説明

画像形成方法及び装置

【課題】滲みのない高品質な画像を得ることができるとともに、画像を中間転写体から記録媒体へ転写する際の転写性を向上することができる画像形成方法及びその装置を提供する。
【解決手段】非浸透媒体上にインクで形成したインク像を記録媒体へ転写する画像形成方法において、前記インクを吐出する前の前記非浸透媒体上に粒子含有液を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成方法及び装置に係り、特に、非浸透媒体上にインクで形成したインク像を記録媒体へ転写する画像形成方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラを初めとするデジタル画像技術とインクジェット技術の急速な発展により、銀塩写真を凌駕する高画質写真プリントを一般家庭でも手軽に得ることができるようになった。一方、工業・印刷分野を初めさまざまな分野でもインクジェット技術の応用・適用が始まっている。しかしながら、工業印刷の分野では生産性の観点から高速化が必須であるが、銀塩プリントのような高画質を高速で印刷できるようなインクや画像記録方法は未だない。
【0003】
また、画像形成装置として、中間転写体上に画像を形成してから、その中間転写体上に形成された画像を記録媒体に転写することで記録媒体上に画像を形成する、所謂、中間転写型の画像形成装置が知られている。従来、このような画像形成装置では、中間転写体上で高画質を得ることと、高い転写性を得ることを両立することは困難であった。なぜなら、中間転写体上で液流れが発生し、画質を低下させやすいからである。
【0004】
特許文献1では、中間転写体上のインク像を濃縮すると共に、インク成分に含まれる水中油型エマルジョンの油成分の剥離層を形成させることが記載されている。そして、特許文献2では、中間転写体に予め液体に対し吸水性及び増粘性を示し且つ中間転写体より剥離可能な材料の層を形成し、材料の上に液体を付与して前記中間転写体上に画像を形成し、次いで中間転写体上に形成された画像を記録媒体に転写することが記載されている。また、特許文献3では、中間転写体表面に樹脂粒子により樹脂粒子層を形成する粒子層形成工程と、樹脂粒子層にインクジェット記録ヘッドからインクを吐出し、樹脂粒子層の空隙にインクを保持させて画像を記録する記録工程と、インクを保持した樹脂粒子層を記録媒体に転写し、定着させて画像を形成する転写定着に関することが記載されている。そして、特許文献4では、ポリビニルピロリドン又はポリビニルピロリドンのコポリマーを含有するコーティング溶液を中間転写媒体に塗布する段階と、インクジェット印刷装置を用いて、前記中間転写媒体に画像を印刷する段階と、前記画像を最終媒体に転写する段階と、を含む印刷方法が記載されている。また、特許文献5では、ポリビニルピロリドン又はポリビニルピロリドンのコポリマーを含有するコーティング溶液を中間転写媒体に塗布する段階と、インクジェット印刷装置を用いて、前記中間転写媒体に画像を印刷する段階と、前記画像を最終媒体に転写する段階と、を含む印刷方法が記載されている。更に、特許文献6では、イオン的作用による2液凝集により、第1の液体(処理液)をインクジェットヘッド供給し、第1の液体の付与量を第2の液体(色材インク)の付与量よりも少なくすることで画質向上することが記載されている。
【特許文献1】特開平6−219039号公報
【特許文献2】特開2000−355162号公報
【特許文献3】特開2003−57967号公報
【特許文献4】特表2004−537434号公報
【特許文献5】特開2006−347081号公報
【特許文献6】特開2002−370441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の油性エマルジョンによる剥離層形成では、剥離層厚みが不十分であり、且つ、剥離層が形成された後は描画を行ってもインクはじきが生じ画像形成できないという問題がある。
【0006】
そして、特許文献2、3、及び、5では、中間転写体に予め液体に対し吸水性及び増粘性を示し、且つ、中間転写体より剥離可能な粒子層の形成に関する開示があるが、インクの分散媒を吸収するためには数10μmの粒子層厚みが必要なため、画像部と非画像部で厚みが異なってしまう現象(パイルハイト)が問題となる。そして、前記粒子層に液滴が吸収されることで、画像滲みが発生する。また、実施例によれば、電界による粒子付与を行なっているが、厚み均質性に欠け、画像欠陥が出やすい。また、実施例では、ドライな粒子を転写体上に付与するため、一度付与された粒子が転写体から剥がれ易く、ノズル面に付着することがあり、吐出信頼性が低下してしまうという問題がある。
【0007】
また、特許文献4では、ポリビニルピロリドン又はポリビニルピロリドンのコポリマーを含有する高粘度のコーティング溶液を付与し,画像の転写効率を向上する技術の開示があり、コーティング溶液が凝集剤を含有する構成の記載もあるが、転写体上で画像が動くことに対する対応がなされていない。その結果、転写ムラや転写不良が生じてしまい、記録媒体に形成される画像品位は大きく損なわれるおそれがある。
【0008】
更に、特許文献6では、第1の液体を中間転写体上に付与し、その上に色材などを含む第2の液体をインクジェットヘッドにて供給し、第2の液体を高粘度化して中間転写体上でブリーディングやフェザリングの無い描画パターンを形成し、中間転写体上に得られた画像を記録媒体に転写する方式であり、凝集体形成により転写体上に滲みの無い画像形成が可能となり非常に良い方法ではあるが、描画性を考慮すると、転写体材質はインクと親和性が高い材料が好ましく、一方で転写性を考慮すると転写体材料はインクと親和性の低い材料が好ましい。即ち、特許文献6では、描画性と転写性はトレードオフの関係にあり、両方を満たす技術が必要である。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、滲みのない高品質な画像を得ることができるとともに、画像を中間転写体から記録媒体へ転写する際の転写性を向上することができる画像形成方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、非浸透媒体上にインクで形成したインク像を記録媒体へ転写する画像形成方法において、前記インクを吐出する前の前記非浸透媒体上に粒子含有液を付与することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、インクを吐出する前の前記非浸透媒体上に粒子含有液を付与することで、粒子含有液の粒子にインクの色材を仮固定することができるため、滲みのない高品質な画像を得ることができるとともに、粒子含有液の粒子によってインク像が非浸透媒体から離れやすくできるので、非浸透媒体である中間転写体から記録媒体へ転写する際の転写性を向上することができる。尚、本明細書において、「記録媒体」とは、一般的に用いられる紙だけでなく、布、金属、板、ガラス、セラミックス、木材、プラスチックフィルム、皮革等を含む。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記粒子含有液は、液体分散媒に粒子が分散されていることを特徴とする。
【0013】
請求項2によれば、粒子含有液は、液体分散媒に粒子が分散されているものが好ましい。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記粒子は、熱溶融性樹脂粒子であることを特徴とする。
【0015】
請求項3によれば、粒子は、熱溶融樹脂粒子であることが好ましい。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3において、前記インクには、溶媒不溶性材料が含まれていることを特徴とする。
【0017】
請求項4によれば、溶媒不溶性材料を顔料とするインクを用いると、画像保存性が向上し、また、溶媒不溶性材料をインクの色材が定着する定着用樹脂として用いると、耐擦性が向上する。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項4において、前記インクと前記粒子含有液のどちらか一方、又は両方が凝集反応性を持ち、該インクと該粒子含有液とが接触した際に前記溶媒不溶性材料又は前記粒子のどちらか一方、又は両方が凝集することを特徴とする。
【0019】
