説明

画像形成装置及びその制御方法

【課題】用紙が吸湿する等して転写環境が変化しても転写電流を基準範囲内に維持することを、リアルタイムで安定的に行う。
【手段】二次転写部14を通過する電流の値が、二次転写ローラ13の対向部に位置した電極11を介して電流計33で検知される。用紙Pを二次転写部14に送るための転写前ガイド体20aには可変抵抗体35が接続されている。電流計33で検知した値が基準範囲外である場合は、可変抵抗体35を調節して用紙Pに流れる漏洩電極を変えることにより、二次転写に消費される電流の値を基準範囲内に維持する。二次転写部14の電流を直接に検知するものであるためリアルタイム性に優れており、バイアスの出力は変更する必要がないため安定性に優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、電子写真方式の画像形成装置及びその制御方法に関するものである。ここに画像形成装置には、複写機やプリンタ、ファクシミリのような印刷機能を有する単機能機、或いは、プリント機能や読取機能や通信機能等の複数の機能を併有する複合機など、印刷機能を有する様々の装置・機器が含まれる。
【背景技術】
【0002】
トナーを使用した電子写真方式の画像形成装置では、所定方向に搬送されるシート体(シート状転写材、シート状記録媒体と呼んでもよい)に転写ベルト又は感光体ドラム等のトナー担持体を接触させて、バイアスを印加しつつシート体をトナー担持体に押圧することでトナー像をシート体に転写(二次転写)している。
【0003】
転写のための電流には好適な範囲が存在しており、そこで、シート体を通過する転写電流値が好適な範囲に維持されるようにバイアスの出力値を設定しているが、実際には、電流がシート及びガイド部材を介して漏洩するため、転写に消費される電流量は出力値と相違しているのが普通である。この場合の問題は、漏洩する電流量が環境等の様々の要因によって変化することである。
【0004】
特に、シート体が紙である場合は、天候によって紙全体の湿度が変わったり、或いは、1枚の紙の湿度が場所によって相違するといったことがあるため、実際の転写電流値と出力値との変化の度合いは大きくなる。具体的には、紙の湿度が大きいと抵抗値は低くなるため紙を伝って流れる電流は多くなり、すると、転写に消費される電流が必要範囲よりも減少して転写不良が発生しやすくなる。逆に、紙の抵抗が高くなり過ぎると放電ノイズのような不具合が発生し、この場合も転写不良が発生しやすくなる。
【0005】
シート体の材質や厚さ、大きさの相違によっても抵抗値が変化する。この点に対しては、印刷メニューで用紙の種類を選択することでそれに対応したバイアスに設定できると言えるが、想定外の材質や厚さが存在すると、正確に対応できずに転写不良が発生する場合がある。
【0006】
そこで、転写環境が変化しても転写電流が所定範囲に納まるように制御する技術が提案されている。例えば特許文献1には、転写部に送られる用紙の湿度を吸湿度検知手段で検知し、この用紙の湿度に基づいてバイアスの出力を制御することが記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、転写部から用紙を介して転写前ガイド部材に流れる漏れ電流の値を検知し、漏れ電流が所定の閾値を超えるとバイアス出力電圧を下げるというように制御することが開示されている。
【0008】
更に特許文献3には、用紙を通過して流れる転写電流の値を電流検知手段で検知し、この電流量に基づいて電流の出力を調節することにより、転写部に流れる電流が所定の範囲内となるように制御することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平08−087185号公報
【特許文献2】特開平11−219042号公報
【特許文献3】特開2007−86814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
さて、転写環境が相違しても良好な転写を確保するためには、まず、a)転写部に過不足ない範囲の電流量が供給されていること(必要電流維持の確実性)が必要であり、そのためには、b)転写に消費されている電流量を正確に検知すること(検知の正確性)が必要である。
