説明

画像形成装置、および画像形成方法

【課題】 定着後のトナー像にワックスが含まれる場合に、ローラマークの発生を防止する。
【解決手段】 用紙P上に形成されたトナー像に加熱定着を施す定着部30と、この定着部30に対して用紙搬送経路の下流側に設けられ、定着部30により加熱定着が施されるトナー像に所定の部材が接触しない状態で用紙Pを更に下流側まで搬送する負圧搬送ベルト101とを備え、この負圧搬送ベルト101は、定着部30により加熱定着が施されるトナー像に含まれるワックスの融点よりもトナー像の温度が低くなるまでトナー像が所定の部材に接触しない状態で用紙Pを搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子写真方式を用いた画像形成装置等に係り、より詳しくは、記録媒体上に形成されたトナー像を加熱、溶融して記録媒体に定着させる画像処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用したプリンタや複写機等の画像形成装置では、ドラムまたはベルト形状の有機感光体等からなる像担持体の表面に、公知の電子写真プロセスにより静電潜像を形成する。そして、その静電潜像をトナーを用いて現像してトナー像とし、次いでこのトナー像を直接または中間転写体を介して記録媒体(用紙など)に静電的に転写した後、例えば加熱定着機構によりトナー像を記録媒体に定着させることにより画像形成が行われる。この加熱定着機構としては、ラジアント方式、フラッシュ方式、加熱ローラと加圧ローラとを用いた2ローラ方式、加熱ローラとバックアップフリーベルトを用いたフリーベルトニップ方式などが用いられる。2ローラ方式を例に挙げると、例えばヒータにより加熱された加熱ローラと弾性体で被覆された加圧ローラとで構成されたローラ対を定着部に備え、トナー像が転写された記録媒体をこのローラ対の間に通過させることで、未定着トナー像を記録媒体に定着させている。フルカラー画像を形成可能な画像形成装置では、例えばY(イエロー)M(マゼンタ)C(シアン)K(ブラック)の4色のトナー像を記録媒体に転写させ、この4色のトナー像を有する記録媒体を、このローラ対を通過させることにより定着させて、フルカラー画像を形成している。
【0003】
このようなフルカラー画像を定着する際に使用されるトナーは、熱を印加した際の溶融性、混色性が高いことが要求されており、所謂シャープメルト性の高いものが好ましい。その一方で、加熱ローラ等のトナーに対する離型性は充分ではなく、特にシャープメルト性の高いトナーは、定着時に加熱ローラ等にオフセットし易い傾向にある。そこで従来では、加熱ローラ等にシリコンオイルなどを塗布し、トナーの離型性を向上させて加熱ローラ等へのオフセットを防止していた。しかしながら、シリコンオイルなどのオイルを加熱ローラに塗布するためには、オイルを供給する装置を別途、設ける必要があり、装置が複雑化してしまう問題があった。また、出力された記録媒体上におけるオイルのべた付き感が避けらない点も課題となっていた。そこで、シリコンオイルを塗布する代わりに、外部オイル供給を不要としたオイルレストナーを用いて画像形成を行う装置が開発されている。このオイルレストナーでは、例えばポリエチレンワックスやパラフィンワックス、シリコンワックスなどの離型剤ワックスをトナーに添加することで、着色剤を含有したトナーに離型性が付与されている。
【0004】
公報記載の従来技術として、例えば、定着後の記録媒体に対してその表面のワックス成分を含む不要物をクリーニングする技術が存在する(例えば、特許文献1参照。)。また、出願人は、トナー像定着後の記録シートに帯状の低光沢部分が発生する問題点を解決するために、定着装置と搬送ローラとの間に複数のエアー吹付孔を備え、ファンを用いてトナー像形成面にエアーを吹き付ける技術について提案している(特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−91205号公報(第4−5頁、図1)
【特許文献2】特開2003−21978号公報(第5−6頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上述したようなオイルレストナーを用いた場合には、一般に、ワックスの存在により光沢性が損なわれるが、近年、かかるワックスを用いた場合でも、色再現性が広く印刷並みの高光沢が画質要求として出されている。そこで、高グロス(高光沢)画質を実現するために、溶融性の高い材料からなるワックスをトナーに内包させる技術が検討されている。また、記録媒体として所謂コート紙等の厚手の上質紙を用い、且つ記録媒体が加熱定着機構を通過する速度(定着速度)を遅くすること等、充分な熱をトナー像に加えることにより、高グロス画像を得ることも行われる。
【0007】
このような加熱定着機構を備える画像形成装置では、加熱定着機構を通過した記録媒体の姿勢制御や走行方向制御、排出方向の制御、記録媒体の搬送等を行うために、例えばフィンガー状、ブラシ状、ローラ状等の接触部材が用いられ、例えば排出トレイに対して定着後の記録媒体が排出される。
しかしながら、特にコート紙のごとく厚い用紙を使用する場合には、その冷却速度が遅いために用紙上のトナー像も温度が高い状態に保持される。そのために、上記接触部材が定着後の記録媒体に接触すると、所謂ローラマーク(ロールマーク)と呼ばれる当接跡がトナー像に生じ、画質ディフェクトとなってしまう。従前では、かかる画質ディフェクトも大きな問題とはならなかったが、例えば写真画像のごとく光沢性が要求され且つ記録媒体の全面に画像が形成されるような場合には、このローラマークによる画質ディフェクトは避けられない問題となる。特に、このローラマークによる画質ディフェクトは、2色以上のトナーを重ね合わせるカラー画像で発生し易く、また、離型剤ワックスが添加(内添)されたトナーを用いた場合に顕著に表れてくる。
【0008】
このローラマーク(ロールマーク)の発生原因としては、用紙上のトナーが柔らかい状態にて、接触部材がトナー表面に接触することにより、接触部材の形状に対応した凹凸がトナー表面にできることが挙げられる。また、接触部材とトナー画像との熱交換により、トナー像にむらができることが挙げられる。特に第2の原因では、接触部材と接触した部分の定着画像が急冷されることにより、トナー像の接触部材への接触部と非接触部とで冷却速度が異なり、トナー像の透明性に差異が生じてグロスむらが発生する。この後者の原因によるグロスむらは、ユーザの目に付き易く、問題となり易い。上記特許文献2を応用して定着直後の用紙上のトナー像を急冷することも有効であるが、周囲の温度変化や用紙の坪量が変化した場合、トナーの特性が変化した場合等に応じて、更なる画質ディフェクト対策を施すことが望まれている。
