発明は、請求項9ないし12のいずれかに記載の画像形成システムであって、前記現像部材が、板状の導電性または半導電性の基材の一の主面上に、導電性材料または半導電性材料にて前記第1領域または前記第2領域に対応する電極部が絶縁層を介して形成されたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、対象物の被転写面上に現像部材の現像面の第1領域に対応するトナー画像を高精度かつ容易に形成することができる。
【0020】
また、請求項2および10の発明では、高精度なカラーフィルタを容易に製造することができ、請求項3の発明では、1つの現像部材を繰り返し用いてカラーフィルタを製造することができる。
【0021】
また、請求項5および12の発明では、ブラックマトリクスを利用してより高精度なカラーフィルタを製造することができ、請求項6および13の発明では、現像部材を容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る画像形成システム1の構成を示す図である。画像形成システム1は、絶縁性を有する透明なガラス基板9上にトナーの画像を形成し、トナー画像をガラス基板9上に定着することにより、液晶表示装置等の平面表示装置用のカラーフィルタを製造するためのものである。実際には、画像形成システム1では、以下に説明する装置(現像装置2、転写装置3、定着装置4並びに第1および第2基板移載機構51,52)の組合せが1つの画像形成ユニット10となっており、画像形成システム1は、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色のトナーのそれぞれに対して画像形成ユニットを備えている。図1では一の色に対応する画像形成ユニット10のみを図示しており、以下、図1の画像形成ユニット10について説明するが、他の色に対応する画像形成ユニットについても同様の構成となっている。
【0023】
図1の画像形成ユニット10は、板状の現像部材6の一の主面(以下、「現像面」という。)にトナー画像を形成する現像装置2、現像部材6の現像面に付着したトナーをブラックマトリクスが形成されるガラス基板9の被転写面に転写する転写装置3、複数のランプ41からガラス基板9に光を照射して加熱することによりガラス基板9上のトナーを被転写面に定着させる定着装置4、現像装置2と転写装置3との間にて現像部材6の受け渡しを行う第1基板移載機構51、並びに、転写装置3と定着装置4との間にてガラス基板9の受け渡しを行う第2基板移載機構52を備える。例えば、ガラス基板9の厚さは0.3〜0.7ミリメートル(mm)とされる。
【0024】
現像装置2は、溶媒(キャリア液)中に一の色のトナーが分散されたトナー液が貯溜されるとともに内部にて現像部材6上にトナー画像が形成される容器21(以下、「現像用容器21」という。)、トナー液の溶媒のみが貯留されるとともに内部にてトナー画像形成直後の現像部材6上における不要なトナーが除去される洗浄容器22、並びに、現像用容器21および洗浄容器22のそれぞれの内部に後述する現像処理ユニット111として現像部材6を配置する基板搬送部23を備える。
【0025】
基板搬送部23は、現像部材6および後述する電極部材が組み合わされた現像処理ユニット111を現像部材6の主面が鉛直方向に沿うように直立させた状態にて把持するユニット把持機構231、ユニット把持機構231を図1中に符号A1を付す矢印にて示す鉛直方向に移動(昇降)させて現像用容器21または洗浄容器22に対して現像処理ユニット111を搬出入するユニット昇降機構232、並びに、ユニット昇降機構232を図1中に符号A2を付す矢印にて示す水平方向に移動して現像用容器21、洗浄容器22または第1基板移載機構51の上方へと配置するユニット移動機構233を備える。
【0026】
転写装置3は、非極性溶媒が貯溜されるとともに内部にて現像部材6上のトナー画像がガラス基板9に転写される容器31(以下、「転写用容器31」という。)、同様に非極性溶媒が貯留されるとともに内部にてトナー画像が転写された直後のガラス基板9上における不要なトナーが除去される洗浄容器32、並びに、転写用容器31および洗浄容器32のそれぞれの内部に後述する転写処理ユニット112として現像部材6およびガラス基板9を配置する基板搬送部33を備える。
【0027】
転写装置3の基板搬送部33は、現像装置2の基板搬送部23と同様の構成とされ、現像部材6およびガラス基板9が組み合わされた転写処理ユニット112を現像部材6およびガラス基板9の主面が鉛直方向に沿うように直立させた状態にて把持するユニット把持機構331、ユニット把持機構331を鉛直方向に移動させて転写用容器31または洗浄容器32に対して転写処理ユニット112を搬出入するユニット昇降機構332、並びに、ユニット昇降機構332を水平方向に移動して第1基板移載機構51、転写用容器31、洗浄容器32または第2基板移載機構52の上方へと配置するユニット移動機構333を備える。なお、転写装置3の他の構成要素の詳細については後述する。
【0028】
定着装置4は、それぞれが搬送方向に垂直な方向に伸びる複数のランプ41を水平な方向に平行に配列して有し、複数のランプ41の上方には反射板42が設けられる。複数のランプ41の下方には、搬送方向に垂直な方向に伸びる複数の搬送ローラ43が水平な方向に配列されており、一部の搬送ローラ43が回転することにより、第2基板移載機構52により搬送ローラ43上に載置されるガラス基板9が第2基板移載機構52から離れる方向に水平に移動する。
【0029】
第1基板移載機構51は、現像部材6の現像面上にトナー画像を形成する際に、現像部材6を後述の電極部材と共に現像処理ユニット111として組み合わせた後、現像処理ユニット111を直立させ、トナー画像の転写の際には、現像部材6をガラス基板9と共に転写処理ユニット112として組み合わせた後、転写処理ユニット112を直立させる機構を有する。第2基板移載機構52は、基板搬送部33により搬送される転写処理ユニット112を受け取って転写処理ユニット112からガラス基板9のみを取り出し、主面が水平方向に沿うようにガラス基板9を回動させた後、搬送ローラ43上に載置する機構を有する。
【0030】
図2は、ガラス基板9のブラックマトリクス81を示す図である。図2に示すように、ブラックマトリクス81はガラス基板9の被転写面91上にて格子状に形成されており、ブラックマトリクス81によりガラス基板9の被転写面91が2次元に配列された複数の要素領域821(実際には、多数の微小な要素領域821)に仕切られる。ブラックマトリクス81は、矩形状の領域となっている当接部811を有し、例えばクロム等の金属、あるいは、カーボンを含む樹脂にて(この場合、樹脂マトリクスとも呼ばれる。)全体が連続したパターンとして形成される。金属にて形成されるブラックマトリクス81は導電性を有し、樹脂にて形成されるブラックマトリクス81は、一定の光遮蔽効果を実現するために多くのカーボンを含有しており、金属にて形成される場合に比べて抵抗値は高くなるが、半導電性を有するものとなる。後述するように、転写装置3では当接部811を介してブラックマトリクス81の全体に一様な電位が付与される。なお、ガラス基板9上には、被転写面91上の四隅のそれぞれに所定のアライメントマーク812が形成されており、アライメントマーク812もブラックマトリクス81に連続している。
【0031】
ガラス基板9では、図2中の縦方向に並ぶ複数の要素領域821を要素領域列822として、最も左側の要素領域列822aから右側に3個置きに並ぶ複数の要素領域列822が例えばRの色に対応し(例えば、要素領域列822aの右側に隣接するRの要素領域列は、図2中の符号822bを付すものとなる。)、Rの色の複数の要素領域列822の右側にそれぞれ隣接する複数の要素領域列822がGの色に対応し、Gの色の複数の要素領域列822の右側にそれぞれ隣接する複数の要素領域列822がBの色に対応する。
