説明

画像形成装置およびノズルメンテナンス方法

【課題】不良ノズルの不良の程度に合わせた適切な回復動作を実施することができる画像形成装置およびノズルメンテナンス方法を提供する。
【解決手段】第1ノズル駆動手段103が、不良ノズルに対して最大N個の駆動波形を印加し、第1判定手段104が、第1ノズル駆動手段103が印加する駆動波形に応じて不良ノズルからインク滴が吐出されたか否かを判定する。そして、第1判定手段104が不良ノズルからインク滴が吐出されたと判定するまでの間に第1ノズル駆動手段103から不良ノズルに対して印加された駆動波形の個数をカウント手段105がカウントし、回復動作制御手段106が、カウント手段105がカウントした駆動波形の個数に基づいて、不良ノズルに対して実施する回復動作を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから吐出された液滴を記録媒体に付着させて画像を形成する画像形成装置および該画像形成装置において実行されるノズルメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の一つであるインクジェットプリンタは、複数のノズルが配列された印字ヘッドを備え、この印字ヘッドに設けられたノズルから吐出されたインク滴(液滴)を記録媒体に付着させることにより画像を形成する。このようなインクジェットプリンタでは、インクの乾燥や粘度増加、ヘッド室内への気泡の混入、塵や紙粉のノズル面への付着などの原因によって、インク滴を正常に吐出できない不良ノズルが生じる場合がある。不良ノズルには、吐出開始持に一時的にインクを吐出できない状態となるノズル(以下、このようなノズルを「吐出不良ノズル」という。)や、ノズルが目詰まりしてインクを吐出できないノズル(以下、このようなノズルを「欠損ノズル」という。)がある。
【0003】
吐出不良ノズルや欠損ノズルなどの不良ノズルが生じた場合、そのままの状態で画像形成を継続すると画像品位が著しく低下する。そのため、不良ノズルが発生しているかどうかを検査し、不良ノズルが発生している場合には、その不良ノズルを正常な状態に回復させる回復動作を実施することが求められる。
【0004】
不良ノズルを検査するための技術としては、例えば特許文献1に記載されているように、ノズルからインク滴を吐出させときに、実際にそのノズルからインク滴が吐出されたかどうかを光学的に検知することで、当該ノズルが不良ノズルであるか否かを判定する技術が知られている。具体的には、ノズルから吐出されたインク滴の進路と交差する光を発光する発光素子と、ノズルから吐出されたインク滴に光が照射されることで生じる散乱光を受光して受光量に応じた検知信号を出力する受光素子とを設け、検査対象のノズルからインク滴を吐出させたときに受光素子から出力された検知信号が閾値を超えるか否かにより、検査対象のノズルが不良ノズルかどうかを判定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ノズルの状態を検査する上記の従来技術では、検査対象のノズルが不良ノズルかどうかは判定できるものの、不良の程度までは判定できない。つまり、上記の従来技術では、インク滴を正常に吐出できない不良ノズルを検知できても、その不良ノズルが吐出不良ノズルであるのか欠損ノズルであるのか、また、吐出不良ノズルである場合にはどの程度の吐出不良が生じているのかを判定できない。
【0006】
そのため、インク滴が吐出できない不良ノズルに対して回復動作を行う際は、不良の程度に関わらず一律に回復動作を実施することになり、過剰な回復動作を実施してしまう不都合があった。例えば、不良ノズルからインク滴を空吐出させて正常な状態に回復させる回復動作を行う場合、必要以上に多くのインク滴を空吐出させて無駄にインクを消費してしまうという問題が生じる。また、インク滴の空吐出により正常な状態に回復できる吐出不良ノズルに対して、インクの吸引といった過度な回復動作を実施し、使用可能なインクを無駄に廃棄してしまうという問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、不良ノズルの不良の程度に合わせた適切な回復動作を実施することができる画像形成装置およびノズルメンテナンス方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る画像形成装置は、記録媒体に液滴を付着させて画像を形成する画像形成装置であって、駆動波形が印加されることにより液滴を吐出するノズルと、前記ノズルに対して最大N個(Nは予め定められた自然数)の前記駆動波形を印加する第1ノズル駆動手段と、前記第1ノズル駆動手段が印加する前記駆動波形に応じて前記ノズルから液滴が吐出されたか否かを判定する第1判定手段と、前記第1判定手段が前記ノズルから液滴が吐出されたと判定するまでの間に、前記第1ノズル駆動手段から前記ノズルに対して印加された前記駆動波形の個数をカウントするカウント手段と、前記カウント手段がカウントした前記駆動波形の個数に基づいて、前記ノズルに対して実施する回復動作を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るノズルメンテナンス方法は、駆動波形が印加されることにより液滴を吐出するノズルを備え、該ノズルから吐出された液滴を記録媒体に付着させて画像を形成する画像形成装置において実行されるノズルメンテナンス方法であって、前記ノズルに対して最大N個(Nは予め定められた自然数)の前記駆動波形を印加するステップと、前記駆動波形に応じて前記ノズルから液滴が吐出されたか否かを判定するステップと、前記ノズルから液滴が吐出されたと判定するまでの間に前記ノズルに対して印加された前記駆動波形の個数をカウントするステップと、カウントした前記駆動波形の個数に基づいて、前記ノズルに対して実施する回復動作を制御するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ノズルに印加した駆動波形の個数に基づいて、ノズルに対して実施する回復動作を制御するようにしているので、不良ノズルの不良の程度に合わせた適切な回復動作を実施することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本実施形態に係る画像形成装置の側面図である。
