説明

画像形成装置の管理システム

【課題】異常予知した場合に、状態悪化のスピードを表す故障緊急度とともに報知する画像形成装置の管理システムを提供する。
【解決手段】状態情報に基づき画像形成装置の特徴量を算出し、該特徴量の傾向結果を蓄積し、該傾向結果から判別して予兆結果を割り出し、以前に予兆検知が行われた前期予兆検知結果に対して後期予兆検知結果と対比し、前期予兆検知がある場合には、緊急度の算出を行った後、該当する画像形成装置での後期予兆日時データを削除して緊急度を通知する管理装置を用いたことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置の管理システムに関し、さらに詳しくは、画像形成装置における故障予兆現象に基づく故障予測に関するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタあるいはファクシミリ装置や印刷機などの画像形成装置においては、例えば、電子写真方式を用いる場合でいうと、潜像担持体として用いられる感光体に対して原稿あるいは画像情報に応じた静電潜像が形成され、その静電潜像を現像装置から供給されるトナーにより可視像処理した後、記録シートなどに転写された画像を定着して複写出力とすることが知られている。
【0003】
ところで、画像形成装置において故障などの装置の異常が発生すると、その内容によっては部品を交換したり清掃するまで装置を使用することができず、ユーザーに不便を強いてしまうことがある。
特に、電子写真方式の画像形成装置では構成が比較的複雑で部品点数が多いことから、各種の部品のメンテナンスを定期的に行わないと、異常が突然に発生してしまうという事態に陥りやすくなる。
【0004】
このような事態を避けるための技術として、画像形成装置の状態情報から異常発生を予知し、サービス業務の効率化を達成するための方法が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、画像形成装置と管理装置がネットワークを介して接続されており、管理装置に集められた画像形成装置の状態情報が各基準値以下か越えるかを判別する第1判別手段と第1判別手段の前記各種の状態データ宛の判別結果に、各状態データ宛に設定されている重みを付けて多数決により、前記数種の状態データの全体としての異常予兆の有無を判定する第2判別手段を備えた画像形成装置の異常予知判別システムに関する構成が開示されている。
【0006】
また特許文献2には、上記特許文献1における第1,第2の判別手段を画像形成装置内に備え、画像形成装置単独で自身の異常より判別を行うための構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献に開示されている異常予知判別手段は、状態悪化のスピードについての情報は得られない。すなわち、正常状態から急激に状態が悪化し、予兆状態に入った場合と緩やかに状態が悪化し、予兆状態に入った場合の見分けをつけることはできなかった。
【0008】
したがって、メンテナンス担当者はすぐにお客様先にいくべきか、あるいは数日後でも大丈夫なのを判断することができず、メンテナンス計画に役立てることができなかった。
【0009】
本発明の目的は、上記事情に鑑み、異常予知した場合に、状態悪化のスピードを表す故障緊急度とともに報知する画像形成装置の管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するため、本発明は次の構成よりなる。
(1)画像形成装置と管理装置がネットワークを介して接続され、
前記画像形成装置は、
画像形成装置の状態を検知するための状態情報検知手段と、
状態情報を記録するための状態情報記録手段と、状態情報記録手段に記録された状態情報を管理装置に向けて送信するための状態情報送信手段とを備え、
前記管理装置は、
画像形成装置の状態情報送信手段から送信された状態情報を受信するための状態情報受信手段と、
状態情報に現れる画像形成装置の異常状態の予兆のうち、予兆期間の初期に現れる予兆を検知する前期異常予兆検知手段と、
状態情報に現れる画像形成装置の異常状態の予兆のうち、予兆期間の後期に現れる予兆を検知する後期異常予兆検知手段と、
前期予兆検知手段が検知した日時を機番にひもづけて記録する前期予兆日時値記録手段と、
前期予兆日時と後期予兆検知手段が検知した日時から、故障緊急度を算出する故障緊急度算出手段と、
故障緊急度を通知する故障緊急度通知手段と
を備え、
前記管理装置では、前記状態情報に基づき画像形成装置の特徴量を算出し、該特徴量の傾向結果を蓄積し、該傾向結果から判別して予兆結果を割り出し、以前に予兆検知が行われた前期予兆検知結果に対して後期予兆検知結果と対比し、前期予兆検知がある場合には、緊急度の算出を行った後、該当する画像形成装置での後期予兆日時データを削除して緊急度を通知することを特徴とする画像形成装置の管理システム。
(2)画像形成装置と管理装置がネットワークを介して接続され、
前記画像形成装置は、
画像形成装置の状態を検知するための状態情報検知手段と、
状態情報を記録するための状態情報記録手段と、
状態情報記録手段に記録された状態情報を管理装置に向けて送信するための状態情報送信手段とを備え、
前記管理装置は、
画像形成装置の状態情報送信手段から送信された状態情報を受信するための状態情報受信手段と、
状態情報に現れる画像形成装置の異常状態の予兆のうち、予兆期間の初期に現れる予兆を検知する前期異常予兆検知手段と、
状態情報に現れる画像形成装置の異常状態の予兆のうち、予兆期間の後期に現れる予兆を検知する後期異常予兆検知手段と、
前期予兆検知手段が検知したカウンタを機番にひもづけて記録する前期予兆カウンタ値記録手段と、
前期予兆検知時のカウンタ値と後期予兆検知手段が検知したカウンタ値から故障緊急度を算出する故障緊急度算出手段と、
故障緊急度を通知する故障緊急度通知手段とを備える画像形成装置の管理システム。
(3)(1)または(2)記載の画像形成装置の管理システムにおいて、
前期予兆検知手段が検知したことを通知する前期予兆検知通知手段を備えたことを特徴とする画像形成装置の管理システム。
(4)(1)乃至(3)のうちの一つに記載の画像形成装置の管理システムにおいて、
画像形成装置が管理システムからの通知を受信する通知受信手段を備え、
通知内容を表示するための通知内容表示手段を備えたことを特徴とする画像形成装置管理システム。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、前期予兆検知結果に対して後期予兆検知結果と対比し、前期予兆検知がある場合には、緊急度の算出を行った後、該当する画像形成装置での後期予兆日時データを削除して緊急度を通知するようになっているので、異常予知した場合に、状態悪化のスピードを表す故障緊急度とともに報知することができる。これにより、メンテナンス担当者において、すぐにお客様先にいくべきか、あるいは数日後でも大丈夫なのを判断することができないということが解消され、メンテナンス計画に役立てることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による管理システムの概要を説明するためのブロック図である。
【図2】図1に示す複合機能があるカラー複写機の機構概要を示す縦断面図である。
【図3】図2に示した画像形成装置に用いられる中間転写ベルトおよびその周りの機械要素を拡大して示す縦断面図である。
【図4】図3に示す4組の作像ユニットに共通の構成を示す拡大縦面図である。
【図5】(a)は、図3に示す中間転写ベルトの表面のトナー濃度を検出する光センサを示す斜視図である。(b)は、中間転写ベルトに形成した、トナー像のテストパターンを示す平面図である。
【図6】(a)は、光センサの構成を示すブロック図であり、ベルト表面の汚れを検出する態様を示す。(b)は、中間転写ベルトに光を投射する光センサ内LEDの通電電流値と正反射PDの光検出信号のレベルの関係を示すグラフである。
【図7】(a)は、光センサの構成を示すブロック図であり、中間転写ベルト10に転写されたテストパターンのトナー像の濃度を検出する態様を示す。(b)は、トナー像の濃度と光センサ内乱反射PDの光検出信号のレベルの関係を示すグラフである。
【図8】図2に示す複写機の画像処理システムの概要を示すブロック図である。
【図9】図8に示した画像処理ステムに用いられるエンジン制御によるトナー画像濃度調整の概要を示すフローチャートである。
【図10】中間転写ベルト上に転写したテストパターントナー像の作像時の現像ポテンシャルと、光センサで検出するトナー濃度との関係(特性線)を示すグラフである。
【図11】(a)は、ベルト10表面に格別な汚れがない場合に計測した特性線(実線)と特性線の変動範囲を示すグラフであり、(b)は中間転写ベルト表面が少し汚れた場合の特性線を示す。
【図12】中間転写ベルト表面が汚れた場合の、各色特性線を示すグラフである。
【図13】図1に示す管理装置の機構の概要を示すブロック図である。
【図14】図1に示すカラー複写機の、管理装置に対する状態データの送信動作を示すフローチャートである。
【図15】図1に示す管理装置が実施する異常予兆判定の概要を示すフローチャートである。
【図16】カラー複写機での、光センサの発光強度調整値R,各色現像バイアス補正値Qおよび各色露光量補正値Pの対象データ(特徴量)生成の概要を示すフローチャートである。
【図17】各色トナー濃度調整の現像バイアス調整値Q(Y),Q(M),Q(C)およびQ(Bk)の変化の概要を示すグラフである。
【図18】図15に示す異常予兆判別1〜nに共通のデータ処理の概要を示すフローチャートである。
【図19】異常予兆判定において、対象データの異常傾向判別に用いる基準値bおよび異常予兆判別指標値Fの算出において対象データの異常傾向に付ける重み値の一例を示す図表である。
【図20】カラー複写機の各色作像の現像バイアス調整値Qの変動と、これらに基づいて生成した異常予兆判別器で算出した予兆判別指標値Fを示すグラフである。
【図21】5台のカラー複写機の予兆判別指標値Fの変化を示すグラフである。
【図22】図15に示す異常予兆判別1の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面により本発明を実施するための形態について説明する。
【0014】
図1に、本発明の第1実施例の複合機能複写機601を含む複写機管理システムの一例を示す。画像形成装置である複写機601およびそれと同等の機能がある複写機602〜605がLAN600によって接続され、ネットワークであるインターネット620を介して、LAN外部の管理装置630につながっている。各複写機は、特定のタイミング(プリント枚数積算値が設定値以上増加しており、しかも動作電圧オン直後又はプリント作業を終了したとき)に、複写機の状態を表す状態データを管理装置630に送信する。
【0015】