請求項5によれば、インクと粒子含有液の少なくとも一方が凝集反応性を持ち、インクと粒子含有液とが接触した際に、溶媒不溶性材料と粒子の少なくとも一方が凝集することで、更に画像の滲みを防止することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項5において、前記粒子の凝集力は、前記溶媒不溶性材料の凝集力よりも低いことを特徴とする。
【0021】
請求項6によれば、粒子の凝集力が溶媒不溶性材料の凝集力よりも低いことで、インク像を非浸透媒体から記録媒体に転写する転写性を向上することができる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項4〜6の何れか1において、前記溶媒不溶性材料の平均粒径は、前記粒子の平均粒径よりも小さいことを特徴とする。
【0023】
請求項7によれば、溶媒不溶性材料の平均粒径は、粒子の平均粒径よりも小さいことで、粒子の凝集力が溶媒不溶性材料の凝集力よりも低くすることができるので、インク像を非浸透媒体から記録媒体に転写する転写性を向上することができる。
【0024】
請求項8に記載の発明は、請求項4〜7の何れか1において、前記溶媒不溶性材料のガラス転移点は、前記粒子のガラス転移点よりも高いことを特徴とする。
【0025】
請求項8によれば、溶媒不溶性材料のガラス転移点が粒子のガラス転移点よりも高いことで、インク像を非浸透媒体から記録媒体に加熱して転写する際の転写性を向上することができる。
【0026】
請求項9に記載の発明は、請求項4〜8の何れか1において、前記溶媒不溶性材料の最低造膜温度は、前記粒子の最低造膜温度よりも高いことを特徴とする。
【0027】
請求項9によれば、溶媒不溶性材料の最低造膜温度が粒子の最低造膜温度よりも高いことで、インク像を非浸透媒体から記録媒体に加熱して転写する際の転写性を向上することができる。
【0028】
前記目的を達成するために、請求項10に記載の発明は、インク像を担持する非浸透媒体と、該非浸透媒体上に粒子含有液を付与する粒子含有液付与部と、該粒子含有液上にインクを付与するインク付与部と、前記非浸透媒体上に形成されたインク像を記録媒体に転写する転写部と、を備えたことを特徴とする画像形成装置である。
【0029】
請求項10によれば、このような構成の中間転写型の画像形成装置により、滲みのない高品質な画像を得ることができるとともに、画像を中間転写体から記録媒体へ転写する際の転写性を向上することができる。
【0030】
請求項11に記載の発明は、請求項10において、前記画像形成装置には、前記非浸透媒体上に形成されたインク像の溶媒を除去する溶媒除去部を備えることを特徴とする。
【0031】
請求項11によれば、非浸透媒体上に形成されたインク像の溶媒を除去する溶媒除去部を備えることで、インク像の溶媒を除去することができるので、更に粒子含有液の粒子にインクの色材を仮固定することができ、滲みのない高品質な画像を得ることができる。
【0032】
請求項12に記載の発明は、請求項10又は11において、前記粒子含有液付与部では、前記粒子含有液をローラー塗布によって付与することを特徴とする。
【0033】
請求項12によれば、非浸透媒体上にローラー塗布によって粒子含有液を付与することで、粒子含有液の液物性を広く取ることができるとともに、液の付与厚みを均一にすることができる。
【0034】
請求項13に記載の発明は、請求項10〜12の何れか1において、前記転写部には、加熱手段をもつことを特徴とする。
【0035】
請求項13によれば、インク像を転写部において加熱手段で加熱することで、インク像を中間転写体から記録媒体へ転写する際の転写性を向上することができる。
【0036】
請求項14に記載の発明は、請求項10〜13の何れか1において、前記インク付与部では、前記インクをインクジェット記録ヘッドによって付与することを特徴とする。
【0037】
請求項14によれば、本発明は、所謂中間転写型のインクジェット記録に最適である。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、滲みのない高品質な画像を得ることができるとともに、画像を中間転写体から記録媒体へ転写する際の転写性を向上することができる画像形成方法及びその装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0040】
まず、本発明に係るインクと粒子含有液(処理液)に関して詳細に説明する。
【0041】
〔インク〕
本発明において用いられるインクは溶媒不溶性材料が含まれていることが好ましい。
【0042】
インクに使用される色材は、顔料あるいは染料と顔料とを混合して用いることができる。処理液との接触時における凝集性の観点から、インク中で分散状態にある、溶媒不溶性材料である顔料の方がより効果的に凝集するため好ましい。顔料の中でも、分散剤により分散されている顔料、自己分散顔料、樹脂により顔料表面を被覆された顔料(マイクロカプセル顔料)、及び高分子グラフト顔料が特に好ましい。また、顔料凝集性の観点から、解離度の小さいカルボキシル基によって修飾されている形態がより好ましい。
【0043】
マイクロカプセル顔料の樹脂は、限定されるものではないが、水に対して自己分散能又は溶解能を有し、かつアニオン性基(酸性)を有する高分子の化合物であるのが好ましい。この樹脂は、通常、数平均分子量が1,000〜100,000範囲程度のものが好ましく、3、000〜50、000範囲程度のものが特に好ましい。また、この樹脂は有機溶剤に溶解して溶液となるものが好ましい。樹脂の数平均分子量がこの範囲であることにより、顔料における被覆膜として、又はインク組成物における塗膜としての機能を十分に発揮することができる。
【0044】
前記樹脂は、自己分散能あるいは溶解するものであっても、又はその機能が何らかの手段によって付加されたものであってもよい。例えば、有機アミンやアルカリ金属を用いて中和することにより、カルボキシル基、スルホン酸基、またはホスホン酸基等のアニオン性基を導入されてなる樹脂であってもよい。また、同種または異種の一又は二以上のアニオン性基が導入された樹脂であってもよい。本発明にあっては、塩基をもって中和されて、カルボキシル基が導入された樹脂が好ましくは用いられる。
【0045】
本実施の形態のインクに含まれる顔料は有機色顔料が好ましく用いられる。以下に組成物に用いられる有機顔料の具体例を示す。
【0046】
シアン色の顔料としては、C.I.Pigment Blue−1、C.I.Pigment Blue−2、C.I.Pigment Blue−3、C.I.Pigment Blue−15、C.I.Pigment Blue−15:2、C.I.Pigment Blue−15:3、C.I.Pigment Blue−15:4、C.I.Pigment Blue−16、C.I.Pigment Blue−22等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
マゼンタ色の顔料としては、C.I.Pigment Red−5、C.I.Pigment Red−7、C.I.Pigment Red−12、C.I.Pigment Red−48、C.I.Pigment Red−48:1、C.I.Pigment Red−57、C.I.Pigment Red−112、C.I.Pigment Red−122、C.I.Pigment Red−123、C.I.Pigment Red−146、C.I.Pigment Red−168、C.I.Pigment Red−184、C.I.Pigment Red−202、C.I.Pigment Red−207等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
イエローの顔料としては、C.I.Pigment Yellow−12、C.I.Pigment Yellow−13、C.I.Pigment Yellow−14、C.I.Pigment Yellow−16、C.I.Pigment Yellow17、C.I.Pigment Yellow−74、C.I.Pigment Yellow−83、C.I.Pigment Yellow−93、C.I.PigmentYellow−95、C.I.Pigment Yellow−97、C.I.Pigment Yellow−98、C.I.Pigment Yellow−114、C.I.等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
本発明に用いるインクに含まれる色材の濃度は、使用する色材により最適な値を選択すればよいが、下限は光学濃度を確保するのに必要な量で決定される。一方、上限は吐出性を確保するための量で決まる。色材濃度が高すぎるとインク粘度も上昇し、十分な吐出性を得られないからである。インクの全重量に対し、0.1重量%〜40質量%の範囲にするのが好ましい。より好ましくは、1重量%〜30質量%、さらに好ましくは2重量%〜20質量%である。
