説明

画像形成装置、データ管理方法、及びプログラム

【課題】再利用データをより適切に管理することを目的とする。
【解決手段】一のジョブでの処理において、一のジョブとは異なる他のジョブで再利用が可能な再利用データについてアクセスが制限されているか否かを判断し、制限されていないと判断した再利用データを他のジョブで再利用が可能なように記憶部に格納し、記憶部の再利用データを用いて画像を形成することによって課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、データ管理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル印刷として、顧客一人ひとりのニーズにあったデータを印刷するバリアブル印刷(VDP)の需要が拡大している。VDPについては、PPML、PDF/VTといった規格(VDP言語)が策定されている。VDP言語によれば、印刷データ中のオブジェクトを、再利用される再利用オブジェクトと、そうでないオブジェクトとに分類することができる。
また、VDP言語によれば、再利用オブジェクトに対してはラスタライズ後の画像データをキャッシュに保持し、次に使われるときに再利用できるように設計することができる。即ち、ラスタライズの回数を減らして印刷処理を高速化できることが、VDP言語の1つの特長である。
【0003】
また、VDP言語の1つであるPPMLでは、再利用オブジェクトがリユーザブルオブジェクトと称され、そうでないオブジェクトがバリアブルオブジェクトと称される。リユーザブルオブジェクトには、再利用可能な範囲(有効範囲)が規定されている。そして、リユーザブルオブジェクトについては、ラスタライズされたリユーザブルオブジェクトの画像データがキャッシュに保持され、有効範囲内では当該画像データが再利用され、有効範囲外になった時点で当該画像データがキャッシュから破棄される。
一方、グローバルリユーザブルオブジェクトと称される有効範囲が規定されていない特別なリユーザブルオブジェクトも存在する。これは、特別なオペレーション(ユーザからの明示的な指示など)がない限り、グローバルリユーザブルオブジェクトの画像データは、キャッシュから破棄されないため、いつでも利用できるオブジェクトとして利用することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−301426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、バリアブル印刷では、住所、氏名、個人向けの商品などの機密情報が含まれることが想定される。このことから、バリアブル印刷では、印刷データの一部又は全部にアクセスの制限がかけられたデータ(例えば、暗号化PDFファイル)が用いられ得る。
一方、バリアブル印刷におけるリユーザブルオブジェクト、グローバルリユーザブルオブジェクトなどは、一般的にユーザが意図的に指定するものではない。これらは、オブジェクトのレイアウト、各種の設定などに応じて、印刷データを生成する印刷アプリケーションにより自動的に付加されるものである。
【0006】
つまり、印刷アプリケーションでは、アクセスの制限がかけられたPDFファイルのオブジェクトがグローバルリユーザブルオブジェクトとして設定されることもあり得る。そして、従来の印刷装置は、このように設定された印刷データを受け取ると、ユーザから入力されたパスワード等をもとにアクセスの認証を行い、認証が通るとラスタライズした画像データをキャッシュに保持し、当該画像データをジョブ内で再利用する。
しかしながら、アクセスの制限がかけられたPDFファイルのオブジェクトであるにもかかわらず、アクセスの制限が外された状態で画像データ等の再利用データがキャッシュに保持され、どのジョブでも再利用が可能になり、セキュリティ面から問題となる。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたもので、再利用データをより適切に管理することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明に係る画像形成装置は、記憶部を有する画像形成装置であって、一のジョブでの処理において、前記一のジョブとは異なる他のジョブで再利用が可能な再利用データについてアクセスが制限されているか否かを判断し、制限されていないと判断した再利用データを他のジョブで再利用が可能なように前記記憶部に格納する格納手段と、前記記憶部の再利用データを用いて画像を形成する画像形成手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、再利用データをより適切に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】印刷装置の構成の一例を示す図である。
