説明

画像形成装置、及び画像形成方法

【課題】ブラックの高濃度・磁性トナーと低濃度・非磁性トナーとを用いて濃度階調を正確に表現でき、非磁性トナーを用いて表現された画像部分との間の光沢度差が小さくて済む画像形成装置を提供する。
【解決手段】非磁性トナーの低濃度ブラックトナーを用いてトナー像を形成する画像形成部PGの、中間転写ベルト12に沿った下流側に、磁性トナーの高濃度ブラックトナーを用いてトナー像を形成する画像形成部PKが配置される。画像データのブラック画像を高濃度ブラックトナー用画像と低濃度ブラックトナー用画像に分版して、それぞれトナー像を形成し、中間転写ベルト12を介して記録材上で高濃度ブラックトナーが下になるように重ね合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二成分現像剤と一成分現像剤の両方を用いてブラックの階調表現を行う画像形成装置、詳しくは定着画像の階調表現における光沢度のばらつきを減らす現像装置の配置構成に関する。
【背景技術】
【0002】
磁性トナーを含む一成分現像剤を用いて静電像を現像するモノクロ画像形成装置が広く用いられている。一成分現像剤は、非磁性トナーと磁性キャリアを含む二成分現像剤よりも低コストである。そして、一成分現像剤を用いる現像装置は、二成分現像剤を用いる現像装置に比較して小型で済み、構造が単純で、制御が容易で、磁性キャリアの劣化に伴う性能低下とも無縁である。
【0003】
一方、非磁性トナーと磁性キャリアを含む二成分現像剤を用いて静電像を現像するフルカラー画像形成装置も広く用いられている。二成分現像剤は、いわゆる磁気ブラシ現像法を用いることで、一成分現像剤よりもトナー載り量を精密に制御して自然なハーフトーン画像を出力でき、精細な静電像でも正確に現像できる。
【0004】
しかし、フルカラー画像形成装置でも、モノクロで文字や線図を出力するブラック単色モードが実行される頻度は高く、ブラック単色モードであれば、一成分現像剤を用いる方が経済的である。このため、非磁性トナーと磁性キャリアを含む二成分現像剤を用いてフルカラー画像形成装置においても、ブラックのトナー像の現像に磁性トナーを用いる場合がある(特許文献1)。
【0005】
特許文献1には、中間転写ベルトに沿ってイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像形成部を配置したタンデム型中間転写方式のフルカラープリンタが示される。ここでは、ブラックの画像形成部に磁性トナーを用いる現像装置が装備され、ブラックのトナー像は、記録材上で最下層となるように、中間転写ベルト上では他色のトナー像の最上層に重ねて形成される。
【0006】
しかし、特許文献2に記載されるように、磁性トナーは磁性粒子を含むため、定着画像の光沢度が低い、透明度が低いという問題がある。このため、特許文献2に記載される画像形成装置は、一成分現像剤を用いるブラックの現像装置と二成分現像剤を用いるブラックの現像装置とを併設している。そして、一成分現像剤を用いたブラック現像装置は、フルカラー画像のベタ黒部分及びブラック単色モードで使用される。
【0007】
特許文献3には、一成分現像剤を用いたブラック現像装置と二成分現像剤を用いたイエロー、マゼンタ、シアン現像装置とを用いてフルカラー画像を出力する画像形成装置が示される。磁性トナーは、単独では定着画像の光沢度が不足するため、記録材上でマゼンタ又はシアンのトナー像の上に重ねた状態で一体に定着することで、ブラックの定着画像の光沢度を高めている。
【0008】
特許文献4には、トナー載り量当たりの定着濃度が異なる高濃度トナーと低濃度トナーとを用いて出力画像の濃度階調を表現する画像形成装置が示される。高濃度トナーのみではハーフトーン定着画像で粒状性が目立つため、所定階調以下の濃度範囲では、低濃度トナーのトナー載り量のみでシアン、マゼンタの階調を表現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−212595号公報
【特許文献2】特開平9−15925号公報
【特許文献3】特開2006−209001号公報
【特許文献4】特開平5−35038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献4に示されるシアン、マゼンタの場合と同様に、ブラックでも高濃度トナーと低濃度トナーを併用することで、グレーのハーフトーン画像の粒状性を低下させることが提案された。そして、ブラックの高濃度トナーに磁性トナーを割り当て、ブラックの低濃度トナーに非磁性トナーを割り当てることが提案された。これにより、ブラック単色モード等で高頻度に使用されるブラックのトナーコストを低下させることが期待されていた。
【0011】
しかし、ブラックの高濃度・磁性トナーと低濃度・非磁性トナーとを重ねて、ブラックの階調を表現した場合、濃度ムラが目立ったり、階調を正確に表現できなかったりすることが判明した。
【0012】
また、特許文献3に記載されるように、ブラックの高濃度・磁性トナーを用いて表現された画像部分と有彩色・非磁性トナーを用いて表現された画像部分との間で光沢度の差が目立つことが判明した。
【0013】
本発明は、ブラックの高濃度・磁性トナーと低濃度・非磁性トナーとを用いて濃度階調を正確に表現でき、非磁性トナーを用いて表現された画像部分との間の光沢度差が小さくて済む画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の画像形成装置は、ブラックの磁性トナーを用いて第1のトナー像を形成する第1の画像形成部と、トナー載り量当たりのブラックの定着濃度が前記磁性トナーよりも低い非磁性トナーを用いて第2のトナー像を形成する第2の画像形成部と、前記第1の画像形成部と前記第2の画像形成部との両方を用いて記録材上に画像を形成するモードを実行する場合において、記録材上で前記第1のトナー像よりも上に前記第2のトナー像が形成されるように前記第1及び第2の画像形成部を制御する制御部とを有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の画像形成装置では、透明度の低い磁性トナーの定着画像の上に透明度の高い非磁性トナーの定着画像が位置する(図8参照)ため、磁性トナーの定着画像の不透明さが非磁性トナーの定着画像からの反射光を妨げない。従って、磁性トナーの定着画像が非磁性トナーの定着画像からの反射光を妨げることに起因する濃度ムラや階調表現の不正確さが発生しない。
