説明

画像形成装置、ヘッドメンテナンス方法

【課題】ヘッドとの対向領域に記録媒体を搬送する、空吐出の際に記録液が通過する孔を備えたベルトを用いつつ、空吐出の際のベルトの汚染、空吐出完了までの時間を低減可能な画像形成装置及びヘッドメンテナンス方法の提供。
【解決手段】ヘッド61BK、61C、61M、61Yに対向して配設され、ヘッド61BK、61C、61M、61Yに備えられたノズルの配列方向に直交する搬送方向に記録媒体を搬送する、複数の孔を有する無端状のベルト11と、ベルト11を回転駆動する駆動手段45によるベルト11の駆動速度を制御する駆動速度制御手段54と、空吐出のためにノズルから吐出させかかる孔を通過させるべき記録液の量を取得する吐出量取得手段40とを用い、駆動速度制御手段54により、吐出量取得手段40によって取得されたかかる記録液の量に応じて、ベルト11の駆動速度を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドによりインク等の記録液を吐出して画像形成を行うインクジェット方式の画像形成装置であってヘッドのメンテナンスを行う画像形成装置及びこの画像形成装置におけるヘッドメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ピエゾ方式に代表される可動アクチュエータ方式、サーマル方式に代表される加熱膜沸騰方式等により、複数の微小なノズルからインク等の記録液を液滴化して吐出するヘッドを備え、インクジェット記録を行うインクジェットプリンタ等のインクジェット方式の画像形成装置が知られている(たとえば、〔特許文献1〕、〔特許文献2〕参照)。
【0003】
このような画像形成装置では、記録液の乾燥によるノズルの詰まりや記録液の吐出量低下を防止するために、非駆動時のヘッドに対するキャップが設けられている(たとえば、〔特許文献1〕参照)ことが多いが、キャップをしていても、ノズルの詰まりや吐出量の低下を完全に防止することができない等の理由により、記録液を、画像形成時以外に、キャップに吐出させる、いわゆる空吐出や、ヘッドからの記録液の強制排出などのメンテナンスを行い、ノズルによる記録液の吐出性能を維持する技術が提案されている(たとえば、〔特許文献1〕、〔特許文献2〕参照)。
【0004】
かかる空吐出を行う技術を採用した画像形成装置であって、画像形成を行う際にヘッドとの対向領域に用紙等の記録媒体の搬送を行う無端状のベルトを備え、空吐出を行う際には、記録媒体の搬送を行わずに、このベルトに設けられた孔を通過させるように記録液を吐出するように構成された画像形成装置が知られている(たとえば、〔特許文献2〕参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ベルトに設けられた孔を通過させる態様で空吐出を行う構成では、ベルトの汚染の問題や、空吐出の完了までに時間がかかるという問題がある。すなわち、空吐出の際に記録液の液滴の一部でも孔を通過せずベルト表面に付着すると、それ以降の画像形成時にベルトで搬送する記録媒体を汚したり、画像形成装置内の他の部品の汚染を生じたりする可能性がある。かといって、単に記録液がベルト表面に付着することのないように時間当たりに空吐出する記録液の量を減じると、空吐出の完了までに時間がかかってしまう。また、ベルトの移動速度によっては、ベルトが孔を形成されていることもあって、ベルトの移動によってベルト表面付近の気流の乱れを生じ、記録液の液滴の飛翔方向が乱れ、ベルト表面の汚染等の問題も生じる可能性もある。
【0006】
本発明は、ヘッドとの対向領域に記録媒体を搬送する、メンテナンスのための吐出の際に記録液が通過する孔を備えたベルトを用いつつ、吐出の際のベルトの汚染、空吐出完了までの時間を低減可能な画像形成装置及びヘッドメンテナンス方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ヘッドに対向して配設され、ヘッドに備えられたノズルの配列方向に直交する搬送方向に記録媒体を搬送する、複数の孔を有する無端状のベルトと、このベルトを回転駆動する駆動手段と、この駆動手段による前記ベルトの駆動速度を制御する駆動速度制御手段と、非画像形成時におけるメンテナンスのために前記ノズルから吐出させ前記孔を通過させるべき記録液の量を取得するメンテナンス吐出量取得手段とを有し、前記駆動速度制御手段は、前記メンテナンス吐出量取得手段によって取得された前記量に応じて、前記駆動速度を設定する画像形成装置にある。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の画像形成装置において、前記ベルトは、同ベルトの回転時に前記配列方向における前記ノズルからの記録液の吐出位置のすべてに対応するように前記孔を配列した、前記孔のパターンを、前記搬送方向において周期的に複数有し、前記駆動速度制御手段は、前記メンテナンス吐出量取得手段によって取得された前記量の記録液が、前記ベルトが1回転する間の、前記搬送方向における前記複数のパターンのうちの一部の前記パターンを構成する前記孔を通過するように、前記駆動速度を設定することを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の画像形成装置において、前記駆動速度制御手段は、前記メンテナンス吐出量取得手段によって取得された前記量の記録液が前記孔を通過したとき、前記駆動速度を画像形成を行うための速度に設定することを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3の何れか1つに記載の画像形成装置において、前記メンテナンス吐出量取得手段は、前記量を、記録液の非吐出経過時間に応じて取得することを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4の何れか1つに記載の画像形成装置において、前記メンテナンス吐出量取得手段は、前記量を、ヘッドのキャッピング状態に応じて取得することを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5の何れか1つに記載の画像形成装置において、前記メンテナンス吐出量取得手段は、前記量を、環境温度と環境湿度との少なくとも一方に応じて取得することを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし6の何れか1つに記載の画像形成装置において、前記メンテナンス吐出量取得手段は、前記量を、ヘッドの温度に応じて取得することを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の発明は、ヘッドに対向して配設され、ヘッドに備えられたノズルの配列方向に直交する搬送方向に記録媒体を搬送する、複数の孔を有する無端状のベルトと、このベルトを回転駆動する駆動手段と、この駆動手段による前記ベルトの駆動速度を制御する駆動速度制御手段と、非画像形成時におけるメンテナンスのために前記ノズルから吐出させ前記孔を通過させるべき記録液の量を取得するメンテナンス吐出量取得手段とを用い、前記駆動速度制御手段により、前記メンテナンス吐出量取得手段によって取得された前記量に応じて、前記駆動速度を設定するヘッドメンテナンス方法にある。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、ヘッドに対向して配設され、ヘッドに備えられたノズルの配列方向に直交する搬送方向に記録媒体を搬送する、複数の孔を有する無端状のベルトと、このベルトを回転駆動する駆動手段と、この駆動手段による前記ベルトの駆動速度を制御する駆動速度制御手段と、非画像形成時におけるメンテナンスのために前記ノズルから吐出させ前記孔を通過させるべき記録液の量を取得するメンテナンス吐出量取得手段とを有し、前記駆動速度制御手段は、前記メンテナンス吐出量取得手段によって取得された前記量に応じて、前記駆動速度を設定する画像形成装置にあるので、メンテナンスのために吐出される記録液が孔を通過する確実性を向上し、吐出の際のベルトの汚染を低減可能とするとともに、吐出完了までの時間を低減可能であり、メンテナンスにより経時的に良好な画像形成を維持することが可能な画像形成装置を提供することができる。
【0016】
