説明

画像形成装置及びプログラム

【課題】画像形成装置の廃棄にともなう開示制限情報の消去を、画像形成装置の状態に応じて適切に行う。
【解決手段】画像形成装置の構成部品について使用履歴又は過去に生じた誤動作に関するエラー履歴を履歴記憶部37に記憶しておく。画像形成装置の廃棄準備処理を行う旨の信号が入力されたときに、履歴記憶部に記憶されている情報に基づいて廃棄判断部35が廃棄の適否を判断する。この判断に基づいて開示制限情報記憶部38に記憶されている情報の消去処理の実行又は中止を選択できるものとする。消去処理は、開示制限情報を完全に消去する復元不可パターンと、開示制限情報を退避情報記憶部に退避後に消去する復元可能パターンとの選択が可能とする。復元可能パターンでは、退避後一定時間の経過前であれば、開示制限情報を復元できる。退避後予め定められた時間が経過すれば、退避された情報は消去され、情報の漏洩が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成装置の新規購入や、古くなった画像形成装置の買い替え等による需要が多くなるとともに、廃棄される装置も多くなっている。画像形成装置の廃棄にあたっては、構成部品や消耗品等を再利用することにより、廃棄物を低減して環境破壊を抑制することが求められる。
【0003】
構成部品等の再利用に関する技術として、例えば、特許文献1及び特許文献2に開示されている技術がある。これらの技術では、構成部品の使用履歴等のデータに基づき、構成部品の再利用を適切に実施しようとするものである。
【0004】
このように画像形成装置の構成部品の再利用を行う場合、組み込まれているHDDやメモリ等には秘密状態に保持されている画像情報や個人情報等が保存されていることが多く、このような情報が漏洩することを防止する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−006694号公報
【特許文献2】特開2005−246855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明は、画像形成装置の廃棄にともなう開示制限情報の消去を画像形成装置の状態に応じて適切に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 画像情報に基づいて記録媒体上に画像を形成する画像形成装置であって、 該画像形成装置の構成部品について使用履歴又は過去に生じた誤動作に関するエラー履歴を記憶する履歴記憶手段と、 前記画像形成装置を廃棄するための廃棄準備処理を行う旨の信号が入力されたときに、前記履歴記憶手段に記憶されている情報に基づいて前記画像形成装置の廃棄が適切か否かの判断を行う廃棄判断手段と、 開示が制限される情報を記憶する開示制限情報記憶手段と、を有し、 前記廃棄判断手段による判断に基づき、前記開示制限情報記憶手段に記憶された情報を消去する消去処理と、廃棄準備処理を中止する中止処理とのいずれかの選択を可能とするものであることを特徴とする画像形成装置を提供する。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、 前記開示制限情報記憶手段に記憶されている情報を退避させて記憶する退避情報記憶手段を有し、 前記消去処理は、前記開示制限情報記憶手段に記憶されている情報を前記退避情報記憶手段へ退避後に開示制限情報記憶手段の情報を消去する復元可能消去処理と、前記開示制限情報記憶手段に記憶されている情報を退避することなく消去する復元不可消去処理と、のいずれかの選択が可能に設定されているものとする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の画像形成装置において、 前記退避情報記憶手段へ退避された情報は、退避後予め定められた時間の経過後に消去されるものとなっており、 予め定められた時間の経過前には、前記退避情報記憶手段に記憶されている情報を前記開示制限情報記憶手段に復元が可能となっているものとする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3までのいずれかに記載の画像形成装置において、 前記廃棄判断手段による判断を表示する表示手段を有し、 該表示手段の表示に基づき、前記消去処理と前記中止処理とのいずれか、又は前記復元可能消去処理と復元不可消去処置と中止処理とのいずれかを、操作者が選択可能となっているものとする。
【0011】