【0016】
また、表面の起伏が大きくてざらつき感がある磁性トナーの定着画像の表面が平坦で滑らかな非磁性トナーの定着画像で被覆されるため、磁性トナーの定着画像むき出しの場合に比較して画像表面が平坦で滑らかなものに近付く。
【0017】
従って、ブラックの高濃度・磁性トナーと低濃度・非磁性トナーとを用いて濃度階調を正確に表現でき、非磁性トナーを用いて表現された画像部分との間の光沢度差が小さくて済む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】画像形成装置の構成の説明図である。
【図2】二成分現像剤を用いる現像装置の構成の説明図である。
【図3】一成分現像剤を用いる現像装置の構成の説明図である。
【図4】定着画像の反射濃度とトナー載り量の関係の説明図である。
【図5】実施例1における分版制御の説明図である。
【図6】画像データの階調と定着画像の反射濃度の関係の説明図である。
【図7】実施例3における分版制御の説明図である。
【図8】定着画像の光沢度の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明は、高濃度・磁性トナーと低濃度・非磁性トナーとを用いてブラックの階調を表現する限りにおいて、実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。
【0020】
従って、フルカラー/モノクロ、タンデム型/1ドラム型、中間転写方式/記録材搬送方式の区別無く実施できる。本実施形態では、トナー像の形成/転写に係る主要部のみを説明するが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途で実施できる。
【0021】
なお、特許文献1〜4に示される画像形成装置の一般的な事項については、図示を省略して重複する説明を省略する。
【0022】
<画像形成装置>
図1は画像形成装置の構成の説明図である。図1に示すように、画像形成装置100は、中間転写ベルト12に沿ってイエロー、マゼンタ、シアン、グレー、ブラックの画像形成部PY、PM、PC、PG、PKを配列したタンデム型中間転写方式のフルカラープリンタである。
【0023】
画像形成部PYでは、感光ドラム1Yにイエロートナー像が形成されて中間転写ベルト12に一次転写される。画像形成部PMでは、感光ドラム1Mにマゼンタトナー像が形成されて中間転写ベルト12のイエロートナー像に重ねて一次転写される。画像形成部PC、PG、PKでは、それぞれ感光ドラム1C、1G、1Kにシアントナー像、低濃度ブラックトナー像、高濃度ブラックトナー像が形成されて、同様に中間転写ベルト12に順次重ねて一次転写される。
【0024】
中間転写体の一例である中間転写ベルト12に一次転写された五色のトナー像は、二次転写部T2へ搬送されて記録材Pへ一括二次転写される。五色のトナー像を二次転写された記録材Pは、定着装置17で加熱加圧を受けて表面にトナー像を定着された後に、機体外部へ排出される。
【0025】
中間転写体の一例である中間転写ベルト12は、テンションローラ10、駆動ローラ9、及び対向ローラ13に掛け渡して支持され、駆動ローラ9に駆動されて所定のプロセススピードで矢印R2方向に回転する。
【0026】
中間転写ベルト12の一次転写面を形成するローラのうち、中間転写ベルト12の回転方向の下流側にある不図示の従動ローラの対向には、感光ドラム1Y、1M、1C、1G、1Kから転写されたレジ合わせ画像を検出する不図示の光学式センサが配置される。光学式センサによるレジ合わせ画像の位置ズレ検出結果に基いて、随時、画像形成部PY、PM、PC、PG、PKにおける画像書き込みタイミング及び画像書き込み開始位置に対して補正をする制御を行っている。また、光学式センサによるパッチ画像の濃度検出結果に基いて画像形成部PY、PM、PC、PG、PKにおける画像濃度及びトナー補給量に対して補正をする制御を行っている。
【0027】
記録材カセット14から引き出された記録材Pは、分離ローラ15で1枚ずつに分離して、レジストローラ16へ送り出される。レジストローラ16は、停止状態で記録材Pを受け入れて待機させ、中間転写ベルト12のトナー像にタイミングを合わせて記録材Pを二次転写部T2へ送り込む。
【0028】
ベルトクリーニング装置18は、中間転写ベルト12にクリーニングブレードを摺擦させて、記録材Pへの転写を逃れて二次転写部T2を通過して中間転写ベルト12に残った転写残トナーを回収する。
【0029】
二次転写ローラ11は、対向ローラ13によって内側面を支持された中間転写ベルト12に当接して二次転写部T2を形成する。電源D2は、正極性の転写電圧を二次転写ローラ11に印加することで、負極性に帯電して中間転写ベルト12に担持されたトナー像を記録材Pへ転写させる。
【0030】
画像形成部PY、PM、PC、PGは、現像装置4Y、4M、4C、4Gで用いるトナーの色が有彩色のイエロー、マゼンタ、シアン、無彩色の低濃度ブラックと異なる以外は、実質的に同一に構成される。画像形成部PKは、個別に付設された現像装置4Kが無彩色の高濃度ブラックの磁性トナーを用いる一成分現像剤の現像装置である以外は、画像形成部PY、PM、PC、PGと同様に構成される。
【0031】
そして、本実施形態においては、感光ドラム1K、1Gは、それぞれ第1の感光体、第2の感光体に対応し、現像装置4K、4Gは、それぞれ第1の現像装置、第2の現像装置に対応している。また、現像装置4Kと感光ドラム1Kの対向部が第1の画像形成部に対応し、現像装置4Gと感光ドラム1Gの対向部が第2の画像形成部に対応している。
【0032】
以下では、無彩色の画像形成部PG及び現像装置4Kについて詳細に説明し、他の有彩色の画像形成部PY、PM、PCについては、説明中の構成部材に付した符号の末尾のGをY、M、Cに読み替えて説明されるものとする。
【0033】