【図2】ソフトウェアモジュールの一例を示す図である。
【図3】VDPデータの構成の一例を示す図である。
【図4】印字結果の一例、及びRIP処理時間の一例を示す図である。
【図5】印刷処理に係るフローチャートの一例を示す図である。
【図6】キャッシュ処理に係るフローチャートの一例を示す図である。
【図7】キャッシュ処理に係るフローチャートの一例を示す図である。
【図8】キャッシュ処理に係るフローチャートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、実施形態は、本発明を限定するものではなく、また、実施形態で説明されている全ての構成が本発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない。
【0012】
<第1の実施形態>
<印刷装置の構成>
図1は、本実施形態に係るバリアブル印刷を実行する印刷装置100の構成の一例を示す図である。印刷装置100は、カラープリンタ、複合機などであり、画像形成装置(コンピュータ)の一例である。CPU101は、中央演算装置の一例であり、システムバス109を介して印刷装置100内の各部の制御、演算、及び後述の記憶部に格納されたプログラムの実行を司る。
ランダムアクセスメモリ(RAM)103は、記憶部の一例であり、印刷装置100の動作時における一時記憶領域、及びワークメモリとして利用される。ハードディスクドライブ(HDD)104は、大容量の記憶部の一例であり、CPU101により実行される各種のプログラムを格納している。また、HDD104は、処理されるデータの一時的な記憶領域としても利用される。
【0013】
ROM106は、印刷装置100の起動処理プログラムなどが格納されている。ネットワークインターフェイス(I/F)102は、外部ネットワークを介してホストコンピュータなどの他の装置と通信を行う。
エンジンインターフェイス(I/F)105は、プリンタエンジン108との通信、制御などを司る。プリンタエンジン108は、電子写真技術、インクジェット画像形成技術等を用いて、画像を紙面上に形成する装置である。また、プリンタエンジン108は、エンジンスプーラ107を有し、エンジンインターフェイス105から転送されるページデータを一時的に保管する。
【0014】
<ソフトウェアモジュールの構成>
図2は、バリアブル印刷を実行するソフトウェアモジュールの一例を示す図である。ソフトウェアモジュールの各々は、CPU101により、HDD104、ROM106等のプログラムがRAM103に展開されて実行されることで実現される。
基本的には、ソフトウェアモジュールにより、印刷装置100における機能及び後述するフローチャートに係る処理などが実現される。ただし、印刷装置100における機能、後述するフローチャートに係る処理の一部、又は全部を専用のハードウェアを用いて構成してもよい。
【0015】
ジョブコントローラ200は、他のソフトウェアモジュールの各々を制御し、制御の主幹的な役割を担う。ジョブ展開部201は、ネットワークインターフェイス(I/F)102を介して受信したバリアブル印刷で用いられるVDPデータ(ジョブ)を展開する。以下では、印刷装置100上でVDPデータを管理する単位をジョブと適宜称する。ジョブ解析部202は、展開されたジョブ内に含まれる可変オブジェクト、固定オブジェクト、及びテンプレートデータを解析する。
PSインタプリタ203、PDFインタプリタ204、及びTIFFデコーダ205は、展開されたジョブに含まれるオブジェクトを展開し、中間データフォーマットに変換する。RIP処理部206は、変換された中間データフォーマットを受け取り、RIP処理を行い、画像データ(イメージ)に変換する。
【0016】
キャッシュ制御部207は、キャッシュ208を制御(管理)する。キャッシュ制御部207は、RIP処理部206から画像データを受け取り、キャッシュ208に格納(保管)する。また、キャッシュ制御部207は、ジョブコントローラ200からの問い合わせを受けてキャッシュ208を検索し、存在するオブジェクトの画像データをレイアウト処理部209に受け渡したりする。ここで、キャッシュ208は、RAM103上に実装されていてもよいし、HDD104上に実装されていてもよい。