【図2】図2は、本実施形態に係る画像形成装置の上面図である。
【図3】図3は、搬送ベルトの一部を拡大して示す平面図である。
【図4】図4は、ヘッドアレイを図1中の矢印Aで示す方向からみた正面図である。
【図5】図5は、ヘッドアレイを図1中の矢印Bで示す方向から見た底面図である。
【図6】図6は、ヘッドアレイに設けられた発光ユニットと受光ユニットの配置を説明する図である。
【図7】図7は、発光ユニットが発生する検出光の幅と、印字ヘッドに設けられたノズル列との関係を説明する図である。
【図8】図8は、印字ヘッドをキャッピングするキャッピングユニットの概略構成を示す図である。
【図9】図9は、本実施形態に係る画像形成装置のノズルメンテナンス動作を実施するための制御系の構成を示すブロック図である。
【図10】図10は、不良ノズル検知処理の概要を説明する説明図である。
【図11】図11は、不良ノズルを判定する方法を説明する説明図である。
【図12】図12は、制御装置により実行される不良ノズル検知処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図13】図13は、不良程度判定処理の概要を説明する説明図である。
【図14】図14は、不良程度を判定する方法を説明する説明図である。
【図15】図15は、制御装置により実行される不良程度判定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図16】図16は、吐出不良ノズルからインク滴を空吐出させる回復動作の手順を示すフローチャートである。
【図17】図17は、カウント手段によるカウント値と空吐出させるインク滴の吐出量との関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る画像形成装置およびノズルメンテナンス方法の最良な実施の形態を詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態は、ライン型インクジェットプリンタに本発明を適用した例であるが、本発明は、キャリッジを走査させて画像形成を行うシリアル型インクジェットプリンタに対しても有効に適用可能である。さらに、本発明は、インクジェットプリンタに限らず、記録媒体に液滴を付着させて画像を形成する画像形成装置に対して広く適用可能である。
【0013】
ここで「記録媒体」とは、特に材質を限定されるものではなく、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど、様々な材質のものが該当する。また、「画像を形成する」とは、これらの記録媒体に液滴を付着させて、文字や図形などの意味を持つ画像や、パターンなどの意味を持たない画像を形成することを意味し、捺染や金属配線の形成も画像の形成に該当する。また、「液滴」とは、記録媒体に付着させて画像の形成を行うことができる液体の滴であればよく、特に材料を限定されるものではない。
【0014】
図1および図2は、本実施形態に係る画像形成装置の機械的な構成を模式的に示す図であり、図1は画像形成装置の側面図、図2は画像形成装置の上面図である。
【0015】
本実施形態に係る画像形成装置は、図1および図2に示すように、記録媒体Pの幅方向(主走査方向)に対して十分な長さを有する4つのヘッドアレイ10a〜10dを、記録媒体Pの搬送方向(副走査方向)に沿って順次配列したライン型インクジェットプリンタとして構成されている。4つのヘッドアレイ10a〜10dは、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色に対応している。画像形成装置は、搬送される記録媒体Pに対して各ヘッドアレイ10a〜10dから対応する色のインク滴を順次吐出することで、記録媒体Pにフルカラーの画像を形成することが可能である。
【0016】
記録媒体Pは、搬送ベルト20によって搬送される。搬送ベルト20は、ローラ21,22によって懸架された無端状のベルトである。搬送ベルト20は、ローラ21,22の少なくとも一方が図示しない駆動装置により回転駆動されることによって、記録媒体Pを搬送する。搬送ベルト20には、図3に示すように、多数の貫通孔が設けられている。また、搬送ベルト20のヘッドアレイ10a〜10dと対向する周面の直下には、図示しない吸引ファンが設けられている。搬送ベルト20上の記録媒体Pは、吸引ファンの作動により生じる負圧によって搬送ベルト20上に吸引され、搬送される。
【0017】
図4および図5は、ヘッドアレイ10a〜10d(ヘッドアレイ10a〜10dはインクの色が異なるのみで共通の構成を有しているため、以下、ヘッドアレイ10と総称する。)を拡大して示す図であり、図4はヘッドアレイ10を図1中の矢印Aで示す方向からみた正面図、図5はヘッドアレイ10を図1中の矢印Bで示す方向から見た底面図である。
【0018】
ヘッドアレイ10には、搬送ベルト20と対向する底面側に、複数の印字ヘッド11が設けられている。複数の印字ヘッド11は、図5に示すように、記録媒体Pの幅方向(主走査方向)に沿って2列のヘッド列を形成する。そして、一方のヘッド列における印字ヘッド11の端部間の隙間と他方のヘッド列における印字ヘッド11の端部間の隙間が、記録媒体Pの搬送方向(副走査方向)において重ならないように、複数の印字ヘッド11は千鳥状に配置されている。
【0019】
印字ヘッド11には、記録媒体Pの紙面に向かってインク滴を吐出する多数のノズルが設けられている。これらのノズルは、例えば、奇数画素に対応したODDノズルのノズル列12aと、偶数画素に対応したEVENノズルのノズル列12bの2列のノズル列として、印字ヘッド11のノズル面(搬送ベルト20により搬送される記録媒体Pの紙面と対向する面)に形成されている。
【0020】
印字ヘッド11には、各ノズルごとに、例えばピエゾ素子などを用いたノズル駆動部が設けられている。ノズル駆動部として用いるピエゾ素子は、その両端の電極間に所定時間幅の電圧が印加されると伸張する。このピエゾ素子の伸張によりノズル内のインク貯留部の体積が収縮し、ノズルからインク滴が吐出される。以下、ノズルからインク滴を吐出させるために印加する所定時間幅の電圧を「駆動波形」という。本実施形態の場合、ノズルが正常な状態であれば、1個の駆動波形を印加するごとに、ノズルから1滴のインク滴が吐出される。