前記ベルトは、同ベルトの回転時に前記配列方向における前記ノズルからの記録液の吐出位置のすべてに対応するように前記孔を配列した、前記孔のパターンを、前記搬送方向において周期的に複数有し、前記駆動速度制御手段は、前記メンテナンス吐出量取得手段によって取得された前記量の記録液が、前記ベルトが1回転する間の、前記搬送方向における前記複数のパターンのうちの一部の前記パターンを構成する前記孔を通過するように、前記駆動速度を設定することとすれば、メンテナンスのために吐出される記録液が孔を通過する確実性を向上し、吐出の際のベルトの汚染を低減可能とするとともに、吐出される記録液が一部のパターンを構成する孔を通過するようにすることで吐出完了までの時間を低減可能であり、メンテナンスにより経時的に良好な画像形成を維持することが可能な画像形成装置を提供することができる。
【0017】
前記駆動速度制御手段は、前記メンテナンス吐出量取得手段によって取得された前記量の記録液が前記孔を通過したとき、前記駆動速度を画像形成を行うための速度に設定することとすれば、メンテナンスのために吐出される記録液が孔を通過する確実性を向上し、吐出の際のベルトの汚染を低減可能とするとともに、吐出完了までの時間を低減可能であり、またメンテナンスとともに画像形成時にはベルトの駆動速度が画像形成に適した速度となることとも併せて経時的に良好な画像形成を維持することが可能な画像形成装置を提供することができる。
【0018】
前記メンテナンス吐出量取得手段は、前記量を、記録液の非吐出経過時間に応じて取得することとすれば、メンテナンスのために吐出される記録液の量を非吐出経過時間に応じて適切な量とするとともにこの量の記録液が孔を通過する確実性を向上し、吐出の際のベルトの汚染を低減可能とするとともに、吐出完了までの時間を低減可能であり、メンテナンスにより経時的に良好な画像形成を維持することが可能な画像形成装置を提供することができる。
【0019】
前記メンテナンス吐出量取得手段は、前記量を、ヘッドのキャッピング状態に応じて取得することとすれば、メンテナンスのために吐出される記録液の量をヘッドのキャッピング状態に応じて適切な量とするとともにこの量の記録液が孔を通過する確実性を向上し、吐出の際のベルトの汚染を低減可能とするとともに、吐出完了までの時間を低減可能であり、メンテナンスにより経時的に良好な画像形成を維持することが可能な画像形成装置を提供することができる。
【0020】
前記メンテナンス吐出量取得手段は、前記量を、環境温度と環境湿度との少なくとも一方に応じて取得することとすれば、メンテナンスのために吐出される記録液の量を環境温度と環境湿度との少なくとも一方に応じて適切な量とするとともにこの量の記録液が孔を通過する確実性を向上し、吐出の際のベルトの汚染を低減可能とするとともに、吐出完了までの時間を低減可能であり、メンテナンスにより経時的に良好な画像形成を維持することが可能な画像形成装置を提供することができる。
【0021】
前記メンテナンス吐出量取得手段は、前記量を、ヘッドの温度に応じて取得することとすれば、メンテナンスのために吐出される記録液の量をヘッドの温度に応じて適切な量とするとともにこの量の記録液が孔を通過する確実性を向上し、吐出の際のベルトの汚染を低減可能とするとともに、吐出完了までの時間を低減可能であり、メンテナンスにより経時的に良好な画像形成を維持することが可能な画像形成装置を提供することができる。
【0022】
本発明は、ヘッドに対向して配設され、ヘッドに備えられたノズルの配列方向に直交する搬送方向に記録媒体を搬送する、複数の孔を有する無端状のベルトと、このベルトを回転駆動する駆動手段と、この駆動手段による前記ベルトの駆動速度を制御する駆動速度制御手段と、非画像形成時におけるメンテナンスのために前記ノズルから吐出させ前記孔を通過させるべき記録液の量を取得するメンテナンス吐出量取得手段とを用い、前記駆動速度制御手段により、前記メンテナンス吐出量取得手段によって取得された前記量に応じて、前記駆動速度を設定するヘッドメンテナンス方法にあるので、メンテナンスのために吐出される記録液が孔を通過する確実性を向上し、吐出の際のベルトの汚染を低減可能とするとともに、吐出完了までの時間を低減可能であり、メンテナンスにより経時的に良好な画像形成を維持することが可能なヘッドメンテナンス方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を適用した画像形成装置の概略正面図である。
【図2】図1に示した画像形成装置の一部の概略平面図である。
【図3】図1に示した画像形成装置に備えられたヘッド及びベルトの孔の構成態様を示した概念図である。
【図4】図1に示した画像形成装置の制御ブロック図である。
【図5】図1に示した画像形成装置に備えられたベルトが複数の孔を備えていることを示す概略平面図である。
【図6】非画像形成時におけるメンテナンスのためにノズルから吐出させるべき記録液の量の傾向を各種条件についてまとめたチャートである。
【図7】図1に示した画像形成装置においてヘッドのメンテナンス等を行なうときのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1及び図2に本発明を適用した画像形成装置の概略を示す。画像形成装置100は、インクジェットプリンタとしてのプリンタであってフルカラーの画像形成を行うことができるようになっている。画像形成装置100は、外部から受信した画像情報に対応する画像信号に基づき画像形成処理を行なう。
【0025】
画像形成装置100は、一般にコピー等に用いられる普通紙の他、OHPシートや、カード、ハガキ等の厚紙や、封筒等の何れをもシート状の記録媒体としてこれに画像形成を行なうことが可能である。画像形成装置100は、記録媒体である被記録材たる記録体としての用紙Sの片面に画像形成可能な片面画像形成装置であるが、用紙Sの両面に画像形成可能な両面画像形成装置であってもよい。
【0026】
画像形成装置100は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色に色分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を形成可能な、当該色のインクとしての印字液である記録液を液滴の状態で吐出する記録液吐出体としてのインクヘッドである記録ヘッドとしての液体吐出ヘッドたるヘッド61BK、61C、61M、61Yを有している。
【0027】
ヘッド61BK、61C、61M、61Yは、画像形成装置100の本体99の略中央部に配設され用紙Sを同図において左方に搬送する搬送部としての搬送ユニット10の上面に対向する位置に配設され、搬送ユニット10によって搬送中の用紙Sに記録液の液滴を吐出して印字すなわち画像形成を行うヘッドアレイとしてのヘッド部61を構成している。ヘッド61BK、61C、61M、61Yは、搬送ユニット10による用紙Sの搬送方向である図1において反時計回り方向であるA1方向の上流側からこの順で並んでいる。このように、画像形成装置100は、ヘッド61BK、61C、61M、61Yを用紙Sの搬送経路に対向させA1方向に並設したタンデム構造となっている。同図において各符号の数字の後に付されたBK、C、M、Yは、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー用の部材であることを示している。
【0028】
ヘッド61BK、61C、61M、61Yはそれぞれ、ブラック(BK)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の画像を形成するための記録液吐出装置であるインク吐出装置60BK、60C、60M、60Yに備えられている。なお、各ヘッド61BK、61C、61M、61Yは、図3において左右方向に千鳥配列で並設されているように、図1の紙面に垂直な方向に対応する用紙Pの幅方向に一致する主走査方向に、複数が並設された態様で、インク吐出装置60BK、60C、60M、60Yに備えられている。
【0029】
ヘッド61BK、61C、61M、61Y、より具体的にはヘッド61BK、61C、61M、61Yのそれぞれに備えられ記録液の液滴を吐出するノズルは、画像形成装置100において画像形成可能な用紙Pのうち、図1において紙面に垂直な幅方向において最大の幅を有する用紙Pの全幅にわたって配設されている。ノズルは150dpiで、φ20μmで配設されている。ノズルから吐出される液滴は約23ピコリットルであり、径は約17.6となっている。ヘッド61BK、61C、61M、61Yはそれぞれ、図3に示したような幅方向、主走査方向に複数が並設された態様でなく、図2に概略的に示しているように幅方向、主走査方向に1つが延設された態様で配設されていても良い。
