説明

画像形成装置、画像形成装置の制御方法、プログラム

【課題】 複数のレコードを含むVDPジョブにおいて有効な試し印刷が可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】 VDPジョブを処理するプリンタ103であって、試し印刷ジョブであると判定されたVDPジョブに含まれる複数のレコードのうち一部のレコードを試し印刷をプリンタ部407に行わせ、一部のレコードの印刷が行われた後に、印刷されていないレコードの印刷指示を受け付け、受け付けた印刷指示に応じて、試し印刷により印刷されていないレコードの印刷をプリンタ部407に行わせる制御部403と有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷ジョブに含まれる画像データの一部分だけを出力し、その後残りを印刷する試し印刷を行うことが可能な画像形成装置、画像生成装置の制御方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来コピー装置には、所謂試しコピーなる機能がある。これは、複数部数のコピージョブを出力する時、ステープル位置や画像処理設定などのジョブ設定が意図した通りであるかを確認するために、まず一部のみ出力してそれを目視で確認し、正しければその後に残りの部数を出力するものである。また、プリンタや複合機などの画像形成装置では、印刷ジョブの一部のみを実行し、その後に残りを実行するという、所謂試し印刷なる機能がある。
【0003】
特許文献1では、ジョブで指定した用紙とは別の用紙に対して試し印刷を実行するような技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−299936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
昨今の画像形成装置は高速化されており、VDP(バリアブル・データ・プリント)やトランザクションプリントといった大量ページを印刷するようになってきている。例えばVDPジョブは印刷出力物を配布するお客様一人一人にカスタマイズされた出力であり、1つのジョブが大量のページ数を持つが、部数は1部であることがもっぱらである。先行技術で実現可能な試し印刷は、複数部数のうちの一部分をまず印刷して出力を確認し、その後残りの部分を印刷する方法である。即ち先行技術は複数部数の印刷における試し印刷の実現であるため、1部の出力であるVDPジョブに対して試し印刷を実現することが難しい。
【0006】
本発明は、複数のレコードを含むVDPジョブにおいて有効な試し印刷が可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像形成装置は、複数のレコードを含むVDPジョブを処理する画像形成装置であって、情報処理装置より受信したVDPジョブが、試し印刷が指示された試し印刷ジョブであるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段により試し印刷ジョブであると判定されたVDPジョブに含まれる複数のレコードのうち一部のレコードを試し印刷する試し印刷手段と、前記試し印刷による一部のレコードの印刷が行われた後に、前記VDPジョブに含まれ、前記試し印刷により印刷されていないレコードの印刷指示を受け付ける受付手段と、前記受付手段により受け付けた印刷指示に応じて、前記VDPジョブに含まれ、前記試し印刷により印刷されていないレコードを印刷する印刷手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数のレコードを含むVDPジョブにおいて有効な試し印刷が可能な画像形成装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の1実施例に適用されるシステムの構成図。
【図2】プリンタドライバにおける設定画面の一例を示す図。
【図3】プリンタの操作画面の一例を示す図。
【図4】プリンタの内部機能の構成を示すブロック図。
【図5】本発明の実施例1におけるジョブ処理の流れを示すフローチャート。
【図6】本発明の実施例2におけるジョブ処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本実施例に適用される最小限の装置の構成例である。クライアントPC102とプリンタ103はネットワーク101で接続されている。クライアントPC102は、本発明に適用される情報処理装置であり、印刷ジョブ投入機能を持つソフトであるプリンタドライバを使用して、プリンタ103に対して印刷ジョブを送信する。