【0011】
更に、用紙等のシート体は場所によって湿度等が相違することがあるため、c)電流量の検知と制御とをリアルタイムで行うことで必要である(制御のリアルタイム性)。また、d)転写中の印加電圧はなるべく変化させないこと(バイアス安定性)が必要であり、そのためには、e)シート体を介してガイド部材等に漏洩する電流を制御すること(漏洩電流の制御)が必要である。
【0012】
そこで各特許文献を検討する。まず特許文献1を見ると、特許文献1は、転写部の消費電流を用紙の抵抗値から間接的に演算するものであるため検知の正確性に劣ると共に、1枚の用紙について吸湿度を1回だけ検知して1回だけ制御するに過ぎないためリアルタイム性に劣り、結果として必要電流維持の確実性に劣る。また、印加電圧を制御するものであるため、バイアス安定性にも劣っている。
【0013】
次に特許文献2を見ると、この特許文献2は、用紙を通じて流れた漏洩電流から転写部の消費電流を間接的に検知するものであり、また、1枚の用紙について1回だけの検知であるため、検知の正確性とリアルタイム性に欠けており、結果として必要電流維持の確実性も劣ると言える。更に、バイアス出力を変化させるものであるため、バイアス安定性にも欠けている。
【0014】
他方、特許文献3は用紙を通過する電流の値を直接に検知するものであるため、検知の正確性とリアルタイム性とに優れており、結果として転写部の電流を必要な範囲に納めることが可能であるといえる。しかし、他の先行文献と同様にバイアス出力を変更するものであるため、バイアス安定性には劣っており、かつ、漏洩電流の制御は全く考慮されていない。
【0015】
更に述べると、特許文献3では、用紙の抵抗が高くてしかも転写部が高抵抗部材で構成されている場合は、出力電圧を上げると放電が生じたりトナーの極性が変化したりする弊害が生じることがあり、逆に、用紙の抵抗が低くてしかも転写部が低抵抗部材で構成されている場合は、出力電圧を下げても転写部の電流を所定範囲に下げることができない場合がある。
【0016】
本願発明は、このような現状を改善することを課題として成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願発明に係る画像形成装置は、所定方向に搬送されるシート体の表面にトナー画像を転写する接触転写手段と、前記接触転写手段にバイアスを印加するバイアス印加手段と、画像転写位置において前記シート体を貫通して流れる転写電流の値を検知する転写電流検知手段と、前記接触転写手段から前記シート体の表面方向に流れる電流量を調節し得る漏洩電流可変手段と、前記転写電流の電流量が基準範囲内に維持されるように前記転写電流検知手段の検知結果に基づいて前記漏洩電流可変手段を制御する制御手段とを備えている。
【0018】
本願発明においては転写電流の値が転写電流検知手段で検知されるが、ここにいう「転写電流の値」には、電流値の絶対値の他に、基準値よりも低いか高いかの検知、基準値から乖離している値(或いは乖離している割合)など、様々の値が含まれる。基準値からの乖離等を検知する場合、基準値としては中心値を1つだけ設定してもよいし、上限値と下限値との2つの値を設定してもよい。
【0019】
本願発明は画像形成装置の制御方法も含んでいる。すなわちこの制御方法は、所定方向に搬送されるシート体の表面に、バイアスが印加された接触転写手段によってトナー画像を転写するようになっている画像形成装置の制御方法であって、画像転写位置において前記シート体を貫通して流れる転写電流の値を転写電流検知手段によって検知し、前記転写電流検知手段の検知結果に基づいて前記接触転写手段から前記シート体の表面方向に流れる電流量を漏洩電流可変手段で調節することにより、前記転写電流の電流量が基準範囲内に維持されるものである。
【発明の効果】
【0020】
本願発明は、漏洩電流を調節することで転写に消費される電流を所定の範囲に維持するものであり、バイアスの印加出力は変更する必要がないため、バイアス安定性に優れており、結果として消費電力抑制(運転コスト低減)にも貢献できる。また、漏洩電流を制御するものであるため、シート体の湿度のような環境因子が変化した場合でも、その変化に的確に対応して転写電流を所定の範囲に維持できる。
