説明

画像形成装置及びジョブ制御プログラム

【課題】機能ごとのジョブの同時実行数が上限値に達した場合であっても、特段の制限や操作を行わずにジョブを継続して実行できるようにする。
【解決手段】 機能ごとのジョブの同時実行数が上限値に達した場合にジョブの実行制限を行う画像形成装置1であって、機能ごとのジョブの同時実行数が上限値に達したか否かを検知するジョブ上限検知手段161と、機能ごとのジョブの同時実行数が上限値に達したことが検知された場合に、同報送信機能を有する特定のジョブについて予め確保されている相当数の宛先情報を格納するための専用メモリ領域を作業領域として解放することによって、前記実行制限を受けずにジョブを継続して実行するジョブメモリ制御手段163と、を備える構成としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジョブの円滑な実行を可能とする画像形成装置及びジョブ制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
コピー機やプリンター等の画像形成装置においては、スキャンした原稿の画像データや受信した印刷データ等を一旦メモリに展開して出力処理を行うことで、これらジョブ処理の効率化や円滑化を図っている。
このため、画像形成装置においては、機能ごとに必要と見込まれる一定のメモリ領域を予め設定して確保したうえで、このメモリ領域の占有状況を監視し、または、その占有状況に応じたジョブの実行制御を行うようにしている。
例えば、複合機の場合、コピー、プリント、ファクシミリ送信、メール送信といった機能ごとにジョブの同時実行可能数(上限値)が予め定められている。
【0003】
そして、ジョブの同時実行数が既に上限値に達している場合やジョブを受け付けたときに上限値に達した場合には、メモリの許容の超過(即ち、オーバーワーク)とみなして、ユーザーに警告し、あるいは、ジョブ受付を拒否し、または、必要に応じ実行中のジョブ間に割り込ませること(割り込み制御)ができる(例えば、特許文献1参照)。
また、実行可能ジョブ数を常時表示させることができる(例えば、特許文献2参照)。このような表示方法によれば、上限値に達する前からユーザーに注意を促すことができるため、オーバーワークの発生を未然に防ぐことができる。
さらに、CPU稼働率、ジョブの緊急度、操作者等により求まるジョブ優先度にもとづいて実行可能ジョブ数を動的に変動させるジョブスプール制御の技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
このように、ジョブの同時実行数の上限値を設定してこれを様々な方法で管理することによってメモリのオーバーワークによるパフォーマンスの低下等を回避し、ジョブを円滑に実行させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−257281号公報
【特許文献2】特開平11−150621号公報
【特許文献3】特開2007−164481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のジョブ管理技術は、以下のような問題があった。
すなわち、割り込み制御は、不慣れな操作を必要とし、また、ジョブスプール制御は、予めジョブの機能ごとに優先度を設定する必要があるため、いずれもユーザーにとって煩わしい操作を伴う問題があった。
また、従来のジョブ管理技術においては、限りあるメモリの領域を十分に活用しきれていないとの指摘があった。
具体的には、従来からファクシミリ機能やメール機能を備えた複合機においては、ファクシミリ送信やメール送信に関し、複数宛先に対し同時送信を行うジョブの機能(同報送信機能)を備え、この同報送信のために相当数の宛先情報を格納する専用のメモリ領域を確保している。この専用メモリ領域は、一般に、多数の宛先(例えば、500件)に対する同報送信の実行を保証するサイズが割り当てられている。
つまり、他のジョブ機能の実施の際には使用されず、また、同報送信であっても送信先が少ない、通常の使用時においては、専用メモリ領域のほとんどの部分が使用されず、大きな無駄が生じていた。
このため、このような無駄なメモリ領域を効率よく活用するための技術的手段や手法の実現が求められていた。
【0006】