【0021】
ヘッドアレイ10は、図示しないヘッド移動機構により、画像形成位置と待機位置との間で移動可能とされている。画像形成位置とは、図4に示すように、印字ヘッド11のノズル面が搬送ベルト20の表面から1mm程度のギャップGを介して対向する位置である。一方、待機位置とは、後述するキャッピングユニットが設けられている位置である。
【0022】
ヘッドアレイ10は、画像形成動作を行わない待機状態のときは待機位置にて待機する。そして、ヘッドアレイ10は、画像形成動作を行うときにヘッド移動機構の駆動により画像形成位置に移動して、画像形成位置に固定される。ヘッドアレイ10が画像形成位置に固定された状態で、搬送ベルト20により搬送される記録媒体Pの紙面に向かって印字ヘッド11のノズルからインク滴が吐出される。このノズルから吐出されたインク滴が記録媒体Pに付着することで、記録媒体Pに画像が形成される。また、ヘッドアレイ10は、画像形成動作が終了すると、ヘッド移動機構の駆動により待機位置へと移動し、待機位置にて次の印字動作が行われるまで待機する。
【0023】
印字ヘッド11に設けられた多数のノズルの中には、ノズル内のインクの乾燥や粘度増加、ヘッド室内への気泡の混入、塵や紙粉のノズル面への付着などの原因によって、吐出開始持に一時的にインクを吐出できない状態となる吐出不良ノズルや、ノズルが目詰まりしてインクを吐出できない欠損ノズルなどの不良ノズルが生じる場合がある。そして、不良ノズルが生じた状態で画像形成動作を行うと、記録媒体Pに形成される画像品位が著しく低下する。そこで、本実施形態に係る画像形成装置は、ヘッドアレイ10が待機位置にて待機しているときに、ノズルメンテナンス動作を実施する。ノズルメンテナンス動作は、吐出不良ノズルや欠損ノズルなどの不良ノズルを判定する不良ノズル判定動作と、回復動作とを含む。
【0024】
不良ノズル判定動作は、ヘッドアレイ10が待機位置で待機している状態で、印字ヘッド11のノズルからインク滴を吐出させ、実際にそのノズルからインク滴が吐出されたかどうかを光学的に検知して、不良ノズルを判定する動作である。本実施形態では、この不良ノズル判定動作として、不良ノズル検知処理と、不良程度判定処理とを実施する。不良程度判定処理は、不良ノズル検知処理により検知された不良ノズルが、吐出不良ノズルであるか欠損ノズルであるかを判定するとともに、不良ノズルが吐出不良ノズルである場合、どの程度の吐出不良なのかを判定する処理である。なお、不良ノズル判定動作の詳細については後述する。
【0025】
回復動作は、不良ノズルを正常な状態に回復させる動作である。本実施形態では、この回復動作として、吐出不良ノズルからインク滴を空吐出させて吐出不良ノズルを正常な状態に回復させる動作と、欠損ノズル内のインクを吸引して欠損ノズルを正常な状態に回復させる動作とを実施する。そして、特に、吐出不良ノズルからインク滴を空吐出させる際に、不良程度判定処理により判定された吐出不良の程度に応じて、空吐出させるインク滴の量を変化させ、無駄なインクの消費を抑制するようにしている。なお、回復動作の詳細については後述する。
【0026】
ヘッドアレイ10には、上述した不良ノズル判定動作の際に、検査対象のノズルからインク滴が吐出されたかどうかを光学的に検知するための吐出検知機構が設けられている。吐出検知機構は、ヘッドアレイ10の長手方向の両端部に設けられた発光ユニット30および受光ユニット40を備える。発光ユニット30は、図6に示すように、印字ヘッド11のノズルから吐出されるインク滴の進路と交差する検出光L(例えばレーザ光)を発光するユニットである。受光ユニット40は、発光ユニット30から発光された検出光Lがインク滴に照射されることで生じる散乱光を受光して、受光量に応じた検知信号を出力するユニットである。これら発光ユニット30と受光ユニット40は、ヘッドアレイ10に設けられた2列のヘッド列のそれぞれに対して、1組ずつ設けられている。
【0027】
発光ユニット30から発光される検出光Lの幅Wは、図7に示すように、印字ヘッド11に設けられたODDノズルのノズル列12aとEVENノズルのノズル列12bとの間の距離よりも十分に大きい。したがって、ODDノズルのノズル列12aからインク滴が吐出された場合でも、EVENノズルのノズル列12bからインク滴が吐出された場合でも、検出光Lの光路を変化させることなく、吐出されたインク滴に対して検出光Lを照射することが可能である。
【0028】
本実施形態に係る画像形成装置では、上述したように、ヘッドアレイ10の待機位置にキャッピングユニット50が設けられている。図8は、キャッピングユニット50の概略構成を示す図である。キャッピングユニット50には、ヘッドアレイ10の印字ヘッド11をキャッピングするキャップ51と、印字ヘッド11のノズル面をワイピングしてノズルをクリーニングするワイパ52とが設けられている。ワイパ52は、印字ヘッド11のノズル面を傷つけないように、ゴムなどの弾力性部材で構成されている。また、キャッピングユニット50には、吸引ポンプ60および廃液タンク70が接続されている。
【0029】
ヘッドアレイ10は、ヘッド移動機構の駆動により、待機位置において上下方向、水平方向の移動が可能とされている。不良ノズル判定動作を行う場合、ヘッドアレイ10は、図8(a)に示すように、印字ヘッド11のノズル面がキャッピングユニット50のキャップ51と対向するように、キャッピングユニット50の上部に位置決めされる。そして、印字ヘッド11のノズルからキャッピングユニット50のキャップ51に向けて、インク滴の吐出が行われる。キャップ51に向けて吐出されたインク滴は、吸引ポンプ60により吸引され、廃液タンク70に排出される。
【0030】
また、回復動作として吐出不良ノズルからインク滴を空吐出する場合も同様に、ヘッドアレイ10は、図8(a)に示す位置に位置決めされる。そして、吐出不良ノズルからキャッピングユニット50のキャップ51に向けてインク滴の空吐出が行われる。空吐出されたインク滴は、吸引ポンプ60により吸引され、廃液タンク70に排出される。