【0009】
本発明は、以上のような技術的課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、定着後のトナー像にワックスが含まれる場合であっても、グロスが部分的に変化する画質ディフェクトの発生をより良好に抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的のもと、本発明が適用される画像処理装置は、記録媒体上に形成されたトナー像に加熱定着を施す定着手段と、この定着手段に対して記録媒体搬送経路の下流側に設けられ、定着手段により加熱定着が施されるトナー像に所定の部材が接触しない状態で記録媒体を更に下流側まで搬送する搬送手段とを含む。
【0011】
ここで、この搬送手段は、定着手段により加熱定着が施されるトナー像に含まれるワックスの融点よりもトナー像の温度が低くなるまでトナー像が所定の部材に接触しない状態で記録媒体を搬送することを特徴とすることができる。このワックスは、トナーの本体よりも融点が低い離型剤ワックスであることを特徴としている。
更にこの搬送手段は、記録媒体のトナー像が形成される面と表裏が逆の面に接触して記録媒体を搬送することを特徴とすることができる。また更に、この搬送手段は、記録媒体上でトナー像が形成されていない領域を用いて記録媒体を搬送することを特徴とすることができる。
【0012】
他の観点から捉えると、本発明が適用される画像形成装置は、トナーの本体よりも低温を融点とするワックス成分を含むトナー像を記録媒体に転写する転写部と、記録媒体に転写されたトナー像に加熱定着を施す定着部と、この定着部に対して記録媒体搬送方向の下流側に設けられ、定着部により加熱されたトナー像の温度がワックス成分の融点を下回るまでは定着部を通過したトナー像に部材が当接しない状態にて記録媒体を搬送する搬送機構とを含む。
【0013】
ここで、この搬送機構は、記録媒体のトナー像が形成されていない面に当接する当接搬送部材を用いて記録媒体を搬送することを特徴とすることができる。この搬送機構の当接搬送部材は、記録媒体を吸着して搬送することを特徴としている。
また、この搬送機構は、記録媒体に部材が接触しない状態にて記録媒体を更に下流側まで搬送することを特徴とすることができる。
【0014】
一方、本発明を方法のカテゴリから捉えると、本発明が適用される画像形成方法は、記録媒体上に形成される離型性のワックスを含むトナー像を定着部にて加熱し、加熱された後のトナー像がワックスの融点よりも低温となる前に、記録媒体のトナー像が形成されている面に部材が接触しない状態にて、定着部による搬送力以外の搬送力を加えて記録媒体を搬送することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、定着後のトナー像にワックスが含まれる場合であっても、所謂ローラマーク(ロールマーク)の発生を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本実施の形態が適用される画像形成装置を示した図である。図1に示す画像形成装置は、所謂タンデム型を採用した中間転写方式の画像形成装置であって、電子写真方式にて各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット10(10Y,10M,10C,10K)、各画像形成ユニット10にて形成された各色成分トナー像を順次転写(一次転写)して保持させる担持体である中間転写ベルト15、中間転写ベルト15上に転写された重畳トナー画像を記録媒体である用紙Pに一括転写(二次転写)させる二次転写部20、用紙P上に二次転写された画像を定着させる定着部30を備えている。また、各装置(各部)の動作を制御する制御部40を有している。更に本実施の形態では、定着部30と排出トレイ57との間の用紙搬送路に、定着部30を経た後の用紙Pを搬送する定着部下流側搬送機構100を備えている。定着部30は、用紙Pにおけるトナー像の形成面側に設けられて用紙Pを加熱する加熱定着ローラ30aと、この加熱定着ローラ30aに対向して設けられる加圧ローラ30bとを備えている。
【0017】
本実施の形態において、各画像形成ユニット10(10Y,10M,10C,10K)は、矢印A方向に回転する感光体ドラム11の周囲に、これらの感光体ドラム11を帯電するための帯電器12、感光体ドラム11上に静電潜像を書き込むためのレーザ露光器13(図中露光ビームを符号Bmで示す)、各色成分トナーが収容されて感光体ドラム11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像装置14、感光体ドラム11上に形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト15に転写する一次転写ローラ16、感光体ドラム11上の残留トナーを除去するドラムクリーナ17、などの電子写真用デバイスが順次配設されている。これらの画像形成ユニット10は、中間転写ベルト15の上流側から、イエロー(Y色)、マゼンタ(M色)、シアン(C色)、黒(K色)の順に、略直線状に配置されている。
【0018】
中間転写ベルト15は、各種ローラによって図に示すB方向に所定の速度で循環駆動(回動)されている。この各種ローラとして、定速性に優れたモータ(図示せず)により駆動されて中間転写ベルト15を循環駆動させる駆動ローラ31、各感光体ドラム11の配列方向に沿って略直線状に延びる中間転写ベルト15を支持する支持ローラ32、中間転写ベルト15に対して一定の張力を与えるとともに中間転写ベルト15の蛇行を防止する補正ローラとして機能するテンションローラ33、二次転写部20に設けられるバックアップローラ25、中間転写ベルト15上の残留トナーを掻き取るクリーニング部に設けられるクリーニングバックアップローラ34を有している。
各感光体ドラム11に対向し、略直線状に延びる中間転写ベルト15の内側に設けられる各一次転写ローラ16には、トナーの帯電極性と逆極性の電圧が印加されるようになっている。これにより、各々の感光体ドラム11上のトナー像が中間転写ベルト15に順次、静電吸引され、中間転写ベルト15上に重畳されたトナー像が形成されるようになっている。
