説明

画像形成装置および中間転写組立体

【課題】
本発明は、画像形成装置および中間転写組立体に関し、モノクロモードからカラーモードに切り替えたときの衝撃音を抑えるとともにカラーモードに切り替えた後の画像形成開始までの時間を短縮化する。
【解決手段】
中間転写ベルトと、中間転写ベルトを押圧、押圧により、一部の感光体に中間転写ベルトを接触させる押圧部材と、押圧部材に中間転写ベルトを押圧させる向きに押圧部材を付勢する第1の付勢部材と、第1の向きへのスライドにより押圧部材を退避させ、第2の向きへのスライドにより押圧部材に中間転写ベルトを押圧させるスライド部材と、中間転写ベルトの幅方向に延びて回転するカム軸と、カム軸に固定されカム軸の回転に応じてスライド部材をスライドさせるカム部材と、カム軸の摺動を受けてカム軸の回転に制動をかける制動部材と、制動部材を付勢して制動の強さを制御する第2の付勢部材とを有する中間転写組立体を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置および中間転写組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
トナー像を保持する複数の像保持体からトナー像の転写を受けて記録媒体に2次転写する中間転写ベルトを備えた画像形成装置が広く用いられている。このタイプの画像形成装置では、黒(K)色のトナーを用いたトナー像を保持する像保持体は中間転写ベルトに常に接触させておく。これに対し、黒(K)色以外の色トナーを用いたトナー像を保持する像保持体には、カラー画像を形成するカラーモードでは中間転写ベルトを接触させ、モノクロ画像を形成するモノクロモードでは離間させておく構成が採用される(特許文献1,2)。
【0003】
また特許文献3には、モノクロモードからカラーモードに切り換えるときの衝撃を抑えることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−371404号公報
【特許文献2】特開2005−156776号公報
【特許文献3】特開2009−075350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はモノクロモードからカラーモードに切り替えたときの衝撃音を抑えるとともにカラーモードに切り替えた後の画像形成開始までの時間を短縮化できる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1は、
回転しながらトナー像の形成を受けて該トナー像を保持する複数の像保持体、
複数の像保持体に沿う移動路を通り、それら複数の像保持体のうちの少なくとも一部の像保持体に接しながら循環移動して像保持体が保持するトナー像の転写を受け、トナー像を記録媒体に2次転写する中間転写ベルトと、像保持体との間に上記移動路を挟んだ位置に配置され、その移動路を通る中間転写ベルトを押圧、退避自在に押圧することにより、上記の複数の像保持体のうちの中間転写ベルトが接離する一部の像保持体に中間転写ベルトを接触させる押圧部材と、押圧部材に中間転写ベルトを押圧させる向きにその押圧部材を付勢する第1の付勢部材と、上記の複数の像保持体に沿う方向にスライド自在であって第1の向きへのスライドにより、押圧部材を、第1の付勢部材の付勢力に抗して退避させ、その第1の向きとは逆向きである第2の向きへのスライドにより、押圧部材に中間転写ベルトを押圧させるスライド部材と、中間転写ベルトの循環移動方向と交わる幅方向に延びて回転するカム軸と、カム軸に固定されスライド部材に干渉してカム軸の回転に応じてスライド部材をスライドさせるカム部材と、カム軸の摺動を受けてカム軸の回転に制動をかける制動部材と、制動部材を付勢してその制動部材による制動の強さを制御する第2の付勢部材とを有する中間転写組立体、および
中間転写ベルトからトナー像の2次転写を受けた記録媒体上にトナー像を定着する定着器
を備えたことを特徴とする画像形成装置である。
【0007】