【0032】
図3は現像部材6を示す平面図であり、図4は図3中の矢印A−Aの位置における現像部材6の断面図である。図4に示すように、現像部材6は、板状の導電性の基材61の一の主面上に絶縁層62が設けられ、絶縁層62上に導電性材料にて所定のパターンを示す電極部63が形成されたものである。なお、基材61および電極部63は、半導電性材料にて形成されてもよい。
【0033】
図3中に平行斜線を付して示すように電極部63の形状は、絶縁層62上の外縁部を除く中央部の領域において、図3中の縦方向および横方向に所定のピッチにて配列された複数の矩形領域641の部位のみが除去されたパターンとなっており、全体が連続している。詳細には、導電性材料が除去された各矩形領域641は、図2のガラス基板9における要素領域821と同じ大きさとされ、図3中の複数の矩形領域641の縦方向のピッチは図2中の複数の要素領域821の同方向のピッチと同じとされ、複数の矩形領域641の横方向のピッチは、図2の複数の要素領域821の同方向のピッチの3倍とされる。また、電極部63は矩形状の領域である当接部631、および、現像部材6上における四隅のそれぞれに形成されるアライメントマーク632を有する。後述するように、現像装置2および転写装置3では、当接部631を介して電極部63の全体に一様な電位が付与される。
【0034】
図5は、現像装置2における現像部材6上へのトナー画像の形成時の現像用容器21の内部を他の構成と共に示す図である。
【0035】
図5に示すように、現像用容器21の下部には供給管211が設けられ、供給管211はポンプ212を介してトナー液タンク213に接続される。トナー液タンク213には、溶媒(例えば、アイソパー(登録商標))中に一の色のトナー(トナー粒子)が分散されたトナー液が貯溜されており、ポンプ212を駆動することによりトナー液タンク213から現像用容器21内にトナー液が供給され、現像用容器21にて一定量のトナー液が貯溜される。現像用容器21の下部にはポンプ215に接続される排出管214も設けられており、必要に応じてポンプ215により現像用容器21内のトナー液が図示省略のフィルタを介してトナー液タンク213に戻される。
【0036】
現像装置2において、現像部材6上にトナー画像を形成する(すなわち、現像が行われる)際には、図5に示すように、板状の電極部材24および現像部材6がユニット把持機構231により現像用容器21内のトナー液中にて互いに平行な状態で保持される。電極部材24は、絶縁性を有する基材241の一の主面上に導電層242が形成されたものであり、電極部材24の導電層242の表面(以下、「電極面240」という。)は、現像部材6の現像面(すなわち、電極部63側の表面)と微小間隙を空けて対向している。実際には、図5の電極部材24および現像部材6の間において上部および下部のそれぞれには、絶縁性を有するスペーサ291が設けられ、電極部材24および現像部材6の間の間隔は、例えば500マイクロメートル(μm)にて一定に保たれている(図5では、電極部材24および現像部材6の間の間隔を大きく図示している。)。また、現像部材6、電極部材24および2つのスペーサ291は現像処理ユニット111として一体的に組み合わされており、現像処理ユニット111はユニット把持機構231により把持されて現像用容器21の上方から支持される。
【0037】
現像部材6の基材61および電極部63並びに電極部材24の導電層242にはそれぞれ現像電位付与部25の電圧源251,252,253が接続される。現像部材6上へのトナー画像の形成時には、電圧源251〜253により基材61、電極部63および導電層242にそれぞれ所定の電位が付与される。
【0038】
現像処理ユニット111が内部に配置された状態における図1の洗浄容器22も、トナー液の溶媒のみが貯溜される点を除き、図5と同様の構成とされ、後述する現像部材6の洗浄時では、現像処理ユニット111が電圧源251〜253に接続された状態において、基板搬送部23により洗浄容器22内の溶媒中に浸漬される。
【0039】
図6は、転写装置3におけるガラス基板9上へのトナー画像の転写時の転写用容器31の内部を他の構成と共に示す図である。
【0040】
図6に示す転写装置3においても、図5の現像装置2と同様に、転写用容器31の下部には供給管311が設けられ、供給管311はポンプ312を介して溶媒タンク313に接続される。溶媒タンク313には、非極性溶媒(例えば、現像用容器21内のトナー液の溶媒と同一のものであり、以下、単に「溶媒」ともいう。)が貯溜されており、ポンプ312を駆動することにより溶媒タンク313から転写用容器31内に溶媒が供給され、転写用容器31にて一定量の溶媒が貯溜される。転写用容器31の下部にはポンプ315に接続される排出管314も設けられており、必要に応じてポンプ315により転写用容器31内の溶媒が図示省略のフィルタを介して溶媒タンク313に戻される。
【0041】
転写時において転写用容器31内の溶媒中には、導電性材料または半導電性材料にて形成されるとともに複数の微小な吸引穴を一の主面に有する吸着板34が、現像部材6に対して平行に、かつ、直立した状態で配置される。吸着板34の複数の吸引穴には外部のポンプ341が接続され、現像部材6側の主面は例えば50μm以内の平面精度とされる。吸着板34にはガラス基板9のブラックマトリクス81とは反対側の主面が吸引吸着により保持される。吸着板34および現像部材6の間において上部および下部のそれぞれには、絶縁性を有するスペーサ391が設けられ、吸着板34に保持されるガラス基板9の被転写面91と現像部材6の現像面との間の間隔が微小な幅にて一定に保たれている(図6では、ガラス基板9の被転写面91および現像部材6の現像面の間の間隔を大きく図示している。)。現像部材6、ガラス基板9、吸着板34および2つのスペーサ391は転写処理ユニット112として一体的に組み合わされており、転写処理ユニット112はユニット把持機構331により把持されて転写用容器31の上方から支持される。このように、ガラス基板9へのトナー画像の転写時には、溶媒中において微小間隙を空けて被転写面91と現像面とを対向させつつガラス基板9および現像部材6がユニット把持機構331により保持される。
【0042】
現像部材6の基材61および電極部63、吸着板34並びにガラス基板9のブラックマトリクス81にはそれぞれ転写電位付与部35の電圧源351,352,353,354が接続される。ガラス基板9上へのトナー画像の転写時には、電圧源351〜354により基材61、電極部63、吸着板34、および、ブラックマトリクス81にそれぞれ所定の電位が付与される。
【0043】
転写処理ユニット112が内部に配置された状態における図1の洗浄容器32も、図6と同様の構成とされ、後述するガラス基板9の洗浄時では、転写処理ユニット112が電圧源351〜354に接続された状態において、基板搬送部33により洗浄容器32内の溶媒中に浸漬される。
【0044】
次に、画像形成システム1がカラーフィルタを製造する処理について図7を参照しつつ説明を行う。図1の画像形成システム1では、まず、第1基板移載機構51において、電極部材24および現像部材6が、電極面240と現像面とが対向するように2つのスペーサ291を介して組み合わされて現像処理ユニット111が構成される(図5参照)。続いて、図1のユニット把持機構231により現像処理ユニット111が直立した状態で把持されるとともにユニット昇降機構232により現像処理ユニット111が上昇し、ユニット移動機構233により現像処理ユニット111が現像用容器21の上方へと移動する。そして、現像処理ユニット111が下降して現像用容器21内のRの色のトナーが分散されたトナー液中に浸漬される(ステップS11)。これにより、現像用容器21内のトナー液中において、電極部材24がその法線を水平方向に向けて配置されるとともに、現像部材6が現像面を電極部材24の電極面240に対向させつつ電極部材24に平行に配置され、図5に示す状態となる。