請求項5に係る発明は、 画像情報に基づいて記録媒体上に画像を形成する画像形成装置の構成部品について使用履歴又は過去に生じた誤動作に関するエラー履歴を履歴記憶手段に記憶させる手順と、 前記画像形成装置を廃棄するための廃棄準備処理を行う旨の信号が入力されたときに、前記履歴記憶手段に記憶された前記履歴情報に基づいて、前記画像形成装置の廃棄が適切か否かの判断を行う手順と、 該画像形成装置が備える開示制限情報記憶手段に記憶されている開示が制限される情報を消去する消去処理と、廃棄準備処理を中止する中止処理とから、前記判断の結果に基づいて選択されたいずれかの処理を画像形成装置が備えるCPUに実行させることを特徴とするプログラムを提供する。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載のプログラムにおいて、 前記消去処理は、前記開示制限情報記憶手段に記憶されている情報を、退避情報記憶手段へ退避し、その後に開示制限情報記憶手段の情報を消去する復元可能消去処理と、前記開示制限情報記憶手段に記憶されている情報を退避することなく消去する復元不可消去処理と、のいずれかの選択が可能に設定されており、 前記復元可能消去処理が選択され、情報の退避後予め定められた時間の経過前に、前記廃棄準備処理を中止する旨の信号が入力されたときには、前記退避された情報を退避前の記憶領域に復元する処理を、 情報の退避後、廃棄準備処理を中止する旨の信号が入力されることなく予め定められた時間が経過したときには、退避された情報を消去する処理を、実行させるものであるものとする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る画像形成装置では、画像形成装置の廃棄にともなう開示制限情報の消去を画像形成装置の状態に応じて行うことができる。
【0014】
請求項2に係る画像形成装置では、情報の消去をともなう廃棄準備処理の過誤による実行、又は廃棄準備処理実行後の状況の変化等に対応して画像形成装置を使用可能な状態に復元することができる。
【0015】
請求項3に係る画像形成装置では、過誤等による廃棄処理の実行後に、画像形成装置を使用可能な状態に復元することと、復元のために保存している情報の漏洩を防止することとの両立が可能となる。
【0016】
請求項4に係る画像形成装置では、画像形成装置の状態に基づく操作者の判断で廃棄処理を実行するか否か、又は廃棄準備処理の態様を選択することが可能となる。
【0017】
請求項5に係るプログラムでは、画像形成装置の廃棄にともなう開示制限情報の消去を画像形成装置の状態に応じて実行することができる。
【0018】
請求項6に係るプログラムでは、過誤による廃棄処理の実行、又は廃棄処理実行後の状況の変化に対応して画像形成装置を使用可能な状態に復元することができるとともに、復元のために保存している情報の漏洩を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本願発明の一実施形態である画像形成装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す画像形成装置で実行される廃棄準備処理のフローチャートである。
【図3】本願発明の第2の実施形態である画像形成装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示す画像形成装置で実行される廃棄準備処理のフローチャートである。
【図5】図4の工程で表示される廃棄準備処理のパターン選択画面の一例を示す図である。
【図6】図3に示す画像形成装置で、復元不可として情報を消去する工程のフローチャートである。
【図7】図6に示す工程が終了した後、画像形成装置を再起動したときに表示される起動画面の一例を示す図である。
【図8】図3に示す画像形成装置で、復元可能として情報を消去する工程のフローチャートである。
【図9】図8に示す工程が終了した後、画像形成装置を再起動したときに実行される処理のフローチャートである。
【図10】図8に示す工程が終了した後、画像形成装置を再起動したときに表示される起動メニューの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本願に係る発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本願に係る発明の一実施形態である画像形成装置の機能構成を説明する概略ブロック図である。
この画像形成装置は、図1に示すように、静電潜像にトナーを転移させてトナー画像を形成する画像形成部10と、画像形成条件等の設定に基づいて装置を制御するコントロール部30と、操作者による画像形成条件等の入力又は設定等の表示を行うためのユーザーインターフェイス部40と、から主要部が構成されている。
【0021】
