説明

画像形成装置、情報機器およびコンピュータプログラム

【課題】操作パネルを有する情報機器の利便性を高める。
【解決手段】ネットワークを介して情報処理装置と接続される画像形成装置は、情報処理装置からのアクセスがあったときに、アクセスに伴う通信における受信データから、情報処理装置のユーザーを示すユーザー情報および情報処理装置の機能構成に関する情報である装置情報を取得する取得部と、取得されたユーザー情報および装置情報を互いに対応付けて記憶する記憶部と、操作パネルを用いて当該画像形成装置を操作する操作者を識別する識別部と、記憶されているユーザー情報を参照して、操作者がユーザーに該当するか否かを判定する判定部と、操作者がユーザーに該当すると判定された場合に、装置情報によって示される情報処理装置の有する機能に似せるように、操作者に対して当該画像形成装置が提供する機能を設定する設定部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークを介して接続される他の機器からのアクセスおよび操作パネルによる操作に応じて動作する情報機器、この種の情報機器である画像形成装置および画像形成装置で実行されるコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
MFP(Multifunction Peripheral)または複合機と呼ばれるビジネスユースの情報機器がある。近年のMFPは、画像形成装置としての機能であるコピーおよびネットワークプリンティングに加えて、イメージ入力(スキャニング)、ファクシミリ通信、電子メール送受信、ドキュメントの保存などの多数の機能を有している。一般に、MFPは複数のユーザーが利用するネットワークに接続される。MFPは複数のユーザーのそれぞれが操作するコンピュータからのアクセスおよび操作パネル上での各ユーザーによる操作に応じて動作する。
【0003】
MFPの操作パネルは、種々の操作画面を表示するためのディスプレイを有している。典型的なディスプレイは対角8インチ(解像度480×200ドット)程度の大きさをもち、例えばインターネットのWebサイトの閲覧(ブラウジング)に用いることができる程度の鮮明な画像表示が可能である。ユーザーは、操作パネルにおいて表示される操作画面内の操作ボタンを適宜操作することによって、MFPがもつ多くの機能から所望の機能を選択したり選択した機能に関わる動作設定をしたりすることができる。
【0004】
MFPやプリンタなどの画像形成装置の使い勝手に関して、ユーザーが毎回の使用で同じ設定をする操作の手間を省くため、ユーザーを識別して自動的に操作環境や動作を設定する先行技術がある。特許文献1に記載された印刷装置では、操作画面の色、アクセシビリティ、および表示言語などの項目の設定値がユーザーごとに保存され、識別したユーザーに応じて操作環境が自動的に切り替わる。この特許文献1には、ネットワークを介して接続されたコンピュータから印刷装置に対して設定の指示をすることが記載されている。また、特許文献2に記載されたMFPは、各ユーザーに対応するコンピュータのネットワーク上のアドレスを記憶しておき、識別したユーザー対応するコンピュータにアクセスして当該コンピュータの設定情報を取得し、取得した設定情報に基づいてMFPの設定を行う。特許文献2には、コンピュータのデスクトップの情報を取得してMFPの操作画面の背景色や文字色を設定したり、コンピュータにインストールされたWebブラウザの設定情報を取得してMFPのWebブラウザの設定をしたりすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−231760号公報
【特許文献2】特開2009−302890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
MFPと接続されるパーソナルコンピュータや携帯情報端末といった情報処理装置のユーザーがMFPを直接に操作する場合、情報処理装置とMFPとの間で操作に関わるシステム環境の共通点が多いほど、ユーザーにとってMFPの使い勝手がよい。例えば、ユーザーがMFPの操作パネル上でWebブラウジングをしようとするとき、情報処理装置で使い慣れたWebブラウザと同じ品名のソフトウェアがMFPでも使用できるのが好ましい。バージョンによって操作性に差異がある場合、品名とバージョンとが同一であるのが使い勝手の上ではより好ましい。上記特許文献2によれば、コンピュータの設定情報に基づいてMFPが設定されることで、結果的に操作環境の一部の共通化が実現される。