【0030】
用紙Sは、搬送ユニット10により搬送される過程で、各ヘッド61BK、61C、61M、61Yに対向する領域で、各ヘッド61BK、61C、61M、61Yからブラック、マゼンタ、シアン、イエローの記録液の液滴が順次重ね合わされる態様で吐出されて付与され、その表面上に画像が形成されるようになっている。
【0031】
ヘッド61BK、61C、61M、61Yによる用紙Sに対する記録液の吐出すなわち付与は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色の画像領域が用紙S上の同じ位置に重なるよう、用紙Sの搬送方向である、幅方向に直交する記録媒体通紙方向となっている図1、図2における左方向であるA1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして行われる。画像形成装置100は、ヘッド61BK、61C、61M、61Yから吐出された記録液を用紙Sに直接塗布して画像形成を行う直接方式の画像形成装置となっている。
【0032】
図1又は図2に示すように、画像形成装置100は、ヘッド61BK、61C、61M、61Yをそれぞれ備えたインク吐出装置60BK、60C、60M、60Yと、搬送ユニット10と、用紙Sを多数枚積載可能であり積載した用紙Sのうち最上位の用紙Sのみを搬送ユニット10に向けて給送し給紙する給紙ユニット20と、搬送ユニット10によって搬送されてきた画像形成済み言い換えると印刷済みの用紙Sを多数積載可能な排紙台25とを有している。
【0033】
画像形成装置100はまた、搬送ユニット10と排紙台25との間に、すなわち搬送ユニット10の記録媒体通紙方向下流側に、搬送ユニット10から搬送されてきた画像形成済みの用紙Pを排紙台25に排紙する搬送ガイド部95と、搬送ガイド部95の下部に配設された、ヘッド61BK、61C、61M、61Yのノズル、ヘッドノズル面をクリーニングするヘッドクリーニング装置としてのクリーニングユニット90とを有している。
【0034】
画像形成装置100はまた、ヘッド61BK、61C、61M、61Yを一体に支持したヘッド支持体としてのキャリッジ50と、キャリッジ50を駆動して、画像形成を行う図1に示すホームポジションとクリーニングユニット90に対向する維持位置としてのクリーニング位置との何れかに位置決めする図示しない駆動源としてのモータ等を含む図示しないヘッド変位駆動手段とを有している。
【0035】
画像形成装置100はまた、図2に示すように、ヘッド61BK、61C、61M、61Yによる記録液の吐出の状態を検知するためにヘッド61BK、61C、61M、61Yから吐出された液滴吐出不良検出用液滴を検出する液滴吐出不良検出部31と、搬送ユニット10に後述のように備えられている搬送ベルト11の幅方向における位置を検出することで搬送ベルト11の走行状態を検知するベルト幅方向位置検出手段32と、幅方向におけるヘッド61BK、61C、61M、61Yによる記録液の吐出位置言い換えると記録位置を検出する記録位置検出手段33とを有している。
【0036】
画像形成装置100はまた、図4に示すように、画像形成装置100の動作全般を制御するCPU46、メモリとしてのROM51、RAM52等を含む制御手段としての制御部40と、画像形成開始指示などの画像形成装置100の動作の設定等を行う操作パネル41と、画像形成装置100の使用環境具体的には本体99内のとくにヘッド61BK、61C、61M、61Y近傍の温度及び湿度に関する環境を検知する、温度検知手段、湿度検知手段として機能する環境検知手段としての環境検知センサ56と、ヘッド61BK、61C、61M、61Yのそれぞれの温度を検知するヘッド温度検知手段としてのヘッド温度検知センサ57と、ヘッド61BK、61C、61M、61Yによる記録液の吐出タイミングを計るために搬送ベルト11に形成された、図3に示して後述する基準孔H’を光学的に検知する基準検知手段としての基準検知センサ35とを有している。
【0037】
図1に示すように、搬送ユニット10は、ヘッド61BK、61C、61M、61Yに対向して配設され、A1方向に回転する無端状のベルトとしての無端ベルトである搬送ベルト11と、搬送ベルト11を巻き掛けられた搬送駆動ローラとしての駆動ローラ12と、駆動ローラ12とともに搬送ベルト11を巻き掛けられた搬送従動ローラとしての従動ローラ13とを有している。
【0038】
搬送ユニット10はまた、搬送ベルト11のうちヘッド61BK、61C、61M、61Yに対向した上面部の下方に位置しヘッド61BK、61C、61M、61Yに対向する領域に設けられたインク受け部15と、駆動ローラ12及び従動ローラに掛け回され掛け渡された搬送ベルト11の下方に設けられ搬送ベルト11に用紙Sを吸着させるための吸引手段16とを有している。
【0039】
搬送ユニット10はまた、駆動ローラ12、従動ローラ13にそれぞれ対向する位置で搬送ベルト11の上部から当接した搬送ガイドローラ17、18と、搬送ガイドローラ17、18を自重で搬送ベルト11に当接させた図示しないガイドと、従動ローラ13を中心に搬送ユニット10をB方向に回転駆動する図示しないユニット回動モータと、駆動ローラ12を回転駆動するベルト駆動手段である駆動手段としての図4に示す搬送ベルト移動モータ45等とを有している。
【0040】
搬送ベルト移動モータ45は搬送ベルト11がA1方向に回転し周回移動するように駆動ローラ12を回転駆動する。搬送ベルト移動モータ45は時間当たりの回転数が可変である。搬送ベルト移動モータ45は、制御部40によって駆動を制御されるようになっている。従動ローラ13は駆動ローラ12によってA1方向に回転駆動される搬送ベルト11に従動回転する。搬送ガイドローラ17、18は搬送ベルト11に従動回転する。
【0041】
搬送ベルト11には、図3又は図5に示すように多数の吸引孔であるベルト孔としての孔Hが形成されている。図5において、符号Jは、搬送ベルト11を無端状に形成する際に継ぎ目となった封止部を示している。搬送ベルト11はまた、図2に示すように、その幅方向における端部に、ベルト幅方向位置検出手段32によって検知されるマーク34を有している。
【0042】
後述する空吐出時において、ヘッド61BK、61C、61M、61Yから、搬送ベルト11に向けて記録液が吐出されたとき、記録液はかかる孔Hを通過して下方に落下し、このようにして搬送ベルト11を透過した記録液は、インク受け部15によって受け止められる。孔Hの形成態様は、後述する空吐出とともに説明する。
【0043】
インク受け部15は、ヘッド61BK、61C、61M、61Yから吐出され搬送ベルト11を透過したブラック、シアン、マゼンタ、イエローそれぞれの記録液を受ける空吐出受15BK、15C、15M、15Yを有している。空吐出受15BK、15C、15M、15Yはそれぞれ、キャリッジ50がホームポジションを占めたときに搬送ベルト11を挟んでヘッド61BK、61C、61M、61Yに対向する位置に配設されている。
【0044】
吸引手段16は、回転により負圧を発生させる吸引ファン43と、吸引ファン43を回転駆動する図4に示す吸引ファンモータ44とを有し、搬送ベルト11に形成された孔Hを利用して、用紙Sを搬送ベルト11に吸着する。この点、かかる孔Hは、吸引ファン16による吸引用の吸引孔としても機能する。すなわち、孔Hは、用紙Sを搬送ベルト11に吸着するためにも、空吐出時に記録液を通過させるためにも、使用される。用紙Sは孔Hの負圧により搬送ベルト11に吸い付けられた状態で、搬送ベルト11のA1方向への周回移動により、記録媒体通紙方向に搬送され、搬送ユニット10により、給紙ユニット20から搬送ガイド部95を経て排紙台25まで搬送される。
【0045】
ユニット回動モータは、搬送ユニット10を、図1に実線で示したホームポジションと、同図に鎖線で示した退避位置との何れかに位置決めする。ユニット回動モータは、ヘッド変位駆動手段がキャリッジ50をヘッド61BK、61C、61M、61Yとともにクリーニング位置に位置決めするときに、キャリッジ50及びヘッド61BK、61C、61M、61Yの移動スペースを確保するために、搬送ユニット10を退避位置に位置決めする。
なお、搬送ユニット10は、用紙Sに付着された記録液を用紙Sに定着し記録液によって形成された画像を用紙Sに定着させるための定着手段を備えていてもよい。