管理装置630は、状態データを蓄積するデータベースに加えて、特徴抽出手段,第1判別手段および第2判別手段を含む異常予兆判別システム(図15のPAD)を持ち、管理対象の複数の複写機のそれぞれに対して、異常予兆判別を実行する。異常予兆判定PAD(図15)のプログラム(対象データ生成手段である特徴量抽出手段、および、第1判別手段および第2判別手段でなる異常予兆判別器)、ならびに、異常予兆判別器の参照データ群である予兆判定参照データテーブル(図19)が管理装置630にある。異常予兆判別システムの異常予兆有りとの判別結果は、該当の複写機の識別情報(ID)と共に、管理装置630のディスプレイ640に表示される。異常予兆ありと判定した複写機に関して管理装置630のオペレータが、担当地域のサービスセンターにその旨を連絡し、必要があれば部品を発注する。予知された異常がユーザで対応できるものならば、複写機の管理者にその旨を伝え対応してもらう。ユーザは、複写機操作マニュアル又は操作ボード500に内蔵する電子マニュアルを開いて確認し、対処することができる。
管理装置630には、オペレータが操作するパソコンPCaが接続されている。オペレータは、このパソコンPCaを用いて、管理装置630のデータベースにある各複写機の状態データに基づいて、異常予兆判別器(図18)および予兆判定参照データテーブル(図19)を新たに生成又は補正することができ、また、管理装置630への新たな異常予兆判別器および予兆判定参照データテーブルの追加,管理装置630の既存の異常予兆判別器および予兆判定参照データテーブルの削除など、管理装置630の異常予兆判別システム(図15のPAD)の更新を行う事ができる。
【0016】
図2に、複写機601の機構概要を示す。この複写機601は、プリンタ100と給紙部200とからなる画像形成手段と、スキャナ300と、ADF(自動原稿供給装置)400とを備えている。スキャナ300はプリンタ100上に取り付けられ、スキャナ300の上にADF400が取り付けられている。スキャナ300は、コンタクトガラス32上に載置された原稿の画像情報を読取センサ(本実施例ではCCD)36で読み取り、読み取った画像情報をエンジン制御510(図8)のIPP(Image Processing Processor;以下では単にIPPと記述)に送る。エンジン制御510は、スキャナ300から受け取った画像情報に基づき、プリンタ100の露光装置21内に配設された図示しないレーザやLED等を制御してドラム状の4つの感光体40(K,Y,M,C:図3)に向けてレーザ書き込み光L(図4)を照射させる。この照射により、感光体40(K,Y,M,C)の表面には静電潜像が形成され、この潜像は、所定の現像プロセスを経由してトナー像に現像される。なお、符号の後に付されたK,Y,M,Cという添字は、ブラック,イエロー,マゼンタ,シアン用の仕様であることを示している。
【0017】
プリンタ100は、露光手段である露光装置21の他、転写手段である1次転写ローラ62(K,Y,M,C)および2次転写装置22,定着装置25,排紙装置,図示しないトナー供給装置,トナー廃棄装置等も備えている。給紙部200は、プリンタ100の下方に配設された自動給紙部と、プリンタ100の側面に配設された手差し部とを有している。そして、自動給紙部は、ペーパーバンク43内に多段に配設された3つの給紙カセット44,給紙カセットから記録体たる転写紙を繰り出す給紙ローラ42,繰り出した転写紙を分離して給紙路46に送り出す分離ローラ45等を有している。また、プリンタ100の給紙路48に転写紙を搬送する搬送ローラ47等も有している。
【0018】
一方、手差し部は、手差しトレイ51,手差しトレイ51上の転写紙を手差し給紙路53に向けて一枚ずつ分離する分離ローラ52等を有している。
【0019】
プリンタ100の給紙路48の末端付近には、レジストローラ対49が配設されている。このレジストローラ対49は、給紙カセット44や手差しトレイ51から送られてくる転写紙を受け入れた後、所定のタイミングで中間転写体たる中間転写ベルト10と2次転写装置22との間に形成される2次転写ニップに送る。
【0020】
本複写機において、操作者は、カラー画像のコピーをとるときに、ADF400の原稿台30上に原稿をセットする。あるいは、ADF400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットした後、ADF400を閉じて原稿を押える。そして、図示しないスタートスイッチを押す。すると、ADF400に原稿がセットされている場合には原稿がコンタクトガラス32上に搬送された後に、コンタクトガラス32上に原稿がセットされている場合には直ちに、スキャナ300が駆動を開始する。そして、第1キャリッジ33及び第2キャリッジ34が走行し、第1キャリッジ33の光源から発せられる光が原稿面で反射した後、第2キャリッジ34に向かう。更に、第2キャリッジ34のミラーで反射してから結像レンズ35を経由して読み取りセンサ36に至り、画像情報として読み取られる。
【0021】
このようにして画像情報が読み取られると、プリンタ100は、図示しない駆動モータで支持ローラ14,15,16の1つを回転駆動させながら他の2つの支持ローラを従動回転させる。そして、これらローラに張架される、中間転写体である中間転写ベルト10を無端移動させる。更に、上述のようなレーザ書き込みや、後述する現像プロセスを実施する。そして、感光体40(K,Y,M,C)を回転させながら、それらに、ブラック,イエロー,マゼンタ,シアンの単色画像を形成する。これらは、感光体40(K,Y,M,C)と、中間転写ベルト10とが当接するK,Y,M,C用の1次転写ニップで順次重ね合わせて静電転写されて4色重ね合わせトナー像になる。感光体40(K,Y,M,C)上にトナー像を形成する。
【0022】
一方、給紙部200は、画像情報に応じたサイズの転写紙を給紙すべく、3つの給紙ローラのうちの何れか1つを作動させて、転写紙をプリンタ100の給紙路48に導く。給紙路48内に進入した、用紙である転写紙は、レジストローラ対49に挟み込まれて一旦停止した後、タイミングを合わせて、中間転写ベルト10と2次転写装置22の2次転写ローラ23との当接部である2次転写ニップに送り込まれる。すると、2次転写ニップにおいて、中間転写ベルト10上の4色重ね合わせトナー像と、転写紙とが同期して密着する。そして、ニップに形成されている転写用電界やニップ圧などの影響によって4色重ね合わせトナー像が転写紙上に2次転写され、紙の白色と相まってフルカラー画像となる。
【0023】
2次転写ニップを通過した転写紙は、2次転写装置22の搬送ベルト24の無端移動によって定着装置25に送り込まれる。そして、定着装置25の加圧ローラ27による加圧力と、加熱ベルトによる加熱との作用によってフルカラー画像が定着せしめられた後、排出ローラ56を経てプリンタ100の側面に設けられた排紙トレイ57上に排出される。
【0024】
図3に、プリンタ100の転写ベルト10まわりを拡大して示す。プリンタ100は、ベルトユニット,各色のトナー像を形成する4つのプロセスユニット18(K,Y,M,C),2次転写装置22,ベルトクリーニング装置17,定着装置25等を備えている。
【0025】
ベルトユニットは、複数のローラに張架した中間転写ベルト10を、感光体40(K,Y,M,C)に当接させながら無端移動させる。感光体40(K,Y,M,C)と中間転写ベルト10とを当接させるK,Y,M,C用の1次転写ニップでは、1次転写ローラ62(K,Y,M,C)によって中間転写ベルト10を裏面側から感光体40(K,Y,M,C)に向けて押圧している。これら1次転写ローラ62(K,Y,M,C)には、それぞれ図示しない電源によって1次転写バイアスが印加されている。これにより、K,Y,M,C用の1次転写ニップには、感光体40(K,Y,M,C)上のトナー像を中間転写ベルト10に向けて静電移動させる1次転写電界が形成されている。各1次転写ローラ62(K,Y,M,C)の間には、中間転写ベルト10の裏面に接触する導電性ローラ74(K,Y,M,C)がそれぞれ配設されている。これら導電性ローラ74は、1次転写ローラ62(K,Y,M,C)に印加される1次転写バイアスが、中間転写ベルト10の裏面側にある中抵抗の基層11を介して隣接するプロセスユニットに流れ込むことを阻止するものである。
【0026】
プロセスユニット(18K,Y,M,C)は、感光体(40K,Y,M,C)と、その他の幾つかの装置とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、プリンタ100に対して着脱可能になっている。ブラック用のプロセスユニット18(K)を例にすると、これは、感光体40Kの他、感光体40K表面に形成された静電潜像をブラックトナー像に現像するための現像手段たる現像ユニット61(K)を有している。また、1次転写ニップを通過した後の感光体40(K)の表面に付着している転写残トナーをクリーニングする感光体クリーニング装置63(K)も有している。また、クリーニング後の感光体40(K)表面を除電する図示しない除電装置や、除電後の感光体40(K)表面を一様帯電せしめる図示しない、帯電手段である帯電装置なども有している。他色用のプロセスユニット18(Y,M,C)も、取り扱うトナーの色が異なる他は、ほぼ同様の構成になっている。本複写機では、これら4つのプロセスユニット18(K,Y,M,C)を、中間転写ベルト10に対してその無端移動方向に沿って並べるように対向配設したいわゆるタンデム型の構成になっている。
【0027】
図4に、4つのプロセスユニット18(K,Y,M,C)に共通のユニット構成を拡大して示す。すなわち、4つのプロセスユニット18(K,Y,M,C)はそれぞれ、図4に示す構成である。同図に示すように、プロセスユニット18は、感光体40の周りに、帯電手段としての帯電装置60,現像手段である現像装置61,1次転写手段としての1次転写ローラ62,感光体クリーニング装置63,除電装置64等を備えている。感光体40としては、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材を塗布し、感光層を形成したドラム状のものを用いている。但し、無端ベルト状のものを用いても良い。また、帯電装置60としては、帯電バイアスが印加される帯電ローラ60を感光体40に当接させながら回転させるものを用いている。感光体40に対して非接触で帯電処理を行うスコロトロンチャージャ等を用いてもよい。
【0028】
現像装置61は、磁性キャリアと非磁性トナーとを含有する二成分現像剤を用いて潜像を現像するようになっている。内部に収容している二成分現像剤を攪拌しながら搬送して現像スリーブ65に供給する攪拌部66と、現像スリーブ65に付着した二成分現像剤のうちのトナーを感光体40に転移させる現像部67とを有している。
【0029】
攪拌部66は、現像部67よりも低い位置に設けられており、互いに平行配設された2本のスクリュウ68,これらスクリュウ間に設けられた仕切り板69,現像ケース70の底面に設けられたトナー濃度センサ71などを有している。
【0030】