【0019】
二次転写部20は、中間転写ベルト15のトナー像担持面側に配置される二次転写搬送ベルト(二次転写ベルト)21と、対向ローラとしてのバックアップローラ25等とによって構成される。バックアップローラ25は、中間転写ベルト15の裏面側に配置されて二次転写搬送ベルト21の対向電極をなし、二次転写バイアスを安定的に印加させるための金属製の給電ローラ26が当接配置されている。
一方、二次転写搬送ベルト(二次転写ベルト)21は、駆動ローラ22と従動ローラ23とによって張架された半導電性の無端環状ベルトである。この駆動ローラ22は、二次転写搬送ベルト21および中間転写ベルト15を挟んでバックアップローラ25に圧接配置され、二次転写搬送ベルト21上に搬送される用紙Pに対して二次転写を施すための二次転写ローラとして機能している。また、二次転写搬送ベルト21には、中間転写ベルト15と当接する二次転写部20の上流側近傍に、二次転写搬送ベルト21にあるトナーを掻き取るゴムの板状部材からなるクリーナ27が当接するように構成されている。
【0020】
中間転写ベルト15における二次転写部20の下流側には、二次転写後の中間転写ベルト15上の残留トナーや紙粉を除去し、中間転写ベルト15の表面をクリーニングするベルトクリーナ35が接離自在に設けられている。一方、イエローの画像形成ユニット10Yの上流側には、各画像形成ユニット10(10Y,10M,10C,10K)における画像形成タイミングをとるための基準となる基準信号を発生する基準センサ(ホームポジションセンサ)42が配置され、また、黒の画像形成ユニット10Kの下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ43が配設されている。この基準センサ42は、中間転写ベルト15に設けられた所定のマークを認識して基準信号を発生しており、この基準信号の認識に基づく制御部40からの指示により、各画像形成ユニット10(10Y,10M,10C,10K)は画像形成を開始できるように構成されている。
【0021】
更に、本実施の形態では、用紙搬送系として、用紙Pを収容する用紙トレイ50、この用紙トレイ50に集積された用紙Pを所定のタイミングで取り出して搬送する給紙ローラ51、給紙ローラ51にて繰り出された用紙Pを搬送する搬送ローラ52、搬送ローラ52により搬送された用紙Pを二次転写部20へと送り込む搬送シュート53、二次転写搬送ベルト21によって二次転写された後に搬送される用紙Pを定着部30へと搬送する搬送ベルト55、定着部30から定着部下流側搬送機構100を経て、排出される用紙を順次積載する排出トレイ57を備えている。本実施の形態における特徴的な構成である定着部下流側搬送機構100では、定着部30により加熱された用紙Pのトナー面がトナーに含まれるワックス融点以下に冷えるまで、このトナー面に接触する接触部材が存在しない状態で用紙Pが搬送される。
【0022】
ここで、各画像形成ユニット10(10Y,10M,10C,10K)の現像装置14にて現像される各色のカラートナーは、その本体として、ポリエステル樹脂、着色剤(染料、昇華性染料)、荷電制御材等が溶融、混錬され、粉砕、分級、重合されることにより製造される。また、感光体ドラム11上に形成されたトナー像を中間転写体である中間転写ベルト15もしくは用紙P上に良好に転写させるために、離型性のある外添剤などをトナーの本体に添加することができる。カラートナーは、耐オフセット性、定着性、シャープメルト性を考慮すると、結着樹脂としてポリエステル樹脂を使用したものが特に好ましい。更に、本実施の形態に用いられるトナーは、例えば0.1重量%乃至40重量%のワックスが含有されている。トナーにワックスを含有させることにより、ワックスが離型材として作用し、定着部30に設けられた加熱定着ローラ30aの表面に離型オイルを用いない場合でも、より広い定着ラチチュードを得ることができる。この定着ラチチュードとは、加熱定着ローラ30aの温度を変化させたときに、未定着トナー像が記録媒体に定着し得る低温側の温度(最低定着温度)から、トナー像が加熱定着ローラ30aから離型できなくなる高温側の温度(オフセット発生温度)までの温度領域をいう。
【0023】
トナー中のワックスの含有量としては、0.1重量%程度とすることによりオフセット発生温度が急激に高くなり、更にワックスの含有量を増加させると、オフセット発生温度は緩やかに上昇する。一方、最低定着温度は、ワックスの含有量の増加に伴い、緩やかに上昇する。そして、ワックスの含有量が40重量%を超えると極端に最低定着温度が高くなる。そこで、ワックスの含有量は、0.1重量%乃至40重量%、好ましくは1〜10重量%程度とすることで、低い定着ラチチュードと低い定着温度を実現することができる。
【0024】
また、ワックスの融点は、例えば110℃以下のものが用いられ、特に融点が80℃〜100℃のものがよく用いられる。ワックスの融点をトナー中の結着樹脂の融点よりもある程度低くすることにより、結着樹脂よりも先にワックスが有効にトナーから溶け出す。これによって、加熱定着ローラ30aと加圧ローラ30bとのニップ部の出口での剥離時においてトナーと加熱定着ローラ30aとの界面にワックスが介在することで、効果的に離型性能を向上させることができる。
【0025】
本実施の形態が適用されるトナーに用いられるワックスとしては、離型性を有するものであれば特に限定されるものではなく、具体的には以下の材料を挙げることができる。ロウ類およびワックス類としては、カルナバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等の植物系ワックス、ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス、オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス、およびパラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックスが挙げられる。また、これらの天然ワックスの他に、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド、エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックスも使用できる。更に低分子量の結晶性高分子樹脂としては、ポリn−ステアリルメタクリレート、ポリn−ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n−ステアリルアクリレート−エチルメタクリレートの共重合体等)等、側鎖に長いアクリル基を有する結晶性高分子が挙げられる。これらの中でより好ましいものとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油ワックスあるいは合成ワックスである。