【0050】
インクには、処理液と反応する成分として、着色剤を含まないポリマー微粒子を添加することが好ましい。ポリマー微粒子は、粒子含有液(処理液)との反応によりインクの増粘作用、凝集作用を強め、画像品位の向上させることができる。特に、アニオン性のポリマー微粒子をインクに含有せしめることにより、安全性の高いインクが得られる。
【0051】
処理液と反応して、増粘・凝集作用を起こすポリマー微粒子をインクに用いることにより、画像の品位を高めることができると同時に、ポリマー微粒子の種類によっては、ポリマー微粒子が記録媒体で皮膜を形成し、画像の耐擦性、耐水性をも向上させる効果を有する。
【0052】
ポリマーインクでの分散方法はエマルジョンに限定するものではなく、溶解していても、コロイダルディスパージョン状態で存在していてもよい。ただし、定着性向上といった機能を充分に発現させるには、比較的高分子のポリマーを高濃度1重量%〜20重量%に添加することが必要である。しかし、上記材料を液体に溶解させて添加しようとすると高粘度化し、吐出性とインク分散安定性が低下する。適切な材料を高濃度に添加し、且つ、粘度上昇を抑えるには、溶解ポリマーやコロイダルエマルジョンよりもポリマー微粒子分散物として添加する手段が有効である。
【0053】
ポリマー微粒子は、乳化剤を用いてポリマー微粒子を分散させたものであっても、また、乳化剤を用いないで分散させたものであってもよい。乳化剤としては、通常、低分子量の界面活性剤が用いられているが、高分子量の界面活性剤を乳化剤として用いることもできる。外殻がアクリル酸、メタクリル酸などにより構成されたカプセル型のポリマー微粒子(粒子の中心部と外縁部で組成を異にしたコア・シェルタイプのポリマー微粒子)を用いることも好ましい。コア部にラテックスのガラス転移点が0℃以下となる低ガラス転移点材質を用い、シェル部にガラス転移点が50℃以上となる材質でラテックスを作製した場合、分散時は安定し、定着は見かけの最低造膜温度が下がるので、低温で良好な定着を得られる。
【0054】
低分子量の界面活性剤を用いていないポリマー微粒子は、高分子量の界面活性剤を用いたポリマー微粒子、乳化剤を使用しないポリマー微粒子を含めてソープフリーラテックスと呼ばれている。例えば上記に記述した、スルホン酸基、カルボン酸基等の水に可溶な基を有するポリマー(可溶化基がグラフト結合しているポリマー、可溶化基を持つ単量体と不溶性の部分を持つ単量体とから得られるブロックポリマー)を乳化剤として用いたポリマー微粒子もこれに含まれる。
【0055】
本発明では、特にこのソープフリーラテックスを用いることが好ましく、ソープフリーラテックスは従来の乳化剤用いて重合したポリマー微粒子にくらべ、乳化剤がポリマー微粒子の反応凝集や造膜を阻害したり、遊離した乳化剤がポリマー微粒子の造膜後に表面に移動し、顔料とポリマー微粒子の混合した凝集体と記録媒体との接着性を低下させる懸念がない。
【0056】
インクにポリマー微粒子として添加する樹脂成分としては、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、スチレン−イソプレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂などが挙げられる。ポリマー微粒子への高速凝集性付与の観点から、解離度の小さいカルボン酸基を有するものがより好ましい。カルボン酸基はpH変化によって影響を受けやすいので、分散状態が変化しやすく、凝集性が高い。
【0057】
ポリマー微粒子のpH変化に対する分散状態の変化は、アクリル酸エステルなどのカルボン酸基を有する、ポリマー微粒子中の構成成分の含有割合によって調整することができ、分散剤として用いるアニオン性の界面活性剤によっても調整可能である。
【0058】
ポリマー微粒子の樹脂成分は、親水性部分と疎水性部分とを併せ持つ重合体であるのが好ましい。疎水性部分を有することで、ポリマー微粒子の内側に疎水部分が配向し、外側に親水部分が効率よく外側に配向され、液体のpH変化に対する分散状態の変化がより大きくなる効果があり、凝集がより効率よくおこなわれる。
【0059】
市販のポリマー微粒子の例としては、ジョンクリル537、7640(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、ジョンソンポリマー株式会社製)、マイクロジェルE−1002、E−5002(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、日本ペイント株式会社製)、ボンコート4001(アクリル系樹脂エマルジョン、大日本インキ化学工業株式会社製)、ボンコート5454(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、大日本インキ化学工業株式会社製)、SAE−1014(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、日本ゼオン株式会社製)、ジュリマーET−410、FC−30(アクリル系樹脂エマルジョン、日本純薬株式会社製)、アロンHD−5、A−104(アクリル系樹脂エマルジョン、東亞合成株式会社製)、サイビノールSK−200(アクリル系樹脂エマルジョン、サイデン化学株式会社製)、ザイクセンL(アクリル系樹脂エマルジョン、住友精化株式会社製)などが挙げられるが、これに限定するものではない。
【0060】
ラテックスのガラス転移点Tgはプロセス上、定着時に影響の強い値で、常温保存時の安定性と加熱後の転写性と定着性を両立するために、50℃以上120℃以下であることが好ましい。更に、最低造膜温度MFTはプロセス上、定着時に影響の強い値で、低温で充分な定着を得るために100℃以下、さらに好ましくは50℃以下である。
【0061】
ラテックス含有インクは紙メディアへの定着性を向上させ、且つ、凝集体の凝集力を向上させて転写に掛かる応力によって、画像ドットが分断される泣き別れの現象を抑えるためにインクには顔料に対し重量濃度で2倍以上のラテックス樹脂が含有されている構成が転写性と定着性を良好にするために好ましい。
【0062】
インクに添加するポリマー微粒子の分子量は融着したときの接着力を鑑みて、5,000以上が好ましい。5,000未満だと、凝集したときのインク凝集体の内部凝集力向上や記録媒体に画像の定着性に効果が不足し、また画質改善効果が不足する。
【0063】
ポリマー微粒子の体積平均粒子径は、10nm〜1μmの範囲が好ましく、10〜500nmの範囲がより好ましく、20〜200nmの範囲が更に好ましく、50〜200nmの範囲が特に好ましい。10nm以下では、凝集しても画質の改善効果、転写性の向上に効果があまり期待できない。1μm以上では、インクのヘッドからの吐出性や保存安定性が悪化するおそれがある。また、ポリマー粒子の体積平均粒子径分布に関しては、特に制限は無く、広い体積平均粒子径分布を持つもの、又は単分散の体積平均粒子径分布を持つもの、いずれでもよい。
【0064】
また、ポリマー微粒子を、インク内に2種以上混合して含有させて使用してもよい。
【0065】
本発明のインクに添加するpH調整剤としては中和剤として、有機塩基、無機アルカリ塩基を用いることができる。pH調整剤はインクジェット用インクの保存安定性を向上させる目的で、該インクジェット用インクがpH6〜10となるように添加するのが好ましい。
【0066】
インクは、乾燥によってインクジェットヘッドのノズルが詰まるのを防止する目的から、水溶性有機溶媒を含有することが好ましい。このような水溶性有機溶媒には、湿潤剤及び浸透剤が含まれる。
【0067】
水溶性有機溶媒としては、例えば、多価アルコール類、多価アルコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒等が挙げられる。具体例としては、多価アルコール類では、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等が挙げられる。多価アルコール誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。含窒素溶媒としては、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等が、アルコール類としてはエタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類が、含硫黄溶媒としては、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルフォラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。その他、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等を用いることもできる。