画像形成部PGは、感光体の一例である感光ドラム1Gの周囲に、コロナ帯電器2G、露光装置3G、現像装置4G、一次転写ローラ5G、クリーニング装置6Gを個別に付設している。感光ドラム1Gは、アルミニウムシリンダの基層の表面に有機半導体の感光層を有して基層が接地電位に接続され、感光層の表面の帯電極性が負極性である。
【0034】
コロナ帯電器2Gは、コロナ放電に伴う荷電粒子を感光ドラム1Gの表面に照射して、感光ドラム1Gの表面を負極性の暗部電位VDに一様に帯電させる。露光装置3Gは、低濃度ブラックの分解色画像を展開した走査線画像データをON−OFF変調したレーザービームを回転ミラーで走査して、感光ドラム1Gの表面に画像の静電像を書き込む。暗部電位VDに帯電した感光ドラム1Gの表面電位が露光を受けて明部電位VLに電位を低下させることで、トナーが露光部へ静電気的に付着するようになる。現像装置4Gは、低濃度ブラックの非磁性トナーを含む二成分現像剤を用いて、感光ドラム1Gの静電像をトナー像に現像する。
【0035】
クリーニング装置6Gは、感光ドラム1Gにクリーニングブレードを摺擦させて、中間転写ベルト12への転写を逃れて感光ドラム1Gに残った転写残トナーを回収する。一次転写ローラ5Gは、中間転写ベルト12の内側面を押圧して感光ドラム1Gに当接させて一次転写部TGを形成する。電源DGは、一次転写ローラ5Gに正極性の転写電圧を印加することで、負極性に帯電して感光ドラム1Gに担持されたトナー像を中間転写ベルト12へ一次転写させる。
【0036】
<二成分現像装置>
図2は二成分現像剤を用いる現像装置の構成の説明図である。図2に示すように、現像装置4Gは、低濃度ブラックの非磁性トナーと磁性キャリアとを混合した二成分現像剤を攪拌して、非磁性トナーを負極性に、磁性キャリアを正極性にそれぞれ帯電させる。帯電した二成分現像剤は、固定のマグネット29の周囲で回転する現像スリーブ25に磁気ブラシ状態で担持されて感光ドラム1Gを摺擦する。
【0037】
現像容器22の内部は、隔壁19によって現像室C1と攪拌室C2とに区画され、攪拌室C2の上方には、補給用トナー(非磁性トナー)を収容したトナー貯蔵室C3が配置される。トナー貯蔵室C3には補給口21が設けられ、現像で消費されたトナーに見合った量の補給用トナーが補給口21を経て攪拌室C2内に落下補給される。
【0038】
現像室C1及び攪拌室C2内には、トナー粒子(非磁性)とキャリア粒子(磁性)が混合された二成分現像剤が収容されている。現像室C1には、搬送スクリュー23が配置され、搬送スクリュー23の回転駆動によって、現像室C1内の二成分現像剤は、現像スリーブ25の長手方向に向けて搬送される。攪拌室C2には、搬送スクリュー24が収容され、搬送スクリュー24の回転駆動によって、攪拌室C2内の二成分現像剤は、現像室C1内の二成分現像剤とは反対方向に搬送される。
【0039】
隔壁19には、現像スリーブ25の長手方向における手前側と奥側に、現像室C1と攪拌室Cとを相互に連通させる開口が設けられている。搬送スクリュー23で搬送された二成分現像剤が一方の開口を通じて搬送スクリュー24に受け渡され、搬送スクリュー24で搬送された二成分現像剤が他方の開口を通じて搬送スクリュー23に受け渡される。このようにして、二成分現像剤は、混合と攪拌を受けつつ現像室C1と攪拌室C2とを循環し、攪拌を通じてトナーとキャリアが摩擦し合う。トナーはキャリアとの摩擦を通じて潜像を現像するための負極性に帯電し、磁性キャリアは現像スリーブ25上でトナーを吸着するための正極性に帯電する。
【0040】
現像容器22の感光ドラム1Gに近接する部位には開口部が設けられ、開口部に、アルミニウムや非磁性ステンレス鋼等の非磁性体で形成された現像スリーブ25が回転自在に配置されている。現像スリーブ25は、矢印R4方向に回転して二成分現像剤を現像部26へ担持搬送する。
【0041】
現像スリーブ25内には、ローラ状のマグネット29が固定配置され、マグネット29は、現像部26に対向する現像磁極S1を有している。マグネット29は、現像磁極S1
の他に、N1、N2、N3、S2極を有している。
【0042】
現像スリーブ25の回転によってN2極でくみ上げられた二成分現像剤は、S2極からN1極へと搬送される途中で層厚規制ブレード28によって層厚を規制されて現像剤薄層を形成する。層厚規制ブレード28は、現像スリーブ25が現像部26に担持搬送する二成分現像剤の層厚を規制する。
【0043】
そして、現像磁極S1の磁界中で穂立ちした二成分現像剤が磁気ブラシを形成して感光ドラム1Gの静電像を現像する。その後、N3極、N2極間の反発磁界により現像スリーブ25上の二成分現像剤は攪拌室C1内へ落下する。攪拌室C1内に落下した二成分現像剤は、搬送スクリュー23、24により攪拌搬送される。
【0044】
マグネット29の現像磁極S1が現像部26に形成する現像磁界によって現像前の磁気ブラシが形成され、この磁気ブラシが感光ドラム1に接触して静電像を現像する。現像スリーブ25に担持された二成分現像剤の磁気ブラシは、現像部26で矢印R1方向に回転する感光ドラム1Gに接触し、感光ドラム1Gの静電像は現像部26で反転現像される。その際、磁性キャリアの穂(磁気ブラシ)に付着しているトナーも、この穂ではなくスリーブ表面に付着しているトナーも、静電像の明部電位(露光部電位)VLの領域に転移して現像に関与する。
【0045】
電源D4は、直流電圧Vdcに交流電圧を重畳した振動電圧を現像スリーブ25に印加する。静電像の暗部電位(非露光部電位)VDと明部電位(露光部電位)VLは、振動電圧の最大値と最小値の間に位置している。これによって、現像部26には、向きが交互に変化する交番電界が形成され、この交番電界中でトナーとキャリアは激しく振動する。そして、トナーがキャリアに対する静電的拘束力を振り切って感光ドラム1Gの明部電位(露光部電位)VLの領域に付着する。
【0046】
振動電圧の最大値と最小値の差(ピーク間電圧Vpp)は、1〜5kVが好ましく、また周波数は1〜10KHzが好ましい。振動電圧の波形は矩形波、サイン波、三角波等が使用できる。振動電圧の直流電圧Vdcは、静電像の暗部電位VDと明部電位VLの間の値に設定されるが、暗部電位VDよりも明部電位VLの方により近い値であることが、暗部電位VD領域へのカブリトナーの付着を防止する上で好ましい。