請求項2は、請求項1記載の画像形成装置において、上記の第2の付勢部材が引っ張りバネであって、中間転写組立体が、スライド部材が上記第1の向きにスライドした後の状態から上記第2の向きにスライドしてきたときにその第2の付勢部材を伸長させる構造を有することを特徴とする。
【0008】
請求項3は、請求項1又は2記載の画像形成装置において、中間転写組立体が、幅方向に互いに離れた位置にそれぞれ配置された一対のスライド部材と、それら一対のスライド部材それぞれが配置された各位置においてカム軸にそれぞれ固定されて、それら一対のスライド部材を第1の向きおよび第2の向きにそれぞれ同時にスライドさせる一対のカム部材とを有し、制動部材は、カム軸に1個だけ取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項4は、請求項3記載の画像形成装置において、中間転写組立体が、一対のスライド部材を幅方向両側から挟む位置にそれぞれ配置されてカム軸両端部を回転自在に支持する一対の支持部材を有し、制動部材および第2の付勢部材が、一対の支持部材のうちの一方の支持部材の、幅方向外側に配置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5は、回転しながらトナー像の形成を受けてトナー像を保持する複数の像保持体に沿う移動路を通り、それら複数の像保持体のうちの少なくとも一部の像保持体に接しながら循環移動して、像保持体が保持するトナー像の転写を受け、トナー像を記録媒体に2次転写する中間転写ベルトと、
像保持体との間に上記移動路を挟んだ位置に配置され、その移動路を通る中間転写ベルトを押圧、退避自在に押圧することにより、上記の複数の像保持体のうちの中間転写ベルトが接離する一部の像保持体に中間転写ベルトを接触させる押圧部材と、押圧部材に中間転写ベルトを押圧させる向きにその押圧部材を付勢する第1の付勢部材と、上記の複数の像保持体に沿う方向にスライド自在であって第1の向きへのスライドにより、押圧部材を、第1の付勢部材の付勢力に抗して退避させ、その第1の向きとは逆向きである第2の向きへのスライドにより、押圧部材に中間転写ベルトを押圧させるスライド部材と、中間転写ベルトの循環移動方向と交わる幅方向に延びて回転するカム軸と、カム軸に固定されスライド部材に干渉してカム軸の回転に応じてスライド部材をスライドさせるカム部材と、カム軸の摺動を受けてカム軸の回転に制動をかける制動部材と、制動部材を付勢してその制動部材による制動の強さを制御する第2の付勢部材とを有することを特徴する中間転写組立体である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の画像形成装置および請求項5の中間転写組立体によれば、本構成を有しない場合と比べ、衝撃音の低減と、カラーモードへの切替え後画像形成開始までの時間短縮が図られる。
【0012】
請求項2の画像形成装置によれば、本構成を有しない場合と比べ、モノクロモードからカラーモードへの切替時間がさらに短縮化される。
【0013】
請求項3の画像形成装置によれば、コストの低減が図られる。
【0014】
請求項4の画像形成装置によれば、制動部材で発生する異物による悪影響が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】画像形成装置の一例としての複写機の概略構成図である。
【図2】カラーモードにおける感光体と中間転写ベルトとの関係を示した、中間転写ベルトの切替機構の模式図である。
【図3】モノクロモードにおける感光体と中間転写ベルトとの関係を示した、中間転写ベルトの切替機構の模式図である。
【図4】スライダと回転カムを示した平面図である。
【図5】スライダと回転カムを示した側面図である。
【図6】ブレーキの制動力を決めるバネの取付け方の第2例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0017】
図1は、画像形成装置の一例としての複写機の概略構成図である。
【0018】
この複写機100は、スキャナ101とプリンタ102とを有する。スキャナ101は、原稿から画像を読み取って画像データを生成する装置である。このスキャナ101は、従来のスキャナと変わるところはなく、詳細説明は省略する。