【0045】
電極部材24および現像部材6が現像用容器21内に配置されると、現像電位付与部25により現像部材6の基材61に接地電位(0V)が付与され、電極部63に(+650)Vが付与され、電極部材24の導電層242に(+500)Vが付与される(ステップS12)。
【0046】
図8は、電極部材24と現像部材6との間に形成される電界の向きを説明するための図である。図8では、丸にてトナーの粒子を示し、電圧源251〜253を回路記号にて示し、現像用容器21中のトナー液の液面側から見た場合の電極部材24と現像部材6との間の間隙を示している(後述する図9、図12および図14において同様)。
【0047】
このとき、トナー液および絶縁層62を介して電極部材24の導電層242と基材61とにより挟まれる現像面上の矩形領域641は、トナー液および絶縁層62のそれぞれの静電容量に応じて導電層242の電位と基材61の電位との間の電位となる。このように、現像電位付与部25により、現像部材6の現像面上の矩形領域641および電極部63の領域、並びに、電極部材24の電極面240に直接的または間接的に電位が付与されることにより、電極部材24と現像部材6との間の微小間隙(トナー液が満たされる間隙)には電界が形成される。なお、正確には、現像部材6では矩形領域641以外に絶縁層62上の外縁部にも矩形領域641と同様の電位が発生するが(図3参照)、当該領域は、図2のガラス基板9においてブラックマトリクス81の外側の領域(すなわち、カラーフィルタとして利用されない領域)に対応するため、以下の説明では無視するものとする。
【0048】
トナー液中においてトナーは正に帯電しており、電極部材24から現像部材6へと向かう方向(図8中にて符号A3を付す矢印にて示す方向)を正として、電極部材24の電極面240と現像部材6の矩形領域641との間には正の電界が形成され、電極面240と現像部材6の電極部63との間には負の電界が形成される。すなわち、電極部材24の電極面240と現像部材6の矩形領域641との間には、図8中に符号71を付す矢印にて示すようにトナーが電極面240側から現像面へと向かう(電気泳動する)電界が形成され、電極面240と現像部材6の電極部63との間には、図8中に符号72を付す矢印にて示すようにトナーが現像面側から電極面240へと向かう電界が形成される。これにより、現像部材6の矩形領域641にはRのトナーが付着して、Rのトナー画像が形成される。このとき、矩形領域641の各位置では電極面240との一定の電位差に応じた量のトナーが付着するため、現像面上ではトナーの厚さがほぼ均一となる。なお、現像部材6の電極部63に正確に対向する電極面240上の領域にもトナーが付着する。
【0049】
現像部材6上にRのトナー画像が形成されると、現像電位付与部25による現像部材6の基材61および電極部63並びに電極部材24の導電層242への電位の付与を継続した状態で現像処理ユニット111が上昇し、図1の現像用容器21から取り出される。続いて、現像処理ユニット111が洗浄容器22の上方へと移動して、その後下降し、洗浄容器22内の溶媒中に浸漬される。
【0050】
このとき、洗浄容器22内の溶媒中においても、現像用容器21内における現像部材6の矩形領域641および電極部63並びに電極部材24の電極面240の電位が維持される。したがって、仮に、現像処理ユニット111を現像用容器21から引き上げる際等に、現像部材6の現像面上において、矩形領域641以外の領域に不要なトナーが付着したとしても、洗浄容器22内の溶媒中において当該領域ではトナーが現像面側から電極面240に向かう電界が形成されることにより、不要なトナーが現像面上から除去されることとなる(ステップS13)。すなわち、洗浄容器22内にてトナー画像が形成された現像部材6が洗浄される。一方、矩形領域641では、トナーが電極面240から現像面へと向かう電界が形成されるため、トナーは付着したままとなる。なお、必要に応じて現像処理ユニット111が洗浄容器22内にて揺動されてもよい(後述の転写処理ユニット112を洗浄容器32内に浸漬する動作において同様)。
【0051】
現像部材6上の不要なトナーの除去が終了すると、現像電位付与部25による電位の付与を継続した状態で現像処理ユニット111が、図1のユニット昇降機構232により上昇し、洗浄容器22から取り出される。そして、現像処理ユニット111が第1基板移載機構51の上方へと移動した後、下降して第1基板移載機構51に受け渡され、電極部材24と現像部材6との間に液体(溶媒およびトナー液)が存在しない状態で、現像電位付与部25による電位の付与が停止され、現像処理ユニット111が分解されてトナーが矩形領域641に付着した現像部材6が取り出される。なお、電極部材24は別途洗浄されることにより付着したトナーが除去され、洗浄後の電極部材24は次回の現像部材6上へのRのトナー画像の形成の際に利用される。
【0052】
図1の画像形成システム1では、被転写面91上にブラックマトリクス81が形成されたガラス基板9が第1基板移載機構51に予め搬入されて準備されており、第1基板移載機構51では、現像部材6およびガラス基板9が、現像面と被転写面91とが対向するように2つのスペーサ391を介して組み合わされて転写処理ユニット112が構成される(図6参照)。このとき、ガラス基板9のアライメントマーク812および現像部材6のアライメントマーク632を利用して(図2および図3参照)、ガラス基板9と現像部材6との位置合わせが精度よく行われ、現像部材6の矩形領域641がガラス基板9のRの色に対応する要素領域821に正確に対向する。続いて、図1のユニット把持機構331により転写処理ユニット112が直立した状態で把持されるとともにユニット昇降機構332により上昇し、ユニット移動機構333により転写処理ユニット112が転写用容器31の上方へと移動する。そして、転写処理ユニット112が下降して転写用容器31内の溶媒中に浸漬される(ステップS14)。これにより、転写用容器31内の溶媒中において、現像部材6がその法線を水平方向に向けて配置されるとともに、ガラス基板9が被転写面91を現像部材6の現像面に対向させつつ現像部材6に平行に配置され、図6に示す状態となる。
【0053】
ガラス基板9および現像部材6が転写用容器31内に配置されると、転写電位付与部35により現像部材6の基材61に(+850)Vが付与され、電極部63および吸着板34に接地電位(0V)が付与され、ガラス基板9のブラックマトリクス81に(+1000)Vが付与される(ステップS15)。
【0054】
図9は、ガラス基板9と現像部材6との間に形成される電界の向きを説明するための図である。ガラス基板9、トナー液および絶縁層62を介して吸着板34と基材61とにより挟まれる現像面上の矩形領域641および矩形領域641に対向する被転写面91の要素領域821のそれぞれは、現像部材6へのトナー画像の形成時と同様に、吸着板34および基材61のそれぞれに付与される電位、並びに、ガラス基板9、トナー液および絶縁層62のそれぞれの静電容量に応じて決まる電位となる。実際には、矩形領域641および矩形領域641に対向する要素領域821は共に吸着板34の電位と基材61の電位との間の電位となり、矩形領域641では対応する要素領域821よりも基材61に近い電位となる。なお、電極部63に対向する被転写面91の領域は、吸着板34および電極部63のそれぞれに接地電位が付与されるため、同様に(0V)となる。このように、転写電位付与部35により、現像部材6の現像面上の矩形領域641および電極部63の領域、ガラス基板9の被転写面91、並びに、ブラックマトリクス81に直接的または間接的に電位が付与されることにより、ガラス基板9と現像部材6との間の微小間隙(非極性溶媒が満たされる間隙)には電界が形成される。