【0046】
給紙ユニット20は、用紙Sを多数枚積載可能な給紙トレイ21と、給紙トレイ21に積載された用紙Sのうち最上位の用紙Sのみを他の用紙Sから分離する分離ローラ22と、分離ローラ22により一枚だけ分離された用紙Sを搬送ユニット10に向けて給送する給紙ローラ23と、給紙ローラ23を、ヘッド61BK、61C、61M、61Yにおける記録液の吐出タイミングに合わせるように回転駆動し用紙Sを給送させる図示しない駆動手段としてのモータ等とを有している。
【0047】
排紙台25は、画像形成済みの用紙Sを多数積載可能な排紙トレイ26と、用紙Sの幅方向すなわち同図における紙面に垂直な方向において用紙Sを規制する一対のサイドフェンス27と、用紙Sの先端すなわち同図における左側の端部を規制するエンドフェンス28とを有している。
【0048】
ヘッド変位駆動手段は、キャリッジ50をヘッド部61とともにA1方向にスライド移動自在であり、キャリッジ50をホームポジション又はクリーニング位置に位置決めすることで、ヘッド61BK、61C、61M、61Yを、用紙Pもしくは空吐出受15BK、15C、15M、15Yに記録液を吐出する印刷位置である画像形成位置としての吐出位置、または、クリーニングユニット90によってクリーニングされる被クリーニング位置に位置決めする。ヘッド変位駆動手段は、画像形成停止後、所定数の用紙Pに対する画像形成が行われたなどの所定の条件が満たされたときなどに、キャリッジ50をクリーニング位置へ移動させ、ヘッド61BK、61C、61M、61Yを被クリーニング位置に位置決めする。
【0049】
搬送ガイド部95は、搬送ユニット10を経て画像形成が行われた用紙Sを排紙台25に向けてガイドするための搬送ガイド板としてのガイド板96と、かかる用紙Pをガイド板96上で移動させ排紙台25に排紙するための排紙ローラ97と、ガイド板96の記録媒体通紙方向下流側に設けられ、ガイド板96及び排紙ローラ97の回動中心となる支点である支軸98と、支軸98を回動させガイド板96及び排紙ローラ97をC方向に回転駆動する図示しないガイド部回動モータとを有している。
【0050】
ガイド部回動モータは、搬送ガイド部95を、同図に実線で示した、クリーニングユニット90を上方から覆うホームポジションと、同図に鎖線で示した、クリーニングユニット90を上方に向けて露出させる開放位置との何れかに位置決めし固定する。ガイド部回動モータは、画像形成停止後、ヘッド変位駆動手段がヘッド61BK、61C、61M、61Yを被クリーニング位置に位置決めしヘッド61BK、61C、61M、61Yのクリーニングを行うときに、クリーニングユニット90がヘッド61BK、61C、61M、61Yに対向するように、搬送ガイド部95を開放位置に位置決めする。
【0051】
クリーニングユニット90は、搬送ガイド部95が開放位置を占めヘッド61BK、61C、61M、61Yが被クリーニング位置を占めた状態でヘッド61BK、61C、61M、61Yをクリーニングするクリーニング手段91BK、91C、91M、91Yと、クリーニング手段91BK、91C、91M、91Yの下部にクリーニング手段91BK、91C、91M、91Yにそれぞれ対応して備えられたポンプとしての吸引ポンプ92BK、92C、92M、92Yとを有している。
【0052】
クリーニング手段91BK、91C、91M、91Yはこの順で、ヘッド61BK、61C、61M、61Yの配列方向である副走査方向に沿って配設されている。クリーニング手段91BK、91C、91M、91Yはそれぞれ、ヘッド61BK、61C、61M、61Yと同様に、画像形成装置100において画像形成可能な用紙Pのうち幅方向において最大の幅を有する用紙Pの全幅にわたって配設されており、被クリーニング位置を占めたヘッド61BK、61C、61M、61Yをキャップするキャップとして機能するとともに、被クリーニング位置を占めたヘッド61BK、61C、61M、61Yのノズル面に付着したインクを清掃するためのワイパーブレードとして機能するものである。
【0053】
吸引ポンプ92BK、92C、92M、92Yは、キャップとして機能するクリーニング手段91BK、91C、91M、91Yによって、ヘッド61BK、61C、61M、61Yがキャップされた状態で、ヘッド61BK、61C、61M、61Yのノズル内のインクを吸引してヘッド61BK、61C、61M、61Yのクリーニングを行うものである。
【0054】
キャリッジ50は、ヘッド61BK、61C、61M、61Yに劣化等が生じたときにこれらが新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、ヘッド61BK、61C、61M、61Yと一体で、本体99に対して着脱可能となっている。ヘッド61BK、61C、61M、61Yもそれぞれ、劣化等が生じたときに新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、独立して本体99に対して着脱可能となっている。これによって、交換作業、メンテナンス作業が容易化されている。
【0055】
インク吐出装置60BK、60C、60M、60Yは、用いる記録液の色が異なるものの、その余の点では互いに略同様の構成となっている。インク吐出装置60BK、60C、60M、60Yはそれぞれ、ヘッド61BK、61C、61M、61Yを、A1方向である副走査方向に垂直な、用紙Pの幅方向である主走査方向に図3に示す態様で複数並設した状態で備えている。ヘッド61BK、61C、61M、61Yはそれぞれ、記録液を液滴化して吐出する図示しない多数のノズルを主走査方向にライン状に備えており、ヘッド61BK、61C、61M、61Yはライン型記録ヘッドとなっているとともに、インク吐出装置60BK、60C、60M、60Y、画像形成装置100はヘッド固定式のフルライン型となっており、画像形成装置100はライン型画像形成装置であるライン型インクジェット記録装置となっている。なお、千鳥状に配列されたノズルもライン状に配列されているものとする。主走査方向はノズルの配列方向に一致している。
【0056】
図1に示すように、インク吐出装置60BK、60C、60M、60Yはそれぞれ、ヘッド61BK、61C、61M、61Yと、ヘッド61BK、61C、61M、61Yにインクを供給する供給系をなす液体供給装置としてのインク供給装置80BK、80C、80M、80Yとを有している。
【0057】
インク供給装置80BK、80C、80M、80Yは、ヘッド61BK、61C、61M、61Yに供給される当該色のインクを収容した液体タンクであるメインタンクとしてのインクカートリッジ81BK、81C、81M、81Yと、インクカートリッジ81BK、81C、81M、81Y内のインクを供給され一時的に貯容する密閉式のサブタンク82BK、82C、82M、82Yとを有している。
【0058】
インク供給装置80BK、80C、80M、80Yはまた、サブタンク82BK、82C、82M、82Y内に一旦貯容されたインクを各ヘッド61BK、61C、61M、61Yに分配して供給する液体供給部であるインク供給部としてのディストリビュータとしての分岐菅83BK、83C、83M、83Yとを有している。分岐菅83BK、83C、83M、83Yは、ヘッド61BK、61C、61M、61Yの上部においてヘッド61BK、61C、61M、61Yとともにキャリッジ50に支持されている。
【0059】
インクカートリッジ81BK、81C、81M、81Yと、サブタンク82BK、82C、82M、82Yとの間は、同図中において一点鎖線で示した、内部にインクを通すチューブによる供給経路で接続されている。サブタンク82BK、82C、82M、82Yと分岐菅83BK、83C、83M、83Yとの間、分岐菅83BK、83C、83M、83Yとヘッド61BK、61C、61M、61Yとの間も同図中において一点鎖線で示した、内部にインクを通す供給チューブで接続されている。
【0060】
よって、インクカートリッジ81BK、81C、81M、81Y、サブタンク82BK、82C、82M、82Y、分岐菅83BK、83C、83M、83Y、ヘッド61BK、61C、61M、61は、インクの流れる方向の上流側から下流側に向けてこの順で並んでいる。
【0061】