上記画像形成部10は、静電電位の差による潜像を形成し、この潜像に電荷を有するトナーを転移させて可視像を形成する画像形成ユニット11と、形成されたトナー像を中間転写体12に転写する一次転写装置13と、中間転写体12上のトナー像を記録シートP上に転写する二次転写装置14と、転写されたトナー像を加熱して記録シート上に定着する定着装置15とを備えている。
上記画像形成ユニット11は、無端状の周面に感光体層を有する像保持体16と、この像保持体16の表面をほぼ一様に帯電する帯電装置17と、帯電された像保持体16の表面に画像を照射して静電潜像を形成する露光装置18と、像保持体16上の静電潜像にトナーを転移して可視像を形成する現像装置19と、トナー像が中間転写体に転写された後の像保持体上に残留するトナーを回収するクリーニング装置20とを有するものである。
なお、符号24は消費されたトナーを補給するための補給用トナーを収容するトナーカートリッジである。
【0022】
上記画像形成ユニット11は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色について設けられ、それぞれの色のトナー像を形成して中間転写体12上に重ねて転写するものとなっている。また、記録シートPはシートトレイ21,22,23から搬送路24を経て二次転写位置に供給されるものとなっている。
【0023】
このような画像形成部10の構成部品には、装置本体から取り外して互換性のある他の装置に利用することのできる再利用可能部品と、他の装置に利用できない再利用不可部品とが含まれる。再利用可能部品としては、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像を形成する画像形成ユニット11、画像が形成される記録シートPを収容するシートトレイのうち、オプションで増設された増設トレイ22,23等がある。一方、再利用不可部品としては、記録シートに転写された画像を加熱して定着する定着装置15、記録シートを転写部や定着部に送り込むための搬送路24、一体型トレイ21等がある。これらは、画像形成装置に一体として備えられており、画像形成装置の廃棄とともに処分される。
なお、構成部品が再利用可能部品であるか再利用不可部品であるかは、それぞれの画像形成装置の構造等によって異なるものであり、上記再利用可能部品に含まれる部品が再利用不可備品となる画像形成装置や、上記再利用不可部品に含まれる部品が再利用可能部品となる画像形成装置もある。
【0024】
上記コントロール部30は、プログラムを実行するCPUと記憶装置とで主要部が構成されるものであり、記憶装置には、プログラムデータ等が格納されるフラッシュメモリと、プログラム実行中に使用されるメモリ領域となるRAMと、画像として形成する内容である文書データや画像データ等が格納されるハードディスク(HDD)と、システム設定情報、履歴情報及びログデータ等の比較的データ量の少ない情報が集めて格納されるEEPROMと、アドレス帳データ等の小さな情報が大量に格納されるSRAM等が含まれる。
なお、上記コントロール部を構成するEEPROM、SRAM、RAM、HDD等は、互換性のある他の装置に用いることができる再利用可能部品に含まれる。
【0025】
上記コントロール部30は、記憶装置に記憶されているプログラムが実行されることによって、画像処理部31、駆動制御部32、装置管理部33、廃棄処理部34、履歴記憶部37及び開示制限情報記憶部38として機能するように設定されている。また、パーソナルコンピュータ50等の外部機器から画像情報や設定情報等の画像形成及び廃棄処理に必要な情報の入力が可能となっている。
【0026】
上記画像処理部31は、ユーザーインターフェイス部40、パーソナルコンピュータ50等から入力された画像情報に基づいて画像形成部10で画像として出力するための信号処理を行う。また、形成する画像の色調や濃度の調整等も行うものである。
上記駆動制御部32は、ユーザーインターフェイス部40、パーソナルコンピュータ50等から入力される設定情報にもとづいて画像形成部の動作を制御するものである。
上記装置管理部33は、画像形成装置のオプション構成や消耗品の状態などを管理する。また、画像形成装置の使用履歴、装置に備えられている再利用可能部品、再利用不可部品の使用情報、交換情報、エラー発生情報等を収集し、履歴記憶部37に記憶して管理する機能を有するものである。
上記履歴記憶部37は、部品の使用年数、形成された画像の枚数等の使用情報、再利用可能部品が何時に交換されたかを示す交換情報、何時にどのようなエラーが発生したかを示すエラー情報等が記録されるものである。エラー情報には、エラーセンサ等によって検出された信号によってこの履歴記録部37に書き込まれる情報等が含まれる。
【0027】