【0068】
本発明のインクには、界面活性剤を含有することができる。
【0069】
界面活性剤の例としては、炭化水素系では脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。
【0070】
更に、特開昭59−157636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも使うことができる。また、特開2003−322926号、特開2004−325707号、特開2004−309806号の各公報に記載されているようなフッ素(フッ化アルキル系)系、シリコーン系の界面活性剤も用いることができる。 これら表面張力調整剤は消泡剤としても使用することができ、フッ素系、シリコーン系化合物やEDTAに代表されるキレート剤等も使用することができる。
【0071】
表面張力を下げて中間転写体上での又は処理液上でのぬれ性を高め、二液の接触面積の増加により効果的に凝集作用がすすむ。
【0072】
溶媒不溶性材料の濃度は吐出に適切な粘度20mPa・s以下を考慮して1wt%以上20wt%以下であることが好ましい。その中でも、溶媒不溶性材料である顔料を用いるときは、画像の光学濃度を得る為には4wt%以上の顔料濃度で必要である。
インクの表面張力は、吐出安定性を考慮して20mN/m以上40mN/m以下であることが好ましい。
【0073】
その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、等も添加することができる。
【0074】
インクの作製法を説明する。まず、インクを分散する方法としてはボールミル、サンドミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、等があるが、微細な粒子を比較的単分散できる方法として超音波ホモジナイザーを用いる方法が適切である。超音波ホモジナイザーは超音波による溶液中にキャビテーション現象で気泡を発生、消滅させ、その際の衝撃で溶液中の粗大粒子を粉砕することができる。超音波照射時間、又は照射エネルギー、又はその両方を調整することで、平均粒子径と粗大粒子の含有率を調整することができる。
【0075】
〔粒子含有液(処理液)〕
本発明に係る粒子含有液(処理液)は、液体分散媒(溶媒)に粒子が分散されていることが好ましい。粒子としては、アクリル、スチレンアクリル、エチレンアクリル、エチレンアイオノマー、エチレン、スチレンブタジエン、メタクリル酸メチルブタジエン、ポリエチレン、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、エチレン酢酸ビニル、ポリプロピレン、アクリロニトリルブタジエン、カルボキシ変性スチレンブタジエン、スチレンイソプレン、酸化チタン、シリカ、アルミナ、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、カルナバワックス、が挙げられる。その中でも、転写後の画像において、微粒径でも無機粒子が画像上に残ると、表面散乱を発してしまうため、処理液に含有させる粒子は熱溶解性樹脂粒子(熱溶解性のポリマー粒子)が好ましく用いられる。熱溶融性樹脂粒子としては、アクリル、スチレンアクリル、エチレンアクリル、エチレンアイオノマー、エチレン、スチレンブタジエン、メタクリル酸メチルブタジエン、ポリエチレン、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、エチレン酢酸ビニル、ポリプロピレン、アクリロニトリルブタジエン、カルボキシ変性スチレンブタジエン、スチレンイソプレン、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、カルナバワックス、が挙げられる。その中でも、アクリル重合物(アクリル、スチレンアクリル、エチレンアクリル、等)がガラス転移点が50℃前後で熱特性として良好な材料として挙げられる。前述の様にガラス転移点は50℃以上120℃以下であることが好ましい。ガラス転移点が高すぎると定着温度が必要となり、システム不可が大きくなる。一方、ガラス転移点が低すぎると分散状態で環境変動を受け易く、分散不安定となり、転写体に付与する際に支障となりやすいからである。
【0076】
また、液体分散媒としては、水、石油系炭化水素類(脂肪族炭化水素類)、芳香族系炭化水素類、アルコール系、エステル系、ケトン系の液体分散媒を用いることが出来る。
【0077】
石油系は、脂肪族炭化水素類(n−へキサン、n−へプタン)が主で、ミネラルスピリットや高沸点石油溶剤等がある。脂肪族炭化水素類や芳香族系炭化水素類は、ポリマー固形分の溶解力が大きく、分散物によっては用いることが出来ない。芳香族系炭化水素ではトルエン、キシレン等がある。 アルコール系としてはメチルアルコール、エチルアルコール、IPA、ブチルアルコール等がある。エステル系では酢酸エチル、酢酸ブチルがある。 ケトンは溶解力が大きく、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン(アノン)がある。グリコールモノエチルを始めとするグリコール及びその誘導体も用いられる。
【0078】
その中で、水を主成分として用いることが特に好ましい。顔料や定着ポリマーといったインク分散物を溶解することが無く、インク分散物材料を幅広く選択できるからである。また、溶剤に比べて揮発性有機化合物(VOC(volatile organic compounds))対策としても好ましく用いることが出来る。荷電性粒子を分散させるためには電解質を取り除いたイオン交換水を用いるのが好ましい。
【0079】
処理液をインクジェットヘッドで打滴して付与する場合には、処理液に乾燥防止剤を加えることが好ましい。乾燥防止剤はインクジェット記録方式に用いるノズルのインク噴射口において該インクジェット用インクが乾燥することによる目詰まりを防止する目的で好適に使用される。乾燥防止剤としては、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤が好ましい。具体的な例としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール類、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等の複素環類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物、尿素誘導体が挙げられる。これらのうちグリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールがより好ましい。また上記の乾燥防止剤は単独で用いても良いし2種以上併用しても良い。これらの乾燥防止剤はインク中に10〜50質量%含有することが好ましい。
【0080】
また、インク分散媒中に浸透促進剤を加えても良い。浸透促進剤を加えると紙へインクが浸透する時間が短縮化され、紙の表裏でインク濃度がほぼ均一となり、紙のカール、カックルを抑制することができる。浸透促進剤としてはエタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール等のアルコール類やラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムやノニオン性界面活性剤等を用いることができる。これらはインク中に5〜30質量%含有すれば通常充分な効果があり、印字の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こさない添加量の範囲で使用するのが好ましい。
【0081】
処理液は、上記粒子と上記液体分散媒とを、例えば、粒子固形分濃度として5〜30重量%程度で添加して作ることができる。画像の仮固定性と転写性を両立して、十分な機能を得る為には5重量%以上が好ましい。さらには、画像の光沢性を適切に抑えるためには30重量%程度が好ましい。
【0082】
本発明に係る処理液として、インクのpHを変化させることにより、インクに含有される溶媒不溶性材料(顔料及びポリマー微粒子)を凝集させ、凝集物を生じさせるような処理液が好ましい。