しかし、ユーザーがMFPを直接に操作する時点で当該ユーザーに対応するコンピュータがネットワークに接続されてアクセス可能でなければ、操作環境の共通化は図れない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、操作パネルを有する情報機器の操作に関わるシステム環境を外部機器のシステム環境に近づけることによって、外部機器のユーザーにとっての情報機器の利便性を高めることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する装置は、操作パネルを有しかつネットワークを介して情報処理装置と接続される画像形成装置であって、前記情報処理装置から当該画像形成装置へのアクセスがあったときに、前記アクセスに伴う通信における受信データから、前記情報処理装置のユーザーを示すユーザー情報および前記情報処理装置の機能構成に関する情報である装置情報を取得する取得部と、取得された前記ユーザー情報および前記装置情報を互いに対応付けて記憶する記憶部と、前記操作パネルを用いて当該画像形成装置を操作する操作者を識別する識別部と、記憶されている前記ユーザー情報を参照して、前記操作者が前記ユーザーに該当するか否かを判定する判定部と、前記操作者が前記ユーザーに該当すると判定された場合に、前記装置情報によって示される前記情報処理装置の有する機能に似せるように、前記操作者に対して当該画像形成装置が提供する機能を設定する設定部と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、操作パネルを用いて情報機器である画像形成装置を操作する操作者に対して提供する機能が外部機器である情報処理装置の有する機能に似せるように設定されるので、画像形成装置のシステム環境が情報処理装置のシステム環境に近づき、情報処理装置のユーザーが画像形成装置を操作するときの使い勝手が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る情報処理システムの構成例を示す図である。
【図2】MFPのハードウェア構成を示す図である。
【図3】MFPにおける自動の機能設定に関わる要部の構成を示す図である。
【図4】MFPのWebアプリケーションが関わる外部機器での画面表示の一例を示す図である。
【図5】HTTP通信のリクエストヘッダの内容に一例を示す図である。
【図6】ブラウザ管理テーブルの一例を示す図である。
【図7】タッチパネルに表示される機能選択画面の例を示す図である。
【図8】MFPにおける外部機器からのアクセスに応答する動作の流れを示すフローチャートである。
【図9】MFPにおける操作パネルによる操作に応答する動作の流れを示すフローチャートである。
【図10】MFPのWebアプリケーションが送信する情報収集用のプログラムの例を示す図である。
【図11】外部機器において表示される操作ウィンドウの例を示す図である。
【図12】プラグイン情報を含むレスポンスの例を示す図である。
【図13】MFPに与えられる印刷ジョブの内容の一例を示す図である。
【図14】印刷ジョブを受信したときのMFPの動作の流れを示す図である。
【図15】デスクトップ管理テーブルの一例を示す図である。
【図16】電子メールのヘッダの例を示す図である。
【図17】メーラー管理テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
操作パネルを有する情報機器の例としてMFPを挙げる。MFPはネットワークに接続され、複数のユーザーによって共用される。
【0012】
図1のように、本発明の実施形態に係る情報処理システム1は、情報機器としてのパーソナルコンピュータ(以下、PCという)3と画像形成装置としてのMFP2とを備える。情報処理システム1が設置される企業のオフィスには、インターネット9に接続されるLAN(Local Area Network)7が構築されている。LAN7にはPC3およびMFP2が接続されるとともに、PC4、スマートフォン5、携帯電話機6および図示しない各種サーバーなどの情報機器が有線または無線の通信路を介して接続される。
【0013】
PC3,4は一般的なパーソナルコンピュータと同様のハードウェア構成を有する。図示を省略するが、PC3,4は、各種プログラムを実行するCPU、制御プログラムを記憶するROM、プログラム実行のワークエリアとして用いられるRAM、ストレージとしてのハードディスクドライブ、CD−ROMやDVDにアクセスするためのリムーバブルメディアドライブ、およびネットワーク接続のための通信インタフェースを有する。また、PC3,4は、ヒューマンインタフェースデバイスとしてのディスプレイ、キーボードおよびマウスを含む。
【0014】