上記廃棄処理部34は、廃棄準備処理プログラムの起動により、画像形成装置の廃棄が適切であるか否かを判断する廃棄判断手段として機能する廃棄判断部35、及び廃棄が適切であると判断された場合に、開示制限情報記憶部38に保存されている開示制限情報の消去処理を制御する消去処理制御部36として機能するものとなっている。
上記開示制限情報記憶部38は、不特定の者への開示を規制すべき情報が記憶されるものである。開示制限情報には画像形成装置で形成された画像の画像信号、画像形成装置がFAX等の通信機能を有する場合の電話番号やメールアドレス等の個人情報、画像形成装置の機能を制御するためのプログラム等が含まれる。したがって、開示制限情報記憶部は、HDD、フラッシュメモリ、SRAM等の複数の記憶手段にわたって設定されている。
【0028】
上記廃棄判断部35は、ユーザーインターフェイス部40やパーソナルコンピュータ50を介して廃棄準備処理を行う旨の信号が入力されたときに、履歴記憶部37に記憶されている情報等に基づいて、画像形成装置の廃棄が適切か否かを判断するものである。
上記消去処理制御部36は、上記廃棄判断部35により装置の廃棄が適切であると判断された場合に、記憶されている開示制限情報を消去する処理を行うものである。
【0029】
上記ユーザーインターフェイス部40は、操作者による情報の入力を可能とする情報入力部41と、上記コントロール部30の動作にともなって提供される様々な情報を表示させる表示部42との機能を有するものであり、例えば表示パネルと入力キーとを備える操作パネル等を用いることができる。
上記情報入力部41は、例えば操作者の自発的意志による情報の入力や表示部42に表示された内容の選択等ができるものである。
上記表示部42は、上記廃棄判断部35の判断結果、廃棄準備処理プログラムを実行させるか否かの選択画面、及び開示制限情報記憶部38に記憶された開示制限情報を消去するか否かの選択画面等を表示することができるようになっている。
【0030】
次に、上記画像形成装置において、廃棄準備処理プログラムが実行されるときのフローを図2に基づいて説明する。
廃棄準備プログラムは、操作者が表示部42に表示された起動メニューから廃棄準備処理を選択することによって起動される(ST1)。廃棄準備処理プログラムが起動されると、記憶装置の履歴記憶部37に記憶されている情報に基づいて、廃棄判断部35が構成部品に致命的なエラーが発生していないか否かを判断する(ST2)。致命的なエラーとは、修理や部品交換等では治らないエラーのことをいう。致命的エラーが発生している場合は、画像形成装置の廃棄が適切であると判断され、廃棄準備処理が実行され(ST8)、開示制限情報が消去される。つまり、開示制限情報記憶部38に記憶されている開示制限情報は完全に消去される。
これにより、廃棄準備処理が終了し、装置は情報漏洩等のおそれがない状態で安全に廃棄することが可能となる。したがって、再利用可能部品を装置から取り外して他の装置に使用することもできる。
また、フラッシュメモリに格納されていたメインプログラムも消去されるので、廃棄準備処理の実行が終了すると、この画像形成装置ではメインプログラムを起動することができず、過誤によって画像形成を行って不完全な画像を出力することが防止される。
【0031】
致命的なエラーは発生していないと判断されると、エラーの発生頻度を履歴記憶部37に記憶されている情報に基づいてチェックする(ST3)。ここでのエラーは、紙詰まり等のエラーをいい、操作者の操作によりエラーからの復帰が可能なものをいう。このようなエラーが頻発している場合であって、近日中に装置が止まるような致命的なエラーになることが予測されると、廃棄は適切であると判断される。そして、開示制限情報が完全に消去されて(ST8)、廃棄準備処理が終了する。
エラーが頻発していない場合は、履歴記憶部37に保存されている画像形成装置の総稼動時間がチェックされ、総稼動時間が規定時間内であるか否かが判断される(ST4)。規定時間を上回っている場合は、廃棄が適切だと判断されて廃棄準備処理が実行される(ST8)。
一方、稼動時間が規定時間内であれば、画像形成枚数がチェックされる(ST5)。規定枚数を超えている場合は、廃棄準備処理が実行される(ST8)。
【0032】
規定枚数に達していない場合は、廃棄判断部35は、装置は健全な状態であると判断し、廃棄準備処理を実行するか中止するかを選択する最終確認の画面が表示部42に表示される(ST7)。これにより、操作者は、画像形成装置の継続使用が可能であることを認識することができるとともに、廃棄準備処理を実行するか否かを選択することができるようになっている。
操作者が「実行」を選択すると、廃棄準備処理が実行され、開示制限情報が完全に消去される(ST8)。これにより、画像形成装置は廃棄可能となる。また、この状態では画像形成装置を動作させようとしても通常の動作はできなくなっている。