レイアウト処理部209は、ジョブ解析部202で解析されたテンプレートデータに基づいて可変オブジェクトの可変データ、固定オブジェクトの固定データなどをページ上に配置してページデータを生成する。画像処理部210は、レイアウト処理部209により生成されたページデータに対して、キャリブレーション、色変換等の画像処理を施す。
ページデータ送信部211は、ジョブコントローラ200からの指示に基づいて、画像処理が施されたページデータをページスプーラ212に保存し、保存したページデータをプリンタエンジン108に送信する。また、ページデータ送信部211は、画像処理が施されたページデータをプリンタエンジン108に直接送信する。ここで、ページスプーラ212は、RAM103上に実装されていてもよいし、HDD104上に実装されていてもよい。
【0017】
<VDPデータの構成>
図3は、PPMLで記述されたVDPデータの構成の一例(アーカイブファイル301)を示す図である。アーカイブファイル301は、例えばZIP形式であり、複数のファイルを含んで圧縮された書庫である。この例では、「MyDocument.zip」という名称のアーカイブファイル301の中に、PPMLファイル302及びコンテンツファイル303が格納されている。
PPMLファイル302は、アーカイブファイル301内に必ず1つ格納されている。PPMLファイル302は、テンプレートデータの一例であり、ジョブにおける可変の単位であるレコード毎に複数のページが定義されている。例えば、顧客毎に印刷の内容が可変する場合、各々の顧客が1レコードとして扱われる。より具体的には、50人の顧客に、それぞれ10ページの可変の内容を含む印刷を行う場合、50レコードのジョブであり、1レコードあたり10ページであると定義される。
【0018】
PPMLファイル302には、コンテンツファイル303が参照として指定されている。この例では、「a.ps」というファイル名で参照されている。参照されるコンテンツファイル303には、可変オブジェクト(バリアブルオブジェクト)であるか、固定オブジェクト(リユーザブルオブジェクト)であるかの属性が付与されている。この例では、コンテンツファイル303は、リユーザブルオブジェクトであると指定されている。
また、この例では簡略化のために、アーカイブファイル301には、コンテンツファイルが1つのみが格納されているが、アーカイブファイル301は、一般には複数のコンテンツファイルから構成される。
なお、図3では、コンテンツファイル303がAdobe Systems IncorporatedのPostScript(登録商標:以下ではPSと称する。)により記述されている例を示している。ただし、PPMLでは、PSに限られるものではなく、適宜のページ記述言語を採用できる。例えば、Adobe Systems IncorporatedのPDF等のPDL言語でもよい。また、例えば、TIFF(Tagged Image Format)、JPEG(Joint Photographic Experts Group)等の汎用画像フォーマットでもよい。
【0019】
図4(A)は、一のジョブの印字結果の一例を示す図である。ここでは、ページ401がレコード1に対応し、ページ402がレコード2に対応し、ページ403がレコード3に対応している例を示す。
Re1(404)は、リユーザブルオブジェクトに係るコンテンツファイル303に対応する印字例である。Val1(405)、Val2(406)、及びVal3(407)の各々は、バリアブルオブジェクトに係るコンテンツファイル(不図示)に対応する印字例である。
【0020】
図4(B)は、一のジョブでのRIP処理時間の一例を示す図である。ここでは、レコード1、レコード2、レコード3の順にRIP処理が行われるものとする。よって、印刷装置100は、レコード1においては、Re1(404)のリユーザブルオブジェクトについてRIP処理しなければならない。
このため、レコード1においては、RIP処理時間としては、Val1(405)のバリアブルオブジェクトのRIP処理時間411に加えて、Re1(404)のリユーザブルオブジェクトのRIP処理時間412が加算される。よって、非常に多くのRIP処理時間がかかることがわかる。