本発明は、以上のような従来の技術が有する問題を解決するために提案されたものであり、機能ごとのジョブの同時実行数が上限値に達した場合であっても、同報送信の機能を有するジョブに対し予め確保されている相当数の宛先情報を格納するための専用メモリ領域を解放することによって、特段の操作を必要とせず、また、実行制限を受けることなく、効率よく、かつ、円滑にジョブの実行を継続することができる画像形成装置及びジョブ制御プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、機能ごとのジョブの同時実行数が上限値に達した場合にジョブの実行制限を行うジョブ制御手段と、前記同時実行数が前記上限値に達した場合に、複数の宛先に同時に送信を行うことができる特定のジョブについて予め確保されている相当数の宛先情報を格納するための専用メモリ領域を作業領域として解放することによって、前記実行制限を受けずにジョブを継続して実行させるジョブメモリ制御手段と、を備えた構成としてある。
【0008】
また、本発明のジョブ制御プログラムは、画像形成装置のコンピュータを、機能ごとのジョブの同時実行数が上限値に達した場合にジョブの実行制限を行うジョブ制御手段、及び、前記同時実行数が前記上限値に達した場合に、複数の宛先に同時に送信を行うことができる特定のジョブについて予め確保されている相当数の宛先情報を格納するための専用メモリ領域を作業領域として解放することによって、前記実行制限を受けずにジョブを継続して実行させるジョブメモリ制御手段、として機能させるようにしてある。
【発明の効果】
【0009】
本発明の画像形成装置及びジョブ制御プログラムによれば、機能ごとのジョブの同時実行数が上限値に達した場合であっても、特段の操作を必要とせず、また、実行制限を受けることなく、効率よく、かつ、円滑にジョブの実行を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態のジョブメモリ制御を説明するための第一の図である。
【図3】本実施形態のジョブメモリ制御を説明するための第二の図である。
【図4】本発明の実施形態に係るジョブ制御方法を示す第一のフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態に係るジョブ制御方法を示す第二のフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態に係るジョブ制御方法を示す第三のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(画像形成装置)
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置(MFP)の構成を示すブロック図である。
【0012】
MFP1は、図1に示すように、主制御部としてのCPU(Central Processing Unit)90を備えるほか、ROM(Read Only Memory)91およびRAM(Random Access Memory)92を備える。
ROM91には、CPU90に、ジョブを実行させるためのジョブ制御プログラムが格納されている。また、ROM91には、CPU90に、コピー、プリンター、ファクシミリ(FAX)、メールといった各機能のジョブ処理を実行させるためのプログラムが格納され、このプログラムを読み込ませることによって各々の機能を実施することができる。
RAM92は、CPU90がこれらのプログラムを実行する際にデータを一時的に展開する作業領域(ワークエリア)として用いられる。また、RAM92は、FAX送信やメール送信を行う際に参照する宛先情報を格納するための記憶領域を備えている。
また、MFP1は、図1に示すように、原稿読取部10、通信インターフェース11、操作表示部12、ジョブ入力部13、画像処理部14、出力部15、及び、ジョブ制御部16を備える。
以下、各構成部について説明する。
【0013】
原稿読取部10は、いわゆるスキャナーであり、操作表示部12による操作に応じて、原稿トレイ(不図示)にセットされた原稿を読み取ってその画像データを取得する。原稿読取部10は、取得した画像データを画像処理部14に出力する。
通信インターフェース11は、電話回線やLAN等が接続され、パーソナルコンピュータやFAX装置(不図示)などの外部装置との間で印刷データやFAXデータの送受信を行う。
【0014】
操作表示部12は、フロントパネル等に設けられ、各機能の実行命令や機能を実行する上で必要な各種設定を行うための操作ボタンや操作キーを配置する。
例えば、コピーの「実行ボタン」を押下することによってコピー実行を命令し、FAX送信の際に宛先を入力又は選択し、メール送信の際にアドレスを入力又は選択することができる。
さらに、FAXやメールの同報送信を行う場合には、任意のグループを選択することによりそのグループに属する宛先やアドレスを一括して設定することができる。
また、操作表示部12は、液晶パネルなどの表示器を備え、ユーザーに対し、種々の警告情報、操作を促す情報その他必要な情報を表示する。
