画像形成方法および画像形成装置
【課題】 色再現性を損なうことなく着弾干渉を回避すること。
【解決手段】 記録媒体16上に色材を含まない第1の液体81を付与し、この第1の液体81が液体膜として存在する領域に、色材を含む第2の液体(インク)82a、82bを打滴にて付与する。ここで、第1の液体81の測定温度25℃での表面寿命0.1秒における動的表面張力値γ1(0.1秒)と第2の液体82a、82bの測定温度25℃での表面寿命0.1秒における動的表面張力値γ2(0.1秒)との関係は、γ1(0.1秒)<γ2(0.1秒)とした。
【解決手段】 記録媒体16上に色材を含まない第1の液体81を付与し、この第1の液体81が液体膜として存在する領域に、色材を含む第2の液体(インク)82a、82bを打滴にて付与する。ここで、第1の液体81の測定温度25℃での表面寿命0.1秒における動的表面張力値γ1(0.1秒)と第2の液体82a、82bの測定温度25℃での表面寿命0.1秒における動的表面張力値γ2(0.1秒)との関係は、γ1(0.1秒)<γ2(0.1秒)とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成方法および画像形成装置に関し、特に、少なくとも2種類の液体を所定の記録媒体に付与して記録媒体上に画像を形成する画像形成方法および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の記録媒体に向けてインクを打滴することにより記録媒体上に所望の画像を形成する画像形成装置としては、キャリッジに打滴ヘッドを搭載し、複数回の走査でノズル列分のラインの印字を完成させる(分割印刷する)ようにしたシャトルスキャン方式のものが一般によく用いられている。インクとして紫外線の照射により硬化するUVインクを用いる場合には、打滴ヘッドとともに紫外線照射装置もキャリッジに搭載し、各走査ごとに、紫外線を照射してインクを硬化させることができる。この方法は、隣接するドット同士が液滴のまま接することを避けることもできる。
【0003】
しかしながら、高速化のために、記録媒体上の全記録領域の幅(ページ幅)に対応したノズル列を有するフルライン型の打滴ヘッドを用い、1回の走査で1ページ分の印字を完成させることが求められている。シャトルスキャン方式のような主走査方向における打滴ヘッドの往復走査を行わず、いわゆるシングルパスでノズル列分のラインの印字が完成する。
【0004】
この場合は、分割印刷をおこなうシャトルスキャン式とは異なり、走査毎の硬化はできないため、隣接して打滴されるインク滴同士の合一を防がないと高画質を得られない。この状況は、分割印刷をしないで、一度の走査でノズル列分の印刷を完了するシャトルスキャン式プリンタでも同様である。
【0005】
記録媒体に着弾したインク滴同士の干渉(以下着弾干渉と呼ぶ)を回避するため、2液化して、記録媒体上で化学反応によりインク中の色材を凝集または不溶化させるようにしたものも知られている(特許文献1、2を参照)。
【0006】
また、特許文献3には、乾燥粘度が100mPa・s以下であり、10msでの動的表面張力が45mN/m以上であり、1000msでの動的表面張力が35mN/m以下であるインクが記載されている。
【特許文献1】特開2000−218772号公報
【特許文献2】特開2000−44855号公報
【特許文献3】特開2003−231838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図15の模式図に示すように、記録媒体16に複数のインク滴90a、90bを打滴したとき、互いに着弾位置が近傍となり、液滴同士が接する場合には、気液界面の表面積を小さくしようとして、すなわちインク滴の表面エネルギーを最小化しようとして、インク滴90a、90b同士が合一し、一体化したインク滴90cが形成されて本来の意図とは違う場所にインク滴が移動する現象、所謂、「着弾干渉」が生じる。この現象は、インクが浸透しない、または浸透が遅い記録メディアにおいて顕著におきる。
【0008】
このような着弾干渉を回避しようとして、特許文献1、2に記載のように、インク中の色材を凝集または不溶化させると、色の再現性を損うという問題がある。具体的には、凝集、不溶化にともなって色材粒子の大サイズ化が生じて色相の変化や彩度の低下が発生する。特に、鮮やかな画像が求められるパッケージラベル印刷には適さない。UVインクなどの非水系インクに対しては、反応速度が十分に速い凝集剤が存在しないという課題もある。
【0009】
動的表面張力について記載した技術文献としては、特許文献3があるが、2液化した場合のその2液間の動的表面張力の関係について、何ら記載がない。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、色再現性を損なうことなく着弾干渉を回避することができる画像形成方法および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、少なくとも2種類の液体を所定の記録媒体に付与して、該記録媒体に所望の画像を形成する画像形成方法において、前記記録媒体上に、色材を含まず測定温度25℃での表面寿命0.1秒における動的表面張力値がγ1(0.1秒)である第1の液体を付与した後に、該第1の液体が液体膜として存在する領域に、色材を含み測定温度25℃での表面寿命0.1秒における動的表面張力値が前記γ1(0.1秒)よりも大きなγ2(0.1秒)である第2の液体を打滴にて付与することを特徴とする画像形成方法を提供する。
【0012】
ここで、動的表面張力は、一般に、最大泡圧法(液体中に気泡を発生させ、液体からその気泡にかかる圧力に基づいて表面張力を測定する方法である)によって測定される。
【0013】
この発明によれば、第2の液体に含まれる色材を凝集または不溶化させることなく、以下のようにして、着弾干渉を回避し得る。
【0014】
まず、色材を含まない第1の液体が塗布または打滴により記録媒体上に付与されて、記録媒体上に目的の範囲内の厚さの液体膜が形成される。次に、気液界面が第1の液体と大気との境界面のみに限定された状態のまま、すなわち気液界面の表面積を変化させないで、色材を含む第2の液体の液滴(インク滴)を、第1の液体が液体膜として存在する領域に着弾させて、第1の液体からなる液体膜の内部に第2の液体の液滴を潜り込ませる。そうすると、気液界面の表面積が変化しないので、第2の液体の液滴同士が合一せず、第2の液体の液滴同士の着弾干渉が回避される。
【0015】
この着弾干渉の防止効果が持続している間(通常は数百ミリ秒から数秒の間である)に、紫外線や電子線などの輻射線を照射して少なくとも第2の液体の液滴を硬化させる構成とすることにより、第2の液体の液滴に含まれる色材を記録媒体にさらに確実に定着させることができる。
【0016】
記録媒体として、インクの浸透性がない記録媒体(例えば、OPP(Oriented Polypropylene Film)、CPP(Casted Polypropylene Film)、PE(Polyethylene)、PET(Polyethyleneterephthalate)その他の浸透性が低い軟包材、ラミネート紙、コート紙、アート紙など)を用いても、高画質で画像を形成できる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第1の液体からなる液体膜の平均厚みを1.6μm以上にて前記第1の液体を前記記録媒体に付与し、該第1の液体が液体膜として存在する領域に前記第2の液体を打滴することを特徴とする画像形成方法を提供する。
【0018】
この発明によれば、記録媒体上での第2の液体の液滴(インク滴)同士の合一を確実に防止できる。
【0019】
なお、第1の液体からなる液体膜の平均厚みの上限については、100μm以下、好ましくは20μm以下である。
【0020】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記第2の液体が輻射線硬化型の重合性化合物を含有し、前記第2の液体が前記記録媒体に付与された後、該記録媒体に輻射線を照射して前記第2の液体を硬化させることを特徴とする画像形成方法を提供する。
【0021】
この発明によれば、第2の液体の液滴の形状が保持されている間(通常は数百ミリ秒から数秒の間である)に、第2の液体の液滴を硬化させて、第2の液体の液滴に含まれる色材を記録媒体にさらに確実に定着させることができる。
【0022】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記第1の液体も輻射線硬化型の重合性化合物を含有することを特徴とする画像形成方法を提供する。
【0023】
この発明によれば、色材を含まない第1の液体も硬化するので、迅速かつ確実な定着が可能になる。
【0024】
請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の発明において、前記第1の液体および前記第2の液体のいずれか一方に重合開始剤を含むことを特徴とする画像形成方法を提供する。
【0025】
請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載の発明において、前記第1の液体は、輻射線硬化型の重合性化合物としてオキシラン化合物を含み、前記第2の液体は、重合開始剤を含むとともに、輻射線硬化型の重合性化合物としてオキセタン化合物を含むことを特徴とする画像形成方法を提供する。
【0026】
この発明によれば、重合開始剤と反応開始の早い重合性化合物(オキシラン化合物)とが分けて記録媒体に付与されるので、輻射線の迷光によるヘッドの吐出面での硬化による吐出不良の問題を回避できる。
【0027】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の発明において、前記第1の液体を打滴により前記記録媒体に付与することを特徴とする画像形成方法を提供する。
【0028】
この発明によれば、記録媒体上で色材を含む第2の液体の付与に必要な範囲のみに容易に第1の液体を付与できる。
【0029】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、前記第1の液体の静的表面張力値(測定温度25℃)が25mN/mよりも小さいことを特徴とする画像形成方法を提供する。
【0030】
この発明によれば、第2の液体が打滴されるまでに、第1の液体が速やか且つ均一に記録媒体上に拡がるようにできる。
【0031】
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の発明において、シングルパスで打滴を行うことを特徴とする画像形成方法を提供する。
【0032】
この発明によれば、高速で画像を形成できる。
【0033】
請求項10に記載の発明は、少なくとも2種類の液体を所定の記録媒体に付与して、該記録媒体に所望の画像を形成する画像形成装置において、前記記録媒体上に色材を含まない第1の液体を付与し、該第1の液体が液体膜として存在する領域に、色材を含む第2の液体を打滴にて付与する液体付与手段を備え、前記第1の液体の測定温度25℃での表面寿命0.1秒における動的表面張力値γ1(0.1秒)と前記第2の液体の測定温度25℃での表面寿命0.1秒における動的表面張力値γ2(0.1秒)との関係が、γ1(0.1秒)<γ2(0.1秒)であることを特徴とする画像形成装置を提供する。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、色再現性を損なうことなく着弾干渉を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、添付図面に従って、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
【0036】
[本発明の原理]
着弾干渉を回避しつつ記録媒体に画像を形成する本発明の原理について、図1を用いて説明する。
【0037】
まず、図1(a)に示すように、色材を含まない第1の液体を記録媒体16に付与し、記録媒体16の表面に第1の液体からなる液体膜81を形成する。このような第1の液体の付与態様は、打滴(「吐出」ともいう)および塗布のいずれの態様であってもよい。前者の打滴によれば、後述の色材を含む第2の液体(以下「インク」ともいう)の付与に必要な範囲のみに第1の液体からなる液体膜を容易に形成し得る点で、好ましい。
【0038】
付与した第1の液体の液体膜の厚みは、付与された第1の液体の体積を第1の液体が付与された部分の面積除した、平均厚みである。第1の液体が打滴にて付与される場合は、打滴された体積と第1の液体が打滴された部分の面積より求めることができる。第1の液体の液体膜の厚みは、均一で局所的な厚みの違いはないことが、望ましい。この観点から、打滴を行う液体吐出ヘッドから安定に吐出できる範囲で、第1の液体のメディア上で濡れ拡がり易い物性、つまり静的な表面張力が小さいことが望ましい。
【0039】
次に、図1(b)に示すように、第1の液体と大気との境界面81aのみに気液界面が限定された状態のまま、すなわち気液界面81aの表面積を変化させないで、記録媒体16上の第1の液体からなる液体膜81が存在する領域内に、色材を含む第2の液体(インク)の液滴82a(第1のインク滴)を打滴する。この打滴により、図1(c)に示すように、液体膜81の内部に第1のインク滴82aを潜り込ませる。
【0040】
さらに、図1(d)に示すように、記録媒体16上の第1の液体からなる液体膜81が存在する領域内であって、先に打滴した第1のインク滴82aの着弾位置の近傍に、第2のインク滴82bを打滴する。図1(e)に示すように、第2のインク滴82bも液体膜81の内部に潜り込ませる。
【0041】
このようにして、複数のインク滴82a、82bを、第1の液体からなる液体膜81の内部に潜り込ませることにより、複数の液滴82a、82bを互いに近傍となる位置に着弾させても、新たな気液界面が生じないことになる。詳細には、気体と液体の境界面は、第1の液体からなる液体膜81と大気との境界面81aに限定され、この気液界面81aの面積は変化しない。
【0042】
もしも、第1の液体からなる液体膜81が記録媒体16上に無い状態で複数のインク滴82a、82bを打滴した場合には、気液界面の表面積を小さくしようとして、すなわち表面エネルギーを最小化しようとして、複数のインク滴82a、82b同士が合一するという着弾干渉が発生するが、本発明では、このような着弾干渉が回避されることになる。
【0043】
従来は、着弾干渉を回避するためには、色材が凝集または不溶化する化学反応を起こさせる物質を第1の液体に含有させていたが、本発明では、このような物質を第1の液体に含有させることなく、着弾干渉を回避できる。
【0044】
以上説明したように着弾干渉を回避しつつ記録媒体に画像を形成するには、第1の液体の動的表面張力と第2の液体(インク)の動的表面張力との関係を適切に設定する必要がある。このような2液間の動的表面張力の関係については、後に詳細に説明する。
【0045】
また、図1(e)に示すように着弾干渉が回避されてインク滴82a、82bの形状が液体膜81の内部で保たれている間に(本実施形態の場合、数百ミリ秒から5秒間)、すなわちドット形状が崩れないうちに、インク滴82a、82bを硬化させて、インク滴82a、82b中の色材を記録媒体16に定着させる。少なくとも第2の液体(インク)は、輻射線硬化型の重合性化合物を含有し、紫外線などの輻射線が照射されると、いわゆる重合反応により硬化する。第1の液体にも、重合性化合物を含有させることも可能であり、この場合には、吐出した液体全体が硬化するので、密着性を高めることができ、好ましい。
【0046】
[画像形成装置の全体構成]
図2は、画像形成装置10の一例の全体構成図である。この画像形成装置10は、色材を含まず記録媒体16上に液体膜を形成するための第1の液体、および、色材を含む第2の液体(インク)の少なくとも2種類の液体を、所定の記録媒体16に付与して、所望の画像を記録媒体16に形成するものである。
【0047】
図2において、画像形成装置10は、第1の液体およびインクを打滴により記録媒体16に付与する液体付与部12を備えている。
【0048】
また、画像形成装置10は、液体付与部12に供給する第1の液体およびインクを貯蔵しておく液体貯蔵/装填部14と、紙などの記録媒体16を供給する給紙部18と、記録媒体16のカールを除去するデカール処理部20と、液体付与部12の吐出面に対向して配置され、記録媒体16の平面性を保持しながら記録媒体16を搬送するベルト搬送部22と、液体付与部12によるインクの打滴結果(インク滴の着弾状態である)としての画像を読み取る画像検出部24と、記録済みの記録媒体を外部に排出する排紙部26を備えている。
【0049】
図2においては、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)を給紙するものを示しているが、予めカットされているカット紙を給紙するものを用いてもよい。ロール紙を使用する装置構成の場合、裁断用のカッタ28が設けられる。ところで、給紙部18から送り出される記録媒体16は一般に巻き癖が残りカールする。このカールを除去するために、デカール処理部20において巻き癖方向と逆方向に加熱ドラム30で記録媒体16に熱を与える。デカール処理後、カット済の記録媒体16は、ベルト搬送部22へと送られる。
【0050】
ベルト搬送部22は、ローラ31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、液体付与部12の吐出面および画像検出部24のセンサ面に対向する部分が平面(フラット面)をなすように構成されている。ベルト33は、記録媒体16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(図示省略)が形成されている。ローラ31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において液体付与部12の吐出面及び画像検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ34が設けられており、この吸着チャンバ34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト上の記録媒体16が吸着保持される。ベルト33が巻かれているローラ31、32の少なくとも一方にモータ(図示省略)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図2において、反時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録媒体16は、図2の右から左へと搬送される。なお、縁無しプリント等を形成するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(記録領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。
【0051】
画像形成装置10の液体付与部12およびその周辺部分を、図3の平面図に示す。
【0052】
図3において、液体付与部12は、シングルパスで記録媒体16に第1の液体を打滴する第1の液体用の打滴ヘッド12P、および、シングルパスで記録媒体16にインクを打滴するインク用の打滴ヘッド12Y、12C、12M、12Kによって構成されている。詳細には、記録媒体16の記録可能幅の全幅に対応した長さのライン型ヘッドを媒体搬送方向(図3中に矢印Sで示す副走査方向である)と直交する方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている。
【0053】
本例の各打滴ヘッド12P、12Y、12C、12M、12Kは、本画像形成装置10が対象とする最大サイズの記録媒体16の少なくとも一辺を超える長さにわたって複数のノズル(液体吐出口)が配列されている。
【0054】
また、媒体搬送方向Sに沿って、上流側(図3の右側)から、第1の液体(P)、イエロ色のインク(Y)、シアン色のインク(C)、マゼンタ色のインク(M)、黒色のインク(K)の順に、各液体に対応した打滴ヘッド12P、12Y、12C、12M、12Kが配置されており、記録媒体16上にカラーの画像を形成し得る。
【0055】
具体的には、まず、第1の液体用の打滴ヘッド12Pから記録媒体16に向けて第1の液体が打滴されることによって記録媒体16上に第1の液体が付与され、この第1の液体が液体膜として存在する領域に、次に、インク用の打滴ヘッド12Y、12M、12C、12Kから記録媒体16に向けて第2の液体(インク)が打滴される。ここで、インク滴を、記録媒体16上の第1の液体からなる液体膜の内部に潜り込ませることにより、新たな気液界面を生じさせず、着弾干渉が回避される。
【0056】
また、フルライン型の打滴ヘッドからなる液体付与部12によれば、媒体搬送方向(副走査方向)について記録媒体16と液体付与部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで、記録媒体16の全面に画像を記録することができる。これにより、媒体搬送方向と直交する方向(主走査方向)に打滴ヘッドが往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速プリントが可能であり、生産性を向上させることができる。
【0057】
なお、主走査方向及び副走査方向とは、次に言うような意味で用いている。すなわち、記録媒体の全幅に対応したノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時、(1)全ノズルを同時に駆動するか、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動するか、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動するか、等のいずれかのノズルの駆動が行われ、記録媒体の幅方向(記録媒体の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)のプリントをするようなノズルの駆動を主走査と定義する。そして、この主走査によって記録される1ライン(帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向という。
【0058】
一方、上述したフルラインヘッドと記録媒体とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットからなるライン)のプリントを繰り返し行うことを副走査と定義する。そして、副走査を行う方向を副走査方向という。結局、記録媒体の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。
【0059】
なお、本実施形態では、YMCKの標準色(4色)の構成を例示したが、インクの色数や色の組み合わせについては本実施形態に示す例には限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクや、背景色用インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ等のライト系インクを吐出する打滴ヘッドや、白色インクを吐出する打滴ヘッドを追加する構成も可能である。
【0060】
UV光源27は、記録媒体16に向けて紫外線を照射するものである。紫外線ランプとして、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、紫外LED、LDが使用できる。ラジカル重合性モノマーを使用する場合には、硬化プロセス部の酸素を遮断するため、窒素ブランケットを装備することもできる。
【0061】
図2に示す液体貯蔵/装填部14は、第1の液体を貯蔵する第1の液体用のタンク、および、YMCK各色別にインクを貯蔵するインク用のタンクを有し、図示を省略した管路を介して各打滴ヘッド12P、12Y、12C、12M、12Kとそれぞれ連通している。
【0062】
画像検出部24は、液体付与部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ等)を含み、該イメージセンサによって読み取った画像からノズルの目詰まりその他の吐出異常をチェックする手段として機能する。
【0063】
画像が形成されたプリント物としての記録媒体16は、排紙部26から排出される。この画像形成装置10では、本画像のプリント物と、テストプリントのプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り換える選別手段(図示省略)が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテストプリントとを同時に並列に形成する場合は、カッタ(第2のカッタ)48によってテストプリントの部分を切り離す。カッタ48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテストプリントを行った場合に、本画像とテストプリント部を切断するものである。また、図示を省略したが、本画像の排出部26Aには、オーダ別に画像を集積するソータが設けられている。
【0064】
[打滴ヘッドの構造]
図4(a)は、図3に示した打滴ヘッド12P、12Y、12C、12M、12Kを代表する打滴ヘッドに符号50を付して、その打滴ヘッド50の基本的な全体構造の一例を示す平面透視図である。