PC3,4のストレージには、それぞれのユーザーがインストールした様々なアプリケーションが存在する。その中にはMFP2と関係づけられたデバイスドライバも存在し、ユーザーが印刷を指示すると、デバイスドライバによってMFP2に印刷ジョブが送信され、MFP2において印刷ジョブが実行される。また、アプリケーションの中には、電子メール用のソフトウェア(以下、メーラーという)も存在し、MFP2で保存されているデータや、MFP2によってスキャニングされたデータを、メールの添付データとしてMFP2からPC3,4へ取り込むことができる。さらに、アプリケーションの中には、Webブラウザも存在する。ユーザーがMFP2のIPアドレスを指定し、データ取得指示を行うと、Webページの取得の形でMFP2からPC3,4へデータが転送される。
【0015】
Webブラウザにはマイクロソフト社のInternet Explorer(登録商標)、は、Mozilla Foundationが開発するMozilla FireFox(登録商標)、グーグル社のGoogleChrome(登録商標)、アップル社のSafari(登録商標)、オペラソフトウェア社のインターネットスイートに含まれるOpera(登録商標)などの品名の異なる複数のソフトウェアがあり、各品名のWebブラウザに複数のバージョンが存在する。各Webブラウザは独自の特徴(表示速度が速い、操作性がよい、機能拡張ができるなど)をもっており、PC3,4および情報機器のそれぞれのユーザーは好みのWebブラウザをインストールして使用することができる。
【0016】
図2のように、MFP2は、操作パネル20、イメージスキャナ21、プリンタエンジン22、用紙ストッカ23、制御回路25、画像処理回路26、ストレージ27、およびネットワーク接続用の通信インタフェース30を備える。操作パネル20はディスプレイとタッチ入力デバイスとで構成されるタッチパネル201を有している。イメージスキャナ21は原稿に記録されている画像情報を光学的に読み取る。プリンタエンジン22は、多段形式の用紙ストッカ23から供給される用紙の片面または両面にモノクロまたはカラーの画像を印刷する。制御回路25は、制御プログラムを記憶するROM251、制御プログラムやアプリケーションを実行するCPU252、およびプログラム実行のためのRAM253を有する。画像処理回路26はイメージスキャナ21の出力データの補正や印刷時のビットマップ展開を含む種々の画像処理を担う。ストレージ27はハードディスクドライブのような大容量記憶デバイスである。ストレージ27には、MFP2の制御に係わるデータを記憶するメモリ領域とともに、各種ドキュメントのファイルを保存するメモリ領域(いわゆるボックス)が設けられる。通信インタフェース30はLAN7に接続される外部機器との通信を可能にする。
【0017】
MFP2は、イメージスキャナ21によって原稿から画像を読み取って外部機器へ送信したり、外部機器からの要求に応えて保存データを要求元または指定先に送信したり、外部機器から与えられたデータについて印刷・ファクシミリ送信・ボックス保存といった処理を行ったりすることができる。また、MFP2は、操作パネル20でのWebブラウジングでインターネットまたはイントラネット上のWebサイトからWebページを取得し、Webページを印刷したり、外部機器へ送信したり、ボックスに保存したりすることができる。さらに、MFP2は、電子メールを受信して印刷したり、受信した電子メールを外部機器へ転送したり、操作パネル20を用いて指定された宛先に保存データを電子メールに添付して送信したりすることができる。
【0018】
MFP2には、Webブラウジングのためのソフトウェアとして品名またはバージョンが異なる複数のWebブラウザがインストールされ、かつ電子メールの送受信のためのソフトウェアとして品名またはバージョンが異なる複数のメーラーがインストールされている。後述のように、MFP2にログインした操作者による所定のブラウジングのための操作に呼応して、複数のWebブラウザのうちの予め操作者に対応づけられている一つが起動される。メーラーについても同様に、予め操作者に対応づけられている一つのメーラーが所定の操作に呼応して起動される。
【0019】
図3はMFP2における自動の機能設定に関わる要部の構成を示す。MFP2は、ユーザーの要求に応じてMFP2を動作させるジョブ処理部101およびWebアプリケーション103を有する。ジョブ処理部101は、外部機器にインストールされた所定のデバイスドライバから与えられるジョブを実行する。また、ジョブ処理部101は、操作パネル20上の操作によって与えられるジョブを実行する。Webアプリケーション103は、外部機器にインストールされたWebブラウザからのアクセスに応答し、様々な処理を行う。Webアプリケーション103は、外部機器からアクセスされると、まず外部機器のユーザーを認証する。そして、Webアプリケーション103によって認証されたユーザーがWebブラウザを用いて行う指示に従って、MFP2を動作させる。例えば、Webアプリケーション103は、遠隔の外部機器でのMFP2の管理を可能にするWebサーバーとして機能する。Webサーバーは、MFP2の状態、ジョブ情報、宛先情報、およびボックス内の文書情報を選択的に表示するためのデータを外部機器に提供する。