例えば、本実施形態においては、機能別のジョブ同時実行可能数(上限値)の設定値を表示することができる(図2、3参照)。
【0015】
ジョブ入力部13は、原稿読取部10によって読み取った画像データ又は通信インターフェース11を介して受信した印刷データあるいはFAXデータなどのジョブを入力して画像処理部14に出力する。
画像処理部14は、ジョブ入力部13から入力したジョブを解釈して必要な画像処理を施す。例えば、印刷対象のジョブに対しては、色変換処理、濃度補正、網点処理等を行う。
画像処理部14は、画像処理が施されたジョブを出力部15に出力する。
出力部15は、上記ジョブ処理を介して得た画像やデータを出力する。
例えば、コピー、プリント、FAX受信の対象画像を印刷するための印刷エンジンが相当する。また、FAX送信を行うためのダイヤル発信機能やメール送信を行う等の出力手段も相当する。
【0016】
ここで、ジョブ制御部16は、機能ごとにジョブの同時実行数を管理することにより、メモリのオーバーワークを防止してジョブを円滑に実行させる役割を担う。
ジョブ制御部16は、通常は、機能ごとのジョブの同時実行数が上限値を超過した場合には、操作表示部12を介してその旨を通知し、あるいは、受け付けたジョブの実行が完了するまでは新たなジョブを受け付けないようにジョブの実行を制限する(ジョブ制御手段)。
さらに、本実施形態のジョブ制御部16は、ジョブ上限検知手段161、特定ジョブ判定手段162及びジョブメモリ制御手段163を備え、ジョブの同時実行数が上限値に達した場合であっても、ジョブを継続して実行できるようにメモリ配分を変更するようにしている。
以下、本実施形態のジョブ制御部16について詳細に説明する。
【0017】
ジョブ上限検知手段161は、機能ごとのジョブの同時実行数が上限値に達したか否かを検知する。
なお、ジョブの同時実行数の上限値は、通信インターフェース11又は操作表示部12を介して、ユーザーによって予め設定される。また、上限値は、例えば、コピーについては50ジョブ、プリントについては50ジョブ、FAX受信については50ジョブ、FAX送信(同報送信)については100ジョブ、メール送信(同報送信)については200ジョブというように設定され、ジョブ上限検知手段161は、このうちいずれか一つでも上限値を超過するとメモリのオーバーワークとみなし、これを検知する。
ジョブメモリ制御手段163は、いずれかの機能に係るジョブの同時実行数が上限値に達したことが検知された場合に、複数の宛先に対し同時に送信を行う同報送信が可能な特定のジョブ(メール送信やFAX送信)について予め確保されている相当数の宛先情報を格納するための専用メモリ領域をジョブ実行用の作業領域として解放する。
従来同報送信用に常時確保していた無駄なメモリ領域を、並行処理が可能な各ジョブに配分することによって、ジョブに対する実行制限を受けずにジョブを継続的に実行するものである。
【0018】
図2は、本実施形態のジョブメモリ制御を説明するための第一の図である。
なお、ここでは、いずれかの機能に係るジョブの同時実行数が上限値に達した場合であって、実行対象のジョブの中にメール送信又はFAX送信といった特定のジョブがないときの上限値変更方法について説明する。
また、図2(i)に示すように、初期の状態においては、機能別のジョブ同時実行数の上限値が、コピー:50、メール送信:200、プリント:50、FAX送信:100、FAX受信:50と設定されているものとする。
【0019】
ここで、図2(ii)に示すように、いずれかの機能に係るジョブの同時実行数が上限値を超えた場合(例えば、コピーについて100)であって、実行対象のジョブの中にメール送信ジョブ又はFAX送信ジョブ(特定ジョブ)がないときには、メール送信とFAX送信の上限値を0に変更する。
これにより、メール送信とFAX送信の同報送信に関するジョブの実行保証は崩れるが、メモリ全体としては記憶領域に余剰が生ずることになる。すなわち、この場合、(200−0)+(100−0)=300(ジョブ)を上限値の余剰分として得ることができる。
【0020】
このため、図2(iii)に示すように、この余剰分を並行して処理できる他の機能(コピー、プリント、FAX受信)に係るジョブの上限値に配分することができる。
例えば、余剰分(300ジョブ)を各機能に係る上限値に均等に配分する場合、各配分量は、100(=300÷3)となる。
したがって、コピー、プリント、FAX受信に係るジョブの上限値は、それぞれ150(=50+100)とすることができる。
このようにすると、コピーの同時実行数が初期値50を超過し100に達した場合であっても、継続することができる。また、プリント、FAX受信についても同様の効果を得られる。
【0021】