【0021】
更に、シート体を通過する電流量を直接に検知するものであるため、検知の正確性に優れていると共にリアルタイム性にも優れている。結局、本願発明によると、環境変化に対応して転写電流量を所定の範囲に維持することを、安定よく的確に実現できる。
【0022】
本願発明において、前記接触転写手段は、トナーを担持する転写ベルト又は感光体と、前記シート体を前記転写ベルト又は感光体に押圧する転写ローラとを有し、前記転写ローラを通じてバイアスが印加されるようになっていてもよい。すなわち、画像形成装置の接触転写手段が転写ベルトと転写ローラとで構成される、いわゆる間接転写方式においても本願発明を適用し上記効果を得ることができる。また、接触転写手段が感光体と転写ローラとで構成される、いわゆる直接転写方式においても本願発明を適用し上記効果を得ることができる。
【0023】
また、本願発明において、前記シート体の搬送方向に向かって画像転写位置よりも手前の部位に、前記シート体に接触する漏洩電流制御電極が設けられており、漏洩電流制御電極と前記漏洩電流可変手段とが電気的に接続されていてもよい。このような構成であると、シート体からの漏洩電流の制御について確実性が高い利点がある。
【0024】
また、本願発明において、前記漏洩電流制御電極を、シート体が前記接触転写手段に進入することをガイドする転写前ガイド体に兼用させてもよい。このような構成であると、漏洩電流制御電極として専用の部材を設けるよりも構造が簡単であると共に、漏洩電流制御電極を転写部の近くに設けることかできるので、よりリアルタイム性の高い制御が可能になる利点がある。
【0025】
また、本願発明において、前記漏洩電流可変手段を可変抵抗又は可変バイアス印加装置としてもよい。可変抵抗を採用すると電源が不要である構造か簡単になる。他方、可変バイアス印加装置を採用すると、シート体の抵抗値が大きく変化しても的確な対応が可能となる利点がある。
【0026】
本願発明において、前記転写電流の基準範囲が40〜80μAに設定されていてもよく、これにより、より安定した転写を行うことができる。
【0027】
また、本願発明において、前記転写電流制御手段で検知した電流値が基準値を超えている場合は、前記シート体への漏洩電流が増えるように前記漏洩電流可変手段を調節し、前記転写電流検知手段で検知した電流値が基準値より低い場合は、前記シート体への漏洩電流が減少するように前記漏洩電流可変手段を調節してもよい。このような構成により、制御が確実ならしめられる。
【0028】
本願発明において、転写環境を検知する環境センサを有しており、前記環境センサの検知結果に基づいて転写電流の基準範囲が変更可能になっていてもよい。この構成によれば、転写環境(例えば湿度)の変化によって適切な転写を実現するための転写電流の範囲が変化した場合にも的確に対応できる利点がある。また、基準範囲の変更に併せてバイアス出力を変更することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】画像形成装置の一例であるプリンタの概略断面図である。
【図2】要部の拡大図である。
【図3】制御態様の一例を示す図である。
【図4】制御手順の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本願発明はプリンタに適用している。まず図1に示す全体の概要から説明する。本実施形態ではシート体として紙(以下「用紙」という)を使用している。
【0031】
(1).プリンタの概要
図1に示すように、プリンタは、上下2段の給紙カセット1,2、給紙カセット1,2の上方に配置された画像プロセス部3、画像プロセス部3の上方に形成された排紙トレイ4、用紙Pを給紙カセット1,2から排紙トレイ4に向けて搬送する搬送路(給送部)5を有している。排紙トレイ4はプリンタの外面を構成する本体ケース6の上面に露出しており、本体ケース6の上面には操作部7も設けている。
【0032】