【0065】
図4(a)に一例として示す打滴ヘッド50は、いわゆるフルライン型のヘッドであり、記録媒体16の搬送方向(図中に矢印Sで示す副走査方向)と直交する方向(図中に矢印Mで示す主走査方向)において、記録媒体16の幅Wmに対応する長さにわたり、記録媒体16に向けて液体を吐出する多数のノズル51(液体吐出口)を2次元的に配列させた構造を有している。
【0066】
打滴ヘッド50は、ノズル51、ノズル51に連通する圧力室52、および、液体供給口53を含んでなる複数の圧力室ユニット54が、主走査方向Mおよび主走査方向Mに対して所定の鋭角θ(0度<θ<90度)をなす斜め方向の2方向に沿って配列されている。なお、図4(a)では、図示の便宜上、一部の圧力室ユニット54のみ描いている。
【0067】
ノズル51は、具体的には、主走査方向Mに対して所定の鋭角θをなす斜め方向において、一定のピッチdで配列されており、これにより、主走査方向Mに沿った一直線上に「d×cosθ」の間隔で配列されたものと等価に取り扱うことができる。
【0068】
打滴ヘッド50を構成する一吐出素子としての前述の圧力室ユニット54について、図4(a)中のb−b線に沿った断面図を図4(b)に示す。
【0069】
図4(b)に示すように、各圧力室52は液体供給口53を介して共通液室55と連通している。共通液室55は図示を省略した液体供給源たるタンクと連通しており、そのタンクから供給される液体が共通液室55を介して各圧力室52に分配供給される。
【0070】
圧力室52の天面を構成する振動板56の上には圧電体58aが配置され、この圧電体58aの上には個別電極57が配置されている。振動板56は、接地されており、共通電極として機能する。これらの振動板56、個別電極57および圧電体58aによって、液体吐出力を発生する手段としての圧電アクチュエータ58が構成されている。
【0071】
圧電アクチュエータ58の個別電極57に所定の駆動電圧が印加されると、圧電体58aが変形して圧力室52の容積が変化し、これに伴う圧力室52内の圧力の変化によって、ノズル51から液体が吐出される。液体吐出後、圧力室52の容積が元に戻ると共通液室55から液体供給口53を通って新しい液体が圧力室52に供給される。
【0072】
なお、図4(a)には、記録媒体16に高解像度の画像を高速で形成し得る構造として、複数のノズル51が2次元配列されている場合を例に示したが、本発明における打滴ヘッドは、複数のノズル51が2次元配列された構造に特に限定されるものではなく、複数のノズル51が1次元配列された構造であってもよい。また、打滴ヘッドを構成する吐出素子として図4(b)に示した圧力室ユニット54は、一例であって、このような場合に特に限定されない。例えば、圧力室52よりも下(すなわち圧力室52よりも吐出面510側)に共通液室55を配置する代りに、圧力室52よりも上(すなわち吐出面510とは反対側)に共通液室55を配置してもよい。また、例えば、圧電体58aを用いる代りに、発熱体を用いて、液体吐出力を発生するようにしてもよい。
【0073】
なお、本発明においては、第1の液体の記録媒体上への付与手段として、ノズルからの第1の液体の吐出によるもののほかに、塗布等、他の手段を用いてもよい。
【0074】
前記塗布に用いる装置としては特に制限はなく、公知の塗布装置を目的に応じて適宜選択することができる。例えば、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロットコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファーロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター、押出コーター等が挙げられる。
【0075】
[液体供給系の説明]
図5は、画像形成装置10における液体供給系統の構成を示した概要図である。
【0076】
液体タンク60は、打滴ヘッド50に液体を供給するための基タンクである。液体タンク60と打滴ヘッド50を繋ぐ管路の途中には、液体タンク60から打滴ヘッド50へ液体を送液する液体供給ポンプ62が設けられている。
【0077】
また、画像形成装置10には、長期の吐出休止期間におけるノズル51のメニスカスの乾燥を防止又はメニスカス近傍の粘度の上昇を防止する手段としてのキャップ64と、吐出面50aを清掃する手段としてのクリーニングブレード66とが設けられている。
【0078】
これらのキャップ64及びクリーニングブレード66を含むメンテナンスユニットは、図示を省略した移動機構によって打滴ヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置から打滴ヘッド50の下方のメンテナンス位置に移動されるようになっている。
【0079】
また、キャップ64は、図示しない昇降機構によって打滴ヘッド50に対して相対的に昇降される。昇降機構は、キャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、打滴ヘッド50に密着させることにより、吐出面50aの少なくともノズル領域をキャップ64で覆うようになっている。
【0080】
また、好ましくは、キャップ64の内側が仕切壁によってノズル列に対応した複数のエリアに分割されており、これら仕切られた各エリアをセレクタ等によって選択的に吸引できる構成とする。
【0081】
クリーニングブレード66は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示を省略したクリーニングブレード用の移動機構により打滴ヘッド50の吐出面50aにおいて摺動可能である。吐出面50aに液滴又は異物が付着した場合、クリーニングブレード66を吐出面50aにおいて摺動させることで吐出面50aを拭き取り、吐出面50aを清浄するようになっている。
【0082】
吸引ポンプ67は、打滴ヘッド50の吐出面50aをキャップ64が覆った状態で、その打滴ヘッド50のノズル51から液体を吸引し、吸引した液体を回収タンク68へ送液する。
【0083】
このような吸引動作は、画像形成装置10に液体タンク60が装填されて液体タンク60から打滴ヘッド50へ液体を充填するとき(初期充填時)のほか、長時間停止して粘度が上昇した液体を除去するとき(長時間停止の使用開始時)にも行われる。
【0084】
ここで、ノズル51からの吐出について整理しておくと、第1に、紙などの記録媒体に画像形成するために記録媒体に向けて行う通常の吐出があり、第2に、キャップ64を液体受けとしてそのキャップ64に向けて行うパージ(空吐出ともいう)がある。
【0085】
また、打滴ヘッド50のノズル51や圧力室52内に気泡が混入したり、ノズル51内の粘度上昇があるレベルを超えたりすると、前述の空吐出では液体をノズル51から吐出できなくなるので、打滴ヘッド50の吐出面50aにキャップ64を当てて打滴ヘッド50の圧力室52内の気泡が混入した液体又は増粘した液体を吸引ポンプ67で吸引する動作が行われる。
【0086】
液体の供給、クリーニングに使用する部材は、使用する第1の液体やインクに接液しても侵されない材料が選ばれる。
【0087】
[制御系の説明]
図6は、画像形成装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。
【0088】
図6において、画像形成装置10は、主として、液体付与部12、画像検出部24、UV光源27、通信インターフェース110、システムコントローラ112、メモリ114、152、搬送用のモータ116、モータドライバ118、ヒータ122、ヒータドライバ124、媒体種別検出部132、インク種別検出部134、給液部142、給液ドライバ144、プリント制御部150、ヘッドドライバ154、および、光源ドライバ156を含んで構成されている。
【0089】
なお、液体付与部12、画像検出部24、および、UV光源27については、それぞれ図2に記載したものと同一であり既に説明したので、ここでは説明を省略する。
【0090】
通信インターフェース110は、ホストコンピュータ300から送信される画像データを受信する画像データ入力手段である。通信インターフェース110には、USB(Universal Serial Bus)、IEEE1394などの有線、又は、無線のインターフェースを適用することができる。この通信インターフェース110を介して画像形成装置10に入力された画像データは、画像データ記憶用の第1のメモリ114に一旦記憶される。
【0091】
システムコントローラ112は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、第1のメモリ114に予め記憶された所定のプログラムに従って画像形成装置10の全体を制御する主制御手段である。すなわち、システムコントローラ112は、通信インターフェース110、モータドライバ118、ヒータドライバ124、媒体種別検出部132、インク種別検出部134、プリント制御部150等の各部を制御する。
【0092】
搬送用のモータ116は、紙などの記録媒体を搬送するためのローラやベルト等に動力を与える。この搬送用モータ116によって、液体付与部12を構成する打滴ヘッド50と記録媒体とが相対的に移動する。モータドライバ118は、システムコントローラ112からの指示に従って搬送用のモータ116を駆動する回路である。
【0093】
ヒータ122は、図2の加熱ドラム30その他のヒータ122を駆動する回路である。ヒータドライバ124は、システムコントローラ112からの指示に従ってヒータ122を駆動する回路である。
【0094】
媒体種別検出部132は、記録媒体の種別を検出するものである。記録媒体の種別の検出態様には各種ある。例えば、図2の給紙部18にセンサを設けて検出する態様、ユーザの操作により入力されるようにした態様、ホストコンピュータ300から入力されるようにした態様、ホストコンピュータ300から入力された画像データ(例えば、解像度や色)またはその画像データの付加データを解析することにより自動で検出するようにした態様がある。
【0095】
インク種別検出部134は、インクの種別を検出するものである。インクの種別の検出態様には各種ある。例えば、図2の液体貯蔵/装填部14にセンサを設けて検出する態様、ユーザの操作により入力されるようにした態様、ホストコンピュータ300から入力されるようにした態様、ホストコンピュータ300から入力された画像データ(例えば、解像度や色)またはその画像データの付加データを解析することにより自動で検出するようにした態様がある。
【0096】
給液部142は、図5の液体タンク60から液体付与部12へインクを流動させる管路及び給液ポンプ62などによって構成されている。
【0097】
給液ドライバ144は、液体付与部12に液体が供給されるように、給液部142を構成する給液ポンプ62などを駆動する回路である。
【0098】
プリント制御部150は、画像形成装置10に入力される画像データに基づいて、液体付与部12を構成する各打滴ヘッド50が記録媒体に向けて吐出(打滴)を行うために必要なデータ(打滴データ)を生成する。すなわち、プリント制御部150は、システムコントローラ112の制御に従い、第1のメモリ114内の画像データから打滴データを生成するための各種の加工、補正などの画像処理を行う画像処理手段として機能し、生成した打滴データをヘッドドライバ154へ供給する。
【0099】
また、プリント制御部150は、媒体種別検出部132によって検出された媒体種別およびインク種別検出部134によって検出されたインク種別に基づいて、第1の液体によって記録媒体上に形成される液体膜の厚さを決定し、ヘッドドライバ154を用いて、第1の液体の打滴量を制御することにより、液体膜の厚さを切り換える。
【0100】
プリント制御部150には第2のメモリ152が付随しており、プリント制御部150における画像処理時に打滴データ等が第2のメモリ152に一時的に格納される。
【0101】
なお、図6において第2のメモリ152はプリント制御部150に付随する態様で示されているが、第1のメモリ114と兼用することも可能である。また、プリント制御部150とシステムコントローラ112とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0102】
ヘッドドライバ154は、プリント制御部150から与えられる打滴データ(実際には第2のメモリ152に記憶された打滴データである)に基づき、液体付与部12を構成する各打滴ヘッド50に対して吐出用駆動信号を出力する。このヘッドドライバ154から出力された吐出用駆動信号が各打滴ヘッド50(具体的には図4(b)に示すアクチュエータ58)に与えられることによって、打滴ヘッド50から記録媒体に向けて液体(液滴)が吐出される。
【0103】
光源ドライバ156は、プリント制御部150からの指示に従ってUV光源27を駆動する回路である。
【0104】
[液体に含有される物質]
液体付与部12によって記録媒体に付与される液体中の物質について詳述する。
【0105】
本実施形態に示す画像形成装置では、重合性化合物(輻射線硬化型の「モノマー」及び「プレポリマー」)、重合開始剤(「硬化開始剤」ともいう)、色材(「着色剤」ともいう)、拡散防止剤、及び、高沸点溶媒(具体的にはオイル)の中から選択された1又は複数種の物質を含有する液体が用いられる。
【0106】
(重合性化合物)
本発明における重合性化合物は、後述する重合開始剤などから発生するラジカルなどの開始種により重合もしくは架橋反応を生起し、硬化する機能を有するものである。
【0107】
重合性化合物としては、ラジカル重合反応、カチオン重合反応、二量化反応など公知の重合性化合物(以下、まとめて重合性材料という)を適用することができる。
【0108】
本発明に用いられる重合性化合物は、何らかのエネルギー付与により重合反応を生起し、硬化する化合物であれば特に制限はなく、モノマー、オリゴマー、ポリマーの種を問わず使用することができるが、特に、所望により添加される重合開始剤から発生する開始種により重合反応を生起する、カチオン重合性モノマー、ラジカル重合性モノマーとして知られる各種公知の重合性のモノマーが好ましい。
【0109】
重合性化合物は反応速度や、インク物性、硬化膜物性等を調整する目的で1種または複数を混合して用いることができる。また、重合性化合物は単官能化合物であっても、多官能化合物であってもよい。
【0110】
〜カチオン重合性モノマー〜
本発明において重合性化合物として用いられる光カチオン重合性モノマーとしては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892、同2001−40068、同2001−55507、同2001−310938、同2001−310937、同2001−220526などの各公報に記載されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
【0111】
エポキシ化合物としては、芳香族エポキシド、脂環式エポキシドなどが挙げられる。
【0112】
本発明に用いうる単官能エポキシ化合物の例としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げられる。
【0113】
また、多官能エポキシ化合物の例としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン、1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]へプタン等があげられる。
【0114】
これらのエポキシ化合物のなかでも、芳香族エポキシドおよび脂環式エポキシドが、硬化速度に優れるという観点から好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
【0115】
本発明に用いうる単官能ビニルエーテルの例としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフリフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
【0116】
また、多官能ビニルエーテルの例としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類等が挙げられる。
【0117】
ビニルエーテル化合物としては、ジ又はトリビニルエーテル化合物が、硬化性、被記録媒体との密着性、形成された画像の表面硬度などの観点から好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。
【0118】
本発明におけるオキセタン化合物は、オキセタン環を有する化合物を指し、特開2001−220526号、同2001−310937号、同2003−341217号の各公報に記載される如き、公知オキセタン化合物を任意に選択して使用できる。
【0119】
本発明のインク組成物に使用しうるオキセタン環を有する化合物としては、その構造内にオキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。このような化合物を使用することで、インク組成物の粘度をハンドリング性の良好な範囲に維持することが容易となり、また、硬化後のインクの被記録媒体との高い密着性を得ることができる。
【0120】
本発明で用いられる単官能オキセタンの例としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−(メタ)アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、4−メトキシ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル〕フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が挙げられる。
【0121】
多官能オキセタンの例としては、例えば、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、3,3’−(1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス−(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、ビス{[1−エチル(3−オキセタニエル)]メチル}エーテル、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールF(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等の多官能オキセタンが挙げられる。
【0122】
このようなオキセタン環を有する化合物については、前記特開2003−341217公報、段落番号〔0021〕乃至〔0084〕に詳細に記載され、ここに記載の化合物は本発明にも好適に使用しうる。
【0123】
本発明で使用するオキセタン化合物のなかでも、インク組成物の粘度と粘着性の観点から、オキセタン環を1〜2個有する化合物を使用することが好ましい。
【0124】
本発明のインク組成物には、これらの重合性化合物は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよいが、インク硬化時の収縮を効果的に抑制するといった観点からは、少なくとも1種のオキセタン化合物と、エポキシ化合物及びビニルエーテル化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物とを併用することが好ましい。
【0125】
〜ラジカル重合性モノマー〜
本発明においては、重合性化合物として光ラジカル開始剤から発生する開始種により重合反応を生じる各種公知のラジカル重合性モノマーを使用することも好ましい。
【0126】
ラジカル重合性モノマーとしては、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、芳香族ビニル類、等が挙げられる。なお、本明細書において「アクリレート」、「メタクリレート」の双方或いはいずれかを指す場合「(メタ)アクリレート」と、「アクリル」、「メタクリル」の双方或いはいずれかを指す場合「(メタ)アクリル」と、それぞれ記載することがある。
【0127】
本発明に用いられる(メタ)アクリレートとしては、例えば以下のものが挙げられる。
【0128】
単官能(メタ)アクリレートとしては、ヘキシル基(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、4−ブロモブチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトシキメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、アルコキシメチル(メタ)アクリレート、アルコキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2Hパーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、
2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシチルコハク酸、2−メタクリロイロキシヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、EO変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、PO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0129】
二官能の(メタ)アクリレートの具体例として、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0130】
三官能の(メタ)アクリレートの具体例として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート等を挙げることができる。
【0131】
四官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0132】
五官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
六官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプトラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0133】
本発明に用いられる(メタ)アクリルアミド類の例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリンが挙げられる。
【0134】
本発明に用いられる芳香族ビニル類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、3−プロピルスチレン、4−プロピルスチレン、3−ブチルスチレン、4−ブチルスチレン、3−ヘキシルスチレン、4−ヘキシルスチレン、3―オクチルスチレン、4−オクチルスチレン、3−(2−エチルヘキシル)スチレン、4−(2−エチルヘキシル)スチレン、アリルスチレン、イソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン、4−t−ブトキシカルボニルスチレン、4−メトキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン等が挙げられる。
【0135】
さらに本発明におけるラジカル重合性モノマーとしてはビニルエステル類[酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなど]、アリルエステル類[酢酸アリルなど]、ハロゲン含有単量体[塩化ビニリデン、塩化ビニルなど]、ビニルエーテル[メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、メトキシビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテルなど]、シアン化ビニル[(メタ)アクリロニトリルなど]、オレフィン類[エチレン、プロピレンなど]などが挙げられる。
【0136】
これらのうち、本発明におけるラジカル重合性モノマーとしては硬化速度の点から、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類が好ましく、特に硬化速度の点から4官能以上の(メタ)アクリレートが好ましい。さらに、第2の液体(インク)組成物の粘度の観点から上記多官能(メタ)アクリレート、と単官能もしくは2官能の(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミドを併用することが好ましい。
【0137】
重合性材料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0138】
重合性材料の、第1の液体又は必要に応じて第2の液体中における含有量としては、各液滴の全固形分(質量)に対して、50〜99.6質量%の範囲が好ましく、70〜99.0質量%の範囲がより好ましく、80〜99.0質量%の範囲がさらに好ましい。
【0139】