【0026】
また、本実施の形態に適するトナー中の結着樹脂としては、特に制限されるものではなく、トナー用の結着樹脂として一般に用いられる樹脂(ポリマー)を使用することができる。より具体的には、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン・アクリル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、ジエン系樹脂、フェノール樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂等であるが、特に好ましいものとしては、前述のようにポリエステル樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂を結着樹脂に用いると、その分子量が大きい場合でも表面平滑性が高く、透明性に優れた画像を形成することができる。
【0027】
次に、本実施の形態に係る画像形成装置の基本的な作像プロセスについて説明する。図示しない画像読取装置(IIT)や図示しないパーソナルコンピュータ(PC)等から出力される画像データは、図1に示す画像形成装置に入力される。画像形成装置では、図示しない画像処理装置(IPS)にて所定の画像処理が施された後、画像形成ユニット10等によって作像作業が実行される。画像処理装置(IPS)では、入力された反射率データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消しや色編集、移動編集等、所定の画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の4色の色材階調データに変換され、レーザ露光器13に出力される。
【0028】
レーザ露光器13では、入力された色材階調データに応じて、例えば半導体レーザから出射された露光ビームBmを画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kの各々の感光体ドラム11に照射している。画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kの感光体ドラム11では、帯電器12によって表面が帯電された後、このレーザ露光器13によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、各々の画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kにて、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色のトナー像として現像される。画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kの感光体ドラム11上に形成されたトナー像は、各感光体ドラム11と中間転写ベルト15とが当接する一次転写部にて、中間転写ベルト15上に転写される。より具体的には、一次転写部において、一次転写ローラ16にて中間転写ベルト15の基材に対しトナーの帯電極性と逆極性の電圧が付加され、未定着トナー像が中間転写ベルト15の表面に順次重ね合わせられて一次転写が行われる。このようにして一次転写された未定着トナー像は、中間転写ベルト15の回転に伴って二次転写部20に搬送される。
【0029】
一方、用紙搬送系では、画像形成のタイミングに合わせて給紙ローラ51が回転し、用紙トレイ50から所定サイズの用紙Pが供給される。給紙ローラ51により供給された用紙Pは、搬送ローラ52により搬送され、搬送シュート53を経て二次転写部20に到達する。この二次転写部20に到達する前に、搬送シュート53が、二次転写搬送ベルト21の上昇動作(アドバンス動作)に連動して上昇し、二次転写部20への搬送路を形成している。用紙Pは一旦停止され、前述のようにしてトナー像が担持された中間転写ベルト15の移動タイミングに合わせてレジストローラ(図示せず)が回転することで、用紙Pの位置とトナー像の位置との位置合わせがなされる。二次転写部20では、用紙Pへの二次転写のタイミングに合わせ、二次転写搬送ベルト21および中間転写ベルト15が間に挟まれた状態にて駆動ローラ22がバックアップローラ25に押圧される。このとき、タイミングを合わせて搬送された用紙Pは、中間転写ベルト15と二次転写搬送ベルト21との間に挟み込まれ、給電ローラ26にトナーの帯電極性と同極性の電圧(正規の転写バイアス)が印加されると、二次転写搬送ベルト21に対向電極として転写電界が形成され、駆動ローラ22とバックアップローラ25とによって押圧される二次転写位置にて、中間転写ベルト15上に担持された未定着トナー像が用紙Pに静電転写される。
【0030】
その後、トナー像が静電転写された用紙Pは、二次転写搬送ベルト21によって中間転写ベルト15から剥離された状態でそのまま搬送され、二次転写搬送ベルト21の用紙搬送方向下流側に設けられた搬送ベルト55まで搬送される。搬送ベルト55は、定着部30における最適な搬送速度に合わせて、用紙Pを定着部30まで搬送する。用紙P上の未定着トナー像は、定着部30によって熱および圧力で定着処理を受ける。定着部30を経た用紙Pは、定着部下流側搬送機構100を経由し、例えば排出ローラ(後述)によって装置の外部に排出され、排出トレイ57に順次、堆積する。一方、用紙Pへの転写が終了した後、中間転写ベルト15上に残った残留トナーは、中間転写ベルト15の回動に伴ってクリーニング部まで搬送され、クリーニングバックアップローラ34およびベルトクリーナ35によって中間転写ベルト15上から除去される。
【0031】
次に、本実施形態の特徴的な構成として、定着部下流側搬送機構100によるローラマークの改善処理について説明する。