【0019】
このスキャナ101で生成された画像データは、プリンタ102の制御部10に入力される。この制御部10では、スキャナ101から入力されてきた画像データが、後述する露光器26における露光光変調用の画像データに変換される。
【0020】
プリンタ102は、その上部に、画像が形成された後の用紙が排出される排紙台11が設けられている。このプリンタ102の下部には、給紙台12が配置されている。この給紙台12には画像形成前の用紙Pが積み重なった状態に収容されている。この給紙台12は、用紙Pの補給のために、引出し自在に構成されている。
【0021】
この給紙台12からは用紙Pがピックアップロール13により送り出され、さばきロール14により1枚ずつに分離され、その1枚の用紙Pが搬送ロール15により搬送路151上を矢印A方向に上方に搬送され、待機ロール16によりそれ以降の搬送のタイミングが調整されて、さらに上方に搬送される。この待機ロール16以降の用紙の搬送については後述する。
【0022】
このプリンタ102の上下方向のほぼ中央には、4台の画像形成エンジン20Y,20M,20C,20Kが配置されている。これらの画像形成エンジン20Y,20M,20C,20Kは、それぞれ、Y(イエロー)色、M(マゼンタ)色、C(シアン)色、K(黒)色のトナーを用いてトナー像を形成する装置である。これら4台の画像形成エンジン20Y,20M,20C,20Kはいずれも同一の構成を有するため、ここでは、画像形成エンジン20Yを取り挙げてその概要を説明する。
【0023】
この画像形成エンジン20Yは、図1に矢印Bで示す向きに回転する感光体21Yを有し、その感光体21Yの周囲に、帯電器22Y、現像器23Y、およびクリーナ24Yが配置されている。また、後述する中間転写ベルト31を感光体21Yとの間に挟んだ位置には、転写器25Yが置かれている。
【0024】
またこれら4台の画像形成エンジン20Y,20M,20C,20Kの下には露光器26が配置されている。この露光機26には、制御部10で生成された、露光器26での露光光変調用の画像データが入力される。この露光器26からは、入力された画像データに基づいて変調された光ビームからなる、各画像形成エンジン20Y,20M,20C,20Kそれぞれに対応する露光光261Y,261M,261C,261Kが出射される。各画像形成エンジン20Y,20M,20C,20Kを構成する各感光体21Y,21M,21C,21Kは、各露光光261Y,261M,261C,261Kの照射を受ける。
【0025】
ここで、感光体21Yはドラム形状を有し、帯電により電荷を保持し露光によりその電荷を放出してその表面に静電潜像を保持する。この感光体21Yは、本発明にいう像保持体の一例に相当する。
【0026】
帯電器22Yは、感光体21Yの表面をある帯電電位に帯電する。
【0027】
また、露光器26からは、その入力された画像データに応じて変調された露光光261Yが出射される。感光体21Yは、帯電器22Yによる帯電を受けた後、露光器26からの露光光261Yの照射を受け、感光体の表面に静電潜像が形成される。
【0028】
感光体21Yは、露光光261Yの照射を受けて表面に静電潜像が形成された後、現像器23Yにより現像され、その感光体21Yの表面に、トナー像(この画像形成エンジン20Yではイエロー(Y)のトナーによるトナー像)が形成される。
【0029】
これら4台の画像形成エンジン20Y,20M,20C,20Kの上には中間転写ベルト31を有する中間転写ユニット30が備えられている。この中間転写ユニット30は、本発明の中間転写組立体の一例である。
【0030】
現像器23Yによる現像により感光体21Y上に形成されたトナー像は、転写器25Yの作用により中間転写ベルト31上に転写される。
【0031】
この転写後に感光体21Y上に残存するトナーは、クリーナ24Yによって感光体21Y上から取り除かれる。
【0032】
中間転写ベルト31は、複数のロール32に架け回された、無端の、矢印C方向に循環移動するベルトである。
【0033】