サブタンク82BK、82C、82M、82Yは、ヘッド61BK、61C、61M、61との水頭差によって、ヘッド61BK、61C、61M、61のノズルのメニスカスを保持するのに適切な負圧に保たれている。インク吐出装置60BK、60C、60M、60Y、インク供給装置80BK、80C、80M、80Yは、液体供給方法たるインク供給方法として自然供給方式を採用したものとなっている。
【0062】
インクカートリッジ81BK、81C、81M、81Yは、内部のインクが消費されて残り少なくなったときあるいはなくなったとき等に新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、本体99に対して着脱可能となっている。
【0063】
インク吐出装置60BK、60C、60M、60Yは、ノズルから記録液を液滴化して吐出させ用紙Sに着弾させるためのアクチュエータとして圧電素子を有し、圧電素子に印加される電圧パルスに応じてノズルから記録液を吐出するようになっている。インク吐出装置60BK、60C、60M、60Yのアクチュエータはピエゾ方式等の、形状変形素子方式である他の方式の可動アクチュエータであってもよいし、サーマル方式等の加熱ヒータ方式によってノズルから記録液を吐出させるものであっても良い。
【0064】
記録液は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローに対応した色剤と、この色剤の分散剤と、溶媒とを少なくとも含む水性顔料インクである。
本体99は、図示しない前後側板及びステーなどを有している。
【0065】
図4に示すように、制御部40は、画像形成動作時すなわち印刷動作時に、CPU46によりホストI/F47に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC48にてデータの並び替え処理等を行い、場合によっては、画像処理の一部の処理を行って、ヘッド駆動制御部49に画像データを転送する。画像出力するための印刷データのビットマップデータすなわち印刷ラスタデータへの変換は、ホスト側のプリンタドライバで画像データをビットマップデータに展開し、印刷データの印刷ラスタデータを作成したうえで、この印刷ラスタデータを制御部40に転送するようにしている。
【0066】
ヘッド駆動制御部49は、印刷ラスタデータを受け取ると、このドットパターンデータである印刷ラスタデータを、クロック信号に同期して、ヘッドドライバ50にシリアルデータで送出し、また所定のタイミングでラッチ信号をヘッドドライバ50に送出する。
【0067】
ヘッド駆動制御部49は、駆動波形である駆動信号のパターンデータを格納したROM51(専用のROMであっても良い)と、このROM51から読み出される駆動波形のデータをD/A変換するD/A変換器を含む波形生成回路及びアンプ等で構成される駆動波形発生回路を含む。
【0068】
ヘッドドライバ50は、ヘッド駆動制御部49からのクロック信号及び画像データであるシリアルデータを入力するシフトレジスタと、シフトレジスタのレジスト値をヘッド駆動制御部49からのラッチ信号でラッチするラッチ回路と、ラッチ回路の出力値をレベル変化するレベル変換回路であるレベルシフタと、このレベルシフタでオン/オフが制御されるアナログスイッチアレイであるスイッチ手段等を含み、アナログスイッチアレイのオン/オフを制御することで駆動波形に含まれる所要の駆動波形を選択的にインク吐出装置60BK、60C、60M、60Yに備えられたヘッド61BK、61C、61M、61Yのアクチュエータに印加してヘッド61BK、61C、61M、61Yを駆動し、画像データを印刷してドットパターンを形成する。この点、ヘッドドライバ50は、画像形成が行われるときにヘッド61BK、61C、61M、61Yを駆動して記録液を吐出させるヘッド駆動手段として機能する。
【0069】
制御部40は、環境検知センサ56によって検知された環境温度と環境湿度とを入力されるとともに、ヘッド温度検知センサ57によって検知されたヘッド61BK、61C、61M、61Yのそれぞれの温度を入力され、また基準検知センサ35からの信号を入力されるI/Oポート58を有している。
【0070】
制御部40は、タイマ59を内蔵している。制御部40は、タイマ59により、ヘッド61BK、61C、61M、61Yのそれぞれについて、インクの非吐出経過時間、すなわち前回インクを吐出してからの経過時間、言い換えるとヘッド61BK、61C、61M、61Yのそれぞれにおいて画像形成を行っていない放置時間を計測し、算出する。この点、タイマ59、制御部40は、非吐出経過時間計測手段、非吐出経過時間算出手段、放置時間計測手段、放置時間算出手段として機能する。
【0071】
制御部40は、他に、画像形成ユニット移動モータ42の駆動制御を行う画像形成ユニット移動モータ駆動部53と、搬送ベルト移動モータ45の駆動制御を行う搬送ベルト移動モータ駆動部54と、吸引ファンモータ44の駆動制御を行う吸引ファン駆動部55とを有している。搬送ベルト移動モータ駆動部54は、搬送ベルト移動モータ45が時間当たりの回転数を変化させ搬送ベルト11の駆動速度言い換えると移動速度である回転速度を変化させるように制御することが可能となっている。この点、搬送ベルト移動モータ駆動部54は、搬送ベルト移動モータ45による搬送ベルト11の駆動速度を制御する駆動速度制御手段として機能する。
【0072】
このような構成の画像形成装置100において、モノクロ画像を形成するときには、図1に示した状態において、モノクロ画像形成開始の旨の所定の信号の入力により、給紙ユニット20から用紙Sが送り出され、この用紙Sが搬送ユニット10によって搬送される過程で、ヘッド61BKからブラックの記録液が、用紙Sの所定位置に吐出され、用紙S上に画像が担持される。画像を担持し画像形成が行われた用紙Sは、搬送ユニット10、搬送ガイド部95によってさらに搬送され、排紙台25上に排出される。
【0073】
また画像形成装置100においてカラー画像を形成するときには、図1に示した状態において、カラー画像形成開始の旨の所定の信号の入力により、給紙ユニット20から用紙Sが送り出され、この用紙Sが搬送ユニット10によって搬送される過程で、各ヘッド61BK、61C、61M、61Yから、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの記録液が、用紙Sの同じ位置に重なるように、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして順次重ね合わされる態様で吐出され、用紙S上に画像が担持される。画像を担持し画像形成が行われた用紙Sは、搬送ユニット10、搬送ガイド部95によってさらに搬送され、排紙台25上に排出される。
【0074】
そして、これらの画像形成後は、必要に応じて、搬送ガイド部95が開放位置を占めヘッド61BK、61C、61M、61Yが被クリーニング位置を占めた状態とし、ヘッド61BK、61C、61M、61Yをクリーニング手段91BK、91C、91M、91Yによってキャップして保湿する状態とする。
【0075】
このようにしてキャップを行うことで、ヘッド61BK、61C、61M、61Yは保湿され、記録液の乾燥による増粘が抑制されるが、次の画像形成動作開始までの放置時間言い換えると待機時間が長時間になっている場合、環境温度が高い場合、環境湿度が低い場合、ヘッド61BK、61C、61M、61Yの温度が高い場合などは、ノズル内の記録液の粘度が高まり、吐出が不安定となる状態が生じ得る。
【0076】
制御部40は、タイマ59によって計測、算出した待機時間が所定時間以上となっている場合など、必要に応じて、ヘッド61BK、61C、61M、61Yのメンテナンスを、インク受け部15への記録液の空吐出よって行うことが可能となっている。待機時間を計測、算出する点において、制御部40、タイマ59は待機時間計測手段、待機時間算出手段として機能する。
【0077】
空吐出とは、非画像形成時におけるメンテナンス等のために、画像形成を目的とせずノズル内の記録液の更新によるメンテナンスを目的としてヘッドドライバ50によりヘッド61BK、61C、61M、61Yからそれぞれ、搬送ベルト11の孔Hを通じて空吐出受15BK、15C、15M、15Yへ記録液を吐出させ、ヘッド61BK、61C、61M、61Yのノズルからの記録液の吐出性能を回復するために行われる記録液の吐出のことである。
【0078】