【0055】
具体的には、ガラス基板9から現像部材6へと向かう方向(図9中にて符号A4を付す矢印にて示す方向)を正として、現像部材6の矩形領域641とこの矩形領域641に対向する被転写面91上の要素領域821との間には負の電界が形成され、現像部材6の電極部63とブラックマトリクス81との間には正の電界が形成され、現像部材6の電極部63とガラス基板9の被転写面91との間には大きさが0の電界が形成される。すなわち、現像部材6の矩形領域641とガラス基板9の被転写面91との間には、図9中に符号73を付す矢印にて示すようにトナーが現像面側から被転写面91へと向かう(電気泳動する)電界が形成され、現像部材6の電極部63とブラックマトリクス81との間には、図9中に符号74を付す矢印にて示すようにトナーが被転写面91側から現像面へと向かう電界が形成され、現像部材6の電極部63と被転写面91との間では、トナーを移動させる電界は形成されない。これにより、矩形領域641に対向するガラス基板9の要素領域821にはRのトナーが付着して、Rのトナー画像が転写される。
【0056】
このとき、転写用容器31内に存在するトナーは現像部材6の矩形領域641上に付着しているトナーのみであり、仮に、現像部材6の現像面上の矩形領域641以外の領域からガラス基板9の被転写面91上のRの色に対応する要素領域821以外の領域へとトナーが向かう電界が形成されている場合であっても、当該電界の影響を受けるトナーは存在しないため、被転写面91上のRの色に対応する要素領域821以外の不要な領域にトナーが付着することが防止される。また、現像部材6の矩形領域641上に付着しているトナーは高濃度な状態となっており、トナー同士の凝縮力が作用して矩形領域641上のトナーがほぼ一体的に移動し易い状態となっているとともに、ブラックマトリクス81と現像部材6の現像面との間においてトナーの2次元的な広がり(電界の向きに垂直な方向への広がり)を抑制する電界が形成される(すなわち、電気的な壁が形成される)ことにより、現像部材6の矩形領域641上の均一な厚さのトナーが、被転写面91上の対向する要素領域821にほとんどそのままの状態で転写され、ガラス基板9上におけるトナーの厚さも均一となる。
【0057】
Rのトナー画像が転写されると、転写電位付与部35による現像部材6の基材61および電極部63、吸着板34並びにブラックマトリクス81への電位の付与を継続した状態で転写処理ユニット112が上昇し、図1の転写用容器31から取り出される。続いて、転写処理ユニット112が洗浄容器32の上方へと移動して、その後下降し、洗浄容器32内の溶媒中に浸漬されて揺動される。
【0058】
このとき、洗浄容器32内の溶媒中においても、転写用容器31内における現像部材6の基材61および電極部63、吸着板34並びにブラックマトリクス81の電位が維持される。したがって、仮に、転写処理ユニット112を転写用容器31から引き上げる際等に、ガラス基板9の被転写面91上において、Rの色に対応する要素領域821以外の領域に不要なトナーが付着したとしても、洗浄容器32内の溶媒中において当該領域ではトナーが被転写面91側から現像面に向かう電界が形成される、または、電界の大きさが0とされることにより、不要なトナーが被転写面91上から除去されることとなる(ステップS16)。すなわち、洗浄容器32内にてトナー画像が転写されたガラス基板9が洗浄される。
【0059】
ガラス基板9上の不要なトナーの除去が終了すると、転写電位付与部35による電位の付与を継続した状態で転写処理ユニット112が、図1のユニット昇降機構332により上昇し、洗浄容器32から取り出される。そして、転写処理ユニット112が第2基板移載機構52の上方へと移動した後、下降して第2基板移載機構52に受け渡され、ガラス基板9と現像部材6との間に液体(溶媒)が存在しない状態で、転写電位付与部35による電位の付与が停止され、転写処理ユニット112が分解されてトナーが転写されたガラス基板9が取り外される。なお、現像部材6は別途洗浄された後、例えば、接地された導電性の容器内に貯溜されるエタノール中に浸漬されたり、ACコロナ放電器を用いることにより現像面が除電され、次回のRのトナー画像の形成の際に利用される。
【0060】
第2基板移載機構52では、ガラス基板9のみが定着装置4の搬送ローラ43上に載置されて定着装置4の内部へと搬送され、例えば、230〜250℃にて30〜60秒間加熱されてガラス基板9のRの要素領域821上に付着したトナーが溶融し被転写面91に定着される(ステップS17)。これにより、ガラス基板9の被転写面91上において複数の要素領域821のうちのRの要素領域821にRの画素要素が形成されることとなる。その後、ガラス基板9は、例えばACコロナ放電器を用いて被転写面91が除電された後、次の色用(例えば、G用)の画像形成ユニット(の第2基板移載機構)へと搬送される。
【0061】
続いて、G用の画像形成ユニットにおいて上記ステップS11〜S17が繰り返されることにより(ステップS18)、Gの色に対応する矩形領域を有する現像部材にGのトナー画像が形成されて、当該トナー画像がRの色の画素要素が形成されたガラス基板9に転写および定着され、その後、B用の画像形成ユニットにおいて上記ステップS11〜S17が繰り返されることにより(ステップS18)、Bの色に対応する矩形領域を有する現像部材にBのトナー画像が形成されて、当該トナー画像がRおよびGの色の画素要素が形成されたガラス基板9に転写および定着される。
【0062】
これにより、図10に示すように、ガラス基板9の被転写面91上においてRの色の複数の画素要素821R、Gの色の複数の画素要素821G、Bの色の複数の画素要素821Bが形成され、これらの画素要素821R,821G,821Bの集合がフィルタ層82とされてカラーフィルタ8が完成する。カラーフィルタ8では、図10中の横方向に並ぶ1つの画素要素821R、1つの画素要素821Gおよび1つの画素要素821Bの集合が1つの画素とされ、複数の画素が2次元に配列される。また、カラーフィルタ8が液晶表示装置に用いられる際には、他の装置によりフィルタ層82およびブラックマトリクス81を全体的に覆う透明の絶縁膜(いわゆる、オーバーコート)が形成され、絶縁膜上に透明導電層(例えば、ITO)のパターンが別途形成される。
【0063】
以上に説明したように、図1の画像形成システム1では、現像装置2の現像用容器21内のトナー液中において、現像部材6のトナー画像に対応する矩形領域641と電極部材24の電極面240との間に現像面に向かってトナーが移動する電界が形成され、現像面上の矩形領域641以外の領域である電極部63と電極面240との間に電極面240に向かってトナーが移動する電界が形成されることにより、現像部材6の現像面にトナー画像が精度よく形成され、転写装置3の転写用容器31内の溶媒中において、現像部材6の矩形領域641とガラス基板9の被転写面91との間に被転写面91に向かってトナーが移動する電界が形成され、電極部63と被転写面91との間の電位差が0とされることにより、現像部材6上のトナー画像がガラス基板9の被転写面91に精度よく転写される。これにより、ガラス基板9の被転写面91上に現像部材6の現像面の矩形領域641に対応するトナー画像を高精度かつ容易に形成することが実現される。そして、現像部材上へのトナー画像の形成(現像)、現像部材からガラス基板9へのトナー画像の転写、および、ガラス基板9上のトナー画像の被転写面91への定着がトナーの色を変更しつつ繰り返されることにより、高精度なカラーフィルタを容易に製造することができる。