画像形成エンジン20Y,20M,20C,20Kのそれぞれで形成された各色トナーによるトナー像は、順次重なるように中間転写ベルト31上に転写され、2次転写器41が配置された2次転写位置に搬送される。これと同期して、待機ロール16にまで搬送されてきていた用紙が2次転写位置に搬送され、2次転写器41の作用により、中間転写ベルト31上のトナー像が、搬送されてきた用紙上に転写される。このトナー像の転写を受けた用紙は、さらに搬送され、定着器50による加圧および加熱により用紙上のトナー像がその用紙上に定着され、定着されたトナー像からなる画像が用紙上に形成される。画像が形成された用紙は、さらに搬送されて、排紙台11上に排出される。
【0034】
2次転写器41によりトナー像を用紙上に転写した後の中間転写ベルト31はさらに循環移動し、その表面に残存するトナーがクリーナ42によって中間転写ベルト31上から取り除かれる。
【0035】
また、中間転写ベルト31よりも上方には各色トナーを収容するトナー容器43Y,43M,43C,43Kが装着されている。これらのトナー容器43Y,43M,43C,43Kに収容されている各色トナーは、現像器23Yなど、対応する画像形成エンジン20Y,20M,20C,20Kにそれぞれ備えられた各現像器におけるトナーの消費量に応じて各現像器に補給される。
【0036】
制御部10は、スキャナ101から入力されてきた画像データを露光用に変換することのほか、このプリンタ102の全体の制御を担っている。
【0037】
ここで、本実施形態の複写機100は、カラーモードとモノクロモードとを有する。カラーモードは、4台の画像形成エンジン20Y,20M,20C,20Kを用いてカラー画像を形成するモードである。一方、モノクロモードは、4台の画像形成エンジン20Y,20M,20C,20Kのうち黒(K)のトナーによるトナー像を生成する画像形成エンジン20Kのみを用いてモノクロ画像を形成するモードである。
【0038】
カラーモードでは、中間転写ベルト31は、4台の画像形成エンジン20Y,20M,20C,20Kのそれぞれに備えられた4つの感光体21Y,21M,21C,21Kの全てに接触する。一方モノクロモードでは、画像形成には関与しない部材について不要な消耗を避けるため、中間転写ベルト31は、それらの4つの感光体21Y,21M,21C,21Kのうちの黒(K)トナーでトナー像を形成するための感光体21Kを除く3つの感光体21Y,21M,21Cから離れた退避状態となる。
【0039】
以下では、カラーモードとモノクロモードとの切替えに伴う、中間転写ベルト31の接触、退避の切替機構について説明する。
【0040】
図2,図3は、中間転写ベルトの切替機構の模式図である。図2には、カラーモードに切り替えられた状態が示されており、図3には、モノクロモードに切り替えられた状態が示されている。
【0041】
中間転写ベルト31は、図1では複数のロール32に架け回されている旨、説明したが、これら複数のロール32は、駆動ロール321、2本のアイドラロール322,323、テンションロール324、および対向ロール325とで構成されている。駆動ロール321は、中間転写ベルト31を矢印C方向に循環移動させるロールであり、テンションロール324は、中間転写ベルト31の張力を制御することによりこの中間転写ベルト31の姿勢を制動するロールである。また対向ロール325は、2次転写器41(図1参照)に対向し、中間転写ベルト31に押し当てられた2次転写器41の押圧力を受けるロールである。
【0042】
中間転写ベルト31の内側には、各感光体21Y,21M,21C,21Kに対応する各リンク33Y,33M,33C,33Kが備えられている。これらのリンク33Y,33M,33C,33Kは、それぞれ、回転軸331Y,331M,331C,331Kの回りに回転自在に、この中間転写ユニット30のフレーム(図示せず)に支持されている。
【0043】