【0020】
このようなジョブ処理部101およびWebアプリケーション103に加えて、図3のとおり、MFP2は、取得部201、記憶部203、識別部205、判定部207、および設定部209を有している。これらは、上述のCPU252が所定のコンピュータプログラムを実行することによって実現される機能要素である。
【0021】
取得部201は、外部機器から当該MFP2へのアクセスがあったときに、アクセスに伴う通信における受信データ71,72から、外部機器のユーザーを示すユーザー情報D1および外部機器の機能構成に関する情報である装置情報D3を取得する。詳しくは、例えば外部機器の一つであるPC3に備わる当該MFP2に適応するデバイスドライバからジョブ処理部101へのアクセスがあったときに、取得部201はデバイスドライバが送信するジョブデータからユーザー情報D1および装置情報D3を取得する。また、Webアプリケーション103へのアクセスがあったときには、取得部201は、Webアプリケーションが受信するログインデータからユーザー情報D1を取得し、かつ通信パケットのヘッダからPC3で使用されたWebブラウザに関する情報を装置情報D3として取得する。
【0022】
記憶部203は、取得部201によって取得されたユーザー情報D1および装置情報D3を互いに対応づけて記憶する。記憶(すなわち情報の保存)は、情報を示すデータをストレージ27に格納することによって実現される。ストレージ27には、ブラウザ管理テーブルT1、デスクトップ管理テーブルT2、およびメーラー管理テーブルT3などの装置情報D3を管理するためのテーブルが記憶部203によって設けられ、あらたな情報が取得されるごとに更新される。テーブルの内容については後述する。
【0023】
取得部201と記憶部203との連携によって保存された装置情報D3は、外部機器(例えば、PC3)のユーザーが操作パネル20を用いてMFP2を操作するときに、MFP2の使い勝手を良くするために利用される。装置情報D3の利用に関わるのが、識別部205、判定部207および設定部209である。
【0024】
識別部205は、操作パネル20を用いてMFP2を操作する操作者を識別する。識別の方法は、ユーザー認証において得られたユーザー識別情報によって操作者を特定する方法である。なお、ユーザー認証の方法としては、ログイン画面において入力された認証情報(ユーザーIDおよびパスワード)を予め登録されている情報と照合する一般的な方法を用いることができる。他にも、ICカードやRFタグから認証情報を読み取って照合する方法、生体認証などの方法がある。いずれの方法を用いるかはMFP2のハードウェアの仕様によって決まる。
【0025】
判定部207は、記憶部203によって記憶されているユーザー情報D1を参照して、識別部205によって識別された操作者が装置情報D3の記憶されている外部機器のユーザーに該当するか否かを判定する。判定部207は、識別部205から引き渡されたユーザー情報D1に該当するユーザー情報D1がストレージ27に設けられたテーブル(ブラウザ管理テーブルT1、デスクトップ管理テーブルT2、メーラー管理テーブルT3)の中にあった場合に、操作者が外部機器のユーザーに該当する旨を設定部209に伝える。
【0026】
設定部209は、操作者が装置情報D3の記憶されている外部機器のユーザーに該当すると判定された場合に、装置情報D3によって示される外部機器の有する機能に似せるように、操作者に対してMFP2が提供する機能を設定する。つまり、設定部209は、MFP2のシステム環境を、操作者がユーザーである外部機器のシステム環境に近づける。これによって、MFP2が操作者にとって使い易くなる。
【0027】
以下、外部機器の装置情報D3に基づいてMFP2のシステム環境を切り替える四つの具体例を挙げる。
【実施例1】
【0028】
第1の例では、Webアプリケーション103へのアクセスに呼応して装置情報D3が記憶される。
【0029】
図4はMFP2のWebアプリケーション103が関わる外部機器での画面表示の一例を示す。外部機器にインストールされたWebブラウザがMFP2のWebアプリケーション103にアクセスすると、外部機器に付随するディスプレイによって図示の操作画面Q2が表示される。操作画面Q2は、ユーザーIDとパスワードを入力するログイン操作の後、マウスカーソル310でタグ305を指定するマウス操作が行われたときに表示される宛先登録のための画面である。ログインで認証されたユーザーは、操作画面Q2において、電子メールやファクシミリなどの宛先をMFP2に登録することができる。また、リスト315に示される既に登録されている宛先を編集したり削除したりすることもできる。操作画面Q2を表示するための画面レイアウト、リスト内のデータ、およびヘルプ情報などはMFP2のストレージ27に格納されており、Webアプリケーション103は、外部機器での操作に応じて画面データを作成して外部機器のWebブラウザに提供する。