空吐出は、タイマ59によって計測した待機時間が所定時間以上となっていれば、ヘッド61BK、61C、61M、61Yがクリーニング手段91BK、91C、91M、91Yによってキャップされているか否かによらず行われる。たとえば、モノクロ画像形成を行う場合には、ヘッド61C、61M、61Yによる記録液の吐出は行われないため、待機時間が所定時間以上となっていれば、空吐出を行う。この場合の所定時間は、キャップされている場合よりも短くなる。空吐出の際の各ノズルからの記録液の吐出ピッチは、画像形成時におけるそれと同じであるものとする。
【0079】
なお、本形態では、ヘッド61BK、61C、61M、61Yのそれぞれについて待機時間を計測するようになっているが、ヘッド61BK、61C、61M、61Yのそれぞれのノズルごとに待機時間を計測するようにしても良い。このようにすれば、カラー画像形成を行う場合であっても、たとえば用紙Pのサイズにより、あるいは形成する画像により、用紙Pの幅方向における端部のノズルは、記録液の吐出を行わない状態が継続することがあることから、空吐出を行うことが必要となったノズルについて空吐出を行うことが可能となり、またこれにより空吐出に要する記録液量を低減可能となる。
【0080】
空吐出は、図3、図5に示したように搬送ベルト11の幅方向に不連続に形成された孔Hに記録液を通すように行うため、孔Hは、ノズルの配列方向に一致する主走査方向におけるノズルからの記録液の吐出位置言い換えると搬送ベルト11が孔Hを備えていないとした場合における搬送ベルト11上の記録液の着弾位置のすべてに対応するように、すなわち主走査方向におけるインクの吐出位置のどの部分にも何れかの孔Hが存在するように配設し、且つ空吐出を搬送ベルト11を回転駆動しながら行う必要がある。
【0081】
そこで、かかる孔Hの配設条件を満たすように、孔Hは、図5に示すように、副走査方向における、ベルト孔列A1、B1、A2、B2、・・・、A5の9列の孔Hによって、主走査方向におけるインクの吐出位置のどの部分にも何れかの孔Hが存在するように、ベルト孔パターンとしてのパターンXを形成している。このパターンXは、A1方向において搬送ベルト11に繰り返し形成されている。すなわち、搬送ベルト11の1周分に、複数のパターンXが周期的に備えられている。なお、パターンXを構成する列の数は9に限らず、複数であれば良い。
【0082】
孔Hの副走査方向におけるピッチは6.65mmであり、径は5.4mmである。上述のように、ノズルは150dpiで、φ20μmで配設されているとともに、ノズルから吐出される液滴は約23ピコリットルであり、直径は球体径換算で約35.3μmとなっている。搬送ベルト11の厚さ、搬送ベルト11の厚さ方向における液滴の大きさ、同方向における液滴の速度を考慮すると、孔Hの有効径すなわち実際に液滴を透過するのに使用可能な領域である有効領域は、主走査方向において2〜3mm、副走査方向において1mm程度の領域である。
【0083】
搬送ベルト11は、孔Hの他に、A1方向における各パターンXの上流端に対応して形成されたベルト孔列基準孔としての基準孔H’を有している。基準孔H’は各パターンXのA1方向における位置基準となるものであり、基準検知センサ35によって検出される。基準検知センサ35が基準孔H’を検知することにより、制御部40はA1方向及び幅方向における孔Hの位置を正確に認識し、基準孔H’が検知されたタイミングに基づいて、ヘッド61BK、61C、61M、61Yによる記録液の吐出タイミングを計る。すなわち、制御部40は、基準孔H’が検知されたタイミングに基づいて、ノズルから吐出される液滴が孔Hの上述の有効領域を透過するように、主走査方向において、選択的に、適切なタイミングで、ノズルを駆動する。
【0084】
なお、基準孔H’は、空吐出用の液滴の吐出タイミングを計るのみならず、液滴吐出不良検出部31によって検出される液滴吐出不良検出用液滴の吐出タイミングを計るのにも用いられる。
【0085】
空吐出において各ヘッド61BK、61C、61M、61Yから吐出する記録液の量すなわちノズル内の記録液の更新に必要な記録液の吐出量は、タイマ59によって計測された各ヘッド61BK、61C、61M、61Yの待機時間、環境検知センサ56によって検知された環境温度、環境湿度、クリーニング手段91BK、91C、91M、91Yによる各ヘッド61BK、61C、61M、61Yのキャッピング状態、ヘッド温度検知センサ57によって検知された各ヘッド61BK、61C、61M、61Yの温度に基づいて、制御部40によって決定される。これら待機時間、環境温度、環境湿度、キャッピング状態、各ヘッド61BK、61C、61M、61Yの温度は、各ヘッド61BK、61C、61M、61Yのノズル内の記録液の増粘の程度を左右し、空吐出を行う記録液の量を左右するためである。なお、1つの液滴の体積が上述のようにほぼ一定の所定体積であることから、かかる記録液の量は、実質的には、記録液の液滴の滴数と等価である。
【0086】
空吐出において各ヘッド61BK、61C、61M、61Yの各ノズルから吐出するべき記録液の量は、図6に示すように、待機時間が長いほど多くを要する傾向にあり、環境温度、環境湿度が低いほど多くを要する傾向にあり、キャッピングがされていないほど多くを要する傾向にあり、ヘッド61BK、61C、61M、61Yの温度が高いほど多くを要する傾向にある。
【0087】
制御部40は、ROM51に、空吐出においてヘッド61BK、61C、61M、61Yの各ノズルから吐出させ孔Hを透過させるべき記録液の量を、設計時に作成されたテーブルである制御シーケンステーブルとして記憶し格納している。この点、ROM51は、空吐出量記憶手段ないし空吐出滴数記憶手段(以下「空吐出量記憶手段」と記載する)として機能する。かかる量は、かかる傾向に応じて、待機時間、環境温度、環境湿度、キャッピング状態、ヘッド61BK、61C、61M、61Yの温度のうち、本形態では、ヘッド61BK、61C、61M、61Yの温度を除く条件を空吐出量決定条件として、これら空吐出量決定条件の実際の値、状態に応じて、設計時に、必要吐出量ないし必要吐出滴数(以下「必要吐出量」と記載する)として決定されている。
【0088】
制御部40は、タイマ59によって計測した待機時間が所定時間以上となったか否かを監視し、操作パネル41等によって画像形成開始指示がなされたときに、かかる所定時間以上となっていれば、空吐出を行うべきと判断する空吐出実行判断手段として機能する。なお、このように、ここで述べている空吐出は、画像形成開始の前に画像形成の準備として行う画像形成前から吐出としての印字前空吐出である。
【0089】
空吐出実行判断手段として機能する制御部40によって空吐出を行うべきと判断されると、制御部40は、ROM51から、必要吐出量を各空吐出量決定条件に応じて読み出し、取得して、空吐出を開始する。この点、制御部40は、空吐出時に各ノズルから吐出させ孔Hを通過させるべき記録液の量を取得するメンテナンス吐出量取得手段ないしメンテナンス吐出滴数取得手段(以下「メンテナンス吐出量取得手段」と記載する)として機能する。なお、必要吐出量は、制御部40において、かかる条件に基づいて所定の数式等によって算出することで取得するようにしてもよく、この場合、メンテナンス吐出量取得手段として機能する制御部40はメンテナンス吐出量算出手段ないしメンテナンス吐出滴数算出手段(以下「メンテナンス吐出量算出手段」と記載する)として機能する。
【0090】
ところで、孔Hを通過させる態様で空吐出を行う構成では、搬送ベルト11の汚染、空吐出の完了までの所要時間に留意する必要がある。すなわち、空吐出の際に記録液の液滴の一部でも孔Hを通過せず搬送ベルト11表面に付着すると、それ以降の画像形成時に用紙Pを汚したり、画像形成装置100の他の部品の汚染を生じたりする可能性がある。かといって、必要吐出量を確保しつつ、液滴が孔Hを確実に通過するように、単に時間当たりに空吐出する記録液の量を減じると、空吐出の完了までに時間がかかってしまう。
【0091】
そこで、画像形成装置100において、搬送ベルト移動モータ駆動部54は、メンテナンス吐出量取得手段として機能する制御部40によって取得された必要吐出量に応じて、搬送ベルト11の駆動速度を設定する。この点、制御部40は、ベルト移動速度設定手段として機能する。ベルト移動速度設定手段として機能する制御部40は、具体的には、必要吐出量が多いほど搬送ベルト11の駆動速度が遅くなるように制御し、これによって、空吐出の際の記録液滴が孔Hを通過する確実性を向上しながら、単位時間当たりの空吐出量を増加させ、空吐出完了までの所要時間を抑制する。