他方、レコード2及びレコード3においては、Re1(404)のリユーザブルオブジェクトのRIP処理後の画像データが既にキャッシュ208に保持されているので、Re1(404)のリユーザブルオブジェクトのRIP処理は必要ない。よって、RIP処理時間としては、レコード2についてはVal2(406)のバリアブルオブジェクトのRIP処理時間413のみであり、レコード3についてはVal3(407)のバリアブルオブジェクトのRIP処理時間414のみである。
【0021】
<印刷処理>
次に、図5及び図6のフローチャートを用いて印刷装置100でのデータ管理方法などについて説明する。
図5は、印刷装置100の印刷処理に係るフローチャートの一例を示す図である。例えば、本フローチャートの処理は、HDD104等に記憶された本フローチャートの処理に係るプログラムがCPU101によりRAM103上に読み出されて実行されることで実現されるソフトウェアモジュール(ジョブコントローラ200等)により行われる。
【0022】
まず、ジョブコントローラ200は、ネットワークI/F102を介してVDPデータを受信(入力)する(S502)。続いて、ジョブ展開部201は、受信されたVDPデータをRAM103上に展開する(S503)。続いて、S504では、ジョブ解析部202は、展開されたVDPデータからオブジェクトを抽出し、RAM103に記憶する。
続いて、S505では、ジョブ解析部202は、抽出したオブジェクトがバリアブルオブジェクトであるか、リユーザブルオブジェクト(グローバルリユーザブルオブジェクトを含む。)であるかを判断する。例えば、ジョブ解析部202は、VDPデータに含まれるオブジェクトの属性を示す図3の<REUSABLE_OBJECT>等の情報、即ちオブジェクトを識別可能な識別情報を用いて判断する。
【0023】
例えば、リユーザブルオブジェクトは、当該ジョブで再利用が可能なオブジェクトであり、グローバルリユーザブルオブジェクトは、当該ジョブとは異なる他のジョブで再利用が可能なオブジェクトである。
このとき、リユーザブルオブジェクト(グローバルリユーザブルオブジェクトを含む。)であると判断された場合、S509の処理が行われ、他方、バリアブルオブジェクトであると判断された場合、S506の処理が行われる。
【0024】
S506では、ジョブコントローラ200は、オブジェクトの解釈を行う。このとき、PSインタプリタ203、PDFインタプリタ204、及びTIFFデコーダ205のうち、当該オブジェクトに適した解釈部が用いられて解釈される。
続いて、RIP処理部206は、オブジェクトの画像データを生成する(S507)。続いて、レイアウト処理部209は、生成された画像データを指定された位置にレイアウトし、ページバッファに描画する(S508)。
【0025】
また、S509では、ジョブコントローラ200は、キャッシュ制御部207に問い合わせを行い、当該オブジェクトの画像データがキャッシュ208に保持されているか否かを判断する。このとき、当該オブジェクトの画像データがキャッシュ208に保持されていると判断された場合、S513の処理が行われ、他方、当該オブジェクトの画像データがキャッシュ208に保持されていないと判断された場合、S510の処理が行われる。
510では、ジョブコントローラ200は、オブジェクトの解釈を行う。このとき、PSインタプリタ203、PDFインタプリタ204、及びTIFFデコーダ205のうち、当該オブジェクトに適した解釈部が用いられて解釈される。続いて、RIP処理部206は、オブジェクトの画像データを生成する(S511)。続いて、ジョブコントローラ200は、キャッシュ制御部207に対し、生成された画像データをキャッシュ208に保持するよう指示を行う(S512)。なお、S512のキャッシュ処理の詳細については後述する。
続いて、ジョブコントローラ200は、キャッシュ208に保持されている当該オブジェクトの画像データ(キャッシュデータ)をページバッファに描画する(S513)。
【0026】
S514では、ジョブコントローラ200は、当該ページを構成する全てのオブジェクトに対して処理を行ったか否かを判断する。このとき、全てのオブジェクトに対して処理を行ったと判断された場合、S515の処理が行われ、他方、全てのオブジェクトに対して処理を行っていないと判断された場合、S504の処理が行われる。このように処理が繰り返えされることで、ページデータ(ページ画像)が生成される。