【0030】
今、例えば「User-A」という名のユーザーがPC3からMFP2のWebアプリケーション103にアクセスし、Webアプリケーション103へのログインを終えたとする。このアクセスに伴うHTTP(Hypertext Transfer Protocol)通信において、図5に例示されるリクエストヘッダ401がPC3のWebブラウザからWebアプリケーション103へ送られる。MFP2における上述の取得部201は、ログインのためにユーザーが入力したユーザーIDをユーザー情報D1として取得するとともに、リクエストヘッダ401の「User-Agent」という項目のデータが示すブラウザ情報を装置情報D3として取得する。「User-Agent」の内容は、Webブラウザの型式(製品名およびバージョン)に固有であるので、予め用意された図示しない対応テーブルを参照することにより、Webブラウザの製品名およびバージョンを判別することができる。図5の例では、PC3でユーザーが使用したWebブラウザの品名はInternet Explorer(登録商標)であり、バージョンは6である。つまり、いわゆるIE6が使用されている。
【0031】
装置情報D3として取得されたブラウザ情報は、図6に示されるブラウザ管理テーブルT1において、ユーザー情報D1であるユーザーIDおよびユーザー名に対応づけて記憶される。このとき、該当するユーザー(ここではUser-A)について既にブラウザ情報が格納されている場合、上書きの形でテーブルが更新される。なお、同じユーザーがMFP2へのアクセスに複数の外部機器を使用する可能性のある情報処理システムでは、当該ユーザーについて直近に使用された外部機器の装置情報を記憶してもよいし、使用頻度の高い外部機器の装置情報を記憶してもよい。また、取得されたブラウザ情報に該当するWebブラウザがMFP2にインストールされていない場合、取得されたブラウザ情報を格納せずに空白にしておくか、取得されたブラウザ情報の代わりにデフォルトのWebブラウザを示す情報を格納しておく。
【0032】
このようにしてブラウザ情報が記憶された後に、ユーザー(User-A)がMFP2の操作パネル20を用いてログイン操作をし、タッチパネル201に表示される機能選択画面Q20(図7参照)でWebブラウザボタン75にタッチする。そうすると、ブラウザ管理テーブルT1において当該ユーザーに対応づけられているWebブラウザ(ユーザー好みのブラウザ)と同じ型式のWebブラウザが当該ユーザーによるブラウジングのためのソフトウェアとして起動される。これにより、ユーザーはPC3でのブラウジングと同様にMFP2においてブラウジングを行うことができる。なお、ユーザー好みのブラウザと同じ型式のWebブラウザがMFP2にインストールされていない場合は、バージョンは異なるが製品名は同じというユーザー好みのブラウザに類似すると推定されるWebブラウザを起動してもよいし、予めデフォルトに定められたWebブラウザを起動してもよい。
【0033】
図8はMFP2における外部機器からのアクセスに応答する動作の流れを示す。外部機器からのアクセスを受けたWebアプリケーション103は、アクセスをした外部機器のWebブラウザにログイン画面を表示させる(S11、S12)。ログイン画面において外部機器のユーザーが入力したデータが通知されると、Webアプリケーション103は、ユーザーを識別し、予め登録されている識別情報と照合してユーザーを認証する(S13、S14、S15)。ユーザーが予め登録されている場合(S15でYes)、取得部201がユーザー情報D1および装置情報D3としてのブラウザ情報を取得し(S16)、それら情報を記録部203がブラウザ管理テーブルT1に格納する(S17)。そして、Webアプリケーション103がログイン完了を外部機器のWebブラウザに通知する(S18)。一方、識別したユーザーが予め登録されているユーザーでなければ(S15でNo)、Webアプリケーション103はログイン入力のエラーを外部機器のWebブラウザに通知する(S19)。
【0034】
図9はMFP2における操作パネル20による操作に応答する動作の流れを示す。MFP2の識別部205が、ログイン操作で入力されたデータに基づいて操作者を識別する(S21)。Webブラウザボタン75が操作されると、設定部209が起動すべきWebブラウザを決定し(S22、S23)、MFP2は決定されたWebブラウザを直ちに起動する(S24)。
【実施例2】
【0035】
第2の例では、Webアプリケーション103へのアクセスに呼応してユーザーの了解を得た上で所定の装置情報D3が記憶される。
【0036】