【0031】
回復動作として欠損ノズル内のインクを吸引する場合は、ヘッドアレイ10は、図8(b)に示すように、印字ヘッド11のノズル面がキャッピングユニット50のキャップ51と接する位置に位置決めされる。そして、吸引ポンプ60の作動により、欠損ノズル内の増粘インクや気泡などの吸引を行う。欠損ノズル内から吸引されたインクは、廃液タンク70に排出される。
【0032】
また、欠損ノズル内のインクを吸引する動作が終了すると、印字ヘッド11のノズル面のワイピングが行われる。この際、ヘッドアレイ10は、ヘッド移動機構の駆動により、印字ヘッド11のノズル面がキャッピングユニット50のワイパ52に接する位置まで移動する。そして、ワイパ52がノズル面に接した状態でヘッドアレイ10が水平移動することで、ノズル面のワイピングが行われる。なお、ノズル面のワイピングは、吐出不良ノズルからインク滴を空吐出させた後も同様に実施するようにしてもよい。
【0033】
次に、本実施形態に係る画像形成装置において実行されるノズルメンテナンス動作について、さらに詳しく説明する。図9は、本実施形態に係る画像形成装置のノズルメンテナンス動作を実施するための制御系の構成を示すブロック図である。
【0034】
本実施形態に係る画像形成装置は、図9に示すように、ノズルメンテナンス動作を制御する制御装置100を備える。制御装置100には、印字ヘッド11、発光ユニット30、および、受光ユニット40が接続されている。また、制御装置100には、記憶装置110が接続されている。
【0035】
制御装置100は、例えば、CPUやROM、RAM、入出力インターフェース回路などを備えた、一般的なコンピュータとして構成される。この制御装置100は、例えば、CPUがRAMをワークエリアとして利用して、ROMに格納された所定の制御プログラムを実行することによって、図9に示すように、第2ノズル駆動手段101、第2判定手段102、第1ノズル駆動手段103、第1判定手段104、カウント手段105、および、回復動作制御手段106の各制御機能を実現する。
【0036】
第2ノズル駆動手段101および第2判定手段102は、上述した不良ノズル判定動作のうち、不良ノズル検知処理を実施するための機能構成である。
【0037】
第2ノズル駆動手段101は、印字ヘッド11の各ノズルに対して、1個の駆動波形を印加する。
【0038】
第2判定手段102は、第2ノズル駆動手段101が印加する駆動波形に応じてノズルからインク滴が吐出されたか否かを判定する。具体的には、第2判定手段102は、第2ノズル駆動手段101がノズルに駆動波形を印加する際に発光ユニット30から検出光Lを発光させるとともに、受光ユニット40から出力される検知信号を監視する。そして、第2判定手段102は、受光ユニット40から出力される検知信号のレベルが、予め定めた閾値以上であれば、第2ノズル駆動手段101が駆動波形を印加したノズルからインク滴が吐出されたと判定する。一方、受光ユニット40から出力された検知信号のレベルが閾値未満であれば、第2ノズル駆動手段101が駆動波形を印加したノズルからインク滴が吐出されないと判定する。そして、第2判定手段102は、第2ノズル駆動手段101が駆動波形を印加してもインク滴が吐出されないノズルを不良ノズルと判定し、不良ノズルの識別情報(例えば、ノズルに対して予め与えられたノズル番号など)を記憶装置110に記憶させる。
【0039】
第1ノズル駆動手段103、第1判定手段104、および、カウント手段105は、上述した不良ノズル判定動作のうち、不良程度判定処理を実施するための機能構成である。
【0040】
第1ノズル駆動手段104は、第2判定手段102により不良ノズルと判定されたノズルに対して、最大N個(Nは予め定められた任意の自然数)の駆動波形を連続して印加する。具体的には、第1ノズル駆動手段104は、記憶装置110を参照することで、第2判定手段102により不良ノズルと判定されたノズルを特定する。そして、第1ノズル駆動手段103は、不良ノズルに対して、N個を上限として駆動波形を連続して印加する。このとき、第1ノズル駆動手段103は、不良ノズルに印加する駆動波形の数がN個に達する前に不良ノズルからインク滴が吐出されたか否かに関わらずN個の駆動波形を連続して印加するようにしてもよいが、不良ノズルからインク滴が吐出された時点で駆動波形の印加を停止するようにしてもよい。不良ノズルからインク滴が吐出された時点で駆動波形の印加を停止すれば、無駄なインク滴な吐出を抑制できるとともに、処理の高速化を図ることができる。
【0041】
第1判定手段104は、第1ノズル駆動手段103が印加する駆動波形に応じて不良ノズルからインク滴が吐出されたか否かを判定する。具体的には、第1判定手段104は、第1ノズル駆動手段104が不良ノズルに駆動波形を印加する際に発光ユニット30から検出光Lを発光させるとともに、受光ユニット40から出力される検知信号を監視する。そして、第1判定手段104は、受光ユニット40から予め定めた閾値以上のレベルの検知信号が出力されれば、第1ノズル駆動手段103が駆動波形を印加した不良ノズルからインク滴が吐出されたと判定する。一方、第1ノズル駆動手段103が不良ノズルに対してN個の駆動信号を連続して印加しても受光ユニット40から閾値以上のレベルの検知信号が出力されなければ、第1ノズル駆動手段103が駆動波形を印加した不良ノズルからインク滴が吐出されないと判定する。そして、第1判定手段104は、第1ノズル駆動手段103がN個の駆動波形を連続して印加してもインク滴が吐出されない不良ノズルを欠損ノズルと判定する。
【0042】
カウント手段105は、第1判定手段104によりインク滴が吐出されたと判定された不良ノズル(つまり、吐出不良ノズル)それぞれについて、第1判定手段104が不良ノズルからインク滴が吐出されたと判定するまでの間に、第1ノズル駆動手段103から不良ノズルに対して印加された駆動波形の数をカウントする。そして、カウント手段105は、カウントした値(カウント値)を、吐出不良ノズルの識別情報に対応付けて、記憶装置110に記憶させる。
【0043】
