画像形成装置および画像形成方法
【課題】転写材の先端部に反りやしわ等の変形部が生じても、良好な画像形成を行う。
【解決手段】転写材
【請求項1】トナー像を担持する中間転写ベルト8と、転写材33を把持するグリッパ18を有するとともに、中間転写ベルト8に担持されたトナー像を転写材33に転写する二次転写ローラー14と、転写材33を定着する定着部46と、転写材33を切断する切断刃を有する転写材切断部37とを有する画像形成装置1である。
【解決手段】転写材
【請求項1】トナー像を担持する中間転写ベルト8と、転写材33を把持するグリッパ18を有するとともに、中間転写ベルト8に担持されたトナー像を転写材33に転写する二次転写ローラー14と、転写材33を定着する定着部46と、転写材33を切断する切断刃を有する転写材切断部37とを有する画像形成装置1である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写材把持部材で紙等の転写材の先端部を把持した状態で転写を行うとともに、定着部で転写材の像を定着する電子写真方式の画像形成装置および画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子写真方式の画像形成装置において、感光体に圧接される転写ドラムの転写材把持部材で転写材の先端部を把持した状態で、感光体のトナー像を転写材に転写するとともに、転写材の像を定着部で定着する画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このように転写材の先端部を把持した状態で転写を行うことで、転写後に転写材を感光体から剥離させることが容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−328396号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、グリッパで転写材先端部を把持すると、図30(a)に示すようにグリッパによる転写材の把持で、転写材の先端部に反りやしわ等の変形部が生じる。そして、図30(b)に示すようにこのように先端部に変形部が生じた転写材が、互いに定着部の圧接される一対の定着ローラーに挟圧されて定着されると、これらの変形部が転写材搬送方向と逆向きに画像形成領域まで発展してしまう場合がある。このため、良好な画像形成を行うことが難しいという問題がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、転写材の先端部に反りやしわ等の変形部が生じても、良好な画像形成を行うことのできる画像形成装置および画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決するために、本発明に係る画像形成装置および画像形成方法では、転写材切断部の切断刃により転写材を切断する。そして、切断された転写材に転写された像が定着部で加熱加圧されて定着される。転写材が加熱、加圧されることで、転写材の繊維が熱膨張する。このとき、転写材にしわや折れ目等の変形部が存在していると、熱膨張むらが発生するとともにこの熱膨張むらが増大する。そして、この熱膨張むらにより、前述のように変形部が転写材搬送方向と逆向きまたは略逆向きに発展して画像形成領域まで到達しようとする。変形部が画像形成領域まで到達すると、良好な画像形成が行われなくなる。
【0007】
しかし、本発明の画像形成装置および画像形成方法によれば、転写材がこの転写材に形成されている切断部に向かう方向に熱膨張して、この切断部により熱膨張むらの力を逃がすことができる。その結果、転写材搬送方向と逆向きまたは略逆向きの変形部の発展を防止することができ、変形部を画像形成領域を含む所定の余白部領域まで到達するのを防止することができる。これにより、良好な画像形成を行うことが可能となる。このようにして、転写材の先端部に反りやしわ等の変形部が生じても、良好な画像形成を行うことのできる画像形成装置および画像形成方法を実現することが可能となる。
【0008】
特に、転写材切断部を転写材収納部と転写ローラーとの間に配設することにより、転写材の切断後に転写材が把持される。これにより、切断部の切断による反りやしわ等の変形部を転写材把持部材で挟んで増大させることがないので、転写材の変形部が転写材全体に発展するのをより効果的に防止できる。
【0009】
また、転写材切断部を転写ローラーと定着部との間に配設することにより、転写材把持後に転写材が切断される。転写材の切断は、転写材把持よりも大きなせん断力が転写材にかかる。したがって、このように転写材把持後に転写材を切断することで、折れ目やしわ等の変形部の拡大、増大が少なくなる。その結果、転写材の変形部が転写材全体に発展するのを防止できる。
【0010】
更に、転写材切断部を転写ローラーに給送する転写材を収納する転写材収納部に配設することで、転写材が転写材収納部内で停止状態で切断開始される。これにより、切断時のせん断力を転写材に均一にかけることができる。したがって、転写材の反りやしわ等の変形部の発生を低減することができる。その結果、転写材の変形部が発展するのを低減することができる。
【0011】
更に、切断部を転写材把持部材の把持に干渉させないことで、転写材にかかる把持よるせん断力を均一化することができる。また、把持面積が増大するので、せん断力を低減できる。したがって、把持による折れ目やしわ等の変形部の発生が低減できる。その結果、転写材の変形部が発展するのを低減することができる。
【0012】
更に、切断部を把持時の転写材把持部材に干渉させることで、転写材把持部材が切断部を跨いで転写材を把持することが可能となる。転写材に切断部を形成すると、転写材がこの切断部分で連続しない。このため、転写材の切断部が広がったり、切れ端が反ったりして歪みが増大し易い。そこで、このように転写材把持部材が切断部を跨いで転写材を把持することにより、転写材搬送による転写材あばれがあっても、切断部による転写材の部分的歪みの増大を抑制することができる。したがって、転写材の反りやしわ等の変形部の発生を低減することができる。その結果、転写材の変形部が発展するのを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明にかかる画像形成装置の実施の形態の第1例を模式的にかつ部分的に示す図である。
【図2】(a)はこの第1例の画像形成装置の把持位置にあるグリッパおよび退避位置にある突き出し爪を模式的に示す斜視図、(b)は解放位置にあるグリッパおよび突き出し位置にある突き出し爪を模式的に示す斜視図である。
【図3】第1例の転写材収納部および転写材先端切断部を模式的に示す図である。
【図4】(a)は第1例の転写材先端切断部の非作動状態を模式的に示す図、(b)は切断刃を模式的に示す斜視図、(c)は転写材先端切断部の作動状態を模式的に示す図である。
【図5】第1例の転写材押さえ部材と切断刃受け台を模式的に示す図である。
【図6】(a)は第1例の転写材押さえ部材の非作動状態を模式的に示す図、(b)は転写材押さえ部材の作動状態を模式的に示す図である。
【図7】第1例の切断刃による転写材の切断時を模式的に示す図である。
【図8】第1例の切断刃による転写材の切断終了後を模式的に示す図である。
【図9】第1例の転写材の切断部を模式的にかつ部分的に示す図である。
【図10】第1例の切断部を有する転写材の把持を模式的にかつ部分的に示す図である。
【図11】第1例の切断部を有する転写材の定着部直前の状態を模式的に示す図である。
【図12】第1例の切断部を有する転写材の変形部の発展の防止を説明する図である。
【図13】本発明にかかる画像形成装置の実施の形態の第2例を模式的にかつ部分的に示す図である。
【図14】第2例の切断刃を模式的にかつ部分的に示す図である。
【図15】第2例の切断刃による転写材切断を説明する図である。
【図16】本発明にかかる画像形成装置の実施の形態の第3例を模式的にかつ部分的に示す、図10と同様の図である。
【図17】本発明にかかる画像形成装置の実施の形態の第4例を模式的にかつ部分的に示す、図10と同様の図である。
【図18】(a)は平板状のグリッパの把持による折れ目を説明する図、(b)は櫛歯状のグリッパの把持による折れ目を説明する図である。
【図19】本発明にかかる画像形成装置の実施の形態の第5例の切断刃を模式的にかつ部分的に示す、図4(b)と同様の図である。
【図20】第5例の切断刃で切断された転写材を模式的にかつ部分的に示す図である。
【図21】本発明にかかる画像形成装置の実施の形態の第6例を模式的にかつ部分的に示す、図3と同様の図である。
【図22】第6例の切断刃を模式的にかつ部分的に示す、図14と同様の図である。
【図23】第6例の切断刃による転写材の切断終了後の状態を模式的に示す図である。
【図24】第6例の切断部を有する転写材の把持を模式的にかつ部分的に示す、図10と同様の図である。
【図25】第6例の切断部を有する転写材の変形部の発展の防止を説明する図である。
【図26】本発明にかかる画像形成装置の実施の形態の第7例の切断刃を模式的にかつ部分的に示す、図14と同様の図である。
【図27】第7例の切断部を有する転写材の把持を模式的にかつ部分的に示す、図10と同様の図である。
【図28】本発明にかかる画像形成装置の実施の形態の第8例の切断刃を模式的にかつ部分的に示す、図4(b)と同様の斜視図である。
【図29】紙しわ評価試験に用いた記録紙を模式的に示す平面図である。
【図30】(a)は従来の転写材の把持によるしわ等の変形部を説明する図、(b)は定着により転写材の変形部の発展を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明にかかる転写材搬送装置を備える画像形成装置の実施の形態の一例の一部を模式的にかつ部分的に示す図である。
【0015】
図1に示すように、この第1例の画像形成装置1は、水平またはほぼ水平にタンデムに配置されたイエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の像担持体である感光体2Y,2M,2C,2Kを備えている。ここで、各感光体2Y,2M,2C,2Kにおいて、2Yはイエローの感光体、2Mはマゼンダの感光体、2Cはシアンの感光体、2Kはブラックの感光体を表す。また、他の部材についても同じように、部材の符号にそれぞれ各色のY,M,C,Kを添えて各色の部材を表す。
【0016】
各感光体2Y,2M,2C,2Kの周囲には、それぞれ、帯電部3Y,3M,3C,3Kが設けられている。また、各帯電部3Y,3M,3C,3Kから、それぞれ、各感光体2Y,2M
,2C,2Kの回転方向に向かって、順に、露光部4Y,4M,4C,4K、現像部5Y,5M,5C,5K、および一次転写部6Y,6M,6C,6Kが配設されている。
【0017】
また、画像形成装置1は、転写ベルトである無端状の中間転写ベルト8(像担持体に相当)を備えている。この中間転写ベルト8は、各感光体2Y,2M,2C,2Kの上方に配
置されている。そして、中間転写ベルト8は各一次転写部6Y,6M,6C,6Kで各感光
体2Y,2M,2C,2Kに圧接されている。
【0018】
図示しないが、中間転写ベルト8は、例えば樹脂等の可撓性の基材と、この基材の表面に形成されたゴム等の弾性層と、この弾性層の表面に形成された表層とを有する3層構造の比較的柔らかい弾性ベルトに形成されている。もちろん、これに限定されることはない。中間転写ベルト8は図示しないモーターの駆動力が伝達される中間転写ベルト駆動ローラー9および中間転写ベルトテンションローラー11に巻き掛けられている。そして、中間転写ベルト8はテンションを付与された状態で、矢印方向に回転するようにされている。
なお、各色Y、M、C、Kに対応する感光体等の部材の配置順は、図1に示す例に限定されることはなく、任意に設定することができる。また、一次転写後の各感光体2Y,2
M,2C,2Kの表面は、図示しない感光体クリーニング部でクリーニングされる。
【0019】
各一次転写部6Y,6M,6C,6Kより中間転写ベルト8の回転方向(矢印で図示)に
進んだ各一次転写部6Y,6M,6C,6Kの近傍の中間転写ベルト8の位置には、それぞ
れ、中間転写ベルトスクイーズ装置12Y,12M,12C,12Kが配設されている。更
に、中間転写ベルト8の中間転写ベルト駆動ローラー9側には二次転写部13が設けられている。
【0020】
二次転写部13は、二次転写ローラー14および二次転写ローラークリーニング部15を備えている。二次転写ローラー14は回転軸14aを中心に矢印で示す方向に回転する。この二次転写ローラー14は、中間転写ベルト駆動ローラー9に巻き掛けられる中間転写ベルト8に圧接される。このとき、中間転写ベルト駆動ローラー9は二次転写ローラー14の押圧に対するバックアップローラーとして機能する。
【0021】
更に、二次転写ローラー14は、基材14bの円弧部の外周面に巻かれたシート状の弾性部材14cを有している。この弾性部材14cにより二次転写ローラー14の円弧部の外周面に抵抗層が形成されている。そして、図1に示すように中間転写ベルト8と二次転写ローラー14の弾性部材14cとの間に二次転写ニップ13aが形成される。
【0022】
更に、二次転写ローラー14は、中間転写ベルト8に転写されたトナー像を、転写紙等の転写材に転写させる転写バイアスが印加される。そして、二次転写ローラー14は、中間転写ベルト8の矢印方向の回転時に矢印方向に回転するとともに転写バイアスが印加されることにより、二次転写ニップ13aで中間転写ベルト8のトナー像を転写材33に転写する。
【0023】
また、二次転写ローラー14は、凹部17を有している。この凹部17内には、転写材把持部材としてのグリッパ18、グリッパ18が着座する転写材把持部材受け部材であるグリッパ支持部19、および転写材剥離部材としての突き出し爪34が配設されている。図2(a)および(b)に示すように、グリッパ18は転写材搬送方向である第1の方向と直交または略直交する第2の方向(二次転写ローラー14の軸方向)に所定数(図示例では10個)だけ所定間隔を置いて櫛歯状に配設されている。また、グリッパ支持部19も、同様にして各グリッパ18に対応して配設される。
【0024】