【0012】
プリンタ103は、本発明に適用される画像形成装置であり、クライアントPCから送信された印刷ジョブを処理して、印刷ジョブに基づく画像データを用紙に印刷し、出力する。印刷ジョブがプリンタ103で処理されている際、プリンタ103は、該印刷ジョブの処理状況を、ユーザが確認できるよう、プリンタ103の操作部104に表示する。また、プリンタ103は、操作部104を介して行われたユーザの操作に従って、印刷ジョブのキャンセル、再印刷といった指示を受け付け、処理を実行する。
【0013】
図2は、クライアントPC102における、プリンタドライバの設定画面の一例を示す図である。例えば、クライアントPC102のOS上で動作するアプリケーションソフト(アプリと省略)でドキュメントを作成し印刷する場合、アプリのメニューから印刷コマンドを選択すると設定画面201がクライアントPC102のディスプレイ(不図示)に表示される。設定画面201には、プリンタ103に対して印刷ジョブの試し印刷を指示するためのチェックボックス202が配置されている。チェックボックス202にチェックされた状態で、OKボタン203が押下されると、試し印刷指示を含む印刷ジョブがクライアントPC102からプリンタ103に送信される。
【0014】
図3(a)は、プリンタ103の操作部104に表示される、ジョブ状況の確認画面の一例を示す図である。操作部104において、プリンタ103におけるジョブの状況を確認するためのボタンを押下されると、確認画面301が表示される。確認画面301では、現在処理中または、処理待ちのジョブの状況を確認するためのリストが表示されるジョブ状況画面と、すでに処理が実行されたジョブの処理結果を確認するためのリストが表示されるジョブ履歴画面とが切り替え可能である。
【0015】
尚、試し印刷が実行され、印刷ジョブの一部(1レコード)が印刷された後は、ジョブ履歴画面のリストに表示される。この際、試し印刷が指示され、印刷ジョブの一部(1レコード)が印刷されたジョブ(試し印刷ジョブ)と、通常のジョブとは識別可能な状態で表示される。図3(a)の確認画面では、ジョブ履歴画面のリスト302が表示されており、その中には試し印刷ジョブ303が含まれている。試し印刷ジョブ303では「結果」の項目に「試し印刷」と表示されている。ユーザは、「試し印刷」というジョブが試し印刷ジョブであることを示す情報により、該ジョブが試し印刷によりの印刷ジョブの一部(1レコード)が印刷されたジョブであることを識別できる。試し印刷ジョブであるかどうかの情報の表示の方法として、この図では試し印刷という文字列を表示する方法であるが、他にはアイコンや色などで表示する方法が考えられる。
【0016】
図3(b)は、試し印刷ジョブにおいて残りの画像データを印刷するか否かの指示を受付けるための指示画面である。指示画面は304は、ジョブ履歴画面のリスト302において、試し印刷ジョブ303が選択されると、表示される。指示画面304は、OKボタン305、削除ボタン306、キャンセルボタン307を含む。
【0017】
OKボタン305が押下されると、プリンタ103は、試し印刷ジョブの残りの画像データの印刷指示を受け付け、該印刷ジョブの残りの印刷を実行する。削除ボタン306が押下されると、プリンタ103は、保管している試し印刷ジョブを削除する。キャンセルボタン307が押下されると、プリンタ103は、何もせずに確認画面301に戻る。
【0018】
図4はプリンタ103内部の機能部の構成図である。この図を用いて、プリンタの動作を説明する。クライアントPC102から投入された印刷ジョブはネットワーク101を介して、NIC部402が受信する。
【0019】
プリンタ全体を制御する制御部403は、印刷ジョブを一旦メモリ部405に保存する。尚、制御部403は、不図示のCPUを含み、プリンタ103のROMまたはHD(ハードディスク)に記憶されている制御プログラムを、RAMに読み出して実行することで、プリンタ全体を制御する。例えば表示手段である操作部104への表示制御も制御部403が行う。
【0020】
メモリ部405から読み出された印刷ジョブは、出力ジョブ処理部406において処理される。具体的には、印刷用紙上に描画される画像データの生成と、ペーパーハンドリング(両面印刷又は片面印刷等)、ステープル、Nupといった各種印刷設定に関する印刷設定情報の生成が行われる。生成された画像データ及び印刷設定情報は、後段のプリンタ部407や後処理部408に通知される。プリンタ部407において描画され、後処理部408においてフィニッシング処理されて、印刷ジョブに基づく最終的な出力物が生成される。