本実施形態のプリンタはフルカラー対応であり、そこで、画像プロセス部3はイエローY,マゼンタM,シアンC,ブラックKの4つの色に対応して、4つの作像ユニット8Y,8M,8C,8Kと、4つのトナー貯蔵ユニット9Y,9M,9C,9Kを備えている。4つの作像ユニット8Y,8M,8C,8Kは、イエロー作像ユニット8Yが搬送路5から最も離れてブラック作像ユニット8Kが搬送路5に近づくように並んでおり、これら作像ユニット8Y,8M,8C,8Kから中間転写ベルト10にトナー画像が一次転写される。
【0033】
中間転写ベルト10は、搬送路5に近接して配置された駆動ローラ11とイエロー作像部8Yの外側に配置した従動ローラ12とに巻き掛けされており、中間転写ベルト10に担持されたトナー像は用紙Pに二次転写される。用紙Pは二次転写ローラ13で中間転写ベルト10に押圧される。従って、本実施形態では、中間転写ベルト10と二次転写ローラ13との当接部が二次転写部14になっている。すなわち、接触転写手段が中間転写ベルト10と二次転写ローラ13を有した構成になっている。
【0034】
各作像部8Y,8M,8C,8Kは、感光体ドラム15、帯電器16、現像器17などを備えており、感光体ドラム15にそれぞれ露光部18からレーザー光が照射されて、感光体ドラム15にトナー像が形成される。
【0035】
搬送路5は一対のガイド体19,20で構成されており、給紙トレイ1,2に堆積した用紙Pはピックアップローラ21で1枚ずつ搬送路5に繰り出される。搬送路5のうち両給紙カセット1,2よりも下流側で二次転写部14よりも上流側の部位には、中間転写ベルト10のトナー像と用紙Pの送りを正確に同期させるためのタイミングローラ23の対が配置されている。図示していないが、搬送路5には用紙Pの検知するセンサが配置されている。
【0036】
既述のとおり搬送路5は一対のガイド体19,20で構成されているが、タイミングローラ23と二次転写ローラ13との間に配置されたガイド体のうち、用紙Pを二次転写ローラ13に案内するガイド体を特に転写前ガイド体と呼ぶこととし、これに符号20aを付している。転写前ガイド体20aの近傍には、転写環境を検知する環境センサ(例えば湿度センサ)37が配置されている。
【0037】
二次転写部14を通過した用紙Pは定着部24に送られる。定着部24は熱源で加熱された定着ローラ25とこれに弾性的に押圧された加圧ローラ26とで構成されている。定着部24を通過した用紙Pは排紙ローラ27の対で排紙トレイ4に排出される。なお、両面印刷方式の場合は、定着部24の下流からタイミングローラ23の上流に戻るリターン通路を設けたらよい。
【0038】
(2).要部の説明
次に、主として図2以下の図面に基づいて本実施形態の要部を説明する。二次転写ローラ13は金属製(導体製)であってその外周には導電性の軟質材29が張られており、軟質材29が変形することによってニップ30が形成される。二次転写ローラ13にはバイアス印加手段の一例としての電源31からバイアスが印加され、用紙Pの表面に帯電することで中間転写ベルト10のトナー像が用紙Pに転移付着する。
【0039】
二次転写ローラ13に印加された電流は用紙Pを通過して中間転写ベルト10に流れる。そこで、金属製の駆動ローラ11を電極に兼用し、駆動ローラ11とアース(フレーム材)32との間に、転写電流検知手段の一例としての電流計33を介在させている。これにより、二次転写部14に流れた電流の値を正確にかつリアルタイムで検知できる。
【0040】
なお、バイアス印加手段で印加された電流はその大部分が転写に消費されて一部がシート体を通じて漏洩するが、バイアス印加手段や転写部等の部分は電流が一方的に流れる閉じた回路を構成しているため、電圧Eと電流Iと抵抗RとはE=IRの式が成り立つとみなせる。
【0041】
他方、転写前ガイド体20aは漏洩電流制御電極に兼用されており、転写前ガイド体20aに結線したケーブル34に漏洩電流可変手段の一例としての可変抵抗体35を接続している。可変抵抗体35は電子的に又は機械的に制御できる。
【0042】