更に、突き出し爪34は、各グリッパ18の間に位置するようにして所定数(図示例では4個)配設される。各グリッパ18および各突き出し爪34はカム機構35によって制御される。そして、各グリッパ18はα方向に回動して図2(a)に示す位置にあるときは、各グリッパ18は対応するグリッパ支持部19との間で転写材33の先端部33aを把持する把持位置になる。また、各突き出し爪34はβ方向に直線移動して図2(a)に示す位置にあるときは、退避位置になる。更に、各グリッパ18はγ方向に回動して図2(b)に示す位置にあるときは、各グリッパ18はグリッパ支持部19から離間して転写材33の把持を解放する解放位置になる。また、各突き出し爪34はδ方向に直線移動して図2(b)に示す位置にあるときは、転写材33の背面(図1に図示するトナー像が転写される転写面33dの反対側の面)を突き出して二次転写ローラー14から剥離する突出位置になる。
【0025】
転写材33がゲートローラー40から転写材供給ガイド41を介して給送されてくると、転写材33の先端部33aがグリッパ18とグリッパ支持部19との間に把持される(転写材把持工程)。そして、中間転写ベルト8に担持されているトナー像が、グリッパ18で把持された転写材33の転写面33dに二次転写部13の二次転写ニップ13aで転写される(転写工程)。なお、グリッパ18による把持の転写材33の把持代は、この把持代部分を切断しても転写材33の画像形成領域より先端側に所定の余白が形成されるように設定されている。
【0026】
二次転写ニップ13aを通過した転写材33は、グリッパ18による把持から解放される。この転写材33の把持解放に前後して、突き出し爪34が二次転写ローラー14の凹部17から突出して転写材33の背面を突き出す。これにより、転写材33は二次転写ローラー14から剥離される。
【0027】
二次転写ローラークリーニング部15は、クリーニングブレード等のクリーニング部材15aと液体現像剤回収容器15bとを有する。クリーニング部材15aは、二次転写ローラー14の弾性部材14cの外周面に当接してこの弾性部材14cに付着する液体現像剤を除去する。液体現像剤回収容器15bは、クリーニング部材15aで除去された液体現像剤を回収して貯留する。
【0028】
更に、図1に示すように画像形成装置1は、転写材収納部36、転写材切断部である転写材先端切断部37、転写材搬送ローラー38、第1の気流発生装置42、第2の気流発生装置43、転写材搬送部44、第3の気流発生装置45、および定着部46を備えている。
図3に示すように、転写材収納部36は従来公知のものであり、転写材カセット36a、転写材積載台36b、転写材積載台36bを鉛直上方に付勢する付勢ばね36c、および横断面半月状(半円弧状)の転写材送給ローラー36dを有する。そして、付勢ばね36cの付勢力で、最上位置にある転写材33の上面が転写材送給ローラー36dに当接している。転写材送給ローラー36dは回転軸36d1を中心に回転することで、転写材積
載台36b上の転写材33を1枚ずつ送給する(転写材搬送工程)。
【0029】
転写材先端切断部37は転写材収納部36の近傍で、転写材収納部36からゲートローラー40への転写材搬送経路に配設される。この転写材先端切断部37は、切断刃37a、転写材受け台37b、板状の転写材押さえ部材37c、および転写材33の切りくず33eを回収する切りくず回収容器37dを有する。
【0030】
図4(a)ないし(c)に示すように、切断刃37aは楕円柱または円柱状に形成されて穿孔刃として構成される。そして、切断刃37aは、細長い矩形状の切断刃支持部材37eに所定数(図示例では、5個)だけ第2の方向に所定間隔を置いて一列になるように
配設される。その場合、各切断刃37aが第1の方向に移動してグリッパ18の位置に到達したと想定したとき、各切断刃37aは、いずれも各グリッパ18から第2の方向に外れた位置、つまり各グリッパ18と干渉しない位置に配設される。
【0031】
また、切断刃支持部材37eは、その一端を回転軸37fにより装置本体(不図示)に回転可能に支持される。更に、切断刃支持部材37eは、支持部材37gに支持された付勢ばね37hの引っ張り力で、図4(a)において常時時計回りに付勢されている。その場合、切断刃支持部材37eは時計回りに回転してストッパー37iに当接することより、それ以上の時計回りの回転が阻止される。
【0032】
更に、偏心カム37jがカム軸37kを中心に回動可能に配設されている。偏心カム37jは図示しないモーターで回転駆動される。偏心カム37jが図4(a)に示す最大偏心位置にあるとき、切断刃支持部材37eは付勢ばね37hの付勢力に抗して反時計回りに回動してストッパー37iから大きく離間した位置となる。この切断刃支持部材37eの位置では、各切断刃37aは、いずれも上昇して転写材搬送経路から脱出した退避位置となる。偏心カム37jが図4(a)に示す位置から方向εに回動すると、切断刃支持部材37eは付勢ばね37hの引っ張り力で時計回りに回動する。すると、各切断刃37aが転写材搬送経路の方向ζへ進出する。切断刃支持部材37eがストッパー37iに当接すると、切断刃支持部材37eの回動は停止する。このとき、各切断刃37aは転写材搬送経路と交差した転写材切断位置となる。そして、偏心カム37jは更に方向εに回動して図4(c)に示すように切断刃支持部材37eから離間する。更に、偏心カム37jは方向εに回動して再び切断刃支持部材37eに当接するとともにこの切断刃支持部材37eを図4(c)において反時計回りに回動する。すると、各切断刃37aは方向ηへ移動して転写材搬送経路から脱出して離間する。そして、偏心カム37jは再び図4(a)に示す最大偏心位置に来ると、その回動が停止する。すると、切断刃支持部材37eの回動も停止し、各切断刃37aは再び退避位置となり、この位置に保持される。
【0033】
図3および図5に示すように、転写材受け台37bは搬送される転写材33を受けるものであり、楕円形状または円形状の切断刃逃げ孔37mを有する。切断刃逃げ孔37mは各切断刃37aに対応して設けられる。そして、各切断刃37aは転写材切断位置に移動するとき、対応する切断刃逃げ孔37m内に進入する。各切断刃逃げ孔37mの下方には、切りくず回収容器37dの上方開口37nが対向して位置する。
【0034】
図3および図5に示すように、転写材押さえ部材37cは、一端が取り付けられた回転軸37oを中心に回動可能に装置本体に支持される。転写材押さえ部材37cの他端37c1には、切断刃受け孔37pを有する。切断刃受け孔37pは各切断刃逃げ孔37mに
対応して設けられるとともに、切断刃逃げ孔37mと同形状で略半分を切断した形状にされている。
【0035】
図6(a)および(b)に示すように、転写材押さえ部材37cは、支持部材37qに支持された付勢ばね37rの引っ張り力で、図6(a)において常時時計回りに付勢されている。その場合、転写材押さえ部材37cは時計回りに回転して転写材受け台37bに当接することより、それ以上の時計回りの回転が阻止される。
【0036】
更に、偏心カム37sがカム軸37tを中心に回動可能に配設されている。偏心カム37sは図示しないモーターで回転駆動される。両偏心カム37j,37sの各駆動モータ
ーは、いずれも画像形成装置1の制御装置で駆動制御される。偏心カム37sが図6(a)に示す最大偏心位置にあるとき、転写材押さえ部材37cは付勢ばね37rの付勢力に抗して反時計回りに回動して、その先端37c1が転写材受け台37bから大きく離間し
た退避位置となる。この転写材押さえ部材37cの退避位置では、転写材押さえ部材37
cは転写材搬送経路から大きく離脱して、転写材33が自由に移動するようになる。
【0037】
転写材受け台37b上に転写材33があるとき、偏心カム37sが図6(a)に示す位置から方向θに回動すると、転写材受け台37b上にある転写材33に当接してこの転写材33を転写材受け台37bとの間に挟圧する。これにより、転写材33は比較的堅固に保持され、転写材33は移動不能となる。そして、偏心カム37sは更に方向θに回動して、図6(b)に示すように転写材押さえ部材37cから離間する。更に、偏心カム37sは方向θに回動して再び転写材押さえ部材37cに当接するとともにこの転写材押さえ部材37cを図6(b)において反時計回りに回動する。偏心カム37sは再び図6(a)に示す最大偏心位置に来ると、その回動が停止する。すると、転写材押さえ部材37cの回動も停止し、各切断刃37aは再び退避位置となり、この位置に保持される。これにより、転写材33は再び移動可能となる。
【0038】
この転写材先端切断部37においては、図7に示すように転写材収納部36から搬送されてきた転写材33の先端部33aが転写材搬送ローラー38に到達する前で転写材受け台37bの所定位置に来ると、転写材送給ローラー36dが転写材33から離間し、かつ転写材33は転写材押さえ部材37cに押圧されて停止する。この状態で、切断刃37aが転写材搬送経路の方へ進出して転写材33の先端部33aを切断する(転写材切断工程)。このとき、転写材33の切りくず33eは切りくず回収容器37d内に上方開口37nを通して回収される。
【0039】
その後、図8に示すように切断刃37aが退避位置の方へ移動するとともに、転写材押さえ部材37cが退避位置に移動する。こうして、図9に点線で示すように転写材33の先端に開口する半楕円形凹部状または半円形凹部状の切り取り部である切断部33bが転写材33の先端部33aに形成される。その場合、各切断部33bはいずれもグリッパ18の把持代の領域内に形成されるようになっている。
【0040】
また、転写材押さえ部材37cの退避位置への移動により、転写材33は移動可能となるとともに、転写材送給ローラー36dが転写材33の後端側に再び当接して転写材33を搬送する。そして、図9に点線で示すように半楕円形状または半円形状の凹部の切断部33bが形成された転写材33の先端部33aが転写材搬送ローラー38に挟圧され、転写材33はゲートローラー40の方へ搬送される。
【0041】
そして、前述のように各切断刃37aが各グリッパ18に干渉しない位置に配設されていることから、図10に示すように各グリッパ18は、いずれも各切断部33bから第2の方向に外れた干渉しない位置で転写材33の先端部33aを把持するようになる。なお、各グリッパ18の間に配置される各突き出し爪34が突き出すとき、各突き出し爪34は各切断部33bに干渉しない位置の転写材背面に当接するようにされている。二次転写後に、各グリッパ18による転写材33の把持が解除されたとき、グリッパ18の把持等により、転写材33の先端部33aにしわや折れ目等の変形部が発生する場合がある。
【0042】
第1の気流発生装置42は、エアーを矢印で示すようにグリッパ18の把持から解放された転写材33の先端部33aに向かって吹き付ける。これにより、転写材33の先端部33aが中間転写ベルト8と一緒に連れ動くことが防止される。
【0043】
第2の気流発生装置43はダクト状の吸引部材43aとファン等の気流発生部43bとを有する。吸引部材43aはガイド面43a1と多数の吸引孔43a2とを有する。そして、二次転写ローラー14から剥離された転写材33は、吸引部材43aのガイド面43a1にガイドされて移動する。このとき、気流発生部43bの駆動により、エアーが矢印で
示すように吸引部材43aの吸引孔43a2を通して吸引される。これにより、転写材3
3は吸引部材43aに吸引ガイドされながら転写材搬送部44の方へ移動する。なお、転写材33は中間転写ベルト8と二次転写ローラー14の回転力で転写材搬送部44の方へ移動する。
【0044】
転写材搬送部44は、多数の吸引孔44a1を有する転写材搬送ベルト44a、多数の
吸引孔44b1を有するダクト状の吸引部材44b、および気流発生部44cを有する。
そして、第2の気流発生装置43から移動してきた転写材33が、懸架ローラー44dに巻き掛けられた無端状の転写材搬送ベルト44aによって搬送される。このとき、気流発生部44cの駆動により、エアーが矢印で示すように吸引部材44bの吸引孔44b1お
よび転写材搬送ベルト44aの吸引孔44a1を通して吸引される。これにより、転写材
33は転写材搬送ベルト44aにより吸引されながら第3の気流発生装置45の方へ搬送される。
【0045】
第3の気流発生装置45は、ダクト状の吸引部材45aとファン等の気流発生部45bとを有する。吸引部材45aはガイド面45a1と多数の吸引孔45a2とを有する。そして、転写材搬送部44から搬送されてきた転写材33は、吸引部材45aのガイド面45a1にガイドされて移動する。このとき、気流発生部45bの駆動により、エアーが矢印
で示すように吸引部材45aの吸引孔45a2を通して吸引される。これにより、転写材
33は吸引部材45aに吸引ガイドされながら定着部46の方へ移動する。
【0046】
定着部46は、加熱ローラー46aとこの加熱ローラー46aに圧接される加圧ローラー46bと有する。そして、転写材33のトナー像がこれらの加熱ローラー46aおよび加圧ローラー46bにより加熱加圧されて定着される(定着工程)。その場合、図11に示すように転写材33が定着部46に到達したときは、前述のように転写材33の先端部33aにしわや折れ目等の変形部が存在している場合がある。転写材33の先端部33aがこの状態で定着部46を通過すると、この先端部33aが加熱、加圧されることで、転写材33の繊維が熱膨張する。このとき、図12に示すように先端部33aのしわや折れ目等の変形部33cにより、両端矢印ιで示すように熱膨張むらが発生するとともにこの熱膨張むらが増大する。そして、この熱膨張むらにより、変形部33cが一方向矢印κで示す方向(第1の方向と逆向きまたは略逆向き)に発展して画像形成領域まで到達しようとする。変形部33cが画像形成領域まで到達すると、良好な画像が行われなくなる。
【0047】
しかし、転写材33の先端部33aに形成されている切断部33bにより、転写材33の先端部33aが一方向矢印λで示す切断部33bに向かう方向に熱膨張し、熱膨張むらの力が逃がされる。その結果、一方向矢印κで示す方向の変形部33cの発展が防止され、変形部33cが画像形成領域を含む所定の余白部領域まで到達しなく、良好な画像形成が行われる。定着後、転写材は図示しない排出トレイに排出される。
この第1例の画像形成装置1の他の構成および他の画像形成動作は、液体現像剤を用いた従来の画像形成装置と同様であるので、その説明は省略する。
【0048】