また、液滴中における含有量としては、各液滴の全質量に対して、20〜98質量%の範囲が好ましく、40〜95質量%の範囲がより好ましく、50〜90質量%の範囲が特に好ましい。
【0140】
−重合開始剤−
第1の液体A及び第2の液体Bは、重合開始剤の少なくとも一種を用いて好適に構成することができ、好ましくは少なくとも第2の液体Bに用いて構成される。この重合開始剤は、活性光、熱、あるいはその両方のエネルギーの付与によりラジカルなどの開始種を発生し、既述の重合性化合物の重合もしくは架橋反応を開始、促進させ、硬化する化合物である。
【0141】
この重合開始剤は、第1の液体A並びに第2の液体Bの保存安定性を確保する観点から、重合性材料とは別に含有させることが望ましく、本発明においては、第1の液体Aが前記重合性化合物を含有し、第2の液体Bやそれ以外の液体が重合開始剤を含有する形態が好ましい。
【0142】
重合性の態様において、ラジカル重合もしくはカチオン重合を起こさせる重合開始剤を含有することが好ましく、光重合開始剤を含有することが特に好ましい。
【0143】
重合開始剤は、光の作用、又は増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、化学変化を生じ、ラジカル、酸および塩基のうちの少なくともいずれか1種を生成する化合物であり、中でも、露光という簡便な手段で重合開始させることができるという観点から前記光ラジカル発生剤、又は光酸発生剤であることが好ましい。
【0144】
光重合開始剤は、照射される活性光線、例えば、400〜200nmの紫外線、遠紫外線、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線又はイオンビームなどに感度を有するものを適宜選択して使用することができる。
【0145】
具体的な光重合開始剤は当業者間で公知のものを制限なく使用でき、具体的には、例えば、Bruce M. Monroeら著、Chemical Revue,93,435(1993).や、R.S.Davidson著、Journal of Photochemistry and biology A :Chemistry,73.81(1993).や、J.P.Faussier“Photoinitiated Polymerization−Theory and Applications”:Rapra Review vol.9,Report,Rapra Technology(1998).や、M.Tsunooka et al.,Prog.Polym.Sci.,21,1(1996).に多く、記載されている。また、(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)に化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が多く、記載されている。さらには、F.D.Saeva,Topics in Current Chemistry,156,59(1990).、G.G.Maslak,Topics in Current Chemistry,168,1(1993).、H.B.Shuster et al,JACS,112,6329(1990).、I.D.F.Eaton et al,JACS,102,3298(1980).等に記載の、増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、酸化的もしくは還元的に結合解裂を生じる化合物群も知られる。
【0146】
好ましい光重合開始剤としては(a)芳香族ケトン類、(b)芳香族オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(e)ケトオキシムエステル化合物、(f)ボレート化合物、(g)アジニウム化合物、(h)メタロセン化合物、(i)活性エステル化合物、(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物、等が挙げられる。
【0147】
前記(a)芳香族ケトン類の好ましい例としては、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY」J.P.FOUASSIER J.F.RABEK (1993)、p77〜117記載のベンゾフェノン骨格或いはチオキサントン骨格を有する化合物等が挙げられる。より好ましい(a)芳香族ケトン類の例としては、特公昭47−6416号公報記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981号公報記載のベンゾインエーテル化合物、特公昭47−22326号公報記載のα−置換ベンゾイン化合物、特公昭47−23664号公報記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704号公報記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483号公報記載のジアルコキシベンゾフェノン、特公昭60−26403号公報、特開昭62−81345号公報記載のベンゾインエーテル類、特公平1−34242号公報、米国特許第4,318,791号、ヨーロッパ特許0284561A1号記載のα−アミノベンゾフェノン類、特開平2−211452号公報記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、特開昭61−194062号公報記載のチオ置換芳香族ケトン、特公平2−9597号公報記載のアシルホスフィンスルフィド、特公平2−9596号公報記載のアシルホスフィン、特公昭63−61950号公報記載のチオキサントン類、特公昭59−42864号公報記載のクマリン類等を挙げることができる。
【0148】
前記(b)芳香族オニウム塩化合物としては、周期律表の第V、VI及びVII族の元素、具体的にはN、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、Te、またはIの芳香族オニウム塩が含まれる。例えば、欧州特許104143号明細書、米国特許4837124号明細書、特開平2−150848号公報、特開平2−96514号公報に記載されるヨードニウム塩類、欧州特許370693号、同233567号、同297443号、同297442号、同279210号、および同422570号各明細書、米国特許3902144号、同4933377号、同4760013号、同4734444号、および同2833827号各明細書に記載されるスルホニウム塩類、ジアゾニウム塩類(置換基を有してもよいベンゼンジアゾニウム等)、ジアゾニウム塩樹脂類(ジアゾジフェニルアミンのホルムアルデヒド樹脂等)、N−アルコキシピリジニウム塩類等(例えば、米国特許4,743,528号明細書、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、および特公昭46−42363号各公報等に記載されるもので、具体的には1−メトキシ−4−フェニルピリジニウム テトラフルオロボレート等)、さらには特公昭52−147277号、同52−14278号、および同52−14279号各公報記載の化合物が好適に使用される。活性種としてラジカルや酸を生成する。
【0149】
前記(c)「有機過酸化物」としては、分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、その例としては、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系が好ましい。
【0150】
前記(d)ヘキサアリールビイミダゾールとしては、特公昭45−37377号公報、特公昭44−86516号公報記載のロフィンダイマー類、例えば2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0151】
前記(e)ケトオキシムエステルとしては、例えば、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0152】
前記(f)ボレート化合物の例としては、米国特許3,567,453号、同4,343,891号、ヨーロッパ特許109,772号、同109,773号に記載されている化合物が挙げられる。
【0153】
前記(g)アジニウム塩化合物の例としては、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特開昭63−143537号、並びに特公昭46−42363号の各公報に記載のN−O結合を有する化合物群を挙げることができる。
【0154】
前記(h)メタロセン化合物の例としては、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号、特開昭63−41484号、特開平2−249号、特開平2−4705号各公報記載のチタノセン化合物ならびに、特開平1−304453号、特開平1−152109号各公報記載の鉄−アレーン錯体を挙げることができる。
【0155】
前記チタノセン化合物の具体例としては、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(メチルスルホンアミド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチルビアロイル−アミノ)フェニル〕チタン等を挙げることができる。
【0156】
前記(i)活性エステル化合物の例としては、欧州特許0290750号、同046083号、同156153号、同271851号、および同0388343号各明細書、米国特許3901710号、および同4181531号各明細書、特開昭60−198538号、および特開昭53−133022号各公報に記載されるニトロベンズルエステル化合物、欧州特許0199672号、同84515号、同199672号、同044115号、および同0101122号各明細書、米国特許4618564号、同4371605号、および同4431774号各明細書、特開昭64−18143号、特開平2−245756号、および特開平4−365048号各公報記載のイミノスルホネート化合物、特公昭62−6223号、特公昭63−14340号、および特開昭59−174831号各公報に記載される化合物等が挙げられる。
【0157】
前記(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物の好ましい例としては、例えば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、英国特許1388492号明細書記載の化合物、特開昭53−133428号公報記載の化合物、独国特許3337024号明細書記載の化合物等を挙げることができる。
【0158】
また、F.C.Schaefer等によるJ.Org.Chem.29、1527(1964)記載の化合物、特開昭62−58241号公報記載の化合物、特開平5−281728号公報記載の化合物等を挙げることができる。ドイツ特許第2641100号に記載されているような化合物、ドイツ特許第3333450号に記載されている化合物、ドイツ特許第3021590号に記載の化合物群、あるいはドイツ特許第3021599号に記載の化合物群、等を挙げることができる。
【0159】
前記(a)〜(j)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下に示すものが挙げられる。
【0160】
【化1】
【0161】
【化2】
【0162】
【化3】
【0163】
【化4】
【0164】
【化5】
【0165】
【化6】
【0166】
【化7】
【0167】
【化8】
【0168】
なお、重合開始剤は感度に優れるものが好ましいが、例えば、80℃以下の温度で熱分解を起こすものを用いることは保存安定性の観点から好ましくなく、80℃までの温度では熱分解を起こさない重合開始剤を選択することが好ましい。
【0169】
重合開始剤は、1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、感度向上の目的で公知の増感剤を併用することもできる。
【0170】
重合開始剤の第2の液体B中における含有量としては、経時安定性と硬化性、硬化速度との観点から、第1の液体A、第2の液体Bを画像形成に必要な最大量を媒体上に打滴した場合、単位面積あたりに塗設された重合性材料に対して、0.5〜20質量%が好ましく、1〜15質量%が更に好ましく、3〜10質量%が特に好ましい。なお、含有量が多すぎる場合には、経時による析出や分離が生じたり、硬化後のインクの強度や擦り耐性などの性能が悪化したりすることがある。
【0171】
なお、重合開始剤を第2の液体Bに含有すると共に第1の液体Aに含有させてもよく、この場合には、第1の液体Aの保存安定性を所望の程度に保持できる範囲で適宜選択して含有することができる。
【0172】
また、重合開始剤は、第2の液体Bに含有せず既述の第1の液体Aに含有させるようにしてもよい。この場合は、第1の液滴中の含有量は、第1の液体A中の重合性もしくは架橋性化合物に対して、0.5〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましい。
【0173】
−−増感色素−−
本発明においては、光重合開始剤の感度を向上させる目的で、増感色素を添加してもよい。好ましい増感色素の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ350nmから450nm域に吸収波長を有するものを挙げることができる。
【0174】
多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)。
【0175】
より好ましい増感色素の例としては、下記一般式(IX)〜(XIII)で表される化合物が挙げられる。
【0176】
【化9】
【0177】
式(IX)中、A1は硫黄原子またはNR50を表し、R50はアルキル基またはアリール基を表し、L2は隣接するA1及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R51、R52はそれぞれ独立に水素原子または一価の非金属原子団を表し、R51、R52は互いに結合して、色素の酸性核を形成してもよい。Wは酸素原子または硫黄原子を表す。
【0178】
式(X)中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立にアリール基を表し、−L3−による結合を介して連結している。ここでL3は−O−または−S−を表す。また、Wは一般式(IX)に示したものと同義である。
【0179】
式(XI)中、A2は硫黄原子またはNR59を表し、L4は隣接するA2及び炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58はそれぞれ独立に一価の非金属原子団の基を表し、R59はアルキル基またはアリール基を表す。
【0180】
式(XII)中、A3、A4はそれぞれ独立に−S−または−NR62−または−NR63−を表し、R62、R63はそれぞれ独立に置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基を表し、L5、L6はそれぞれ独立に、隣接するA3、A4及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R60、R61はそれぞれ独立に水素原子または一価の非金属原子団であるか又は互いに結合して脂肪族性または芳香族性の環を形成することができる。
【0181】
式(XIII)中、R66は置換基を有してもよい芳香族環またはヘテロ環を表し、A5は酸素原子、硫黄原子または−NR67−を表す。R64、R65及びR67はそれぞれ独立に水素原子または一価の非金属原子団を表し、R67とR64、及びR65とR67はそれぞれ互いに脂肪族性または芳香族性の環を形成するため結合することができる。
【0182】
前記一般式(IX)〜(XIII)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下に示す例示化合物(A−1)〜(A−20)などが挙げられる。
【0183】
【化10】
【0184】
【化11】
【0185】
−−共増感剤−−
さらに、感度を一層向上させる、あるいは酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する公知の化合物を共増感剤として加えてもよい。
【0186】
共増感剤の例としては、アミン類、例えばM.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
【0187】
別の例としては、チオールおよびスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられ、具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が挙げられる。
【0188】
また別の例としては、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)、特開平6−250387号公報記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特開平8−65779号公報記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
【0189】
<着色剤(色材)>
着色剤には、例えば、顔料、染料がある。
【0190】
本発明に用いられる着色剤には特に制限はなく、インクの使用目的に適合する色相、色濃度を達成できるものであれば、公知の水溶性染料、油溶性染料及び顔料から適宜選択して用いることができる。なかでも、インクジェット記録用のインクを構成する液体は、非水溶性の液体であって水性溶媒を含有しない液体がインク打滴安定性及び速乾性の観点から好ましく、そのような観点からは、非水溶性の液体に均一に分散、溶解しやすい油溶性染料や顔料を用いることが好ましい。
【0191】
本発明に使用可能な油溶性染料には特に制限はなく、任意のものを使用することができる。着色剤として油溶性染料を用いる場合の染料の含有量は、固形分換算で0.05〜20質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜15質量%が更に好ましく、0.2〜6質量%が特に好ましい。
【0192】
着色剤として顔料を用いる態様もまた、複数種の液体の混合時に凝集が生じやすいという観点から好ましい。
【0193】
本発明において使用される顔料としては、有機顔料、無機顔料のいずれも使用できるが、黒色顔料としては、カーボンブラック顔料等が好ましく挙げられる。また、一般には黒色、及び、シアン、マゼンタ、イエローの3原色の顔料が用いられるが、その他の色相、例えば、赤、緑、青、茶、白等の色相を有する顔料や、金、銀色等の金属光沢顔料、無色又は淡色の体質顔料なども目的に応じて用いることができる。
【0194】
また、シリカ、アルミナ、樹脂などの粒子を芯材とし、表面に染料又は顔料を固着させた粒子、染料の不溶レーキ化物、着色エマルション、着色ラテックス等も顔料として使用することができる。
【0195】
さらに、樹脂被覆された顔料を使用することもできる。これは、マイクロカプセル顔料と呼ばれ、大日本インキ化学工業社製、東洋インキ社製などから市販品としても入手可能である。
【0196】
本発明における液体中に含まれる顔料粒子の体積平均粒子径は、光学濃度と保存安定性とのバランスといった観点からは、30〜250nmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは50〜200nmである。ここで、顔料粒子の体積平均粒子径は、例えば、LB−500(HORIBA(株)製)などの測定装置により測定することができる。
【0197】
着色剤として顔料を用いる場合の含有量は、光学濃度と噴射安定性の観点から、液体中において、固形分換算で0.1質量%〜20質量%の範囲であることが好ましく、1質量%〜10質量%の範囲であることがより好ましい。
【0198】
着色剤は1種のみならず、2種以上を混合して使用してもよい。また、液体毎に異なった着色剤を用いても、同じであってもよい。
【0199】
<拡散防止剤>
拡散防止剤とは、本発明において、記録媒体に付与された着色剤を有する液体の拡散や滲みを防止する物質を指す。
【0200】
上記拡散防止剤としては、アミノ基を有する重合体、オニウム基を有する重合体、含窒素ヘテロ環を有する重合体、及び金属化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する。
【0201】
上記重合体等は、単一種を使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。「複数種」とは、例えば、アミノ基を有する重合体には属するが異なる構造の重合体の場合や、アミノ基を有する重合体とオニウム基を有する重合体の関係のように異なる属種である場合を含む。また、1つの分子中に、アミノ基、オニウム基、含窒素ヘテロ環、及び金属化合物を組み合わせて併存させても良い。
【0202】
<高沸点有機溶媒(オイル)>
本発明中での、高沸点有機溶媒とは25℃での粘度が100mPa・s以下又は60℃での粘度が30mPa・s以下であり、且つ沸点が100℃よりも高い有機溶媒を示す。
【0203】
ここで、本発明における「粘度」は、東機産業(株)社製のRE80型粘度計を用いて求めた粘度をさす。RE80型粘度計は、E型に相当する円錐ロータ/平板方式粘度計であり、ロータコードNo.1番のロータを用い、10rpmの回転数にて測定を行う。但し、60mPa・sより高粘なものについては、必要により回転数を5rpm、2.5rpm、1rpm、0.5rpm等に変化させて測定を行う。
【0204】
また、本発明において「水の溶解度」とは、25℃における高沸点有機溶媒中の水の飽和濃度であり、25℃での高沸点有機溶媒100gに溶解できる水の質量(g)を意味する。
【0205】
上記高沸点有機溶媒の使用量としては、使用する着色剤に対し、塗設量換算で5〜2000質量%が好ましく、10〜1000質量%がより好ましい。
【0206】
<貯蔵安定剤>
本発明においては、複数種の液体の保存中における好ましくない重合を抑制する目的で、貯蔵安定剤を添加することができる。貯蔵安定剤は、重合性化合物と同じ液体に共存させて用いることが好ましく、また、該液体或いは共存する他の成分に可溶性のものを用いることが好ましい。
【0207】
貯蔵安定剤としては、4級アンモニウム塩、ヒドロキシアミン類、環状アミド類、ニトリル類、置換尿素類、複素環化合物、有機酸、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノエーテル類、有機ホスフィン類、銅化合物などが挙げられる。
【0208】
貯蔵安定剤の添加量は、用いる重合開始剤の活性や重合性化合物の重合性、貯蔵安定剤の種類に基づいて適宜調整するのが好ましいが、保存安定性と液体混合時のインクの硬化性とのバランスといった観点からは、液体中における固形分換算で0.005〜1質量%が好ましく、0.01〜0.5質量%がより好ましく、0.01〜0.2質量%がさらに好ましい。
【0209】
[輻射線]
本発明において重合性化合物の重合を進行させるための輻射線としては、紫外線、可視光線などを使用することができる。また、光以外の輻射線、例えば、α線、γ線、X線、電子線などでエネルギー付与を行うこともできるが、これらのうち、紫外線、可視光線を用いることがコスト及び安全性の点から好ましく、紫外線を用いることが更に好ましい。電子線による硬化の場合は、重合開始剤は不要である。重合反応に必要なエネルギー量は、重合開始剤の種類や含有量などによって異なるが、一般的には、1〜500mJ/cm2程度である。
【0210】
以下、実施例1〜4について、詳細に説明する。
【0211】
(実施例1)
<第1の液体>
実施例1では、第1の液体として、以下に示す第101液から第113液までの13種類の液体を調製した。各種類の液体は、それぞれ以下に示す化合物を常温で攪拌しながら混合し、5μmのメンブレンフィルタでろ過して得た。
<第101液>
フタル酸ジエチル 100質量%
<第102液>
フタル酸ジエチル 99.95質量%
スルホコハク酸ジ−2エチルヘキシルナトリウム 0.05質量%
<第103液>
フタル酸ジエチル 99.9質量%
スルホコハク酸ジ−2エチルヘキシルナトリウム 0.1質量%
<第104液>
フタル酸ジエチル 99.5質量%
スルホコハク酸ジ−2エチルヘキシルナトリウム 0.5質量%
<第105液>
フタル酸ジエチル 99.0質量%
スルホコハク酸ジ−2エチルヘキシルナトリウム 1.0質量%
<第106液>
フタル酸ジエチル 99.99質量%
メガファックF475(大日本インキ化学工業株式会社製) 0.01質量%
<第107液>
フタル酸ジエチル 99.95質量%
メガファックF475(大日本インキ化学工業株式会社製) 0.05質量%
<第108液>
フタル酸ジエチル 99.93質量%
メガファックF475(大日本インキ化学工業株式会社製) 0.07質量%
<第109液>
フタル酸ジエチル 99.9質量%
メガファックF475(大日本インキ化学工業株式会社製) 0.1質量%
<第110液>
フタル酸ジエチル 99.66質量%
メガファックF475(大日本インキ化学工業株式会社製) 0.34質量%
<第111液>
フタル酸ジエチル 98.3質量%