現像部67は、現像ケース70の開口を通して感光体40に対向する現像スリーブ65,これの内部に回転不能に設けられたマグネットローラ72,現像スリーブ65に先端を接近させるドクタブレード73などを有している。ドクタブレード73と現像スリーブ65との間の最接近部における間隔は500[μm]程度に設定されている。現像スリーブ65は、非磁性の回転可能な筒状になっている。また、現像スリーブ65に連れ回らないようにないようされるマグネットローラ72は、例えば、ドクタブレード73の箇所から現像スリーブ65の回転方向にN1,S1,N2,S2,S3の5磁極を有している。これらの磁極は、それぞれスリーブ上の二成分現像剤に対して回転方向の所定位置で磁力を作用させる。これにより、攪拌部66から送られてくる二成分現像剤を現像スリーブ65表面に引き寄せて担持させるとともに、スリーブ表面上で磁力線に沿った磁気ブラシを形成する。
【0031】
磁気ブラシは、現像スリーブ65の回転に伴ってドクタブレード73との対向位置を通過する際に適正な層厚に規制されてから、感光体40に対向する現像領域に搬送される。そして、現像スリーブ65に印加される現像バイアスと、感光体40の静電潜像との電位差によって静電潜像上に転移して現像に寄与する。更に、現像スリーブ65の回転に伴って再び現像部67内に戻り、マグネットローラ72の磁極間の反発磁界の影響によってスリーブ表面から離脱した後、攪拌部66に戻される。攪拌部66内では、トナー濃度センサ71による検知結果に基づいて、二成分現像剤に適量のトナーが補給される。なお、現像装置61として、二成分現像剤を用いるものの代わりに、磁性キャリアを含まない一成分現像剤を用いるものを採用してもよい。
【0032】
感光体クリーニング装置63としては、ポリウレタンゴム製のクリーニングブレード75を感光体40に押し当てる方式のものを用いているが、他の方式のものを用いてもよい。クリーニング性を高める目的で、本例では、外周面を感光体40に接触させる接触導電性のファーブラシ76を、図中矢印方向に回転自在に有するクリーニング装置63を採用している。そして、ファーブラシ76にバイアスを印加する金属製の電界ローラ77を図中矢示方向に回転自在に設け、その電界ローラ77にスクレーパ78の先端を押し当てている。スクレーパ78によって電界ローラ77から除去されたトナーは、回収スクリュ79上に落下して回収される。
【0033】
かかる構成の感光体クリーニング装置63は、感光体40に対してカウンタ方向(時計方向)に回転するファーブラシ76で、感光体40上の残留トナーを除去する。ファーブラシ76に付着したトナーは、ファーブラシ76に対してカウンタ方向に接触して回転するバイアスを印加された電界ローラ77に取り除かれる。電界ローラ77に付着したトナーは、スクレーパ78でクリーニングされる。感光体クリーニング装置63で回収したトナーは、回収スクリュ79で感光体クリーニング装置63の片側に寄せられ、トナーリサイクル装置80で現像装置61へと戻されて再利用される。除電装置64は、除電ランプ等からなり、光を照射して感光体40の表面電位を除去する。このようにして除電された感光体40の表面は、帯電装置60によって一様帯電せしめられた後、光書込処理がなされる。
【0034】
図3を再度参照すると、ベルトユニットの図中下方には、2次転写装置22が設けられている。この2次転写装置22は、2つのローラ23間に、2次転写ベルト24を掛け渡して無端移動させている。2つのローラ23のうち、一方は図示しない電源によって2次転写バイアスが印加される2次転写ローラとなっており、ベルトユニットのローラ16との間に中間転写ベルト10と2次転写ベルト24とを挟み込んでいる。これにより、両ベルトが当接しながら当接部で互いに同方向に移動する2次転写ニップが形成されている。
【0035】
レジストローラ対49からこの2次転写ニップに送り込まれた転写紙には、中間転写ベルト10上の4色重ね合わせトナー像が2次転写電界やニップ圧の影響で一括2次転写されて、フルカラー画像が形成される。2次転写ニップを通過した転写紙は、中間転写ベルト10から離間して、2次転写ベルト24の表面に保持されながら、ベルトの無端移動に伴って定着装置25へと搬送される。なお、2次転写ローラに代えて、転写チャージャ等によって2次転写を行わせるようにしてもよい。
【0036】
2次転写ニップを通過した中間転写ベルト10の表面は、支持ローラ15による支持位置にさしかかる。ここでは、中間転写ベルト10が、おもて面(ループ外面)に当接するベルトクリーニング装置17と、裏面に当接する支持ローラ15との間に挟み込まれる。
【0037】
そして、ベルトクリーニング装置17により、おもて面に付着している転写残トナーが除去された後、K,Y,M,C用の1次転写ニップに順次進入して、次の4色トナー像が重ね合わされる。
【0038】
ベルトクリーニング装置17は、2つのファーブラシ90,91を有している。これらは、複数の起毛をその植毛方向に対してカウンタ方向で中間転写ベルト10に当接させながら回転することで、ベルト上の転写残トナーを機械的に掻き取る。加えて、図示しない電源によってクリーニングバイアスが印加されることで、掻き取った転写残トナーを静電的に引き寄せて回収する。
【0039】
ファーブラシ90,91に対しては、それぞれ金属ローラ92,93が接触しながら、順または逆方向に回転している。これら金属ローラ92,93のうち、中間転写ベルト10の回転方向上流側に位置する金属ローラ92には、電源94によってマイナス極性の電圧が印加されている。また、下流側に位置する金属ローラ93には、電源95によってプラス極性の電圧が印加される。そして、それらの金属ローラ92,93には、それぞれブレード96,97の先端が当接している。かかる構成では、中間転写ベルト10の図中矢印方向への無端移動に伴って、まず、上流側のファーブラシ90が中間転写ベルト10表面をクリーニングする。このとき、例えば金属ローラ92に−700[V]が印加されながら、ファーブラシ90に−400[V]が印加されると、まず、中間転写ベルト10上のプラス極性のトナーがファーブラシ90側に静電転移する。そして、ファーブラシ側に転移したトナーが更に電位差によってファーブラシ90から金属ローラ92に転移して、ブレード96によって掻き落とされる。
【0040】
このように、ファーブラシ90で中間転写ベルト10上のトナーが除去されるが、中間転写ベルト10上にはまだ多くのトナーが残っている。それらのトナーは、ファーブラシ90に印加されるマイナス極性のバイアスにより、マイナスに帯電される。これは、電荷注入または放電により帯電されるものと考えられる。次いで下流側のファーブラシ91を用いて今度はプラス極性のバイアスを印加してクリーニングを行うことにより、それらのトナーを除去することができる。除去したトナーは、電位差によりファーブラシ91から金属ローラ93に転移させ、ブレード97により掻き落とす。ブレード96,97で掻き落としたトナーは、不図示のタンクに回収される。
【0041】
ファーブラシ91でクリーニングされた後の中間転写ベルト10表面は、ほとんどのトナーが除去されているがまだ少しのトナーが残っている。これらの中間転写ベルト10上に残ったトナーは、上述したようにファーブラシ91に印加されるプラス極性のバイアスにより、プラス極性に帯電される。そして、1次転写位置で印加される転写電界によって感光体40K,Y,M,C側に転写され、感光体クリーニング装置63で回収される。
【0042】
レジストローラ対49は一般的には接地されて使用されることが多いが、レジストローラ対49に送り込まれる転写紙の紙粉除去のためにバイアスを印加することも可能である。
【0043】
2次転写装置22および定着装置25の下には、上述したタンデム部20と平行に延びるような、転写紙反転装置28(図2参照)が設けられている。これにより、片面に対する画像定着処理を終えた転写紙が、切換爪で転写紙の進路を転写紙反転装置側に切り換えられ、そこで反転されて再び2次転写の転写ニップに進入する。そして、もう片面にも画像の2次転写処理と定着処理とが施された後、排紙トレイ上に排紙される。
【0044】
支持ローラ14の部位で光センサ81,82が中間転写ベルト10に対向している。これらの光センサ81,82は、図5の(a)に示すように、ベルト10の両側端部に対向している。トナー画像濃度検出およびトナー画像濃度調整を行うとき、転写ベルト10の両側端部には、各色(C,M,Y,Bk)5段階の濃度のテストマーク(テストパターン画像)が順次に形成され、それらの濃度(トナー量)が光センサ81,82で検出される。図5の(b)には、中間転写ベルト10上に形成したシアン(C)のテストパターン83C1,83C2およびマゼンタ(M)のテストパターン83M1,83M2を示す。
【0045】
図6の(a)に、光センサ81の構造を示す。光センサ81にはベルト10に向けて斜め方向に光を投射するLED(発光ダイオード),ベルト10の正反射光を受光する正反射PD(フォトダイオード)およびベルト10の乱反射光を受光する乱反射PDがある。
【0046】
光センサ82の構造も、81のものと同じである。中間転写ベルト10は、トナーの固着を避けるために通常極めて平滑性の高い材料が用いられる。たとえばPVDFやポリイミドなどの光沢を有する表面をもったベルト材料である。
【0047】
トナー像濃度調整においては、中間転写ベルト10の反射光量が基準値(図6の(b)の目標受光光量)になるように光センサ81,82のLEDの通電電流値を調整する発光強度調整(調整値R)、および、現像ポテンシャル対トナー像濃度の特性線を基準特性線に合わせる現像バイアス補正(調整値Q)および露光補正(調整値P)を行う。現像ポテンシャルは、感光体表面電位と現像ローラ電位との差である。発光強度調整は、光センサ内の正反射PDの受光信号を用いて、LEDの発光効率個体差,温度変動や経時変動による受光量変動ならびに中間転写ベルト10の表面の汚れによる光センサの受光量の変動を補正して、光センサ81,82の受光光量を、図6の(b)に示す目標受光光量に調整するものである。
【0048】
現像バイアス補正(調整値Q)および露光補正(調整値P)でなるトナー濃度調整では、中間転写ベルト10上に、各色に付き5段階の濃度のテストパターン(トナー像:例えば図5の(a)の83C1等)を形成して、それらの濃度を光センサ81,82で検出する。
【0049】
図7の(a)には、テストパターンの一つのマークのトナー像が光センサ81直下を通過している状態を示す。テストパターンのトナー像が対向位置に来たときに、光センサ81の、トナー像の乱反射光を主に受光する乱反射PDの検出信号を、CPU517(図8)でA/D変換により乱反射受光データに変換して読み込み、図7の(b)に示すトナー濃度対乱反射PD出力の特性に基づいて作成されている、反射PD出力をトナー濃度に変換するLUT(ルックアップテーブル)から、乱反射受光データに対応するトナー濃度データに変換する。すなわち、乱反射受光データをトナー濃度データに変換する。
【0050】
各色トナーには各色の着色剤が含有されているので、光センサ81,82のLED光源には、着色剤の影響を余り受けない840nm程度の波長の近赤外あるいは赤外の光源が用いられる。しかし、黒色トナーには、低価格のカーボンブラックによって着色されたトナーが一般に用いられており、赤外領域でも強い吸光を示すので、図7の(b)に示すように他色に比べトナー濃度に対する感度が低くなる。