【0047】
現像スリーブ25の直径は20mm、長さは340mm、厚みは1mm、周速度は200mm/secである。現像部26内にある現像スリーブ25と感光ドラム1Gの最小間隙は、0.2〜1mmであることが好適である。そして、層厚規制ブレード28で規制される現像剤量は、現像磁極S1の磁界によって形成される磁気ブラシの現像スリーブ25表面上での自由高さが、現像スリーブ25と感光ドラム1Gの最小間隙の1.2〜2倍となるような現像剤量であることが好ましい。
【0048】
現像磁極S1による現像磁界の現像スリーブ25表面上での強さ(スリーブ表面に垂直な方向の磁束密度)は、100mTになるような磁極を用いている。
【0049】
<二成分現像剤>
二成分現像剤のトナーは、定着後の混色性を考慮して高透過性である非磁性トナーを用いている。非磁性トナーは、バインダー樹脂に着色材や帯電制御材等を添加した公知のものが使用でき、体積平均粒子が5〜15μmのものが好適に使用できる。なお、実施例では、グレー、イエロー、シアン、マゼンタともに平均粒子径6μmのトナーを用いている。また、二成分現像剤におけるトナーの混合比(重量比)は、全色ともに5〜12重量%であることが好ましい。
【0050】
磁性キャリアには、従来公知の各種のものを用いることができる。樹脂中に磁性材料としてマグネタイトを分散し、導電化及び抵抗調整のためにカーボンブラック等の導電性物質を分散して形成した樹脂キャリアを利用できる。フェライト等のマグネタイト単体表面を酸化、還元処理して抵抗調整したもの、あるいはフェライト等のマグネタイト単体表面を樹脂でコーティングして抵抗調整したもの等も利用できる。
【0051】
以上のように、グレー、イエロー、マゼンタ、シアンの二成分現像剤は、フルカラー画像形成装置で一般的に用いられる現像剤構成であって、かかる構成を用いることで特にハイライト部に粒状感のない高精細な画質が得られる。
【0052】
二成分現像剤は、一成分現像剤に比較して高精細な画像の再現性に優れている。その理由は以下のとおりである。そもそも、感光ドラム1G上の高精細に描かれた静電像をトナー像で忠実に再現できれば、いわゆるがさつき感は生じない。静電像に対してトナー像が若干乱れることによって、本来は均一濃度である部分に微小な濃度ムラが発生してがさつき感が生じている。
【0053】
二成分現像方式では、二成分現像剤の磁気ブラシが感光ドラム1Gに接触して現像するため、静電像に非常に近いトナーが現像に寄与している、この結果、静電像による電界が強くトナーに働くため、静電像すなわち電界に忠実に現像することが可能になっている。
【0054】
現像装置4Gで用いるトナー(非磁性)は、低〜中濃度のブラックハーフトーン画像の粒状性を減らすために使用されるため、現像装置4Kで用いるトナー(磁性)よりもトナー載り量当たりの定着画像のブラック濃度が低い。すなわち、低濃度ブラックトナー(グレートナー)は、トナー載り量当たりのブラックの定着濃度が高濃度ブラックトナー(ブラックの磁性トナー)よりも低い非磁性トナーである。具体的には、図4に示すように、低濃度ブラックトナーは、トナー載り量0.5mg/cm当たりのブラックの定着濃度が0.7であるのに対して、高濃度ブラックトナーは1.4である。
【0055】
このように、現像装置4Gで用いるトナー(非磁性)は、記録材上でトナー載り量0.5mg/cmにつき反射濃度が1.0未満であるように顔料の含有量が調整されている。これに対して、現像装置4Kで用いるトナー(磁性)は、記録材上でトナー載り量0.5mg/cmにつき反射濃度が1.0以上であるように顔料の含有量が調整されている。
【0056】
<一成分現像装置>
図3は一成分現像剤を用いる現像装置の構成の説明図である。図1に示すように、高濃度ブラックのトナー像を形成する画像形成部PKには、高濃度ブラックの磁性トナーを用いて感光ドラム1Kの静電像を現像する現像装置4Kが装備されている。現像装置4Kは、いわゆる公知の磁性一成分現像構成を採用している。
【0057】
図3に示すように、現像容器53には、一成分現像剤としての磁性トナーが充填され、撹拌翼60は、現像容器53中で磁性トナーを撹拌する。現像スリーブ58は矢印R4方向に回転し、感光ドラム1Kは矢印R1方向に回転する。磁性ブレード52は、磁性トナーを現像スリーブ58上に極めて薄く塗布して担持させる。現像スリーブ58は、回転に伴って、担持した磁性トナーを感光ドラム1Kと現像スリーブ58とで形成される現像部26へ搬送する。
【0058】
磁性トナー粒子相互間の摩擦、現像スリーブ58と磁性トナー粒子の間の摩擦、及び磁性ブレード52と磁性トナー粒子の間の摩擦により、磁性トナー粒子は負極性に帯電する。現像スリーブ58に印加される振動電圧の直流電圧Vdcに対して感光ドラム1Kに形成された静電像の電荷と逆極性の電荷が磁性トナー粒子に与えられる。
【0059】
電源D4は、現像時に現像スリーブ58に振動電圧を印加する現像バイアス手段である。現像部26において、現像スリーブ58内に固着されている磁石55による磁界と振動電圧の交流電圧との作用で、現像スリーブ58に担持されている磁性トナーを飛翔させて、感光ドラム1K上の静電像を反転現像する。
【0060】
現像スリーブ58の直径は20mm、長さは340mm、厚みは1mm、周速度は200mm/secである。現像部26内にある現像スリーブ58と感光ドラム1Kの最小間隙は、0.2mmである。現像磁極S1による現像磁界は、現像スリーブ58上での磁束密度が100mTである。
【0061】
振動電圧の交流電圧の振幅(ピーク間電圧Vpp)は、1.0kV、周波数は3KHz、波形は矩形波である。振動電圧の直流電圧Vdcは、暗部電位VD=−500Vと明部電位VL=−200の間に設定され、−400Vである。ただし、これらの数値はいずれも代表値であって、これらには限定されない。
【0062】
現像装置4Kは、磁性一成分現像器であって、二成分現像方式のようなキャリアとトナーの攪拌や、現像剤中のトナー比率(トナー濃度)管理等を必要としないため、構成が単純で制御も簡易である。現像装置4Kは、キャリアを用いないため、キャリア劣化による現像剤交換なども発生せず、ランニングコストにも優れた現像器構成になっている。しかし、現像装置4Kは、非接触現像方式のため、上述したような高精細な静電像に対しての忠実再現性においては二成分現像方式に比べて劣る面がある。