可変抵抗体35は無段階方式調節と段階的調節方式のいずれも採用可能である。段階的調節方式の場合は、例えば単位抵抗を直列に接続して、使用する単位抵抗の個数をスイッチ回路によって選択することで抵抗値を多段階に切り換えることができる。可変抵抗体35の調節(制御)は電流計33の値(検知信号)に基づいて、制御部(コントローラ)36で調節される。
【0043】
制御部36は様々に具体化できる。例えば比較回路を設けて、電子計33から送信された電流値から予め記憶されている基準上限値及び基準下限値を減算し、基準上限値の減算値が負で基準下限値の減算値が正の場合は可変抵抗体35を調節せず、基準上限値の減算値が正の場合と基準下限値の減算値が負の場合は可変抵抗体35を駆動する、という方法を採用できる。
【0044】
本実施形態では、二次転写部14での転写に必要な電流として40〜80μAに設定されている。すなわち、二次転写部14を通過する電流の基準範囲は40〜80μAに設定されている。そして、電源31から印加される出力は一定でも、用紙Pを通じて転写前ガイド体20aに漏洩する電流の値が変わると二次転写部14を通過する電流の値も変化することになるが、これは、用紙Pを通じて漏洩する電流の値を変化させると二次転写部14を通過する電流の値が変化することを意味する。
【0045】
そこで本実施形態では、二次転写部14に流れる電流が基準範囲よりも低い場合は、可変抵抗体35の抵抗を高くして用紙Pに流れる電流を少なくすることで、二次転写部14に流れる電流が基準範囲内に納まるように制御する。逆に、二次転写部14に流れる電流が基準範囲よりも高い場合は、可変抵抗体35の抵抗を低くして用紙Pに流れる漏洩電流を多くすることで、二次転写部14に流れる電流が基準範囲内に納まるように制御する。いずれにしてもバイアス出力は変化しないため、安定性に優れている。
【0046】
適切な基準範囲は、湿度などの環境条件によって変化する可能性がある。そこで、環境センサ37による検出値と適切な基準範囲の関係を予め実験等により導いて、関係式或いは関係テーブルとして制御部等に記憶させておき、これら関係式或いは関係テーブルに基づいて、環境センサ37の検知結果から基準範囲を設定してもよい。
【0047】
さて、用紙Pは全体的に吸湿している場合もあるし、局部的に吸湿している場合もある。用紙Pがどのような吸湿状態にあるかは判らないので、搬送しながら吸湿状態をリアルタイムで検知し、その検知結果を可変抵抗体35にフィードバックさせてリアルタイムの制御をするのが好ましい。この点について本実施形態では、転写前ガイド体20aの先端とニップ30との間隔を処理基準単位として、この処理基準単位ごとに検知と可変制御とを行っている。この点を図3に基づいて説明する。
【0048】
図3(A)(B)に示すように、用紙Pは転写前ガイド体20aを通過してニップ30に移行し、ニップ30で挟まれることでトナー像の転写が開始される。そこで、転写前ガイド体20aの先端からニップ30の端までの距離をL1とすると、この距離L1に若干の掴み代をL2を付加した寸法を処理開始寸法Lとして、ここから制御が始まる。掴み代L2は例えば1mm程度でよい。また、掴み代を時間表示することも可能である。すなわち、掴み時間を例えば5ミリ秒というように時間で設定することも可能である。用紙Pがニップ30に進入した後は、所定の時間又は送り寸法に応じて制御できる。
【0049】
具体的に述べると、図3(C)に示すように、用紙Pの先端部Paがニップ30に進入すると即座に転写電流を検知して、その検知結果に基づいて必要があれば可変抵抗体35の抵抗値を調節する。次いで、用紙Pがニップ30に寸法Lだけ進入した後は、用紙Pが適宜の寸法L3だけ送られるごとに(或いは所定時間経過するごとに)転写電流の値を検知し直して、必要があれば可変抵抗体35の抵抗値を調節する。L3はL2と同じでも良い。或いは、Lを単位にして制御しても良い。
【0050】
このようにして一定の処理基準寸法Lごとに転写電流の値を検知し直して、用紙Pを伝って流れる漏洩電流を制御することにより、二次転写部14を通る電流の値を所定の範囲内に維持するのである。転写前ガイド体20aからニップ30までの距離L1は例えば15mm程度と僅かであり、制御基準寸法Lも16mm程度で足りるので、用紙Pの湿り具合が場所によって相違していてもこれに適切に対応できる。すなわち、きめ細かい制御が可能になる。