【0021】
出力ジョブ処理部406は、印刷設定処理部411、レコード判定部412、PDL処理部413、出力画像処理部414から構成される。印刷設定処理部411は、印刷ジョブに含まれる印刷設定を処理する。PDL処理部413は、印刷ジョブに含まれるPDLデータを処理する。レコード判定部412は、印刷ジョブが複数のレコードを有するVDPジョブである場合に、VDPデータのレコードを判定する。出力画像処理部414は、印刷設定処理部411、PDL処理部413、レコード判定部412の各機能部で処理されたデータから画像データ及び印刷設定情報を生成する。
【0022】
ここで、VDPジョブにおけるレコードについて説明する。VDPジョブとは上記で説明したように、例えば印刷出力物を配布するお客様一人一人に対して出力内容をカスタマイズし、一人一人に異なる内容の印刷出力物を提供するための印刷ジョブである。カスタマイズと言っても、一人一人の出力内容がまったく異なるものは想定範囲外である。
【0023】
例えば、ある衣料品店がセールを開催するので顧客にセール情報をダイレクトメールでお知らせする場合を想定する。顧客の名前や住所は一人一人ことなるが、セール開催日時や開催場所は同じである。このようにVDPジョブには、お客様毎に異なる部分(バリアブルデータと呼ぶ)と同一の部分(リユーザブルデータと呼ぶ)とに分類される。上記のダイレクトメールを官製はがきに印刷する場合、表面は顧客の名前と住所、裏面はセール開催日時や開催場所が印刷される出力物を作成したい。
【0024】
作成するVDPジョブの例として、1ページ目はAさんの名前と住所、2ページ目は開催日時や場所、3ページ目はBさんの名前と住所、4ページ目は開催日時や場所、5ページ目はCさんの名前と住所、というものを考える。この様にお客様一人一人に対するデータがつながった一つのジョブがVDPジョブである。このVDPジョブにおけるお客様一人一人に対するジョブの一部分を、ジョブを分割する1つの単位として1レコードと呼ぶ。上記のダイレクトメールでは、ジョブに含まれる複数のページのうち2ページ分が1レコードに相当する。
【0025】
VDPジョブには色々なデータフォーマットがある。プリンタ製造者固有のデータフォーマットが古くから用いられている。これは、お客様一人一人に対するデータで、リユーザブルデータを含んで、1以上のページ数の雛型データと、それに合成するバリアブルデータとで構成されている。プリンタが印刷するときは、雛型データに対して所定の位置にバリアブルデータを合成して印刷する。この場合、雛型データのページ数を検出すればレコード当たりのページ数が判定できる。最近のデータフォーマットとしてはPPMLがある。これはジョブの中にリユーザブルデータとバリアブルデータとが含まれていて、XML形式でジョブの構成を示したものである。PPMLジョブには、PPML、JOB(或いはDOCUMENT_SET)、DOCUMENT、PAGEという階層構造になっていて、これらのタグを用いてレコード判定を行うことができる。例えば、<JOB>から</JOB>までを1つのレコードと判定する。以上が、レコード判定部412のレコード判定の具体的な例であるが、上記の方法に限らず、VDPジョブのフォーマットの適した他の方法を用いて判定が行われてもかまわない。
【0026】
図5は、プリンタ103におけるVDPジョブの試し印刷ジョブの処理フローである。図ではフローのステップをSTで示し、ST01とあればステップ01のことである。尚、図5のフローにおける各処理は、制御部403に含まれるCPUが制御プログラムを実行することによって実現される。
【0027】
ST01において、制御部403は、NIC部402を介して印刷ジョブをクライアントPC102より受信する。ST02において、印刷設定処理部411は、受信した印刷ジョブが試し印刷ジョブか否かを判断する。尚、印刷ジョブに試し印刷指示が含まれている場合は、受信した印刷ジョブが試し印刷ジョブであると判断され、試し印刷指示が含まれていない場合は、受信した印刷ジョブが試し印刷ジョブではないと判断される。受信した印刷ジョブが試し印刷ジョブであると判断された場合は、ST03に移行し、受信した印刷ジョブが試し印刷ジョブではないと判断された場合は、ST14に移行する。ST14では、通常の印刷ジョブとしてジョブの実行が行われ、処理が終了となる。
【0028】