【0063】
<一成分現像剤>
近年、画像形成装置の用途の拡大に伴って要求される画像品質のレベルが高くなり、従来の3原色+ブラックの4色混色型に対して色数を増やす画像形成装置が実用化されている。従来の一般的なシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のトナー像に加えて、低濃度(淡)シアン、低濃度(淡)マゼンタの2色のトナー像を加えることで、低〜中濃度のハーフトーン画像の粒状感を低減させている。
【0064】
ところで、電子写真方式の画像形成におけるトナー現像方式として、非磁性トナーと磁性キャリアを含む二成分現像剤を用いる二成分現像方式と、磁性トナーを含む一成分現像剤を用いる磁性一成分現像方式とがある。そして、複数色のトナー像を重ねてフルカラー画像を再現する画像形成装置では、通常、二成分現像方式が採用されている。
【0065】
トナー像の重ね合わせによる混色によって色再現を行うために定着画像に高透過性が要求され、この点で、磁性トナーはマグネタイト粒子を含んで光の透過率が低いからである。また、高濃度トナー像と低濃度トナー像とを重ね合わせて濃度階調を表現する画像品質重視の画像形成装置においては、高精細、トナー載り量安定性の観点からも、二成分現像方式が用いられている。
【0066】
しかし、二成分現像方式では、トナーとキャリアの二成分現像剤を用いるため、キャリアとトナーの攪拌構成や、現像剤中のトナー比率(トナー濃度)管理のための構成及び制御を必要とする。このため、磁性一成分現像方式に比較すると、現像装置の複雑化、キャリア劣化交換によるランニングコストアップ等の問題がある。
【0067】
一方、モノクロ画像専用の画像形成装置では、磁性一成分現像方式が採用される場合が多い。その理由は、キャリア交換の必要がないことによるメンテナンスレス及びランニングコストダウンである。モノクロ画像専用の画像形成装置では、トナー像の重ね合わせによる混色性を考慮する必要が無いため、光の透過率が低い磁性トナーを用いることが可能である。
【0068】
また、フルカラー出力の画像形成装置であっても、一般的なユーザーで調べたフルカラー/モノクロのプリント枚数比率は、オフィス用途であれば、フルカラー1〜3に対してモノクロ9〜7程度で圧倒的にモノクロ比率が高い。このため、画像形成装置の維持管理のトータルコストを削減するために、磁性一成分現像方式を採用して、モノクロプリントでのランニングコストの低減とメンテナンス間隔の延長がされている場合がある。
【0069】
すなわち、従来は、画像品質重視の二成分現像方式、メンテナンス回数及びランニングコスト削減重視の磁性一成分方式という具合に棲み分けがされ、ユーザーの重要視する点に応じて選択可能になっている。
【0070】
しかし、近年、フルカラー画像の画像品質とともに白黒画像の画像品質も重要視されている。そして、グレーのハーフトーン画像の粒状感を低減させるために、高濃度ブラックトナーと低濃度ブラックトナーとを使い分けたり、重ね合わせたりして、ブラックの濃度階調を表現する画像形成装置も提案されている。例えば、低〜中濃度領域を主に低濃度ブラックトナーで表現し、中〜高濃度領域を高濃度ブラックトナーで表現する。これにより、高濃度のブラックの再現性を高めることと、ハイライト領域で粒状性の少ない高画質を達成することを両立させている。
【0071】
この場合、磁性一成分現像方式を採用してメンテナンス回数及びランニングコスト削減に傾倒した設計をすることが難しくなっている。しかし、高精細再現可能で透過性が高い二成分現像方式を採用して画像品質重視の設計を行うと、ブラック単色モード等で頻繁に実行されるモノクロプリントのコストが押し上げられ、画像形成装置の維持にかかるトータルコストが問題になる。
【0072】
そこで、画像形成装置100では、上記のような磁性トナーと非磁性トナーを使い分けて、モノクロプリントの画像品質向上を達成しつつ、ランニングコストアップを軽減している。フルカラー画像形成装置における高画質化と、メンテナンス性及びランニングコストダウンを両立させている。
【0073】
画像形成装置100では、現像装置4Kで用いるブラックの一成分現像剤としては公知の磁性トナーを用いている。磁性トナーは、平均粒径が5〜8μmであって、磁性体にはマグネタイトを用いており、トナーの磁性体含有量を約30〜60wt%とした。
【0074】
トナー層を重ね合わせる混色によって濃度再現を行う画像形成装置100においては、トナー単体の透過性を高めておく必要があり、通常は磁性トナーのような内部にマグネタイトが入って透過性の低いトナーを用いることは好ましくない。
【0075】
しかし、画像形成装置100では、記録材P上に各色トナーが重なって載った際、記録材P上に磁性トナーである高濃度ブラックトナー像が一番下に載るような画像形成工程を行っている(図8参照)。このため、ブラックトナーに磁性トナーを用いながらも、良好な混色性を確保することが可能になっている。
【0076】
<実施例1>
図4は定着画像の反射濃度とトナー載り量の関係の説明図である。図5は実施例1における分版制御の説明図である。図6は画像データの階調と定着画像の反射濃度の関係の説明図である。図5中(a)は低濃度ブラックトナー、(b)は高濃度ブラックトナーである。
【0077】
図1に示すように、画像形成装置100は、タンデム型中間転写方式を用いており、中間転写ベルト12の回転方向における最も下流位置に高濃度ブラックの画像形成部PKを配置している。最も下流位置に配置された画像形成部PKにおいて、高濃度ブラックトナー像は、中間転写ベルト12上の他色のトナー像の最上面に重ねて転写される。しかし、その後、二次転写部T2で記録材P上に一括二次転写されると、記録材P上では一番下側になる。
【0078】
このような構成を用いて、光の透過性が低い(濁った)磁性トナー像を記録材P上で一番下に置くので、高濃度ブラックトナー像の下側に他色のトナー像が敷かれることがない。高濃度ブラックトナーの透過性が低くても他色のトナー像の光を遮ることが無いため、混色性能としては問題にならない。
【0079】