メガファックF475(大日本インキ化学工業株式会社製) 1.7質量%
<第112液>
フタル酸ジエチル 98.3質量%
2エチルヘキサン酸亜鉛 1.7質量%
<第113液>
フタル酸ジエチル 97.3質量%
2エチルヘキサン酸亜鉛 1.7質量%
スルホコハク酸ジ−2エチルヘキシルナトリウム 1.0質量%
第1の液体としての第101液から第113液までについて、測定温度25℃での表面寿命0.1秒における動的表面張力(「γ1(0.1秒)」と表記する)はKRUSS社製のバブルプレッシャー表面張力計(Bubble Pressure Tensiometer)BP2を用いて測定し、静的表面張力(「γ1(静的)」と表記する)は協和界面科学株式会社製の表面張力計CBVP-Zを用いて測定温度25℃で測定し、図7に示す値を得た。これらの測定と同様に、本明細書における動的表面張力および静的表面張力の測定は、以下同様に、測定温度25℃で測定する。
【0212】
<第2の液体(インク)>
実施例1では、第2の液体として、シアン顔料と重合性化合物と重合開始剤とを含む以下に示す第201液から204液まで4種類のインクを調製した。各種類のインクは、それぞれ以下に示す化合物を常温で攪拌混合しつつ溶解して得た。
<第201液>
重合性化合物:DPCA60(日本化薬株式会社製) 2.6質量%
色材:フタロシアニン 5.0質量%
分散剤:ソルパース28000(アビシア社製) 0.7質量%
重合開始剤:Irg1870(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)社製) 6.0質量%
重合性化合物:1,6ヘキサンジオールアクリレート(HDDA:ダイセル・ユーピーシー製) 残部
<第202液>
重合性化合物:DPCA60(日本化薬株式会社製) 2.6質量%
色材:フタロシアニン 5.0質量%
分散剤:ソルパース28000(アビシア社製) 0.7質量%
重合開始剤:Irg1870(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 6.0質量%
スルホコハク酸ジ−2エチルヘキシルナトリウム 5.0質量%
重合性化合物:1,6ヘキサンジオールアクリレート(HDDA:ダイセル・ユーピーシー製) 残部
<第203液>
重合性化合物:DPCA60(日本化薬株式会社製) 2.6質量%
色材:フタロシアニン 5.0質量%
分散剤:ソルパース28000(アビシア社製) 0.7質量%
重合開始剤:Irg1870(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 6.0質量%
ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート) 10.0質量%
重合性化合物:1,6ヘキサンジオールアクリレート(HDDA:ダイセル・ユーピーシー製) 残部
<第204液>
重合性化合物:DPCA60(日本化薬株式会社製) 2.6質量%
色材:フタロシアニン 5.0質量%
分散剤:ソルパース28000(アビシア社製) 0.7質量%
重合開始剤:Irg1870(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 6.0質量%
メガファックF475(大日本インキ化学工業株式会社製) 1.0質量%
重合性化合物:1,6ヘキサンジオールアクリレート(HDDA) 残部
第201液から第204までのインクについても、前述の第1の液体と同様に、表面寿命0.1秒における動的表面張力(「γ2(0.1秒)」と表記する)はKRUSS製のバブルプレッシャー表面張力計BP2を用いて測定し、静的表面張力(「γ2(静的)」と表記する)は協和界面科学株式会社製の表面張力計CBVP-Zを用いて測定し、図8に示す値を得た。
【0213】
以上説明した第101液から第113液までの第1の液体と、第201液から第204液までのインクとを用いて、以下のように実験を行った。
【0214】
まず、透明ポリエチレンテレフタレートシート(厚み60μm)上に、第1の液体を、バー塗布で付与する。ここで、塗布された第1の液体からなる液体膜の厚みを、1.4μm、1.5μm、1.6μm、2.0μm、5μmおよび10μmに、それぞれ設定した。次に、インクジェット打滴実験機(ピエゾ式、ドット密度:300dpi、吐出周波数:2KHz、液滴サイズ:10pL)を用いて、第1の液体からなる液体膜が存在する領域に、インクをシングルパス打滴して直線印字し、直ちにメタルハライドランプ(365nm波長の照度約500mJ/cm2)により紫外線を照射してインクを硬化させた。
【0215】
このようにして描画されたライン図形の形状を、光学顕微鏡を用いた観察により評価して、図9に示す結果を得た。
【0216】
図9において、「◎」は着弾干渉がなくドットが完全に独立しドットサイズも小さく良好であることを示しており、「○」は着弾干渉がなくドットが完全に独立していることを示しており、「△」は部分的に着弾干渉が生じてドット合一によるライン幅の変動やねじれがあることを示しており、「×」は着弾干渉が生じてドット合一に因る著しいライン幅の変動(具体的にはライン幅の拡大)やねじれがあることを示しており、「××」は全面的に着弾干渉が生じてドット合一に因る著しいライン幅の変動とねじれがあることを示している。
【0217】
記録媒体に塗布する第1の液体の液体膜の厚さが1.6μm以上であって、γ1(0.1秒)<γ2(0.1秒)であれば、着弾干渉を回避できるという結果が得られた。
【0218】
以上は第2の液体をインクとして液滴サイズ10plの打滴での実験評価の例を記載したが、液滴サイズを5plに変えて実験をしたところ、第1の液体の液体膜厚が1.0μmであっても、γ1(0.1秒)<γ2(0.1秒)の条件であれば、「○」レベルの評価を得ることを確認した。この場合、各ドットの拡がり率は、印字場所により変動が見られた。第1液の液体膜の厚みが場所により異なっているためである。
【0219】
また、凝集性について、以下のとおり実験し評価した。
【0220】
第1の液体(第101液から第113液までのいずれか)の100mLにインク(第201液から第204液までのいずれか)の1.0mLとを混合したものを、直ちにレーザー式粒度分布測定装置(日機装株式会社製のUPA−EX150)を用いて、顔料粒子サイズ分布について測定した。中心サイズが、元のフタロシアニン顔料の中心サイズよりも2.0倍以上になっている場合に凝集があると判断した。
【0221】
その結果を図10に示す。図10において、凝集がある場合を「×」で示している。
【0222】
図8に示すように、多価金属塩を添加した第112液および第113液とインクとを混合した場合に凝集があると判断した。
【0223】
また、凝集による色相の変化について、以下のとおり実験し評価した。
【0224】
前述のインクジェット打滴実験機を用いて、ベタパッチを印字して、このベタパッチの色相を、第1の液体を塗布した場合と第1の液体を塗布しない場合とで、目視にて比較した結果、第1の液体として、多価金属塩を添加した第112液と第113液を用いた場合のみ、シアン色に赤みが感じられように色相が変化し、また、明らかに彩度が低下していると判断できた。
【0225】
(実施例2)
実施例2では、第1の液体として、以下に示す第121液から第124液までの4種類の液体を調製した。これらの第121液から第124液までの液体は、紫外線の照射によって重合反応を行うように重合性化合物および重合開始剤を含有する。
<第121液>
重合性化合物:HDDA 95.0質量%
重合開始剤:Irg1870 5.0質量%
<第122液>
重合性化合物:HDDA 96.0質量%
重合開始剤:Irg1870 5.0質量%
スルホコハク酸ジ−2エチルヘキシルナトリウム 1.0質量%
<第123液>
重合性化合物:HDDA 96.0質量%
重合開始剤:Irg1870 5.0質量%
メガファックF475 1.0質量%
<第124液>
重合性化合物:HDDA 94.3質量%
重合開始剤:Irg1870 5.0質量%
メガファックF475 1.7質量%
以上の第121液から第124液までの第1の液体について、表面寿命0.1秒における動的表面張力γ1(0.1秒)はKRUSS社製のバブルプレッシャー表面張力計BP2を用いて測定し、静的表面張力γ1(静的)は協和界面科学株式会社製の表面張力計CBVP-Zを用いて測定し、図11に示す値を得た。
【0226】
第121液から第123液までの第1の液体と、実施例1に示した第201液から第204液までのインクとを用いて、実施例1と同様の実験方法で実験を行った。すなわち、バー塗布で第1の液体を付与し、第1の液体からなる液体膜が存在する領域にインクジェットプリンタを用いてインクを打滴して直線印字し、直ちに紫外線を照射して硬化させた。このようにして描画されたライン図形の形状を、光学顕微鏡を用いた観察により評価して、図12に示す結果を得た。なお、図12において、記号(◎、○、△、×、××)の示す意味は、図9における意味と同じであり、既に説明したので、その説明を省略する。
【0227】
次に、インクだけでなく第1の液体も打滴した場合について説明する。
【0228】
東芝テック株式会社製のCA-3型インクジェットヘッドを搭載した実験機(各色毎に2ヘッド、ドット密度:300dpi、打滴周波数:4.8kHz、メディア搬送速度:400mm/秒、液滴サイズ:6〜42pLまで7段階に可変)を用いて、PET(Polyethyleneterephtalate)シート上に、各種の文字をシングルパスで印字した。
【0229】
まず、第121液から第124液までの各第1の液体をそれぞれ打滴した。第1の液体の打滴領域は、インクの打滴領域よりも、3ドット分広くした。第1の液体の液滴のサイズは6pl、12pl、42plにそれぞれ固定して、第1の液体用のヘッドから打滴した。続けて、隣接するインク打滴用のヘッドから、第201液から第204液までの各インクをそれぞれ滴量12plで打滴した。引き続いてただちに、紫外線を照射し硬化させた。
【0230】
第1の液体の液滴のサイズと、記録媒体に打滴された第1の液体の液滴からなる液体膜の厚み(膜厚)との対応関係は、液滴6plが膜厚み0.8μmに対応し、液滴12plが膜厚1.7μmに対応し、液滴42plが膜厚5.6μmに対応する。
【0231】
得られた画像を光学顕微鏡で観察して、画像の品質を評価した。その結果を、図13に示す。なお、図13において、記号(◎、○、△、×、××)の示す意味は、図9における意味と同じであり、既に説明したので、その説明を省略する。
【0232】
記録媒体に打滴する第1の液体の液滴のサイズが12pl以上であって、γ1(0.1秒)<γ2(0.1秒)であれば、第1の液体を塗布にて付与した場合と同様に、着弾干渉を回避できるという結果が得られた。
【0233】
また、実施例2では、第1の液体の静的表面張力γ1(静的)が25mN/mよりも小さいときに、特に好ましい。これは、第1の液体を打滴により付与しているので、インクが打滴されるまでに、すみやかに均一に記録媒体上に拡がることが必要であり、そのためには、ノズル面上で、撥インク性が悪化しない範囲で静的表面張力が低いほうが好ましいためだと考えられる。
【0234】
(実施例3)
<第1の液体>
実施例3では、第1の液体として、以下に示す第131液から第133液までの3種類の液体を調製した。
【0235】
<第131液>(オキシラン化合物及びオキセタン化合物を含む第1の液体)
下記組成の成分を攪拌混合し溶解して、オキシラン化合物及びオキセタン化合物を含む第131液を調製した。第131液の静的表面張力γ1(静的)は23mN/m、動的表面張力γ1(0.1秒)は28mN/mであった。
【0236】
ビス{[1-エチル(3-オキセタニエル)]メチル} エーテル(OXT−221:東亜合成株式会社製) …4.18g
1−メチル−4−(2-メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]へプタン(Cel3000:ダイセル・サイテック株式会社製) …9.77g
9,10-ジブトキシアントラセン …0.75g
メガファックF475 …0.3g
<第132液>(重合性化合物としてオキシラン化合物のみ含む第1の液体)
下記組成の成分を攪拌混合し溶解して、オキシラン化合物を含む第132液を調製した。第132液の静的表面張力γ1(静的)は23mN/m、動的表面張力γ1(0.1秒)は28.5mN/mであった。
【0237】
1−メチル−4−(2-メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]へプタン(Cel3000:ダイセル・サイテック株式会社製) …13.95g
9,10-ジブトキシアントラセン …0.75g
メガファックF475 …0.3g
<第133液>(重合性化合物としてオキセタン化合物のみ含む第1の液体)
下記組成の成分を攪拌混合し溶解して、オキセタン化合物を含む第1の液体に相当する133液を調製した。この第133液の静的表面張力γ1は23mN/m、動的表面張力γ1(0.1秒)は28.2mN/mであった。
【0238】
ビス{[1-エチル(3-オキセタニエル)]メチル} エーテル(OXT−221) …13.95g
9,10-ジブトキシアントラセン …0.75g
メガファックF475 …0.3g
<第2の液体(インク)>
実施例3では、第2の液体として、以下に示す第231液から第233液までの3種類のインクを調製した。
<第231液>(重合開始材と重合性化合物としてオキシラン化合物及びオキセタン化合物を含むインク)
PB15:3(IRGALITE BLUE GLO:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)16g、ビス{[1-エチル(3-オキセタニエル)]メチル} エーテル(OXT−221;東亞合成株式会社製)48g、および、BYK−168(ビックケミー(BYK-Chemie)社製)16gを混合し、スターラーで1時間攪拌した。攪拌後の混合物を、アイガーミルにて分散し、顔料分散物(「P−1」と称する)を得た。
【0239】
ここで、分散条件は、直径0.65mmのジルコニアビーズを70%の充填率で充填し、周速を9m/sとし、分散時間を1時間とした。
【0240】
そして、下記組成の成分を、攪拌混合し溶解して、第231液を調製した。第231液の動的表面張力γ2(0.1秒)は32N/mであった。
【0241】
上記の顔料分散物「P−1」 …3.75g
ビス{[1-エチル(3-オキセタニエル)]メチル} エーテル …0.825g
1−メチル−4−(2-メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]へプタン(Cel3000:ダイセル・サイテック株式会社製) …8.925g
化12に示す重合開始剤(Irg250:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) …1.5g
【0242】
【化12】
【0243】
<第232液>(重合開始材と重合性化合物としてオキシラン化合物のみ含むインク)
PB15:3(IRGALITE BLUE GLO)16g、1−メチル−4−(2-メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]へプタン(Cel3000)48g、BYK−168(ビックケミー社製)16gを混合し、スターラーで1時間攪拌した。攪拌後の混合物をアイガーミルにて分散し、顔料分散物(「P−2」と称する)を得た。
【0244】
ここで、分散条件は、直径0.65mmのジルコニアビーズを70%の充填率で充填し、周速を9m/sとし、分散時間1時間とした。
【0245】
そして、下記組成の成分を、攪拌混合し溶解して、第232液を調製した。この第232液の動的表面張力γ(0.1秒)は32N/mであった。
【0246】
上記の顔料分散物 …3.75g
1−メチル−4−(2-メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]へプタン(Cel3000:ダイセル・サイテック株式会社製) …9.75g
前述の化1に示す重合開始剤(Irg250:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) …1.5g
<第233液>(重合開始材と重合性化合物としてオキセタン化合物のみ含むインク)
下記組成の成分を、攪拌混合し溶解して、オキセタン化合物と顔料分散物を含む第233液を調製した。第233液の動的表面張力γ2(0.1秒)は32N/mであった。
【0247】
前記の顔料分散物P−2 …3.75g
ビス{[1-エチル(3-オキセタニエル)]メチル} エーテル(OXT−221) …9.75g
前記の化1に示す重合開始剤(Irg250:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) …1.5g
以上の第1の液体(第131液から第133液まで)と第2の液体(第231液から第233液までのインク)との組み合わせについて、第1の液体、第2の液体とも21plで吐出し、これまでと同様の評価をおこなった。
【0248】
記録媒体上に形成されたライン図形の幅(ライン幅)は、いずれの組み合わせにおいても良好であった。
【0249】
また、硬化感度を評価するために、UV光源の365nmにおける照度を300mJ/cm2に下げてUV光を照射した場合に画像面(記録面)を指で触り、下記評価基準に従って評価した。
【0250】
<評価基準>
A:ベタツキはなかった。
B:若干ベタツキが認められた。
C:著しくベタツキが認められた。
【0251】
さらに、吐出不良の原因となる、ヘッド面への漏れUV光に起因するヘッド面固化を評価するために、UV光源を点燈して、シャッタを開けたままで24時間連続吐出して、第1の液体とインクのヘッドの合計正常吐出ノズルの割合の変化率(24時間吐出後の正常吐出ノズル数/実験開始時の正常吐出ノズル数)を測定した。
【0252】
以上の結果を図14に示す。
【0253】
図14において、先に記録媒体に付与する第1の液体は、重合性化合物としてオキシラン化合物のみを含む第132液を用い、後に記録媒体に付与する第2の液体(インク)は、重合開始剤を含むとともに、重合性化合物としてオキセタン化合物のみを含む第233液を用いた場合が、硬化感度およびヘッド面固化の観点から、最も好ましい。要するに、重合開始剤と反応開始の早い重合性化合物とを分けて記録媒体に付与することで、ヘッド面でのUV光の迷光に起因するヘッド面での硬化の問題を回避できることが判る。
【0254】
(実施例4)
実施例4では、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロ)、K(ブラック)の4色のインク(前述の第232液と、後述の第241液、第251液および第261液)を調製した。
【0255】
<第241液>(マゼンタ顔料を含むインク)
顔料分散物の調整時に、顔料をPB15:3(IRGALITE BLUE GLO:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)からPV19(Hostaparm RED E5B02:クラリアント(Clariant)社製)に等質量で置き換えた以外は、第232液と同様の調製を行って、マゼンタ顔料を含む第241液を調製した。第241液の動的表面張力γ2(0.1秒)は、32N/mであった。
【0256】
<第251液>(イエロ顔料を含むインク)
顔料分散物の調整時に、顔料をPB15:3(IRGALITE BLUE GLO:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)からPY74(IRGALITE YELLOW GO:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)に等質量で置き換えた以外は、第232液と同様の調製を行って、イエロ顔料を含む第251液を調製した。第251液の動的表面張力γ2(0.1秒)は、33N/mであった。
【0257】
<第261液>(カーボンブラック顔料を含むインク)
顔料の分散時に、顔料をPB15:3(IRGALITE BLUE GLO:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)からカーボンブラックMA7(三菱化学株式会社製)に等質量で置き換えた以外は、第232液と同様の調製を行って、カーボンブラック顔料を含む第261液を調製した。第261液の動的表面張力γ2(0.1秒)は、34N/mであった。
【0258】
以上のインク(第232液、第241液、第251液、第261液)を、ラインヘッドを有するプリンタで印字した場合についても、これまでと同様の効果が得られた。
【0259】
すなわち、重合開始剤と反応開始の早いモノマーを分けることで、ヘッド面でのUV光の迷光によるヘッド面での硬化の問題を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0260】
【図1】本発明の原理の説明に用いる模式図である。
【図2】本発明を適用した画像形成装置の一例の全体構成図である。
【図3】画像形成装置の液体付与部およびその周辺部分の一例を示す平面図である。
【図4】打滴ヘッドの全体構造の一例を示す平面透視図およびその断面図である。
【図5】画像形成装置の液体供給系の一例の要部構成図である。
【図6】画像形成装置の制御系の説明に用いるシステム構成図である。
【図7】実施例1の第1の液体の静的表面張力および動的表面張力を示す表である。
【図8】実施例1の第2の液体(インク)の静的表面張力および動的表面張力を示す表である。
【図9】実施例1の着弾干渉について示す表である。
【図10】実施例1の凝集性について示す表である。
【図11】実施例2の第1の液体の静的表面張力および動的表面張力を示す表である。
【図12】実施例2の着弾干渉について示す表である。
【図13】実施例2において第1の液体を打滴した場合の着弾干渉について示す表である。
【図14】実施例3について示す表である。
【図15】着弾干渉の説明に用いる模式図である。
【符号の説明】
【0261】
12…液体付与部、14…液体貯蔵/装填部、16…記録媒体、22…ベルト搬送部、27…UV光源、50…打滴ヘッド、50a…吐出面、51…ノズル、52…圧力室、55…共通液室、58…アクチュエータ、81…第1の液体の液体膜、81a…気液界面、82(82a、82b)…インク滴、132…媒体種別検出部、134…インク種別検出部、112…システムコントローラ、150…プリント制御部、154…ヘッドドライバ、156…光源ドライバ
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成方法および画像形成装置に関し、特に、少なくとも2種類の液体を所定の記録媒体に付与して記録媒体上に画像を形成する画像形成方法および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の記録媒体に向けてインクを打滴することにより記録媒体上に所望の画像を形成する画像形成装置としては、キャリッジに打滴ヘッドを搭載し、複数回の走査でノズル列分のラインの印字を完成させる(分割印刷する)ようにしたシャトルスキャン方式のものが一般によく用いられている。インクとして紫外線の照射により硬化するUVインクを用いる場合には、打滴ヘッドとともに紫外線照射装置もキャリッジに搭載し、各走査ごとに、紫外線を照射してインクを硬化させることができる。この方法は、隣接するドット同士が液滴のまま接することを避けることもできる。
【0003】
しかしながら、高速化のために、記録媒体上の全記録領域の幅(ページ幅)に対応したノズル列を有するフルライン型の打滴ヘッドを用い、1回の走査で1ページ分の印字を完成させることが求められている。シャトルスキャン方式のような主走査方向における打滴ヘッドの往復走査を行わず、いわゆるシングルパスでノズル列分のラインの印字が完成する。
【0004】
この場合は、分割印刷をおこなうシャトルスキャン式とは異なり、走査毎の硬化はできないため、隣接して打滴されるインク滴同士の合一を防がないと高画質を得られない。この状況は、分割印刷をしないで、一度の走査でノズル列分の印刷を完了するシャトルスキャン式プリンタでも同様である。
【0005】
記録媒体に着弾したインク滴同士の干渉(以下着弾干渉と呼ぶ)を回避するため、2液化して、記録媒体上で化学反応によりインク中の色材を凝集または不溶化させるようにしたものも知られている(特許文献1、2を参照)。
【0006】
また、特許文献3には、乾燥粘度が100mPa・s以下であり、10msでの動的表面張力が45mN/m以上であり、1000msでの動的表面張力が35mN/m以下であるインクが記載されている。
【特許文献1】特開2000−218772号公報
【特許文献2】特開2000−44855号公報
【特許文献3】特開2003−231838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図15の模式図に示すように、記録媒体16に複数のインク滴90a、90bを打滴したとき、互いに着弾位置が近傍となり、液滴同士が接する場合には、気液界面の表面積を小さくしようとして、すなわちインク滴の表面エネルギーを最小化しようとして、インク滴90a、90b同士が合一し、一体化したインク滴90cが形成されて本来の意図とは違う場所にインク滴が移動する現象、所謂、「着弾干渉」が生じる。この現象は、インクが浸透しない、または浸透が遅い記録メディアにおいて顕著におきる。