なお、上記の説明では、不良ノズルの識別情報、吐出不良ノズルの識別情報およびカウント値を制御装置100外部の記憶装置110に記憶させるようにしているが、これらの情報の全部または一部を、制御装置100内部のメモリ(例えばRAMやCPU内部のレジスタなど)に記憶させるようにしてもよい。
【0044】
回復動作制御手段106は、不良ノズル判定動作の結果に応じて最適な回復動作を実施するための機能構成である。
【0045】
回復動作制御手段106は、第1ノズル駆動手段103がN個の駆動波形を印加してもインク滴が吐出されなかった欠損ノズルが検知された場合、当該欠損ノズルからインクを吸引する回復動作を実施する。なお、欠損ノズルからインクを吸引する回復動作を、図8に示したキャッピングユニット50およびキャッピングユニット50に接続された吸引ポンプ60を用いて行う場合、インクの吸引は欠損ノズルに対してだけでなく、欠損ノズルのある印字ヘッド11全体に対して行われることになる。したがって、不良ノズル判定動作の不良程度判定処理中に欠損ノズルが検知されたら、その段階で不良ノズル判定動作を終了し、欠損ノズルのある印字ヘッド11に対してインクを吸引する回復動作を行えばよい。また、印字ヘッド11に設けられた多数のノズルのうち、特定のノズルに対してのみインクの吸引を行えるようにした場合は、不良程度判定処理により欠損ノズルと判定されたノズルに対してのみ、当該欠損ノズルからインクを吸引する回復動作を実施することもできる。
【0046】
また、回復動作制御手段106は、第1ノズル駆動手段103による駆動波形の印加に応じてインク滴が吐出された吐出不良ノズルに対しては、当該吐出不良ノズルからインク滴を空吐出させる回復動作を実施する。このとき、回復動作制御手段106は、吐出不良ノズルから空吐出させるインク滴の吐出量を、吐出不良の程度に応じて変化させる。具体的には、回復動作制御手段106は、記憶装置110を参照することで、第1判定手段104により吐出不良ノズルと判定されたノズルを特定するとともに、各吐出不良ノズルに対してカウント手段105がカウントしたカウント値、つまり、インク滴が吐出されるまでの間に印加された駆動波形の個数を特定する。そして、回復動作制御手段106は、カウント手段105がカウントしたカウント値が大きい吐出不良ノズルほど、空吐出させるインク滴の吐出量が大きくなるように、各吐出不良ノズルから空吐出させるインク滴の吐出量を決定する。例えば、基準となる吐出量をV、カウント手段105がカウントしたカウント値をM(M≦N)としたときに、各吐出不良ノズルから空吐出させるインク滴の吐出量をV×Mにより決定する。
【0047】
次に、本実施形態に係る画像形成装置において実施されるノズルメンテナンス動作について、具体例を挙げながらさらに詳細に説明する。
【0048】
まず、不良ノズル判定動作の不良ノズル検知処理について説明する。図10は、不良ノズル検知処理の概要を説明する説明図、図11は、不良ノズルを判定する方法を説明する説明図である。
【0049】
不良ノズル検知処理では、印字ヘッド11に設けられた各ノズルに対して第2ノズル駆動手段101が1個の駆動波形を順次印加し、図10に示すように、n番ノズルから順に、インク滴を1滴ずつ吐出させる。このとき、正常なノズルからはインク滴が吐出されるが、不良ノズルからはインク滴が吐出されない。ノズルから吐出されたインク滴は、発光ユニット30が発光する検出光Lを通過する。このため、インク滴が吐出されていれば検出光Lがインク滴に照射されることで散乱光が生じ、この散乱光が受光ユニット40により受光されることで、受光ユニット40から閾値以上のレベルの検知信号が出力される。
【0050】
例えば、図10に例示するように、n+1番ノズルが不良ノズルであり、第2ノズル駆動手段101が駆動波形を印加したにも関わらずインク滴が吐出されない場合は、図11に示すように、第2ノズル駆動手段101がn+1番ノズルに駆動波形を印加してからn+2番ノズルに駆動波形を印加するまでの間に、受光ユニット40から出力される検知信号のレベルが閾値以上になることがない。したがって、第2判定手段102は、受光ユニット40から出力される検知信号を監視し、第2ノズル駆動手段101がn+1番ノズルに駆動波形を印加してからn+2番ノズルに駆動波形を印加するまでの間に検知信号のレベルが閾値以上にならない場合に、n+1番ノズルを、第2ノズル駆動手段101が駆動波形を印加してもインク滴が吐出されない不良ノズルと判定することができる。なお、ノズルに対して印加される駆動波形は、実際は複数パルスの組み合わせによる複雑な形状となるが、図11においては、ノズルに対して印加される駆動波形を単純な矩形波として簡略化して図示している。
【0051】
図12は、制御装置100により実行される不良ノズル検知処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。本実施形態に係る画像形成装置では、ノズルメンテナンス動作を行う場合、最初に制御装置100によって図12に示す不良ノズル検知処理が実行される。
【0052】
不良ノズル検知処理が開始されると、まずステップS101において、印字ヘッド11に設けられた多数のノズルのうち、検査対象ノズルが選択される。
【0053】
次に、ステップS102において、第2ノズル駆動手段101が、ステップS101で選択された検査対象ノズルに対して駆動波形を印加する。
【0054】
次に、ステップS103において、第2判定手段102が、受光ユニット40から出力される検知信号のレベルが予め定めた閾値以上であるか否かを判定する。そして、検知信号のレベルが閾値未満であれば(ステップS103:No)、ステップS104において、第2判定手段102が、検査対象ノズルのノズル番号を、不良ノズルの識別情報として記憶装置110に記憶させてステップS105に進む。一方、検知信号のレベルが閾値以上であれば(ステップS103:Yes)、ステップS104の処理を行うことなくステップS105に進む。
【0055】
次に、ステップS105において、印字ヘッド11に設けられた全てのノズルに対してステップS102〜ステップS104の処理を行ったか否かが判定される。そして、処理を行っていないノズルがあれば(ステップS105:No)、ステップS101に戻って新たな検査対象ノズルが選択され、ステップS102〜ステップS104の処理が繰り返される。印字ヘッド11に設けられた全てのノズルに対してステップS102〜ステップS104の処理が行われたら(ステップS105:Yes)、図12に示す一連の不良ノズル検知処理が終了する。