この第1例の転写材搬送部44を有する画像形成装置1によれば、転写材先端切断部37の切断刃37aにより転写材33の先端部33aを切断する。そして、先端部33aが切断された転写材33のトナー像が定着部46で加熱加圧されて定着される。転写材33の先端部33aが加熱、加圧されることで、転写材33の繊維が熱膨張する。このとき、転写材33の先端部にしわや折れ目等の変形部33cが存在していると、熱膨張むらが発生するとともにこの熱膨張むらが増大する。そして、この熱膨張むらにより、変形部33cが第1の方向と逆向きまたは略逆向きに発展して画像形成領域まで到達しようとする。変形部33cが画像形成領域まで到達すると、良好な画像が行われなくなる。
【0049】
しかし、転写材33の先端部33aがこの先端部33aに形成されている切断部33b
に向かう方向に熱膨張して、この切断部33bにより熱膨張むらの力を逃がすことができる。その結果、第1の方向と逆向きまたは略逆向きの変形部33cの発展を防止することができ、変形部33cを画像形成領域を含む所定の余白部領域まで到達するのを防止することができる。これにより、良好な画像形成を行うことが可能となる。このようにして、転写材33の先端部33aに反りやしわ等の変形部33cが生じても、良好な画像形成を行うことのできる画像形成装置1および画像形成方法を実現することが可能となる。
【0050】
特に、転写材先端切断部37を転写材収納部36と二次転写部13との間に配設することにより、転写材33の先端部33aの切断後に転写材33がグリッパ18により把持される。これにより、切断部33bの切断による反りやしわをグリッパ18で挟んで増大させることがないので、転写材33のしわが転写材全体に発展するのをより効果的に防止できる。
【0051】
更に、切断部33bを把持状態にあるグリッパ18に干渉させないことで、転写材33の先端部33aにかかる把持よるせん断力を均一化することができる。また、把持面積が増大するので、せん断力を低減できる。したがって、グリッパ18の把持による折れ目やしわの発生が低減できる。その結果、転写材33のしわが発展するのを低減することができる。
【0052】
図13は、本発明の画像形成装置の実施の形態の第2例を模式的にかつ部分的に示す図、図14は図13に矢印XIV方向から見た部分図である。
図13および図14に示すように、この第2例の画像形成装置1では、転写材先端切断部37が転写材収納部36の近傍でゲートローラー40に至る転写材搬送経路に配設されない。また、第3の気流発生装置45が配設されない。そして、図1において第3の気流発生装置45の配設位置に、つまり、転写材搬送部44と定着部46との間に転写材先端切断部37が配設される。この第2例の転写材先端切断部37は、楕円形状の穿孔刃として形成された所定数の切断刃37a、これらの切断刃37aを軸方向に一列に支持する細長い横断面半月状(半円弧状)シャフトの切断刃支持部材37e、切断刃バックアップローラー37u、および切りくず回収容器37dを有する。なお、この第2例では、第1例の転写材押さえ板37c、転写材受け台37b、切断刃37aおよび転写材押さえ板37cを移動制御するカム等は配設されない。
【0053】
切断刃支持部材37eおよび切断刃バックアップローラー37uは、第2の方向となるようにして装置本体に回転可能に配設される。したがって、各切断刃37aも第2の方向に配設される。その場合、通常時は各切断刃37aは転写材搬送経路の切断位置の直前に待機している。
【0054】
この第2例の画像形成装置1では、転写材搬送部44から搬送されてきた転写後の転写材33の先端部33aが、転写材先端切断部37に到達する直前で切断刃支持部材37eおよび切断刃バックアップローラー37uがそれぞれ矢印で示す方向に回転する。すると、図15に示すように転写材33は移動しながらその先端部33aが第1例と同様に各切断刃37aによって切り取られ、半楕円形状の切断部33bが形成される。すなわち、転写材33の把持後に転写材33の先端部33aが切断される。転写材33の先端部33aの切断は、転写材33の把持よりも大きなせん断力が転写材33の先端部33aにかかる。したがって、このように転写材33の把持後に転写材33の先端部33aを切断することで、折れ目やしわ等の拡大、増大が少なくなる。その結果、転写材33のしわが転写材全体に発展するのを防止できる。
この第2例の画像形成装置1の他の構成および他の作用効果は、第1例のそれらと同じである。
【0055】
図16は、本発明の画像形成装置の実施の形態の第3例を模式的にかつ部分的に示す図である。
この第3例の画像形成装置1では、前述の第1例において各切断刃37aが各グリッパ18と、第2の方向に干渉する位置に配設されている。したがって、図16に示すようにこの第2例の画像形成装置1では、転写材33の各切断部33bが、把持位置にある各グリッパ18に干渉するようになる。
【0056】
このように切断部33bを把持時のグリッパ18に干渉させることで、グリッパ18が切断部33bを跨いで転写材33を把持することが可能となる。転写材33の先端部33aに切断部33bを形成すると、転写材33がこの切断部分で連続しない。このため、転写材33の切断部33bが広がったり、切れ端が反ったりして歪みが増大し易い。そこで、このようにグリッパ18が切断部33bを跨いで転写材33を把持することにより、転写材搬送による転写材あばれがあっても、切断部33bによる転写材33の部分的歪みの増大を抑制することができる。したがって、転写材33の反りやしわの発生を低減することができる。その結果、各切断部33bにより各グリッパ18の把持等による変形部33cの発展が防止される。
この第3例の画像形成装置1の他の構成および他の作用効果は、第1例のそれらと同じである。
【0057】
図17は、本発明の画像形成装置の実施の形態の第4例を模式的にかつ部分的に示す図である。
図17に示すように、この第4例の画像形成装置1では、グリッパ18が櫛歯状に形成されていなく、1枚の平板で形成されている。その場合、各突き出し爪34はグリッパ18に干渉しない位置で転写材33の背面を突き出すようにされている。この第4例では、平板状のグリッパ18で記録紙先端部を把持することにより、記録紙先端部の大面積を均一に把持することができるため、把持による折れ目、しわの発生が低減できる。すなわち、グリッパ18の把持等による先端部33aの変形部33cは、櫛歯状のグリッパ18の把持の場合に比して生じ難い。したがって、各切断部33bにより変形部33cの発展がより一層防止される。
【0058】
また、図18(a)に示すように平板状のグリッパ18による把持では、第1の方向と逆向きに折れ目が入り難いので、転写材33のカットする把持代が比較的短くて済む。これに対して、図18(b)に示すように、櫛歯状のグリッパ18による把持では、第1の方向と逆向きに折れ目が入り易いので、転写材33のカットする把持代が比較的長くなる傾向にある。
この第4例の画像形成装置1の他の構成および他の作用効果は、第1例のそれらと同じである。
【0059】
図19は、本発明の画像形成装置の実施の形態の第5例を模式的にかつ部分的に示す、図4(b)と同様の図である。
図19に示すように、この第5例の画像形成装置1では、前述の第1例の断面楕円形状または円形状の切断刃37aに代えて、横断面三角形状の切断刃37aが第1例と同様にして配設されている。したがって、図20に示すようにこの第5例の画像形成装置1では、切断部33bは三角形状に形成される。
この第5例の画像形成装置1の他の構成および他の作用効果は、第1例のそれらと同じである。
【0060】
図21は、本発明の画像形成装置の実施の形態の第6例を模式的にかつ部分的に示す、図3と同様の図、図22は図21の矢印XXII方向から見た部分図である。
図21および図22に示すように、この第6例の画像形成装置1では、切断刃37aが
転写材収納部36の横断面半月状の転写材送給ローラー36dに配設されている。すなわち、転写材先端切断部37が転写材収納部36内に設けられる。また、切断刃37aの形状は曲線状に形成されている。なお、この第6例では、第1例の転写材押さえ板37c、切りくず回収容器37d、切断刃37aおよび転写材押さえ板37cを移動制御するカム等は配設されない。
【0061】
この第6例の画像形成装置1では、通常時(非転写材給送時)には、図21に示すように転写材搬送ローラー36は付勢ばね36cの付勢力で、切断刃37aの端が最上位置にある転写材33の先端に当接する位置にされている。そして、転写材給送開始時に転写材給送ローラー36dが矢印方向(図21において反時計回り)に回転すると、転写材33は先端から切り込まれて給送されるようになる。先端部33aが所定量切り込まれると、各切断刃37aが転写材33から外れ、転写材給送ローラー36d自体が転写材33に当接する。図23に示すように、転写材33の先端部33aが転写材搬送ローラー38に挟圧された時点で、転写材給送ローラー36dが転写材33から外れ、転写材33は転写材搬送ローラー38により搬送される。こうして、図24に示すように、転写材33の先端部33aには、転写材33の先端から第1の方向に傾斜して延びる直線状の切れ目である切断部33bが形成される。すなわち、切断刃37aの曲線形状が、転写材33に第1の方向に傾斜した直線状の切れ目が形成される形状とされている。
【0062】
このように、転写材先端切断部37を転写材収納部36に配設することで、転写材33が転写材収納部36内で停止状態で切断開始される。これにより、切断刃37aによる切断時のせん断力を転写材33に均一にかけることができる。したがって、転写材33の反りやしわの発生を低減することができる。その結果、転写材33の変形部33cが発展するのを低減することができる。
【0063】
また、各切断刃37aは、各グリッパ18(第1例のグリッパ18と同じ)と、第2の方向に干渉する位置に配設される。したがって、図24に示すように各グリッパ18は、転写材先端部33aの傾斜した線状の切断部33bを第1の方向に跨ぐように把持する。転写材33の先端部33aに切断部33bを形成すると、転写材33がこの切断部分で連続しない。このため、転写材33の切断部33bが広がったり、切れ端が反ったりして歪みが増大し易い。そこで、このようにグリッパ18が切断部33bを跨いで転写材33を把持することにより、転写材搬送による転写材あばれがあっても、切断部33bによる転写材33の部分的歪みの増大を抑制することができる。したがって、転写材33の反りやしわの発生を低減することができる。その結果、転写材33のしわが発展するのを低減することができる。
【0064】
図25に示すように、定着部46の定着により先端部33aの変形部33cが前述と同様に発展しようとする。しかし、転写材33の先端部33aに形成されている切断部33bにより、転写材33の先端部33aが一方向矢印λで示す切断部33bに向かう方向に熱膨張し、熱膨張むらの力が逃がされる。そのとき、切断部33bの切れ目部分ので転写材が重なり33iが生じたり、広がり33jが生じたりする。その結果、一方向矢印κで示す方向の変形部33cの発展が防止され、変形部33cが画像形成領域を含む所定の余白部領域まで到達しなく、良好な画像形成が行われる。
【0065】
更に、切断部33bが切れ目で形成されるので、転写材33の切断による切りくずは生じない。したがって、切りくず回収容器37dを不要にでき、部品点数を削減できる。
この第6例の画像形成装置1の他の構成および他の作用効果は、第1例のそれらと同じである。
【0066】
図26は、本発明の画像形成装置の実施の形態の第7例を模式的にかつ部分的に示す、
図22と同様の図である。
図26に示すように、この第7例の画像形成装置1では、切断刃37aが第1の方向に延びる直線状に形成される。したがって、図27に示すように、転写材33の先端部33aには、転写材33の先端から第1の方向に延びる直線状の切れ目である切断部33bが形成される。
【0067】
また、各切断刃37aは、第1例の各グリッパ18(第1例のグリッパ18と同じ)と、第2の方向に干渉しない位置に配設される。したがって、図27に示すように各グリッパ18は、転写材先端部33aの切断部33bと切断部33bとの間で転写材先端部33aを把持する。これにより、前述の第1例と同様の効果を得ることができる。
この第7例の画像形成装置1の他の構成および他の作用効果は、第6例のそれらと同じである。
【0068】
図28は、本発明の画像形成装置の実施の形態の第8例を模式的にかつ部分的に示す、図4(b)と同様の図である。
図28に示すように、この第8例の画像形成装置1では、第1例と同様の切断刃支持部材37eに所定数の切断刃37aが所定の間隔を置いて一列に配設される。各切断刃37aは、薄平板から第1の方向に延びる直線状に形成される。また、図示しないが転写材受け台37bには、第1例の切断刃逃げ孔37mは設けられない。そして、転写材33の切断の際に切断刃37aを受ける受け部材として、転写材受け台37bにゴム層が配設される。このゴム層は、切断刃37aが繰り返し刺さって変形し難い層に形成される。ゴム層としては、例えば天然ゴム、ブタジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等が用いられる。
【0069】
したがって、図27に示すと同様に、転写材33の先端部33aには、転写材33の先端から第1の方向に延びる直線状の切れ目である切断部33bが形成される。また、直線状の切断刃37aをゴム層で受けることにより、切断時の転写材33にかかる衝撃が抑制され、転写材33の変形部33cの発生が低減する。
この第8例の画像形成装置1の他の構成および他の作用効果は、第1例のそれらと同じである。
【0070】
画像形成装置1の実施の形態の第1ないし第8例における実施例1ないし10、および比較例について、紙しわ評価試験を実施した。
まず、実施例1について説明する。この実施例1は前述の第1例の実施例であり、最善実施例である。
定着部46について説明する。図11に示す定着部46において、加熱ローラー46aおよび加圧ローラー46bは、ともに共通仕様とする。すなわち、芯金46a1,46b1
は厚さ2mmのアルミニウム管とする。なお、芯金46a1,46b1として、他に、鉄、
ステンレス、真鍮等を用いることができる。弾性層46a2,46b2は厚さ2mmのシリ
コーンゴムとする。なお、弾性層46a2,46b2として、他に、フッ素ゴム、ウレタン
ゴム等を用いることができる。離型層46a3,46b3はPFAとする。なお、離型層4
6a3,46b3として、他に、PTFE、FEP、ETFE、PVDF、PVF、PCT