一方、ジョブメモリ制御手段163は、機能ごとのジョブの同時実行数が上限値に達したことが検知された場合であって、特定ジョブ判定手段162が、実行対象のジョブの中に、メール送信やFAX送信の特定ジョブが含まれると判定した場合には、前記専用メモリ領域を解放するとともに、実行対象の特定のジョブの宛先情報についての格納領域及び特定のジョブを含むジョブの実行のための作業領域に割り当てることによって、特定ジョブを含むジョブの実行制限を受けないようにしている。
【0022】
図3は、本実施形態のジョブメモリ制御を説明するための第二の図である。
ここでは、いずれかの機能に係るジョブ(例えばコピー)の同時実行数が上限値に達した場合であって、実行対象のジョブの中にメール送信やFAX送信といった特定のジョブがあるときの上限値変更方法について説明する。なお、ここでは、実行対象のジョブの中にFAX送信ジョブが30ジョブあるものとして以下説明する。
また、図3(i)に示すように、初期の状態においては、機能別のジョブ同時実行数の上限値が、コピー:50、メール送信:200、プリント:50、FAX送信:100、FAX受信:50と設定されているものとする。
【0023】
ここで、いずれかの機能に係るジョブの同時実行数が上限値を超えた場合であって、実行対象のジョブの中にメール送信ジョブ又はFAX送信ジョブがあるときには、上限値をそのジョブの件数に変更する。
本例の場合、FAX送信のみ30件のジョブがあるため、図3(ii)に示すように、FAX送信に係る上限値を30に変更し、メール送信の上限値は0に変更する。
これにより、メール送信とFAX送信の同報送信に関するジョブの実行保証は崩れるが、メモリ全体としては意記憶領域に余剰が生ずることになる。すなわち、この場合(200−0)+(100−30)=270(ジョブ)を上限値の余剰分として得ることができる。
【0024】
このため、図3(iii)に示すように、この余剰分を並行して処理できる他の機能(コピー、プリント、FAX受信)に係るジョブの上限値に配分することができる。
例えば、余剰分(270)を各機能に係る上限値に均等に配分する場合、各配分量は90(=270÷3)となる。
したがって、コピー、プリント、FAX受信に係るジョブの上限値は、それぞれ140(=50+90)とすることができる。
このようにすると、コピーの同時実行数が初期値50を超過した場合100に達した場合であっても、継続することができる。また、プリント、FAX受信についても同様の効果を得られる。
【0025】
このように、本実施形態に係るMFP1の構成によれば、ある機能に係るジョブの同時実行数が上限値に達した場合であっても、同報送信の機能を有する特定のジョブについて予め確保されている相当数の宛先情報を格納するための専用メモリ領域を解放してジョブの実行のために配分するようにしている。
このため、ジョブに関する優先度の設定を必要とせず、また、実行制限を受けず、効率よく、かつ、円滑にジョブを実行することができる。
【0026】
(ジョブ制御方法)
次に、本実施形態に係るジョブ制御方法について説明する。
図4〜6は、本実施形態に係るジョブ制御方法を示したフローチャートである。
<起動時初期化処理>
図4に示すように、起動時においては、ジョブの同時実行数の上限値に対する初期化処理を行う。
すなわち、ジョブ制御部16が、起動時に通常件数の上限値を設定することによって、この件数に応じたメモリ領域(ジョブ実行用メモリ)を確保する処理を起動時初期化処理とする(ステップ1)。
例えば、コピーについて50ジョブ、メール送信について200ジョブ、プリントについて50ジョブ、FAX送信について100ジョブ、FAX受信について50ジョブを、初期値(通常件数)として設定する。
これにより、ジョブ実行制御の準備処理が完了する。
【0027】
<ジョブ実行制御処理>
図5は、ジョブ実行制御処理の手順を示したフローチャートである。
ジョブ実行制御処理においては、図5に示すように、ジョブ上限検知手段161が、ジョブの同時実行数が、上限値に達したか否かを常時監視する(ステップ11)。
ジョブの同時実行数が上限値に達していない状態においては、通常のジョブ処理を行う(ステップ12)。つまり、ジョブの同時実行数の上限値については初期値のままジョブ処理を行う。
他方、ジョブの同時実行数が上限値に達した場合には、特定ジョブ判定手段162が、実行対象のジョブの中に複数宛先に送るジョブが有るか否かを未実行ジョブリストにそって1ジョブずつ判断する(ステップ13,14)。なお、「複数宛先に送るジョブ」とは、同報送信を一機能として有する特定のジョブであり、具体的には、メール送信やFAX送信のジョブが該当する。
【0028】