【0051】
図8に、図2に示す複合機能複写機601の電装系統のシステム構成を示す。電装システムは、画像形成装置の全体制御を行うシステムコントローラ501、コントローラ501に接続された、画像形成装置の操作ボード500、画像データを記憶するHDD503、アナログ回線を使用して外部との通信を行う通信コントロール装置インターフェイスボード504、LANインターフェイスボード505、汎用PICバスに接続された、FAXのコントロールユニット506、IEEE1394ボード、無線LANボード、USBボード等507と、PCIバスでコントローラに接続されたエンジン制御510、エンジン制御510に接続された、画像形成装置のI/Oを制御するI/O制御ボード513、及び、コピー原稿(画像)を読込むスキャナーボード(SBU:Sensor Board Unit)511、及び画像データが表わす画像光を感光体ドラム上に投射する(光書込みする)LDB(レーザダイオードボード)512等で構成される。通信コントロール装置インターフェイスボード504は、装置に不具合が発生した場合に外部の遠隔地診断装置に即時に通報し、異常個所の内容,状況等をサービスマンが認識し早急に修理することを可能としている。また、それ以外に装置の使用状況等の発信にも使用されている。
【0052】
原稿を光学的に読み取るスキャナ300は、原稿に対する原稿照明光源の走査を行い、CCD36に原稿像を結像する。原稿像すなわち原稿に対する光照射の反射光をCCD36で光電変換してR,G,B画像信号を生成する。CCD36は、3ラインカラーCCDであり、EVENch(偶数画素チャンネル)/ODDch(奇数画素チャンネル)のR、G、B画像信号を生成し、SBU(センサボードユニット)のアナログASIC(Application Specific IC)に入力する。SBU511にはアナログASIC及び,CCD、アナログASICの駆動タイミングを発生する回路を備えている。CCD36の出力は、アナログASIC内部のサンプルホールド回路により、サンプルホールドされその後、A/D変換され、R、G、Bの画像データに変換し、且つシェーディング補正し、そして出力I/F(インターフェイス)520で画像データバスを介して画像データ処理器IPPに送出する。
【0053】
IPPは画像処理をおこなうプログラマブルな演算処理手段であり、分離生成(画像が文字領域か写真領域かの判定:像域分離),地肌除去,スキャナガンマ変換,フィルタ,色補正,変倍,画像加工,プリンタガンマ変換および階調処理を行う。SBU511からIPPに転送された画像データは、IPPにて光学系およびデジタル信号への量子化に伴う信号劣化(スキャナ系の信号劣化)を補正され、フレームメモリ521に書き込まれる。
【0054】
システムコントローラ501には、CPU及びシステムコントローラボードの制御を行うROM、CPUが使用する作業用メモリであるRAM,リチウム電池を内蔵し、RAMのバックアップと時計を内蔵したNV−RAM及び、システムコントローラボードのシステバス制御、フレームメモリ制御、FIFO等のCPU周辺を制御するASIC及びそのインターフェイス回路等が搭載されている。
【0055】
システムコントローラ501は、スキャナアプリケーション,ファクシミリアプリケーション,プリンタアプリケーションおよびコピーアプリケーション等の複数アプリケーションの機能を有し、システム全体の制御を行う。操作ボード500の入力を解読して本システムの設定とその状態内容を操作ボード500の表示部に表示する。PCIバスには多くのユニットが接続されており、画像データバス/制御コマンドバスで、画像データと制御コマンドが時分割で転送される。
【0056】
通信コントロール装置インターフェイスボード504は、通信コントロール装置と、コントローラ501との通信インターフェイスボードである。コントローラ501との通信は、全二重非同期シリアル通信で接続されている。通信コントロール装置522とは、RS−485インターフェイス規格により、マルチドロップ接続されている。遠隔の管理装置630との通信は、この通信コントローラ装置インターフェイスボード504を経由して実施される。
【0057】
LANインターフェイスボード505は、社内LAN600(図1)に接続された、社内LANとコントローラ501との通信インターフェイスボードであり、PHYチップを搭載している。LANインターフェイスボード505とコントローラ501とは、PHYチップI/F及びI2CバスI/Fの標準的な通信インターフェイスで接続されている。 外部機器との通信はこのLANインターフェイスボード505を経由して実施される。
【0058】
HDD503は、システムのアプリケーションプログラムならびにプリンタ、作像プロセス機器の機器付勢情報を格納するアプリケーションデータベース、ならびに、読み取り画像や書込み画像のイメージデータ、すなわち画像データ、ならびにドキュメントデータを蓄える画像データベースとして用いられる。物理インターフェイス、電気的インターフェイス共に、ATA/ATAPI−4に準拠したインターフェイスでコントローラに接続されている。
【0059】
操作ボード500には、CPU及びROM,RAM、LCD及びキー入力を制御するASIC(LCDC)が搭載されている。ROMには操作ボード500の入力読込み、及び表示出力を制御する、操作ボード500の制御プログラムが書き込まれている。RAMは、CPUで使用する作業用メモリである。システムコントローラ501との通信により、パネルを操作して使用者がシステム設定の入力を行う入力と、使用者にシステムの設定内容,状態を表示する、表示および入力の制御を行っている。
【0060】
システムコントローラ501のワークメモリから出力されたブラック(Bk)、イエロー(Y)、シアン(C)、マデンタ(M)の各色の書き込み信号は、LDB(Laser Diode control Board)のBk,Y,M、CのLD(Laser Diode)書き込み回路に入力される。
LD書き込み回路でLD電流制御(変調制御)が行われ、各LDに出力される。
【0061】
エンジン制御510は、プロセスコントローラであって、画像形成の作像作成制御を主として行い、CPU及び、画像処理を行うIPP、複写およびプリントアウトを制御するため必要なプログラムを内蔵したROM、その制御に必要なRAM、及びNV−RAMを搭載している。NV−RAMにはSRAMと、電源OFFを検知して、EEPROMにストアするメモリを搭載している。また、他の制御を行うCPUとの信号の送受信を行う、シリアルインターフェイスも備えているI/O ASICは、エンジン制御ボードが実装された、近くのI/O(カウンタ、ファン、ソレノイド、モータ等)を制御するASICである。I/O制御ボード513とエンジン制御ボード510とは同期シリアルインターフェイス接続されている。
【0062】
I/O制御ボード513には、サブCPU517を搭載しており、温度センサ,電位センサ,トナー量センサである感光体上濃度センサ(Pセンサ)およびトナー濃度センサである光センサ81,82、ならびにその他の各種センサの検出信号の読込み、アナログ制御,用紙センサの検出信号を参照するジャム検出,用紙搬送制御も含む画像形成装置のI/O制御を行っている。インターフェイス回路515は、各種センサ,アクチュエータ(モータ、クラッチ、ソレノイド)とのインターフェイス回路である。前述の光センサ81,82は、各種センサ516に含まれている。
【0063】
電源装置PSU514は、画像形成装置を制御する電源を供給するユニットである。メインSWのオン(閉)により、商用電源が供給される。その商用電源からAC制御回路540に商用ACが供給され、AC制御回路540により整流、平滑化のように制御されたAC制御出力を用いて、電源装置PSU514は各制御基板に必要なDC電圧を供給する。電源装置PSUにより生成される定電圧を用いて各制御部のCPUが動作している。
【0064】
本複写機は、その構成要素の状態や内部で生ずる現象に関連する様々な情報を取得するデータ取得手段を備えている。このデータ取得手段は、図8に示されるエンジン制御510,I/O制御513,各種センサ516、操作ボード500などから構成されている。 エンジン制御510は、複写機のハードウエア全体の制御を司る制御手段であり、制御プログラムを記憶しているデータ記憶手段たるROM、演算データや制御パラメータ等を記憶するデータ記憶手段たるRAM、演算手段たるCPU等を有している。
【0065】
本複写機では、これらエンジン制御510,I/O制御513,各種センサ516,操作ボード500等からなるデータ取得手段が、所定のタイミングで各種状態を検出し、検出データに基づいて状態評価データを生成し、エンジン制御510が複写機の各種動作の制御パラメータを調整し、また、故障を判定又は検出する。これらの検出データ,評価データ、および、制御パラメータの値は、状態データとしてエンジン制御510のNV−RAMに蓄積する。本明細書において、状態データは、作像特性に影響する制御パラメータの値,状態センサによる検出データおよび検出データに基づいて生成された評価データ、のいずれかである。すなわち、状態データには、検出データ,評価データ、および、制御パラメータの値、が含まれる。
−取得データに関する説明−
本複写機のデータ取得手段によって取得される各種のデータとしては、上記状態データ,入力データ,画像読取データなどが挙げられる。以下、これらのデータについて詳述する。
(a)検出データ
検出データとしては、駆動状態,記録媒体の各種特性、現像剤特性、感光体特性、電子写真の各種プロセス状態、環境条件、記録物の各種特性などを判定するために検出する状態値である。検出データの概要は次の通りである。
(a−1)駆動系統のデータ
・感光体ドラムの回転速度をエンコーダーで検出したり、駆動モータの電流値を読み取ったり、駆動モータの温度を読み取る。
・同様にして、定着ローラ、紙搬送ローラ、駆動ローラなどの円筒状またはベルト状の回転する部品の駆動状態を検出する。
・駆動により発生する音を装置内部または外部に設置されたマイクロフォンで検出する。
(a−2)紙搬送の状態
・透過型または反射型の光センサ、あるいは接触タイプのセンサにより、搬送された紙の先端や後端の位置を読み取り、紙詰まりが発生したことを検出したり、紙の先端や後端の通過タイミングのずれ、送り方向と垂直な方向の変動などを読み取る。
・同様に、複数のセンサ間の検出タイミングにより、紙の移動速度を求める。
・給紙時の給紙ローラと紙とのスリップを、ローラの回転数計測値と紙の移動量との比較で求める。
(a−3)紙などの記録媒体の各種特性
このデータは、画質やシート搬送の安定性に大きく影響する。この紙種のデータ取得には以下のような方法がある。
・紙の厚みは、紙を二つのローラで挟み、ローラの相対的な位置変位を光学センサ等で検知したり、紙が進入してくることによって押し上げられる部材の移動量と同等の変位量を検知することによって求める。
・紙の表面粗さは、転写前の紙の表面にガイド等を接触させ、その接触によって生じる振動や摺動音等を検知する。
・紙の光沢は、規定された入射角で規定の開き角の光束を入射し、鏡面反射方向に反射する規定の開き角の光束をセンサで測定する。