FE、ECTFE等を用いることができる。加熱ローラー46aおよび加圧ローラー46bの外径(直径)は60mmとする。加熱ローラー46aおよび加圧ローラー46bは図示しないばねで両端総荷重70kgfで互いに圧接する。
【0071】
加熱ローラー46aのハロゲンランプ46cは1000Wとし、加圧ローラー46bのハロゲンランプ46dは600Wとする。加熱ローラー46aおよび加圧ローラー46bの各温度を、それぞれ図示しない各温度検知装置でを検知する。そして、検知した各温度に基づいて、それぞれ各ハロゲンランプ46c,46dをオン/オフ制御し、加熱ローラ
ー46aおよび加圧ローラー46bの各温度を、ともに160℃に維持する。転写材定着速度は50ppm(枚/分)、転写材搬送速度を250mm/secとする。
【0072】
定着ニップ幅(第1の方向のニップ長さ)は10mmする。ニップ測定方法は、回転している加熱ローラー46aおよび加圧ローラー46bにOHPシートを通し、途中で加熱ローラー46aおよび加圧ローラー46bを停止するとともに各ハロゲンランプ46c,
46dを消灯する。この状態で、3分間放置する。その後、加熱ローラー46aおよび加圧ローラー46bを回転してOHPシートを排出する。このとき、ニップ境界線跡が第2の方向に延びる略平行な2本線としてOHPシートに記録されるので、その幅を測定してニップ幅とした。
【0073】
転写材33のしわの評価について説明する。転写材33の枚数を従来の通常のしわの評価で使用する転写材の枚数より少ない1条件あたり500枚にする。そして、転写材33のしわを発生しやすい条件にした。すなわち、転写材33として、OKプリンス上質エコG100(登録商標)の記録紙を用いる。このOKプリンス上質エコG100(登録商標)は、古紙パルプが100%使用され、再生紙で紙繊維が短く、こしのない薄い記録紙である。坪量は52.3g/mm2である。温度40℃で、相対湿度95%の温湿度環境で紙しわ評価試験を行う。印字パターン(画像パターン)は図29に示す2mm角の市松模様Aを画像形成領域内に形成し、トナー付着量は不均一である。黒色部分は、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの4色重ね部である。
【0074】
現像剤として液体現像剤を使用し、この液体現像剤は、平均粒径3μmの固形分トナーを50csシリコーンオイルのキャリアー液に分散させた液体トナーである。固形分トナーは、エポキシ、ポリエステル、スチレン等の樹脂に顔料を分散させて着色したものが使用できる。また、キャリアー液としては鉱物油や植物油などが使用できる。
【0075】
グリッパ18の先端と記録紙先端部切り取り部の記録紙搬送方向の最短距離Ln(図10に図示)を、
Ln = 8mm ≦ ニップ幅(10mm)
とする。したがって、図29に示す記録紙先端から記録紙搬送方向で画像形成領域までの長さLは、記録紙先端部切り取り後の余白代を含めてLnより長く設定する。
この実施例1は、最善実施例である。
【0076】
次に、実施例2について説明する。この実施例2も実施の形態の第1例の実施例である。前述の実施例1と異なる点は、使用する現像剤が平均粒径9μmの乾式トナーである。この乾式トナーとしては、トナーバインダーであるエポキシ、ポリエステル、スチレン等の樹脂に顔料を分散させて着色したものに、平均粒径10μmのシリカを外添剤としてまぶしたものである。なお、実施例2の画像形成装置1では、中間転写ベルトスクィーズ装置12Y,12M,12C,12Bのようなキャリアー液を主に回収するような装置は配設
されない。その他は、実施例1と同じである。
【0077】
次に、実施例3について説明する。この実施例3も実施の形態の第1例の実施例である。前述の実施例1と異なる点は、前述の最短距離Lnを、
Ln = 12mm ≧ ニップ幅(10mm)
とする。その他は、実施例1と同じである。
【0078】
次に、実施例4について説明する。この実施例4は、実施の形態の第2例の実施例である。実施例4は、前述のように実施の形態の第2例が第1例と異なる点で実施例1と異なるだけである。
【0079】
次に、実施例5について説明する。この実施例5は、実施の形態の第3例の実施例である。実施例5は、前述のように実施の形態の第3例が第1例と異なる点で実施例1と異なるだけである。
【0080】
次に、実施例6について説明する。この実施例6は、実施の形態の第4例の実施例である。実施例6は、前述のように実施の形態の第4例が第1例と異なる点で実施例1と異なるだけである。
【0081】
次に、実施例7について説明する。この実施例7は、実施の形態の第5例の実施例である。実施例7は、前述のように実施の形態の第5例が第1例と異なる点で実施例1と異なるだけである。
【0082】
次に、実施例8について説明する。この実施例8は、実施の形態の第6例の実施例である。実施例8は、前述のように実施の形態の第6例が第1例と異なる点で実施例1と異なるだけである。
【0083】
次に、実施例9について説明する。この実施例9は、実施の形態の第7例の実施例である。実施例9は、前述のように実施の形態の第7例が第1例および第6例と異なる点で実施例1と異なるだけである。
【0084】
次に、実施例10について説明する。この実施例10は、実施の形態の第8例の実施例である。実施例8は、前述のように実施の形態の第8例が第1例と異なる点で実施例1と異なるだけである。
【0085】
次に、比較例について説明する。比較例は、最善実施例における切断刃37a、記録紙押さえ部材37c、記録紙受け台37bの切断刃逃げ孔37m、および切りくず回収容器37dが設けられない。すなわち、従来の画像形成装置と同様に記録紙の切断は行われない。
紙しわ評価試験結果を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
表1に示すように、最善実施例(実施例1)では、500枚の画像形成を行っても、紙しわの発生は0枚であった。これにより、最善実施例では前述の所期の効果を確実に得られることが確認された。また、実施例2では、500枚の画像形成で、紙しわの発生は2枚であった。これは、液体トナーのキャリアー液が記録紙に浸透して水分を追い出すので、定着時の水分気化による記録紙繊維熱膨張むらが低減し、紙しわが発生し難くなると考
えられる。更に、実施例3では、500枚の画像形成で、紙しわの発生は4枚であった。これは、定着ニップ内部の記録紙繊維熱膨張が定着ニップ外部のそれより激しいので、定着ニップ内部で熱膨張むらを逃がした方が、紙しわが発生し難くなる。
【0088】
更に、実施例4では、500枚の画像形成で、紙しわの発生は2枚であった。これは、記録紙の把持よりも記録紙端部の切断が記録紙先端に大きなせん断力が加えられると考えられる。したがって、記録紙把持による折れ目、しわ等が記録紙先端に生じる前に記録紙先端部を切断した方が、これらの折れ目、しわ等の発生、増大および拡大が少ない。その結果、紙しわが記録紙全体に発展するのを低減することができる。
【0089】
更に、実施例5では、500枚の画像形成で、紙しわの発生は6枚であった。これは、櫛歯状のグリッパ18を記録紙先端部の切断部に干渉させることにより、把持面積が減少して把持力が増大する。また、記録紙搬送による記録紙あばれがあっても、グリッパ18間の記録紙が解放されている部分で力を逃がすことができる。したがって、把持による折れ目やしわ等の変形部の発生を低減できる。その結果、反りや紙しわ等の変形部が記録紙全体に発展するのを低減できる。
【0090】
更に、実施例6では、500枚の画像形成で、紙しわの発生は10枚であった。これは、平板状のグリッパ18で記録紙先端部を把持することにより、記録紙先端部の大面積を均一に把持することができるため、把持による折れ目、しわの発生が低減できる。しかし、把持力が減少するため、搬送による記録紙あばれによる折れ目やしわの発生の抑制が他の実施例よりも小さい。
更に、実施例7では、500枚の画像形成で、紙しわの発生は0枚であった。これにより、切断部の形状は紙しわ発生にあまり影響しないと考えられる。この実施例7も最善実施例として見なすことができる。
【0091】
更に、実施例8では、500枚の画像形成で、紙しわの発生は2枚であった。これは、記録紙が記録紙収納部内で停止状態で切断開始されることから、切断時のせん断力を記録紙に均一にかけることができるためであると考えられる。したがって、記録紙の反りやしわの発生を低減することができる。更に、実施例8では、記録紙先端に切れ目が形成されると、記録紙がこの切れ目の部分で連続していないので、切れ目が広がったり、切れ端が反ったりして歪みが増大し易い。そこで、記録紙先端の切れ目を跨ぐようにグリッパ18を配置することにより、記録紙搬送による記録紙あばれがあっても、切れ目による記録紙の部分的歪みの増大を抑制することが可能となる。したがって、記録紙の反りやしわの発生を低減することができる。その結果、紙しわが発展するのを低減することができる。
【0092】
更に、実施例9では、500枚の画像形成で、紙しわの発生は6枚であった。切断部33bを、把持状態にあるグリッパ18に干渉させないことで、記録紙の先端部33aにかかる把持によるせん断力を均一化することができる。また、切断部33bが把持によるせん断力を逃がすので、把持によるせん断力を低減できる。したがって、グリッパ18の把持による折れ目やしわの発生が低減できる。その結果、紙しわが発展するのを低減することができる。
【0093】
更に、実施例10では、500枚の画像形成で、紙しわの発生は0枚であった。これにより、直線状の切断刃をゴム層で受けることにより、切断時の記録紙にかかる衝撃が抑制され、紙しわの発生が低減すると考えられる。この実施例10も最善実施例として見なすことができる。
以上のことから、前述の実施例2ないし実施例10でも、前述の所期の効果を得られることが確認された。
【0094】
更に、比較例では、500枚の画像形成で、すべての記録紙に把持による紙しわが発生した。これにより、前述の各実施例のように、記録紙にその先端から延びる切断部を形成することで、紙しわの発生がより効果的に抑制されることが確認された。
【0095】
なお、本発明の画像形成装置および画像形成方法は、前述の実施の形態の各例に限定されることはない。例えば、前述の各例の第1の気流発生装置42、第2の気流発生装置43、転写材搬送部44、および第3の気流発生装置45を省略することもできる。また、前記実施の形態の各例の転写材切断部37およびその配置位置を、適宜組み合わせることもできる。
【0096】
更に、像担持体として中間転写ベルト8を用いているが、中間転写ドラムを用いることもできるし、これらの中間転写媒体を省略することもできる。中間転写媒体を省略する場合は、感光体のトナー像が転写材に直接転写されることは言うまでもない。更に、前述の各例の画像形成装置では、タンデム型の画像形成装置としているが、他の形式の画像形成装置でもよいし、単色の画像形成装置でもよい。要は、本発明は特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0097】
1…画像形成装置、2Y,2M,2C,2K…感光体、5Y,5M,5C,5K…現像部、6Y,6M,6C,6K…一次転写部、8…中間転写ベルト、13…二次転写部、14…二次転
写ローラー、18…グリッパ、19,19a…グリッパ支持部、33…転写材、33a…
先端部、33b…切断部、33c…変形部、34…突き出し爪、36…転写材収納部、37…転写材先端切断部、37a…切断刃、37b…転写材受け台、37c…転写材押さえ部材、37d…切りくず回収容器、40…ゲートローラー、46…定着部、46a…加熱ローラー、46b…加圧ローラー
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写材把持部材で紙等の転写材の先端部を把持した状態で転写を行うとともに、定着部で転写材の像を定着する電子写真方式の画像形成装置および画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子写真方式の画像形成装置において、感光体に圧接される転写ドラムの転写材把持部材で転写材の先端部を把持した状態で、感光体のトナー像を転写材に転写するとともに、転写材の像を定着部で定着する画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このように転写材の先端部を把持した状態で転写を行うことで、転写後に転写材を感光体から剥離させることが容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−328396号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、グリッパで転写材先端部を把持すると、図30(a)に示すようにグリッパによる転写材の把持で、転写材の先端部に反りやしわ等の変形部が生じる。そして、図30(b)に示すようにこのように先端部に変形部が生じた転写材が、互いに定着部の圧接される一対の定着ローラーに挟圧されて定着されると、これらの変形部が転写材搬送方向と逆向きに画像形成領域まで発展してしまう場合がある。このため、良好な画像形成を行うことが難しいという問題がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、転写材の先端部に反りやしわ等の変形部が生じても、良好な画像形成を行うことのできる画像形成装置および画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決するために、本発明に係る画像形成装置および画像形成方法では、転写材切断部の切断刃により転写材を切断する。そして、切断された転写材に転写された像が定着部で加熱加圧されて定着される。転写材が加熱、加圧されることで、転写材の繊維が熱膨張する。このとき、転写材にしわや折れ目等の変形部が存在していると、熱膨張むらが発生するとともにこの熱膨張むらが増大する。そして、この熱膨張むらにより、前述のように変形部が転写材搬送方向と逆向きまたは略逆向きに発展して画像形成領域まで到達しようとする。変形部が画像形成領域まで到達すると、良好な画像形成が行われなくなる。
【0007】