「中止」が選択されると、廃棄準備処理は中止される。つまり、開示制限情報は消去されずに廃棄準備処理プログラムが終了し、画像形成装置を引き続き使用することができる。
【0033】
本実施の形態では、廃棄準備処理を実行するか否かの最終確認画面は、廃棄が適切ではないと判断された場合に、表示部42に表示されるものとしたが、廃棄が適切と判断されて廃棄準備処理が実行される前の段階でも表示することができる。これにより、操作者は廃棄判断部35の判断を認識し、これに基づいて廃棄準備処理を実行するか否かを選択することができる。
なお、履歴記憶手段22に記憶されている稼動時間の規定時間及び画像形成枚数の規定枚数は、画像形成装置の製造時に設定されるものであってもよいし、操作者が設定及び変更できるように管理されるものでもよい。
【0034】
このように、本実施の形態では、画像形成装置を廃棄する前に記憶装置に記憶されている開示制限情報を廃棄準備処理プログラムのフローに従って完全に消去するため、装置の廃棄後に情報が漏えいする心配がない。したがって、再利用可能部品を安心して再利用することが可能となる。
【0035】
次に、本願発明の第2の実施形態について説明する。
この画像形成装置は、図3に示すように、コントロール部が画像処理部31、駆動制御部32、装置管理部33、廃棄処理部34、履歴記憶部37及び開示制限情報記憶部38として機能するとともに、退避情報記憶部39として機能するように設定されている。また、廃棄処理部34の消去処理制御部36が行う処理には、消去処理が行われると開示制限情報の復元はできずに画像形成装置を使用できなくなる復元不可パターンと、廃棄準備処理が実行された後でも情報の復元が可能であり、画像形成装置を廃棄準備処理前とほぼ同じ状態に復元可能とする復元可能パターンと、廃棄準備処理を中止する中止パターンの、3つのパターンが用意されている。
この画像形成装置の他の構成は、第1の実施形態の画像形成装置と同様であるので、同じ符号を付すとともに説明を省略する。
【0036】
上記退避情報記憶部39は、例えばフラッシュメモリに設定されており、開示が制限される情報を、画像形成装置の通常動作時に記憶されている領域から退避させて記憶するものである。退避情報記憶部39に記憶される情報は圧縮又は暗号化して記憶されるものであってもよい。
【0037】
上記復元不可パターンは、装置の廃棄が適切だと判断されると、開示制限情報を退避させることをせず、完全に消去するものである。
復元可能パターンは、開示制限情報記憶部38に記憶されている情報を一旦退避情報記憶部39に退避させた後に、上記開示制限情報記憶部38に存在する情報を完全に消去するものとなっている。そして、これらの情報が退避された時から一定期間が経過すると、退避情報記憶部39に退避されている内容も完全に消去される。これにより、全ての開示制限情報が消去されることとなり、装置を安全に廃棄することが可能となるものである。一方、退避された時から一定期間が経過する前であれば、退避された内容を復元し、廃棄準備処理の実行前の状態に回復させることが可能となっている。
【0038】
上記画像形成装置における廃棄準備処理のフローについて以下に説明する。
図4、図6、図8及び図9は、上記画像形成装置において廃棄準備処理が実行される制御を示すフローチャートである。
廃棄準備処理が指示されて廃棄準備処理プログラムが起動すると、履歴記憶部37に記憶された構成部品の使用履歴、過去に生じた誤動作に関するエラー履歴、総稼動時間、画像形成枚数等のデータに基づいて、廃棄判断部35が致命的なエラーの発生の有無を判断する(ST2)。致命的なエラーとは、第1の実施の形態と同様に、修理や部品交換等では治らないエラーのことをいう。致命的エラーが発生している場合は、表示部42に「廃棄準備処理(復元不可)」が表示され(ST6)、廃棄準備処理を継続するか否かを操作者が選択できるものとする。
【0039】
致命的なエラーが発生していないと判断されると、履歴記憶部37に記憶されたデータに基づいてエラーの内容や発生日時等からエラーの発生頻度及びエラー内容がチェックされ、エラーが頻発しているか否かが判断される(ST3)。このエラーは、部品交換等で直るエラーをいう。エラーが頻発して近いうちに装置が停止状態になると判断されると、図5に示すように、表示部42に廃棄準備処理(復元不可)がデフォルトで表示され、廃棄準備処理(復元可能)も選択が可能に表示される(ST7)。なお、この表示において廃棄準備処理の中止を選択することもできるものとなっている。