ST03において、出力ジョブ処理部406によって生成された1レコード分の画像データ及び印刷設定情報に従ってプリンタ部407及び後処理部408が、出力処理を行う。これにより、試し印刷ジョブ(VDPジョブ)に含まれる複数のレコードのうち1レコードだけが出力される。尚、ST03における処理をさらに詳細に説明すると、レコード判定部412が、試し印刷ジョブの先頭の1レコードに含まれる範囲を判定する。そして、出力画像処理部414が、判定された範囲に含まれるページの画像データ及び印刷設定情報を、印刷設定処理部411とPDL処理部413との処理結果に従って生成する。
【0029】
ST04において、制御部403は、1レコード分の処理が終了した印刷ジョブの履歴情報をメモリ部405に保存する。ここでメモリ部405は、ジョブ履歴を管理するためのジョブ履歴テーブルを保持しており、制御部403は、ジョブ履歴テーブルに、印刷ジョブの履歴情報を追加する。このとき、保存される履歴情報には、ジョブが試し印刷ジョブであることを示す属性(試し印刷属性)が含まれる。ST04にてジョブ履歴が更新されると、操作部104にて、ジョブ履歴の表示が指示された場合、今回実行された試し印刷ジョブのジョブ履歴が表示されることとなる。この際、該試し印刷ジョブの履歴情報には、試し印刷属性が含まれているため、図3(a)の304のように、ジョブが試し印刷ジョブであることを示す情報が表示される。
【0030】
ST05において、制御部403は、今回処理を行った試し印刷ジョブを出力ジョブ処理部406において保持する。このステップでは、制御部403は、通常ジョブの終了処理を行うのではなく、出力ジョブ処理部406においてジョブを保持しておき、再開の指示を待つ状態にしておく。この保持状態では、出力ジョブ処理部において2レコード目以降の処理は行われているが、後段のプリンタ部407への出力は止められている。この2レコード目以降の処理継続によって、プリンタ部407がすぐに印刷可能な画像データが生成された状態で保持されるため、後で説明する残りの印刷指示があった場合、その印刷出力時は通常の処理よりも早く処理できる。
【0031】
ST06において、制御部403は、タイマーをスタートさせる。ST07において、制御部403は、タイマーが予め定められた所定の期間動作し、終了したか否かを判定する。タイマーが終了したと判定された場合は、ST13に移行し、制御部403は、出力ジョブ処理部406に保持されている試し印刷ジョブを削除する。これにより試し印刷ジョブが所定の期間以上保持された場合、残りのレコードの印刷を待たず保持されているジョブ及びその画像データが削除される。そのため、長い期間、試し印刷ジョブを保持することで、プリンタ103のメモリが圧迫されるのを防ぐことが可能になる。一方、ST07において、タイマーが終了していないと判定された場合は、ST08に移行する。
【0032】
ST08において、制御部403は、ユーザにより操作部104を介して、出力ジョブ処理部406で保持されている試し印刷ジョブが、ジョブ履歴において選択されたか否かを判定する。試し印刷ジョブが選択されたと判定された場合は、ST09に移行し、試し印刷ジョブが選択されていないと判定された場合は、ST07に移行する。
【0033】
ST09において、制御部403は、操作部104に、出力ジョブ処理部406で保持されている試し印刷ジョブの残りの画像データを印刷するか否かの指示を受け付けるための指示画面304を表示させる。ST10において、指示画面304を介したユーザの操作に従って受け付けた指示の内容を判別する。指示画面304によりOKボタン305が押下され、試し印刷ジョブの残りの画像データを印刷する指示を受け付けたと判別された場合は、ST11に移行する。指示画面304により削除ボタン306が押下され、試し印刷ジョブの削除が指示されたと判別された場合は、ST13に移行する。指示画面304によりキャンセルボタン307が押下され、キャンセル指示されたと判別された場合は、ST07に移行する。
【0034】
ST11において、プリンタ部407、及び後処理部408は、出力ジョブ処理部406で保持されているジョブのうち、既に試し印刷として印刷されている1レコード目を除いた、2レコード目以降の画像データの出力処理を行う。ここで、保持状態の際、出力ジョブ処理部406において、2レコード目以降の処理は行われているが、後段のプリンタ部407への出力は止めている。出力ジョブ処理部406は、ST11になると、内部で継続処理していたジョブ処理の結果生成された画像データと印刷設定情報を、止めていたプリンタ部407、後処理部408への出力を再開して、出力処理を実行させる。
【0035】