すべての未実行ジョブをチェックする過程において、複数宛先に送るジョブが有った場合、ジョブメモリ制御手段163は、複数宛先に送るジョブの実行に必要な宛先情報を格納するためのメモリ領域を別個に設けてその宛先情報を保持する(ステップ15)ほかは、同報送信に関する相当数の宛先情報を格納するための専用メモリ領域を解放して、ジョブの実行のための作業領域として割り当てる(ステップ16,17)。
つまり、同報送信に関する相当数の宛先情報を格納する専用メモリ領域を解放することによって他の機能に係るジョブの同時実行数の上限値を増加させる。
なお、このとき「例外処理中」フラグを立てる。すなわち、このフラグは、ジョブの同時実行数が上限値に達した場合であっても、例外的に、同報送信の宛先情報を格納するための専用メモリ領域を解放して他の機能に係るジョブの上限値を増加させて未実行のジョブを実行させている状態を示す識別情報である。
【0029】
そして、ジョブの同時実行数の上限値を変更することによって新たに確保されたメモリ領域(作業領域)にジョブデータを展開させてジョブ処理を実行する(ステップ18)。
ところで、ステップ14において、すべての未実行ジョブをチェックしても、複数宛先に送るジョブが無かった場合、ジョブメモリ制御手段163は、ステップ15を経ずに、ステップ16〜18の処理を行う。すなわち、この場合、未実行ジョブの中にメール送信ジョブやFAX送信ジョブがないため、宛先情報をメモリ上に保持する必要はない。
このため、未実行ジョブの中にメール送信ジョブやFAX送信ジョブが有る場合に比べ、各機能の実行用メモリ(上限値)をより多く確保することができる。
【0030】
<ジョブ終了処理>
図6は、ジョブ終了処理の手順を示したフローチャートである。
ジョブ終了処理においては、残ジョブが存在するか否かを判断する(ステップ21)。すなわち、前述のジョブ実行制御処理において例外処理の対象となったジョブの処理が完了した否かを判断する。
ここで、残ジョブがない場合は、例外処理が完了したものとみなして「例外処理中」フラグを落とし(ステップ22)、ジョブの同時実行数の上限値を通常件数である初期値に戻す(ステップ23)。これにより、起動時のジョブ実行用メモリが確保された状態に戻る。
このように、本実施形態のジョブ制御方法では、ジョブの同時実行数の上限値を例外的に増加させる処理を、ジョブの同時実行数が上限値に達したときにだけ行い、対象のジョブについての実行処理が完了した場合には、元の状態に戻すようにしている。
このため、係るジョブ制御処理が頻繁に実施されることによる、処理付加や遅延の不具合が極力生じないようにしている。
【0031】
(ジョブ制御プログラム)
次に、ジョブ制御プログラムについて説明する。
上記実施形態におけるコンピュータ(画像形成装置)のジョブ制御機能、ジョブ上限検知機能、ジョブメモリ制御機能、特定ジョブ判定機能は、記憶手段(例えば、ROMやハードディスクなど)に記憶されたジョブ制御プログラムにより実現される。
ジョブ制御プログラムは、コンピュータの制御手段(CPUなど)に読み込まれることにより、コンピュータの構成各部に指令を送り、前述したジョブ制御方法の実施を行う。
これによって、上記各機能は、ソフトウェアであるジョブ制御プログラムとハードウェア資源であるコンピュータ(画像形成装置)の各構成手段とが協働することにより実現される。
【0032】
なお、ジョブ制御機能、ジョブ上限検知機能、ジョブメモリ制御機能及び特定ジョブ判定機能を実現するためのジョブ制御プログラムは、コンピュータのROMやハードディスクなどに記憶される他、コンピュータが読み取り可能な記録媒体、例えば、外部記憶装置及び可搬記録媒体に格納することができる。
外部記憶装置とは、CD−ROM(Compact disc−Read Only Memory)等の記録媒体を内蔵し、画像形成装置に外部接続されるメモリ増設装置をいう。一方、可搬記録媒体とは、記録媒体駆動装置(ドライブ装置)に装着でき、かつ、持ち運び可能な記録媒体であって、例えば、フレキシブルディスク、メモリカード、光磁気ディスク等をいう。
【0033】
そして、記録媒体に記録されたプログラムは、コンピュータのRAM等にロードされて、CPUにより実行される。この実行により、上述した実施形態の各機能が実現される。
さらに、コンピュータでジョブ制御プログラムをロードする場合、他のコンピュータで保有されたこれらのプログラムを、通信回線を利用して自己の有するRAMや外部記憶装置にダウンロードすることもできる。このダウンロードされたプログラムも、CPUにより実行され、上記実施形態の画像形成装置における各機能を実現する。
【0034】