エラーが頻発していない場合は、履歴記憶手段37に記憶されている稼動時間がチェックされる(ST4)。規定時間を上回って稼動されている場合は、廃棄は適切であると判断されて、同様に廃棄準備処理(復元不可)がデフォルトで、廃棄準備処理(復元可能)及び廃棄準備処理の中止も選択が可能に表示される(ST7)。
稼動時間が規定時間内であれば、画像形成枚数が規定枚数内か否かがチェックされ(ST5)、規定枚数を超えて画像が形成されている場合は、廃棄準備処理(復元不可)がデフォルトで表示される(ST7)。規定枚数に達していない場合は、廃棄準備処理(復元可能)がデフォルトとして表示される(ST8)。
【0040】
このように、廃棄判断部35により画像形成装置の廃棄の適否が判断され、廃棄が適切と判断された場合は、開示制限情報を完全に消去するように「廃棄準備処理(復元不可)」のみ、又は廃棄準備処理(復元不可)がデフォルトで表示されることになる(ST6,ST7)。一方、画像形成装置がまだ使用可能な状態つまり廃棄が不適切と判断されると、装置が廃棄されない場合を想定して、復元可能である「廃棄準備処理(復元可能)」がデフォルトで表示される(ST8)。
【0041】
本実施の形態では、上記のように画像形成装置が廃棄されるべき状態にあるか否かを判断する基準としてエラー履歴や使用履歴を用いているが、他の基準を用いるものであっても良いし、基準となるエラーの内容や使用履歴等を適宜に変更することもできる。
【0042】
図5に示す表示から廃棄準備処理の中止が選択されると(ST9)、なんら廃棄準備処理をすることなく廃棄準備処理プログラムは終了する。つまり、開示制限情報の消去をしないで、プログラムは中止され、画像形成装置は通常通り使用することができる。
【0043】
「廃棄準備処理(復元不可)」が選択されると(ST11)、図6に示すように、開示制限情報を消去して画像形成装置を廃棄可能な状態とする手順が行われる。
まず、装置管理部33により、例えばトナーカートリッジや記録シートが装置に装備されているか否かを確認する(ST12)。消耗品等が装備されている場合は、装置からの除去を促すための表示を行い再度消耗品等の有無を確認する(ST12)。消耗品等が装備されていないと判断されると、次はHDDの有無をチェックする(ST13)。HDDがある場合は、HDDの内容を完全に消去する(ST14)。
次に、その他の記憶領域の有無をチェックする(ST15)。つまり、記憶装置にEEPROMやSRAM等の記憶領域が含まれるか否かをチェックする。これらの記憶領域がある場合は、これらの内容を完全に消去する(ST16)。
【0044】
次に、不揮発性記憶媒体(NVM)であるフラッシュメモリに格納されているメインプログラム及びその他の開示制限情報を完全に消去する(ST17)。本実施の形態では、フラッシュメモリには、画像形成装置を駆動制御するメインプログラムの他に起動プログラム、廃棄準備処理プログラム等が格納されており、メインプログラム及び廃棄準備処理プログラムを消去する。
【0045】
一方、起動プログラムは、復元不可の廃棄準備処理を実行した後の起動プログラムに変更され、メインプログラムおよび廃棄準備処理プログラムを立ち上げるための起動プログラムは消去される(ST18)。この起動プログラムは、図7に示すように「廃棄できます」の画面を表示部42である操作パネルに表示するだけのものとなっており、その他の動作は行わない。
【0046】
以上の手順で復元不可の廃棄準備処理の実行が終了すると、構成部品で再利用可能であるもの、例えばHDDやSRAM等は、画像形成装置から分離して互換性のある他の装置に再利用することができる。このとき再利用される部品に記憶されていた内容は完全に消去されているので、情報が漏洩することがなく、安心して再利用することができる。
【0047】
一方、廃棄判断部による判断後の表示に基づき、「廃棄準備処理(復元可能)」が選択された場合には、図8にフローを示すとおりの手順が行われる。
この図に示すように、「廃棄準備処理(復元可能)」を操作者が選択すると(ST19)、装置管理部33によって消耗品等のデータから消耗品の装備の有無が確認される(ST20)。消耗品が装置に装備されている場合は、消耗品が装置から除去されるまで、繰り返し消耗品の有無が確認される(ST20)。
消耗品が除去されたと判断されると、HDDの有無がチェックされる(ST21)。HDDがある場合は、HDDに記憶された内容が退避され、その後、HDDの内容が消去される(ST22)。
なお、退避場所および退避方法は適宜に設定することができるが、本実施の形態では、圧縮及び暗号化が行われ、フラッシュメモリに設定された退避情報記憶部39に退避されるようになっている。
【0048】