しかし、本発明の画像形成装置および画像形成方法によれば、転写材がこの転写材に形成されている切断部に向かう方向に熱膨張して、この切断部により熱膨張むらの力を逃がすことができる。その結果、転写材搬送方向と逆向きまたは略逆向きの変形部の発展を防止することができ、変形部を画像形成領域を含む所定の余白部領域まで到達するのを防止することができる。これにより、良好な画像形成を行うことが可能となる。このようにして、転写材の先端部に反りやしわ等の変形部が生じても、良好な画像形成を行うことのできる画像形成装置および画像形成方法を実現することが可能となる。
【0008】
特に、転写材切断部を転写材収納部と転写ローラーとの間に配設することにより、転写材の切断後に転写材が把持される。これにより、切断部の切断による反りやしわ等の変形部を転写材把持部材で挟んで増大させることがないので、転写材の変形部が転写材全体に発展するのをより効果的に防止できる。
【0009】
また、転写材切断部を転写ローラーと定着部との間に配設することにより、転写材把持後に転写材が切断される。転写材の切断は、転写材把持よりも大きなせん断力が転写材にかかる。したがって、このように転写材把持後に転写材を切断することで、折れ目やしわ等の変形部の拡大、増大が少なくなる。その結果、転写材の変形部が転写材全体に発展するのを防止できる。
【0010】
更に、転写材切断部を転写ローラーに給送する転写材を収納する転写材収納部に配設することで、転写材が転写材収納部内で停止状態で切断開始される。これにより、切断時のせん断力を転写材に均一にかけることができる。したがって、転写材の反りやしわ等の変形部の発生を低減することができる。その結果、転写材の変形部が発展するのを低減することができる。
【0011】
更に、切断部を転写材把持部材の把持に干渉させないことで、転写材にかかる把持よるせん断力を均一化することができる。また、把持面積が増大するので、せん断力を低減できる。したがって、把持による折れ目やしわ等の変形部の発生が低減できる。その結果、転写材の変形部が発展するのを低減することができる。
【0012】
更に、切断部を把持時の転写材把持部材に干渉させることで、転写材把持部材が切断部を跨いで転写材を把持することが可能となる。転写材に切断部を形成すると、転写材がこの切断部分で連続しない。このため、転写材の切断部が広がったり、切れ端が反ったりして歪みが増大し易い。そこで、このように転写材把持部材が切断部を跨いで転写材を把持することにより、転写材搬送による転写材あばれがあっても、切断部による転写材の部分的歪みの増大を抑制することができる。したがって、転写材の反りやしわ等の変形部の発生を低減することができる。その結果、転写材の変形部が発展するのを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明にかかる画像形成装置の実施の形態の第1例を模式的にかつ部分的に示す図である。
【図2】(a)はこの第1例の画像形成装置の把持位置にあるグリッパおよび退避位置にある突き出し爪を模式的に示す斜視図、(b)は解放位置にあるグリッパおよび突き出し位置にある突き出し爪を模式的に示す斜視図である。
【図3】第1例の転写材収納部および転写材先端切断部を模式的に示す図である。
【図4】(a)は第1例の転写材先端切断部の非作動状態を模式的に示す図、(b)は切断刃を模式的に示す斜視図、(c)は転写材先端切断部の作動状態を模式的に示す図である。
【図5】第1例の転写材押さえ部材と切断刃受け台を模式的に示す図である。
【図6】(a)は第1例の転写材押さえ部材の非作動状態を模式的に示す図、(b)は転写材押さえ部材の作動状態を模式的に示す図である。
【図7】第1例の切断刃による転写材の切断時を模式的に示す図である。
【図8】第1例の切断刃による転写材の切断終了後を模式的に示す図である。
【図9】第1例の転写材の切断部を模式的にかつ部分的に示す図である。
【図10】第1例の切断部を有する転写材の把持を模式的にかつ部分的に示す図である。
【図11】第1例の切断部を有する転写材の定着部直前の状態を模式的に示す図である。
【図12】第1例の切断部を有する転写材の変形部の発展の防止を説明する図である。
【図13】本発明にかかる画像形成装置の実施の形態の第2例を模式的にかつ部分的に示す図である。
【図14】第2例の切断刃を模式的にかつ部分的に示す図である。
【図15】第2例の切断刃による転写材切断を説明する図である。
【図16】本発明にかかる画像形成装置の実施の形態の第3例を模式的にかつ部分的に示す、図10と同様の図である。
【図17】本発明にかかる画像形成装置の実施の形態の第4例を模式的にかつ部分的に示す、図10と同様の図である。
【図18】(a)は平板状のグリッパの把持による折れ目を説明する図、(b)は櫛歯状のグリッパの把持による折れ目を説明する図である。
【図19】本発明にかかる画像形成装置の実施の形態の第5例の切断刃を模式的にかつ部分的に示す、図4(b)と同様の図である。
【図20】第5例の切断刃で切断された転写材を模式的にかつ部分的に示す図である。
【図21】本発明にかかる画像形成装置の実施の形態の第6例を模式的にかつ部分的に示す、図3と同様の図である。
【図22】第6例の切断刃を模式的にかつ部分的に示す、図14と同様の図である。
【図23】第6例の切断刃による転写材の切断終了後の状態を模式的に示す図である。
【図24】第6例の切断部を有する転写材の把持を模式的にかつ部分的に示す、図10と同様の図である。
【図25】第6例の切断部を有する転写材の変形部の発展の防止を説明する図である。
【図26】本発明にかかる画像形成装置の実施の形態の第7例の切断刃を模式的にかつ部分的に示す、図14と同様の図である。
【図27】第7例の切断部を有する転写材の把持を模式的にかつ部分的に示す、図10と同様の図である。
【図28】本発明にかかる画像形成装置の実施の形態の第8例の切断刃を模式的にかつ部分的に示す、図4(b)と同様の斜視図である。
【図29】紙しわ評価試験に用いた記録紙を模式的に示す平面図である。
【図30】(a)は従来の転写材の把持によるしわ等の変形部を説明する図、(b)は定着により転写材の変形部の発展を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明にかかる転写材搬送装置を備える画像形成装置の実施の形態の一例の一部を模式的にかつ部分的に示す図である。
【0015】
図1に示すように、この第1例の画像形成装置1は、水平またはほぼ水平にタンデムに配置されたイエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の像担持体である感光体2Y,2M,2C,2Kを備えている。ここで、各感光体2Y,2M,2C,2Kにおいて、2Yはイエローの感光体、2Mはマゼンダの感光体、2Cはシアンの感光体、2Kはブラックの感光体を表す。また、他の部材についても同じように、部材の符号にそれぞれ各色のY,M,C,Kを添えて各色の部材を表す。
【0016】
各感光体2Y,2M,2C,2Kの周囲には、それぞれ、帯電部3Y,3M,3C,3Kが設けられている。また、各帯電部3Y,3M,3C,3Kから、それぞれ、各感光体2Y,2M
,2C,2Kの回転方向に向かって、順に、露光部4Y,4M,4C,4K、現像部5Y,5M,5C,5K、および一次転写部6Y,6M,6C,6Kが配設されている。
【0017】
また、画像形成装置1は、転写ベルトである無端状の中間転写ベルト8(像担持体に相当)を備えている。この中間転写ベルト8は、各感光体2Y,2M,2C,2Kの上方に配
置されている。そして、中間転写ベルト8は各一次転写部6Y,6M,6C,6Kで各感光
体2Y,2M,2C,2Kに圧接されている。
【0018】
図示しないが、中間転写ベルト8は、例えば樹脂等の可撓性の基材と、この基材の表面に形成されたゴム等の弾性層と、この弾性層の表面に形成された表層とを有する3層構造の比較的柔らかい弾性ベルトに形成されている。もちろん、これに限定されることはない。中間転写ベルト8は図示しないモーターの駆動力が伝達される中間転写ベルト駆動ローラー9および中間転写ベルトテンションローラー11に巻き掛けられている。そして、中間転写ベルト8はテンションを付与された状態で、矢印方向に回転するようにされている。
なお、各色Y、M、C、Kに対応する感光体等の部材の配置順は、図1に示す例に限定されることはなく、任意に設定することができる。また、一次転写後の各感光体2Y,2
M,2C,2Kの表面は、図示しない感光体クリーニング部でクリーニングされる。
【0019】
各一次転写部6Y,6M,6C,6Kより中間転写ベルト8の回転方向(矢印で図示)に
進んだ各一次転写部6Y,6M,6C,6Kの近傍の中間転写ベルト8の位置には、それぞ
れ、中間転写ベルトスクイーズ装置12Y,12M,12C,12Kが配設されている。更
に、中間転写ベルト8の中間転写ベルト駆動ローラー9側には二次転写部13が設けられている。
【0020】
二次転写部13は、二次転写ローラー14および二次転写ローラークリーニング部15を備えている。二次転写ローラー14は回転軸14aを中心に矢印で示す方向に回転する。この二次転写ローラー14は、中間転写ベルト駆動ローラー9に巻き掛けられる中間転写ベルト8に圧接される。このとき、中間転写ベルト駆動ローラー9は二次転写ローラー14の押圧に対するバックアップローラーとして機能する。
【0021】
更に、二次転写ローラー14は、基材14bの円弧部の外周面に巻かれたシート状の弾性部材14cを有している。この弾性部材14cにより二次転写ローラー14の円弧部の外周面に抵抗層が形成されている。そして、図1に示すように中間転写ベルト8と二次転写ローラー14の弾性部材14cとの間に二次転写ニップ13aが形成される。
【0022】
更に、二次転写ローラー14は、中間転写ベルト8に転写されたトナー像を、転写紙等の転写材に転写させる転写バイアスが印加される。そして、二次転写ローラー14は、中間転写ベルト8の矢印方向の回転時に矢印方向に回転するとともに転写バイアスが印加されることにより、二次転写ニップ13aで中間転写ベルト8のトナー像を転写材33に転写する。
【0023】
また、二次転写ローラー14は、凹部17を有している。この凹部17内には、転写材把持部材としてのグリッパ18、グリッパ18が着座する転写材把持部材受け部材であるグリッパ支持部19、および転写材剥離部材としての突き出し爪34が配設されている。図2(a)および(b)に示すように、グリッパ18は転写材搬送方向である第1の方向と直交または略直交する第2の方向(二次転写ローラー14の軸方向)に所定数(図示例では10個)だけ所定間隔を置いて櫛歯状に配設されている。また、グリッパ支持部19も、同様にして各グリッパ18に対応して配設される。
【0024】
更に、突き出し爪34は、各グリッパ18の間に位置するようにして所定数(図示例では4個)配設される。各グリッパ18および各突き出し爪34はカム機構35によって制御される。そして、各グリッパ18はα方向に回動して図2(a)に示す位置にあるときは、各グリッパ18は対応するグリッパ支持部19との間で転写材33の先端部33aを把持する把持位置になる。また、各突き出し爪34はβ方向に直線移動して図2(a)に示す位置にあるときは、退避位置になる。更に、各グリッパ18はγ方向に回動して図2(b)に示す位置にあるときは、各グリッパ18はグリッパ支持部19から離間して転写材33の把持を解放する解放位置になる。また、各突き出し爪34はδ方向に直線移動して図2(b)に示す位置にあるときは、転写材33の背面(図1に図示するトナー像が転写される転写面33dの反対側の面)を突き出して二次転写ローラー14から剥離する突出位置になる。
【0025】
転写材33がゲートローラー40から転写材供給ガイド41を介して給送されてくると、転写材33の先端部33aがグリッパ18とグリッパ支持部19との間に把持される(転写材把持工程)。そして、中間転写ベルト8に担持されているトナー像が、グリッパ18で把持された転写材33の転写面33dに二次転写部13の二次転写ニップ13aで転写される(転写工程)。なお、グリッパ18による把持の転写材33の把持代は、この把持代部分を切断しても転写材33の画像形成領域より先端側に所定の余白が形成されるように設定されている。
【0026】
二次転写ニップ13aを通過した転写材33は、グリッパ18による把持から解放される。この転写材33の把持解放に前後して、突き出し爪34が二次転写ローラー14の凹部17から突出して転写材33の背面を突き出す。これにより、転写材33は二次転写ローラー14から剥離される。
【0027】
二次転写ローラークリーニング部15は、クリーニングブレード等のクリーニング部材15aと液体現像剤回収容器15bとを有する。クリーニング部材15aは、二次転写ローラー14の弾性部材14cの外周面に当接してこの弾性部材14cに付着する液体現像剤を除去する。液体現像剤回収容器15bは、クリーニング部材15aで除去された液体現像剤を回収して貯留する。
【0028】
更に、図1に示すように画像形成装置1は、転写材収納部36、転写材切断部である転写材先端切断部37、転写材搬送ローラー38、第1の気流発生装置42、第2の気流発生装置43、転写材搬送部44、第3の気流発生装置45、および定着部46を備えている。
図3に示すように、転写材収納部36は従来公知のものであり、転写材カセット36a、転写材積載台36b、転写材積載台36bを鉛直上方に付勢する付勢ばね36c、および横断面半月状(半円弧状)の転写材送給ローラー36dを有する。そして、付勢ばね36cの付勢力で、最上位置にある転写材33の上面が転写材送給ローラー36dに当接している。転写材送給ローラー36dは回転軸36d1を中心に回転することで、転写材積
載台36b上の転写材33を1枚ずつ送給する(転写材搬送工程)。
【0029】
転写材先端切断部37は転写材収納部36の近傍で、転写材収納部36からゲートローラー40への転写材搬送経路に配設される。この転写材先端切断部37は、切断刃37a、転写材受け台37b、板状の転写材押さえ部材37c、および転写材33の切りくず33eを回収する切りくず回収容器37dを有する。
【0030】
図4(a)ないし(c)に示すように、切断刃37aは楕円柱または円柱状に形成されて穿孔刃として構成される。そして、切断刃37aは、細長い矩形状の切断刃支持部材37eに所定数(図示例では、5個)だけ第2の方向に所定間隔を置いて一列になるように
配設される。その場合、各切断刃37aが第1の方向に移動してグリッパ18の位置に到達したと想定したとき、各切断刃37aは、いずれも各グリッパ18から第2の方向に外れた位置、つまり各グリッパ18と干渉しない位置に配設される。