・紙の剛性は、押圧された紙の変形量(湾曲量)を検知することにより求める。
・再生紙か否かの判断は、紙に紫外線を照射してその透過率を検出して行う。
・裏紙か否かの判断は、LEDアレイ等の線状光源から光を照射し、転写面から反射した光をCCD等の固体撮像素子で検出して行う。
・OHP用のシートか否かは、用紙に光を照射し、透過光と角度の異なる正反射光を検出して判断する。
・紙に含まれている水分量は、赤外線またはμ波の光の九州を測定することにより求める。
・カール量は光センサ、接触センサなどで検出する。
・紙の電気抵抗は、一対の電極(給紙ローラなど)を記録紙と接触させて直接測定したり、紙転写後の感光体や中間転写体の表面電位を測定して、その値から記録紙の抵抗値を推定する。
(a−4)現像剤特性
現像剤(トナーやキャリア)の装置内での特性は、電子写真プロセスの機能の根幹に影響するものである。そのため、システムの動作や出力にとって重要な因子となる。現像剤の情報を得ることは極めて重要である。この現像剤特性としては、例えば次のような項目が挙げられる。
・トナーについては、帯電量およびその分布、流動性、凝集度、嵩密度、電気抵抗、外添剤量、消費量または残量、流動性、トナー濃度(トナーとキャリアの混合比)を挙げることができる。
・キャリアについては、磁気特性、コート膜厚、スペント量などを挙げることができる。
【0066】
これらのデータを複写機の中において単独で検出することは通常困難である。そこで、現像剤の総合的な特性として検出すると良い。この現像剤の総合的な特性は、例えば次のように手順により測定することができる。
・感光体上にテスト用潜像を形成し、予め決められた現像条件で現像して、形成されたトナー像の反射濃度(光反射率)を測定する。
・現像装置中に一対の電極を設け、印加電圧と電流の関係を測定する(抵抗、誘電率など)。
・現像装置中にコイルを設け、電圧電流特性を測定する(インダクタンス)。・現像装置中にレベルセンサを設けて、現像剤容量を検出する。レベルセンサは光学式、静電容量式などがある。
(a−5)感光体特性 感光体特性も現像剤特性と同じく、電子写真プロセスの機能と密接に関わる。この感光体特性のデータとしては、感光体の膜厚、表面特性(摩擦係数、凹凸)、表面電位(各プロセス前後)、表面エネルギー、散乱光、温度、色、表面位置(フレ)、線速度、電位減衰速度、電気抵抗、静電容量、表面水分量などが挙げられる。このうち、複写機の中では、次のようなデータを検出できる。
・膜厚変化に伴う静電容量の変化を、帯電部材から感光体に流れる電流を検知し、同時に帯電部材への印加電圧と予め設定された感光体の誘電厚みに対する電圧電流特性と照合することにより、膜厚を求める。
・表面電位、温度は従来周知のセンサで求めることができる。
・線速度は感光体回転軸に取り付けられたエンコーダーなどで検出される。
・感光体表面からの散乱光は光センサで検出される。
(a−6)電子写真プロセス状態
電子写真方式によるトナー像形成は、周知のように、感光体の均一帯電、レーザ光などによる潜像形成(像露光)、電荷を持ったトナー(着色粒子)による現像、転写材へのトナー像の転写(カラーの場合は中間転写体または最終転写材である記録媒体での重ね合わせ、または現像時に感光体への重ね現像を行う)、記録媒体へのトナー像の定着という順序で行なわれる。これらの各段階での様々な情報は、画像その他のシステムの出力に大きく影響を与える。これらを取得することがシステムの安定を評価する上で重要となる。
【0067】
この電子写真プロセス状態のデータ取得の具体例としては、次のようなものが挙げられる。
・帯電電位、露光部電位は従来公知の表面電位センサにより検出される。
・非接触帯電における帯電部材と感光体とのギャップは、ギャップを通過させた光の量を測定することにより検知する。
・帯電による電磁波は広帯域アンテナにより捉える。
・帯電による発生音。
・露光強度。
・露光光波長。
また、トナー像の様々な状態を取得する方法としては、次のようなものが挙げられる。・パイルハイト(トナー像の高さ)を、変位センサで縦方向から奥行きを、平行光のリニアセンサで横方向から遮光長を計測して求める。
・トナー帯電量を、ベタ部の静電潜像の電位、その潜像が現像された状態での電位を測定する電位センサにより測定し、同じ箇所の反射濃度センサから換算した付着量との比により求める。
・ドット揺らぎまたはチリを、ドットパターン画像を感光体上においては赤外光のエリアセンサ、中間転写体上においては各色に応じた波長のエリアセンサで検知し、適当な処理をすることにより求める。
・オフセット量(定着後)を、記録紙上と定着ローラ上の対応する場所をそれぞれ光学センサで読み取って、両者比較することにより求める。
・転写工程後(PD上,ベルト上)に光学センサを設置し,特定パターンの転写後の転写残パターンからの反射光量で転写残量を判断する。
・重ね合わせ時の色ムラを定着後の記録紙上を検知するフルカラーセンサで検知する。
(a−7)形成されたトナー像の特性
・画像濃度、色は光学的に検知する。反射光、透過光のいずれでもよい。色に応じて投光波長を選択すればよい。濃度及び単色情報を得るには感光体上または中間転写体上でよいが、色ムラなど,色のコンビネーションを測るには紙上の必要がある。
・階調性は、階調レベルごとに感光体上に形成されたトナー像または転写体に転写されたトナー像の反射濃度を光学センサにより検出する。
・鮮鋭性は、スポット径の小さい単眼センサ、若しくは高解像度のラインセンサを用いて、ライン繰り返しパターンを現像または転写した画像を読み取ることにより求める。
・粒状性(ざらつき感)は、鮮鋭性の検出と同じ方法により、ハーフトーン画像を読み取り、ノイズ成分を算出することにより求める。
・レジストスキューは、レジスト後の主走査方向両端に光学センサを設け、レジストローラONタイミングと両センサの検知タイミングとの差異から求める。
・色ずれは、中間転写体または記録紙上の重ね合わせ画像のエッジ部を、単眼の小径スポットセンサ若しくは高解像度ラインセンサで検知する。
・バンディング(送り方向の濃度むら)は、記録紙上で小径スポットセンサ若しくは高解像度ラインセンサにより副走査方向の濃度ムラを測定し、特定周波数の信号量を計測する。
・光沢度(むら)は、均一画像が形成された記録紙を正反射式光学センサで検知するように設ける。
・かぶりは、感光体上、中間転写体上、または記録紙上において、比較的広範囲の領域を検知する光学センサで画像背景部を読み取る方法、または高解像度のエリアセンサで背景部のエリアごと画像情報を取得し、その画像に含まれるトナー粒子数を数えるという方法がある。
(a−8)画像形成装置のプリント物の物理的な特性
・像流れや画像かすれなどは、感光体上、中間転写体、あるいは記録紙上でトナー像をエリアセンサにより検知し、取得した画像情報を画像処理して判定する。
・トナーチリ汚れは記録紙上の画像を高解像度ラインセンサまたはエリアセンサで取り込み、パターン部の周辺に散っているトナー量を算定することにより求める。
・後端白抜け、ベタクロス白抜けは、感光体上、中間転写体、あるいは記録紙上で高解像度ラインセンサにより検知する。
・記録紙のカール、波打ち、折れは、変位センサで検出する。折れの検出のためには記録紙の両端部分に近い所にセンサを設置することが有効である。
・コバ面の汚れやキズは、排紙トレイに縦に設けたエリアセンサにより,ある程度排紙が溜まった時のコバ面をエリアセンサで撮影,解析する。
(a−9)環境状態
・温度検出には、異種金属どうし或いは金属と半導体どうしを接合した接点に発生する熱起電力を信号として取り出す熱電対方式、金属或いは半導体の抵抗率が温度によって変化することを利用した抵抗率変化素子、また、或る種の結晶では温度が上昇したことにより結晶内の電荷の配置に偏りが生じ表面に電位発生する焦電型素子、更には、温度による磁気特性の変化を検出する熱磁気効果素子などを採用することができる。
・湿度検出には、HO或いはOH基の光吸収を測定する光学的測定法、水蒸気の吸着による材料の電気抵抗値変化を測定する湿度センサ等がある。
・各種ガスは、基本的にはガスの吸着に伴う、酸化物半導体の電気抵抗の変化を測定することにより検出する。・気流(方向、流速、ガス種)の検出には、光学的測定法等があるが、システムへの搭載を考慮するとより小型にできるエアブリッジ型フローセンサが特に有用である。
・気圧、圧力の検出には、感圧材料を使用する、メンブレンの機械的変位を測定する等の方法がある。振動の検出にも同様に方法が用いられる。
(b)制御パラメータ
複写機の動作は制御部によって決定されるため、制御部の入出力パラメータを直接利用することが有効である。
(b−1)画像形成パラメータ
画像形成のために制御部が演算処理により出力する直接的なパラメータで、以下のような例がある。
・制御部によるプロセス条件の設定値で、例えば帯電電位、現像バイアス値、定着温度設定値など。
・同じく、中間調処理やカラー補正などの各種画像処理パラメータの設定値。
・制御部が装置の動作のために設定する各種のパラメータで、例えば紙搬送のタイミング、画像形成前の準備モードの実行時間など。
(b−2)ユーザ操作履歴
・色数,枚数,画質指示など、ユーザにより選択された各種操作の頻度。
・ユーザが選択した用紙サイズの頻度。
(b−3)消費電力
・全期間または特定期間単位(1日、1週間、1ヶ月など)の総合消費電力あるいはその分布、変化量(微分)、累積値(積分)など。
(b−4)消耗品消費情報
・全期間または特定期間単位(1日、1週間、1ヶ月など)のトナー、感光体、紙の使用量あるいはその分布、変化量(微分)、累積値(積分)など。
(b−5)異常発生情報
・全期間または特定期間単位(1日、1週間、1ヶ月など)の異常発生(種類別)の頻度あるいはその分布、変化量(微分)、累積値(積分)など。
(b−6)動作時間情報(作動時間情報)
・複写機の動作時間を計時手段によって計時して記憶する。
(b−7)プリント動作回数(作動回数情報)
・プリントアウト1枚ごとにカウントアップしていき、そのカウント値を記憶する。
(c)入力画像情報
ホストコンピュータから直接データとして送られる画像情報、あるいは原稿画像からスキャナで読み取って画像処理をした後に得られる画像情報から、以下のような情報を取得することができる。
・着色画素累積数はGRB信号別の画像データを画素ごとにカウントすることにより求められる。
・例えば特許第2621879号の公報に記載されているような像域分離方法でオリジナル画像を文字、網点、写真、背景に分離し、文字部、ハーフトーン部などの比率を求めることができる。同様にして色文字の比率も求めることができる。
・着色画素の累積値を主走査方向で区切った領域別にカウントすることにより、主走査方向のトナー消費分布が求められる。
・画像サイズは制御部が発生する画像サイズ信号または画像データでの着色画素の分布により求められる。
・文字の種類(大きさ、フォント)は文字の属性データから求められる。
【0068】
次に、本複写機において参照する各種データの具体的取得法を次に示す。
(1)温度データ
本複写機は、温度の情報を取得する温度センサとして、原理及び構造が簡単でしかも超小型にできる抵抗変化素子を用いるものを備えている。