今、上述の第1の例と同様に「User-A」という名のユーザーがPC3からMFP2のWebアプリケーション103にアクセスし、Webアプリケーション103へのログインを終えたとする。Webアプリケーション103は、PC3のWebブラウザからのアクセスへの応答において、JavaScript(登録商標)で記述される情報収集用のプログラムP1(図10参照)を送信することによって、Webブラウザのプラグイン情報の通知を要求する。
【0037】
Webアプリケーション103からの情報収集用のプログラムP1を実行するPC3は、図11のようにログイン画面Q1に重ねて操作ウィンドウW10をポップアップ表示し、プラグイン情報の送信に同意するか否かをユーザーに問う。「はい」ボタン85が押された場合、PC3のWebブラウザは図12に例示されるようにプラグイン情報を含むレスポンス405をMFP2のWebアプリケーション103に送信する。「いいえ」ボタン86が押された場合、PC3のWebブラウザはレスポンス405を送信しない。
【0038】
レスポンス405にはプラグイン情報が含まれる。図12の例では、動画再生用のプラグインとして、バージョン10.0.45のFlash Player(登録商標)が示されている。プラグイン情報は、上述の例と同様に取得されるブラウザ情報とともに、装置情報D3としてユーザー情報D1に対応づけてブラウザ管理テーブルT1に格納される(図6参照)。
【0039】
このようにしてブラウザ情報およびプラグイン情報が記憶された後に、ユーザー(User-A)がMFP2の操作パネル20を用いてログイン操作をし、タッチパネル201に表示される機能選択画面Q20(図7参照)でWebブラウザボタン75にタッチする。そうすると、ブラウザ管理テーブルT1において当該ユーザーに対応づけられているユーザー好みのブラウザと同じ型式のWebブラウザが起動され、プラグイン情報に該当する予めストレージ27にインストールされているプラグインも起動される。
【実施例3】
【0040】
第3の例では、ジョブ処理部101へのアクセスに呼応して装置情報D3が記憶される。
【0041】
今、「User-A」という名のユーザーがPC3からMFP2に対して印刷を指示したとする。印刷の指示は、例えば文書作成アプリケーションが表示する画面において行われる。文書作成アプリケーションから、MFP2による印刷に適合するデバイスドライバ(いわゆるプリンタドライバ)へ、オペレーティングシステム(OS)を介して指示が伝えられる。指示を受けたデバイスドライバは、印刷すべき画像情報と印刷設定情報とを有する印刷ジョブを作成してMFP2に送信する。
【0042】
図13はMFP2に与えられる印刷ジョブ70の内容の一例を示す。図13では、印刷ジョブ70のうちのジョブチケットと呼ばれる命令部分が示されている。例示のジョブチケットは、プリンタジョブ言語(PJL:Printer Job Language)によって記述されている。
【0043】
図13のように、印刷ジョブ70には、ユーザーがPC3にログインする際に入力したユーザー情報D1に加えて、デバイスドライバによって収集されたデスクトップ情報がPC3の装置情報D3として含まれる。デスクトップ情報は、オペレーティングシステムの型式と、GUI(Graphical User Interface)による表示の配色とを示す。デスクトップ情報は、オペレーティングシステムから情報を取得する“GetVersionEx()”のような既存の関数を用いて収集される。
【0044】
図14は印刷ジョブを受信したときのMFPの動作の流れを示す。印刷ジョブ70を受信したMFP2において、ジョブ処理部101によって印刷ジョブ70が解析され、印刷ジョブ70に含まれるユーザー情報D1が抽出される(S31、S32)。ユーザー情報D1が予め登録されているユーザーに該当する場合(S33でYes)、印刷ジョブ70に含まれるユーザー情報D1および装置情報D3が取得部201によって取得され(S34)、図15に例示されるデスクトップ管理テーブルT2に記憶部203によって格納される(S35)。
【0045】
装置情報D3としてデスクトップ情報が記憶された後に、ユーザー(User-A)がMFP2の操作パネル20を用いてログインのための操作をする。そうすると、タッチパネル201において表示される操作画面の配色が、デスクトップ管理テーブルT2において当該ユーザーに対応づけられている配色またはそれに類似する配色に切り替わる。
【実施例4】
【0046】
第4の例では、MFP2を宛先とする電子メールの受信に呼応して所定の装置情報D3が記憶される。
【0047】
有償または無償で入手可能な既存の多数のメーラーのそれぞれが独自の特徴(表示速度が速い、操作性がよい、機能拡張ができるなど)をもっている。図1の情報処理システム1において、MFP2からみた外部機器であるPC3,4や他の情報処理装置のユーザーは、ユーザーは好みのメーラーをインストールして使用することができる。また、インストールしたメーラーと、インストール不要のWebメールとを使い分けることもできる。