ST12において、制御部403は、ST11にて出力処理されたジョブを新たにジョブ履歴に追加せず、ST04にて保存された履歴情報の試し印刷属性を削除して、処理を終了する。
【0036】
上記図5に示されるフローチャートの各処理が実行されることで、VDPジョブの試し印刷として1レコード分が印刷され、ユーザが1レコード分の出力物を確認した後に、2レコード目以降の印刷の指示を行うことが可能となる。
【0037】
尚、本実施例においては、ST11において、残りの2レコード以降の画像データを印刷しているが、ここで、1レコード目を含むVDPに含まれる全てのレコードを印刷してもかまわない。その場合、ジョブの全てを印刷するのか、残りの部分だけを印刷するのかをST09で表示される指示画面にて選択可能にしておき、該指示画面での選択に応じて、出力ジョブ処理部406にて保持するジョブの内容を変化させる構成が望ましい。
【実施例2】
【0038】
実施例1においては、VDPジョブの1レコード目の試し印刷及び残りのレコードの印刷を1ジョブのままで行う例について説明した。本実施例では、クライアントPC102から試し印刷指示がなされたジョブをコピーすることで、2つのジョブを用いて、1レコード目の試し印刷及び残りのレコードの印刷を実行する例について説明する。尚、本実施例においては、装置の構成等、実施例1と同一であるため、説明を省略し、実施例1との差異となる部分のみ説明を行う。
【0039】
図6は、本実施例におけるプリンタ103の試し印刷ジョブの処理フローを示す図である。図6のフローにおける各処理は、制御部403に含まれるCPUが制御プログラムを実行することによって実現される。図6のフローにおいて、図5のフローと同様な処理が行われる箇所については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0040】
ST21において、制御部403は、試し印刷ジョブとして判定されたVDPジョブをコピー(複製)し、コピーしたジョブの属性に試し印刷ジョブをコピーしたジョブであることを示す情報を追加する。尚。以降の説明において、クライアントPC102から受信したVDPジョブをオリジナルジョブ、ST21においてコピーされたジョブをコピージョブと呼称する。
【0041】
ST22において、出力ジョブ処理部406によってオリジナルジョブから生成された1レコード分の画像データ及び印刷設定情報に従ってプリンタ部407及び後処理部408が、出力処理を行う。そして出力処理が行われた後、制御部403は、オリジナルジョブを削除する。また、1レコード目の印刷処理の際、出力ジョブ処理部406により生成されたリユーザブルデータを、コピージョブでも使用できる形式でキャッシュする。通常、リユーザブルデータは1ジョブ内で使用された後、削除されてしまうので、後に残りの部分が印刷されるコピージョブにて使用できるよう、例えばグローバルリユーザブルデータとしてキャッシュされる。
【0042】
ST23において、制御部403は、図5におけるST04と同様、ジョブ履歴を更新し、履歴情報の追加を行う。尚、本実施例においては、履歴情報としてコピージョブとの対応を示す情報も追加される。
【0043】
ST24において、出力ジョブ処理部406によってコピージョブから生成された2レコード目以降の画像データ及び印刷設定情報に従ってプリンタ部407及び後処理部408が、出力処理を行う。ここでは、ST21にて、コピージョブの属性に追加された試し印刷ジョブをコピーしたジョブであることを示す情報に基づいて、上記の処理が行われる。また、出力ジョブ処理部406による画像データの生成においては、ST22でキャッシュされたオリジナルジョブのリユーザブルデータが使用される。
【0044】
ST25において、制御部403は、コピージョブに加えてST22でキャッシュされたオリジナルジョブのリユーザブルデータを削除する。
【0045】
以上、図5とは異なる部分を主に、図6の処理フローを説明した。図6の処理フローにおいては、2レコード目以降の処理継続による処理高速化が得られない代わりに、ジョブを2分割することによるメリットが得られる。例えば、2レコード目から最終レコード目までを印刷出力の指示が遅くなる場合、別ジョブの割込み処理を簡単に入れることができるというものである。
【0046】
また、図6の処理フローにおいて、ST25で生成したリユーザブルデータをキャッシュせず、ST31でもキャッシュしているデータを利用しない方法も考えられる。この方法は1レコード分のリユーザブルデータのキャッシュを再利用するだけでは処理速度の向上は限定的になるのに対し、再利用しない仕組みを採用するプリンタの構成が簡素化されるメリットを生む。