【0051】
電流計33、制御部24、可変抵抗体35といった制御要素は二次転写部14の近くに配置することも可能であるが、プリンタを統括する制御機構部に一体に組み込んでもよい。
【0052】
(3).まとめ
次に、図4のフローチャートに基づいて制御態様を具体的に説明しておく。まず印刷開始信号によってスタートし、中間転写ベルト10の送りが開始されると共に用紙Pの送りが開始され、用紙Pの送り開始と同時に計時が開始される(ステップ1)。用紙Pの送り速度はタイミングローラ23の回転速度によって定まっているので、時間を計測することで用紙Pの送り距離を演算できる。
【0053】
用紙Pが二次転写部14に至る前に二次転写ローラ13にバイアスが印加され(ステップ2)、次いで、所定時間が経過して用紙Pの先端がニップ30に進入すると二次転写部14を流れる電流の値が検知される(ステップ3)。
【0054】
次いで、検知した電流値が所定範囲内があるか否かが判断され(ステップ4)、所定範囲内の場合は可変抵抗体35の値は調節されず、所定範囲よりも高い場合は、オーバー値に応じて可変抵抗体35の値を下げることで二次転写部14の電流値が所定範囲に納まるように調節され(ステップ5)、検出値が所定範囲よりも低い場合は、アンダー値に応じて可変抵抗体35の値を上げることで二次転写部14の電流値が所定範囲に納まるように調節される(ステップ6)。
【0055】
そして、1回目の電流値検知から用紙Pが制御距離Lだけ搬送される所定時間が経過すると(ステップ7=YES)、2回目の電流検知が実行されて、検知された電流値に基づいて転写条件が新たに判断し直される。このような検知と判断等がルーティンとして繰り返される。そして、画像形成が終了すると(ステップ8=YES)、二次転写ローラ13へのバイアスの印加をOFFとし(ステップ9)、電流の検知も停止し、1枚の用紙Pの印刷が終了する。印刷ジョブが継続している場合(ステップ8=NO)は、ステップ3にリターンする。
【0056】
上記の説明は用紙Pの先端がニップに進入すると画像が形成される場合であったが、実際には、画像は必ずしも用紙Pの全範囲に形成されているとは限らず、例えば、用紙Pの送り方向に向かって前後に余白があったり、前側に空白があったり、後ろ側に空白があったりと画像の位置が偏っていることも多い。
【0057】
従って、実際には、電流の検知開始は用紙Pが二次転写部14に進入してからある程度の時間(距離))を経て開始される場合もある。同様に、用紙Pが二次転写部14に存在するにもかかわらず電流検知が終了する場合もある。或いは、用紙Pの搬送方向に向かって前後に画像が途切れている場合は、画像が存在する範囲でのみ電流を検知することも可能である。敢えて述べるまでもないが、処理基準寸法Lの値は任意に設定できる。
【0058】
本実施形態では二次転写部14を通過する電流の値を検知する検知手段として電流計33を使用し、この電流計33に接続されたケーブルの接点(電極)として駆動ローラ11を利用している。このため構造を簡単化できる。もとより、中間転写ベルト10の内面に当接する専用の電極(接点)を設けて、これと電流計33とを接続するといったことも可能である。
【0059】
本実施の形態では、環境センサ37は転写前ガイド体20aの近傍に配置したが、環境センサ37は転写前ガイド部20aに固定してもよいし、転写前ガイド部20aに対向したガイド体19aに設けてもよい。
【0060】
(4).その他
本願発明は、上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば、感光体と転写ローラとの間にシート体を通過させ、感光体上のトナー像を直接シート体に転写する、いわゆる直接転写方式の画像形成装置にも適用できる。この場合、接触転写手段は感光体と転写ローラを有する構成となる。転写電流検知手段としては、電流値を検出できるものでも、設定された電流値より大きいか否かを検出できるものでもよく、周知の回路構成にて実現できるものを用いることができる。用紙等のシート体に接触する漏洩電流制御電極はタイミングローラ(レジストローラ)に兼用させることも可能であり、この場合もコストアップを抑制できる。