また、各リンク33Y,33M,33C,33Kの先端には、転写器25Y,25M,25C,25Kが支持されており、回転軸331Y,331M,331C,331Kを間に挟んだ後端は、各バネ34Y,34M,34C,34Kにより、この中間転写ユニット30のフレームに対し付勢されている。これらのバネ34Y,34M,34C,34Kはいずれも引っ張りバネであり、各リンク33Y,33M,33C,33Kの先端に支持されている各転写器25Y,25M,25C,25Kを中間転写ベルト31に押し当てる向きに付勢している。
【0044】
また、中間転写ベルト31の内側にはさらにスライダ35が備えられている。このスライダ35は、複数の感光体21Y,21M,21C,21Kに沿う方向にスライドして、4つのリンク33Y,33M,33C,33Kのうちの、黒(K)に対応するリンク33Kを除く残りの3つのリンク33Y,33M,33Cを、各回転軸331Y,331M,331Cの回りに、図2に示す状態と図3に示す状態との間で回転させる。
【0045】
リンク33Kは、バネ34Kにより付勢されていて、スライダ35の動きとは無関係に、その先端の転写器25Kが中間転写ベルト31を内側から押す向きに回転した状態に保たれる。これにより中間転写ベルト31は、カラーモード、モノクロモードにかかわらず黒(K)の感光体21Kに接した状態となる。
【0046】
モノクロモードからカラーモードへの切替え時には、スライダ35が、図2に示す矢印Dの向き(本発明にいう「第2の向き」の一例)にスライドする。すると、各リンク33Y,33M,33Cはスライダ35から解放され各バネ34Y,34M,34Cの付勢力により回転して、各リンク33Y,33M,33Cの先端の各転写器25Y,25M,25Cが中間転写ベルト31に押し当てられる。これにより中間転写ベルト31は感光体21Y,21M,21Cに接した状態となる。スライダ35は、図示しないカム機構を介してアイドラロール322も移動させ、スライダ35が、矢印Dの向きに図2に示す位置まで移動するとアイドラロール322も図2に示す位置に移動する。
【0047】
一方、カラーモードからモノクロモードへの切替え時には、スライダ35が、図3に示す矢印Eの向き(本発明にいう「第1の向き」の一例)にスライドし、このスライダ35が3つのリンク33Y,33M,33Cを各バネ34Y,34M,34Cの付勢力に抗して図3に示す状態にまで回転させる。すると、各リンク33Y,33M,33Cの先端の各転写器25Y,25M,25Cは中間転写ベルト31の押圧を止め、中間転写ベルト31は各感光体21Y,21M,21Cから離間する。このときアイドラロール322もスライダ35の矢印Eの向きへのスライドに従って、図3に示す位置に移動する。
【0048】
図2,図3の紙面に垂直な方向には、カム軸36(図2,図3には図示せず、図4,図5を参照)が延びており、そのカム軸36には回転カム361が固定されている。スライダ35は、このカム軸36が回転すると、回転カム361とスライダ35との干渉により、スライダ35が図2に示す状態と図3に示す状態との間でスライドする。さらに、このカム軸36には、ブレーキ37が取り付けられており、そのブレーキ37は、軸38との間のバネ39により付勢されている。このブレーキ37による制動力の大きさはこのバネ39の付勢力の強さにより定まり、付勢力が強いほどカム軸36の回転に対し強い制動力が作用する。ここで、モノクロモード(図3)からカラーモード(図2)への移行時には、カム軸が回転して、回転カム361の、スライダ35への係合が緩み、スライダ35は、リンク33Y,33M,33Cを付勢しているバネ34Y,34M,34Cの付勢力によって図2に示す矢印D方向の向きにスライドする。このため、ブレーキ37が備えられていないときは、リンク33Y,33M,33Cが勢い良く回り、転写器25Y,25M,25Cが勢い良く中間転写ベルト31に当たり、大きな衝突音が発生する。
【0049】
これに対し本実施形態では、ブレーキ37やそのブレーキ37の制動力を決めるバネ39を備えているため、転写器25Y,25M,25Cは中間転写ベルト31にゆっくりと当たり、衝突音が和らげられる。
【0050】