【0047】
尚、本実施例においては、オリジナルジョブを使用して試し印刷が行われ、コピージョブを使用して残りの画像データの印刷が行われる実施例について説明した。しかし、この方法に限らず、コピージョブを試し印刷に使用し、オリジナルジョブを残りの画像データの印刷に使用してもかまわない。
【実施例3】
【0048】
上記の実施例では、VDPジョブの試し印刷として、1レコード目が印刷される例について説明した。しかしながら、試し印刷として印刷されるレコードは1レコード目に限らず他のレコードであってもよい。本実施例では、試し印刷で1レコード目以外のレコードを出力する方法を説明する。
【0049】
VDPには繰り返し印刷されるリユーザブルデータがある。このリユーザブルデータがどのように印刷されるかを試し印刷で確認したいという要望がユーザにはある。例えば、リユーザブルデータと画像処理設定や印刷用紙タイプ設定との組合せが、ユーザの意図した通りに出力されているかのチェックである。この場合、PPMLジョブに使われている全てのリユーザブルデータを一通り出力したい。
【0050】
プリンタ(103)の印刷ジョブに含まれるPDLデータを処理するPDL処理部(413)は、VDPジョブの中に含まれるリユーザブルデータを特定する。例えば、実施例1で説明した雛型データとバリアブルデータとから構成されるVDPデータの場合は、リユーザブルデータは雛型データから特定することが出来る。或いはPPMLデータの場合は、XMLタグである<REUSABLE_OBJECT>タグを用いて特定することが出来る。このようにしてPDL処理部はリユーザブルデータを特定する。
【0051】
リユーザブルデータを特定したなら、出力ジョブ処理部406は、ジョブの先頭から処理しながら一通りリユーザブルデータが出力されるように、レコード判定部412からレコード単位での印刷を行う。具体的には、あるVDPジョブにA、B、Cの3つのリユーザブルデータがあり、1レコード目にはAのみ、2レコード目にはA、B、3レコード目にはA、C、4レコード目にはA、B、・・というようになっていたとする。この場合、ジョブの先頭から処理し、1レコード目でリユーザブルデータAが、2レコードまででリユーザブルデータA、Bが、3レコードまででリユーザブルデータA、B、Cが印刷される。よって、試し印刷は3レコードまで出力する。或いは、1レコード目は印刷せず、2と3レコード目だけを印刷しても全てのリユーザブルデータA、B、Cが出力できる。このように最小のレコード数となるような組合せで印刷してもよい。この場合、省いたレコードは、残りのレコードを印刷する時に印刷される。もし、レコード順にジョブを出力する必要があるなら、出力物のマージ作業が発生するので、後工程で手間がかかる。この場合、途中を省かずにジョブの先頭から印刷する方が良い。
【0052】
どのような設定にするかのユーザの意図は、図2に示すドライバの設定画面によって設定される。例えば、試し印刷の詳細設定として、「1レコード目のみ印刷」、「全てのリユーザブルデータが使用されるまで1レコード目から順番に印刷」、「全てのリユーザブルデータが使用される最小レコード数のレコードを印刷」が選択可能であることが望ましい。また、ユーザが試し印刷に使用される任意のレコードを指定できる構成であってもかまわない。
【0053】
また、VDPジョブにはメタデータを用いて印刷設定を切り替える方法がある。例えば、重要顧客向けのレコードはコストが高いコート紙タイプに印刷し、一般顧客向けのレコードはより安価な普通紙タイプに印刷するというものである。この用紙タイプが異なると、同じ印刷データでも印刷出力が異なるのは一般に知られた事実である。そこで、試し印刷の最初の出力で、全ての用紙タイプを一通り出力する組合せを印刷する方法がある。
【0054】
この場合、上記の実施例3で全てのリユーザブルデータを一通り出力する方法を説明したように、PDL処理部413がメタデータの組合せを一通り、或いは全ての組合せを調べて、出力することで実現できる。
【0055】
また、どのような組合せで出力するかのユーザの意図は、上記同様にドライバの設定画面によって設定される。この場合、試し印刷の詳細設定として、さらに「全ての用紙タイプ毎に1レコードずつ印刷」が選択可能であることが望ましい。
【0056】
以上、試し印刷をするレコードがクライアントPC102のドライバ画面で設定された条件に従って決定されることで、ユーザにとってより有効な試し印刷の出力結果を提供することが可能となる。
【0057】