また、高濃度ブラックトナー像の上側に低濃度ブラックトナー像を重ねて所定の濃度階調の黒を表現する際には、低濃度ブラックトナー自体は、高透過性な非磁性トナーを用いているために、下層の高濃度ブラックトナー像との混色が可能である。すなわち、記録材上で第1のトナー像の上に第2のトナー像などを重ねた状態で定着することで良好な混色性が得られる。同様に、他のイエロー、マゼンタ、シアンのトナー像についても、非磁性トナーであるため、高濃度ブラックトナー像の上側での重ね合わせであれば、混色性について問題を生じない。
【0080】
図4に示すように、定着画像の反射濃度を測定して評価した低濃度ブラックトナー(破線)とブラックトナー(実線)のそれぞれのカバリングパワー(濃度表現力)が示される。低濃度ブラックトナーは、記録材P上のトナー載り量が増えるほど定着画像の反射濃度が高くなり、トナー載り量が0.5mg/cmのとき定着画像の反射濃度が0.7となる。高濃度ブラックトナーも記録材P上のトナー載り量が増えるほど定着画像の反射濃度が高くなり、トナー載り量が0.5mg/cmのとき定着画像の反射濃度が1.4となる。
【0081】
図1に示すように、制御部110は、各色の画像データを受信すると、各色の画像データに応じた画像露光信号を形成して、露光装置3Y、3M、3C、3G、3Kを制御する。制御部110は、第1の現像装置(4K)により現像されたトナー載り量と第2の現像装置(4G)により現像されたトナー載り量とを重ねて出力画像のブラックの階調を表現するように露光手段(3K、3G)を制御する。
【0082】
制御部110は、図5の(a)、(b)に示すルックアップテーブルを用いて、ブラックの画像データの各画素の濃度階調を2つの露光画像に分配し、露光装置3Gで用いる画像露光信号と露光装置3Kで用いる画像露光信号とを生成する。このようにして、図5の(a)に示す低濃度ブラックトナー像用ルックアップテーブル(LUT)に基づいて露光装置3Gが制御され、図5の(b)に示す高濃度ブラックトナー像用ルックアップテーブル(LUT)に基づいて露光装置3Kが制御される。
【0083】
図5中、横軸は、高濃度ブラックトナー像(第1のトナー像)と低濃度ブラックトナー像(第2のトナー像)とに分版する前の画像データにおけるブラックの階調値(0〜255レベル)である。縦軸は、高濃度ブラックトナー像及び低濃度ブラックトナー像とに分版した際に両者に割り当てた階調値(0〜255レベル)である。ここで、分版とは、ある色(版又はチャンネルともいう)の画像データを、高濃度(濃色)トナー像用と低濃度(淡色)トナー像用との2つの画像データに分割することをいう。
【0084】
図5の(a)、(b)に示すように、画像の濃度階調に対して高濃度ブラックトナーのトナー載り量(露光階調)と低濃度ブラックトナーのトナー載り量(露光階調)が配分される。制御部110は、高濃度ブラックトナー像と低濃度ブラックトナー像とを重ね合わせて、両者の濃度を加算した画像形成を行う。画像形成部PGと画像形成部PKとで、並列に、静電像形成及び現像が行われて分割された各階調のトナー像が形成され、中間転写ベルト12上に一次転写して一体に重ね合わせられる。
【0085】
実施例1の制御によれば、通常の高濃度ブラックトナー像単体での画像形成と異なり、画像信号の低濃度部から中濃度部において低濃度ブラックトナーを積極的に使うことにより、単位ドットあたりの濃度が低くなる。このため、単位ドットの静電像に対して多少現像が乱れても、トナー像の粒状感が目立ちにくくなっている。
【0086】
また、低濃度ブラックトナーの現像には二成分現像方式を用いるため、高精細な潜像への忠実トナー像再現が可能である。このため、粒状感が特に目立つブラックの低濃度階調領域において、従来の白黒画像形成装置に比べて圧倒的に粒状感の低減が可能になっている。
【0087】
一方、ブラック画像の高濃度部では、そもそも粒状感が目立ちにくいため、高精細な再現性にやや劣る磁性一成分現像方式を重点的に用いても問題にならない。また、濃度階調再現性においても、非磁性で透過性の高い低濃度ブラックトナー像が記録材上で高濃度ブラックトナー像の上側に重ね合わせることで必要な混色性が確保されている。
【0088】
このため、図6に示すように、画像データのすべての階調段階に対して、忠実なブラック濃度の階調再現を行うことができる。そして、ハイライト部の粒状感の低減と正確な濃度階調の再現とが達成される。
【0089】
また、図8に示すように、高濃度ブラックトナーである磁性トナーは非磁性トナーに比べて、トナー顔料として磁性体粒子を含むために、定着工程で溶融後も平滑化しにくく、定着画像が低光沢になり易い。これに対して、低濃度ブラックトナーは、非磁性トナーのため、定着工程で溶融後、加圧によって容易に平滑化して高光沢が画像仕上がりとなる。このため、高濃度ブラックトナー単独でブラック画像を形成した場合、周囲の非磁性トナーの画像との間で歴然とした光沢度差が形成されてしまう。しかし、実施例1では、画像データの最大濃度を除くすべての階調段階に対して、磁性トナーによる粗い定着画像の上に非磁性トナーによる平滑な定着画像が重ね合わせられるため、定着画像全体の光沢度ムラが少なくて済む。
【0090】
また、一般にオフィスでよく用いられるモノクロ画像は、テキスト文書が圧倒的に多く、二値のベタ黒文字比率が高いため、専ら磁性一成分現像方式を用いて高濃度ブラックトナー主体で画像形成される。この結果、モノクロ画像専用の画像形成装置で欠かせないメンテナンス性及びランニングコストを著しく損なうこともない。
【0091】
以上説明したような構成及び制御を用いることで、従来のモノクロ画像専用の画像形成装置に比べてハイライト部の粒状感のない高画質が得られる。同時に、不透明な磁性トナーの定着画像と透明な非磁性トナーの定着画像との重ね順を考慮したことにより、忠実な濃度階調再現が可能になっている。さらに、そもそも粒状感の目立ちにくい高濃度部の現像に磁性一成分現像方式を採用することで、メンテナンス性と低ランニングコストを維持することが可能になっている。
【0092】