【0008】
このような着弾干渉を回避しようとして、特許文献1、2に記載のように、インク中の色材を凝集または不溶化させると、色の再現性を損うという問題がある。具体的には、凝集、不溶化にともなって色材粒子の大サイズ化が生じて色相の変化や彩度の低下が発生する。特に、鮮やかな画像が求められるパッケージラベル印刷には適さない。UVインクなどの非水系インクに対しては、反応速度が十分に速い凝集剤が存在しないという課題もある。
【0009】
動的表面張力について記載した技術文献としては、特許文献3があるが、2液化した場合のその2液間の動的表面張力の関係について、何ら記載がない。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、色再現性を損なうことなく着弾干渉を回避することができる画像形成方法および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、少なくとも2種類の液体を所定の記録媒体に付与して、該記録媒体に所望の画像を形成する画像形成方法において、前記記録媒体上に、色材を含まず測定温度25℃での表面寿命0.1秒における動的表面張力値がγ1(0.1秒)である第1の液体を付与した後に、該第1の液体が液体膜として存在する領域に、色材を含み測定温度25℃での表面寿命0.1秒における動的表面張力値が前記γ1(0.1秒)よりも大きなγ2(0.1秒)である第2の液体を打滴にて付与することを特徴とする画像形成方法を提供する。
【0012】
ここで、動的表面張力は、一般に、最大泡圧法(液体中に気泡を発生させ、液体からその気泡にかかる圧力に基づいて表面張力を測定する方法である)によって測定される。
【0013】
この発明によれば、第2の液体に含まれる色材を凝集または不溶化させることなく、以下のようにして、着弾干渉を回避し得る。
【0014】
まず、色材を含まない第1の液体が塗布または打滴により記録媒体上に付与されて、記録媒体上に目的の範囲内の厚さの液体膜が形成される。次に、気液界面が第1の液体と大気との境界面のみに限定された状態のまま、すなわち気液界面の表面積を変化させないで、色材を含む第2の液体の液滴(インク滴)を、第1の液体が液体膜として存在する領域に着弾させて、第1の液体からなる液体膜の内部に第2の液体の液滴を潜り込ませる。そうすると、気液界面の表面積が変化しないので、第2の液体の液滴同士が合一せず、第2の液体の液滴同士の着弾干渉が回避される。
【0015】
この着弾干渉の防止効果が持続している間(通常は数百ミリ秒から数秒の間である)に、紫外線や電子線などの輻射線を照射して少なくとも第2の液体の液滴を硬化させる構成とすることにより、第2の液体の液滴に含まれる色材を記録媒体にさらに確実に定着させることができる。
【0016】
記録媒体として、インクの浸透性がない記録媒体(例えば、OPP(Oriented Polypropylene Film)、CPP(Casted Polypropylene Film)、PE(Polyethylene)、PET(Polyethyleneterephthalate)その他の浸透性が低い軟包材、ラミネート紙、コート紙、アート紙など)を用いても、高画質で画像を形成できる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第1の液体からなる液体膜の平均厚みを1.6μm以上にて前記第1の液体を前記記録媒体に付与し、該第1の液体が液体膜として存在する領域に前記第2の液体を打滴することを特徴とする画像形成方法を提供する。
【0018】
この発明によれば、記録媒体上での第2の液体の液滴(インク滴)同士の合一を確実に防止できる。
【0019】
なお、第1の液体からなる液体膜の平均厚みの上限については、100μm以下、好ましくは20μm以下である。
【0020】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記第2の液体が輻射線硬化型の重合性化合物を含有し、前記第2の液体が前記記録媒体に付与された後、該記録媒体に輻射線を照射して前記第2の液体を硬化させることを特徴とする画像形成方法を提供する。
【0021】
この発明によれば、第2の液体の液滴の形状が保持されている間(通常は数百ミリ秒から数秒の間である)に、第2の液体の液滴を硬化させて、第2の液体の液滴に含まれる色材を記録媒体にさらに確実に定着させることができる。
【0022】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記第1の液体も輻射線硬化型の重合性化合物を含有することを特徴とする画像形成方法を提供する。
【0023】
この発明によれば、色材を含まない第1の液体も硬化するので、迅速かつ確実な定着が可能になる。
【0024】
請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の発明において、前記第1の液体および前記第2の液体のいずれか一方に重合開始剤を含むことを特徴とする画像形成方法を提供する。
【0025】
請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載の発明において、前記第1の液体は、輻射線硬化型の重合性化合物としてオキシラン化合物を含み、前記第2の液体は、重合開始剤を含むとともに、輻射線硬化型の重合性化合物としてオキセタン化合物を含むことを特徴とする画像形成方法を提供する。
【0026】
この発明によれば、重合開始剤と反応開始の早い重合性化合物(オキシラン化合物)とが分けて記録媒体に付与されるので、輻射線の迷光によるヘッドの吐出面での硬化による吐出不良の問題を回避できる。
【0027】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の発明において、前記第1の液体を打滴により前記記録媒体に付与することを特徴とする画像形成方法を提供する。
【0028】
この発明によれば、記録媒体上で色材を含む第2の液体の付与に必要な範囲のみに容易に第1の液体を付与できる。
【0029】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、前記第1の液体の静的表面張力値(測定温度25℃)が25mN/mよりも小さいことを特徴とする画像形成方法を提供する。
【0030】
この発明によれば、第2の液体が打滴されるまでに、第1の液体が速やか且つ均一に記録媒体上に拡がるようにできる。
【0031】
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の発明において、シングルパスで打滴を行うことを特徴とする画像形成方法を提供する。
【0032】
この発明によれば、高速で画像を形成できる。
【0033】
請求項10に記載の発明は、少なくとも2種類の液体を所定の記録媒体に付与して、該記録媒体に所望の画像を形成する画像形成装置において、前記記録媒体上に色材を含まない第1の液体を付与し、該第1の液体が液体膜として存在する領域に、色材を含む第2の液体を打滴にて付与する液体付与手段を備え、前記第1の液体の測定温度25℃での表面寿命0.1秒における動的表面張力値γ1(0.1秒)と前記第2の液体の測定温度25℃での表面寿命0.1秒における動的表面張力値γ2(0.1秒)との関係が、γ1(0.1秒)<γ2(0.1秒)であることを特徴とする画像形成装置を提供する。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、色再現性を損なうことなく着弾干渉を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、添付図面に従って、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
【0036】
[本発明の原理]
着弾干渉を回避しつつ記録媒体に画像を形成する本発明の原理について、図1を用いて説明する。
【0037】
まず、図1(a)に示すように、色材を含まない第1の液体を記録媒体16に付与し、記録媒体16の表面に第1の液体からなる液体膜81を形成する。このような第1の液体の付与態様は、打滴(「吐出」ともいう)および塗布のいずれの態様であってもよい。前者の打滴によれば、後述の色材を含む第2の液体(以下「インク」ともいう)の付与に必要な範囲のみに第1の液体からなる液体膜を容易に形成し得る点で、好ましい。
【0038】
付与した第1の液体の液体膜の厚みは、付与された第1の液体の体積を第1の液体が付与された部分の面積除した、平均厚みである。第1の液体が打滴にて付与される場合は、打滴された体積と第1の液体が打滴された部分の面積より求めることができる。第1の液体の液体膜の厚みは、均一で局所的な厚みの違いはないことが、望ましい。この観点から、打滴を行う液体吐出ヘッドから安定に吐出できる範囲で、第1の液体のメディア上で濡れ拡がり易い物性、つまり静的な表面張力が小さいことが望ましい。
【0039】
次に、図1(b)に示すように、第1の液体と大気との境界面81aのみに気液界面が限定された状態のまま、すなわち気液界面81aの表面積を変化させないで、記録媒体16上の第1の液体からなる液体膜81が存在する領域内に、色材を含む第2の液体(インク)の液滴82a(第1のインク滴)を打滴する。この打滴により、図1(c)に示すように、液体膜81の内部に第1のインク滴82aを潜り込ませる。
【0040】
さらに、図1(d)に示すように、記録媒体16上の第1の液体からなる液体膜81が存在する領域内であって、先に打滴した第1のインク滴82aの着弾位置の近傍に、第2のインク滴82bを打滴する。図1(e)に示すように、第2のインク滴82bも液体膜81の内部に潜り込ませる。
【0041】
このようにして、複数のインク滴82a、82bを、第1の液体からなる液体膜81の内部に潜り込ませることにより、複数の液滴82a、82bを互いに近傍となる位置に着弾させても、新たな気液界面が生じないことになる。詳細には、気体と液体の境界面は、第1の液体からなる液体膜81と大気との境界面81aに限定され、この気液界面81aの面積は変化しない。
【0042】
もしも、第1の液体からなる液体膜81が記録媒体16上に無い状態で複数のインク滴82a、82bを打滴した場合には、気液界面の表面積を小さくしようとして、すなわち表面エネルギーを最小化しようとして、複数のインク滴82a、82b同士が合一するという着弾干渉が発生するが、本発明では、このような着弾干渉が回避されることになる。
【0043】
従来は、着弾干渉を回避するためには、色材が凝集または不溶化する化学反応を起こさせる物質を第1の液体に含有させていたが、本発明では、このような物質を第1の液体に含有させることなく、着弾干渉を回避できる。
【0044】
以上説明したように着弾干渉を回避しつつ記録媒体に画像を形成するには、第1の液体の動的表面張力と第2の液体(インク)の動的表面張力との関係を適切に設定する必要がある。このような2液間の動的表面張力の関係については、後に詳細に説明する。
【0045】
また、図1(e)に示すように着弾干渉が回避されてインク滴82a、82bの形状が液体膜81の内部で保たれている間に(本実施形態の場合、数百ミリ秒から5秒間)、すなわちドット形状が崩れないうちに、インク滴82a、82bを硬化させて、インク滴82a、82b中の色材を記録媒体16に定着させる。少なくとも第2の液体(インク)は、輻射線硬化型の重合性化合物を含有し、紫外線などの輻射線が照射されると、いわゆる重合反応により硬化する。第1の液体にも、重合性化合物を含有させることも可能であり、この場合には、吐出した液体全体が硬化するので、密着性を高めることができ、好ましい。
【0046】
[画像形成装置の全体構成]
図2は、画像形成装置10の一例の全体構成図である。この画像形成装置10は、色材を含まず記録媒体16上に液体膜を形成するための第1の液体、および、色材を含む第2の液体(インク)の少なくとも2種類の液体を、所定の記録媒体16に付与して、所望の画像を記録媒体16に形成するものである。
【0047】
図2において、画像形成装置10は、第1の液体およびインクを打滴により記録媒体16に付与する液体付与部12を備えている。
【0048】
また、画像形成装置10は、液体付与部12に供給する第1の液体およびインクを貯蔵しておく液体貯蔵/装填部14と、紙などの記録媒体16を供給する給紙部18と、記録媒体16のカールを除去するデカール処理部20と、液体付与部12の吐出面に対向して配置され、記録媒体16の平面性を保持しながら記録媒体16を搬送するベルト搬送部22と、液体付与部12によるインクの打滴結果(インク滴の着弾状態である)としての画像を読み取る画像検出部24と、記録済みの記録媒体を外部に排出する排紙部26を備えている。
【0049】
図2においては、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)を給紙するものを示しているが、予めカットされているカット紙を給紙するものを用いてもよい。ロール紙を使用する装置構成の場合、裁断用のカッタ28が設けられる。ところで、給紙部18から送り出される記録媒体16は一般に巻き癖が残りカールする。このカールを除去するために、デカール処理部20において巻き癖方向と逆方向に加熱ドラム30で記録媒体16に熱を与える。デカール処理後、カット済の記録媒体16は、ベルト搬送部22へと送られる。
【0050】
ベルト搬送部22は、ローラ31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、液体付与部12の吐出面および画像検出部24のセンサ面に対向する部分が平面(フラット面)をなすように構成されている。ベルト33は、記録媒体16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(図示省略)が形成されている。ローラ31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において液体付与部12の吐出面及び画像検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ34が設けられており、この吸着チャンバ34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト上の記録媒体16が吸着保持される。ベルト33が巻かれているローラ31、32の少なくとも一方にモータ(図示省略)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図2において、反時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録媒体16は、図2の右から左へと搬送される。なお、縁無しプリント等を形成するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(記録領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。
【0051】
画像形成装置10の液体付与部12およびその周辺部分を、図3の平面図に示す。
【0052】
図3において、液体付与部12は、シングルパスで記録媒体16に第1の液体を打滴する第1の液体用の打滴ヘッド12P、および、シングルパスで記録媒体16にインクを打滴するインク用の打滴ヘッド12Y、12C、12M、12Kによって構成されている。詳細には、記録媒体16の記録可能幅の全幅に対応した長さのライン型ヘッドを媒体搬送方向(図3中に矢印Sで示す副走査方向である)と直交する方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている。
【0053】
本例の各打滴ヘッド12P、12Y、12C、12M、12Kは、本画像形成装置10が対象とする最大サイズの記録媒体16の少なくとも一辺を超える長さにわたって複数のノズル(液体吐出口)が配列されている。
【0054】
また、媒体搬送方向Sに沿って、上流側(図3の右側)から、第1の液体(P)、イエロ色のインク(Y)、シアン色のインク(C)、マゼンタ色のインク(M)、黒色のインク(K)の順に、各液体に対応した打滴ヘッド12P、12Y、12C、12M、12Kが配置されており、記録媒体16上にカラーの画像を形成し得る。
【0055】
具体的には、まず、第1の液体用の打滴ヘッド12Pから記録媒体16に向けて第1の液体が打滴されることによって記録媒体16上に第1の液体が付与され、この第1の液体が液体膜として存在する領域に、次に、インク用の打滴ヘッド12Y、12M、12C、12Kから記録媒体16に向けて第2の液体(インク)が打滴される。ここで、インク滴を、記録媒体16上の第1の液体からなる液体膜の内部に潜り込ませることにより、新たな気液界面を生じさせず、着弾干渉が回避される。
【0056】
また、フルライン型の打滴ヘッドからなる液体付与部12によれば、媒体搬送方向(副走査方向)について記録媒体16と液体付与部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで、記録媒体16の全面に画像を記録することができる。これにより、媒体搬送方向と直交する方向(主走査方向)に打滴ヘッドが往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速プリントが可能であり、生産性を向上させることができる。
【0057】
なお、主走査方向及び副走査方向とは、次に言うような意味で用いている。すなわち、記録媒体の全幅に対応したノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時、(1)全ノズルを同時に駆動するか、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動するか、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動するか、等のいずれかのノズルの駆動が行われ、記録媒体の幅方向(記録媒体の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)のプリントをするようなノズルの駆動を主走査と定義する。そして、この主走査によって記録される1ライン(帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向という。
【0058】
一方、上述したフルラインヘッドと記録媒体とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットからなるライン)のプリントを繰り返し行うことを副走査と定義する。そして、副走査を行う方向を副走査方向という。結局、記録媒体の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。
【0059】
なお、本実施形態では、YMCKの標準色(4色)の構成を例示したが、インクの色数や色の組み合わせについては本実施形態に示す例には限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクや、背景色用インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ等のライト系インクを吐出する打滴ヘッドや、白色インクを吐出する打滴ヘッドを追加する構成も可能である。
【0060】
UV光源27は、記録媒体16に向けて紫外線を照射するものである。紫外線ランプとして、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、紫外LED、LDが使用できる。ラジカル重合性モノマーを使用する場合には、硬化プロセス部の酸素を遮断するため、窒素ブランケットを装備することもできる。
【0061】
図2に示す液体貯蔵/装填部14は、第1の液体を貯蔵する第1の液体用のタンク、および、YMCK各色別にインクを貯蔵するインク用のタンクを有し、図示を省略した管路を介して各打滴ヘッド12P、12Y、12C、12M、12Kとそれぞれ連通している。
【0062】
画像検出部24は、液体付与部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ等)を含み、該イメージセンサによって読み取った画像からノズルの目詰まりその他の吐出異常をチェックする手段として機能する。
【0063】
画像が形成されたプリント物としての記録媒体16は、排紙部26から排出される。この画像形成装置10では、本画像のプリント物と、テストプリントのプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り換える選別手段(図示省略)が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテストプリントとを同時に並列に形成する場合は、カッタ(第2のカッタ)48によってテストプリントの部分を切り離す。カッタ48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテストプリントを行った場合に、本画像とテストプリント部を切断するものである。また、図示を省略したが、本画像の排出部26Aには、オーダ別に画像を集積するソータが設けられている。
【0064】
[打滴ヘッドの構造]
図4(a)は、図3に示した打滴ヘッド12P、12Y、12C、12M、12Kを代表する打滴ヘッドに符号50を付して、その打滴ヘッド50の基本的な全体構造の一例を示す平面透視図である。
【0065】
図4(a)に一例として示す打滴ヘッド50は、いわゆるフルライン型のヘッドであり、記録媒体16の搬送方向(図中に矢印Sで示す副走査方向)と直交する方向(図中に矢印Mで示す主走査方向)において、記録媒体16の幅Wmに対応する長さにわたり、記録媒体16に向けて液体を吐出する多数のノズル51(液体吐出口)を2次元的に配列させた構造を有している。
【0066】
打滴ヘッド50は、ノズル51、ノズル51に連通する圧力室52、および、液体供給口53を含んでなる複数の圧力室ユニット54が、主走査方向Mおよび主走査方向Mに対して所定の鋭角θ(0度<θ<90度)をなす斜め方向の2方向に沿って配列されている。なお、図4(a)では、図示の便宜上、一部の圧力室ユニット54のみ描いている。
【0067】
ノズル51は、具体的には、主走査方向Mに対して所定の鋭角θをなす斜め方向において、一定のピッチdで配列されており、これにより、主走査方向Mに沿った一直線上に「d×cosθ」の間隔で配列されたものと等価に取り扱うことができる。
【0068】
打滴ヘッド50を構成する一吐出素子としての前述の圧力室ユニット54について、図4(a)中のb−b線に沿った断面図を図4(b)に示す。
【0069】
図4(b)に示すように、各圧力室52は液体供給口53を介して共通液室55と連通している。共通液室55は図示を省略した液体供給源たるタンクと連通しており、そのタンクから供給される液体が共通液室55を介して各圧力室52に分配供給される。
【0070】
圧力室52の天面を構成する振動板56の上には圧電体58aが配置され、この圧電体58aの上には個別電極57が配置されている。振動板56は、接地されており、共通電極として機能する。これらの振動板56、個別電極57および圧電体58aによって、液体吐出力を発生する手段としての圧電アクチュエータ58が構成されている。
【0071】
圧電アクチュエータ58の個別電極57に所定の駆動電圧が印加されると、圧電体58aが変形して圧力室52の容積が変化し、これに伴う圧力室52内の圧力の変化によって、ノズル51から液体が吐出される。液体吐出後、圧力室52の容積が元に戻ると共通液室55から液体供給口53を通って新しい液体が圧力室52に供給される。
【0072】
なお、図4(a)には、記録媒体16に高解像度の画像を高速で形成し得る構造として、複数のノズル51が2次元配列されている場合を例に示したが、本発明における打滴ヘッドは、複数のノズル51が2次元配列された構造に特に限定されるものではなく、複数のノズル51が1次元配列された構造であってもよい。また、打滴ヘッドを構成する吐出素子として図4(b)に示した圧力室ユニット54は、一例であって、このような場合に特に限定されない。例えば、圧力室52よりも下(すなわち圧力室52よりも吐出面510側)に共通液室55を配置する代りに、圧力室52よりも上(すなわち吐出面510とは反対側)に共通液室55を配置してもよい。また、例えば、圧電体58aを用いる代りに、発熱体を用いて、液体吐出力を発生するようにしてもよい。
【0073】
なお、本発明においては、第1の液体の記録媒体上への付与手段として、ノズルからの第1の液体の吐出によるもののほかに、塗布等、他の手段を用いてもよい。
【0074】
前記塗布に用いる装置としては特に制限はなく、公知の塗布装置を目的に応じて適宜選択することができる。例えば、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロットコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファーロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター、押出コーター等が挙げられる。
【0075】
[液体供給系の説明]
図5は、画像形成装置10における液体供給系統の構成を示した概要図である。
【0076】