上述したような離型剤としてのワックスを用いた従来の装置では、定着部30の下流側近傍に排出ローラ等の接触部材が用いられることが一般的であった。このような従来の装置を用いて画像を形成すると、排出ローラ等の接触部材が当接した部分と当接しない部分とでグロス(光沢度)に差が生じてしまう。発明者等によりこのグロスの差について鋭意検討を加えた結果、発生原因として以下の2つがあることを見いだした。
まず、第1の原因として、物理的な凹凸が挙げられる。即ち、記録媒体上のトナーが柔らかい状態で接触すると、接触部材の形状に対応したトナー表面の凹凸ができ、この当接跡の粗さによってグロスが下がることが挙げられる。即ち、凹凸のある部分はグロスが下がり、凹凸のない部分はグロスが上がることから、記録媒体上のトナーが柔らかい状態で接触部材に接触すると、ローラマークが発生し易くなる。
また、第2の原因として、熱交換の問題が挙げられる。即ち、接触部材と接触した部分の定着画像が急冷されることにより、接触部分と非接触部分とで冷却速度が異なり、グロスの高低による斑(まだら)模様が生じることを見いだした。
そこで、本実施の形態では上記2つの原因を考慮し、ローラマークの発生を抑制し、グロスの安定した出力画像を得るために、定着部30の用紙搬送下流側に、定着部下流側搬送機構100を設けている。
【0032】
図2(a),(b)は、定着部下流側搬送機構100の第1の形態例および第2の形態例を示した図である。
図2(a)に示す定着部下流側搬送機構100の第1の形態例では、定着部30によって溶融したトナー像の存在する面(トナー面)とは表裏が逆(反対)となる面を搬送手段に接触させ、搬送している。そのために、定着部下流側搬送機構100は、用紙Pを負圧で吸着して搬送する無端状のベルトである負圧搬送ベルト101と、負圧搬送ベルト101を回動させるための駆動ローラ102と、駆動ローラ102とともに負圧搬送ベルト101を張架して従動する張架ローラ103と、負圧搬送ベルト101の下方から空気を吸引するための吸引装置104とを備えている。また、負圧搬送ベルト101の更に下流側には、用紙Pを対向するローラ対で挟みながら排出トレイ57に排出するための排出ローラ108を備えている。この排出ローラ108の位置にトナー面にあるトナー像が到達することで、トナー像が定着後に初めて接触部材に接触することになる。負圧搬送ベルト101は、空気が通る複数の穴がベルト面に設けられており、吸引装置104からの吸引動作によって用紙Pを負圧搬送ベルト101に引き付け、用紙Pを負圧搬送ベルト101に付着させる。負圧搬送ベルト101は、駆動ローラ102の駆動によって、ベルト面に付着した用紙Pを下流側の排出ローラ108まで搬送し、排出ローラ108によって排出トレイ57に用紙Pを出力している。
【0033】
図1に示す二次転写部20にて用紙P上に転写されるトナー像は、定着部30に搬送され、この定着部30の加熱定着ローラ30aに接触して加熱、加圧される。図1および図2(a)に示す場合には、用紙P上に転写され定着されるトナー像の存在する面(トナー面)は用紙Pの上方であり、このトナー面は定着部30により加熱された直後、負圧搬送ベルト101によって搬送される。負圧搬送ベルト101によって搬送される際には、トナー面側に搬送部材が存在せず、トナー面はいかなる接触部材にも接触することがない。その後、排出ローラ108による排出位置に到達した際に、順次、接触部材である排出ローラ108に接触する。本実施の形態では、用紙P上のトナー像を構成するトナーが、このトナーのワックス融点より低温になるまで、トナー面が接触部材である排出ローラ108に接触しない状態にて搬送されている。より具体的には、例えばワックス融点が80〜85℃となるトナーが用いられ、定着部30にてトナー像の表面を160℃に熱して加熱定着を行う場合を考えると、トナー面に形成されるトナーが160℃の定着温度から80℃よりも低い温度となるまで、トナー面に接触部材が接触しない状態にて、更に下流側まで用紙Pが搬送されている。これによって、トナーがワックス融点よりも高い状態、即ちトナーのワックスが柔らかい状態では、定着後に溶融されたトナーが接触部材に接触することがなく、トナー面が接触部材によって荒らされることがない。
【0034】
ここで、本実施の形態では、上記条件を満たすように、定着部30から排出ローラ108までの距離が設計され、負圧搬送ベルト101による搬送距離が決定されている。この搬送距離の決定では、搬送される用紙Pの種類や、各種温度、形成されるトナー像の濃度等の各種条件が加味される。即ち、画像形成装置が用いられる最も大きなストレス状態にて、排出ローラ108まで到達した時点でトナー像の温度(例えば表面温度)がワックス融点よりも低くなっている。より具体的には、例えば、装置の仕様として、外気温度が最も高く、連続プリント時で機内温度が設計上、最も高い状態、仕様上最も坪量の大きい用紙(最も熱容量の大きい用紙)に、トナーがベタに転写され、定着部30による定着温度が設計上、最も高い温度で定着された場合を考える。このときの用紙Pの搬送速度、機内温度等を考慮し、トナー像が排出ローラ108に到達した際、トナー像の温度(表面温度)が80℃よりも低くなる状態を実験または計算式により算出すればよい。このようにして得られた結果により、負圧搬送ベルト101による片面接触の搬送距離、搬送速度が決定される。場合によっては、冷却ファン等により強制的に冷却することにより、上記の温度条件を満たすように制御することも有効である。特に、強制的な冷却手段を用いて制御することにより、負圧搬送ベルト101による搬送距離を短くすることが可能となる。
尚、吸引装置104によって形成される負圧量は、制御部40からの制御によって変更することができる。即ち、搬送される用紙Pの坪量や用紙Pのサイズ等によって負圧の大きさを可変とすることができる。
【0035】
図2(b)は、図2(a)に示す負圧を用いた片面接触搬送の代わりに、静電気による片面接触搬送を行っている。そのために、図2(b)に示す定着部下流側搬送機構100は、例えば絶縁材で形成される無端状のベルトである静電気搬送ベルト111と、静電気搬送ベルト111を駆動する駆動ローラ112と、駆動ローラ112とともに静電気搬送ベルト111を張架して従動する張架ローラ113と、静電気搬送ベルト111に静電気を付加する静電気付加装置115とを備えている。この静電気付加装置115は、静電気搬送ベルト111の内側にプラス(+)またはマイナス(−)の電荷を与えるコロトロン115aと、静電気搬送ベルト111に対向する空間に、GNDに接続される対向電極115bとを備えて構成することができる。静電気付加装置115によって付加される電荷は、用紙Pの帯電状況に応じて、装置ごとに異なっている。