【0064】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図11は、第2の実施の形態にて用いられる現像部材6aを示す平面図である。図11に示す現像部材6aの電極部63aでは、複数の矩形電極633が、図11中の縦方向および横方向に図3の複数の矩形領域641と同様のピッチにて基材61の絶縁層62上に配列され、各矩形電極633は図2のガラス基板9における要素領域821と同じ大きさとされる。また、電極部63aでは、縦方向に関して互いに隣接する2つの矩形電極633は微小連結部634を介して接続し、図11中の上段にて横方向に並ぶ複数の矩形電極(図11中にて符号633aを付す矩形電極)は連結部635を介して互いに接続し、連結部635には矩形状の領域の当接部631が設けられる。このように、現像部材6a上の電極部63aは全体が連続したパターンとされ、電極部63aに対して絶縁層62上の他の領域(以下、「非電極領域」という。)とは異なる電位を付与することが可能とされる。また、現像部材6aでは、四隅のそれぞれに横方向に並ぶ3つのアライメントマーク691a,691b,691cが形成され、各アライメントマーク691a〜691cは対応する色のトナー画像をガラス基板9上に転写する際に、ガラス基板9との位置合わせに用いられる。なお、本実施の形態におけるアライメントマーク691a〜691cは電極部63aから孤立している。
【0065】
画像形成システム1において、現像部材6aを用いてカラーフィルタを製造する際には、第1基板移載機構51において、電極部材24および現像部材6aが、電極面240と現像面とが対向するように組み合わされて現像処理ユニット111が構成され、直立した状態にてRの色のトナーが分散されたトナー液中に浸漬される(図7:ステップS11)。そして、図5に示す現像電位付与部25により現像部材6の基材61に(+650)Vが付与され、電極部63aに接地電位が付与され、電極部材24の導電層242に(+500)Vが付与される(ステップS12)。
【0066】
図12は、電極部材24と現像部材6aとの間に形成される電界の向きを説明するための図である。現像電位付与部25による電位の付与により、現像部材6aの現像面において電極部63aが存在しない領域(すなわち、非電極領域)は、図8の場合の矩形領域641と同様に、導電層242の電位と基材61の電位との間の電位となる。このように、現像部材6aの現像面上の電極部63aの領域および非電極領域、並びに、電極部材24の電極面240に直接的または間接的に電位が付与されることにより、電極部材24と現像部材6との間の微小間隙(トナー液が満たされる間隙)には電界が形成される。
【0067】
具体的には、本実施の形態においても、トナー液中においてトナーは正に帯電しており、電極部材24から現像部材6aへと向かう方向(図12中にて符号A3を付す矢印にて示す方向)を正として、電極部材24の電極面240と現像部材6aの電極部63aとの間には正の電界が形成され、電極面240と現像部材6aの非電極領域との間には負の電界が形成される。すなわち、電極部材24の電極面240と現像部材6aの電極部63aとの間には、図12中に符号75を付す矢印にて示すようにトナーが電極面240側から現像面へと向かう電界が形成され、電極面240と現像部材6aの非電極領域との間には、図12中に符号76を付す矢印にて示すようにトナーが現像面側から電極面240へと向かう電界が形成される。これにより、現像部材6aの電極部63aにはRのトナーが均一な厚さにて付着して、現像面上にRのトナー画像が形成される。このとき、現像部材6aの非電極領域に正確に対向する電極面240上の領域にもトナーが付着し、現像部材6aの現像面上のアライメントマーク691a〜691c(図11参照)にはトナーは付着しない。
【0068】
現像部材6a上にRのトナー画像が形成されると、現像電位付与部25による現像部材6aの基材61および電極部63a並びに電極部材24の導電層242への電位の付与を継続した状態で、現像処理ユニット111が洗浄容器22内の溶媒中に浸漬され、現像部材6a上の不要なトナーの除去が行われる(ステップS13)。そして、第1基板移載機構51にて現像処理ユニット111が分解されてトナーが電極部63aに付着した現像部材6aが取り出される。
【0069】
第1基板移載機構51では、現像部材6aおよびガラス基板9が、現像面と被転写面91とが対向するようにして組み合わされて転写処理ユニット112が構成される。このとき、図13に示すように、ガラス基板9(図13中にて細線にて示す。)のアライメントマーク812と現像部材6a(図13中にて太線にて示す。)のRの色に対応するアライメントマーク691aとが、図13中の縦方向および横方向に関して重なるようにガラス基板9と現像部材6aとの位置合わせが行われることにより、現像部材6aの電極部63aにおける矩形電極633がガラス基板9のRの色に対応する要素領域821に正確に対向する。そして、転写処理ユニット112が直立した状態で転写用容器31内の溶媒中に浸漬される(ステップS14)。
【0070】
転写処理ユニット112が転写用容器31内に配置されると、転写電位付与部35により現像部材6aの基材61および吸着板34に接地電位が付与され、電極部63aに(+850)Vが付与され、ガラス基板9のブラックマトリクス81に(+1000)Vが付与される(ステップS15)。
【0071】
図14は、ガラス基板9と現像部材6aとの間に形成される電界の向きを説明するための図である。転写電位付与部35による電位の付与により、現像部材6aの矩形電極633に対向するガラス基板9の被転写面91上の要素領域821は電極部63aの電位と吸着板34の電位との間の電位となり、現像部材6aの非電極領域および非電極領域に対向する被転写面91上の領域のそれぞれは、吸着板34および基材61のそれぞれに接地電位が付与されるため、ほぼ(0V)となる(ただし、ブラックマトリクス81に付与される電位による影響を無視している。)。このように、現像部材6の現像面上の電極部63aの領域および非電極領域、ガラス基板9の被転写面91、並びに、ブラックマトリクス81に直接的または間接的に電位が付与されることにより、ガラス基板9と現像部材6aとの間の微小間隙(非極性溶媒が満たされる間隙)には電界が形成される。
【0072】
具体的には、ガラス基板9から現像部材6aへと向かう方向(図14中にて符号A4を付す矢印にて示す方向)を正として、ガラス基板9の被転写面91と現像部材6aの電極部63aの矩形電極633との間には負の電界が形成され、ブラックマトリクス81と現像部材6aの非電極領域との間には正の電界が形成され、ガラス基板9の被転写面91と現像部材6aの非電極領域との間の電界の大きさは0となる。このように、ガラス基板9の被転写面91と現像部材6aの矩形電極633との間には、図14中に符号77を付す矢印にて示すようにトナーが現像面側から被転写面91へと向かう電界が形成され、ブラックマトリクス81と現像部材6の非電極領域との間には、図14中に符号78を付す矢印にて示すようにトナーが被転写面91側から現像面へと向かう電界が形成され、被転写面91と現像部材6aの非電極領域との間では、トナーを移動させる電界は形成されない。したがって、矩形電極633に対向するガラス基板9の要素領域821のみにRのトナーが均一な厚さにて付着して、Rのトナー画像が転写される。また、電極部63aの矩形電極633以外の部位はブラックマトリクス81と対向するが、当該部位とブラックマトリクス81との間にはトナーが現像面へと向かう正の電界が形成されるため、ブラックマトリクス81にはトナーは付着しない。
【0073】
Rのトナー画像が転写されると、転写電位付与部35による現像部材6aの基材61および電極部63a、吸着板34並びにブラックマトリクス81への電位の付与を継続した状態で転写処理ユニット112が洗浄容器32内の溶媒中に浸漬され、ガラス基板9上の不要なトナーの除去が行われる(ステップS16)。
【0074】