図5の(a)、(b)に示すように、制御手段(110)は、所定階調以下の濃度範囲では、第2の現像装置(4G)により現像されたトナー載り量のみでブラックの階調を表現する。高明度〜中間調領域では、専ら低濃度ブラックトナーのみで濃度階調を表現する。等しいブラックの濃度階調を表現する場合、低濃度ブラックトナーのトナー像であれば、単位面積当たりのトナー像の面積又は個数を高濃度ブラックトナーのトナー像よりも増すことができる。静電像の面積又は個数を高濃度ブラックトナーのトナー像を用いる場合よりも増すことができる。このため、低い濃度階調のハーフトーン画像を構成するドットごとのトナー載り量を、高濃度ブラックトナーのトナー像を用いる場合よりも精密に制御して場所ごとのばらつきを減らすことができる。この原理は、特許文献4に示されるように、シアン、マゼンタについて高濃度と低濃度のトナーを用いる場合と同じである。
【0093】
また、中間調領域〜高濃度領域では、高濃度ブラックトナーを組み合わせることで、低濃度ブラックトナーと合わせた合計のトナー載り量を削減して、トナー載り量が多いことに起因する二次転写効率の低下を抑制している。
【0094】
実施例1の構成及び制御によれば、従来のモノクロ専用の画像形成装置に比べてハイライト部で粒状感のない高画質が得られる。そして、磁性トナーを記録材上で再下層に敷いて画像形成することで混色性も確保され、ブラックの忠実な濃度階調再現が可能になっている。さらには、そもそも粒状感の目立ちにくい高濃度部の現像に磁性一成分現像方式を採用することで、画像性を損なうことなく、磁性一成分現像方式のそもそものメリットであるメンテナンス性及びランニングコストダウンを実現できる。
【0095】
実施例1の構成及び制御によれば、磁性トナーの上に非磁性トナーを重ねた状態で定着を行うことで、磁性トナーと非磁性トナーとを重ね合わせる際に両者の透明度、定着後の平坦度の違いに起因して発生する問題が解決する。すなわち、磁性トナーと非磁性トナーとを重ね合わせてブラックの画像を形成する構成において特有の課題が解決される。
【0096】
<実施例2>
実施例1では、高濃度ブラックトナー、低濃度ブラックトナーに加えて、イエロー、マゼンタ、シアンのトナーを組み合わせた5色フルカラー画像形成装置を説明した。これに対して、実施例2は、高濃度ブラックトナーと低濃度ブラックトナーとを用いたモノクロ画像専用の画像形成装置である。すなわち、図1において、画像形成部PY、PM、PC、PKが取り外され、中間転写ベルト12に沿って画像形成部PG、PKのみが配置される構成である。このような高濃度ブラックトナーと低濃度ブラックトナーとを併用するモノクロ二色画像形成装置においても実施例1で説明した分版制御が適用可能である。
【0097】
また、実施例1では、タンデム型中間転写方式の画像形成装置を説明したが、実施例1の分版制御の適用はこの方式に限定されない。例えば、記録材を吸着搬送する記録材搬送ベルトに沿って図1に示す画像形成部PY、PM、PC、PG、PKを配置して構成されるタンデム型直接転写方式の画像形成装置においても、同様の制御を適用して同様の効果が得られる。ただし、この場合、記録材上の一番下に磁性トナーのトナー像を転写するために、高濃度ブラックの画像形成部PKは、記録材搬送ベルトの最も上流側に配置され、低濃度ブラックの画像形成部PGは、画像形成部PKの下流側に配置する必要がある。
【0098】
<実施例3>
図7は実施例3における分版制御の説明図である。図8は定着画像の光沢度の説明図である。
【0099】
実施例1ではブラックの最大濃度を磁性トナーのみで表現したが、実施例2ではブラックの最大濃度においても磁性トナー像の上に非磁性トナー像を重ねて光沢度を高める。
【0100】
実施例1では、図5の(a)、(b)に示すように分版して高濃度ブラックトナーと低濃度ブラックトナーの画像形成を行ったが、実施例3では、図7の(a)、(b)に示すような分版パターンにして画像形成する。すなわち、実施例3では、図5の(a)、(b)に示される分版制御が図7の(a)、(b)に示される分版制御に置き換えられる。それ以外の制御及び画像形成装置100の構成は実施例1と同様であるため、図1〜3を参照して実施例3を説明し、実施例1と重複する説明は省略する。
【0101】
画像形成装置100では、高濃度ブラックトナーとして磁性トナーを用いているが、磁性トナーは非磁性トナーに比べて、トナー顔料として磁性体を用いているために、一般に定着工程で溶融後も平滑化しにくい。すなわち定着画像が低光沢になり易い傾向にある。これに対して、低濃度ブラックトナーは、非磁性トナーのため、定着工程で溶融後、加圧によって平滑化して高光沢になり易い傾向にある。このような定着画像の平滑性の違いによって、磁性トナー単独の画像部分があると、周囲の非磁性トナー単独の画像部分との光沢度の違いが目立ってしまう。モノクロプリントの出力においても、高濃度ブラックトナーで現像された部分と低濃度ブラックトナーで現像された部分とが混在する画像では、不自然な光沢不均一が発生して見かけの画像品質が低下してしまう。
【0102】
そこで、実施例3では、図7の(a)に示すように、黒の画像入力信号が最高値であっても、低濃度ブラックトナーを一定量以上、高濃度ブラックトナー上に載せるような分版パターンとしている。制御手段(110)は、最高階調を含むブラックの全階調で第2の現像装置(4G)により現像されたトナー載り量を所定量以上確保させる。同時にブラックの階調が高いほど第1の現像装置(4K)により現像されたトナー載り量を増す。
【0103】
この結果、図7の(b)に示すように、高濃度ブラックトナーのみで最大濃度を表現する場合に比較して非磁性トナー(二成分現像剤)の消費量は少し増えてしまう。しかし、画像全体の光沢度は一様に高まり、ブラック濃度差による光沢度差もほぼ解消されて一様な光沢度の定着画像が得られる。すなわち、従来は、画像全体の光沢度を一様にするためには、透明トナー像を全体に重ねることがされていたが、透明トナー像に頼らなくても一様な光沢度の定着画像が得られる。
【0104】
図8の(a)に示すように磁性トナー層の上に非磁性トナー層が重ねられる。図8の(b)に示すように、磁性トナー層は、定着後の画像表面粗さが大きいため、非磁性トナー層に比較して光沢度が低くなる。しかし、非磁性トナー層を上に重ねて定着することにより、表面粗さの凹所が非磁性トナーで埋められて定着面が平滑になるので、非磁性トナー層のみの場合に匹敵する光沢度が得られる。