【0083】
処理液の成分として、リン酸、メタンスルホン酸、ホスホン酸、ホウ酸、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ビリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等の中から選ばれることが好ましい。
【0084】
また、本発明に係る処理液の好ましい例として、多価金属塩あるいはポリアリルアミンを添加した処理液を挙げることができる。これらの化合物は、1種類で使用されてもよく、2種類以上併用されてもよい。
【0085】
本発明に係る処理液はインクとのpH凝集性能の観点からpHは1〜6であることが好ましく、pHは2〜5であることがより好ましく、pHは3〜5であることが特に好ましい。
【0086】
本発明に係る処理液に中における、インクの顔料およびポリマー微粒子を凝集させる成分の添加量としては、液体の全重量に対し、0.01重量%以上20重量%以下であることが好ましい。0.01重量%以下の場合は処理液とインクが接触時に、濃度拡散が十分に進まずpH変化による凝集作用が十分に発生しないことがある。また20重量%以上であると、インクジェットヘッドからの吐出性が悪化することがある。
【0087】
本発明に係る処理液は、乾燥によってインクジェットヘッドのノズルが詰まるのを防止する目的から、水、その他添加剤溶性有機溶媒を含有することが好ましい。このような水、その他添加剤溶性有機溶媒には、湿潤剤及び浸透剤が含まれる。これらの溶媒は、水、その他添加剤と共に単独若しくは複数を混合して用いることができる。
【0088】
水、その他添加剤溶性有機溶媒の含有量は処理液の全重量に対し、60重量%以下であることが好ましい。60重量%以上よりも多い場合は処理液の粘度が増加し、インクジェットヘッドからの吐出性が悪化することがある。
【0089】
処理液には、定着性および耐擦性を向上させるため、樹脂成分をさらに含有してもよい。樹脂成分は、処理液をインクジェット方式によって打滴する場合には、ヘッドからの吐出性を損なわないもの、保存安定性があるものであればよく、水溶性樹脂や樹脂エマルジョンなどを自由に用いることができる。
【0090】
インクと逆極性のポリマー微粒子を処理液に含ませ、インク中の顔料及びポリマー微粒子と凝集させることによってさらに凝集性を高めてもよい。
【0091】
また、インクに含まれるポリマー微粒子成分に対応した硬化剤を処理液に含有し、二液が接触後、インク成分中の樹脂エマルジョンが凝集するとともに架橋又は重合するようにして、凝集性を高めてもよい。
【0092】
処理液の分散媒については、乾燥の影響が強いとローラー塗布時にローラーに粒子が乾燥付着し、安定化しない現象が確認できている。従って、グリセリン、ジエチレングリコールといった高沸点溶媒を添加することが好ましい。
【0093】
処理液の非浸透媒体への濡れ性良化、処理液の消泡を促進、粒子の分散性向上のために、処理液に界面活性剤を添加させることが好ましい。
【0094】
界面活性剤の例としては、炭化水素系では脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。
【0095】
更に、特開昭59−157636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも使うことができる。また、特開2003−322926号、特開2004−325707号、特開2004−309806号の各公報に記載されているようなフッ素(フッ化アルキル系)系、シリコーン系の界面活性剤も用いることができる。これら表面張力調整剤は消泡剤としても使用することができ、フッ素系、シリコーン系化合物やEDTAに代表されるキレート剤等も使用することができる。
【0096】
表面張力を下げて中間転写体上でのぬれ性を高めるのに効果がある。また、インクを先立って打滴する場合においてもインク上でのぬれ性を高め、二液の接触面積の増加により効果的に凝集作用がすすむ。
【0097】
インク中の顔料や定着用ポリマー粒子といった溶媒不溶性材料に対しては、濃度で等量、もしくは倍以上の質量の粒子を処理液中に含有させることが好ましい。
【0098】
一方、処理液をインクジェットで打滴するためには、吐出が可能な粘度に抑える必要があり、それほど高濃度に粒子を含有できない。従って、粘度20mPa・s以下を考慮して粒子濃度は5重量%以上20重量%以下が好ましい。処理液をローラー塗布する場合には、処理液の粘度は1mPa・s以上、2000mPa・s以下となることから、20重量%より高い粒子濃度が許容される。
【0099】
本発明に係る処理液の表面張力は、10〜50mN/mであることが好ましく、直接記録を行う場合には浸透性記録媒体への浸透性、また中間転写方式によって記録を行う場合には、中間転写体上でのぬれ性と液滴の微液滴化および吐出性の両立の観点からは、15〜45mN/mであることが更に好ましい。
【0100】
その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線、吸収剤、等も添加することができる。
【0101】
〔画像形成装置の全体構成〕
図1は本実施形態の画像形成装置の例である、インクジェット記録装置の概略構成を示した模式図である。図示するように、本実施形態のインクジェット記録装置10は、非浸透媒体(中間転写体)12、粒子含有液(処理液)付与部14、インク吐出部16、及び転写部18を主たる構成とし、更に、溶媒除去部20、クリーニング部22、及び画像定着部24を備えている。
【0102】
中間転写体12は所定幅を有する無端状のベルトで構成され、複数のローラー26に巻き掛けられた構造となっている。本実施形態では、一例として4つのローラー26A〜26Dが用いられている。中間転写体12としてドラム状部材や板状部材を用いる態様もある。
【0103】
複数のローラー26のうち少なくとも1つの主ローラーにはモータ(不図示)の動力が伝達され、このモータの駆動により中間転写体12が各ローラー26(26A〜26D)の外側を図1の反時計回りの方向(以下、「転写体回転方向」という。)に回転するように構成されている。
【0104】
処理液付与部14には、処理液(S)を塗布するローラー塗布機30Sが設けられている。これにより、中間転写体12の記録面12a上に処理液が付与される。尚、幅広い液物性の処理液を用いるためにはローラー塗布方式が好ましい。ローラー塗布方式では粘度1mPa・s以上、2000mPa・s以下までの処理液付与が可能になり、粒子濃度が高い条件でも塗布が可能である。
【0105】
インク吐出部16は、処理液付与部14の転写体回転方向下流側に配置される。インク吐出部16には、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)の各色インクに対応する記録ヘッド(インク用ヘッド)30K、30C、30M、30Yが設けられている。各インク用ヘッド30K、30C、30M、30Yは中間転写体12に対向する吐出面からそれぞれ対応する各色インクを吐出する。これにより、中間転写体12の記録面12a上に各色インクが付与される。
【0106】
インク用ヘッド30K、30C、30M、30Yはいずれも、中間転写体12上に形成される画像の最大記録幅(最大記録幅)に渡って多数の吐出口(ノズル)が形成されたフルラインヘッドとなっている。中間転写体12の幅方向(図1の紙面表裏方向)に短尺のシャトルヘッドを往復走査しながら記録を行うシリアル型のものに比べて、中間転写体12に対して高速に画像記録を行うことができる。もちろん、シリアル型であっても比較的高速記録が可能な方式、例えば、1回の走査で1ラインを形成するワンパス記録方式に対しても本発明は好適である。
【0107】
本実施形態では、各記録ヘッド(インク用ヘッド30K、30C、30M、30Y)は全て同一構造であり、以下では、これらを代表して符号30で記録ヘッドを表すものとする。尚、本発明の実施に際しては、例えば、処理液(S)を付与する手段がローラー塗布機30Sではなく、インク用ヘッド30K、30C、30M、30Yと同一構造であってもよい。
【0108】
ローラー塗布機30Sから中間転写体12に処理液Sが塗布されると、中間転写体12の回転に伴って、中間転写体12の処理液が付与された領域は各インク用ヘッド30K、30C、30M、30Yの真下に順次移動し、各インク用ヘッド30K、30C、30M、30Yからそれぞれ対応する各色インクが吐出される。処理液はインク中の溶媒不溶性材料(色材等)を凝集させる機能を有している。