【0048】
MFP2のストレージ27には、Outlook(登録商標)、Outlook Express(登録商標)、Thunderbird(登録商標)といった代表的な複数のメーラーがインストールされている。インストールすべきメーラーの選定に際しては、品名が同じでもバージョンが異なれば別のメーラーとされる。それは、バージョンによって使い勝手が大きく異なる可能性があるからである。
【0049】
今、図1の情報処理システム1内の外部機器の一つ(ここではPC3)からMFP2へ電子メールが送信されたとする。例えば、ジョブを電子メールに添付してMFP2に与える場合がある。図16のように、電子メールのヘッダ601は、送信元のメールアドレス情報Daとともに、送信元であるPC3で使用されたメーラーの型式を示すメーラー情報をPC3のメール機能を表す装置情報D3として含んでいる。
【0050】
ヘッダ601はMFP2の取得部201に取り込まれる。取得部201は、予め用意された図示しないユーザー登録テーブルからヘッダ601のメールアドレス情報Daに該当するユーザー情報D1を取得するとともに、ヘッダ601から装置情報D3であるメーラー情報を取得する。そして、記憶部203が、取得されたメーラー情報を図17に示されるメーラー管理テーブルT3に格納する。これによって、メーラー情報はユーザー情報D1に対応づけて記憶される。
【0051】
メーラー情報が記憶された後に、ユーザー(User-A)がMFP2の操作パネル20においてログイン操作をし、タッチパネル201に表示される機能選択画面Q20(図7参照)でメールボタン76にタッチする。そうすると、メーラー管理テーブルT3において当該ユーザーに対応づけられているユーザー好みのメーラーと同じ型式のメーラーが当該ユーザーによるメール送受のためのソフトウェアとして起動される。
【0052】
上述の実施形態において、Webブラウザに関連する装置情報D3として、Webブラウザによる画面表示における画面サイズや文字サイズなどの設定情報、お気に入りまたはブックマークと呼ばれるWebサイトの登録情報、およびセキュリティ設定情報をMFP2が取得して記憶し、MFP2でのブラウジングに反映させるようにしてもよい。情報の取得には、JavaアプレットやAvtiveXコントロールなどの技術を用いることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 情報処理システム
2 MFP(情報機器、画像形成装置)
20 操作パネル
7 LAN(ネットワーク)
3,4 パーソナルコンピュータ(外部機器、情報処理装置)
71,72 受信データ
D1 ユーザー情報
D3 装置情報
201 取得部
203 記憶部
205 識別部
207 判定部
209 設定部
103 Webアプリケーション
401 リクエストヘッダ
70 印刷ジョブ(ジョブデータ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作パネルを有しかつネットワークを介して情報処理装置と接続される画像形成装置であって、
前記情報処理装置から当該画像形成装置へのアクセスがあったときに、前記アクセスに伴う通信における受信データから、前記情報処理装置のユーザーを示すユーザー情報および前記情報処理装置の機能構成に関する情報である装置情報を取得する取得部と、
取得された前記ユーザー情報および前記装置情報を互いに対応付けて記憶する記憶部と、
前記操作パネルを用いて当該画像形成装置を操作する操作者を識別する識別部と、
記憶されている前記ユーザー情報を参照して、前記操作者が前記ユーザーに該当するか否かを判定する判定部と、
前記操作者が前記ユーザーに該当すると判定された場合に、前記装置情報によって示される前記情報処理装置の有する機能に似せるように、前記操作者に対して当該画像形成装置が提供する機能を設定する設定部と、を有する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
認証されたユーザーの指示に従って当該画像形成装置を動作させるWebアプリケーションをさらに有し、
前記取得部は、前記情報処理装置から前記Webアプリケーションへのアクセスがあったときに、前記Webアプリケーションが受信するログインデータから前記ユーザー情報を取得し、かつ通信パケットのヘッダから前記情報処理装置で使用されたWebブラウザに関する情報を前記装置情報として取得し、
前記設定部は、前記操作者が前記認証されたユーザーに該当すると判定されかつ当該画像形成装置に前記Webブラウザと同品名のWebブラウザが備わる場合に、前記操作者によるブラウジングのための操作に応答するソフトウェアとして、当該画像形成装置に備わる前記Webブラウザを設定する