次に、その他の記憶領域の有無をチェックする(ST23)。例えば、記憶装置としてEEPROMやSRAM等が装備されていれば、これらに記憶された開示制限情報を退避し、退避後に消去する(ST24)。
また、NVMであるフラッシュメモリに格納されているメインプログラムを退避情報記憶部39に退避させる。そして、フラッシュメモリに格納されていたメインプログラムを消去する。このとき、起動プログラム及び廃棄準備処理プログラムは消去されない(ST25)。
このように、HDD、EEPROM、SPAM及びフラッシュメモリに記憶されていた開示制限情報がすべて退避されたあと、HDD、EEPROM、SPAM及びフラッシュメモリに記憶されていた開示制限情報が消去され、起動プログラムが復元可能の消去処理後の起動プログラムに変更される(ST26)。そして、開示制限情報を退避させた日時の情報が退避情報記憶部39に保存される。
これにより、復元可能の廃棄準備処理が終了する。
【0049】
このように復元可能の廃棄準備処理を実行した後は、起動プログラムが変更されているので、操作者が電源を投入して画像形成装置を起動しようとしたときに、復元可能な消去処理後の起動プログラム立ち上がる。したがって、画像形成装置は通常の画像形成動作を行うことができない。また、退避されている退避情報は読み取ることができないようになっている。
【0050】
次に、復元可能の廃棄準備処理が実行された後、画像形成装置で行われる処理の手順について説明する。
図9は、復元可能の廃棄準備処理が行われた後のフローを示す図である。
復元可能の廃棄準備処理が実行された画像形成装置を再起動すると、退避情報記憶部39に保存されている退避処理をした日時と現在の日時が比較され、一定時間経過したか否かが判断される(ST28)。なお、この一定時間はユーザーが設定することができるようになっている。
【0051】
設定された時間を超えていた場合は、退避情報を復元することができず、フラッシュメモリの退避情報記憶部39に退避された内容が消去される(ST38)。その後、起動プログラムは復元不可の廃棄準備処理を行った後の起動プログラムに変更し、メインプログラムおよび廃棄準備処理プログラムを立ち上げるための起動プログラムは消去され(ST39)、廃棄準備処理を終了する。
このような処理が終了した画像形成装置を再起動すると、復元不可の廃棄準備処理を行った後の起動プログラムにより、表示パネルに「廃棄できます」との表示がなされる。
【0052】
一方、復元可能の廃棄準備処理をした日時から、一定時間が経過していない場合は、表示部42に「廃棄準備処理の実行確認」の起動メニューが表示される(ST29)。つまり、図10に示すように「廃基準備処理実行(復元不可)」又は「メインプログラムへの復元」のどちらかを選択する画面が表示される。
操作者が「廃棄準備処理実行(復元不可)」を選択した場合、退避した情報が全て削除され(ST38)、起動プログラムを変更して廃棄準備処理の実行が終了する。これにより、その後に起動したときには、図7に示すように「廃棄できます」の画面が表示部42に表示される。
【0053】
「メインプログラムへの復元」を選択すると(ST30)、コントロール部30が初期化され、エラーの確認がなされる。このときのエラーは、必要な消耗品、オプション品等の装着に欠落がないかを判断するものであり、必要な部品が装着されるまで繰り返しチェックがなされる(ST31)。
エラーがないことが分かると、フラッシュメモリの退避情報記憶部39に退避されていた情報が展開される。つまり、廃棄準備処理前に記憶されていた状態に復元される(ST32)。
【0054】
次に、HDD以外の記憶領域の有無が確認され(ST33)、記憶領域がある場合は、その記憶領域に退避情報記憶部39に退避されていた情報が展開される(ST34)。また、HDDの有無がチェックされ(ST35)、HDDが存在している場合は、HDDの内容を展開する(ST36)。
これら一連の退避情報が展開されると、起動プログラムは、廃棄準備処理プログラムを起動するものからメインプログラムを起動する起動プログラムへ変更される(ST37)。
これにより、退避されていた情報が廃棄準備処理前の状態に復元され、画像形成装置は廃棄準備処理が実行される前とほぼ同じ状態で駆動できるようになる。
【0055】
このように、第2の実施形態における画像形成装置では、復元可能の廃棄準備処理を実行しておけば、一定期間経過前については、退避させていた開示制限情報を復元し、画像形成装置を廃棄準備処理前の状態で使うことができる。
一方、一定時間経過後であれば、すべての開示制限情報が消去されるので、情報の漏洩を防止することができる。また、記憶装置を他の装置に再利用しても、情報の漏洩が生じることがない。
【符号の説明】
【0056】