S515では、ジョブコントローラ200は、生成されたページデータをページデータ送信部211に送り、プリンタエンジン108に送信する。続いて、ジョブコントローラ200は、全てのページについて処理を行ったか否かを判断する。このとき、全てのページについて処理を行ったと判断された場合、S517の処理が行われ、他方、全てのページについて処理を行っていないと判断された場合、処理の対象が次のページにされてS504の処理が行われる。
【0027】
S517では、ジョブコントローラ200は、キャッシュ制御部207に対し、リユーザブルオブジェクトのキャッシュデータがあるかどうかの問い合わせを行い、リユーザブルオブジェクトのキャッシュデータが存在しているか否かを判断する。
このとき、ジョブコントローラ200は、リユーザブルオブジェクトのキャッシュデータが存在していると判断した場合、キャッシュ制御部207にリユーザブルオブジェクトのキャッシュデータを削除させ(S518)、ジョブを終了する。
他方、ジョブコントローラ200は、リユーザブルオブジェクトのキャッシュデータが存在しないと判断した場合、そのままジョブを終了する。
【0028】
<キャッシュ処理>
図6は、キャッシュ処理に係るフローチャートの一例を示す図である。図6のフローチャートは、図5のフローチャートにおけるキャッシュ処理(S512)をより詳細に示したものである。即ち、S512では、ジョブコントローラ200は、キャッシュ制御部207に対し、生成された画像データをキャッシュ208に保持するよう指示を行うが、より詳細には次のようになる。
まず、ジョブコントローラ200は、キャッシュ208に保持する画像データのオブジェクトの種類がリユーザブルオブジェクトであるかグローバルリユーザブルオブジェクトであるかを判断する(S601)。例えば、ジョブコントローラ200は、VDPデータに含まれるリユーザブルオブジェクトの有効範囲を示すスコープ情報(図示せず)を参照する。そして、スコープ情報がグローバルリユーザブルオブジェクトを示す値「GLOBAL」であるときは、グローバルリユーザブルオブジェクトであると判断する。このとき、グローバルリユーザブルオブジェクトであると判断された場合、S603の処理が行われ、他方、リユーザブルオブジェクトであると判断された場合、S602の処理が行われる。
【0029】
S603では、ジョブコントローラ200は、グローバルリユーザブルオブジェクトがセキュアなオブジェクトであるか否かを判断する。ここで、セキュアなオブジェクトとは、アクセスの制限がかかったデータ(例えば、暗号化PDFファイル)などを示す。例えば、ジョブコントローラ200は、データにアクセスの制限がかかっているかを判定する関数を用いて判断する。このとき、セキュアなオブジェクトであると判断された場合、S602の処理が行われ、他方、セキュアなオブジェクトでないと判断された場合、S604の処理が行われる。
S602ではジョブコントローラ200は、キャッシュ制御部207に対し、オブジェクトの画像データをリユーザブルオブジェクトを示すキャッシュデータ(他のジョブで再利用が不可能な再利用データの一例)としてキャッシュ208に保持するように指示する。例えば、S603でセキュアなオブジェクトであると判断された場合、キャッシュ制御部207は、セキュアなオブジェクトの画像データを、リユーザブルオブジェクトを示すキャッシュデータとしてキャッシュ208に格納する。
【0030】
また、S604では、ジョブコントローラ200は、キャッシュ制御部207に対し、グローバルリユーザブルオブジェクトの画像データを、グローバルリユーザブルオブジェクトを示すキャッシュデータとしてキャッシュ208に保持するよう指示する。
なお、グローバルリユーザブルオブジェクトを示すキャッシュデータは、再利用データの一例である。付言するならば、リユーザブルオブジェクトを示すキャッシュデータとグローバルリユーザブルオブジェクトを示すキャッシュデータとは、フラグを付す等の適宜の構成により識別できる。
【0031】
このように、グローバルリユーザブルオブジェクトであってもセキュアなオブジェクトである場合、通常のリユーザブルオブジェクトを示すキャッシュデータとしてキャッシュ208に保持される。即ち、ジョブの終了の際には、リユーザブルオブジェクトを示すキャッシュデータがキャッシュ208から削除されることで、セキュアなオブジェクトのキャッシュデータが削除されるので、セキュアなオブジェクトに対するセキュリティの低下を防ぐことができる。