【0105】
実施例3の分版制御によれば、磁性トナー単独での画像形成がなくなり、どの濃度階調においても磁性トナー像の上に非磁性トナー像を重ねて定着する。このため、磁性トナーの定着画像面が露出することによる画像面内での著しい光沢変化が抑制される。
【0106】
実施例3の分版制御によれば、実施例1と同様の効果が得られるのはもちろんのこと、画像面内の均一な光沢性も実現できる。
【0107】
本発明は、単一の感光体に対して第1の現像装置(濃)と第2の現像装置(淡)とを付設する(ロータリ型を含む)構成にも適用可能である。この場合、第1の画像形成部は、第1の現像装置を用いて静電像を現像する状態であり、第2の画像形成部は、第2の現像装置を用いて静電像を現像する状態である。
【0108】
実施例1〜3では、ブラック画像を形成する場合は、高濃度ブラックトナーと低濃度ブラックトナーの両方を用いて画像形成を行う制御を採用している。しかし、操作パネルを通じたユーザー設定によって、高濃度ブラックトナーのみを用いて画像形成を行うモードを選択できるようにしてもよい。光沢を要求されない画像や、線画像、文字画像の場合には、高濃度ブラックトナーのみを用いることでランニングコストを大幅に低減できるからである。
【0109】
また、同様に、低濃度ブラックトナーのみを用いて画像形成を行うモードを備えていてもよい。シアン、マゼンタ、イエローを低濃度トナーに重ね合わせることでも、高濃度ブラックトナーで実現される階調のかなりの部分をカバーできるからである。
【0110】
これらのモードの設定は、本体内で切り替え可能にしてもよく、外部端末から送信される画像形成ジョブの指定データに応じてユーザーが切り替え可能にしてもよい。
【符号の説明】
【0111】
1Y、1M、1C 感光ドラム
1K 感光ドラム(第1の感光体)、1G 感光ドラム(第2の感光体)
2Y、2M、2C、2K コロナ帯電器
3Y、3M、3C、3K 露光装置
4Y、4M、4C 現像装置
4K 現像装置(第1の現像装置)、4G 現像装置(第2の現像装置)
5Y、5M、5C、5K 一次転写ローラ
25、58 現像スリーブ、29、55 マグネット
11 二次転写ローラ、12 中間転写ベルト(中間転写体)
13 対向ローラ、14 記録材カセット
16 レジストローラ、17 定着装置、110 制御部
PY、PM、PC 画像形成部
PK 画像形成部(第1の画像形成部)、PG 画像形成部(第2の画像形成部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラックの磁性トナーを用いて第1のトナー像を形成する第1の画像形成部と、
トナー載り量当たりのブラックの定着濃度が前記磁性トナーよりも低い非磁性トナーを用いて第2のトナー像を形成する第2の画像形成部と、
前記第1の画像形成部と前記第2の画像形成部との両方を用いて記録材上に画像を形成するモードを実行する場合において、記録材上で前記第1のトナー像よりも上に前記第2のトナー像が形成されるように前記第1及び第2の画像形成部を制御する制御部と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1のトナー像を現像する第1の現像装置が付設された第1の感光体と、
前記第2のトナー像を現像する第2の現像装置が付設された第2の感光体と、
前記第1のトナー像と前記第2のトナー像とを重ねて前記定着画像におけるブラックの階調を表現するように、前記第1の感光体と前記第2の感光体を露光してそれぞれの静電像を形成する露光手段と、
前記第1の感光体と前記第2の感光体からトナー像を転写される中間転写体と、を備え、
前記中間転写体の回転方向における前記第1の感光体の上流側に前記第2の感光体が配置されていることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記中間転写体の回転方向における前記第2の感光体の上流側に、それぞれ異なる有彩色の非磁性トナーを用いる現像装置を個別に付設した複数の感光体が配置されていることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
最高階調を含むブラックの全階調で前記第2の現像装置により現像されたトナー載り量を所定量以上確保させつつ、ブラックの階調が高いほど前記第1の現像装置により現像されたトナー載り量を増すように前記露光手段を制御する制御手段を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、所定階調以下の濃度範囲では、第2の現像装置により現像されたトナー載り量のみでブラックの階調を表現することを特徴とする請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記非磁性トナーは、トナー載り量が0.5mg/cmにつき定着画像の反射濃度が1.0未満であって、前記磁性トナーは、トナー載り量が0.5mg/cmにつき定着画像の反射濃度が1.0以上であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項7】
トナー像が転写された記録材を加熱加圧して定着画像を形成する画像形成方法において、
ブラックの磁性トナーを用いて現像された第1のトナー像と、トナー載り量当たりのブラックの定着濃度が前記磁性トナーよりも低い非磁性トナーを用いて現像された第2のトナー像とを形成する第1の工程と、
記録材上で前記第1のトナー像の上に前記第2のトナー像が位置するように、前記第1のトナー像と前記第2のトナー像を記録材に転写する第2の工程と、を有し、
前記第1のトナー像と前記第2のトナー像とを重ね合わせて前記定着画像におけるブラックの階調が表現されていることを特徴とする画像形成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−107172(P2011−107172A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258781(P2009−258781)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】