液体タンク60は、打滴ヘッド50に液体を供給するための基タンクである。液体タンク60と打滴ヘッド50を繋ぐ管路の途中には、液体タンク60から打滴ヘッド50へ液体を送液する液体供給ポンプ62が設けられている。
【0077】
また、画像形成装置10には、長期の吐出休止期間におけるノズル51のメニスカスの乾燥を防止又はメニスカス近傍の粘度の上昇を防止する手段としてのキャップ64と、吐出面50aを清掃する手段としてのクリーニングブレード66とが設けられている。
【0078】
これらのキャップ64及びクリーニングブレード66を含むメンテナンスユニットは、図示を省略した移動機構によって打滴ヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置から打滴ヘッド50の下方のメンテナンス位置に移動されるようになっている。
【0079】
また、キャップ64は、図示しない昇降機構によって打滴ヘッド50に対して相対的に昇降される。昇降機構は、キャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、打滴ヘッド50に密着させることにより、吐出面50aの少なくともノズル領域をキャップ64で覆うようになっている。
【0080】
また、好ましくは、キャップ64の内側が仕切壁によってノズル列に対応した複数のエリアに分割されており、これら仕切られた各エリアをセレクタ等によって選択的に吸引できる構成とする。
【0081】
クリーニングブレード66は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示を省略したクリーニングブレード用の移動機構により打滴ヘッド50の吐出面50aにおいて摺動可能である。吐出面50aに液滴又は異物が付着した場合、クリーニングブレード66を吐出面50aにおいて摺動させることで吐出面50aを拭き取り、吐出面50aを清浄するようになっている。
【0082】
吸引ポンプ67は、打滴ヘッド50の吐出面50aをキャップ64が覆った状態で、その打滴ヘッド50のノズル51から液体を吸引し、吸引した液体を回収タンク68へ送液する。
【0083】
このような吸引動作は、画像形成装置10に液体タンク60が装填されて液体タンク60から打滴ヘッド50へ液体を充填するとき(初期充填時)のほか、長時間停止して粘度が上昇した液体を除去するとき(長時間停止の使用開始時)にも行われる。
【0084】
ここで、ノズル51からの吐出について整理しておくと、第1に、紙などの記録媒体に画像形成するために記録媒体に向けて行う通常の吐出があり、第2に、キャップ64を液体受けとしてそのキャップ64に向けて行うパージ(空吐出ともいう)がある。
【0085】
また、打滴ヘッド50のノズル51や圧力室52内に気泡が混入したり、ノズル51内の粘度上昇があるレベルを超えたりすると、前述の空吐出では液体をノズル51から吐出できなくなるので、打滴ヘッド50の吐出面50aにキャップ64を当てて打滴ヘッド50の圧力室52内の気泡が混入した液体又は増粘した液体を吸引ポンプ67で吸引する動作が行われる。
【0086】
液体の供給、クリーニングに使用する部材は、使用する第1の液体やインクに接液しても侵されない材料が選ばれる。
【0087】
[制御系の説明]
図6は、画像形成装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。
【0088】
図6において、画像形成装置10は、主として、液体付与部12、画像検出部24、UV光源27、通信インターフェース110、システムコントローラ112、メモリ114、152、搬送用のモータ116、モータドライバ118、ヒータ122、ヒータドライバ124、媒体種別検出部132、インク種別検出部134、給液部142、給液ドライバ144、プリント制御部150、ヘッドドライバ154、および、光源ドライバ156を含んで構成されている。
【0089】
なお、液体付与部12、画像検出部24、および、UV光源27については、それぞれ図2に記載したものと同一であり既に説明したので、ここでは説明を省略する。
【0090】
通信インターフェース110は、ホストコンピュータ300から送信される画像データを受信する画像データ入力手段である。通信インターフェース110には、USB(Universal Serial Bus)、IEEE1394などの有線、又は、無線のインターフェースを適用することができる。この通信インターフェース110を介して画像形成装置10に入力された画像データは、画像データ記憶用の第1のメモリ114に一旦記憶される。
【0091】
システムコントローラ112は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、第1のメモリ114に予め記憶された所定のプログラムに従って画像形成装置10の全体を制御する主制御手段である。すなわち、システムコントローラ112は、通信インターフェース110、モータドライバ118、ヒータドライバ124、媒体種別検出部132、インク種別検出部134、プリント制御部150等の各部を制御する。
【0092】
搬送用のモータ116は、紙などの記録媒体を搬送するためのローラやベルト等に動力を与える。この搬送用モータ116によって、液体付与部12を構成する打滴ヘッド50と記録媒体とが相対的に移動する。モータドライバ118は、システムコントローラ112からの指示に従って搬送用のモータ116を駆動する回路である。
【0093】
ヒータ122は、図2の加熱ドラム30その他のヒータ122を駆動する回路である。ヒータドライバ124は、システムコントローラ112からの指示に従ってヒータ122を駆動する回路である。
【0094】
媒体種別検出部132は、記録媒体の種別を検出するものである。記録媒体の種別の検出態様には各種ある。例えば、図2の給紙部18にセンサを設けて検出する態様、ユーザの操作により入力されるようにした態様、ホストコンピュータ300から入力されるようにした態様、ホストコンピュータ300から入力された画像データ(例えば、解像度や色)またはその画像データの付加データを解析することにより自動で検出するようにした態様がある。
【0095】
インク種別検出部134は、インクの種別を検出するものである。インクの種別の検出態様には各種ある。例えば、図2の液体貯蔵/装填部14にセンサを設けて検出する態様、ユーザの操作により入力されるようにした態様、ホストコンピュータ300から入力されるようにした態様、ホストコンピュータ300から入力された画像データ(例えば、解像度や色)またはその画像データの付加データを解析することにより自動で検出するようにした態様がある。
【0096】
給液部142は、図5の液体タンク60から液体付与部12へインクを流動させる管路及び給液ポンプ62などによって構成されている。
【0097】
給液ドライバ144は、液体付与部12に液体が供給されるように、給液部142を構成する給液ポンプ62などを駆動する回路である。
【0098】
プリント制御部150は、画像形成装置10に入力される画像データに基づいて、液体付与部12を構成する各打滴ヘッド50が記録媒体に向けて吐出(打滴)を行うために必要なデータ(打滴データ)を生成する。すなわち、プリント制御部150は、システムコントローラ112の制御に従い、第1のメモリ114内の画像データから打滴データを生成するための各種の加工、補正などの画像処理を行う画像処理手段として機能し、生成した打滴データをヘッドドライバ154へ供給する。
【0099】
また、プリント制御部150は、媒体種別検出部132によって検出された媒体種別およびインク種別検出部134によって検出されたインク種別に基づいて、第1の液体によって記録媒体上に形成される液体膜の厚さを決定し、ヘッドドライバ154を用いて、第1の液体の打滴量を制御することにより、液体膜の厚さを切り換える。
【0100】
プリント制御部150には第2のメモリ152が付随しており、プリント制御部150における画像処理時に打滴データ等が第2のメモリ152に一時的に格納される。
【0101】
なお、図6において第2のメモリ152はプリント制御部150に付随する態様で示されているが、第1のメモリ114と兼用することも可能である。また、プリント制御部150とシステムコントローラ112とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0102】
ヘッドドライバ154は、プリント制御部150から与えられる打滴データ(実際には第2のメモリ152に記憶された打滴データである)に基づき、液体付与部12を構成する各打滴ヘッド50に対して吐出用駆動信号を出力する。このヘッドドライバ154から出力された吐出用駆動信号が各打滴ヘッド50(具体的には図4(b)に示すアクチュエータ58)に与えられることによって、打滴ヘッド50から記録媒体に向けて液体(液滴)が吐出される。
【0103】
光源ドライバ156は、プリント制御部150からの指示に従ってUV光源27を駆動する回路である。
【0104】
[液体に含有される物質]
液体付与部12によって記録媒体に付与される液体中の物質について詳述する。
【0105】
本実施形態に示す画像形成装置では、重合性化合物(輻射線硬化型の「モノマー」及び「プレポリマー」)、重合開始剤(「硬化開始剤」ともいう)、色材(「着色剤」ともいう)、拡散防止剤、及び、高沸点溶媒(具体的にはオイル)の中から選択された1又は複数種の物質を含有する液体が用いられる。
【0106】
(重合性化合物)
本発明における重合性化合物は、後述する重合開始剤などから発生するラジカルなどの開始種により重合もしくは架橋反応を生起し、硬化する機能を有するものである。
【0107】
重合性化合物としては、ラジカル重合反応、カチオン重合反応、二量化反応など公知の重合性化合物(以下、まとめて重合性材料という)を適用することができる。
【0108】
本発明に用いられる重合性化合物は、何らかのエネルギー付与により重合反応を生起し、硬化する化合物であれば特に制限はなく、モノマー、オリゴマー、ポリマーの種を問わず使用することができるが、特に、所望により添加される重合開始剤から発生する開始種により重合反応を生起する、カチオン重合性モノマー、ラジカル重合性モノマーとして知られる各種公知の重合性のモノマーが好ましい。
【0109】
重合性化合物は反応速度や、インク物性、硬化膜物性等を調整する目的で1種または複数を混合して用いることができる。また、重合性化合物は単官能化合物であっても、多官能化合物であってもよい。
【0110】
〜カチオン重合性モノマー〜
本発明において重合性化合物として用いられる光カチオン重合性モノマーとしては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892、同2001−40068、同2001−55507、同2001−310938、同2001−310937、同2001−220526などの各公報に記載されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
【0111】
エポキシ化合物としては、芳香族エポキシド、脂環式エポキシドなどが挙げられる。
【0112】
本発明に用いうる単官能エポキシ化合物の例としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げられる。
【0113】
また、多官能エポキシ化合物の例としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン、1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]へプタン等があげられる。
【0114】
これらのエポキシ化合物のなかでも、芳香族エポキシドおよび脂環式エポキシドが、硬化速度に優れるという観点から好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
【0115】
本発明に用いうる単官能ビニルエーテルの例としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフリフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
【0116】
また、多官能ビニルエーテルの例としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類等が挙げられる。
【0117】
ビニルエーテル化合物としては、ジ又はトリビニルエーテル化合物が、硬化性、被記録媒体との密着性、形成された画像の表面硬度などの観点から好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。
【0118】
本発明におけるオキセタン化合物は、オキセタン環を有する化合物を指し、特開2001−220526号、同2001−310937号、同2003−341217号の各公報に記載される如き、公知オキセタン化合物を任意に選択して使用できる。
【0119】
本発明のインク組成物に使用しうるオキセタン環を有する化合物としては、その構造内にオキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。このような化合物を使用することで、インク組成物の粘度をハンドリング性の良好な範囲に維持することが容易となり、また、硬化後のインクの被記録媒体との高い密着性を得ることができる。
【0120】
本発明で用いられる単官能オキセタンの例としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−(メタ)アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、4−メトキシ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル〕フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が挙げられる。
【0121】
多官能オキセタンの例としては、例えば、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、3,3’−(1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス−(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、ビス{[1−エチル(3−オキセタニエル)]メチル}エーテル、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールF(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等の多官能オキセタンが挙げられる。
【0122】
このようなオキセタン環を有する化合物については、前記特開2003−341217公報、段落番号〔0021〕乃至〔0084〕に詳細に記載され、ここに記載の化合物は本発明にも好適に使用しうる。
【0123】
本発明で使用するオキセタン化合物のなかでも、インク組成物の粘度と粘着性の観点から、オキセタン環を1〜2個有する化合物を使用することが好ましい。
【0124】
本発明のインク組成物には、これらの重合性化合物は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよいが、インク硬化時の収縮を効果的に抑制するといった観点からは、少なくとも1種のオキセタン化合物と、エポキシ化合物及びビニルエーテル化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物とを併用することが好ましい。
【0125】
〜ラジカル重合性モノマー〜
本発明においては、重合性化合物として光ラジカル開始剤から発生する開始種により重合反応を生じる各種公知のラジカル重合性モノマーを使用することも好ましい。
【0126】
ラジカル重合性モノマーとしては、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、芳香族ビニル類、等が挙げられる。なお、本明細書において「アクリレート」、「メタクリレート」の双方或いはいずれかを指す場合「(メタ)アクリレート」と、「アクリル」、「メタクリル」の双方或いはいずれかを指す場合「(メタ)アクリル」と、それぞれ記載することがある。
【0127】
本発明に用いられる(メタ)アクリレートとしては、例えば以下のものが挙げられる。
【0128】
単官能(メタ)アクリレートとしては、ヘキシル基(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、4−ブロモブチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトシキメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、アルコキシメチル(メタ)アクリレート、アルコキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2Hパーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、
2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシチルコハク酸、2−メタクリロイロキシヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、EO変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、PO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0129】
二官能の(メタ)アクリレートの具体例として、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0130】
三官能の(メタ)アクリレートの具体例として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート等を挙げることができる。
【0131】
四官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0132】
五官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
六官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプトラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0133】
本発明に用いられる(メタ)アクリルアミド類の例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリンが挙げられる。
【0134】
本発明に用いられる芳香族ビニル類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、3−プロピルスチレン、4−プロピルスチレン、3−ブチルスチレン、4−ブチルスチレン、3−ヘキシルスチレン、4−ヘキシルスチレン、3―オクチルスチレン、4−オクチルスチレン、3−(2−エチルヘキシル)スチレン、4−(2−エチルヘキシル)スチレン、アリルスチレン、イソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン、4−t−ブトキシカルボニルスチレン、4−メトキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン等が挙げられる。
【0135】
さらに本発明におけるラジカル重合性モノマーとしてはビニルエステル類[酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなど]、アリルエステル類[酢酸アリルなど]、ハロゲン含有単量体[塩化ビニリデン、塩化ビニルなど]、ビニルエーテル[メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、メトキシビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテルなど]、シアン化ビニル[(メタ)アクリロニトリルなど]、オレフィン類[エチレン、プロピレンなど]などが挙げられる。
【0136】
これらのうち、本発明におけるラジカル重合性モノマーとしては硬化速度の点から、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類が好ましく、特に硬化速度の点から4官能以上の(メタ)アクリレートが好ましい。さらに、第2の液体(インク)組成物の粘度の観点から上記多官能(メタ)アクリレート、と単官能もしくは2官能の(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミドを併用することが好ましい。
【0137】
重合性材料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0138】
重合性材料の、第1の液体又は必要に応じて第2の液体中における含有量としては、各液滴の全固形分(質量)に対して、50〜99.6質量%の範囲が好ましく、70〜99.0質量%の範囲がより好ましく、80〜99.0質量%の範囲がさらに好ましい。
【0139】
また、液滴中における含有量としては、各液滴の全質量に対して、20〜98質量%の範囲が好ましく、40〜95質量%の範囲がより好ましく、50〜90質量%の範囲が特に好ましい。
【0140】
−重合開始剤−
第1の液体A及び第2の液体Bは、重合開始剤の少なくとも一種を用いて好適に構成することができ、好ましくは少なくとも第2の液体Bに用いて構成される。この重合開始剤は、活性光、熱、あるいはその両方のエネルギーの付与によりラジカルなどの開始種を発生し、既述の重合性化合物の重合もしくは架橋反応を開始、促進させ、硬化する化合物である。
【0141】
この重合開始剤は、第1の液体A並びに第2の液体Bの保存安定性を確保する観点から、重合性材料とは別に含有させることが望ましく、本発明においては、第1の液体Aが前記重合性化合物を含有し、第2の液体Bやそれ以外の液体が重合開始剤を含有する形態が好ましい。
【0142】
重合性の態様において、ラジカル重合もしくはカチオン重合を起こさせる重合開始剤を含有することが好ましく、光重合開始剤を含有することが特に好ましい。
【0143】
重合開始剤は、光の作用、又は増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、化学変化を生じ、ラジカル、酸および塩基のうちの少なくともいずれか1種を生成する化合物であり、中でも、露光という簡便な手段で重合開始させることができるという観点から前記光ラジカル発生剤、又は光酸発生剤であることが好ましい。
【0144】
光重合開始剤は、照射される活性光線、例えば、400〜200nmの紫外線、遠紫外線、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線又はイオンビームなどに感度を有するものを適宜選択して使用することができる。
【0145】
具体的な光重合開始剤は当業者間で公知のものを制限なく使用でき、具体的には、例えば、Bruce M. Monroeら著、Chemical Revue,93,435(1993).や、R.S.Davidson著、Journal of Photochemistry and biology A :Chemistry,73.81(1993).や、J.P.Faussier“Photoinitiated Polymerization−Theory and Applications”:Rapra Review vol.9,Report,Rapra Technology(1998).や、M.Tsunooka et al.,Prog.Polym.Sci.,21,1(1996).に多く、記載されている。また、(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)に化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が多く、記載されている。さらには、F.D.Saeva,Topics in Current Chemistry,156,59(1990).、G.G.Maslak,Topics in Current Chemistry,168,1(1993).、H.B.Shuster et al,JACS,112,6329(1990).、I.D.F.Eaton et al,JACS,102,3298(1980).等に記載の、増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、酸化的もしくは還元的に結合解裂を生じる化合物群も知られる。
【0146】
好ましい光重合開始剤としては(a)芳香族ケトン類、(b)芳香族オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(e)ケトオキシムエステル化合物、(f)ボレート化合物、(g)アジニウム化合物、(h)メタロセン化合物、(i)活性エステル化合物、(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物、等が挙げられる。
【0147】