換言するならば、アクセスの制限があるオブジェクトに対してグローバルリユーザブルオブジェクトの指定がされた場合であっても、ジョブの終了時にキャッシュに残さないので、アクセスの制限があるオブジェクトに対するセキュリティの低下を防ぐことができる。
【0032】
<第2の実施形態>
第1の実施形態では、グローバルリユーザブルオブジェクトがセキュアなオブジェクトであるかを判定し、セキュアなオブジェクトであると判断した場合にはリユーザブルオブジェクトを示すキャッシュデータとしてキャッシュ208に格納するようにした。
しかしながら、セキュアなオブジェクトであってもユーザとしては扱いをグローバルリユーザブルオブジェクトとし、例えば印刷のパフォーマンスを優先したい場合がある。そこで、本実施形態では、セキュアなオブジェクトに対する扱いをユーザから指定できるようにする方法を説明する。なお、本実施形態では、第1の実施形態の構成と同一の構成については同一の符号を用いて、説明を適宜省略する。
【0033】
図7は、キャッシュ処理に係るフローチャートの一例を示す図である。図7のフローチャートは、図5のフローチャートにおけるキャッシュ処理(S512)をより詳細に示したものである。
まず、ジョブコントローラ200は、キャッシュ208に保持する画像データのオブジェクトの種類がリユーザブルオブジェクトであるかグローバルリユーザブルオブジェクトであるかを判断する(S701)。このとき、グローバルリユーザブルオブジェクトであると判断された場合、S703の処理が行われ、他方、リユーザブルオブジェクトであると判断された場合、S702の処理が行われる。
【0034】
S703では、ジョブコントローラ200は、グローバルリユーザブルオブジェクトがセキュアなオブジェクトであるか否かを判断する。このとき、セキュアなオブジェクトであると判断された場合、S704の処理が行われ、他方、セキュアなオブジェクトでないと判断された場合、S706の処理が行われる。
S704では、ジョブコントローラ200は、オブジェクトの扱いの設定値(設定情報の一例)をHDD104から取得し、オブジェクトの扱いを決定する。オブジェクトの扱いの設定値とは、ユーザから設定可能な情報であり、印刷装置100に設けられた、或いは接続された操作パネル等の入力デバイスを介して設定可能なものである。
このとき、非グローバルリユーザブルオブジェクトとして扱うと決定された場合、S702の処理が行われる。また、アクセス制限付きのグローバルリユーザブルオブジェクトとして扱うと決定された場合、S705の処理が行われる。また、グローバルリユーザブルオブジェクトとして扱うと決定された場合、S706の処理が行われる。
【0035】
S702では、ジョブコントローラ200は、キャッシュ制御部207に対し、オブジェクトの画像データを、リユーザブルオブジェクトを示すキャッシュデータとしてキャッシュ208に保持するように指示する。例えば、S704で非グローバルリユーザブルオブジェクトとして扱うと決定された場合、キャッシュ制御部207は、セキュアなオブジェクトの画像データを、リユーザブルオブジェクトを示すキャッシュデータとしてキャッシュ208に格納する。
S705ではジョブコントローラ200は、キャッシュ制御部207に対し、グローバルリユーザブルオブジェクトの画像データを、グローバルリユーザブルオブジェクトを示すアクセス制限付きのキャッシュデータとしてキャッシュ208に保持するよう指示する。ここで、アクセス制限付きのキャッシュデータとは、VDFデータのオブジェクトに施されたアクセスの制限と同じものがグローバルリユーザブルオブジェクトの画像データに施されたものを示す。
【0036】
S706では、ジョブコントローラ200は、キャッシュ制御部207に対し、グローバルリユーザブルオブジェクトの画像データを、グローバルリユーザブルオブジェクトを示すキャッシュデータとしてキャッシュ208に保持するよう指示する。
また、S705でグローバルリユーザブルオブジェクトは鍵付きでキャッシュされているので、S513でキャッシュデータをページバッファに描画する際は、パスワードを用いて鍵を解いて画像データを生成し、生成された画像データをページバッファに描画する。
上述した構成によれば、ユーザによる入力デバイスの操作に応じて、セキュアなオブジェクトであってもセキュリティのレベルを保ったままグローバルリユーザブルオブジェクトを扱いつつ、印刷のパフォーマンスを向上させることができる。更には、印刷のパフォーマンスをより優先した処理に切り替えることができる。