(2)湿度データ
小型にできる湿度センサが有用である。基本原理は感湿性セラミックスに水蒸気が吸着すると、吸着水によりイオン伝導が増加しセラミックスの電気抵抗が低下することによる。 感湿性セラミックスの材料は多孔質材料であり、一般的にはアルミナ系、アパタイト系、ZrO2−MgO系などを使用する。
(3)振動データ
振動センサは、基本的には気圧及び圧力を測定するセンサと同じであり、システムへの搭載を考慮すると超小型にできるシリコン利用のセンサが特に有用である。薄いシリコンのダイアフラム上に作製した振動子の運動を、振動子と対向して設けられた対向電極間との容量変化を計測する。Siダイアフラム自体のピエゾ抵抗効果を利用して計測することもできる。
(4)現像剤中のトナー濃度(4色分)データ
各色ごとにトナー濃度を検出してデータ化する。トナー濃度センサとしては従来より公知の方式のものを用いる。例えば、特開平6−289717号公報に記載されているような現像装置中の現像剤の透磁率の変化を測定するセンシングシステムにより、トナー濃度を検出する。
(5)感光体一様帯電電位(4色分)データ
各色用の感光体40(K,Y,M,C)について、それぞれ一様帯電電位を検出する。 物体の表面電位を検知する公知の表面電位センサを用いる。
(6)感光体露光後電位(4色分)データ
光書込後の感光体40(K,Y,M,C)の表面電位を、上記(5)と同様にして検出する。
(7)着色面積率(4色分)データ
入力画像情報から、着色しようとする画素の累計値と全画素の累計値の比から着色面積率を色ごとに求め、これを利用する。
(8)現像トナー量(4色分)データ
感光体40(K,Y,M,C)上で現像された各色トナー像の濃度(単位面積あたりのトナー付着量)を、反射型フォトセンサ81,82の受光量信号に基づいて求める。
(9)紙先端位置の傾き
給紙部200の給紙ローラ42から2次転写ニップに至る給紙経路のどこかに、転写紙をその搬送方向に直交する方向の両端で検知する光センサ対を設置し、搬送されてくる転写紙の先端付近の両端を検出する。両光センサについて、給紙ローラの駆動信号の発信時を基準として、通過までの時間を計測し、時間のズレに基づいて送り方向に対する転写紙の傾きを求める。
(10)排紙タイミングデータ
排出ローラ対(図1の56)を通過後の転写紙を光センサで検出する。この場合も給紙ローラの駆動信号の発信時を基準として計測する。
(11)感光体総電流(4色分)データ
感光体40(K,Y,M,C)からアースに流れ出る電流を検出する。感光体の基板と接地端子との間に、電流測定手段を設けることで、かかる電流を検出することができる。(12)感光体駆動電力(4色分)
感光体の駆動源(モータ)が駆動中に費やす駆動電力(電流×電圧)を電流計や電圧計などによって検出する。
−各種データの取得タイミング−
上記(1)〜(12)の各種データは、それぞれに定められたタイミングで、エンジン制御510(のCPU,以下同様)の指示に従いI/O制御513が読み込む。
エンジン制御510は読み込んだ各種データを、そのときのプリント枚数積算値を付加してエンジン制御510内のNV−RAMに割り付けた状態情報データベース(DB)に蓄積し、各種データに基づいて複写機各部の状態を判定し、必要に応じて状態に対応して制御パラメータを調整し、故障を判定する。状態判定で生成した状態評価データ,制御パラメータの調整値および故障が発生した場合の故障とその内容も、状態情報データベース(DB)に蓄積する。
【0069】
図9に、制御パラメータである発光強度調整値R,現像バイアス調整値Qおよび露光調整値Pを設定する「トナー濃度調整」IDAの内容を示す。「トナー濃度調整」IDAに進むとエンジン制御510は、作像機構を駆動して(図9中のS1)、光センサ81,82の正反射PDの受光信号をデジタル変換して、それが基準値(図6の(b)の目標受光光量)になるように、光センサ内のLEDの通電電流値を調整する(図9中のS2)。
これにより、受発光素子のばらつきや経時変化、感光体および転写ベルトの表面状態(地汚れ)の経時変化に影響されずに精度良くトナー像濃度を計測できるようになる。調整値(固定の基準電流値に対する調整代)がRである。この調整値Rは、感光体および転写ベルトの表面状態(汚れ)の情報も含む。
【0070】
次に、各色5段階の濃度のテストパターンマーク(トナー像:図5の(b)に示す83C1他)を、帯電,現像バイアスは基準値に定めて感光体上に形成し中間転写ベルト10に転写する(図9中のS3)。そして中間転写ベルト10に転写したテストパターンのトナー濃度を検出する(図9中のS4)。次に、図10のように、一色の5点の受光信号から、特性線すなわち線形近似した現像ポテンシャル/トナー付着量直線、の傾きγおよび切片x0を算出する(図9中のS5)。切片x0を基準の特性線の切片に補正し、傾きγを基準の特性線の傾きに補正する現像バイアス調整および露光量調整を行う。このときの、各基準値からの調整代が現像バイアス補正値Qおよび露光補正値Pである。これらR,Q,Pは、そのときのプリント枚数積算値を付してエンジン制御510内のNV−RAMに蓄積する(図9中のS6)。
【0071】
本実施例では現像バイアスと露光光量とを補正するとしたが、もちろん帯電電位や転写電流など画像濃度に寄与するその他のプロセス制御値を補正して同じ結果を得ても良い。 これらのプロセス制御は正常範囲内のトナーの帯電量の温湿度による変動や感光体の感度の変動などを補正する目的で運転されるが、特定の異常や異常の予兆があったときにも計測値や計測値に基づいて決定されるパラメータが変動する場合がある。例えば転写後の感光体上に転写されずに残存したトナーを回収し、正常な帯電露光を維持する目的で設置されているクリーナはウレタンゴムブレードで感光体上を摺擦するブレードクリーニング方式が多用されているが、このような構成を取っているため一部のトナーはブレードの下に潜り込み通過してしまう。通過したトナーは帯電露光部を通過して現像で回収される比率が高いが、ブレードによる摩擦作用などによって帯電特性を失ったり、形状が変化してしまうことで現像に回収されず転写体に画像部であるか非画像部であるか関係なく非静電的に付着し、そのまま転写されるものもある。このような理由などによって非画像部にもごく微量のトナー粒子の付着が見られるが微量であるので画像品質をはなはだしく損なうようなことは無い。
【0072】
長期の摺擦によってブレードの感光体当接部分が磨耗してくると掻き落し力が低下し、このような通過トナー量は加速度的に増えていく傾向となる。そしてついに大量の残存トナーが一気にブレードを通過してしまうと帯電装置はこのトナーによる汚れで帯電能力を低下させ、露光手段もこのトナーによる減衰によって機能低下となり、現像手段もこのような大量のトナーを回収できず、ついには極めて許容しがたいタテスジ状の異常画像が発生してしまい、ただちに修理を要する故障状態となる。
【0073】
ところでこのような状態に至る少し前からは、像担持体上全体についてほぼ均一なトナー付着量の増大がおきているのだが、この時点では使用者にとって気になるような画像劣化とはならず、気づくことは極めて少ない。この状態を「軽度地汚れ」と呼び、クリーナ異常(クリーニング不全)の予兆状態であると考える。このようなトナーの存在は、図11の(b)に示すように、特に低濃度部での計測結果を高くする影響を及ぼし、傾きγの若干の低下や切片X0の低下を引き起こす。このようになった各色の特性線を図12に示す。
一般にトナーや感光体の環境経時変動範囲と大差は無く、単色のγやx0あるいはこれに基づき決定される補正パラメータQ,Pから、この発生を判別することは、従来はきわめて難しく、精度のある予兆アラームを作ることは困難であり、従来の装置は明らかに正常から逸脱した場合に異常又は故障のアラームを出すにとどまり、異常予兆段階ですばやく異常予兆を認識することは困難であった。
【0074】
図13に、管理装置630の構成を示す。管理装置630のデータ収集&配信器631は、いずれかの複写機から通信の要求を受け取ると、状態データを送るように該複写機に指示し、該複写機より状態データを一括して受信する。
そして受信後、状態データベース632の該複写機宛のデータベースに新たなファイルとして追加記録する。通信対象となる複写機は数千台規模であり、個々の複写機の状態データがこうして刻々と状態データベース632に蓄積されていく。
【0075】
故障予兆判定の推論エンジンは、対象データ生成部633,対象データメモリ634,異常予兆判定器635,定数データベース636および表示制御器637で構成されており、状態データベース632の状態データに基づいて故障予兆判定をおこなって、異常予兆有りと判定すると、管理装置がある管理センターのオペレータに通報するために、ディスプレイ640にアラームを表示する。
【0076】
故障予兆判定は比較的ステップ数の少ない演算であるので、各複写機に実装することも可能であるが、管理装置630に装備することによって、対象データ生成方法(例えば特徴量演算方法)の改善や判別定数の改善をおこなったときに確実に一元的に推論品質を向上できるので好都合である。
【0077】
また比較的ステップ数の少ないブースティング法による判別を行うように構成しているので、膨大なログ(蓄積状態データ)に対しても高速に判別を順次行うことが可能となる。従来の判別方法は実行時間の問題から、装置側で1次的な状態判別を行い、必要時に2次的な診断を行うなどのように運用が非常に複雑化する問題を、ブースティング法を適用することで解決できた。
【0078】
故障予兆判定の推論エンジンから、異常予兆有りを意味するアラームが発報されるとオペレータは、該当複写機装置のメンテナンスを行うべく、複写機ユーザへの状況確認連絡と修理部品の手配を、部品管理システムを使って行う。
サービスエンジニアの手配は、コール受付担当への連絡によって行う。サービスエンジニアは当該装置の現場に向かい、対象修理部品の交換作業等を行い、その後、作業のレポートを部品管理システムに入力し、作業記録を残しておく。
(状態データの蓄積)
図14に、複写機601のエンジン制御510による、状態データ送信の制御概要を示す。エンジン制御510は、自身に動作電圧が印加されて制御対象各部の初期化を終えた直後に、また、印刷又は複写(両者あわせてプリントという)の作業を終了し、次のプリント指示を待っているときに、前回の、管理装置630に対する状態データの送信完了からの、プリント枚数積算値の増分が1000枚超であると(S21〜S23)、複写機601のコントローラ501を介して、管理装置630に、状態データ転送の集積ありを報知する(S24)。
これに応答して管理装置630のデータ収集&配信器631が該複写機に状態データの転送を要求し、これに応答して該複写機のコントローラ501が、エンジン制御510のNV−RAMに蓄積している、前回の状態データの送信完了の後に蓄積した状態データを、管理装置630に送信する。他の複写機も同様な、状態データ送信を管理装置630に対して行う。なお、プリント枚数と機械がモータで駆動されて劣化が進行する時間は必ずしも一致しないので、一定のモータ運転時間毎に、管理装置630に通信要求を行うようにしても良い。この通信の間隔を、必要があれば設定又は調整可能ととすることにより、通信のデータ量を調整できるようにしても良い。