【0109】
処理液付与量とインク付与量は必要に応じて調節することが好ましい。例えば、転写する記録媒体に応じて、処理液とインクが混合してできる凝集体の粘弾性等の物性を調節するため等のために処理液の付与量を変えてもよい。
【0110】
溶媒除去部20は、インク吐出部16の転写体回転方向下流側に配置される。溶媒除去部20には、中間転写体12を挟んでローラー26Aに対向する位置に溶媒除去ローラー32が設けられている。溶媒除去ローラー32はローラー状の多孔質体で構成され、中間転写体12の記録面12aに当接させるように配置されている。他の態様として、エアナイフで余剰な溶媒を中間転写体12から取り除く方式、加熱して溶媒を蒸発させ除去する方式等がある。溶媒除去方式としては、いずれでもよいが、好ましくは熱によらない方式を用いる方がよい。転写体表面を加熱又は転写体上の凝集体に熱を付与して溶媒を蒸発させる手段では、凝集体の過剰加熱により、溶媒を過剰除去し転写時において好ましい凝集体の粘弾性を維持できず、かえって転写性が低下することがある。中間転写体の熱によるインクジェットヘッドからのインク吐出性への影響も懸念される。
【0111】
溶媒除去部20では、溶媒除去ローラー32によって中間転写体12の記録面12a上の溶媒を除去する。このため、中間転写体12の記録面12a上に処理液が多く付与されるような場合でも、溶媒除去部20で溶媒が除去されるため、転写部18で記録媒体34に多量の溶媒(分散媒)が転写されることはない。従って、記録媒体34として紙が用いられるような場合でも、カール、カックルといった水系溶媒に特徴的な問題が発生しない。尚、溶媒除去方式としては、上記したローラー状の多孔質体を中間転写体に当接させる方式、エアナイフで余剰な溶媒を転写体から取り除く方式、加熱して溶媒を蒸発除去する方式、等がある。その中でも、溶媒除去によるエネルギー消費量が小さく、除去したインクを回収しやすい点で、溶媒除去方式はローラー吸収回収方式が好ましい。
【0112】
溶媒除去部20によって、インク凝集体から過剰な溶媒を除去することによって、処理液(粒子含有液)の粒子にインクの色材を仮固定することができ、滲みのない高品質な画像を得ることができる。
【0113】
尚、溶媒除去部20によって、溶媒すべてを除去する必要は必ずしもない。過剰に除去しすぎてインク凝集体を濃縮しすぎるとインク凝集体の転写体の付着力が強くなりすぎて、転写に過大な圧力を必要とするため好ましくない。むしろ転写性に好適な粘弾性を保つためには、少量残留させるのが望ましい。溶媒を少量残留させることで得られる効果として、凝集体は疎水性であり、揮発しにくい溶媒成分(主にグリセリンなどの有機溶剤)は親水性であるので、インク凝集体と残留溶媒成分は溶媒除去実施後分離し、残留溶媒成分からなる薄い液層がインク凝集体と中間転写体との間に形成される。従って、インク凝集体の転写体への付着力は弱くなり、転写性向上に有利である。
【0114】
転写部18は、溶媒除去部20の転写体回転方向下流側に配置される。転写部18には、中間転写体12を挟んでローラー26Bに対向する位置に加圧ローラー36が設けられている。加圧ローラー36の内部には加熱ヒータ37が設けられており、この加熱ヒータ37によって加圧ローラー36の外周面の温度が上昇するようになっている。記録媒体34は中間転写体12と加圧ローラー36の間を通過するように図1の左側から右側に搬送される。中間転写体12と加圧ローラー36の間を通過する際、中間転写体12の記録面12aに記録媒体34の表面側を接触させ、記録媒体34の裏面側から加圧ローラー36で加圧することで、中間転写体12の記録面12aに形成された画像が記録媒体34上に転写形成される。
【0115】
このように、本発明においては、加熱部を転写体の転写部のみに限定する構造が望ましい。この構造であれば、転写体全面を加熱したりすることによる過剰な熱負荷や凝集体に含まれる溶媒成分の過剰除去を防ぐことができる。また、インク凝集体が転写部18で加熱されることにより、インク凝集体に含まれていた溶媒のほとんどが除去され、加圧による物理的なインク凝集体の濃縮効果と相まって促進される樹脂の融着により、加圧加熱ローラーに転写体が接している領域における、転写工程直前から転写実施時までの短い間に、より強い内部凝集力を凝集体に付与することができる。
【0116】
尚、転写前に溶媒除去工程を経ていなくても、加熱により溶媒を短時間のうちに除去できるので転写率にはさほど問題とはならないが、溶媒除去工程を経ていれば、転写部で蒸発させる溶媒の絶対量が少なくてすむため、この濃縮効果はさらに効果的なものとなるばかりか、転写時の熱負荷も軽減することができる。また、転写部での加熱によるインク凝集体の効果的な濃縮により、記録媒体に転写後も良好な定着性や光沢性を画像に付与することができる。
【0117】
更に、転写時の温度及び圧力は記録媒体や印字条件等によって好適な条件に自由に調節してもよい。
【0118】
また、中間転写体12の表面には、必要に応じて離型性の表面層を有する構造にすることもできる。離型性付与転写体表面においては、表面エネルギーが低く、剥離性が高い性質を有していることから、高い転写率を実現することが可能である。本発明においては、特に離型性を付与しなくても十分な転写率を得ることができるが、クリーニング負荷などの観点から中間転写体表面に離型性を付与しても何ら問題はない。ここで、本発明で表記する離型性表面とは、臨界表面張力が30 m N/m 以下、若しくは水に対する接触角が75° 以上の表面を指す。
【0119】
中間転写体12の表面層に用いられる好ましい材料としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド系樹脂等の公知の材料が挙げられる。その中でも、ポリイミド系樹脂のポリイミドフィルムを使用することが好ましい。ポリイミド系樹脂は処理液の濡れやすさと、クリーニング性から特に好ましく使用できる。更に好ましくは、ポリイミドフィルムをフッ素エラストマー(SIFEL、信越化学製)で表面処理し、低表面エネルギー化することで、より高い転写率を得られる。その場合のフィルム表面エネルギーは20mN/m以下まで低下するが、処理液にはオルフィンだけではなく、フッ素系の界面活性剤でより15mN/mから19mN/mまで低表面張力化することが好ましい。
【0120】
クリーニング部22は、転写部18の転写体回転方向下流側であって、処理液付与部14の転写体回転方向上流側に配置される。クリーニング部22には、中間転写体12を挟んでローラー26Cに対向する位置にクリーニングローラー38が設けられ、中間転写体12の記録面12aに当接させるように配置され、中間転写体12の記録面12a上の転写後の残留物等の除去を行う。
【0121】
クリーニングローラー38としては、柔軟性ある多孔質部材からなり、洗浄液付与手段にて洗浄液を染み込みながら中間転写体表面(記録面12a)を洗浄する方式,表面にブラシを備え、洗浄液を中間転写体表面に付与しながらブラシで中間転写体表面のゴミを除去する方式、また、柔軟性のあるブレードをローラー表面に備えて中間転写体表面の残留物を掻き落とす方式などがある。クリーニングローラー38表面の線速は中間転写体表面の線速と等しくするよりも、遅く、または速く設定した方が残留物の除去率を高くすることができる。クリーニングローラー38表面と中間転写体表面の速度差にしたがって中間転写体表面にせん断力が生じ、残留物を効率的に除去することが可能となる。
【0122】
本発明においては、インク凝集体を転写後、記録媒体により強固な定着性を付与するために別途必要に応じて、画像定着部24を設けてもよい。
【0123】
画像定着部24は、転写部18の記録媒体排出側(図1の右側)に配置される。画像定着部24には、記録媒体34の表裏面に2つの定着ローラー40A、40Bが設けられており、これら定着ローラー40A、40Bで記録媒体34上に転写形成された画像を加圧、加熱することで、記録媒体34上の記録画像の定着性を向上させることができる。尚、定着ローラー40A、40Bとしては、1個の加圧ローラーと1個の加熱ローラーからなる一対のローラー対が好ましいが、これに限定されるものではない。
【0124】
また、本発明においては、記録媒体が転写部18に搬送される前に、記録媒体34に加熱処理を施す手段(不図示)を設けることもできる。
【0125】
インク凝集体に直接接触する記録媒体34がすでに所望の転写温度に達していることにより、より転写ニップ時の短時間の間に、熱伝達を効率よく行うことができる。また、転写ニップ時のみで加熱する場合に比べ、予め記録媒体を所望の転写温度にしておくことで、インク凝集体と記録媒体表面が接触する。