【0037】
<第3の実施形態>
第1の実施形態、及び第2の実施形態では、セキュアプリント(親展印刷)については言及していない。そこで、本実施形態では、セキュアプリントに係るジョブについての印刷を考慮し、キャッシュデータを管理する方法について説明する。なお、本実施形態では、第1の実施形態の構成と同一の構成については同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
ここで、セキュアプリントとは、ユーザが印刷を指示したデータの出力物を不意に他人に見られないようにする仕組みが施された印刷である。印刷装置100は、セキュアプリントに係るジョブについては、ユーザからの明示的な指示(例えば、入力デバイスを介してのパスワードの入力)が行われない限り印刷を開始しない。例えば、ユーザがセキュアプリントの設定を行って印刷を指示した場合、印刷データに含められたセキュアプリントであることを示す情報をもとに、印刷装置100は、当該印刷データで用いられる全てのオブジェクトをセキュアなオブジェクトであると把握する。
【0038】
図8は、キャッシュ処理に係るフローチャートの一例を示す図である。図8のフローチャートは、図5のフローチャートにおけるキャッシュ処理(S512)をより詳細に示したものである。
まず、ジョブコントローラ200は、キャッシュ208に保持する画像データのオブジェクトの種類がリユーザブルオブジェクトであるかグローバルリユーザブルオブジェクトであるかを判断する(S801)。このとき、リユーザブルオブジェクトであると判断された場合、S802の処理が行われ、他方、グローバルリユーザブルオブジェクトであると判断された場合、S803の処理が行われる。
【0039】
S803では、ジョブコントローラ200は、当該ジョブがセキュアプリントのジョブであるか否かを判断する(S803)。例えば、ジョブコントローラ200は、VDPデータに含まれるセキュアプリントであることを示す情報に基づいて判断する。このとき、セキュアプリントのジョブであると判断された場合、S804の処理が行われ、他方、セキュアプリントのジョブでないと判断された場合、S806の処理が行われる。
S804では、ジョブコントローラ200は、オブジェクトの扱いの設定値(設定情報の一例)をHDD104から取得し、オブジェクトの扱いを決定する。オブジェクトの扱いの設定値とは、ユーザから設定可能な情報であり、印刷装置100に設けられた、或いは接続された操作パネル等の入力デバイスを介して設定可能なものである。
このとき、非グローバルリユーザブルオブジェクトとして扱うと決定された場合、S802の処理が行われる。また、アクセス制限付きのグローバルリユーザブルオブジェクトとして扱うと決定された場合、S805の処理が行われる。また、グローバルリユーザブルオブジェクトとして扱うと決定された場合、S806の処理が行われる。
【0040】
S802では、ジョブコントローラ200は、キャッシュ制御部207に対し、オブジェクトの画像データを、リユーザブルオブジェクトを示すキャッシュデータとしてキャッシュ208に保持するように指示する。例えば、S804で非グローバルリユーザブルオブジェクトとして扱うと決定された場合、キャッシュ制御部207は、セキュアなオブジェクトの画像データを、リユーザブルオブジェクトを示すキャッシュデータとしてキャッシュ208に格納する。
S805では、ジョブコントローラ200は、キャッシュ制御部207に対し、グローバルリユーザブルオブジェクトの画像データを、アクセス制限付きのキャッシュデータとしてキャッシュ208に保持するよう指示する。ここで、アクセス制限付きのキャッシュデータとは、セキュアプリントで施されたアクセスの制限と同じものがグローバルリユーザブルオブジェクトの画像データに施されたものを示す。
【0041】
S806では、ジョブコントローラ200は、キャッシュ制御部207に対し、グローバルリユーザブルオブジェクトの画像データを、グローバルリユーザブルオブジェクトを示すキャッシュデータとしてキャッシュ208に保持するよう指示する。
また、S805でグローバルリユーザブルオブジェクトは鍵付きでキャッシュされているので、S513でキャッシュデータをページバッファに描画する際は、パスワードを用いて鍵を解いて画像データを生成し、生成された画像データをページバッファに描画する。