10:画像形成部、 11:画像形成ユニット、 12:中間転写体、 13:一次転写装置、 14:二次転写装置、 15:定着装置、 16:像担持体、 17:帯電装置、 18:露光装置、 19:現像装置、 20:クリーニング装置、 21:一体型トレイ、 22,23:増設トレイ、 24:トナーカートリッジ、
30:コントロール部、 31:画像処理部、 32:駆動制御部、 33:装置管理部、 34: 廃棄処理部、 35:廃棄判断部、 36:消去処理制御部、 37:履歴記憶部、 38:開示制限情報記憶手段、 39:退避情報記憶部、
40:インターフェース部、 41:情報入力部、 42:表示部、
50:パーソナルコンピュータ(外部装置)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像情報に基づいて記録媒体上に画像を形成する画像形成装置であって、
該画像形成装置の構成部品について使用履歴又は過去に生じた誤動作に関するエラー履歴を記憶する履歴記憶手段と、
前記画像形成装置を廃棄するための廃棄準備処理を行う旨の信号が入力されたときに、前記履歴記憶手段に記憶されている情報に基づいて前記画像形成装置の廃棄が適切か否かの判断を行う廃棄判断手段と、
開示が制限される情報を記憶する開示制限情報記憶手段と、を有し、
前記廃棄判断手段による判断に基づき、前記開示制限情報記憶手段に記憶された情報を消去する消去処理と、廃棄準備処理を中止する中止処理とのいずれかの選択を可能とするものであること特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記開示制限情報記憶手段に記憶されている情報を退避させて記憶する退避情報記憶手段を有し、
前記消去処理は、前記開示制限情報記憶手段に記憶されている情報を前記退避情報記憶手段へ退避後に開示制限情報記憶手段の情報を消去する復元可能消去処理と、前記開示制限情報記憶手段に記憶されている情報を退避することなく消去する復元不可消去処理と、のいずれかの選択が可能に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記退避情報記憶手段へ退避された情報は、退避後予め定められた時間の経過後に消去されるものとなっており、
予め定められた時間の経過前には、前記退避情報記憶手段に記憶されている情報を前記開示制限情報記憶手段に復元が可能となっていることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記廃棄判断手段による判断を表示する表示手段を有し、
該表示手段の表示に基づき、前記消去処理と前記中止処理とのいずれか、又は前記復元可能消去処理と復元不可消去処置と中止処理とのいずれかを、操作者が選択可能となっていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
画像情報に基づいて記録媒体上に画像を形成する画像形成装置の構成部品について使用履歴又は過去に生じた誤動作に関するエラー履歴を履歴記憶手段に記憶させる手順と、
前記画像形成装置を廃棄するための廃棄準備処理を行う旨の信号が入力されたときに、前記履歴記憶手段に記憶された前記履歴情報に基づいて、前記画像形成装置の廃棄が適切か否かの判断を行う手順と、
該画像形成装置が備える開示制限情報記憶手段に記憶されている開示が制限される情報を消去する消去処理と、廃棄準備処理を中止する中止処理とから、前記判断の結果に基づいて選択されたいずれかの処理を画像形成装置が備えるCPUに実行させるためのプログラム。
【請求項6】
前記消去処理は、前記開示制限情報記憶手段に記憶されている情報を、退避情報記憶手段へ退避し、その後に開示制限情報記憶手段の情報を消去する復元可能消去処理と、前記開示制限情報記憶手段に記憶されている情報を退避することなく消去する復元不可消去処理と、のいずれかの選択が可能に設定されており、
前記復元可能消去処理が選択され、情報の退避後予め定められた時間の経過前に、前記廃棄準備処理を中止する旨の信号が入力されたときには、前記退避された情報を退避前の記憶領域に復元する処理を、
情報の退避後、廃棄準備処理を中止する旨の信号が入力されることなく予め定められた時間が経過したときには、退避された情報を消去する処理を、実行させるものであることを特徴とする請求項5に記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−39289(P2011−39289A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186484(P2009−186484)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】