本実施形態では、リンク33Y,33M,33Cが、本発明にいう押圧部材の一例に相当し、バネ34Y,34M,34Cが本発明にいう第1の付勢部材の一例に相当する。また、スライダ35が本発明にいうスライド部材の一例、カム軸36(図4,図5参照)が本発明にいうカム軸の一例、回転カム361が本発明にいうカム部材の一例にそれぞれ対応する。さらにブレーキ37が本発明にいう制動部材の一例、バネ39が本発明にいう第2の付勢部材の一例に相当する。
【0051】
以下では、図2,図3に示すスライダのスライド動作の関連事項について模式図を参照しながらさらに説明する。
【0052】
図4,図5は、スライダと回転カムとを示した、それぞれ平面図、側面図である。これらの図4,図5において、(A)は、カラーモードを示しており、(B)はモノクロモードを示している。またこれら図4,図5において、図2,図3に示した中間転写ユニット30の各要素と同じ要素には、図2,図3に付した符号と同じ符号を付して示す。
【0053】
図4に示すスライダ35は1本分のみであるが、実際には中間転写ベルト31の幅方向両側に1本ずつ、合計2本備えられていて、その周囲の構成は、幅方向に対し対称に構成されている。ただし、ブレーキ37やそのブレーキ37を付勢するバネ39は、ここに示す一方の側にのみ備えられている。また、図4には、中間転写ユニット30(図1〜図3参照)のフレーム301の一部が示されている。中間転写ユニット30のフレーム301は、中間転写ベルト31の幅方向両側にある2本のスライダ35をさらにその外側から挟むように配置されている。カム軸36は両側のフレーム301に回転自在に支持されている。また、リンク33Y,33M,33C(図2,図3参照;図4,図5にはリンク33Cのみ図示されている)もフレーム301に回転自在に支持されている。
【0054】
スライダ35が、図4(A),図5(A)に示すカラーモードの状態にあるときに、図示しないモータによりカム軸36が回転すると、回転カム361がスライダ35を矢印Eの向きに押し、スライダ35がその矢印Eの向きにスライドする。するとカム軸36は、スライダ35により回転カム361を介して矢印Eの向きとは逆向きの反力を受ける。ここでブレーキ37に付勢力を与えているバネ39はかなり強力な引っ張りバネであり、このためモノクロモードでは、図4(B)に示すように、カム軸36の、回転カム361よりもバネ39で付勢された端寄りの部分が撓み、その分バネ39が縮むことになる。
【0055】
換言すれば、このバネ39は、スライダ35が図4(B),図5(B)に示す矢印Eの向きにスライドした後の状態(モノクロモードの状態)から図4(A),図5(A)に示す矢印Dの向きにスライドしてきたときに(カラーモードへの移行時に)、伸長することになる。
【0056】
前述の通り、このバネ39はブレーキ37の制動力を定めるものであり、このバネ39が強力であるほどカム軸36の回転に対し強い制動力が作用する。したがってモノクロモードからカラーモードへの移行に伴ってスライダ35が矢印Dで示す向きに移動したとき、その移動の初期よりも終期において強い制動力が得られることになる。これはすなわち、リンク33Y,33M,33Cの先端の転写器25Y,25M,25Cが中間転写ベルト31から離れた状態から中間転写ベルト31に向かって動き出し始めた初期は早く動き、それらの転写器25Y,25M,25Cが中間転写ベルト31を押して中間転写ベルト31が感光体21Y,21M,21Cに当たる終期にはゆっくりと動くことになる。これにより、バネ39が伸縮しないときと比べ、モノクロモードからカラーモードへの切り替えの速さと衝突音の低減との双方が高い次元で両立する。
【0057】
また、スライダ35は、上述の通り、中間転写ベルト31の両側に1つずつ合計2つ配置されている。また、これに対応して、カム軸36は1本であるが、そのカム軸36の、2つのスライダ35のそれぞれに対応した位置に回転カム361がそれぞれ固定されている。これに対し、ブレーキ37やそのブレーキ37はこの1本のカム軸36に1個だけ取り付けられており、それに対応してバネ39も1本だけ備えられている。
【0058】
前掲の特許文献3には、スライダにバネを取り付けることが開示されており、その場合は、2本のスライダそれぞれにバネを取り付ける必要がある。本実施形態の場合、このバネ39は1本で済むため、コストの低減に寄与する。