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記取得部によって取得される前記Webブラウザに関する情報は、プラグイン情報、画面表示の設定情報、Webサイトの登録情報、およびセキュリティの設定情報のうちの少なくとも一つを含み、
前記設定部は、前記ソフトウェアとして当該画像形成装置に備わる前記Webブラウザを設定する際に、前記取得部によって取得された情報を可能な範囲内で設定に反映させる
請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記取得部は、前記情報処理装置に備わる当該画像形成装置に適応するデバイスドライバからのアクセスがあったときに、前記デバイスドライバが送信するジョブデータから前記ユーザー情報および前記装置情報を取得する
請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記取得部は、前記情報処理装置から当該画像形成装置への電子メールによるアクセスがあったときに、メールアドレスデータから前記ユーザー情報を取得し、かつ電子メールのヘッダから前記情報処理装置で使用された電子メール用アプリケーションに関する情報を前記装置情報として取得し、
前記設定部は、当該画像形成装置に前記電子メール用アプリケーションと同品名の電子メール用アプリケーションが備わる場合に、前記操作者による電子メールの送受信に関わる操作に応答するソフトウェアとして、当該画像形成装置に備わる前記電子メール用アプリケーションを設定する
請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
操作パネルを有しかつネットワークを介して外部機器と接続される情報機器であって、
前記外部機器から当該情報機器へのアクセスがあったときに、前記アクセスに伴う通信における受信データから、前記外部機器のユーザーを示すユーザー情報および前記外部機器の機能構成に関する情報である装置情報を取得する取得部と、
取得された前記ユーザー情報および前記装置情報を互いに対応付けて記憶する記憶部と、
前記操作パネルを用いて当該情報機器を操作する操作者を識別する識別部と、
記憶されている前記ユーザー情報を参照して、前記操作者が前記ユーザーに該当するか否かを判定する判定部と、
前記操作者が前記ユーザーに該当すると判定された場合に、前記装置情報によって示される前記外部機器の有する機能に似せるように、前記操作者に対して当該情報機器が提供する機能を設定する設定部と、を有する
ことを特徴とする情報機器。
【請求項7】
操作パネルを有しかつネットワークを介して情報処理装置と接続される画像形成装置において実行されるコンピュータプログラムであって、
前記画像形成装置が有するコンピュータによって実行されたときに、
前記情報処理装置から当該画像形成装置へのアクセスがあったときに、前記アクセスに伴う通信における受信データから、前記情報処理装置のユーザーを示すユーザー情報および前記情報処理装置の機能構成に関する情報である装置情報を取得する取得部と、
取得された前記ユーザー情報および前記装置情報を互いに対応付けて記憶する記憶部と、
前記操作パネルを用いて当該画像形成装置を操作する操作者を識別する識別部と、
記憶されている前記ユーザー情報を参照して、前記操作者が前記ユーザーに該当するか否かを判定する判定部と、
前記操作者が前記ユーザーに該当すると判定された場合に、前記装置情報によって示される前記情報処理装置の有する機能に似せるように、前記操作者に対して当該画像形成装置が提供する機能を設定する設定部と、を前記コンピュータに実現させる
ことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項8】
画像形成装置にネットワークを介して接続される情報処理装置において実行されるコンピュータプログラムであって、
当該情報処理装置が有するコンピュータによって実行されたときに、
前記画像形成装置へのアクセスに際して、当該情報処理装置の機能構成に関する情報である装置情報を収集する手段と、
前記画像形成装置への前記装置情報の送信に同意するか否かを当該情報処理装置のユーザーに問い合わせる表示処理を実行する手段と、
前記送信に前記ユーザーが同意した場合にのみ、収集された前記装置情報を前記アクセスに伴う通信の送信データに組み入れる手段と、を前記コンピュータに実現させる
ことを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−85176(P2012−85176A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230850(P2010−230850)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】