(異常予兆判別)
図15に、管理装置630のシステムコントローラ638が実行する異常予兆判別処理の概要を示す。これは、上述の、複写機からの状態データの送信があったときに、状態データベース632の、該複写機あての状態データ群を対象に、実行するものである。本実施例では、該状態データ群のなかの、31種の状態データを対象とする。
「異常予兆判別」PADに進むと、管理装置630は、故障予兆判定の推論エンジンの対象データ生成部633の中の特徴量算出によって、該複写機の31種の状態データの中の状態データR,Q,Pにつき、最近のものから順次に前のもの、あわせて16点のものを抽出し(S31)、各状態データごと(R,Q,Pごと)に特徴量を算出する(S32)。
【0079】
本実施例では、上記16点の状態値の時間的分布(変化パターン)を、その特徴を表す指標値に変換する。この変換処理は、データごと(R,Q,Pごと)に定められている。 特徴量には、図16に示す10種の特徴量Rv1,Rv2,Q(Y)v,Q(M)v,Q(C)v,Q(Bk)v,P(Y)v,P(M)v,P(C)v,P(Bk)vが含まれる。これらの特徴量のみを対象データとする「異常予兆判別1」(S34(後述))は、Bk画像を作像するための感光体40(Bk)のクリーニング不良(黒クリーニング不全)および/又は中間転写ベルト10のクリーニング不良(汚れの定着を含む)に用いている。
【0080】
図16は、発光強度調整値R,現像バイアス補正値Qおよび露光量補正値Pの特徴量算出のみを抽出して示すものである。光センサ81の発光強度調整値R1については、16点の両端のデータすなわち最近のデータと最も古いデータの、プリント枚数積算値の間を等間隔に15区間に等分割して、各分割点のデータ値を、内挿,外挿法によって算出して両端のデータと共に、新たな16点のデータ群を生成する(S511)。次に、新たな16点のデータの平均値Rm1,最近から第1〜4点のデータの平均値Rsm1,第5〜8点のデータの平均値Rsm2,第9〜12点のデータの平均値Rsm3および第13〜16点のデータの平均値Rsm4を算出して、算出値の差分、Rsm1−Rsm2,Rsm2−Rsm3およびRsm3−Rsm4、を算出してこれらの差分の最大値Rsmm1を求める(S512)。そして発光強度調整値Rの特徴量Rv1を、
Rv1=Rk・|Rsmm1|/|Rm1|
と算出する(S513)。
Rkは、演算値のレンジを調整する係数(固定値)である。
以上が、光センサ81の発光強度調整値R1の特徴量Rv1の算出S51の内容である。
【0081】
光センサ82の発光強度調整値R2の特徴量Rv2の算出S52,各色トナー濃度調整の現像バイアス調整値Q(Y),Q(M),Q(C)およびQ(Bk)の特徴量Q(Y)v,Q(M)v,Q(C)vおよびQ(Bk)vの算出S53〜S56、ならびに、各色トナー濃度調整の露光量調整値P(Y),P(M),P(C)およびP(Bk)の特徴量P(Y)v,P(M)v,P(C)vおよびP(Bk)vの算出S57〜S60、の算出処理は、上述の特徴量Rv1の算出S51の内容と同様である。
【0082】
算出した特徴量は、各色トナー濃度調整の現像バイアス調整値Q(Y),Q(M),Q(C)およびQ(Bk)に関しては、図17に示す、調整値の変化の傾き或いは速度に相応する。
【0083】
なお、このような特徴量は、異常予兆判定の対象データである。
前述の差分値だけでなく、信号変化の回帰値や最近部分の複数データの標準偏差や最大値,平均値など、さまざまな計算式で特徴量を求めることができる。このような時系列的な信号の特徴抽出方法は、ARIMAモデルなど多数提案されており適宜の方法を使えばよい。
【0084】
異常の予兆は正常なときには安定していた信号が様々な形ではあるが特異な不安定な動きを示したことによって捉えられると考える。この視点に立って適切な特徴量抽出方法を選択すればよい。また、時間経過の指標は前述のプリント枚数積算値に限るものではなく、運転時間積算値や実時間経過値なども選択できる。また時間的な演算を含まない特徴量や、状態データそのものを、異常予兆判定の対象データに加えることもこの発明のメリットを損なうものではない。たとえば、その時点の状態検出値そのものを対象データに加えても良い。すなわち、異常予兆判定の対象データは、状態データに基づいて生成される特徴量および状態データのいずれか又は両者である。
【0085】
図15を再度参照する。算出により生成した特徴量及び、その他生成した対象データは対象データメモリ634に蓄積する(S33)。そして生成した対象データ群の中の数種又は全部の対象データを用いて、異常検知を行う。この実施例では簡単のため1種類の検知を行うが、実際には故障の種類ごとにS34〜S39までの処理セットを実行する。
【0086】
図18に、前期および後期異常予兆判別に共通の処理形態を示す。
前期予兆検知機と後期予兆検知機は作成時検知する予兆の強さの違いはあるが、検知の仕組みは同じであり、両方ともに第一の判別手段と第二判別手段を持つ。各異常予兆検知機では、今回算出し各異常予兆判別に宛てられた各対象データの傾向を判別して(S71)、傾向判別結果を各異常予兆判別に宛てられた傾向判別テーブル(装置630内部のRAMの1領域)に蓄積する(S72)。この傾向判別では、対象データごとに、第1判別手段である、基準値との大小のみを判別するスタンプ判別を行う。すなわち、各対象データを、定数データベース636に、各異常予兆判別宛てに格納されている各予兆判定参照データテーブル(図19)のなかの、現在実行している異常予兆判別(1〜nのいずれか)に宛てられた予兆判定参照データテーブルの、状態データ種(No.;例えばR,Q,P対応)に割り当てられた基準値b以下であると異常傾向なし(「0」)に、基準値b以上であると異常傾向有り(「1」)に、2値化する。
【0087】
次に、第2判別手段である、傾向判別結果の重み付き多数決演算を行う(S73)。
すなわち、予兆判定参照データテーブル(図19)の、各対象データに宛てられた重みαを、傾向判別結果が「1」(異常傾向有り)であると負極性(−)を与え、傾向判別結果が「0」(異常傾向なし)であると正極性(+)を与えて、加算する。極性データをsgnで表す。加算値を予兆指標値Fとする。予兆指標値Fは、異常予兆判別に宛てられた予兆指標値テーブル(装置630内部のRAMの1領域)に蓄積する(S74)。該予兆指標値Fが0以下のときには、異常予兆有りを表す予兆判定情報A:「1」を、0を超えるときには異常予兆なしを表す予兆判定情報A「0」を生成する(75)。
【0088】
図22に、上記異常予兆判別S34〜S37の中の第1番の「異常予兆判別1」S34の、上述の処理態様を示す。「異常予兆判別1」S34では、今回算出した各対象データ(特徴量)Rv1,Rv2,Q(Y)v,Q(M)v,Q(C)vおよびQ(Bk)v,P(Y)v,P(M)v,P(C)vおよびP(Bk)vの各値を、「異常予兆判別1」に宛てられた予兆判定参照データテーブルの基準値b(No.1〜10)以下であると異常傾向なし(「0」)に、基準値b以上であると異常傾向有り(「1」)に、2値化する(S81)。
この場合に用いる予兆判定参照データテーブルは、図19に示すものと同様ではあるが、状態情報No.は、対象データ(特徴量)Rv1,Rv2,Q(Y)v,Q(M)v,Q(C)vおよびQ(Bk)v,P(Y)v,P(M)v,P(C)vおよびP(Bk)vのそれぞれ宛に1〜10である。したがって基準値bは、b1〜b10である。
【0089】
次に、第2判別手段である、傾向判別結果の重み付き多数決演算を行う(S83)。すなわち、上記予兆判定参照データテーブルの、各対象データに宛てられた重みα(α1〜α10)を、傾向判別結果が「1」(異常傾向有り)であると負極性(−)を与え、傾向判別結果が「0」(異常傾向なし)であると正極性(+)を与えて、加算する。極性データをsgnで表す。加算値を予兆指標値Fbcとする。予兆指標値Fbcは、異常予兆判別1に宛てられた予兆指標値テーブル1に蓄積する(S84)。予兆指標値Fbcの一例を、図20の最下段に示し、また、数例を図21に示す。
【0090】
該予兆指標値Fbcが0以下のときには、異常予兆有りを表す予兆判定情報A1:「1」を、0を超えるときには異常予兆なしを表す予兆判定情報A1:「0」を生成する(85)。
【0091】
図15を再度参照する。ステップS32で生成する31種の対象データは、クリーニング不全,画像異常,転写紙に対するレジスト異常,トナー不足,ハードウエア異常等の各異常の予兆を判定するグループに区分されており(ただし、複数グループに所属する対象データもある)、上述の「異常予兆判別1」S34では、上述のように、10種の対象データ(特徴量)Rv1,Rv2,Q(Y)v,Q(M)v,Q(C)vおよびQ(Bk)v,P(Y)v,P(M)v,P(C)vおよびP(Bk)v(クリーニング不全の予兆を判定するためのグループ)を用いる。「異常予兆判別2」S35〜「異常予兆判別n」S37は、画像異常,転写紙に対するレジスト異常,トナー不足,ハードウエア異常及びその他の各異常の予兆を判定する。
【0092】
図15を再度参照する。前期予兆検知日時を記録したデータベースから該当前期予兆検知日時を検索し、以前に前期予兆が検知されているかチェックする(S34)。以前に前期予兆が検知されていない場合、前期予兆検知機にて前期予兆の有無を判定する(S35)。前期予兆がない場合はそのまま終了し、ある場合は信号の日時と機番を前期予兆日時データベースに登録する(S36)。S34で以前に前期予兆があったことが判明した場合、後期予兆検知機にて、後期予兆の有無を判定する(S37)。後期予兆がない場合はそのまま終了し、ある場合は緊急度の算出を行った(S38)後、前期予兆日時データベースの該当機番のデータを削除し(S39)、緊急度を通知する(S40)。通知手段としては管理装置に備えられたPCのディスプレイに出力してもよいし、メールなどでメンテナンス担当者に通知してもよい。
【0093】
次に緊急度の算出について説明する。
緊急度は前期予兆状態から後期予兆状態に移行するまでの期間で定義する。
急速に故障状態に近づいているときには前期予兆状態から後期予兆状態までの移行期間は短くなり、逆にゆっくりと故障状態に近づいているときには移行期間は長くなる。よって、この移行期間をもって緊急度とする。
具体的には前期予兆を検知した日時と後期予兆を検知した日時を利用する。
最も単純な緊急度としては二つの日時の差分をとればよい。この差分が大きいほど緊急度が低いということであり、小さければ、緊急度が高いということである。あるいは二つの日時の差分の逆数を緊急度としてもよい。この場合、数値が高ければ高いほど緊急度が高いことをあらわす。また、数値のそのものを通知するのではなく、数値基準を作り、「低」「中」「高」との指標を緊急度として通知してもよい。
【0094】
上記の例では、前期、および後期予兆検知機で予兆が検知された場合、日時をもとに緊急度を検出することになっているが、出力枚数をカウントしたカウント値でもよい。
【0095】