【0056】
以上の不良ノズル検知処理により少なくとも1つの不良ノズルが検知され、そのノズルのノズル番号が記憶装置110に記憶された場合は、不良ノズル検知処理に続いて、不良程度判定処理が実行される。一方、不良ノズルが検知されない場合は、ノズルメンテナンス動作が終了する。
【0057】
次に、不良ノズル検知処理に続いて実行される不良程度判定処理について説明する。図13は、不良程度判定処理の概要を説明する説明図、図14は、不良程度を判定する方法を説明する説明図である。
【0058】
不良程度判定処理では、記憶装置110にノズル番号が記憶された不良ノズルに対して、第1ノズル駆動手段103が最大N個の駆動波形を連続して印加する。例えば、図10および図11に例示したようにn+1番ノズルが不良ノズルと判定され、n+1番ノズルのノズル番号(n+1)が記憶装置110に記憶されている場合は、図13に示すように、第1ノズル駆動手段103が、n+1番ノズルに駆動波形を連続して印加する。そして、第1判定手段104が、受光ユニット40から出力される検知信号のレベルが閾値以上となったか否かによりn+1番ノズルからインク滴が吐出されたか否かを判定し、カウント手段105が、n+1番ノズルからインク滴が吐出されるまでの間にn+1番ノズルに対して印加された駆動波形の個数をカウントする。
【0059】
例えば、図13に例示するように、n+1番ノズルに印加した駆動波形の個数をM(M≦N)とし、M=4のときにn+1番ノズルからインク滴が吐出された場合は、図14に示すように、4個目の駆動波形が印加された後に受光ユニット40から閾値以上のレベルの検知信号が出力される。したがって、第1判定手段104は、受光ユニット40から出力される検知信号を監視し、受光ユニット40から閾値以上のレベルの検知信号が出力されたことを検知することで、n+1番ノズルを、不良ノズルではあるが欠損ノズルではない吐出不良ノズルと判定することができる。また、カウント手段105は、n+1番ノズルからインク滴が吐出されるまでの間にn+1番ノズルに印加された駆動波形の個数をカウントし、カウント値=4を、n+1番ノズルのノズル番号(n+1)と対応付けて記憶装置110に記憶させる。なお、ノズルに対して印加される駆動波形は、実際は複数パルスの組み合わせによる複雑な形状となるが、図14においては、ノズルに対して印加される駆動波形を単純な矩形波として簡略化して図示している。
【0060】
図15は、制御装置100により実行される不良程度判定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。本実施形態に係る画像形成装置では、上述したように、図12に示す不良ノズル検知処理により少なくとも1つの不良ノズルが検知され、そのノズルのノズル番号が記憶装置110に記憶されている場合に、制御装置100によって図15に示す不良程度判定処理が実行される。
【0061】
不良程度判定処理が開始されると、まずステップS201において、記憶装置110にノズル番号が記憶されている不良ノズルのうち、判定対象ノズルが選択される。
【0062】
次に、ステップS202において、第1ノズル駆動手段103が、ステップS201で選択された判定対象ノズルに対して駆動波形を印加する。
【0063】
次に、ステップS203において、カウント手段105が、判定対象ノズルに対する駆動波形の個数のカウント値Mをインクリメントする。
【0064】
次に、ステップS204において、第1判定手段104が、受光ユニット40から出力される検知信号のレベルが予め定めた閾値以上であるか否かを判定する。そして、検知信号のレベルが閾値未満であれば(ステップS204:No)、ステップS205において、ステップS201で選択された判定対象ノズルに印加された駆動波形の個数Mが、予め定めた上限値であるN未満であるか否かが判定される。そして、判定対象ノズルに印加された駆動波形の個数MがN未満であれば(ステップS205:Yes)、ステップS202に戻ってステップS202以降の処理が繰り返される。
【0065】
一方、判定対象ノズルに印加された駆動波形の個数MがNに達した場合には(ステップS205:No)、ステップS206において、第1判定手段104が、ステップS201で選択された判定対象ノズルが欠損ノズルであると判定する。この場合、図15に示す不良程度判定処理は終了し、回復動作制御手段106の制御により、欠損ノズル内からインクを吸引する回復動作が実施される。欠損ノズル内からインクを吸引する回復動作は、上述したように、キャッピングユニット50および吸引ポンプ60を用い、欠損ノズルが存在する印字ヘッド11全体を対象として行われる。なお、特定のノズルのみからインクを吸引する機構を設けた場合には、ステップS206で欠損ノズルと判定された判定対象ノズルのノズル番号を記憶装置110に記憶させて図15に示す不良程度判定処理を継続し、全ての不良ノズルに対する判定が終了した後に、欠損ノズルに対してのみインク吸引の回復動作を実施することも可能である。
【0066】
一方、ステップS204において検知信号のレベルが閾値以上と判定された場合には(ステップS204:Yes)、次に、ステップS207において、第1判定手段104が、ステップS201で選択された判定対象ノズルが吐出不良ノズルであると判定し、その吐出不良ノズルのノズル番号と対応付けて、カウント手段105によるカウント値Mを記憶装置110に記憶させる。
【0067】
次に、ステップS208において、カウント手段105がカウント値Mを0に初期化(クリア)する。
【0068】
次に、ステップS209において、不良ノズル検知処理により不良ノズルとして検知され、記憶手段110にノズル番号が記憶された全ての不良ノズルに対してステップS202〜ステップS208の処理を行ったか否かが判定される。そして、処理を行っていない不良ノズルがあれば(ステップS209:No)、ステップS201に戻って新たな判定対象ノズルが選択され、ステップS202〜ステップS208の処理が繰り返される。全ての不良ノズルに対してステップS202〜ステップS208の処理が行われたら(ステップS209:Yes)、図15に示す一連の不良程度判定処理が終了する。