【0031】
また、切断刃支持部材37eは、その一端を回転軸37fにより装置本体(不図示)に回転可能に支持される。更に、切断刃支持部材37eは、支持部材37gに支持された付勢ばね37hの引っ張り力で、図4(a)において常時時計回りに付勢されている。その場合、切断刃支持部材37eは時計回りに回転してストッパー37iに当接することより、それ以上の時計回りの回転が阻止される。
【0032】
更に、偏心カム37jがカム軸37kを中心に回動可能に配設されている。偏心カム37jは図示しないモーターで回転駆動される。偏心カム37jが図4(a)に示す最大偏心位置にあるとき、切断刃支持部材37eは付勢ばね37hの付勢力に抗して反時計回りに回動してストッパー37iから大きく離間した位置となる。この切断刃支持部材37eの位置では、各切断刃37aは、いずれも上昇して転写材搬送経路から脱出した退避位置となる。偏心カム37jが図4(a)に示す位置から方向εに回動すると、切断刃支持部材37eは付勢ばね37hの引っ張り力で時計回りに回動する。すると、各切断刃37aが転写材搬送経路の方向ζへ進出する。切断刃支持部材37eがストッパー37iに当接すると、切断刃支持部材37eの回動は停止する。このとき、各切断刃37aは転写材搬送経路と交差した転写材切断位置となる。そして、偏心カム37jは更に方向εに回動して図4(c)に示すように切断刃支持部材37eから離間する。更に、偏心カム37jは方向εに回動して再び切断刃支持部材37eに当接するとともにこの切断刃支持部材37eを図4(c)において反時計回りに回動する。すると、各切断刃37aは方向ηへ移動して転写材搬送経路から脱出して離間する。そして、偏心カム37jは再び図4(a)に示す最大偏心位置に来ると、その回動が停止する。すると、切断刃支持部材37eの回動も停止し、各切断刃37aは再び退避位置となり、この位置に保持される。
【0033】
図3および図5に示すように、転写材受け台37bは搬送される転写材33を受けるものであり、楕円形状または円形状の切断刃逃げ孔37mを有する。切断刃逃げ孔37mは各切断刃37aに対応して設けられる。そして、各切断刃37aは転写材切断位置に移動するとき、対応する切断刃逃げ孔37m内に進入する。各切断刃逃げ孔37mの下方には、切りくず回収容器37dの上方開口37nが対向して位置する。
【0034】
図3および図5に示すように、転写材押さえ部材37cは、一端が取り付けられた回転軸37oを中心に回動可能に装置本体に支持される。転写材押さえ部材37cの他端37c1には、切断刃受け孔37pを有する。切断刃受け孔37pは各切断刃逃げ孔37mに
対応して設けられるとともに、切断刃逃げ孔37mと同形状で略半分を切断した形状にされている。
【0035】
図6(a)および(b)に示すように、転写材押さえ部材37cは、支持部材37qに支持された付勢ばね37rの引っ張り力で、図6(a)において常時時計回りに付勢されている。その場合、転写材押さえ部材37cは時計回りに回転して転写材受け台37bに当接することより、それ以上の時計回りの回転が阻止される。
【0036】
更に、偏心カム37sがカム軸37tを中心に回動可能に配設されている。偏心カム37sは図示しないモーターで回転駆動される。両偏心カム37j,37sの各駆動モータ
ーは、いずれも画像形成装置1の制御装置で駆動制御される。偏心カム37sが図6(a)に示す最大偏心位置にあるとき、転写材押さえ部材37cは付勢ばね37rの付勢力に抗して反時計回りに回動して、その先端37c1が転写材受け台37bから大きく離間し
た退避位置となる。この転写材押さえ部材37cの退避位置では、転写材押さえ部材37
cは転写材搬送経路から大きく離脱して、転写材33が自由に移動するようになる。
【0037】
転写材受け台37b上に転写材33があるとき、偏心カム37sが図6(a)に示す位置から方向θに回動すると、転写材受け台37b上にある転写材33に当接してこの転写材33を転写材受け台37bとの間に挟圧する。これにより、転写材33は比較的堅固に保持され、転写材33は移動不能となる。そして、偏心カム37sは更に方向θに回動して、図6(b)に示すように転写材押さえ部材37cから離間する。更に、偏心カム37sは方向θに回動して再び転写材押さえ部材37cに当接するとともにこの転写材押さえ部材37cを図6(b)において反時計回りに回動する。偏心カム37sは再び図6(a)に示す最大偏心位置に来ると、その回動が停止する。すると、転写材押さえ部材37cの回動も停止し、各切断刃37aは再び退避位置となり、この位置に保持される。これにより、転写材33は再び移動可能となる。
【0038】
この転写材先端切断部37においては、図7に示すように転写材収納部36から搬送されてきた転写材33の先端部33aが転写材搬送ローラー38に到達する前で転写材受け台37bの所定位置に来ると、転写材送給ローラー36dが転写材33から離間し、かつ転写材33は転写材押さえ部材37cに押圧されて停止する。この状態で、切断刃37aが転写材搬送経路の方へ進出して転写材33の先端部33aを切断する(転写材切断工程)。このとき、転写材33の切りくず33eは切りくず回収容器37d内に上方開口37nを通して回収される。
【0039】
その後、図8に示すように切断刃37aが退避位置の方へ移動するとともに、転写材押さえ部材37cが退避位置に移動する。こうして、図9に点線で示すように転写材33の先端に開口する半楕円形凹部状または半円形凹部状の切り取り部である切断部33bが転写材33の先端部33aに形成される。その場合、各切断部33bはいずれもグリッパ18の把持代の領域内に形成されるようになっている。
【0040】
また、転写材押さえ部材37cの退避位置への移動により、転写材33は移動可能となるとともに、転写材送給ローラー36dが転写材33の後端側に再び当接して転写材33を搬送する。そして、図9に点線で示すように半楕円形状または半円形状の凹部の切断部33bが形成された転写材33の先端部33aが転写材搬送ローラー38に挟圧され、転写材33はゲートローラー40の方へ搬送される。
【0041】
そして、前述のように各切断刃37aが各グリッパ18に干渉しない位置に配設されていることから、図10に示すように各グリッパ18は、いずれも各切断部33bから第2の方向に外れた干渉しない位置で転写材33の先端部33aを把持するようになる。なお、各グリッパ18の間に配置される各突き出し爪34が突き出すとき、各突き出し爪34は各切断部33bに干渉しない位置の転写材背面に当接するようにされている。二次転写後に、各グリッパ18による転写材33の把持が解除されたとき、グリッパ18の把持等により、転写材33の先端部33aにしわや折れ目等の変形部が発生する場合がある。
【0042】
第1の気流発生装置42は、エアーを矢印で示すようにグリッパ18の把持から解放された転写材33の先端部33aに向かって吹き付ける。これにより、転写材33の先端部33aが中間転写ベルト8と一緒に連れ動くことが防止される。
【0043】
第2の気流発生装置43はダクト状の吸引部材43aとファン等の気流発生部43bとを有する。吸引部材43aはガイド面43a1と多数の吸引孔43a2とを有する。そして、二次転写ローラー14から剥離された転写材33は、吸引部材43aのガイド面43a1にガイドされて移動する。このとき、気流発生部43bの駆動により、エアーが矢印で
示すように吸引部材43aの吸引孔43a2を通して吸引される。これにより、転写材3
3は吸引部材43aに吸引ガイドされながら転写材搬送部44の方へ移動する。なお、転写材33は中間転写ベルト8と二次転写ローラー14の回転力で転写材搬送部44の方へ移動する。
【0044】
転写材搬送部44は、多数の吸引孔44a1を有する転写材搬送ベルト44a、多数の
吸引孔44b1を有するダクト状の吸引部材44b、および気流発生部44cを有する。
そして、第2の気流発生装置43から移動してきた転写材33が、懸架ローラー44dに巻き掛けられた無端状の転写材搬送ベルト44aによって搬送される。このとき、気流発生部44cの駆動により、エアーが矢印で示すように吸引部材44bの吸引孔44b1お
よび転写材搬送ベルト44aの吸引孔44a1を通して吸引される。これにより、転写材
33は転写材搬送ベルト44aにより吸引されながら第3の気流発生装置45の方へ搬送される。
【0045】
第3の気流発生装置45は、ダクト状の吸引部材45aとファン等の気流発生部45bとを有する。吸引部材45aはガイド面45a1と多数の吸引孔45a2とを有する。そして、転写材搬送部44から搬送されてきた転写材33は、吸引部材45aのガイド面45a1にガイドされて移動する。このとき、気流発生部45bの駆動により、エアーが矢印
で示すように吸引部材45aの吸引孔45a2を通して吸引される。これにより、転写材
33は吸引部材45aに吸引ガイドされながら定着部46の方へ移動する。
【0046】
定着部46は、加熱ローラー46aとこの加熱ローラー46aに圧接される加圧ローラー46bと有する。そして、転写材33のトナー像がこれらの加熱ローラー46aおよび加圧ローラー46bにより加熱加圧されて定着される(定着工程)。その場合、図11に示すように転写材33が定着部46に到達したときは、前述のように転写材33の先端部33aにしわや折れ目等の変形部が存在している場合がある。転写材33の先端部33aがこの状態で定着部46を通過すると、この先端部33aが加熱、加圧されることで、転写材33の繊維が熱膨張する。このとき、図12に示すように先端部33aのしわや折れ目等の変形部33cにより、両端矢印ιで示すように熱膨張むらが発生するとともにこの熱膨張むらが増大する。そして、この熱膨張むらにより、変形部33cが一方向矢印κで示す方向(第1の方向と逆向きまたは略逆向き)に発展して画像形成領域まで到達しようとする。変形部33cが画像形成領域まで到達すると、良好な画像が行われなくなる。
【0047】
しかし、転写材33の先端部33aに形成されている切断部33bにより、転写材33の先端部33aが一方向矢印λで示す切断部33bに向かう方向に熱膨張し、熱膨張むらの力が逃がされる。その結果、一方向矢印κで示す方向の変形部33cの発展が防止され、変形部33cが画像形成領域を含む所定の余白部領域まで到達しなく、良好な画像形成が行われる。定着後、転写材は図示しない排出トレイに排出される。
この第1例の画像形成装置1の他の構成および他の画像形成動作は、液体現像剤を用いた従来の画像形成装置と同様であるので、その説明は省略する。
【0048】
この第1例の転写材搬送部44を有する画像形成装置1によれば、転写材先端切断部37の切断刃37aにより転写材33の先端部33aを切断する。そして、先端部33aが切断された転写材33のトナー像が定着部46で加熱加圧されて定着される。転写材33の先端部33aが加熱、加圧されることで、転写材33の繊維が熱膨張する。このとき、転写材33の先端部にしわや折れ目等の変形部33cが存在していると、熱膨張むらが発生するとともにこの熱膨張むらが増大する。そして、この熱膨張むらにより、変形部33cが第1の方向と逆向きまたは略逆向きに発展して画像形成領域まで到達しようとする。変形部33cが画像形成領域まで到達すると、良好な画像が行われなくなる。
【0049】
しかし、転写材33の先端部33aがこの先端部33aに形成されている切断部33b
に向かう方向に熱膨張して、この切断部33bにより熱膨張むらの力を逃がすことができる。その結果、第1の方向と逆向きまたは略逆向きの変形部33cの発展を防止することができ、変形部33cを画像形成領域を含む所定の余白部領域まで到達するのを防止することができる。これにより、良好な画像形成を行うことが可能となる。このようにして、転写材33の先端部33aに反りやしわ等の変形部33cが生じても、良好な画像形成を行うことのできる画像形成装置1および画像形成方法を実現することが可能となる。
【0050】
特に、転写材先端切断部37を転写材収納部36と二次転写部13との間に配設することにより、転写材33の先端部33aの切断後に転写材33がグリッパ18により把持される。これにより、切断部33bの切断による反りやしわをグリッパ18で挟んで増大させることがないので、転写材33のしわが転写材全体に発展するのをより効果的に防止できる。
【0051】
更に、切断部33bを把持状態にあるグリッパ18に干渉させないことで、転写材33の先端部33aにかかる把持よるせん断力を均一化することができる。また、把持面積が増大するので、せん断力を低減できる。したがって、グリッパ18の把持による折れ目やしわの発生が低減できる。その結果、転写材33のしわが発展するのを低減することができる。
【0052】
図13は、本発明の画像形成装置の実施の形態の第2例を模式的にかつ部分的に示す図、図14は図13に矢印XIV方向から見た部分図である。
図13および図14に示すように、この第2例の画像形成装置1では、転写材先端切断部37が転写材収納部36の近傍でゲートローラー40に至る転写材搬送経路に配設されない。また、第3の気流発生装置45が配設されない。そして、図1において第3の気流発生装置45の配設位置に、つまり、転写材搬送部44と定着部46との間に転写材先端切断部37が配設される。この第2例の転写材先端切断部37は、楕円形状の穿孔刃として形成された所定数の切断刃37a、これらの切断刃37aを軸方向に一列に支持する細長い横断面半月状(半円弧状)シャフトの切断刃支持部材37e、切断刃バックアップローラー37u、および切りくず回収容器37dを有する。なお、この第2例では、第1例の転写材押さえ板37c、転写材受け台37b、切断刃37aおよび転写材押さえ板37cを移動制御するカム等は配設されない。
【0053】
切断刃支持部材37eおよび切断刃バックアップローラー37uは、第2の方向となるようにして装置本体に回転可能に配設される。したがって、各切断刃37aも第2の方向に配設される。その場合、通常時は各切断刃37aは転写材搬送経路の切断位置の直前に待機している。
【0054】