なお、複写機601のエンジン制御510は、操作ボード500から修理完了による修理済要素の初期化入力があると、修理直後の対象データの過渡的な変化を異常予兆状態と誤判別されないように例外処理を行う。本実施例の例外処理では、修理済要素の修理後の状態データを、更正有りデータを付加して状態データベース(NV−RAM)に書き込む。
【0096】
管理装置630の対象データ生成部633は、ステップS31で16点の状態データを抽出したとき、その中に更正有りデータが含まれると、該状態データに関するステップ32の対象データ生成および予兆判別1〜nのそれぞれの傾向判別は実行せず、該状態データに関する傾向判別データを、異常傾向なし(「0」)に定める。
【0097】
また、複写機601のエンジン制御510は、状態データを収集して状態データの異常を認識すると、異常を操作ボード500のディスプレイに表示すると共に、そのときの状態データセット,異常内容(異常の形態)および異常発生を、管理装置630に送信する。
【0098】
管理装置630のデータ収集&配信器631は受信した情報を該当複写機宛ての状態データベースに蓄積し、受信した情報のなかの、異常他の情報をディスプレイ640に表示する。この「異常」は、異常予兆判定PADの予兆検出対象外の場合がありえるが、基準値および重み値が、該異常に対しては調整が不十分な場合がありえる。これに対処するために、管理装置630には、パソコンPCaに対する修整入力操作によって、管理装置630内の定数データテーブルの各基準値および各重み値を個別に変更できる、予兆判定参照テーブルの更新機能(プログラム)があり、管理者権限があるオペレータは、この更新機能を用いて、機内の予兆判定参照テーブル内各基準値および各重み値を個別に調整することができる。
【0099】
管理装置630は、管理権限があるオペレータとの対話協働を行う判別器生成処理によって、状態データベース632にある同一機種の複写機群から収集した状態データにもとづいて、管理装置630が予兆の発生を判定せず複写機が報知してきた異常、の予兆を検出(判定)するための、該異常の予兆判定に最も利用しやすい(予兆検出が近縁の)故障予兆判別(1〜n)の傾向判別(第1判別)および予兆判別(第2判別)で用いる基準値bおよび重みαを、生成(修正)して、これらを含む予兆判定参照テーブルを生成して、定数データベースの該当の予兆判定参照テーブルを書き換える。これにより管理装置630はその後、先に複写機が報知した異常、の予兆も判定するようになる。
【0100】
以上に説明した「異常予兆判定」PADによれば、判別処理を定義するのは各対象データ毎のスタンプ判別の基準値b,基準値より大きかった場合の重みの符号(sgn),重みαの三つの値だけである。重み付き多数決とは、影響の大きい対象データについて大きい重み値αを与えてΣsgn×αを計算するだけなので、処理の負荷は非常に小さい。
【0101】
次に、予兆判定参照テーブル(図19)の作成態様を説明する。この予兆判定参照テーブルは各故障ごとに前期予兆用と後期予兆用の二つのテーブルが作成される。管理装置630に備えている予兆判定参照テーブルは、一般にブースティング法という教師付き学習アルゴリズムを用いて作成した。ブースティング法は、例えば、「数理科学No.489,MARCH 2004(統計的パターン識別の情報幾何)」に説明があり公知である。 概要では、まず正常な状態であると予め分かっている状態データと、異常予兆状態にあると分かっている状態データを用意する。例えば装置の耐久試験などを行うときに状態データログを取り、異常事例に出会ったとき、異常の前に予兆状態があった期間を推定し上記データとして活用する。発明者らは、実際に10台を超える画像形成装置を3ヶ月間に渡り状態データログを取りながら異常事例を集め検証した。
【0102】
次に前期予兆判別器と後期予兆判別器の作成について説明する。
異なるのは学習アルゴリズムに入力する異常状態データだけで、それ以外の点は両方とも上記に示した判別器の作成方法にしたがう。まず、学習データとして入力する異常状態データを二つに分ける。分け方は、単純に予兆期間を前半、後半二つにわければよい。
前半に対応するデータを前期予兆期間、後半を後期予兆期間とする。正常データと前期予兆期間の異常データを学習アルゴリズムに入力することで、前期予兆を検知する前期予兆判別器が作成され、正常データと後期予兆期間の異常データを学習アルゴリズムに入力することで、後期予兆を検知する後期予兆判別器が作成される。
【0103】
図20に示すQ(Y),Q(M),Q(C)およびQ(K)は、市場で稼動している複写機の一台がBk色でクリーニング不良を起し、修理したときの各色の、現像バイアス調整値Qの3ヶ月間の変化を記録した結果である。同様にこれ以外の多数の状態情報も記録し活用しているが変化が顕著であった状態情報Q(現像バイアス調整値)のみを紹介する。
このようにBk色のクリーニング不良に先立って、Y,M,C色の現像バイアス調整値が変動していることが観察される。
【0104】
そこで前述(S32,S51)の対象データ生成(特徴量算出を含む)を行った。生成した31個の対象データの中から、生成対象の「異常予兆判別」(1〜nの1つ)の対象となる数種又は全部jの対象データを、プリント枚数積算値を横軸とするグラフに表して、目視により異常予兆期間の推定をおこない、異常予兆期間に該当する区間のラベルを1(異常予兆期間)、それ以外のラベルを1(正常期間)と与え、ブースティングによるj回の繰り返し学習を行わせ、b1〜bj、sgn1〜sgnj、α1〜αjを決定した。 該b1〜bjおよびα1〜αjを予兆判定参照テーブルとした。j=31の予兆判定参照テーブルの一例が、図19に示すものである。該予兆判定参照テーブルを使ってF値を計算した結果の一例を、図14のQ(K)の次に、示す。ラベルのついた教師付きデータは、適切に学習が行なわれ予兆該当部分だけがF値でマイナスに変化する弱判別器(第1判別手段:S71,S81)と、重み付き多数決による強判別器(第2判別手段:S73〜75,S83〜85)が生成されたことが確認できた。次にこの判別器が学習に用いていないテストデータに対して適切な結果を与えるかを、5台(1号機〜5号機)の同様の異常事例が発生した装置の状態情報から、同様の手順で特徴量を抽出し事後検証した結果を、図21に示す。
先に決定したb,αによって演算を行う判別器出力F値は、意図した通り同様の異常事例発生に先立ち、異常予兆状態になっているときにマイナスに変化しており、上手く予兆状態が判別できたことが確認できた。故障緊急度を算出するところまでは実施例1と同様なので割愛する。
【0105】
故障緊急度が算出された後、該当する複写機に向けて故障緊急度を通知する。
通知手段としてはメール、SOAPなどのプロトコルを用いる。
通知をうけとった複写機は複写機に備えられたディスプレイに故障内容と緊急度を表示する。
ディスプレイの変わりに、操作用として備えられているタッチパネルを用いてもよい。
【符号の説明】
【0106】
10 中間転写ベルト
40 感光体
60 帯電装置
61 現像装置
62 1次転写ローラ
63 クリーニング装置
81、82 光センサ
601 カラー複写機
630 管理装置
631 データ収集&配信器
632 状態データベース
633 対象データ生成部
634 対象データメモリ
635 異常予兆判定器
636 定義データベース
637 表示制御器
640 ディスプレイ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0107】
【特許文献1】特開2009−37141号公報
【特許文献2】特開2009−42361号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置と管理装置がネットワークを介して接続され、
前記画像形成装置は、
画像形成装置の状態を検知するための状態情報検知手段と、
状態情報を記録するための状態情報記録手段と、状態情報記録手段に記録された状態情報を管理装置に向けて送信するための状態情報送信手段とを備え、
前記管理装置は、
画像形成装置の状態情報送信手段から送信された状態情報を受信するための状態情報受信手段と、
状態情報に現れる画像形成装置の異常状態の予兆のうち、予兆期間の初期に現れる予兆を検知する前期異常予兆検知手段と、
状態情報に現れる画像形成装置の異常状態の予兆のうち、予兆期間の後期に現れる予兆を検知する後期異常予兆検知手段と、
前期予兆検知手段が検知した日時を機番にひもづけて記録する前期予兆日時値記録手段と、
前期予兆日時と後期予兆検知手段が検知した日時から、故障緊急度を算出する故障緊急度算出手段と、
故障緊急度を通知する故障緊急度通知手段とを備え、
前記管理装置では、前記状態情報に基づき画像形成装置の特徴量を算出し、該特徴量の傾向結果を蓄積し、該傾向結果から判別して予兆結果を割り出し、以前に予兆検知が行われた前期予兆検知結果に対して後期予兆検知結果と対比し、前期予兆検知がある場合には、緊急度の算出を行った後、該当する画像形成装置での後期予兆日時データを削除して緊急度を通知することを特徴とする画像形成装置の管理システム。
【請求項2】
画像形成装置と管理装置がネットワークを介して接続され、
前記画像形成装置は、
画像形成装置の状態を検知するための状態情報検知手段と、
状態情報を記録するための状態情報記録手段と、
状態情報記録手段に記録された状態情報を管理装置に向けて送信するための状態情報送信手段とを備え、
前記管理装置は、
画像形成装置の状態情報送信手段から送信された状態情報を受信するための状態情報受信手段と、
状態情報に現れる画像形成装置の異常状態の予兆のうち、予兆期間の初期に現れる予兆を検知する前期異常予兆検知手段と、
状態情報に現れる画像形成装置の異常状態の予兆のうち、予兆期間の後期に現れる予兆を検知する後期異常予兆検知手段と、
前期予兆検知手段が検知したカウンタを機番にひもづけて記録する前期予兆カウンタ値記録手段と、
前期予兆検知時のカウンタ値と後期予兆検知手段が検知したカウンタ値から故障緊急度を算出する故障緊急度算出手段と、
故障緊急度を通知する故障緊急度通知手段とを備える画像形成装置の管理システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の画像形成装置の管理システムにおいて、
前期予兆検知手段が検知したことを通知する前期予兆検知通知手段を備えたことを特徴とする画像形成装置の管理システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちの一つに記載の画像形成装置の管理システムにおいて、
画像形成装置が管理システムからの通知を受信する通知受信手段を備え、
通知内容を表示するための通知内容表示手段を備えたことを特徴とする画像形成装置の管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−166427(P2011−166427A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26562(P2010−26562)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】