【0126】
この温度は記録媒体34の種類によって自由に調節することができ、この温度制御によりインク凝集体の粘弾性を制御することも可能である。
【0127】
記録媒体34が、普通紙や上質紙など表面にパルプ繊維による凹凸が多く、インク凝集体と記録媒体表面との間にアンカー効果を期待することができる場合は、インク凝集体の粘弾性を転写部での加熱温度だけでなく、直接転写時に接するメディア表面の加熱温度を制御して調節することにより、最適なインク凝集体の粘弾性で普通紙や上質紙などに良好な定着性を付与することができる。
【0128】
また、記録媒体34が、塗工紙などの表面が平滑な記録媒体に対しては、インク凝集体を表面に凹凸がある記録媒体よりは硬めに粘弾性を制御することによって、転写後も良好な定着性を付与するといったことも可能である。
【0129】
このように構成された画像形成装置において、処理液として本発明に係る粒子含有液を用いることで、粒子含有液の粒子にインクの色材を仮固定することができるため、滲みのない高品質な画像を得ることができるとともに、粒子含有液の粒子によってインク像が非浸透媒体から離れやすくできるので、非浸透媒体である中間転写体から記録媒体へ転写する際の転写性を向上することができる。
【実施例】
【0130】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0131】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0132】
本発明で使用するインク、処理液を後述の組成に従い、作製した。
【0133】
(作成したインク)
【0134】
【表1】

【0135】
上記の顔料、ラテックス以外のインク組成物
・グリセリン 20重量%
・ジエチレングリコール 10重量%
・オルフィンE1010(日信化学工業製) 2重量%
・イオン交換水 残量
尚、顔料としてはシアン顔料 C.I.Pigment Blue−15:3を使用した。
【0136】
本実施例で用いたインクの詳細な作製法を説明する。まず、顔料を分散する方法としてはボールミル、サンドミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等があるが、微細な粒子を比較的単分散できる方法として超音波ホモジナイザーを用いる方法が適切である。超音波ホモジナイザーは超音波による溶液中にキャビテーション現象で気泡を発生、消滅させ、その際の衝撃で溶液中の粗大粒子を粉砕することができる。超音波照射時間、又は照射エネルギー、又はその両方を調整することで、平均粒径と粗大粒子の含有率を調整することができる。分散剤として、メタクリル酸(A)、ベンジルメタクリレート(B)、エトキシトリエチレングリコールメタクリレート(C)のABC型のブロックポリマーとして使用した。ポリマー、水酸化カリウム45%の水溶液、脱イオン水として均一になるまで混合を行った。該ポリマーに、C.I.Pigment Blue−15:3及び脱イオン水を加えて混合し、ディスパー分散機で攪拌して予備混合を行なった。次いでこの予備混合物を2重タンクに入れ、18℃の冷水で冷却しながらディスパー羽根にて攪拌しつつ、超音波ホモジナイザーUS-1200T型((株)日本精機製作所)でチップを用いてバッチ照射を行なった。以上の方法はあくまでも顔料分散方法の1つであり、これに制限されるものではない。
【0137】
前述の方法にて得られた顔料の分散物に、スチレンアクリル系ラテックス(平均粒径57nm、ジョンクリル537、ジョンソンポリマー製)を添加し、グリセリン、ジエチレングリコール、オルフィンE1010(日信化学工業製)、イオン交換水を所定の所望の質量比になるように調液し、混合攪拌を行ない、インクを得た。上記スチレンアクリル系ラテックスの他にも、オールアクリル系ラテックス(平均粒径168nm、ウルトラゾールA−25、ガンツ化成製)、スチレンアクリル系ラテックス(平均粒径89nm、ジョンクリル7640、ジョンソンポリマー製)、アクリル系ラテックス(平均粒径30nm、ジュリマーET-410、日本純薬製)、等を用いることができる。
【0138】
ラテックスには低pHの処理液と反応して凝集する反応ラテックスと、凝集しない無反応ラテックスが存在するが、凝集体の凝集密度が高く、泣き別れ現象が発生しないためにも反応性ラテックスを用いることがより好ましい。
【0139】
インクは調液後平均孔径0.5μmのアセチルセルロース膜フィルタ(富士フイルム製)で濾過し、粗大粒子を除去した。
【0140】
最終的に上記組成のインクを得た。
【0141】
インク1をイオン交換水で1000倍希釈して粒度分布計測を行なったところ、平均顔料粒子径は89nmであった。
【0142】
(作成した処理液)
【0143】
【表2】

【0144】
上記のラテックス以外の処理液組成物
・グリセリン 20重量%
・ジエチレングリコール 10重量%
・オルフィン 1重量%
・pH調整剤 微量
・イオン交換水 残量
今回用いたインクは低pHの処理液でpHは3.6、インクは8.0から8.9であった。インクに分散されている顔料や反応性ラテックスは、低pHの処理液と混ざると凝集する。尚、インクセット(インクと処理液)については、Ca2+,Mg2+,Al3+,Fe2+,Fe3+,Zn2+,Ni2+,Co2+,Cu2+といった多価金属イオンによる凝集反応でも、Polyallylamine, Polyethylene imineといったカチオン性ポリマーが分散されている処理液を用いても実質的な効果は同じである。
【0145】
粒径は粒度分布計(日機装製、Nanotrac UPA-EX150)により測定を行なった。この粒度分布計は動的光散乱法という測定原理を用いている。粒子は直径数μm以下になると、溶媒分子運動の影響を受け、ブラウン運動を生じる。この運動の速さは粒子の大きさによって異なり、小さい粒子は速く、大きい粒子はゆっくり動く。これらの運動した粒子へレーザー光を照射すると、その速度に応じた位相の違う光の散乱が生じ、散乱光を分光するとドップラーシフトが得られる。動的光散乱法とはドップラーシフトされた粒子径情報を検出して粒度分布を求める方法である。不溶性材料の粒径分布測定ではインク、処理液ともに何れも1000倍希釈を行ない、透過モード、非球形として計測を行なっている。
【0146】
インク表面張力測定は25℃標準条件における値を表面張力計(CBVP-Z,協和界面科学製)で測定した。インクの表面張力は30〜36mN/m。処理液の表面張力は25〜35mN/mであった。
【0147】
インク粘度は、25℃標準条件における値をインク粘度計(DV-II+,BROOKFIELD社製)で測定した。インク、処理液粘度は4〜7mPa・sであった。処理液粘度は3〜10mPa・sであった。
【0148】
(評価方法)
画像形成装置においては、処理液はローラー塗布機を用いて中間転写体に設けた。インクはインクジェットヘッドにて付与。尚、中間転写体とインクジェットノズルとの距離は0.5mmに設定した。中間転写体はポリイミドフィルムにフッ素エラストマー(SIFEL、信越化学製)を30μm厚で付与したものを用いた。溶媒除去を実施した。中間転写体及び記録媒体の搬送速度は0.5m/sとした。記録媒体は、アート紙(三菱製紙社製、特菱アート)を使用した。また、画像形成装置は、シングルパス描画機にて描画し、ヘッドの駆動方式はピエゾ方式であるGelJet5000ヘッド(リコー社製)を使用した。インク供給方式はチューブ式の供給方式を用いた。溶媒除去方式は、ローラー吸収回収方式であり、吸収材として金属多孔質体(アルミナ粒子を焼結した材質)を使用した。
【0149】
処理液(粒子含有処理液)は中間転写体に5±1μmの厚みを付与した。尚、処理液の厚みはローラーの接触圧力,ローラー径,ローラー表面形状で決定されるが、何れの条件でも処理液厚みは5±1μmとなることは転写体上にポリイミドフィルムサンプル10mm×10mmを置き、ローラー塗布前後の質量上昇から確認している。
【0150】
そこに画像をシアンインクのみ、2pl、600dpiの条件で液滴同士が比較的離れ、独立するように描画した。
【0151】
描画直後に顕微鏡で中間転写体の搬送を止めて、中間転写体上の画像を中間転写体の上に設置したカメラで撮影した。隣接するドット間の距離を測定し、インクジェット専用紙に打滴した際のドット間距離を目標値として、(ドット間距離)−(目標値)の絶対値をドット移動量として測定した。ドット移動量が5μmを越えるもの状態を×、2μm以上5μm未満となるものを○、2μm未満となるものを◎、として評価した。尚、ドットの移動量の閾値を5μmとしたのは、画像として出力した際の視認性を基準としている。理想的には着弾ドット直径の10%以下で2μm以下であることがより好ましい。