【0059】
また、本実施形態の場合、中間転写ベルト31の両側にそれぞれ備えられた2本のスライダ35は、1本のカム軸で移動する。このため、本実施形態の場合、バネ39が1本であるか、あるいはブレーキ37をカム軸36の両端それぞれに配置しそれに対応してバネ39も2本備えるかによらず、それら2本のスライダ35を同時に移動させることができる。これに対し、前掲の特許文献3には、別々の部材である2本のスライダのそれぞれにバネを備える必要があり、バネの強さのばらつきにより2本のスライダが必ずしも同時に同じ移動量だけ動くとは限らず、2本のスライダの動き方にばらつきを生じる可能性がある。2本のスライダの動き方に差があると、中間転写ベルトの幅方向について、転写器の一方の端部が先に中間転写ベルトに当たり、もう一方の端部が後から当たることになる。そうすると、中間転写ベルトに幅方向の力が加わって中間転写ベルトが幅方向に片寄せされる可能性がある。中間転写ベルトは、片寄せしても、例えば図2,図3に示すテンションロール324やそれに相当する部材によって正しい位置に調整されるが、それには時間を要する。すなわち、本実施形態の構成によれば特許文献3に開示された構成と比べモノクロモードからカラーモードに移行した後、画像形成動作に速やかに移行することができる。
【0060】
さらに、図4に示すように、ブレーキ37は、中間転写ユニット30(図1〜図3参照)のフレーム301の外側に配置されているため、両側のフレーム301どうしの内側に配置した場合と比べ、ブレーキ37がカム軸36と摺動して異物が発生しても、その異物が中間転写ベルト31やその他の要素に悪影響を及ぼして画像欠陥が生じるおそれが低減する。
【0061】
図6は、ブレーキの制動力を決めるバネの取付け方の第2例を示した図である。この図6(A)(B)は、それぞれ、上述の実施形態における図4(A)(B)にお対応する。ただし、この図6においては、図4,図5に示すアーム33Cや転写器25C等の図示は省略している。
【0062】
図4に示す例の場合、バネ39は、ブレーキ37と、フレーム301に固定された軸38との間に架けられている。これに対し図6に示す例では、バネ39は、ブレーキ37と、軸381との間に架けられている。この軸381は、フレーム301とスライダ35との双方に回転自在に支持されている。この構成の場合、図6(A)に示すカラーモードの状態では、図6(B)に示すモノクロモードの状態と比べ、カム軸36の撓みに頼ることなく、あるいはカム軸36の撓みを利用するとともにさらに、軸381の動きによってバネ39を伸縮させることができる。このため、モノクロモードからカラーモードへの移動時に、スライダ35を、初期には速く動かし終期にはゆっくりと動かすことができ、切替え動作の速さと衝突音の低減を一層高い次元で両立させることができる。
【符号の説明】
【0063】
20Y,20M,20C,20K 画像形成エンジン
21Y,21M,21C,21K 感光体
26 露光器
30 中間転写ユニット
31 中間転写ベルト
33Y,33M,33C,33K リンク
34Y,34M,34C,34K,39 バネ
35 スライダ
36 カム軸
37 ブレーキ
38,381 軸
41 2次転写器
100 複写機
101 スキャナ
102 プリンタ
301 フレーム
322,323 アイドラロール
324 テンションロール
325 対向ロール
331Y,331M,331C,331K 回転軸
361 回転カム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転しながらトナー像の形成を受けて該トナー像を保持する複数の像保持体、