以上のように、本実施形態の画像形成装置及びジョブ制御プログラムによれば、ジョブの同時実行数が機能ごとに設定された上限値に達した場合であっても、同報送信が可能な特定ジョブについて予め確保されている相当数の宛先情報を格納するための専用メモリ領域を解放して各ジョブの作業領域として分配することができる。
このため、機能ごとに設定されたジョブ同時実行可能数を動的に変更することができ、有限であるメモリを最大限に有効利用することができる。
このようにすると、ジョブの同時実行数が上限値に達したとしても、ジョブに関する優先度の設定や実行制限を行わずにジョブを継続して実行させることができる。
したがって、本実施形態によれば、ユーザーにジョブの同時実行数の上限を意識させることなく、効率よく、かつ、円滑にジョブを実行することができる。
【0035】
以上、本発明の画像形成装置及びジョブ制御プログラムについて、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上記実施形態においては、ジョブの同時実行数が上限値に達した場合に、専用メモリ領域を解放して各機能に係る上限値に均等に分配するようにしたが、均等ではなく、初期の上限値の割合に応じ比例配分してもよく、また、任意に分配する割合を設定することもできる。
このようにすると、ジョブの使用頻度等に的確又は柔軟に合わせることができ、より円滑なジョブの実行が可能な画像形成装置を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、FAX同報送信やメール同報送信の機能を備えたMFPなどの画像形成装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 画像形成装置
10 画像読取部
11 通信インターフェース
12 操作表示部
13 ジョブ入力部
14 画像処理部
15 出力部
16 ジョブ制御部(ジョブ制御手段)
161 ジョブ上限検知手段
162 特定ジョブ判定手段
163 ジョブメモリ制御手段
90 CPU
91 ROM
92 RAM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能ごとのジョブの同時実行数が上限値に達した場合にジョブの実行制限を行うジョブ制御手段と、
前記同時実行数が前記上限値に達した場合に、複数の宛先に同時に送信を行うことができる特定のジョブについて予め確保されている相当数の宛先情報を格納するための専用メモリ領域を作業領域として解放することによって、前記実行制限を受けずにジョブを継続して実行させるジョブメモリ制御手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記同時実行数が前記上限値に達した場合に、実行対象のジョブの中に前記特定のジョブが含まれるか否かを判定する特定ジョブ判定手段を備え、
前記ジョブメモリ制御手段は、
実行対象のジョブの中に前記特定のジョブが含まれると判定された場合に、前記専用メモリ領域を、実行対象の前記特定のジョブの宛先情報についての格納領域及び前記特定のジョブを含む前記実行対象のジョブについての作業領域として解放することによって、前記実行対象のジョブについて前記実行制限を受けずに継続して実行させる請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ジョブメモリ制御手段は、
実行対象のジョブの中に前記特定のジョブが含まれないと判定された場合に、前記専用メモリ領域を作業領域として解放することによって前記特定のジョブ以外のジョブについて前記実行制限を受けずに継続して実行させる請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記特定のジョブは、メール送信又はファクシミリ送信を行うジョブである請求項1〜3のいずれか一項記載の画像形成装置。
【請求項5】
画像形成装置のコンピュータを、
機能ごとのジョブの同時実行数が上限値に達した場合にジョブの実行制限を行うジョブ制御手段、及び
前記同時実行数が前記上限値に達した場合に、複数の宛先に同時に送信を行うことができる特定のジョブについて予め確保されている相当数の宛先情報を格納するための専用メモリ領域を作業領域として解放することによって、前記実行制限を受けずにジョブを継続して実行させるジョブメモリ制御手段、として機能させることを特徴とするジョブ制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−61750(P2013−61750A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198957(P2011−198957)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】