【0092】
駆動速度が遅いと、空吐出の際の記録液滴が孔Hを通過する確実性が向上するとともに単位時間当たりの空吐出量が増加する理由は次のとおりである。
【0093】
すでに述べたように、孔Hの有効径は、搬送ベルト11の厚さ、搬送ベルト11の厚さ方向における液滴の大きさ、同方向における液滴の速度に左右されるが、かかる有効径は、搬送ベルト11の駆動速度にも左右される。搬送ベルト11の駆動速度が大きいと、液滴が孔Hを通過しているときにおける搬送ベルト11の移動量が多くなり、搬送ベルト11に付着しやすくなるためである。よって、孔Hの有効径は、搬送ベルト11の駆動速度が遅いほど大きくなる。そのため、搬送ベルト11の駆動速度が遅いほど、たとえば単位時間当たりの空吐出量を増加させても、記録液の液滴は搬送ベルト11に付着することなく孔Hを通過しやすくなる。
【0094】
したがって、空吐出の際の記録液の吐出ピッチが画像形成時におけるそれと同じであっても、搬送ベルト11の単位長さあたりに空吐出させる記録液の量は、搬送ベルト11の駆動速度が遅いほど多くても良いこととなり、これにより、搬送ベルト11の駆動速度が遅いほど、空吐出完了までの時間が抑制され得るのである。また、搬送ベルト11の駆動速度が遅いほど搬送ベルト11の移動によって生じるベルト表面付近の気流の乱れが抑制され、液滴の飛翔方向の乱れが抑制されるため、液滴が孔Hを通過する確実性も向上する。
【0095】
ベルト移動速度設定手段として機能する制御部40は、本形態においては、搬送ベルト11の1周に複数設けられている複数のパターンXのうち、1つのパターンXを構成する孔Hに必要吐出量の記録液が通過するように、搬送ベルト11の駆動速度を決定する。これにより、搬送ベルト11の単位長さあたりに空吐出させる記録液の量が多くなり、具体的には最大となり、空吐出が最も効率的に行われる。搬送ベルト11の駆動速度は必要吐出量によって決定されるので、必要吐出量が上述の各条件に応じて変化することから、搬送ベルト11の駆動速度は上述の各条件によって異なり得る。
【0096】
なお、ベルト移動速度設定手段として機能する制御部40は、空吐出時における搬送ベルト11の駆動速度を画像形成時におけるそれよりも大きな速度に設定するのであれば、搬送ベルト11の1周に複数設けられている複数のパターンXのうち、全てのパターンXよりも少ない複数のパターンXを構成する孔Hに必要吐出量の記録液が通過するように搬送ベルト11の駆動速度を決定するようにしてもよく、この場合にも、搬送ベルト11の移動によって生じるベルト表面付近の気流の乱れが抑制され、液滴の飛翔方向の乱れが抑制されることにより、液滴が孔Hを通過する確実性が向上する。
【0097】
一方、搬送ベルト移動モータ駆動部54は、必要吐出量の記録液が孔Hを通過し空吐出が完了すると、操作パネル41等によってなされた画像形成開始指示にしたがって画像形成を開始するにあたり、搬送ベルト11の駆動速度を、空吐出の際の駆動速度から、画像形成のための駆動速度に設定し、駆動速度をもとの駆動速度に復帰させる。
【0098】
図7を参照して、画像形成装置100において、画像形成開始指示がなされたときに、空吐出を行う条件が満たされている場合の動作の流れの例を説明する。同図に示した動作においては、画像形成前の空吐出のみならず画像形成中の空吐出も実施するようになっている。
【0099】
画像形成開始指示がなされると、ヘッドアレイであるヘッド部61が印刷位置であるホームポジションにあるか否かを判断し(S1)、ホームポジションにあるときはそのまま、またホームポジションにないときはヘッド変位駆動手段によりヘッド部61をホームポジションに位置決めしてから(S2)、放置時間である待機時間を、待機時間計測手段、待機時間算出手段として機能する制御部40、タイマ59により算出、計測する(S3)。待機時間計測手段、待機時間算出手段として機能する制御部40、タイマ59による待機時間の算出、計測は、画像形成開始指示がモノクロ画像の形成開始指示であるときにはヘッド61BKについて行い、画像形成開始指示がモノクロ画像の形成開始指示であるときにはヘッド61BK、61C、61M、61Yについて行う。
【0100】
次いで、ヘッドの状態検知として、キャッピング状態すなわちキャップされた状態であるかキャップされていないデキャップの状態であるかを検出し確認する。キャッピング状態の確認は、画像形成開始指示がモノクロ画像の形成開始指示であるときにはヘッド61BKについて行い、画像形成開始指示がモノクロ画像の形成開始指示であるときにはヘッド61BK、61C、61M、61Yについて行う。
【0101】
次いで、環境検知センサ56を用いて環境条件即ち環境温度及び環境湿度の検知を行って(S5)から、ステップS3からステップS5の結果を踏まえた各種条件から、メンテナンス吐出量取得手段として機能する制御部40により、空吐出量記憶手段として機能するROM51に記憶されている必要吐出量を読み出して取得する(S6)。
【0102】
かかる必要吐出量に基づいて、当該画像形成に使用するヘッドのうちの最大必要吐出量を算出し(S7)、その最大滴数を1つのパターンXに吐出するための搬送ベルト11の駆動速度を算出し(S8)、搬送ベルト11の駆動を開始して(S9)、搬送ベルト11の駆動速度が算出された駆動速度に達するまで待機する(S10)。
【0103】
かかる駆動速度に達すると、基準孔H’を基準検知センサで検知するまで待機し(S11)、基準孔H’を検知するとパターンXに含まれる孔Hの位置を算出し(S12)、孔Hの位置に合致するように空吐出を開始し(S13)、必要吐出量の空吐出が完了するまで待機する(S14)。
【0104】
空吐出が完了すると、搬送ベルト11の駆動速度を画像形成時の速度に変更開始し(S15)、搬送ベルト11の駆動速度が画像形成時の速度となるまで待機し(S16)、かかる速度となると、画像形成開始指示がなされた画像の形成を開始する(S19)。
【0105】
ただし、この画像形成中においても、記録液を吐出せず使用していないノズルや、記録液を吐出しても吐出回数が少なかったノズル、また紙間などで生じる、記録液を吐出していない時間を考慮し、増粘されたインクを吐き出す目的で、印字中すなわち画像形成中の空吐出を、用紙Pの紙間において露出した搬送ベルト11の孔Hを通して実施する(S25)。この空吐出も、パターンXを構成している孔Hの位置に基づいて孔Hを通過するように行う。
【0106】
このような画像形成中の空吐出は、画像形成装置100のようなライン型インクジェット記録装置において実行することが好ましいものである。すなわち、ライン型インクジェット記録装置は一般に、シリアルインクジェット記録装置と異なり、ヘッドが幅方向に移動して記録媒体の搬送領域外の空吐受けに空吐出をする構成を持っておらず、また、本形態において吐出位置と被クリーニング位置とが離れた位置に設けられているように、ライン型インクジェット記録装置に一般に具備されている、吐出位置から離れた位置に設けられた被クリーニング位置のキャップ等に空吐出を実施すると、ライン型インクジェット記録装置の特徴である生産性が低下してしまうという問題がある。そのため、画像形成前の空吐出同様にベルトに設けられた孔に空吐出を行うことが望ましい。
【0107】
そこで、本形態では、ステップS16で搬送ベルト11の駆動速度が画像形成時の速度となったことが検知された後、ステップS19の画像形成開始に先立って、環境検知センサ56を用いて環境条件即ち環境温度及び環境湿度の検知を行って(S17)から、設定されている紙間距離、用紙サイズ、画像形成速度に基づいて紙間時間を算出するとともに画像形成中の必要空吐出量を画像形成を行う色毎に算出しておく(S18)。
【0108】
また、ステップ19による画像形成の開始後、ステップS25の画像形成中の空吐出に先立って、先行する用紙後端を検出してから(S20)、基準孔H’を検知して(S21)、パターンXに含まれる孔Hの位置を算出し(S22)、続いて画像形成に使用するヘッドの温度を検知することで(S23)、画像形成中の必要空吐出量を画像形成を行う色毎に算出しておく(S24)。
【0109】
必要空吐出量は、最大の紙間時間を想定して設定しても良い。なお、画像形成中の空吐出においては、画像形成前の空吐出と異なり、搬送ベルト11の回転数を画像形成用の設定速度に維持する。また、空吐出の開始位置を、基準孔H’の位置とすると、空吐出を行うために紙間を長く取る必要があり、印刷の生産性が劣ってしまうので、用紙後端の通過を検知すると空吐出を行うようにする。