【0036】
定着部30により加熱された用紙Pは、静電気によって、トナー面とは反対側の面が静電気搬送ベルト111のベルト表面に付着される。そして、図2(a)と同様に、駆動ローラ112の駆動により静電気搬送ベルト111が回動し、用紙Pの片面接触搬送が実行される。静電気搬送ベルト111による用紙搬送距離は、図2(a)と同様に、例えばワックス融点が80〜85℃となるトナーが用いられ、定着部30にてトナー像の表面を160℃に熱して加熱定着を行う場合には、トナー面に形成されるトナーが160℃から冷却して80℃よりも低い温度となり、トナーがワックス融点である80℃よりも低い温度の状態にて、トナー像がニップ対のローラである排出ローラ108の箇所に順次、到達するように設計されている。このように構成することによって、ワックスが固形化した後に初めてニップ対のローラ等の接触部材に接触するので、ワックスが組織の乱反射により外部から白濁して見えることを防止することが可能となる。
尚、静電気付加装置115は制御部40により制御されるが、用紙Pを吸着するために提供される吸着電流を、用紙Pの坪量やサイズによって可変とすることもできる。
【0037】
図3(a),(b)は、定着部下流側搬送機構100の第3の形態例および第4の形態例を示した図である。
図3(a)に示す定着部下流側搬送機構100の第3の形態例では、定着部30の下流側に、ニップ対を持たない搬送ローラ121を連結して並べることで定着部下流側搬送機構100を構成している。この搬送ローラ121は、上述した第1の形態例および第2の形態例と同様に、用紙Pの片面接触搬送により、トナーのワックスが固形する前に、トナー面に接触部材が接触することを防止している。そのために、冷却するのに十分な搬送距離を確保するべく、必要な個数が所定の間隔を隔てて、搬送方向に並べて配置されている。各搬送ローラ121の間には、板金等の搬送ガイドを設けることも有効である。図3(a)では、用紙Pの自重によりトナー面と反対側の面(裏面)を摩擦接触により搬送ローラ121に接触させて搬送しているが、この搬送ローラ121を中空にして表面に穴を空け、内部を負圧にすることで、用紙Pを吸着搬送するように構成することも可能である。このように構成すれば、用紙Pの裏面(トナー面と逆の面)と搬送ローラ121との接触が良好に図られ、搬送能力を向上させることができる点で好ましい。
【0038】
図3(b)は、定着部下流側搬送機構100の第4の形態例として、搬送路の振動によって用紙Pを搬送する機構を示している。そのために、図3(b)に示す定着部下流側搬送機構100は、振動可能な板金で生成される振動板131と、この振動板131を例えば超音波によって振動させる振動子132を備えている。用紙Pは、振動板131に裏面だけが接触して搬送される。この振動板131の振動の大きさは、制御部40による振動子132によって制御される。振動板131の振動によって搬送される距離は、前述と同様に、トナーのワックス融点を基準とし、定着部30による加熱温度からワックスが固化するまで排出ローラ108等の接触部材が用紙Pのトナー面に接触しないように設計されている。これによって、ローラマークの発生を抑制することが可能となる。
【0039】
図4(a),(b)は、定着部下流側搬送機構100の第5の形態例および第6の形態例を示した図である。
図4(a)に示す定着部下流側搬送機構100の第5の形態例では、用紙Pの先端をつかんで搬送するための用紙狭持用グリッパ141と、この用紙狭持用グリッパ141を回動させるグリッパ搬送機構142とを備えている。グリッパ搬送機構142には用紙狭持用グリッパ141が取り付けられ、用紙狭持用グリッパ141とともに回動するベルト部材142aと、そのベルト部材142aを回動させる駆動ローラ142bと、駆動ローラ142bとともにベルト部材142aを張架する張架ローラ142cとを備えている。用紙狭持用グリッパ141は、ベルト部材142aの用紙搬送方向に直交する方向に2つ以上が設けられ、例えば用紙Pの先端(用紙搬送方向先端)側2カ所をつかんで、用紙Pの姿勢を保ちながら移動する。用紙狭持用グリッパ141は、定着部30により加熱された用紙Pの先端が当接する前には開いた状態にあり、用紙Pが当接した際に閉じて、用紙Pの先端を把持(狭持)する。また、ベルト部材142aは、用紙Pの先端が定着部30から出た時点で用紙狭持用グリッパ141が用紙Pを把持(狭持)できる位置に存在している。例えば制御部40の制御によって、用紙Pを把持する際に一旦、ベルト部材142aを停止させ、用紙Pが用紙狭持用グリッパ141に把持されたタイミングに合わせて、ベルト部材142aを回動させるように構成することができる。
【0040】
図4(b)に示す定着部下流側搬送機構100の第6の形態例では、図4(a)の用紙先端把持の代わりに、またはこれに加えて、定着部30の下流側に、用紙Pの主走査方向両端部(用紙搬送方向に直交する方向の両端部、両サイド)に合わせる位置に、用紙Pの端部を挟んで用紙Pを搬送するための端部搬送機構151が設けられている。この端部搬送機構151は、用紙Pの端部上面と端部下面とをニップするローラ対によって構成されている。また、図4(b)では、一方の端に3組、他方の端に3組の端部搬送機構151が設けられている。搬送される用紙Pの大きさが変わる場合を考慮し、用紙搬送方向に設けられる端部搬送機構151の組は、用紙Pの主走査方向に位置を可変とするように構成されている。あるいは、搬送される用紙Pのサイズに応じて、そのサイズの両端部をニップできるような位置に、即ち主走査方向の複数位置に、端部搬送機構151の組が設けられるように構成することもできる。かかる場合には、搬送される用紙Pのサイズに合わせて、使用しない端部搬送機構151の組はニップが解除される。
【0041】