【0061】
また、漏洩電流可変手段として、可変抵抗体35に代えて可変バイアス印加装置である可変電源を用いてもよい。すなわち、可変電源により転写前ガイド体20aの電位を変化させることにより、二次転写部14から用紙Pを通じて転写前ガイド体20aに漏洩する電流を調節する構成によっても本願発明の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本願発明はプリンタや複合機等の画像形成装置に適用してその有用性を発揮する。従って産業上利用できる。
【符号の説明】
【0063】
P 用紙
3 画像プロセス部
5 用紙搬送路
10 中間転写ベルト
11 駆動ローラ
13 二次転写ローラ
14 二次転写部
30 ニップ
31 電源
33 電流計
35 可変抵抗体
36 制御部
37 環境センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に搬送されるシート体の表面にトナー画像を転写する接触転写手段と、
前記接触転写手段にバイアスを印加するバイアス印加手段と、
画像転写位置において前記シート体を貫通して流れる転写電流の値を検知する転写電流検知手段と、
前記接触転写手段から前記シート体の表面方向に流れる電流量を調節し得る漏洩電流可変手段と、
前記転写電流の電流量が基準範囲内に維持されるように前記転写電流検知手段の検知結果に基づいて前記漏洩電流可変手段を制御する制御手段とを備えている、
画像形成装置。
【請求項2】
前記接触転写手段は、トナーを担持する転写ベルト又は感光体と、前記シート体を前記転写ベルト又は感光体に押圧する転写ローラとを有しており、前記転写ローラを通じてバイアスが印加されるようになっている、
請求項1に記載した画像形成装置。
【請求項3】
前記シート体の搬送方向に向かって画像転写位置よりも手前の部位に、前記シート体に接触する漏洩電流制御電極を設けており、漏洩電流制御電極と前記漏洩電流可変手段とが電気的に接続されている、
請求項1又は2に記載した画像形成装置。
【請求項4】
前記漏洩電流制御電極を、シート体が前記接触転写手段に進入することをガイドする転写前ガイド体に兼用させている、
請求項3に記載した画像形成装置。
【請求項5】
前記漏洩電流可変手段は可変抵抗又は可変バイアス印加装置である、
請求項1〜4のうちのいずれかに記載した画像形成装置。
【請求項6】
前記転写電流の基準範囲は40〜80μAに設定されている、
請求項1〜5のうちのいずれかに記載した画像形成装置。
【請求項7】
前記転写電流検知手段で検知した電流値が基準範囲を超えている場合は、前記シート体への漏洩電流が増えるように前記漏洩電流可変手段を調節し、前記転写電流検知手段で検知した電流値が基準範囲より低い場合は、前記シート体への漏洩電流が減少するように前記漏洩電流可変手段が調節される、
請求項1〜6のうちのいずれかに記載した画像形成装置。
【請求項8】
更に、転写環境を検知する環境センサを有しており、前記環境センサの検知結果に基づいて転写電流の基準範囲電流量が変更可能になっている、
請求項1〜7のうちのいずれかに記載した画像形成装置。
【請求項9】
所定方向に搬送されるシート体の表面に、バイアスが印加された接触転写手段によってトナー画像を転写するようになっている画像形成装置の制御方法であって、
画像転写位置において前記シート体を貫通して流れる転写電流の値を転写電流検知手段によって検知し、前記転写電流検知手段の検知結果に基づいて前記接触転写手段から前記シート体の表面方向に流れる電流量を漏洩電流可変手段で調節することにより、前記転写電流の電流量が基準範囲内に維持されるように制御される、
画像形成装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−53124(P2012−53124A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193495(P2010−193495)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】