【0152】
また、アート紙への転写実験を行なった。得られた紙上の度と画像を顕微鏡で観察10ドットの内、正確に転写されたドットの個数をカウントし、画像の転写率が90%未満となるものを×、90%以上95%未満のものを○、95%以上ものを◎、とした。
「処理液に粒子含有の効果」
【0153】
【表3】

【0154】
【表4】

【0155】
表3及び表4より、含有粒子の粒子濃度については、仮固定性、転写性向上の効果を得るためには5重量%以上含有させた方が好ましい。
【0156】
尚、表には記載していないが、処理液に含有させる粒子は、シリカ、アルミナ、酸化チタンといった無機粒子の場合では、処理液中で粒子凝集が発生しやすい。オールアクリル系ラテックスといった溶融性ポリマー粒子の方がプロセスとして適している。
【0157】
粒子の形状は板状、繊維状のものよりも真球に近い形の方が画像仮固定性と転写性で好ましい。
【0158】
粒子の粒径も関与していると考えられ、ポリマー粒子では粒径dが大きいものの方が画像の仮固定性には適していた。d>100nmの条件がドット位置ずれ性解消には有効となっている。さらに好ましくはd>150nmの条件がドット位置ずれ性解消には有効である。尚、粒径が200nm、300nmのアクリル系粒子を処理液に10重量%含有させたもので評価を行なったところ、画像の仮固定性は良好となっていることを確認している。
【0159】
顔料の粒径は90nm、定着用ポリマー粒子の粒径は57nmであり、インク中の顔料や定着用ポリマー粒子といった溶媒不溶性材料に対しては、粒子サイズで「インク中の溶媒不溶性材料の平均粒径>処理液中の粒子の平均粒径」が、画像の仮固定性と転写性の両立に良好であった。
【0160】
仮固定性が良好となる理由としては、中間転写体と凝集物の付着力は粒子単体では小さいものの付着面積で確保できるためと考えられる。従って、画像形成性向上材料の付与面積は画像領域の面積よりも広いことが好ましい。
【0161】
粒子層(処理液層)の形成により、付着面積が大きく取れるため、凝集物と画像形成性向上材料との間に高い付着力が生じる。また、処理液中で分散される粒子は、低pHで分散性は高いが、インクの様な中〜高pHの液体に対して分散性が低いが、インク滴が着弾したことで、処理液層に分散されていた粒子が凝集し、増粘するため、描画された画像が動きにくくなると考えられる。
【0162】
「インクにラテックス含有の効果」
インクに溶媒不溶性材料であるラテックスを入れる、さらには凝集反応性のあるラテックスを入れる条件では、より転写性が良好になることが知られており、本実施例でもそれにならってラテックス添加インクを用いている。
【0163】
「処理液に含有する粒子のガラス転移温度Tgの影響」
転写温度をガラス転移点よりも高い温度に設定して転写実験を行なった。ローラー温度を90℃、ドラム温度を120℃に設定した。但し、搬送速度が高速なため、ローラー温度と記録媒体温度は一定には成っていない。そこで、別途、照射温度計にて転写直後の記録媒体(アート紙)温度を測定したが、記録媒体は80±5℃となっていた。
【0164】
【表5】

【0165】
処理液に分散させる粒子とインク中の不溶性材料の特性について、「処理液分散粒子のガラス転移点<インクの不溶性材料のガラス転移点」又は、「処理液分散粒子の最低造膜温度<インクの不溶性材料の最低造膜温度」という条件については、高温転写を行なうと、転写率が上昇することが分かった。その理由については、高温下で処理液中の粒子の溶融が起こり、その粒子溶融層が破断することで転写が効率的に行なわれているものと考えられる。
【0166】
尚、記録媒体の搬送速度については、遅い程に高い転写率が上昇することを別途確認している。記録媒体やインク像の表面温度が上がりやすいためである。しかしながら、ユーザーの観点からはプリント速度が早い方が当然好まれるため、搬送速度を0.5m/sよりも低下させることは良い解決策にならない。従って、転写ローラー温度としては80℃以上が好ましく、より好ましくは120℃以上である。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】インクジェット記録装置の概略構成を示した模式図
【符号の説明】
【0168】
10…インクジェット記録装置、12…中間転写体、14…処理液付与部(付与部)、16…インク吐出部、18…転写部、20…溶媒除去部、22…クリーニング部、24…画像定着部、26…溶媒除去ローラー、30…記録ヘッド、30S…記録ヘッド(処理液用ヘッド)、30K、30C、30M、30Y…記録ヘッド(インク用ヘッド)、34…記録媒体、36…加圧ローラー、38…クリーニングローラー、40A、40B…定着ローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非浸透媒体上にインクで形成したインク像を記録媒体へ転写する画像形成方法において、
前記インクを吐出する前の前記非浸透媒体上に粒子含有液を付与することを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記粒子含有液は、液体分散媒に粒子が分散されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記粒子は、熱溶融性樹脂粒子であることを特徴とする請求項2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記インクには、溶媒不溶性材料が含まれていることを特徴とする請求項2又は3に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記インクと前記粒子含有液のどちらか一方、又は両方が凝集反応性を持ち、
該インクと該粒子含有液とが接触した際に前記溶媒不溶性材料又は前記粒子のどちらか一方、又は両方が凝集することを特徴とする請求項4に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記粒子の凝集力は、前記溶媒不溶性材料の凝集力よりも低いことを特徴とする請求項5に記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記溶媒不溶性材料の平均粒径は、前記粒子の平均粒径よりも小さいことを特徴とする請求項4〜6の何れか1に記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記溶媒不溶性材料のガラス転移点は、前記粒子のガラス転移点よりも高いことを特徴とする請求項4〜7の何れか1に記載の画像形成方法。
【請求項9】
前記溶媒不溶性材料の最低造膜温度は、前記粒子の最低造膜温度よりも高いことを特徴とする請求項4〜8の何れか1に記載の画像形成方法。
【請求項10】
インク像を担持する非浸透媒体と、
該非浸透媒体上に粒子含有液を付与する粒子含有液付与部と、
該粒子含有液上にインクを付与するインク付与部と、
前記非浸透媒体上に形成されたインク像を記録媒体に転写する転写部と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
前記画像形成装置には、前記非浸透媒体上に形成されたインク像の溶媒を除去する溶媒除去部を備えることを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記粒子含有液付与部では、前記粒子含有液をローラー塗布によって付与することを特徴とする請求項10又は11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記転写部には、加熱手段をもつことを特徴とする請求項10〜12の何れか1に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記インク付与部では、前記インクをインクジェット記録ヘッドによって付与することを特徴とする請求項10〜13の何れか1に記載の画像形成装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−45851(P2009−45851A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214603(P2007−214603)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】