前記(a)芳香族ケトン類の好ましい例としては、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY」J.P.FOUASSIER J.F.RABEK (1993)、p77〜117記載のベンゾフェノン骨格或いはチオキサントン骨格を有する化合物等が挙げられる。より好ましい(a)芳香族ケトン類の例としては、特公昭47−6416号公報記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981号公報記載のベンゾインエーテル化合物、特公昭47−22326号公報記載のα−置換ベンゾイン化合物、特公昭47−23664号公報記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704号公報記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483号公報記載のジアルコキシベンゾフェノン、特公昭60−26403号公報、特開昭62−81345号公報記載のベンゾインエーテル類、特公平1−34242号公報、米国特許第4,318,791号、ヨーロッパ特許0284561A1号記載のα−アミノベンゾフェノン類、特開平2−211452号公報記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、特開昭61−194062号公報記載のチオ置換芳香族ケトン、特公平2−9597号公報記載のアシルホスフィンスルフィド、特公平2−9596号公報記載のアシルホスフィン、特公昭63−61950号公報記載のチオキサントン類、特公昭59−42864号公報記載のクマリン類等を挙げることができる。
【0148】
前記(b)芳香族オニウム塩化合物としては、周期律表の第V、VI及びVII族の元素、具体的にはN、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、Te、またはIの芳香族オニウム塩が含まれる。例えば、欧州特許104143号明細書、米国特許4837124号明細書、特開平2−150848号公報、特開平2−96514号公報に記載されるヨードニウム塩類、欧州特許370693号、同233567号、同297443号、同297442号、同279210号、および同422570号各明細書、米国特許3902144号、同4933377号、同4760013号、同4734444号、および同2833827号各明細書に記載されるスルホニウム塩類、ジアゾニウム塩類(置換基を有してもよいベンゼンジアゾニウム等)、ジアゾニウム塩樹脂類(ジアゾジフェニルアミンのホルムアルデヒド樹脂等)、N−アルコキシピリジニウム塩類等(例えば、米国特許4,743,528号明細書、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、および特公昭46−42363号各公報等に記載されるもので、具体的には1−メトキシ−4−フェニルピリジニウム テトラフルオロボレート等)、さらには特公昭52−147277号、同52−14278号、および同52−14279号各公報記載の化合物が好適に使用される。活性種としてラジカルや酸を生成する。
【0149】
前記(c)「有機過酸化物」としては、分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、その例としては、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系が好ましい。
【0150】
前記(d)ヘキサアリールビイミダゾールとしては、特公昭45−37377号公報、特公昭44−86516号公報記載のロフィンダイマー類、例えば2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0151】
前記(e)ケトオキシムエステルとしては、例えば、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0152】
前記(f)ボレート化合物の例としては、米国特許3,567,453号、同4,343,891号、ヨーロッパ特許109,772号、同109,773号に記載されている化合物が挙げられる。
【0153】
前記(g)アジニウム塩化合物の例としては、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特開昭63−143537号、並びに特公昭46−42363号の各公報に記載のN−O結合を有する化合物群を挙げることができる。
【0154】
前記(h)メタロセン化合物の例としては、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号、特開昭63−41484号、特開平2−249号、特開平2−4705号各公報記載のチタノセン化合物ならびに、特開平1−304453号、特開平1−152109号各公報記載の鉄−アレーン錯体を挙げることができる。
【0155】
前記チタノセン化合物の具体例としては、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(メチルスルホンアミド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチルビアロイル−アミノ)フェニル〕チタン等を挙げることができる。
【0156】
前記(i)活性エステル化合物の例としては、欧州特許0290750号、同046083号、同156153号、同271851号、および同0388343号各明細書、米国特許3901710号、および同4181531号各明細書、特開昭60−198538号、および特開昭53−133022号各公報に記載されるニトロベンズルエステル化合物、欧州特許0199672号、同84515号、同199672号、同044115号、および同0101122号各明細書、米国特許4618564号、同4371605号、および同4431774号各明細書、特開昭64−18143号、特開平2−245756号、および特開平4−365048号各公報記載のイミノスルホネート化合物、特公昭62−6223号、特公昭63−14340号、および特開昭59−174831号各公報に記載される化合物等が挙げられる。
【0157】
前記(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物の好ましい例としては、例えば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、英国特許1388492号明細書記載の化合物、特開昭53−133428号公報記載の化合物、独国特許3337024号明細書記載の化合物等を挙げることができる。
【0158】
また、F.C.Schaefer等によるJ.Org.Chem.29、1527(1964)記載の化合物、特開昭62−58241号公報記載の化合物、特開平5−281728号公報記載の化合物等を挙げることができる。ドイツ特許第2641100号に記載されているような化合物、ドイツ特許第3333450号に記載されている化合物、ドイツ特許第3021590号に記載の化合物群、あるいはドイツ特許第3021599号に記載の化合物群、等を挙げることができる。
【0159】
前記(a)〜(j)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下に示すものが挙げられる。
【0160】
【化1】
【0161】
【化2】
【0162】
【化3】
【0163】
【化4】
【0164】
【化5】
【0165】
【化6】
【0166】
【化7】
【0167】
【化8】
【0168】
なお、重合開始剤は感度に優れるものが好ましいが、例えば、80℃以下の温度で熱分解を起こすものを用いることは保存安定性の観点から好ましくなく、80℃までの温度では熱分解を起こさない重合開始剤を選択することが好ましい。
【0169】
重合開始剤は、1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、感度向上の目的で公知の増感剤を併用することもできる。
【0170】
重合開始剤の第2の液体B中における含有量としては、経時安定性と硬化性、硬化速度との観点から、第1の液体A、第2の液体Bを画像形成に必要な最大量を媒体上に打滴した場合、単位面積あたりに塗設された重合性材料に対して、0.5〜20質量%が好ましく、1〜15質量%が更に好ましく、3〜10質量%が特に好ましい。なお、含有量が多すぎる場合には、経時による析出や分離が生じたり、硬化後のインクの強度や擦り耐性などの性能が悪化したりすることがある。
【0171】
なお、重合開始剤を第2の液体Bに含有すると共に第1の液体Aに含有させてもよく、この場合には、第1の液体Aの保存安定性を所望の程度に保持できる範囲で適宜選択して含有することができる。
【0172】
また、重合開始剤は、第2の液体Bに含有せず既述の第1の液体Aに含有させるようにしてもよい。この場合は、第1の液滴中の含有量は、第1の液体A中の重合性もしくは架橋性化合物に対して、0.5〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましい。
【0173】
−−増感色素−−
本発明においては、光重合開始剤の感度を向上させる目的で、増感色素を添加してもよい。好ましい増感色素の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ350nmから450nm域に吸収波長を有するものを挙げることができる。
【0174】
多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)。
【0175】
より好ましい増感色素の例としては、下記一般式(IX)〜(XIII)で表される化合物が挙げられる。
【0176】
【化9】
【0177】
式(IX)中、A1は硫黄原子またはNR50を表し、R50はアルキル基またはアリール基を表し、L2は隣接するA1及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R51、R52はそれぞれ独立に水素原子または一価の非金属原子団を表し、R51、R52は互いに結合して、色素の酸性核を形成してもよい。Wは酸素原子または硫黄原子を表す。
【0178】
式(X)中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立にアリール基を表し、−L3−による結合を介して連結している。ここでL3は−O−または−S−を表す。また、Wは一般式(IX)に示したものと同義である。
【0179】
式(XI)中、A2は硫黄原子またはNR59を表し、L4は隣接するA2及び炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58はそれぞれ独立に一価の非金属原子団の基を表し、R59はアルキル基またはアリール基を表す。
【0180】
式(XII)中、A3、A4はそれぞれ独立に−S−または−NR62−または−NR63−を表し、R62、R63はそれぞれ独立に置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基を表し、L5、L6はそれぞれ独立に、隣接するA3、A4及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R60、R61はそれぞれ独立に水素原子または一価の非金属原子団であるか又は互いに結合して脂肪族性または芳香族性の環を形成することができる。
【0181】
式(XIII)中、R66は置換基を有してもよい芳香族環またはヘテロ環を表し、A5は酸素原子、硫黄原子または−NR67−を表す。R64、R65及びR67はそれぞれ独立に水素原子または一価の非金属原子団を表し、R67とR64、及びR65とR67はそれぞれ互いに脂肪族性または芳香族性の環を形成するため結合することができる。
【0182】
前記一般式(IX)〜(XIII)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下に示す例示化合物(A−1)〜(A−20)などが挙げられる。
【0183】
【化10】
【0184】
【化11】
【0185】
−−共増感剤−−
さらに、感度を一層向上させる、あるいは酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する公知の化合物を共増感剤として加えてもよい。
【0186】
共増感剤の例としては、アミン類、例えばM.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
【0187】
別の例としては、チオールおよびスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられ、具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が挙げられる。
【0188】
また別の例としては、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)、特開平6−250387号公報記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特開平8−65779号公報記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
【0189】
<着色剤(色材)>
着色剤には、例えば、顔料、染料がある。
【0190】
本発明に用いられる着色剤には特に制限はなく、インクの使用目的に適合する色相、色濃度を達成できるものであれば、公知の水溶性染料、油溶性染料及び顔料から適宜選択して用いることができる。なかでも、インクジェット記録用のインクを構成する液体は、非水溶性の液体であって水性溶媒を含有しない液体がインク打滴安定性及び速乾性の観点から好ましく、そのような観点からは、非水溶性の液体に均一に分散、溶解しやすい油溶性染料や顔料を用いることが好ましい。
【0191】
本発明に使用可能な油溶性染料には特に制限はなく、任意のものを使用することができる。着色剤として油溶性染料を用いる場合の染料の含有量は、固形分換算で0.05〜20質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜15質量%が更に好ましく、0.2〜6質量%が特に好ましい。
【0192】
着色剤として顔料を用いる態様もまた、複数種の液体の混合時に凝集が生じやすいという観点から好ましい。
【0193】
本発明において使用される顔料としては、有機顔料、無機顔料のいずれも使用できるが、黒色顔料としては、カーボンブラック顔料等が好ましく挙げられる。また、一般には黒色、及び、シアン、マゼンタ、イエローの3原色の顔料が用いられるが、その他の色相、例えば、赤、緑、青、茶、白等の色相を有する顔料や、金、銀色等の金属光沢顔料、無色又は淡色の体質顔料なども目的に応じて用いることができる。
【0194】
また、シリカ、アルミナ、樹脂などの粒子を芯材とし、表面に染料又は顔料を固着させた粒子、染料の不溶レーキ化物、着色エマルション、着色ラテックス等も顔料として使用することができる。
【0195】
さらに、樹脂被覆された顔料を使用することもできる。これは、マイクロカプセル顔料と呼ばれ、大日本インキ化学工業社製、東洋インキ社製などから市販品としても入手可能である。
【0196】
本発明における液体中に含まれる顔料粒子の体積平均粒子径は、光学濃度と保存安定性とのバランスといった観点からは、30〜250nmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは50〜200nmである。ここで、顔料粒子の体積平均粒子径は、例えば、LB−500(HORIBA(株)製)などの測定装置により測定することができる。
【0197】
着色剤として顔料を用いる場合の含有量は、光学濃度と噴射安定性の観点から、液体中において、固形分換算で0.1質量%〜20質量%の範囲であることが好ましく、1質量%〜10質量%の範囲であることがより好ましい。
【0198】
着色剤は1種のみならず、2種以上を混合して使用してもよい。また、液体毎に異なった着色剤を用いても、同じであってもよい。
【0199】
<拡散防止剤>
拡散防止剤とは、本発明において、記録媒体に付与された着色剤を有する液体の拡散や滲みを防止する物質を指す。
【0200】
上記拡散防止剤としては、アミノ基を有する重合体、オニウム基を有する重合体、含窒素ヘテロ環を有する重合体、及び金属化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する。
【0201】
上記重合体等は、単一種を使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。「複数種」とは、例えば、アミノ基を有する重合体には属するが異なる構造の重合体の場合や、アミノ基を有する重合体とオニウム基を有する重合体の関係のように異なる属種である場合を含む。また、1つの分子中に、アミノ基、オニウム基、含窒素ヘテロ環、及び金属化合物を組み合わせて併存させても良い。
【0202】
<高沸点有機溶媒(オイル)>
本発明中での、高沸点有機溶媒とは25℃での粘度が100mPa・s以下又は60℃での粘度が30mPa・s以下であり、且つ沸点が100℃よりも高い有機溶媒を示す。
【0203】
ここで、本発明における「粘度」は、東機産業(株)社製のRE80型粘度計を用いて求めた粘度をさす。RE80型粘度計は、E型に相当する円錐ロータ/平板方式粘度計であり、ロータコードNo.1番のロータを用い、10rpmの回転数にて測定を行う。但し、60mPa・sより高粘なものについては、必要により回転数を5rpm、2.5rpm、1rpm、0.5rpm等に変化させて測定を行う。
【0204】
また、本発明において「水の溶解度」とは、25℃における高沸点有機溶媒中の水の飽和濃度であり、25℃での高沸点有機溶媒100gに溶解できる水の質量(g)を意味する。
【0205】
上記高沸点有機溶媒の使用量としては、使用する着色剤に対し、塗設量換算で5〜2000質量%が好ましく、10〜1000質量%がより好ましい。
【0206】
<貯蔵安定剤>
本発明においては、複数種の液体の保存中における好ましくない重合を抑制する目的で、貯蔵安定剤を添加することができる。貯蔵安定剤は、重合性化合物と同じ液体に共存させて用いることが好ましく、また、該液体或いは共存する他の成分に可溶性のものを用いることが好ましい。
【0207】
貯蔵安定剤としては、4級アンモニウム塩、ヒドロキシアミン類、環状アミド類、ニトリル類、置換尿素類、複素環化合物、有機酸、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノエーテル類、有機ホスフィン類、銅化合物などが挙げられる。
【0208】
貯蔵安定剤の添加量は、用いる重合開始剤の活性や重合性化合物の重合性、貯蔵安定剤の種類に基づいて適宜調整するのが好ましいが、保存安定性と液体混合時のインクの硬化性とのバランスといった観点からは、液体中における固形分換算で0.005〜1質量%が好ましく、0.01〜0.5質量%がより好ましく、0.01〜0.2質量%がさらに好ましい。
【0209】
[輻射線]
本発明において重合性化合物の重合を進行させるための輻射線としては、紫外線、可視光線などを使用することができる。また、光以外の輻射線、例えば、α線、γ線、X線、電子線などでエネルギー付与を行うこともできるが、これらのうち、紫外線、可視光線を用いることがコスト及び安全性の点から好ましく、紫外線を用いることが更に好ましい。電子線による硬化の場合は、重合開始剤は不要である。重合反応に必要なエネルギー量は、重合開始剤の種類や含有量などによって異なるが、一般的には、1〜500mJ/cm2程度である。
【0210】
以下、実施例1〜4について、詳細に説明する。
【0211】
(実施例1)
<第1の液体>
実施例1では、第1の液体として、以下に示す第101液から第113液までの13種類の液体を調製した。各種類の液体は、それぞれ以下に示す化合物を常温で攪拌しながら混合し、5μmのメンブレンフィルタでろ過して得た。
<第101液>
フタル酸ジエチル 100質量%
<第102液>
フタル酸ジエチル 99.95質量%
スルホコハク酸ジ−2エチルヘキシルナトリウム 0.05質量%
<第103液>
フタル酸ジエチル 99.9質量%
スルホコハク酸ジ−2エチルヘキシルナトリウム 0.1質量%
<第104液>
フタル酸ジエチル 99.5質量%
スルホコハク酸ジ−2エチルヘキシルナトリウム 0.5質量%
<第105液>
フタル酸ジエチル 99.0質量%
スルホコハク酸ジ−2エチルヘキシルナトリウム 1.0質量%
<第106液>
フタル酸ジエチル 99.99質量%
メガファックF475(大日本インキ化学工業株式会社製) 0.01質量%
<第107液>
フタル酸ジエチル 99.95質量%
メガファックF475(大日本インキ化学工業株式会社製) 0.05質量%
<第108液>
フタル酸ジエチル 99.93質量%
メガファックF475(大日本インキ化学工業株式会社製) 0.07質量%
<第109液>
フタル酸ジエチル 99.9質量%
メガファックF475(大日本インキ化学工業株式会社製) 0.1質量%
<第110液>
フタル酸ジエチル 99.66質量%
メガファックF475(大日本インキ化学工業株式会社製) 0.34質量%
<第111液>
フタル酸ジエチル 98.3質量%
メガファックF475(大日本インキ化学工業株式会社製) 1.7質量%
<第112液>
フタル酸ジエチル 98.3質量%
2エチルヘキサン酸亜鉛 1.7質量%
<第113液>
フタル酸ジエチル 97.3質量%
2エチルヘキサン酸亜鉛 1.7質量%
スルホコハク酸ジ−2エチルヘキシルナトリウム 1.0質量%
第1の液体としての第101液から第113液までについて、測定温度25℃での表面寿命0.1秒における動的表面張力(「γ1(0.1秒)」と表記する)はKRUSS社製のバブルプレッシャー表面張力計(Bubble Pressure Tensiometer)BP2を用いて測定し、静的表面張力(「γ1(静的)」と表記する)は協和界面科学株式会社製の表面張力計CBVP-Zを用いて測定温度25℃で測定し、図7に示す値を得た。これらの測定と同様に、本明細書における動的表面張力および静的表面張力の測定は、以下同様に、測定温度25℃で測定する。
【0212】
<第2の液体(インク)>
実施例1では、第2の液体として、シアン顔料と重合性化合物と重合開始剤とを含む以下に示す第201液から204液まで4種類のインクを調製した。各種類のインクは、それぞれ以下に示す化合物を常温で攪拌混合しつつ溶解して得た。
<第201液>
重合性化合物:DPCA60(日本化薬株式会社製) 2.6質量%
色材:フタロシアニン 5.0質量%
分散剤:ソルパース28000(アビシア社製) 0.7質量%
重合開始剤:Irg1870(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)社製) 6.0質量%
重合性化合物:1,6ヘキサンジオールアクリレート(HDDA:ダイセル・ユーピーシー製) 残部
<第202液>
重合性化合物:DPCA60(日本化薬株式会社製) 2.6質量%
色材:フタロシアニン 5.0質量%
分散剤:ソルパース28000(アビシア社製) 0.7質量%
重合開始剤:Irg1870(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 6.0質量%
スルホコハク酸ジ−2エチルヘキシルナトリウム 5.0質量%
重合性化合物:1,6ヘキサンジオールアクリレート(HDDA:ダイセル・ユーピーシー製) 残部
<第203液>
重合性化合物:DPCA60(日本化薬株式会社製) 2.6質量%
色材:フタロシアニン 5.0質量%
分散剤:ソルパース28000(アビシア社製) 0.7質量%
重合開始剤:Irg1870(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 6.0質量%
ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート) 10.0質量%
重合性化合物:1,6ヘキサンジオールアクリレート(HDDA:ダイセル・ユーピーシー製) 残部
<第204液>
重合性化合物:DPCA60(日本化薬株式会社製) 2.6質量%
色材:フタロシアニン 5.0質量%
分散剤:ソルパース28000(アビシア社製) 0.7質量%
重合開始剤:Irg1870(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 6.0質量%
メガファックF475(大日本インキ化学工業株式会社製) 1.0質量%
重合性化合物:1,6ヘキサンジオールアクリレート(HDDA) 残部
第201液から第204までのインクについても、前述の第1の液体と同様に、表面寿命0.1秒における動的表面張力(「γ2(0.1秒)」と表記する)はKRUSS製のバブルプレッシャー表面張力計BP2を用いて測定し、静的表面張力(「γ2(静的)」と表記する)は協和界面科学株式会社製の表面張力計CBVP-Zを用いて測定し、図8に示す値を得た。
【0213】
以上説明した第101液から第113液までの第1の液体と、第201液から第204液までのインクとを用いて、以下のように実験を行った。
【0214】