その後、第2基板移載機構52において、転写処理ユニット112からガラス基板9が取り出され、定着装置4にてガラス基板9のRの要素領域821上に付着したトナーが被転写面91に定着される(ステップS17)。ガラス基板9はACコロナ放電器を用いて被転写面91が除電された後、G用の画像形成ユニットに搬送される。
【0075】
G用の画像形成ユニットでは、R用の画像形成ユニットにて用いられた同一の現像部材6aを用いて上記ステップS11〜S17が繰り返される(ステップS18)。ここで、G用の画像形成ユニットにおける現像処理では、現像部材6aにGのトナー画像が形成され、続いて、電極部63aにGのトナーが付着した現像部材6aがガラス基板9と組み合わされて転写処理ユニット112が組み立てられる。このとき、図15に示すように、ガラス基板9(図15中にて細線にて示す。)のアライメントマーク812と現像部材6a(図15中にて太線にて示す。)のGの色に対応するアライメントマーク691bとが、図15中の縦方向および横方向に関して重なるようにガラス基板9と現像部材6aとの位置合わせが行われることにより、現像部材6aの電極部63aにおける矩形電極633がガラス基板9のGの色に対応する要素領域821に正確に対向する。このようにして、Gのトナー画像を転写する際に、現像部材6aの現像面に対するガラス基板9の被転写面91の相対位置が、Rのトナー画像の転写時における位置から、(製造される予定の)カラーフィルタにおけるフィルタ層の色の配列に合わせて現像面に沿って変更される。そして、転写処理ユニット112が転写用容器31に浸漬されて現像部材6a上のトナー画像が、Rの色の画素要素が形成されたガラス基板9に転写され、その後、被転写面91に定着される。
【0076】
続いて、B用の画像形成ユニットにおいて図11の現像部材6aを用いて上記ステップS11〜S17が繰り返される(ステップS18)。このとき、現像部材6aにBのトナー画像が形成された後、現像部材6aのBの色に対応するアライメントマーク691cを用いて転写処理ユニット112が組み立てられ、現像部材6a上のトナー画像がRおよびGの色の画素要素が形成されたガラス基板9に転写され、被転写面91に定着される。このようにして、ガラス基板9上にフィルタ層が形成され、画像形成システム1におけるカラーフィルタの製造処理が終了する。
【0077】
以上に説明したように、第2の実施の形態に係る画像形成システム1ではトナー液中において、現像部材6aの電極部63aと電極部材24の電極面240との間に現像面に向かってトナーが移動する電界が形成され、現像面上の電極部63a以外の領域である非電極領域と電極面240との間に電極面240に向かってトナーが移動する電界が形成されることにより、現像部材6aの現像面にトナー画像が精度よく形成され、転写装置3の転写用容器31内の溶媒中において、現像部材6aの電極部63aの矩形電極633とガラス基板9の被転写面91との間に被転写面91に向かってトナーが移動する電界が形成され、非電極領域と被転写面91との間の電位差が0とされることにより、現像部材6a上のトナー画像がガラス基板9の被転写面91に精度よく転写される。これにより、ガラス基板9の被転写面91上に現像部材6aの矩形電極633に対応するトナー画像を高精度かつ容易に形成することが実現され、その結果、高精度なカラーフィルタを容易に製造することができる。
【0078】
また、画像形成システム1では、図7のステップS18によりトナーの色を変更しつつステップS11〜S17を繰り返す際に同一の現像部材6aが用いられ、現像部材6aおよびガラス基板9を転写用容器31内の溶媒中に配置するステップS14が繰り返される毎に、現像面に対する被転写面91の相対位置が、カラーフィルタのフィルタ層の色の配列に合わせて現像面に沿って変更される。これにより、1つの現像部材6aを繰り返し用いてカラーフィルタを製造することができ、カラーフィルタの製造に係るコストの削減を図ることが実現される。なお、第1の実施の形態において第2の実施の形態と同様に、同一の現像部材6が繰り返し用いられてカラーフィルタが製造されてもよく、第2の実施の形態において第1の実施の形態と同様に、各色用の現像部材6aが用いられてもよい。
【0079】
ところで、以上に説明した画像形成システム1では、現像部材6,6aへのトナー画像の形成の際に、現像面においてトナー画像(ガラス基板9上に形成される最終的なトナー画像)に対応する領域(図3の現像部材6では矩形領域641であり、図11の現像部材6aでは電極部63aの矩形電極633であり、以下、「第1領域」という。)と電極部材24の電極面240との間において、現像面に向かってトナーが移動する電界が形成され、現像面上の第1領域以外の領域(図3の現像部材6では電極部63であり、図11の現像部材6aでは非電極領域であり、以下、「第2領域」という。)と電極面240との間において、電極面240に向かってトナーが移動する電界が形成されることにより、第1領域にトナーを付着させつつ第2領域にトナーが付着することが防止されるが、第2領域と電極面240との間において電位差を0とすることにより電界の大きさが0とされて第2領域にトナーが付着することが防止されてもよい。
【0080】
以上のように、トナー液中において現像部材6,6a上にトナー画像を精度よく形成するという観点では、現像部材の現像面にトナー画像に対応する第1領域と、現像面上の第1領域以外の領域である第2領域とが互いに電気的に不連続な領域として設定され、現像電位付与部25により現像部材の第1領域および第2領域並びに電極部材24の電極面240にそれぞれ付与される電位を第1現像電位、第2現像電位および第3現像電位として、トナー液中のトナーの極性が正である場合には(第1現像電位<第3現像電位≦第2現像電位)が満たされ、トナー液中のトナーの極性が負である場合には(第1現像電位>第3現像電位≧第2現像電位)が満たされることにより、現像面の第1領域と電極部材24の電極面240との間において、トナーが現像面へと向かう電界が形成され、第2領域と電極面240との間において、トナーが電極面240へと向かう電界が形成される、または、電界の大きさが0とされることが必要となる。また、現像処理ユニット111を現像用容器21から洗浄容器22に移動する際等に、現像部材6,6aの現像面上のトナーを確実に保持するという点では、トナーの極性に対して第1現像電位の極性が逆極性である、または、第1現像電位が接地電位であることが好ましい。
【0081】
画像形成システム1では、転写処理ユニット112におけるスペーサ391が極めて薄くされ、現像部材6,6aとガラス基板9との間の微小間隙の幅が極めて小さくされる(例えば、ガラス基板9上において互いに隣接する要素領域821間を仕切るブラックマトリクス81の線幅よりも小さくされる)場合には、仮に、ブラックマトリクス81への電位の付与が省略されても、現像面の第1領域に付着したトナーが対応する要素領域821以外の領域へと広がる可能性は低くなり、万一、僅かに広がったとしても第1領域に対応するガラス基板9上の要素領域821を囲むブラックマトリクス81の部位に付着するため、このようなトナーはカラーフィルタの特性に大きな影響は与えない。このように、トナー画像の転写時における各種条件によっては、転写電位付与部35によるブラックマトリクス81への電位の付与を省略する場合であっても、一定の精度のカラーフィルタの製造が可能である。さらに、現像部材6,6aからガラス基板9へのトナー画像の転写時においても、現像部材6,6aへのトナー画像の形成時と同様に、現像部材6,6aの第2領域とガラス基板9の被転写面91との間において現像面に向かってトナーが移動する電界が形成されることにより、被転写面上の第2領域に対向する領域にトナーが付着することが防止されてもよい。
【0082】