以上、本発明の実施例について具体例を挙げて説明したが、本発明は上記の実施例に限定されるものではない。また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。この場合、そのプログラム、及び該プログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【符号の説明】
【0058】
102 クライアントPC
103 プリンタ
104 操作部
403 制御部
406 出力ジョブ制御部
407 プリンタ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレコードを含むVDPジョブを処理する画像形成装置であって、
情報処理装置より受信したVDPジョブが、試し印刷が指示された試し印刷ジョブであるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により試し印刷ジョブであると判定されたVDPジョブに含まれる複数のレコードのうち一部のレコードを試し印刷する試し印刷手段と、
前記試し印刷による一部のレコードの印刷が行われた後に、前記VDPジョブに含まれ、前記試し印刷により印刷されていないレコードの印刷指示を受け付ける受付手段と、
前記受付手段により受け付けた印刷指示に応じて、前記VDPジョブに含まれ、前記試し印刷により印刷されていないレコードを印刷する印刷手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記試し印刷による一部のレコードの印刷が行われた後に、前記VDPジョブに含まれ、前記試し印刷により印刷されていないレコードを前記印刷手段が印刷可能な画像データが生成された状態で保持する保持手段をさらに有し、
前記印刷手段は、前記受付手段により受け付けた印刷指示に応じて、前記保持手段に保持されている前記VDPジョブに含まれ、前記試し印刷により印刷されていないレコードの画像データを印刷することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記保持手段により所定の期間以上、前記VDPジョブに含まれ、前記試し印刷により印刷されていないレコードの画像データが保持された場合に、該画像データを削除する削除手段を有することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
印刷されたジョブの履歴情報を保存する保存手段と、
前記保存手段に保存されている履歴情報に基づいてジョブ履歴のリストを表示手段に表示する表示制御手段とを有し、
前記表示制御手段は、前記ジョブ履歴のリストにおいて、前記試し印刷手段により試し印刷されたジョブと通常のジョブとを識別可能な状態で表示することを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記表示制御手段は、前記ジョブ履歴のリストにおいて、選択されたジョブが、前記試し印刷手段により試し印刷されたジョブであった場合に、前記試し印刷により印刷されていないレコードの印刷指示を促す指示画面を表示手段に表示し、
前記受付手段は、前記指示画面を介して印刷指示を受け付けることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記保存手段は、前記印刷手段による、前記VDPジョブに含まれ前記試し印刷により印刷されていないレコードの印刷に関しては履歴情報を保存しないことを特徴とする請求項4または5いずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記VDPジョブに含まれる複数のレコードのうち、どのレコードを試し印刷の際に印刷するかを決定する決定手段を有することを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記決定手段は、前記VDPジョブに含まれる複数のレコードのうち、1レコード目を試し印刷の際に印刷するレコードとして決定することを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記決定手段は、前記VDPジョブに含まれる複数のレコードのうち、1レコード目から前記VDPジョブに含まれる全てのリユーザブルデータが使用されるレコードまでの、複数のレコードを試し印刷の際に印刷するレコードとして決定することを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記決定手段は、前記VDPジョブに含まれる複数のレコードのうち、前記VDPジョブに含まれる全てのリユーザブルデータが使用される最小レコード数のレコードを試し印刷の際に印刷するレコードとして決定することを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項11】