この図4(a)および図4(b)では、定着部30の下流側にて、用紙Pの画像の無い部分を用いて用紙Pの搬送を行っている。ここで、印刷業界などでは、必要な印刷画像情報とともに、「トンボ」と呼ばれる十字マークを用紙P上に印刷することが広く行われている。一般に、用紙Pを搬送して画像を形成する際には、用紙Pのサイズ変動や用紙搬送変動、印刷位置のずれ等が発生することから、用紙Pの隅に隙間を設けずに印字することは難しい。印刷後に用紙の隅に空白を設けたくない場合には、印刷後に用紙Pを切断する作業が行われ、この切断作業の基準となる位置にトンボが印刷される。図4(b)には、用紙P上に描かれるトンボの例が示されている。図4(a)のように、用紙Pの先端を把持して搬送する場合には、例えば、トンボの外側であって画像を形成しない先端位置で用紙Pを把持する。この場合には、用紙狭持用グリッパ141によって用紙を把持した場合でも、画像のない部分を把持するために、必要な画像の像が乱れることがない。また、図4(b)のように、用紙Pの両端部にてニップ搬送を行う場合でも、トンボの外側であって画像を形成しない両端の領域であれば、必要な画像に対する像の乱れを防止することができる。例えば、A3ノビ紙のように、画像形成後、製本時に先端やサイドを切断するように予定されている場合には、切断して捨てられてしまう部分で用紙Pを搬送するように構成することで、画像面への影響を完全に無視することが可能となり、完成された出力画像には、用紙Pの端部まで、ローラマークの影響のない画像を提供することが可能となる。
【0042】
図5は、定着部下流側搬送機構100の第7の形態例を示した図である。図5に示す定着部下流側搬送機構100では、記録媒体である用紙Pを非接触の状態で更に下流側まで搬送するために、空気流搬送機構160を備えている。空気流搬送機構160は、例えばファン等によって空気流を発生するための空気流発生装置161と、空気流発生装置161から発生した空気流を搬送力に変えるとともに用紙Pを非接触の状態でガイドするガイド部材162とを備えている。ガイド部材162は、図5に示すように、用紙搬送方向の上流側から下流側に向けて空気流を吹き出すための空気孔162aが、用紙Pの搬送面の全面に対して複数個、設けられている。また、このガイド部材162は、用紙Pの両面側(図5では上下両側)に設けられ、用紙Pの上下両面に対して空気流を作用させている。また、空気流発生装置161による空気流の量などは、制御部40によって制御されている。
【0043】
定着部30の加熱定着ローラ30aによって加熱されたトナー像は、トナーに含まれる離型性ワックスが固化する前、離型性ワックスの融点に達するまでの間に、定着部下流側搬送機構100によって更に下流側まで搬送される。図5に示す例では、定着部30から出力される用紙Pは、空気流搬送機構160の上下の空気流によって、他の部材(所定の部材)に接触することなく排出トレイ57へと運ばれる。尚、この上下の空気流の強さは、制御部40の制御によって、可変とすることができる。具体的には、用紙Pの坪量/サイズ等により、例えば坪量やサイズが大きい用紙Pを搬送する場合には、空気流を大きくするように構成することができる。このとき、上側に比べて下側の空気流を大きくすることもできる。また、空気流の強さや角度等を適切な値に設計することで、空気流の排出は下方のみで実施し、上方のユニット(ガイド部材162および空気流発生装置161)を設けないように構成することもできる。かかる場合には、用紙Pの坪量が大きいほど空気流を大きくすることで、適切な搬送を実現することができる。更に、空気流で用紙Pを確実に保持、搬送するために、空気流の吹き出し角度を、用紙Pの位置に応じて異ならせることも可能である。この空気流の吹き出し角度は、搬送位置に応じて固定しても良いし、所定の回動機構等を備えている場合には、用紙Pの移動に伴って変化するように構成することもできる。このように、図5に示す第7の形態例によれば、定着後の用紙Pを所定の部材に非接触で搬送できることから、周囲の温度変化や用紙Pの坪量の変化、トナーの特性変化があっても、基本的に用紙Pが他の部材と接することがない。
【0044】
以上、詳述したように、本実施の形態では、例えば、トナー中の結着樹脂のガラス転移点より高い、例えば160℃を定着温度として、用紙P上のトナー像が定着部30により加熱される。そして、この定着温度よりも低い温度であるワックス融点(例えば80〜100℃)まで、トナー画像の形成面(トナー面)が搬送部材等に接触することなく、また、その状態で下流側まで用紙Pを更に搬送できるように構成した。これによって、ワックスが柔らかい状態では接触部材がトナー面に接触することがなく、グロスむらの発生を抑制することが可能となる。
【0045】
尚、トナーに添加されるポリエチレン等の離型剤ワックスは、結晶性高分子であり冷却の仕方によって結晶化度に差が生じる。急速冷却(急冷)した場合には結晶化が不十分となり、不透明な状態とならない。一方で徐々に冷却(徐冷)した場合には結晶化が進み、白濁な状態となる。出願人等は、かかるワックスの冷却速度がグロスに与える影響について更に検討を加えた。その結果、添加されるワックスの融点を基準とし、この融点を超える高温側から当該融点を下回る低温側まで急速に冷却することで、ワックスの結晶化を抑制し、透明度を増すことが可能となり、この透明度を増すことにより、グロスの向上を図ることが発見できた。
【0046】
そこで、本実施の形態によるグロスむらの発生を抑制する機能に加え、グロスを向上させたいと欲する場合には、ファン等による強制冷却機構(図示せず)を設けて強制冷却を実行することが有効である。特に強制冷却をすると、短時間でトナー温度をワックス融点以下にすることが可能であり、定着部下流側搬送機構100の搬送経路を短くすることが可能となる。また、このとき、この強制冷却機構の動作制御を、ジョブ内容やトナーの種類等によってきめ細かく実施することも可能である。このジョブ内容としては、例えば写真画像が含まれていてグロスを向上させる必要があること、画像としてテキストが主でグロスを上げる必要がないこと、カラー画像か白黒画像か等の区別がある。また、ワックスの融点は、一般的には装置にて一通りであるが、複数のトナーを用いた場合等では、その値が異なってくる。例えばカラー画像と白黒画像等、ジョブによって使用されるトナーが異なる場合もある。かかる場合に備えて、図示しないROM等にワックス融点情報を格納し、指定されるジョブ毎にワックス情報を読み出して、強制冷却機能を制御することは有効である。
【0047】