以上のように、非極性溶媒中において現像部材上のトナー画像をガラス基板9に精度よく転写するという観点では、転写電位付与部35により現像部材の第1領域および第2領域並びにガラス基板9の被転写面91とは反対側の主面にそれぞれ付与される電位を第1転写電位、第2転写電位および第3転写電位として、トナー液中のトナーの極性が正である場合には(第1転写電位>第3転写電位≧第2転写電位)が満たされ、トナー液中のトナーの極性が負である場合には(第1転写電位<第3転写電位≦第2転写電位)が満たされることにより、現像面の第1領域とガラス基板9の被転写面91との間において、トナーが被転写面91へと向かう電界が形成され、第2領域と被転写面91との間において、トナーが現像面へと向かう電界が形成される、または、電界の大きさが0とされることが必要となる。また、転写処理ユニット112を転写用容器31から洗浄容器32に移動する際等に、ガラス基板9の被転写面91上のトナーを確実に保持するという点では、トナーの極性に対して第3転写電位の極性が逆極性である、または、第3転写電位が接地電位であることが好ましい。
【0083】
さらに、転写時におけるトナーの2次元的な広がりをブラックマトリクス81を用いて抑制することにより現像部材6,6a上のトナー画像をガラス基板9により精度よく転写して、より高精度なカラーフィルタを製造するという観点では、転写電位付与部35によりブラックマトリクス81に付与される電位を第4転写電位として、トナー液中のトナーの極性が正である場合には(第4転写電位≧第1転写電位>第3転写電位≧第2転写電位)が満たされ、トナー液中のトナーの極性が負である場合には(第4転写電位≦第1転写電位<第3転写電位≦第2転写電位)が満たされることにより、ブラックマトリクス81と現像面との間において、トナーが現像面へと向かう電界が形成される、または、電界の大きさが0とされることが重要となる。なお、トナー画像の転写時にブラックマトリクス81にも第4転写電位を付与する場合には、高精度なカラーフィルタの安定した製造を容易に実現することができるため、トナー画像の転写時における第1ないし第3転写電位等の各種条件の選択の範囲を広げることができる。
【0084】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0085】
画像形成システム1では、各色用の画像形成ユニットが準備され、一の色用の画像形成ユニットにおけるガラス基板9上への一の色のトナー画像の形成(定着を含む。)後、ガラス基板9が他の色用の画像形成ユニットに搬送されることにより、ガラス基板9に対するトナー画像の形成対象の色が一の色から他の色に切り換えられて現像装置2、転写装置3および定着装置4における処理が繰り返されるが、特殊な用途のカラーフィルタを製造する場合等、カラーフィルタを大量に製造する必要がない場合には、必ずしも画像形成システム1に各色用の画像形成ユニットが設けられる必要はない。例えば、画像形成システムにおける現像装置が、それぞれが異なる色のトナー液を貯溜する複数の現像用容器を有するものとされ、現像装置において現像に使用する現像用容器が切り換えられることにより、ガラス基板9に対するトナー画像の形成対象の色が一の色から他の色に切り換えられてもよい。
【0086】
現像部材6,6aは、トナー画像に対応する第1領域と第1領域以外の第2領域とが設定された現像面を有するものであるならば様々な構造とすることが可能であり、例えば、第1領域と第2領域との間に微細な絶縁部を設けることにより、第1領域および第2領域が互いに異なる電位の付与が可能とされつつ同一の平面上に設けられてもよい。ただし、現像部材を容易に製造するという観点では、板状の導電性または半導電性の基材61の一の主面上に、導電性材料または半導電性材料にて第1領域または第2領域に対応する電極部63,63aを絶縁層62を介して形成することにより、現像部材が製造されることが好ましい。なお、高精度な現像部材の製造には通常長時間を要するが、カラーフィルタの製造では、現像部材(互いに異なる色用の複数の現像部材、または、複数の色に対して用いられる1つの現像部材)を繰り返し使用することが可能であるため、カラーフィルタの製造に係る時間やコストが大幅に増大することはない。
【0087】
現像装置2の現像電位付与部25および転写装置3の転写電位付与部35のそれぞれにおいて、各構成に対して付与する電位が接地電位とされる場合には、当該構成に接続される電圧源251〜253,351〜354は省略されてもよい。
【0088】
現像装置2では、現像用容器21内のトナー液中において現像部材6,6aがユニット把持機構231により現像処理ユニット111として保持されるが、現像用容器21内にて電極部材24が固定される場合等には、現像部材6,6aのみを保持する機構により現像部材6,6aがトナー液中にて保持されてもよい。すなわち、電極部材24の電極面と現像面とを微小間隙を空けて対向させつつ現像部材6,6aを保持するものであるならば、現像用の保持部はいかなるものであってもよい。
【0089】
また、転写装置3では、転写用容器31内の非極性溶媒中において現像部材6,6aおよびガラス基板9がユニット把持機構331により転写処理ユニット112として保持されるが、例えば、現像部材6,6aと、吸着板34に吸引吸着により保持されるガラス基板9とを個別に保持する機構により、現像部材6,6aおよびガラス基板9が非極性溶媒中にて保持されてもよい。このように、現像面と被転写面91とを微小間隙を空けて対向させつつ現像部材6,6aおよびガラス基板9を保持するものであるならば、転写用の保持部は様々な構成とすることが可能である。
【0090】
また、定着装置4におけるガラス基板9上のトナー画像の定着は、複数のランプ41による加熱以外の他の手法にて行われてもよい。
【0091】
画像形成システム1では、トナー画像をガラス基板9上に容易に形成してカラーフィルタを製造することが実現されるが、フィルム状の絶縁性を有する透明部材上にトナー画像が形成されてカラーフィルタが製造されてもよい。また、画像形成システム1はカラーフィルタの製造以外の用途に用いられてもよく、例えば、銅等の金属の微粒子の周囲を樹脂等の絶縁材料にて覆うことにより形成されるトナーを溶媒中に分散することによりトナー液が準備され、当該トナー液を用いて現像部材上にトナー画像を形成した後、トナー画像を樹脂基板の被転写面に転写し、その後、加熱によりトナーの樹脂成分を除去することにより、樹脂基板上に配線パターンが形成されてもよい。このように、画像形成システム1では、板状またはフィルム状の様々な対象物にトナー画像を高精度かつ容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】画像形成システムの構成を示す図である。
【図2】ガラス基板のブラックマトリクスを示す図である。
【図3】現像部材を示す平面図である。
【図4】現像部材の断面図である。
【図5】トナー画像の形成時の現像用容器の内部を示す図である。
【図6】トナー画像の転写時の転写用容器の内部を示す図である。
【図7】カラーフィルタを製造する処理の流れを示す図である。
【図8】電極部材と現像部材との間に形成される電界の向きを説明するための図である。
【図9】ガラス基板と現像部材との間に形成される電界の向きを説明するための図である。
【図10】カラーフィルタを示す図である。
【図11】現像部材の他の例を示す平面図である。
【図12】電極部材と現像部材との間に形成される電界の向きを説明するための図である。
【図13】ガラス基板と現像部材との位置合わせを説明するための図である。
【図14】ガラス基板と現像部材との間に形成される電界の向きを説明するための図である。
【図15】ガラス基板と現像部材との位置合わせを説明するための図である。
【符号の説明】
【0093】
1 画像形成システム
2 現像装置
3 転写装置
4 定着装置
6,6a 現像部材
8 カラーフィルタ
9 ガラス基板