情報処理装置より受信した印刷ジョブが、試し印刷が指示された試し印刷ジョブであるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により試し印刷ジョブであると判定された場合に、前記印刷ジョブをコピーし、コピージョブを生成するコピー手段と、
前記印刷ジョブまたは前記コピージョブのいずれかに含まれる画像データうち一部の画像データを試し印刷する試し印刷手段と、
前記試し印刷の行われたジョブを削除する削除手段と、
前記試し印刷による一部の画像データの印刷が行われた後に、前記印刷ジョブまたは前記コピージョブのうち前記削除手段により削除されなかったジョブに含まれる、前記試し印刷により印刷されていない画像データの印刷指示を受け付ける受付手段と、
前記受付手段により受け付けた印刷指示に応じて、前記印刷ジョブまたは前記コピージョブのうち前記削除手段により削除されなかったジョブに含まれ、前記試し印刷により印刷されていない画像データを印刷する印刷手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
前記印刷ジョブは複数のレコードを含むVDPジョブであり、
前記試し印刷手段により使用された前記VDPジョブに含まれるリユーザブルデータを、前記印刷ジョブまたは前記コピージョブのうち前記削除手段により削除されなかったジョブでも使用できるようにキャッシュするキャッシュ手段を有し、
前記印刷手段は、前記キャッシュ手段によりキャッシュされた前記リユーザブルデータを使用して印刷することを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記キャッシュ手段は、前記試し印刷手段により使用された前記VDPジョブに含まれるリユーザブルデータをグローバルリユーザブルデータとしてキャッシュすることを特徴とする請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
複数のレコードを含むVDPジョブを処理する画像形成装置の制御方法であって、
情報処理装置より受信したVDPジョブが、試し印刷が指示された試し印刷ジョブであるか否かを判定する判定工程と、
前記判定工程で試し印刷ジョブであると判定されたVDPジョブに含まれる複数のレコードのうち一部のレコードを試し印刷する試し印刷工程と、
前記試し印刷による一部のレコードの印刷が行われた後に、前記VDPジョブに含まれ、前記試し印刷により印刷されていないレコードの印刷指示を受け付ける受付工程と、
前記受付工程で受け付けた印刷指示に応じて、前記VDPジョブに含まれ、前記試し印刷により印刷されていないレコードを印刷する印刷工程とを有することを特徴とする画像形成装置の制御方法。
【請求項15】
情報処理装置より受信した印刷ジョブが、試し印刷が指示された試し印刷ジョブであるか否かを判定する判定工程と、
前記判定工程で試し印刷ジョブであると判定された場合に、前記印刷ジョブをコピーし、コピージョブを生成するコピー工程と、
前記印刷ジョブまたは前記コピージョブのいずれかに含まれる画像データうち一部の画像データを試し印刷する試し印刷工程と、
前記試し印刷の行われたジョブを削除する削除工程と、
前記試し印刷による一部の画像データの印刷が行われた後に、前記印刷ジョブまたは前記コピージョブのうち前記削除工程において削除されなかったジョブに含まれる、前記試し印刷により印刷されていない画像データの印刷指示を受け付ける受付工程と、
前記受付工程で受け付けた印刷指示に応じて、前記印刷ジョブまたは前記コピージョブのうち前記削除工程において削除されなかったジョブに含まれ、前記試し印刷により印刷されていない画像データを印刷する印刷工程とを有することを特徴とする画像形成装置の制御方法。
【請求項16】
請求項14または15いずれかに記載の画像形成装置の制御方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−153058(P2012−153058A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15400(P2011−15400)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】