前記複数の像保持体に沿う移動路を通り、該複数の像保持体のうちの少なくとも一部の像保持体に接しながら循環移動して該像保持体が保持するトナー像の転写を受け、該トナー像を記録媒体に2次転写する中間転写ベルトと、前記像保持体との間に前記移動路を挟んだ位置に配置され、該移動路を通る前記中間転写ベルトを押圧、退避自在に押圧することにより、前記複数の像保持体のうちの該中間転写ベルトが接離する一部の像保持体に該中間転写ベルトを接触させる押圧部材と、前記押圧部材に前記中間転写ベルトを押圧させる向きに該押圧部材を付勢する第1の付勢部材と、前記複数の像保持体に沿う方向にスライド自在であって第1の向きへのスライドにより、前記押圧部材を、前記第1の付勢部材の付勢力に抗して退避させ、該第1の向きとは逆向きである第2の向きへのスライドにより、該押圧部材に前記中間転写ベルトを押圧させるスライド部材と、前記中間転写ベルトの循環移動方向と交わる幅方向に延びて回転するカム軸と、前記カム軸に固定され前記スライド部材に干渉して該カム軸の回転に応じて該スライド部材をスライドさせるカム部材と、前記カム軸の摺動を受けて該カム軸の回転に制動をかける制動部材と、前記制動部材を付勢して該制動部材による制動の強さを制御する第2の付勢部材とを有する中間転写組立体、および
前記中間転写ベルトからトナー像の2次転写を受けた記録媒体上に該トナー像を定着する定着器を、備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第2の付勢部材が引っ張りバネであって、前記中間転写組立体が、前記スライド部材が前記第1の向きにスライドした後の状態から前記第2の向きにスライドしてきたときに該第2の付勢部材を伸長させる構造を有することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記中間転写組立体が、前記幅方向に互いに離れた位置にそれぞれ配置された一対の前記スライド部材と、該一対のスライド部材それぞれが配置された各位置において前記カム軸にそれぞれ固定されて、該一対のスライド部材を前記第1の向きおよび前記第2の向きにそれぞれ同時にスライドさせる一対の前記カム部材とを有し、
前記制動部材は、前記カム軸に1個だけ取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記中間転写組立体が、前記一対のスライド部材を前記幅方向両側から挟む位置にそれぞれ配置されて前記カム軸両端部を回転自在に支持する一対の支持部材を有し、
前記制動部材および前記第2の付勢部材が、前記一対の支持部材のうちの一方の支持部材の、前記幅方向外側に配置されていることを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
回転しながらトナー像の形成を受けて該トナー像を保持する複数の像保持体に沿う移動路を通り、該複数の像保持体のうちの少なくとも一部の像保持体に接しながら循環移動して、該像保持体が保持するトナー像の転写を受け、該トナー像を記録媒体に2次転写する中間転写ベルトと、
前記像保持体との間に前記移動路を挟んだ位置に配置され、該移動路を通る前記中間転写ベルトを押圧、退避自在に押圧することにより、前記複数の像保持体のうちの該中間転写ベルトが接離する一部の像保持体に該中間転写ベルトを接触させる押圧部材と、
前記押圧部材に前記中間転写ベルトを押圧させる向きに該押圧部材を付勢する第1の付勢部材と、
前記複数の像保持体に沿う方向にスライド自在であって第1の向きへのスライドにより、前記押圧部材を、前記第1の付勢部材の付勢力に抗して退避させ、該第1の向きとは逆向きである第2の向きへのスライドにより、該押圧部材に前記中間転写ベルトを押圧させるスライド部材と、
前記中間転写ベルトの循環移動方向と交わる幅方向に延びて回転するカム軸と、
前記カム軸に固定され前記スライド部材に干渉して該カム軸の回転に応じて該スライド部材をスライドさせるカム部材と、
前記カム軸の摺動を受けて該カム軸の回転に制動をかける制動部材と、
前記制動部材を付勢して該制動部材による制動の強さを制御する第2の付勢部材とを有することを特徴する中間転写組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−64763(P2013−64763A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201765(P2011−201765)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】