この第2例の画像形成装置1では、転写材搬送部44から搬送されてきた転写後の転写材33の先端部33aが、転写材先端切断部37に到達する直前で切断刃支持部材37eおよび切断刃バックアップローラー37uがそれぞれ矢印で示す方向に回転する。すると、図15に示すように転写材33は移動しながらその先端部33aが第1例と同様に各切断刃37aによって切り取られ、半楕円形状の切断部33bが形成される。すなわち、転写材33の把持後に転写材33の先端部33aが切断される。転写材33の先端部33aの切断は、転写材33の把持よりも大きなせん断力が転写材33の先端部33aにかかる。したがって、このように転写材33の把持後に転写材33の先端部33aを切断することで、折れ目やしわ等の拡大、増大が少なくなる。その結果、転写材33のしわが転写材全体に発展するのを防止できる。
この第2例の画像形成装置1の他の構成および他の作用効果は、第1例のそれらと同じである。
【0055】
図16は、本発明の画像形成装置の実施の形態の第3例を模式的にかつ部分的に示す図である。
この第3例の画像形成装置1では、前述の第1例において各切断刃37aが各グリッパ18と、第2の方向に干渉する位置に配設されている。したがって、図16に示すようにこの第2例の画像形成装置1では、転写材33の各切断部33bが、把持位置にある各グリッパ18に干渉するようになる。
【0056】
このように切断部33bを把持時のグリッパ18に干渉させることで、グリッパ18が切断部33bを跨いで転写材33を把持することが可能となる。転写材33の先端部33aに切断部33bを形成すると、転写材33がこの切断部分で連続しない。このため、転写材33の切断部33bが広がったり、切れ端が反ったりして歪みが増大し易い。そこで、このようにグリッパ18が切断部33bを跨いで転写材33を把持することにより、転写材搬送による転写材あばれがあっても、切断部33bによる転写材33の部分的歪みの増大を抑制することができる。したがって、転写材33の反りやしわの発生を低減することができる。その結果、各切断部33bにより各グリッパ18の把持等による変形部33cの発展が防止される。
この第3例の画像形成装置1の他の構成および他の作用効果は、第1例のそれらと同じである。
【0057】
図17は、本発明の画像形成装置の実施の形態の第4例を模式的にかつ部分的に示す図である。
図17に示すように、この第4例の画像形成装置1では、グリッパ18が櫛歯状に形成されていなく、1枚の平板で形成されている。その場合、各突き出し爪34はグリッパ18に干渉しない位置で転写材33の背面を突き出すようにされている。この第4例では、平板状のグリッパ18で記録紙先端部を把持することにより、記録紙先端部の大面積を均一に把持することができるため、把持による折れ目、しわの発生が低減できる。すなわち、グリッパ18の把持等による先端部33aの変形部33cは、櫛歯状のグリッパ18の把持の場合に比して生じ難い。したがって、各切断部33bにより変形部33cの発展がより一層防止される。
【0058】
また、図18(a)に示すように平板状のグリッパ18による把持では、第1の方向と逆向きに折れ目が入り難いので、転写材33のカットする把持代が比較的短くて済む。これに対して、図18(b)に示すように、櫛歯状のグリッパ18による把持では、第1の方向と逆向きに折れ目が入り易いので、転写材33のカットする把持代が比較的長くなる傾向にある。
この第4例の画像形成装置1の他の構成および他の作用効果は、第1例のそれらと同じである。
【0059】
図19は、本発明の画像形成装置の実施の形態の第5例を模式的にかつ部分的に示す、図4(b)と同様の図である。
図19に示すように、この第5例の画像形成装置1では、前述の第1例の断面楕円形状または円形状の切断刃37aに代えて、横断面三角形状の切断刃37aが第1例と同様にして配設されている。したがって、図20に示すようにこの第5例の画像形成装置1では、切断部33bは三角形状に形成される。
この第5例の画像形成装置1の他の構成および他の作用効果は、第1例のそれらと同じである。
【0060】
図21は、本発明の画像形成装置の実施の形態の第6例を模式的にかつ部分的に示す、図3と同様の図、図22は図21の矢印XXII方向から見た部分図である。
図21および図22に示すように、この第6例の画像形成装置1では、切断刃37aが
転写材収納部36の横断面半月状の転写材送給ローラー36dに配設されている。すなわち、転写材先端切断部37が転写材収納部36内に設けられる。また、切断刃37aの形状は曲線状に形成されている。なお、この第6例では、第1例の転写材押さえ板37c、切りくず回収容器37d、切断刃37aおよび転写材押さえ板37cを移動制御するカム等は配設されない。
【0061】
この第6例の画像形成装置1では、通常時(非転写材給送時)には、図21に示すように転写材搬送ローラー36は付勢ばね36cの付勢力で、切断刃37aの端が最上位置にある転写材33の先端に当接する位置にされている。そして、転写材給送開始時に転写材給送ローラー36dが矢印方向(図21において反時計回り)に回転すると、転写材33は先端から切り込まれて給送されるようになる。先端部33aが所定量切り込まれると、各切断刃37aが転写材33から外れ、転写材給送ローラー36d自体が転写材33に当接する。図23に示すように、転写材33の先端部33aが転写材搬送ローラー38に挟圧された時点で、転写材給送ローラー36dが転写材33から外れ、転写材33は転写材搬送ローラー38により搬送される。こうして、図24に示すように、転写材33の先端部33aには、転写材33の先端から第1の方向に傾斜して延びる直線状の切れ目である切断部33bが形成される。すなわち、切断刃37aの曲線形状が、転写材33に第1の方向に傾斜した直線状の切れ目が形成される形状とされている。
【0062】
このように、転写材先端切断部37を転写材収納部36に配設することで、転写材33が転写材収納部36内で停止状態で切断開始される。これにより、切断刃37aによる切断時のせん断力を転写材33に均一にかけることができる。したがって、転写材33の反りやしわの発生を低減することができる。その結果、転写材33の変形部33cが発展するのを低減することができる。
【0063】
また、各切断刃37aは、各グリッパ18(第1例のグリッパ18と同じ)と、第2の方向に干渉する位置に配設される。したがって、図24に示すように各グリッパ18は、転写材先端部33aの傾斜した線状の切断部33bを第1の方向に跨ぐように把持する。転写材33の先端部33aに切断部33bを形成すると、転写材33がこの切断部分で連続しない。このため、転写材33の切断部33bが広がったり、切れ端が反ったりして歪みが増大し易い。そこで、このようにグリッパ18が切断部33bを跨いで転写材33を把持することにより、転写材搬送による転写材あばれがあっても、切断部33bによる転写材33の部分的歪みの増大を抑制することができる。したがって、転写材33の反りやしわの発生を低減することができる。その結果、転写材33のしわが発展するのを低減することができる。
【0064】
図25に示すように、定着部46の定着により先端部33aの変形部33cが前述と同様に発展しようとする。しかし、転写材33の先端部33aに形成されている切断部33bにより、転写材33の先端部33aが一方向矢印λで示す切断部33bに向かう方向に熱膨張し、熱膨張むらの力が逃がされる。そのとき、切断部33bの切れ目部分ので転写材が重なり33iが生じたり、広がり33jが生じたりする。その結果、一方向矢印κで示す方向の変形部33cの発展が防止され、変形部33cが画像形成領域を含む所定の余白部領域まで到達しなく、良好な画像形成が行われる。
【0065】
更に、切断部33bが切れ目で形成されるので、転写材33の切断による切りくずは生じない。したがって、切りくず回収容器37dを不要にでき、部品点数を削減できる。
この第6例の画像形成装置1の他の構成および他の作用効果は、第1例のそれらと同じである。
【0066】
図26は、本発明の画像形成装置の実施の形態の第7例を模式的にかつ部分的に示す、
図22と同様の図である。
図26に示すように、この第7例の画像形成装置1では、切断刃37aが第1の方向に延びる直線状に形成される。したがって、図27に示すように、転写材33の先端部33aには、転写材33の先端から第1の方向に延びる直線状の切れ目である切断部33bが形成される。
【0067】
また、各切断刃37aは、第1例の各グリッパ18(第1例のグリッパ18と同じ)と、第2の方向に干渉しない位置に配設される。したがって、図27に示すように各グリッパ18は、転写材先端部33aの切断部33bと切断部33bとの間で転写材先端部33aを把持する。これにより、前述の第1例と同様の効果を得ることができる。
この第7例の画像形成装置1の他の構成および他の作用効果は、第6例のそれらと同じである。
【0068】
図28は、本発明の画像形成装置の実施の形態の第8例を模式的にかつ部分的に示す、図4(b)と同様の図である。
図28に示すように、この第8例の画像形成装置1では、第1例と同様の切断刃支持部材37eに所定数の切断刃37aが所定の間隔を置いて一列に配設される。各切断刃37aは、薄平板から第1の方向に延びる直線状に形成される。また、図示しないが転写材受け台37bには、第1例の切断刃逃げ孔37mは設けられない。そして、転写材33の切断の際に切断刃37aを受ける受け部材として、転写材受け台37bにゴム層が配設される。このゴム層は、切断刃37aが繰り返し刺さって変形し難い層に形成される。ゴム層としては、例えば天然ゴム、ブタジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等が用いられる。
【0069】
したがって、図27に示すと同様に、転写材33の先端部33aには、転写材33の先端から第1の方向に延びる直線状の切れ目である切断部33bが形成される。また、直線状の切断刃37aをゴム層で受けることにより、切断時の転写材33にかかる衝撃が抑制され、転写材33の変形部33cの発生が低減する。
この第8例の画像形成装置1の他の構成および他の作用効果は、第1例のそれらと同じである。
【0070】
画像形成装置1の実施の形態の第1ないし第8例における実施例1ないし10、および比較例について、紙しわ評価試験を実施した。
まず、実施例1について説明する。この実施例1は前述の第1例の実施例であり、最善実施例である。
定着部46について説明する。図11に示す定着部46において、加熱ローラー46aおよび加圧ローラー46bは、ともに共通仕様とする。すなわち、芯金46a1,46b1
は厚さ2mmのアルミニウム管とする。なお、芯金46a1,46b1として、他に、鉄、
ステンレス、真鍮等を用いることができる。弾性層46a2,46b2は厚さ2mmのシリ
コーンゴムとする。なお、弾性層46a2,46b2として、他に、フッ素ゴム、ウレタン
ゴム等を用いることができる。離型層46a3,46b3はPFAとする。なお、離型層4
6a3,46b3として、他に、PTFE、FEP、ETFE、PVDF、PVF、PCT
FE、ECTFE等を用いることができる。加熱ローラー46aおよび加圧ローラー46bの外径(直径)は60mmとする。加熱ローラー46aおよび加圧ローラー46bは図示しないばねで両端総荷重70kgfで互いに圧接する。
【0071】
加熱ローラー46aのハロゲンランプ46cは1000Wとし、加圧ローラー46bのハロゲンランプ46dは600Wとする。加熱ローラー46aおよび加圧ローラー46bの各温度を、それぞれ図示しない各温度検知装置でを検知する。そして、検知した各温度に基づいて、それぞれ各ハロゲンランプ46c,46dをオン/オフ制御し、加熱ローラ
ー46aおよび加圧ローラー46bの各温度を、ともに160℃に維持する。転写材定着速度は50ppm(枚/分)、転写材搬送速度を250mm/secとする。
【0072】
定着ニップ幅(第1の方向のニップ長さ)は10mmする。ニップ測定方法は、回転している加熱ローラー46aおよび加圧ローラー46bにOHPシートを通し、途中で加熱ローラー46aおよび加圧ローラー46bを停止するとともに各ハロゲンランプ46c,
46dを消灯する。この状態で、3分間放置する。その後、加熱ローラー46aおよび加圧ローラー46bを回転してOHPシートを排出する。このとき、ニップ境界線跡が第2の方向に延びる略平行な2本線としてOHPシートに記録されるので、その幅を測定してニップ幅とした。
【0073】
転写材33のしわの評価について説明する。転写材33の枚数を従来の通常のしわの評価で使用する転写材の枚数より少ない1条件あたり500枚にする。そして、転写材33のしわを発生しやすい条件にした。すなわち、転写材33として、OKプリンス上質エコG100(登録商標)の記録紙を用いる。このOKプリンス上質エコG100(登録商標)は、古紙パルプが100%使用され、再生紙で紙繊維が短く、こしのない薄い記録紙である。坪量は52.3g/mm2である。温度40℃で、相対湿度95%の温湿度環境で紙しわ評価試験を行う。印字パターン(画像パターン)は図29に示す2mm角の市松模様Aを画像形成領域内に形成し、トナー付着量は不均一である。黒色部分は、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの4色重ね部である。
【0074】
現像剤として液体現像剤を使用し、この液体現像剤は、平均粒径3μmの固形分トナーを50csシリコーンオイルのキャリアー液に分散させた液体トナーである。固形分トナーは、エポキシ、ポリエステル、スチレン等の樹脂に顔料を分散させて着色したものが使用できる。また、キャリアー液としては鉱物油や植物油などが使用できる。
【0075】
グリッパ18の先端と記録紙先端部切り取り部の記録紙搬送方向の最短距離Ln(図10に図示)を、
Ln = 8mm ≦ ニップ幅(10mm)
とする。したがって、図29に示す記録紙先端から記録紙搬送方向で画像形成領域までの長さLは、記録紙先端部切り取り後の余白代を含めてLnより長く設定する。
この実施例1は、最善実施例である。
【0076】
次に、実施例2について説明する。この実施例2も実施の形態の第1例の実施例である。前述の実施例1と異なる点は、使用する現像剤が平均粒径9μmの乾式トナーである。この乾式トナーとしては、トナーバインダーであるエポキシ、ポリエステル、スチレン等の樹脂に顔料を分散させて着色したものに、平均粒径10μmのシリカを外添剤としてまぶしたものである。なお、実施例2の画像形成装置1では、中間転写ベルトスクィーズ装置12Y,12M,12C,12Bのようなキャリアー液を主に回収するような装置は配設
されない。その他は、実施例1と同じである。
【0077】