【0069】
以上の不良程度判定処理により欠損ノズルが検知されると、上述したように、回復動作制御手段106による制御のもとで、欠損ノズルが存在する印字ヘッド11全体を対象として、インクを吸引する回復動作が実施される。一方、以上の不良程度判定処理により欠損ノズルは検知されなかった場合は、回復動作制御手段106による制御のもとで、吐出不良ノズルからインク滴を空吐出させる回復動作が実施される。
【0070】
次に、吐出不良ノズルからインク滴を空吐出させる回復動作について説明する。図16は、吐出不良ノズルからインク滴を空吐出させる回復動作の手順を示すフローチャートである。
【0071】
回復動作制御手段106は、まずステップS301において、記憶装置110にノズル番号が記憶されている吐出不良ノズルのうち、回復動作の対象となる動作対象ノズルを選択する。そして、回復動作制御手段106は、ステップS302において、ステップS301で選択した動作対象ノズルのノズル番号に対応付けて記憶装置110に記憶されているカウント手段105によるカウント値M(不良程度判定処理においてインク滴が吐出されるまでの間に印加された駆動波形の数)を読み出す。
【0072】
次に、回復動作制御手段106は、ステップS303において、ステップS302で記憶装置110から読み出したカウント値Mに応じて、ステップS301で選択した動作対象ノズルから空吐出させるインク滴の吐出量を決定する。具体的には、回復動作制御手段106は、例えば、基準となる吐出量Vに対してステップS302で記憶手段から読み出したカウント値Mを乗算した値V×Mを、ステップS301で選択した動作対象ノズルから空吐出させるインク滴の吐出量として決定する。
【0073】
図17は、カウント手段105によるカウント値Mと空吐出させるインク滴の吐出量との関係を説明する図である。カウント手段105によるカウント値Mは、上限がNであるので、カウント値Mの取りうる範囲は1〜Nである。図17に示すように、カウント値Mが1の吐出不良ノズルから空吐出させるインク滴の吐出量はV、カウント値Mが2の吐出不良ノズルから空吐出させるインク滴の吐出量は2×V、・・・、カウント値MがN−1の吐出不良ノズルから空吐出させるインク滴の吐出量は(N−1)×V、カウント値MがNの吐出不良ノズルから空吐出させるインク滴の吐出量はN×Vとなる。カウント値Mが大きい吐出不良ノズルほど吐出不良の程度が大きいため、空吐出させるインク滴の吐出量を大きくすることで、正常な状態に回復できるようにしている。
【0074】
次に、回復動作制御手段106は、ステップS304において、ステップS301で選択した動作対象ノズルに対して、ステップS303で決定した吐出量に応じた駆動波形を印加して、動作対象ノズルからインク滴を空吐出させる。
【0075】
次に、回復動作制御手段106は、ステップS305において、記憶装置110にノズル番号が記憶されている全ての吐出不良ノズルからインク滴を空吐出させたか否かを判定する。そして、インク滴を空吐出させていない吐出不良ノズルがあれば(ステップS305:No)、ステップS301に戻って新たな動作対象ノズルを選択し、ステップS302〜ステップS304の処理を繰り返す。そして、全ての吐出不良ノズルからインク滴を空吐出させた後(ステップS305:Yes)、図16に示す一連のインク滴空吐出の回復動作を終了する。
【0076】
以上、具体的な例を挙げながら詳細に説明したように、本実施形態に係る画像形成装置によれば、第1ノズル駆動手段103が、不良ノズル検知処理により検知された不良ノズルに対して最大N個の駆動波形を印加し、第1判定手段104が、第1ノズル駆動手段103が印加する駆動波形に応じて不良ノズルからインク滴が吐出されたか否かを判定する。そして、第1判定手段104が不良ノズルからインク滴が吐出されたと判定するまでの間に第1ノズル駆動手段103から不良ノズルに対して印加された駆動波形の個数をカウント手段105がカウントし、回復動作制御手段106が、カウント手段105がカウントした駆動波形の個数に基づいて、不良ノズルに対して実施する回復動作を制御するようにしている。したがって、不良ノズルの不良の程度に合わせた適切な回復動作を実施することができる。
【0077】
また、本実施形態に係る画像形成装置によれば、第2ノズル駆動手段101が、印字ヘッド11に設けられた各ノズルに対して1個の駆動波形を印加し、第2判定手段102が、第2ノズル駆動手段101が駆動波形を印加したノズルからインク滴が吐出されたか否かを判定する。そして、第2ノズル駆動手段101が駆動波形を印加してもインク滴が吐出されないと第2判定手段102が判定したノズルを不良ノズルとして検知し、検知した不良ノズルを対象として、上記第1ノズル駆動手段103、第1判定手段104、およびカウント手段105を用いた不良程度判定処理を行うようにしている。したがって、不良程度判定処理を効率的に行い、不良ノズルの不良の程度に合わせた適切な回復動作を効率良く実施することができる。
【0078】
また、本実施形態に係る画像形成装置によれば、不良程度判定処理により吐出不良ノズルと判定されたノズルに対しては、回復動作制御手段106が、実施する回復動作として当該ノズルからインク滴を空吐出させる動作を選択し、カウント手段105のカウント数が大きいほど空吐出させるインク滴の吐出量が大きくなるように回復動作を制御するので、インク滴の過剰な空吐出を有効に抑制してインクの無駄な消費を抑えながら、吐出不良ノズルを正常な状態に回復させることができる。
【0079】
また、本実施形態に係る画像形成装置によれば、不良程度判定処理により欠損ノズルと判定されたノズル、つまり、N個の駆動波形を印加してもインク滴が吐出されないノズルに対してのみ、回復動作制御手段106が、当該ノズル内のインクを吸引する回復動作を実施するようにしているので、インク滴の空吐出で正常に回復できる吐出不良ノズルに対してインクの吸引動作を行って無駄にインクを排出してしまうといった不都合を有効に防止しながら、欠損ノズルを正常な状態に回復させることができる。