21 現像用容器
24 電極部材
25 現像電位付与部
31 転写用容器
35 転写電位付与部
61 基材
62 絶縁層
63,63a 電極部
81 ブラックマトリクス
82 フィルタ層
91 被転写面
231 (現像装置の)ユニット把持機構
240 電極面
331 (転写装置の)ユニット把持機構
633,633a 矩形電極
641 矩形領域
S11,S12,S14,S15,S17,S18 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状またはフィルム状の対象物上にトナー画像を形成する画像形成方法であって、
a)トナー画像に対応する第1領域と前記第1領域以外の第2領域とが設定された現像面を有する現像部材を、微小間隙を空けて電極部材の電極面と前記現像面とを対向させつつトナーが分散されたトナー液中に配置する工程と、
b)前記第1領域と前記電極面との間において前記トナーが前記現像面へと向かう電界が形成され、前記第2領域と前記電極面との間において前記トナーが前記電極面へと向かう電界が形成される、または、電界の大きさが0とされるように、前記第1領域、前記第2領域および前記電極面にそれぞれ第1現像電位、第2現像電位および第3現像電位を付与する工程と、
c)前記トナーが前記第1領域に付着した前記現像部材を非極性溶媒中に配置し、被転写面を有する対象物を、微小間隙を空けて前記被転写面と前記現像面とを対向させつつ前記非極性溶媒中に配置する工程と、
d)前記第1領域と前記被転写面との間において前記トナーが前記被転写面へと向かう電界が形成され、前記第2領域と前記被転写面との間において前記トナーが前記現像面へと向かう電界が形成される、または、電界の大きさが0とされるように、前記第1領域、前記第2領域および前記対象物にそれぞれ第1転写電位、第2転写電位および第3転写電位を付与する工程と、
を備えることを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成方法であって、
e)前記d)工程により前記被転写面に転写された前記トナーを前記非極性溶媒外にて前記被転写面に定着させる工程と、
f)前記トナーの色を変更しつつ前記a)工程ないし前記e)工程を繰り返す工程と、
をさらに備え、
前記対象物が絶縁性を有する透明部材であり、
前記被転写面上に形成されるトナー画像が、カラーフィルタのフィルタ層であることを特徴とする画像形成方法。
【請求項3】
請求項2に記載の画像形成方法であって、
前記f)工程により前記a)工程ないし前記e)工程を繰り返す際に同一の前記現像部材が用いられ、
前記c)工程が繰り返される毎に、前記現像面に対する前記被転写面の相対位置が、カラーフィルタのフィルタ層の色の配列に合わせて前記現像面に沿って変更されることを特徴とする画像形成方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載の画像形成方法であって、
前記対象物の前記被転写面に、ブラックマトリクスが予め形成されていることを特徴とする画像形成方法。
【請求項5】
請求項4に記載の画像形成方法であって、
前記ブラックマトリクスが導電性または半導電性を有し、
前記d)工程において、前記ブラックマトリクスと前記現像面との間にて前記トナーが前記現像面へと向かう電界が形成される、または、電界の大きさが0とされるように、前記ブラックマトリクスに第4転写電位が付与されることを特徴とする画像形成方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成方法であって、
前記現像部材が、板状の導電性または半導電性の基材の一の主面上に、導電性材料または半導電性材料にて前記第1領域または前記第2領域に対応する電極部が絶縁層を介して形成されたものであることを特徴とする画像形成方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の画像形成方法であって、
前記トナーの極性に対して前記第1現像電位の極性が逆極性である、または、前記第1現像電位が接地電位であることを特徴とする画像形成方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の画像形成方法であって、
前記トナーの極性に対して前記第3転写電位の極性が逆極性である、または、前記第3転写電位が接地電位であることを特徴とする画像形成方法。
【請求項9】
板状またはフィルム状の対象物上にトナー画像を形成する画像形成システムであって、
トナー画像に対応する第1領域と前記第1領域以外の第2領域とが設定された現像面を有する現像部材の前記第1領域にトナーを付着させる現像装置と、
前記第1領域に付着した前記トナーを対象物の被転写面に転写する転写装置と、
を備え、
前記現像装置が、
前記トナーが分散されたトナー液が貯溜される現像用容器と、
前記トナー液中において、微小間隙を空けて電極部材の電極面と前記現像面とを対向させつつ前記現像部材を保持する現像用保持部と、
前記現像面の前記第1領域と前記電極面との間において前記トナーが前記現像面へと向かう電界が形成され、前記第2領域と前記電極面との間において前記トナーが前記電極面へと向かう電界が形成される、または、電界の大きさが0とされるように、前記第1領域、前記第2領域および前記電極面にそれぞれ第1現像電位、第2現像電位および第3現像電位を付与する現像電位付与部と、
を備え、
前記転写装置が、
非極性溶媒が貯溜される転写用容器と、
前記非極性溶媒中において、微小間隙を空けて前記現像面と前記対象物の前記被転写面とを対向させつつ前記現像部材および前記対象物を保持する転写用保持部と、
前記現像面の前記第1領域と前記被転写面との間において前記トナーが前記被転写面へと向かう電界が形成され、前記第2領域と前記被転写面との間において前記トナーが前記現像面へと向かう電界が形成される、または、電界の大きさが0とされるように、前記第1領域、前記第2領域および前記対象物にそれぞれ第1転写電位、第2転写電位および第3転写電位を付与する転写電位付与部と、
を備えることを特徴とする画像形成システム。
【請求項10】
請求項9に記載の画像形成システムであって、
前記転写装置により前記被転写面上に転写された前記トナーを前記被転写面に定着させる定着装置をさらに備え、
前記対象物が絶縁性を有する透明部材であり、
前記被転写面上に形成されるトナー画像が、カラーフィルタのフィルタ層であることを特徴とする画像形成システム。
【請求項11】
請求項10に記載の画像形成システムであって、
前記対象物の前記被転写面に、ブラックマトリクスが予め形成されていることを特徴とする画像形成システム。
【請求項12】
請求項11に記載の画像形成システムであって、
前記ブラックマトリクスが導電性または半導電性を有し、
前記転写電位付与部が、前記ブラックマトリクスと前記現像面との間において、前記トナーが前記現像面へと向かう電界が形成される、または、電界の大きさが0とされるように、前記ブラックマトリクスに第4転写電位を付与することを特徴とする画像形成システム。
【請求項13】
請求項9ないし12のいずれかに記載の画像形成システムであって、
前記現像部材が、板状の導電性または半導電性の基材の一の主面上に、導電性材料または半導電性材料にて前記第1領域または前記第2領域に対応する電極部が絶縁層を介して形成されたものであることを特徴とする画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−293179(P2007−293179A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−123306(P2006−123306)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】