また、搬送される用紙Pの種類に応じて、この強制冷却機能を制御することも有効である。用紙Pの冷却速度は、用紙Pの坪量その他で決まる熱容量に左右される。例えば、用紙Pの厚さや密度、表面のコートの有無とその材質等によって熱容量が異なり、定着時に同じ温度(例えば、約160℃)であっても、その後の温度の軌跡は用紙Pの種類に左右されてしまう。密度が高く、厚くて重く、コート材が塗布されているような用紙Pでは、一般的に熱容量が大きく、冷えるのに時間がかかる。一方、薄い用紙Pは熱容量が小さいことから、直ぐに冷えてしまう。これらを、定着部下流側搬送機構100の搬送路の長さだけで全て対処することは必ずしも簡単ではない。そこで、搬送される用紙情報を取得し、用紙Pに応じた冷却制御を加えることも有効である。より詳しくは、例えば、画像形成装置の本体に設けられる環境センサ(図示せず)によって測定される環境温度と、用紙Pの種類との二元表にて、ファン等の強制冷却機構により供給される風量を決定する方法を採用することができる。例えば、普通紙(64〜104gsm)から厚紙1(105〜157gsm)、厚紙2(158〜260gsm)と用紙の坪量が増加するに伴い、風量(m/min)を次第に増大させることで、熱容量の大きな用紙Pに対しては風量を増して冷却することが可能となる。
【0048】
尚、本実施の形態における応用として、定着部30と排出トレイ57との間にて、制御部40にて定着部下流側搬送機構100を制御し、用紙Pの搬送速度を可変にすることも有効である。冷えにくい用紙Pや、環境温度が高い場合には、搬送速度を遅くして、記録媒体(用紙)が排出トレイ57に到達する時間を長くすることが好ましい。
以上、詳述したように、本実施の形態によれば、定着部30を経てトナー像に含まれるワックスの融点前には接触部材が接触しないように構成することで、ローラ等の接触部材と接触したことによる筋状の画質欠陥(ローラマーク)を無くすことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、ワックスを含むトナーを用いて画像形成を行うプリンタや複写機等の画像形成装置、また、ワックスを含むトナーを用いた画像形成方法へ活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施の形態が適用される画像形成装置を示した図である。
【図2】(a),(b)は、定着部下流側搬送機構の第1の形態例および第2の形態例を示した図である。
【図3】(a),(b)は、定着部下流側搬送機構の第3の形態例および第4の形態例を示した図である。
【図4】(a),(b)は、定着部下流側搬送機構の第5の形態例および第6の形態例を示した図である。
【図5】定着部下流側搬送機構の第7の形態例を示した図である。
【符号の説明】
【0051】
20…二次転写部、30…定着部、40…制御部、57…排出トレイ、100…定着部下流側搬送機構、101…負圧搬送ベルト、104…吸引装置、111…静電気搬送ベルト、115…静電気付加装置、121…搬送ローラ、131…振動板、132…振動子、141…用紙狭持用グリッパ、142…グリッパ搬送機構、151…端部搬送機構、160…空気流搬送機構、161…空気流発生装置、162…ガイド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上に形成されたトナー像に加熱定着を施す定着手段と、
前記定着手段に対して記録媒体搬送経路の下流側に設けられ、当該定着手段により加熱定着が施されるトナー像に所定の部材が接触しない状態で当該記録媒体を更に下流側まで搬送する搬送手段と
を含む画像形成装置。
【請求項2】
前記搬送手段は、前記定着手段により加熱定着が施される前記トナー像に含まれるワックスの融点よりも当該トナー像の温度が低くなるまで当該トナー像が前記所定の部材に接触しない状態で前記記録媒体を搬送することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ワックスは、トナーの本体よりも融点が低い離型剤ワックスであることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記搬送手段は、前記記録媒体の前記トナー像が形成される面と表裏が逆の面に接触して当該記録媒体を搬送することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記搬送手段は、前記記録媒体上で前記トナー像が形成されていない領域を用いて当該記録媒体を搬送することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項6】
トナーの本体よりも低温を融点とするワックス成分を含むトナー像を記録媒体に転写する転写部と、
前記記録媒体に転写されたトナー像に加熱定着を施す定着部と、
前記定着部に対して記録媒体搬送方向の下流側に設けられ、当該定着部により加熱されたトナー像の温度が前記ワックス成分の融点を下回るまでは当該定着部を通過したトナー像に部材が当接しない状態にて前記記録媒体を搬送する搬送機構と
を含む画像形成装置。
【請求項7】
前記搬送機構は、前記記録媒体の前記トナー像が形成されていない面に当接する当接搬送部材を用いて当該記録媒体を搬送することを特徴とする請求項6記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記搬送機構の前記当接搬送部材は、前記記録媒体を吸着して搬送することを特徴とする請求項7記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記搬送機構は、前記記録媒体に部材が接触しない状態にて当該記録媒体を更に下流側まで搬送することを特徴とする請求項6記載の画像形成装置。
【請求項10】
記録媒体上に形成される離型性のワックスを含むトナー像を定着部にて加熱し、
加熱された後のトナー像が前記ワックスの融点よりも低温となる前に、前記記録媒体の当該トナー像が形成されている面に部材が接触しない状態にて、前記定着部による搬送力以外の搬送力を加えて当該記録媒体を搬送することを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−3404(P2006−3404A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−176902(P2004−176902)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】