上述した構成によれば、セキュアプリントに係るジョブおいてもオブジェクトのキャッシュデータのセキュリティを確保しつつ、印刷のパフォーマンスを向上させることができる。更には、ユーザによる入力デバイスの操作に応じて印刷のパフォーマンスをより優先した処理に切り替えることができる。
【0042】
<その他の実施形態>
上述した各実施形態の構成については、適宜組み合わせることができる。
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【0043】
上述した実施形態の構成によれば、再利用データをより適切に管理することができる。
【0044】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶部を有する画像形成装置であって、
一のジョブでの処理において、前記一のジョブとは異なる他のジョブで再利用が可能な再利用データについてアクセスが制限されているか否かを判断し、制限されていないと判断した再利用データを他のジョブで再利用が可能なように前記記憶部に格納する格納手段と、
前記記憶部の再利用データを用いて画像を形成する画像形成手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記格納手段は、制限されていると判断した再利用データを他のジョブで再利用が不可能なように前記記憶部に格納し、
前記一のジョブの終了の際、前記記憶部から他のジョブで再利用が不可能な再利用データを削除する削除手段を更に有することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記格納手段は、再利用データの扱いを示す設定情報に従って、制限されていると判断した再利用データの扱いを決定することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記格納手段は、前記設定情報が、アクセスが制限されている再利用データを他のジョブで再利用が不可能な再利用データとして前記記憶部に格納することを示す情報であると判断した場合、制限されていると判断した再利用データを他のジョブで再利用が不可能な再利用データとして前記記憶部に格納し、
前記一のジョブの終了の際、前記記憶部から他のジョブで再利用が不可能な再利用データを削除する削除手段を更に有することを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記格納手段は、前記設定情報が、アクセスが制限されている再利用データに前記アクセスの制限を付して前記記憶部に格納することを示す情報であると判断した場合、制限されていると判断した再利用データに前記アクセスの制限を付して前記記憶部に格納することを特徴とする請求項3又は4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記格納手段は、制限されていると判断した再利用データを鍵付きで前記記憶部に格納することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項7】
記憶部を有する画像形成装置におけるデータ管理方法であって、
一のジョブでの処理において、前記一のジョブとは異なる他のジョブで再利用が可能な再利用データについてアクセスが制限されているか否かを判断し、制限されていないと判断した再利用データを他のジョブで再利用が可能なように前記記憶部に格納する格納工程と、
前記記憶部の再利用データを用いて画像を形成する画像形成工程と、
を有することを特徴とするデータ管理方法。
【請求項8】
記憶部を有するコンピュータを、
一のジョブでの処理において、前記一のジョブとは異なる他のジョブで再利用が可能な再利用データについてアクセスが制限されているか否かを判断し、制限されていないと判断した再利用データを他のジョブで再利用が可能なように前記記憶部に格納する格納手段と、
前記記憶部の再利用データを用いて画像を形成する画像形成手段と、
して機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−245731(P2012−245731A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120508(P2011−120508)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】