【0080】
また、本実施形態に係る画像形成装置によれば、ノズルから吐出されたインク滴の進路と交差する検出光Lを発光する発光ユニット30と、発光ユニット30が発光する検出光Lがインク滴に照射された際に生じる散乱光を受光して、受光強度に応じた検知信号を出力する受光ユニット40とを備える。そして、第1判定手段104および第2判定手段102は、受光ユニット40から出力される検知信号のレベルが予め定めた所定の閾値以上であるか否かにより、ノズルからインク滴が吐出されたか否かを判定するようにしている。したがって、ノズルからインク滴が吐出されたか否かを正確且つ簡便に判定することができる。
【0081】
また、本実施形態に係る画像形成装置によれば、第1ノズル駆動手段103が、不良ノズルからインク滴が吐出された時点で駆動波形の印加を停止することにより、無駄なインク滴な吐出を抑制できるとともに、処理の高速化を図ることができる。
【0082】
なお、以上説明した実施形態は本発明の好適な実施形態の一例を示すものであり、本発明の技術範囲は実施形態として開示した技術事項そのままに限定されるものではない。本発明の技術範囲は、実施形態として開示した技術事項に技術常識を加味して容易に導かれる変形例、代替手段なども含むものである。
【符号の説明】
【0083】
10 ヘッドアレイ
11 印字ヘッド
12a,12b ノズル列
30 発光ユニット
40 受光ユニット
50 キャッピングユニット
60 吸引ポンプ
100 制御装置
101 第2ノズル駆動手段
102 第2判定手段
103 第1ノズル駆動手段
104 第1判定手段
105 カウント手段
106 回復動作制御手段
110 記憶装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0084】
【特許文献1】特開2010−64402号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に液滴を付着させて画像を形成する画像形成装置であって、
駆動波形が印加されることにより液滴を吐出するノズルと、
前記ノズルに対して最大N個(Nは予め定められた自然数)の前記駆動波形を印加する第1ノズル駆動手段と、
前記第1ノズル駆動手段が印加する前記駆動波形に応じて前記ノズルから液滴が吐出されたか否かを判定する第1判定手段と、
前記第1判定手段が前記ノズルから液滴が吐出されたと判定するまでの間に、前記第1ノズル駆動手段から前記ノズルに対して印加された前記駆動波形の個数をカウントするカウント手段と、
前記カウント手段がカウントした前記駆動波形の個数に基づいて、前記ノズルに対して実施する回復動作を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ノズルに対して1個の前記駆動波形を印加する第2ノズル駆動手段と、
前記第2ノズル駆動手段が印加する前記駆動波形に応じて前記ノズルから液滴が吐出されたか否かを判定する第2判定手段と、をさらに備え、
前記第1ノズル駆動手段は、複数の前記ノズルのうち、前記第2判定手段が、液滴が吐出されていないと判定したノズルに対して、最大N個の前記駆動波形を印加することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記回復動作は、前記ノズルから液滴を空吐出させる動作であり、
前記制御手段は、前記カウント手段がカウントした前記駆動波形の個数が大きいほど、空吐出させる液滴の吐出量を大きくすることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記回復動作は、前記ノズルから液滴を空吐出させる動作と前記ノズルから液を吸引する動作とを含み、
前記制御手段は、前記第1ノズル駆動手段がN個の前記駆動波形を前記ノズルに印加しても前記ノズルから液滴が吐出されなかった場合は、前記ノズルから液を吸引する動作を実施し、前記第1ノズル駆動手段が印加した前記駆動波形に応じて前記ノズルから液滴が吐出された場合は、前記ノズルから液滴を空吐出させるとともに、前記カウント手段がカウントした前記駆動波形の個数が大きいほど、空吐出させる液滴の吐出量を大きくすることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ノズルから吐出された液滴の進路と交差する光を発光する発光手段と、
前記発光手段が発光した光が前記ノズルから吐出された液滴に照射された際に生じる散乱光を受光して、受光強度に応じた検知信号を出力する受光手段と、をさらに備え、
前記第1判定手段および前記第2判定手段は、前記受光手段から出力された前記検知信号に基づいて、前記ノズルから液滴が吐出されたか否かを判定することを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1ノズル駆動手段は、前記ノズルから液滴が吐出された時点で前記駆動波形の印加を停止することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
駆動波形が印加されることにより液滴を吐出するノズルを備え、該ノズルから吐出された液滴を記録媒体に付着させて画像を形成する画像形成装置において実行されるノズルメンテナンス方法であって、
前記ノズルに対して最大N個(Nは予め定められた自然数)の前記駆動波形を印加するステップと、
前記駆動波形に応じて前記ノズルから液滴が吐出されたか否かを判定するステップと、
前記ノズルから液滴が吐出されたと判定するまでの間に前記ノズルに対して印加された前記駆動波形の個数をカウントするステップと、
カウントした前記駆動波形の個数に基づいて、前記ノズルに対して実施する回復動作を制御するステップと、を含むことを特徴とするノズルメンテナンス方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−35212(P2013−35212A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173180(P2011−173180)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】