次に、実施例3について説明する。この実施例3も実施の形態の第1例の実施例である。前述の実施例1と異なる点は、前述の最短距離Lnを、
Ln = 12mm ≧ ニップ幅(10mm)
とする。その他は、実施例1と同じである。
【0078】
次に、実施例4について説明する。この実施例4は、実施の形態の第2例の実施例である。実施例4は、前述のように実施の形態の第2例が第1例と異なる点で実施例1と異なるだけである。
【0079】
次に、実施例5について説明する。この実施例5は、実施の形態の第3例の実施例である。実施例5は、前述のように実施の形態の第3例が第1例と異なる点で実施例1と異なるだけである。
【0080】
次に、実施例6について説明する。この実施例6は、実施の形態の第4例の実施例である。実施例6は、前述のように実施の形態の第4例が第1例と異なる点で実施例1と異なるだけである。
【0081】
次に、実施例7について説明する。この実施例7は、実施の形態の第5例の実施例である。実施例7は、前述のように実施の形態の第5例が第1例と異なる点で実施例1と異なるだけである。
【0082】
次に、実施例8について説明する。この実施例8は、実施の形態の第6例の実施例である。実施例8は、前述のように実施の形態の第6例が第1例と異なる点で実施例1と異なるだけである。
【0083】
次に、実施例9について説明する。この実施例9は、実施の形態の第7例の実施例である。実施例9は、前述のように実施の形態の第7例が第1例および第6例と異なる点で実施例1と異なるだけである。
【0084】
次に、実施例10について説明する。この実施例10は、実施の形態の第8例の実施例である。実施例8は、前述のように実施の形態の第8例が第1例と異なる点で実施例1と異なるだけである。
【0085】
次に、比較例について説明する。比較例は、最善実施例における切断刃37a、記録紙押さえ部材37c、記録紙受け台37bの切断刃逃げ孔37m、および切りくず回収容器37dが設けられない。すなわち、従来の画像形成装置と同様に記録紙の切断は行われない。
紙しわ評価試験結果を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
表1に示すように、最善実施例(実施例1)では、500枚の画像形成を行っても、紙しわの発生は0枚であった。これにより、最善実施例では前述の所期の効果を確実に得られることが確認された。また、実施例2では、500枚の画像形成で、紙しわの発生は2枚であった。これは、液体トナーのキャリアー液が記録紙に浸透して水分を追い出すので、定着時の水分気化による記録紙繊維熱膨張むらが低減し、紙しわが発生し難くなると考
えられる。更に、実施例3では、500枚の画像形成で、紙しわの発生は4枚であった。これは、定着ニップ内部の記録紙繊維熱膨張が定着ニップ外部のそれより激しいので、定着ニップ内部で熱膨張むらを逃がした方が、紙しわが発生し難くなる。
【0088】
更に、実施例4では、500枚の画像形成で、紙しわの発生は2枚であった。これは、記録紙の把持よりも記録紙端部の切断が記録紙先端に大きなせん断力が加えられると考えられる。したがって、記録紙把持による折れ目、しわ等が記録紙先端に生じる前に記録紙先端部を切断した方が、これらの折れ目、しわ等の発生、増大および拡大が少ない。その結果、紙しわが記録紙全体に発展するのを低減することができる。
【0089】
更に、実施例5では、500枚の画像形成で、紙しわの発生は6枚であった。これは、櫛歯状のグリッパ18を記録紙先端部の切断部に干渉させることにより、把持面積が減少して把持力が増大する。また、記録紙搬送による記録紙あばれがあっても、グリッパ18間の記録紙が解放されている部分で力を逃がすことができる。したがって、把持による折れ目やしわ等の変形部の発生を低減できる。その結果、反りや紙しわ等の変形部が記録紙全体に発展するのを低減できる。
【0090】
更に、実施例6では、500枚の画像形成で、紙しわの発生は10枚であった。これは、平板状のグリッパ18で記録紙先端部を把持することにより、記録紙先端部の大面積を均一に把持することができるため、把持による折れ目、しわの発生が低減できる。しかし、把持力が減少するため、搬送による記録紙あばれによる折れ目やしわの発生の抑制が他の実施例よりも小さい。
更に、実施例7では、500枚の画像形成で、紙しわの発生は0枚であった。これにより、切断部の形状は紙しわ発生にあまり影響しないと考えられる。この実施例7も最善実施例として見なすことができる。
【0091】
更に、実施例8では、500枚の画像形成で、紙しわの発生は2枚であった。これは、記録紙が記録紙収納部内で停止状態で切断開始されることから、切断時のせん断力を記録紙に均一にかけることができるためであると考えられる。したがって、記録紙の反りやしわの発生を低減することができる。更に、実施例8では、記録紙先端に切れ目が形成されると、記録紙がこの切れ目の部分で連続していないので、切れ目が広がったり、切れ端が反ったりして歪みが増大し易い。そこで、記録紙先端の切れ目を跨ぐようにグリッパ18を配置することにより、記録紙搬送による記録紙あばれがあっても、切れ目による記録紙の部分的歪みの増大を抑制することが可能となる。したがって、記録紙の反りやしわの発生を低減することができる。その結果、紙しわが発展するのを低減することができる。
【0092】
更に、実施例9では、500枚の画像形成で、紙しわの発生は6枚であった。切断部33bを、把持状態にあるグリッパ18に干渉させないことで、記録紙の先端部33aにかかる把持によるせん断力を均一化することができる。また、切断部33bが把持によるせん断力を逃がすので、把持によるせん断力を低減できる。したがって、グリッパ18の把持による折れ目やしわの発生が低減できる。その結果、紙しわが発展するのを低減することができる。
【0093】
更に、実施例10では、500枚の画像形成で、紙しわの発生は0枚であった。これにより、直線状の切断刃をゴム層で受けることにより、切断時の記録紙にかかる衝撃が抑制され、紙しわの発生が低減すると考えられる。この実施例10も最善実施例として見なすことができる。
以上のことから、前述の実施例2ないし実施例10でも、前述の所期の効果を得られることが確認された。
【0094】
更に、比較例では、500枚の画像形成で、すべての記録紙に把持による紙しわが発生した。これにより、前述の各実施例のように、記録紙にその先端から延びる切断部を形成することで、紙しわの発生がより効果的に抑制されることが確認された。
【0095】
なお、本発明の画像形成装置および画像形成方法は、前述の実施の形態の各例に限定されることはない。例えば、前述の各例の第1の気流発生装置42、第2の気流発生装置43、転写材搬送部44、および第3の気流発生装置45を省略することもできる。また、前記実施の形態の各例の転写材切断部37およびその配置位置を、適宜組み合わせることもできる。
【0096】
更に、像担持体として中間転写ベルト8を用いているが、中間転写ドラムを用いることもできるし、これらの中間転写媒体を省略することもできる。中間転写媒体を省略する場合は、感光体のトナー像が転写材に直接転写されることは言うまでもない。更に、前述の各例の画像形成装置では、タンデム型の画像形成装置としているが、他の形式の画像形成装置でもよいし、単色の画像形成装置でもよい。要は、本発明は特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0097】
1…画像形成装置、2Y,2M,2C,2K…感光体、5Y,5M,5C,5K…現像部、6Y,6M,6C,6K…一次転写部、8…中間転写ベルト、13…二次転写部、14…二次転
写ローラー、18…グリッパ、19,19a…グリッパ支持部、33…転写材、33a…
先端部、33b…切断部、33c…変形部、34…突き出し爪、36…転写材収納部、37…転写材先端切断部、37a…切断刃、37b…転写材受け台、37c…転写材押さえ部材、37d…切りくず回収容器、40…ゲートローラー、46…定着部、46a…加熱ローラー、46b…加圧ローラー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
像を担持する像担持体と、
転写材を把持する転写材把持部材を有するとともに、前記像担持体に担持された前記像を前記転写材に転写する転写ローラーと、
前記転写材を定着する定着部と、
前記転写材を切断する切断刃を有する転写材切断部と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記転写ローラーに給送する前記転写材を収納する転写材収納部を有し、
前記転写材切断部は、前記転写材収納部と前記転写ローラーとの間に配設される請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記転写材切断部は、前記転写ローラーと前記定着部との間に配設される請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記転写ローラーに給送する前記転写材を収納する転写材収納部を有し、
前記転写材切断部は、前記転写材収納部に配設されている請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記切断刃は、前記転写材に開口する凹状の切断部を形成する穿孔刃または前記転写材から線状に延びる切れ目の切断部を形成する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記転写材把持部材は、第1の転写材把持部材と、前記第1の転写材把持部材から前記転写材の搬送方向である第1の方向と直交または略直交する第2の方向に間隔を置いて配設される第2の転写材把持部材と、を有し、
前記切断刃は、第1の切断刃と、前記第1の切断刃から前記第2の方向に間隔を置いて配設される第2の切断刃と、を有し、
前記第1の切断刃による前記転写材の第1の切断部は、前記第1の転写材把持部材および前記第2の転写材把持部材とに前記第2の方向で干渉しないとともに、
前記第2の切断刃による前記転写材の第2の切断部は、前記第1の転写材把持部材および前記第2の転写材把持部材とに前記第2の方向で干渉しない請求項1ないし5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
転写材収容部に収容された転写材を搬送する転写材搬送工程と、
搬送された前記転写材を切断する転写材切断工程と、
第1の方向に回転する転写ローラーに配設された転写材把持部材により、切断された前記転写材を把持する転写材把持工程と、
前記転写ローラーと像担持体とを当接させて、前記像担持体に担持された像を前記転写材に転写する転写工程と、
前記像が転写された前記転写材を定着する定着工程と、
を有することを特徴とする画像形成方法。
【請求項1】
像を担持する像担持体と、
転写材を把持する転写材把持部材を有するとともに、前記像担持体に担持された前記像を前記転写材に転写する転写ローラーと、
前記転写材を定着する定着部と、
前記転写材を切断する切断刃を有する転写材切断部と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記転写ローラーに給送する前記転写材を収納する転写材収納部を有し、
前記転写材切断部は、前記転写材収納部と前記転写ローラーとの間に配設される請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記転写材切断部は、前記転写ローラーと前記定着部との間に配設される請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記転写ローラーに給送する前記転写材を収納する転写材収納部を有し、
前記転写材切断部は、前記転写材収納部に配設されている請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記切断刃は、前記転写材に開口する凹状の切断部を形成する穿孔刃または前記転写材から線状に延びる切れ目の切断部を形成する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記転写材把持部材は、第1の転写材把持部材と、前記第1の転写材把持部材から前記転写材の搬送方向である第1の方向と直交または略直交する第2の方向に間隔を置いて配設される第2の転写材把持部材と、を有し、
前記切断刃は、第1の切断刃と、前記第1の切断刃から前記第2の方向に間隔を置いて配設される第2の切断刃と、を有し、
前記第1の切断刃による前記転写材の第1の切断部は、前記第1の転写材把持部材および前記第2の転写材把持部材とに前記第2の方向で干渉しないとともに、
前記第2の切断刃による前記転写材の第2の切断部は、前記第1の転写材把持部材および前記第2の転写材把持部材とに前記第2の方向で干渉しない請求項1ないし5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
転写材収容部に収容された転写材を搬送する転写材搬送工程と、
搬送された前記転写材を切断する転写材切断工程と、
第1の方向に回転する転写ローラーに配設された転写材把持部材により、切断された前記転写材を把持する転写材把持工程と、
前記転写ローラーと像担持体とを当接させて、前記像担持体に担持された像を前記転写材に転写する転写工程と、
前記像が転写された前記転写材を定着する定着工程と、
を有することを特徴とする画像形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
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【図16】
【図17】
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【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2010−250217(P2010−250217A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101870(P2009−101870)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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