まず、透明ポリエチレンテレフタレートシート(厚み60μm)上に、第1の液体を、バー塗布で付与する。ここで、塗布された第1の液体からなる液体膜の厚みを、1.4μm、1.5μm、1.6μm、2.0μm、5μmおよび10μmに、それぞれ設定した。次に、インクジェット打滴実験機(ピエゾ式、ドット密度:300dpi、吐出周波数:2KHz、液滴サイズ:10pL)を用いて、第1の液体からなる液体膜が存在する領域に、インクをシングルパス打滴して直線印字し、直ちにメタルハライドランプ(365nm波長の照度約500mJ/cm2)により紫外線を照射してインクを硬化させた。
【0215】
このようにして描画されたライン図形の形状を、光学顕微鏡を用いた観察により評価して、図9に示す結果を得た。
【0216】
図9において、「◎」は着弾干渉がなくドットが完全に独立しドットサイズも小さく良好であることを示しており、「○」は着弾干渉がなくドットが完全に独立していることを示しており、「△」は部分的に着弾干渉が生じてドット合一によるライン幅の変動やねじれがあることを示しており、「×」は着弾干渉が生じてドット合一に因る著しいライン幅の変動(具体的にはライン幅の拡大)やねじれがあることを示しており、「××」は全面的に着弾干渉が生じてドット合一に因る著しいライン幅の変動とねじれがあることを示している。
【0217】
記録媒体に塗布する第1の液体の液体膜の厚さが1.6μm以上であって、γ1(0.1秒)<γ2(0.1秒)であれば、着弾干渉を回避できるという結果が得られた。
【0218】
以上は第2の液体をインクとして液滴サイズ10plの打滴での実験評価の例を記載したが、液滴サイズを5plに変えて実験をしたところ、第1の液体の液体膜厚が1.0μmであっても、γ1(0.1秒)<γ2(0.1秒)の条件であれば、「○」レベルの評価を得ることを確認した。この場合、各ドットの拡がり率は、印字場所により変動が見られた。第1液の液体膜の厚みが場所により異なっているためである。
【0219】
また、凝集性について、以下のとおり実験し評価した。
【0220】
第1の液体(第101液から第113液までのいずれか)の100mLにインク(第201液から第204液までのいずれか)の1.0mLとを混合したものを、直ちにレーザー式粒度分布測定装置(日機装株式会社製のUPA−EX150)を用いて、顔料粒子サイズ分布について測定した。中心サイズが、元のフタロシアニン顔料の中心サイズよりも2.0倍以上になっている場合に凝集があると判断した。
【0221】
その結果を図10に示す。図10において、凝集がある場合を「×」で示している。
【0222】
図8に示すように、多価金属塩を添加した第112液および第113液とインクとを混合した場合に凝集があると判断した。
【0223】
また、凝集による色相の変化について、以下のとおり実験し評価した。
【0224】
前述のインクジェット打滴実験機を用いて、ベタパッチを印字して、このベタパッチの色相を、第1の液体を塗布した場合と第1の液体を塗布しない場合とで、目視にて比較した結果、第1の液体として、多価金属塩を添加した第112液と第113液を用いた場合のみ、シアン色に赤みが感じられように色相が変化し、また、明らかに彩度が低下していると判断できた。
【0225】
(実施例2)
実施例2では、第1の液体として、以下に示す第121液から第124液までの4種類の液体を調製した。これらの第121液から第124液までの液体は、紫外線の照射によって重合反応を行うように重合性化合物および重合開始剤を含有する。
<第121液>
重合性化合物:HDDA 95.0質量%
重合開始剤:Irg1870 5.0質量%
<第122液>
重合性化合物:HDDA 96.0質量%
重合開始剤:Irg1870 5.0質量%
スルホコハク酸ジ−2エチルヘキシルナトリウム 1.0質量%
<第123液>
重合性化合物:HDDA 96.0質量%
重合開始剤:Irg1870 5.0質量%
メガファックF475 1.0質量%
<第124液>
重合性化合物:HDDA 94.3質量%
重合開始剤:Irg1870 5.0質量%
メガファックF475 1.7質量%
以上の第121液から第124液までの第1の液体について、表面寿命0.1秒における動的表面張力γ1(0.1秒)はKRUSS社製のバブルプレッシャー表面張力計BP2を用いて測定し、静的表面張力γ1(静的)は協和界面科学株式会社製の表面張力計CBVP-Zを用いて測定し、図11に示す値を得た。
【0226】
第121液から第123液までの第1の液体と、実施例1に示した第201液から第204液までのインクとを用いて、実施例1と同様の実験方法で実験を行った。すなわち、バー塗布で第1の液体を付与し、第1の液体からなる液体膜が存在する領域にインクジェットプリンタを用いてインクを打滴して直線印字し、直ちに紫外線を照射して硬化させた。このようにして描画されたライン図形の形状を、光学顕微鏡を用いた観察により評価して、図12に示す結果を得た。なお、図12において、記号(◎、○、△、×、××)の示す意味は、図9における意味と同じであり、既に説明したので、その説明を省略する。
【0227】
次に、インクだけでなく第1の液体も打滴した場合について説明する。
【0228】
東芝テック株式会社製のCA-3型インクジェットヘッドを搭載した実験機(各色毎に2ヘッド、ドット密度:300dpi、打滴周波数:4.8kHz、メディア搬送速度:400mm/秒、液滴サイズ:6〜42pLまで7段階に可変)を用いて、PET(Polyethyleneterephtalate)シート上に、各種の文字をシングルパスで印字した。
【0229】
まず、第121液から第124液までの各第1の液体をそれぞれ打滴した。第1の液体の打滴領域は、インクの打滴領域よりも、3ドット分広くした。第1の液体の液滴のサイズは6pl、12pl、42plにそれぞれ固定して、第1の液体用のヘッドから打滴した。続けて、隣接するインク打滴用のヘッドから、第201液から第204液までの各インクをそれぞれ滴量12plで打滴した。引き続いてただちに、紫外線を照射し硬化させた。
【0230】
第1の液体の液滴のサイズと、記録媒体に打滴された第1の液体の液滴からなる液体膜の厚み(膜厚)との対応関係は、液滴6plが膜厚み0.8μmに対応し、液滴12plが膜厚1.7μmに対応し、液滴42plが膜厚5.6μmに対応する。
【0231】
得られた画像を光学顕微鏡で観察して、画像の品質を評価した。その結果を、図13に示す。なお、図13において、記号(◎、○、△、×、××)の示す意味は、図9における意味と同じであり、既に説明したので、その説明を省略する。
【0232】
記録媒体に打滴する第1の液体の液滴のサイズが12pl以上であって、γ1(0.1秒)<γ2(0.1秒)であれば、第1の液体を塗布にて付与した場合と同様に、着弾干渉を回避できるという結果が得られた。
【0233】
また、実施例2では、第1の液体の静的表面張力γ1(静的)が25mN/mよりも小さいときに、特に好ましい。これは、第1の液体を打滴により付与しているので、インクが打滴されるまでに、すみやかに均一に記録媒体上に拡がることが必要であり、そのためには、ノズル面上で、撥インク性が悪化しない範囲で静的表面張力が低いほうが好ましいためだと考えられる。
【0234】
(実施例3)
<第1の液体>
実施例3では、第1の液体として、以下に示す第131液から第133液までの3種類の液体を調製した。
【0235】
<第131液>(オキシラン化合物及びオキセタン化合物を含む第1の液体)
下記組成の成分を攪拌混合し溶解して、オキシラン化合物及びオキセタン化合物を含む第131液を調製した。第131液の静的表面張力γ1(静的)は23mN/m、動的表面張力γ1(0.1秒)は28mN/mであった。
【0236】
ビス{[1-エチル(3-オキセタニエル)]メチル} エーテル(OXT−221:東亜合成株式会社製) …4.18g
1−メチル−4−(2-メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]へプタン(Cel3000:ダイセル・サイテック株式会社製) …9.77g
9,10-ジブトキシアントラセン …0.75g
メガファックF475 …0.3g
<第132液>(重合性化合物としてオキシラン化合物のみ含む第1の液体)
下記組成の成分を攪拌混合し溶解して、オキシラン化合物を含む第132液を調製した。第132液の静的表面張力γ1(静的)は23mN/m、動的表面張力γ1(0.1秒)は28.5mN/mであった。
【0237】
1−メチル−4−(2-メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]へプタン(Cel3000:ダイセル・サイテック株式会社製) …13.95g
9,10-ジブトキシアントラセン …0.75g
メガファックF475 …0.3g
<第133液>(重合性化合物としてオキセタン化合物のみ含む第1の液体)
下記組成の成分を攪拌混合し溶解して、オキセタン化合物を含む第1の液体に相当する133液を調製した。この第133液の静的表面張力γ1は23mN/m、動的表面張力γ1(0.1秒)は28.2mN/mであった。
【0238】
ビス{[1-エチル(3-オキセタニエル)]メチル} エーテル(OXT−221) …13.95g
9,10-ジブトキシアントラセン …0.75g
メガファックF475 …0.3g
<第2の液体(インク)>
実施例3では、第2の液体として、以下に示す第231液から第233液までの3種類のインクを調製した。
<第231液>(重合開始材と重合性化合物としてオキシラン化合物及びオキセタン化合物を含むインク)
PB15:3(IRGALITE BLUE GLO:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)16g、ビス{[1-エチル(3-オキセタニエル)]メチル} エーテル(OXT−221;東亞合成株式会社製)48g、および、BYK−168(ビックケミー(BYK-Chemie)社製)16gを混合し、スターラーで1時間攪拌した。攪拌後の混合物を、アイガーミルにて分散し、顔料分散物(「P−1」と称する)を得た。
【0239】
ここで、分散条件は、直径0.65mmのジルコニアビーズを70%の充填率で充填し、周速を9m/sとし、分散時間を1時間とした。
【0240】
そして、下記組成の成分を、攪拌混合し溶解して、第231液を調製した。第231液の動的表面張力γ2(0.1秒)は32N/mであった。
【0241】
上記の顔料分散物「P−1」 …3.75g
ビス{[1-エチル(3-オキセタニエル)]メチル} エーテル …0.825g
1−メチル−4−(2-メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]へプタン(Cel3000:ダイセル・サイテック株式会社製) …8.925g
化12に示す重合開始剤(Irg250:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) …1.5g
【0242】
【化12】
【0243】
<第232液>(重合開始材と重合性化合物としてオキシラン化合物のみ含むインク)
PB15:3(IRGALITE BLUE GLO)16g、1−メチル−4−(2-メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]へプタン(Cel3000)48g、BYK−168(ビックケミー社製)16gを混合し、スターラーで1時間攪拌した。攪拌後の混合物をアイガーミルにて分散し、顔料分散物(「P−2」と称する)を得た。
【0244】
ここで、分散条件は、直径0.65mmのジルコニアビーズを70%の充填率で充填し、周速を9m/sとし、分散時間1時間とした。
【0245】
そして、下記組成の成分を、攪拌混合し溶解して、第232液を調製した。この第232液の動的表面張力γ(0.1秒)は32N/mであった。
【0246】
上記の顔料分散物 …3.75g
1−メチル−4−(2-メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]へプタン(Cel3000:ダイセル・サイテック株式会社製) …9.75g
前述の化1に示す重合開始剤(Irg250:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) …1.5g
<第233液>(重合開始材と重合性化合物としてオキセタン化合物のみ含むインク)
下記組成の成分を、攪拌混合し溶解して、オキセタン化合物と顔料分散物を含む第233液を調製した。第233液の動的表面張力γ2(0.1秒)は32N/mであった。
【0247】
前記の顔料分散物P−2 …3.75g
ビス{[1-エチル(3-オキセタニエル)]メチル} エーテル(OXT−221) …9.75g
前記の化1に示す重合開始剤(Irg250:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) …1.5g
以上の第1の液体(第131液から第133液まで)と第2の液体(第231液から第233液までのインク)との組み合わせについて、第1の液体、第2の液体とも21plで吐出し、これまでと同様の評価をおこなった。
【0248】
記録媒体上に形成されたライン図形の幅(ライン幅)は、いずれの組み合わせにおいても良好であった。
【0249】
また、硬化感度を評価するために、UV光源の365nmにおける照度を300mJ/cm2に下げてUV光を照射した場合に画像面(記録面)を指で触り、下記評価基準に従って評価した。
【0250】
<評価基準>
A:ベタツキはなかった。
B:若干ベタツキが認められた。
C:著しくベタツキが認められた。
【0251】
さらに、吐出不良の原因となる、ヘッド面への漏れUV光に起因するヘッド面固化を評価するために、UV光源を点燈して、シャッタを開けたままで24時間連続吐出して、第1の液体とインクのヘッドの合計正常吐出ノズルの割合の変化率(24時間吐出後の正常吐出ノズル数/実験開始時の正常吐出ノズル数)を測定した。
【0252】
以上の結果を図14に示す。
【0253】
図14において、先に記録媒体に付与する第1の液体は、重合性化合物としてオキシラン化合物のみを含む第132液を用い、後に記録媒体に付与する第2の液体(インク)は、重合開始剤を含むとともに、重合性化合物としてオキセタン化合物のみを含む第233液を用いた場合が、硬化感度およびヘッド面固化の観点から、最も好ましい。要するに、重合開始剤と反応開始の早い重合性化合物とを分けて記録媒体に付与することで、ヘッド面でのUV光の迷光に起因するヘッド面での硬化の問題を回避できることが判る。
【0254】
(実施例4)
実施例4では、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロ)、K(ブラック)の4色のインク(前述の第232液と、後述の第241液、第251液および第261液)を調製した。
【0255】
<第241液>(マゼンタ顔料を含むインク)
顔料分散物の調整時に、顔料をPB15:3(IRGALITE BLUE GLO:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)からPV19(Hostaparm RED E5B02:クラリアント(Clariant)社製)に等質量で置き換えた以外は、第232液と同様の調製を行って、マゼンタ顔料を含む第241液を調製した。第241液の動的表面張力γ2(0.1秒)は、32N/mであった。
【0256】
<第251液>(イエロ顔料を含むインク)
顔料分散物の調整時に、顔料をPB15:3(IRGALITE BLUE GLO:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)からPY74(IRGALITE YELLOW GO:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)に等質量で置き換えた以外は、第232液と同様の調製を行って、イエロ顔料を含む第251液を調製した。第251液の動的表面張力γ2(0.1秒)は、33N/mであった。
【0257】
<第261液>(カーボンブラック顔料を含むインク)
顔料の分散時に、顔料をPB15:3(IRGALITE BLUE GLO:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)からカーボンブラックMA7(三菱化学株式会社製)に等質量で置き換えた以外は、第232液と同様の調製を行って、カーボンブラック顔料を含む第261液を調製した。第261液の動的表面張力γ2(0.1秒)は、34N/mであった。
【0258】
以上のインク(第232液、第241液、第251液、第261液)を、ラインヘッドを有するプリンタで印字した場合についても、これまでと同様の効果が得られた。
【0259】
すなわち、重合開始剤と反応開始の早いモノマーを分けることで、ヘッド面でのUV光の迷光によるヘッド面での硬化の問題を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0260】
【図1】本発明の原理の説明に用いる模式図である。
【図2】本発明を適用した画像形成装置の一例の全体構成図である。
【図3】画像形成装置の液体付与部およびその周辺部分の一例を示す平面図である。
【図4】打滴ヘッドの全体構造の一例を示す平面透視図およびその断面図である。
【図5】画像形成装置の液体供給系の一例の要部構成図である。
【図6】画像形成装置の制御系の説明に用いるシステム構成図である。
【図7】実施例1の第1の液体の静的表面張力および動的表面張力を示す表である。
【図8】実施例1の第2の液体(インク)の静的表面張力および動的表面張力を示す表である。
【図9】実施例1の着弾干渉について示す表である。
【図10】実施例1の凝集性について示す表である。
【図11】実施例2の第1の液体の静的表面張力および動的表面張力を示す表である。
【図12】実施例2の着弾干渉について示す表である。
【図13】実施例2において第1の液体を打滴した場合の着弾干渉について示す表である。
【図14】実施例3について示す表である。
【図15】着弾干渉の説明に用いる模式図である。
【符号の説明】
【0261】
12…液体付与部、14…液体貯蔵/装填部、16…記録媒体、22…ベルト搬送部、27…UV光源、50…打滴ヘッド、50a…吐出面、51…ノズル、52…圧力室、55…共通液室、58…アクチュエータ、81…第1の液体の液体膜、81a…気液界面、82(82a、82b)…インク滴、132…媒体種別検出部、134…インク種別検出部、112…システムコントローラ、150…プリント制御部、154…ヘッドドライバ、156…光源ドライバ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種類の液体を所定の記録媒体に付与して、該記録媒体に所望の画像を形成する画像形成方法において、
前記記録媒体上に、色材を含まず測定温度25℃での表面寿命0.1秒における動的表面張力値がγ1(0.1秒)である第1の液体を付与した後に、該第1の液体が液体膜として存在する領域に、色材を含み測定温度25℃での表面寿命0.1秒における動的表面張力値が前記γ1(0.1秒)よりも大きなγ2(0.1秒)である第2の液体を打滴にて付与することを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記第1の液体からなる液体膜の平均厚みを1.6μm以上にて前記第1の液体を前記記録媒体に付与し、該第1の液体が液体膜として存在する領域に前記第2の液体を打滴することを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記第2の液体が輻射線硬化型の重合性化合物を含有し、前記第2の液体が前記記録媒体に付与された後、該記録媒体に輻射線を照射して前記第2の液体を硬化させることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記第1の液体も輻射線硬化型の重合性化合物を含有することを特徴とする請求項3に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記第1の液体および前記第2の液体のいずれか一方に重合開始剤を含むことを特徴とする請求項3または4に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記第1の液体は、輻射線硬化型の重合性化合物としてオキシラン化合物を含み、前記第2の液体は、重合開始剤を含むとともに、輻射線硬化型の重合性化合物としてオキセタン化合物を含むことを特徴とする請求項4または5に記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記第1の液体を打滴により前記記録媒体に付与することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記第1の液体の静的表面張力値が25mN/m以下であることを特徴とする請求項7に記載の画像形成方法。
【請求項9】
シングルパスで打滴を行うことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項10】
少なくとも2種類の液体を所定の記録媒体に付与して、該記録媒体に所望の画像を形成する画像形成装置において、
前記記録媒体上に色材を含まない第1の液体を付与し、該第1の液体が液体膜として存在する領域に、色材を含む第2の液体を打滴にて付与する液体付与手段を備え、
前記第1の液体の測定温度25℃での表面寿命0.1秒における動的表面張力値γ1(0.1秒)と前記第2の液体の測定温度25℃での表面寿命0.1秒における動的表面張力値γ2(0.1秒)との関係が、γ1(0.1秒)<γ2(0.1秒)であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
少なくとも2種類の液体を所定の記録媒体に付与して、該記録媒体に所望の画像を形成する画像形成方法において、
前記記録媒体上に、色材を含まず測定温度25℃での表面寿命0.1秒における動的表面張力値がγ1(0.1秒)である第1の液体を付与した後に、該第1の液体が液体膜として存在する領域に、色材を含み測定温度25℃での表面寿命0.1秒における動的表面張力値が前記γ1(0.1秒)よりも大きなγ2(0.1秒)である第2の液体を打滴にて付与することを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記第1の液体からなる液体膜の平均厚みを1.6μm以上にて前記第1の液体を前記記録媒体に付与し、該第1の液体が液体膜として存在する領域に前記第2の液体を打滴することを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記第2の液体が輻射線硬化型の重合性化合物を含有し、前記第2の液体が前記記録媒体に付与された後、該記録媒体に輻射線を照射して前記第2の液体を硬化させることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記第1の液体も輻射線硬化型の重合性化合物を含有することを特徴とする請求項3に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記第1の液体および前記第2の液体のいずれか一方に重合開始剤を含むことを特徴とする請求項3または4に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記第1の液体は、輻射線硬化型の重合性化合物としてオキシラン化合物を含み、前記第2の液体は、重合開始剤を含むとともに、輻射線硬化型の重合性化合物としてオキセタン化合物を含むことを特徴とする請求項4または5に記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記第1の液体を打滴により前記記録媒体に付与することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記第1の液体の静的表面張力値が25mN/m以下であることを特徴とする請求項7に記載の画像形成方法。
【請求項9】
シングルパスで打滴を行うことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項10】
少なくとも2種類の液体を所定の記録媒体に付与して、該記録媒体に所望の画像を形成する画像形成装置において、
前記記録媒体上に色材を含まない第1の液体を付与し、該第1の液体が液体膜として存在する領域に、色材を含む第2の液体を打滴にて付与する液体付与手段を備え、
前記第1の液体の測定温度25℃での表面寿命0.1秒における動的表面張力値γ1(0.1秒)と前記第2の液体の測定温度25℃での表面寿命0.1秒における動的表面張力値γ2(0.1秒)との関係が、γ1(0.1秒)<γ2(0.1秒)であることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−261203(P2007−261203A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−92302(P2006−92302)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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