【0110】
ステップS25において画像形成中の空吐出を実施すると、画像形成が完了したか否かを判断し(S26)、画像形成が完了していないと判断された場合は画像形成が完了するまでステップS17からステップS25までの動作を繰り返し、画像形成が完了したと判断されると、待機時間がデキャップ設定時間に達したか否かを判断し(S27)、待機時間がデキャップ設定時間に達すると、ヘッド変位駆動手段によりヘッド部61をホームポジションに位置決めして(S28)ヘッドのキャップを行い、画像形成を終了する。
【0111】
制御部40は、ROM51に、以上述べた、ヘッド61BK、61C、61M、61Yに対向して配設され、ヘッド61BK、61C、61M、61Yに備えられたノズルの配列方向に直交する搬送方向に用紙Pを搬送する、複数の孔Hを有する無端状の搬送ベルト11と、搬送ベルト11を回転駆動する搬送ベルト移動モータ45と、搬送ベルト移動モータ45による搬送ベルト11の駆動速度を制御する搬送ベルト移動モータ駆動部54と、非画像形成時におけるメンテナンスのためにノズルから吐出させ孔Hを通過させるべき記録液の量を取得するメンテナンス吐出量取得手段として機能する制御部40とを用い、搬送ベルト移動モータ駆動部54により、メンテナンス吐出量取得手段として機能する制御部40によって取得されたかかる量に応じて、かかる駆動速度を設定するヘッドメンテナンス方法を実行するためのヘッドメンテナンスプログラムを記憶している。この点、制御部40ないしROM51は、ヘッドメンテナンスプログラム記憶手段として機能している。かかるヘッドメンテナンスプログラムは、制御部40に備えられたROM51のみならず、半導体媒体(たとえば、RAM、不揮発性メモリ等)、光媒体(たとえば、DVD、MO、MD、CD−R等)、磁気媒体(たとえば、ハードディスク、磁気テープ、フレキシブルディスク等)その他の記憶媒体に記憶可能であり、かかるメモリ、他の記憶媒体は、かかるヘッドメンテナンスプログラムを記憶した場合に、かかるヘッドメンテナンスプログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記録媒体を構成する。
【0112】
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0113】
たとえば、上述の形態において、必要吐出量を決定するための上述の条件は、同一のヘッドに備えられたノズルについては同様に発生するため、各ヘッドに設けられているノズル相互間では、必要吐出量は互いに同一量となるが、たとえば、同一のヘッドに備えられたノズルであっても、そのそれぞれのノズルについて待機時間を計測し、計測した待機時間に応じて必要吐出量を設定するようにすることで、各ヘッドに設けられているノズル相互間でも、必要吐出量を互いに異なる量とするようにしてもよい。また、必要吐出量を決定するための上述の条件のうちの一部を用いて必要吐出量を設定するようにしても良い。さらに、必要吐出量を決定するための上述の条件は、必要吐出量を決定するための条件をこれに限るものではなく、他の条件を用いて必要吐出量を決定することを排除するものではない。
【0114】
空吐出は、画像形成開始に先立って常に行うようにしても良い。
上述の例では、A1方向上流側から下流側に向けてブラック、シアン、マゼンタ、イエローの順で画像形成を行っているが、画像形成の順はかかる順に限らず、たとえばブラック、マゼンタ、シアン、イエローの順としても良い。
各ヘッドから吐出する記録液の色は、上述の例に限られるものではなく、たとえば、その他の2次色の記録液やグレーインク等の記録液を吐出するようにしても良い。
【0115】
本発明を適用する画像形成装置は、上述のタイプの画像形成装置に限らず、インクジェット方式であれば、他のタイプの画像形成装置、すなわち、複写機、ファクシミリの単体、あるいはプリンタとこれらの何れか複数を組み合わせた複合機、その他、電気回路形成に用いられる画像形成装置、バイオテクノロジー分野において所定の画像を形成するのに用いられる画像形成装置であっても良い。
【0116】
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0117】
11 ベルト
40 メンテナンス吐出量取得手段
45 駆動手段
54 駆動速度制御手段
61BK、61C、61M、61Y ヘッド
100 画像形成装置
H 孔
P 記録媒体
X 孔のパターン
【先行技術文献】
【特許文献】
【0118】
【特許文献1】特開2004−268477号公報
【特許文献2】特開2007−168277号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドに対向して配設され、ヘッドに備えられたノズルの配列方向に直交する搬送方向に記録媒体を搬送する、複数の孔を有する無端状のベルトと、
このベルトを回転駆動する駆動手段と、
この駆動手段による前記ベルトの駆動速度を制御する駆動速度制御手段と、
非画像形成時におけるメンテナンスのために前記ノズルから吐出させ前記孔を通過させるべき記録液の量を取得するメンテナンス吐出量取得手段とを有し、
前記駆動速度制御手段は、前記メンテナンス吐出量取得手段によって取得された前記量に応じて、前記駆動速度を設定する画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
前記ベルトは、同ベルトの回転時に前記配列方向における前記ノズルからの記録液の吐出位置のすべてに対応するように前記孔を配列した、前記孔のパターンを、前記搬送方向において周期的に複数有し、
前記駆動速度制御手段は、前記メンテナンス吐出量取得手段によって取得された前記量の記録液が、前記ベルトが1回転する間の、前記搬送方向における前記複数のパターンのうちの一部の前記パターンを構成する前記孔を通過するように、前記駆動速度を設定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の画像形成装置において、
前記駆動速度制御手段は、前記メンテナンス吐出量取得手段によって取得された前記量の記録液が前記孔を通過したとき、前記駆動速度を画像形成を行うための速度に設定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか1つに記載の画像形成装置において、
前記メンテナンス吐出量取得手段は、前記量を、記録液の非吐出経過時間に応じて取得することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか1つに記載の画像形成装置において、
前記メンテナンス吐出量取得手段は、前記量を、ヘッドのキャッピング状態に応じて取得することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか1つに記載の画像形成装置において、
前記メンテナンス吐出量取得手段は、前記量を、環境温度と環境湿度との少なくとも一方に応じて取得することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか1つに記載の画像形成装置において、
前記メンテナンス吐出量取得手段は、前記量を、ヘッドの温度に応じて取得することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
ヘッドに対向して配設され、ヘッドに備えられたノズルの配列方向に直交する搬送方向に記録媒体を搬送する、複数の孔を有する無端状のベルトと、
このベルトを回転駆動する駆動手段と、
この駆動手段による前記ベルトの駆動速度を制御する駆動速度制御手段と、
非画像形成時におけるメンテナンスのために前記ノズルから吐出させ前記孔を通過させるべき記録液の量を取得するメンテナンス吐出量取得手段とを用い、
前記駆動速度制御手段により、前記メンテナンス吐出量取得手段によって取得された前記量に応じて、前記駆動速度を設定するヘッドメンテナンス方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−11724(P2012−11724A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152212(P2010−152212)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】