説明

画像形成装置及び処理液塗布装置

【課題】スクイーズローラと塗布ローラの間に処理液が無い場合にローラ間で線速が異なると駆動負荷が増加する。
【解決手段】駆動源の駆動力は駆動力伝達機構(手段)400を介して塗布ローラ209及びスクイーズローラ207に伝達され、駆動力伝達機構400は駆動源で回転されるモータギヤ或いは中間ギヤ404と、中間ギヤ404に噛み合う塗布ローラ209のローラ軸209に設けたギヤ403と、ギヤ403に噛み合うスクイーズローラ207のギヤ402とを有し、スクイーズローラ207が塗布ローラ209の線速度より遅く回転するように設定され、ギヤ402とスクイーズローラ207のローラ軸207aとの間には一方向クラッチ401を介在させ、スクイーズローラ207を塗布時の回転方向に回転させる方向には駆動力を伝達し、逆方向には駆動力を伝達しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に処理液を塗布する装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置(インクジェット記録装置)が知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、液体吐出方式の「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限るものではなく、吐出されるときに液体となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる。また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。また、「画像形成装置」には液体吐出方式のものに限らず、電子写真方式で画像形成を行なうものなども含まれるが、以下では液体吐出方式の画像形成装置で説明する。
【0004】
このような液体吐出方式の画像形成装置においては、色材を含むインクを液滴化して画像形成を行うために、液滴で形成されるドットがひげ状に乱れるフェザリング、異なる色のインク滴が隣接して用紙に打たれた場合に、各色が相互に混ざり合って色境界が不鮮明になるカラーブリード等の不具合が生じることがあり、更に印字後の紙上の液滴が乾くまでに時間がかかるという問題がある。
【0005】
そこで、従来から特許文献1に記載されているようにインクと反応して滲み防止を促す前処理液を塗布ローラで塗布したり、特許文献2に記載されているように前処理液を液体吐出ヘッドからミスト状に吐出させて塗布したりすることが行われる(その他、特許文献3も参照)。また、処理液を泡にして塗布する装置も知られている(特許文献4)。
【0006】
また、被塗工材に塗工液を塗布する塗工装置として、装置本体と、この装置本体に設けられたオフセットグラビアコータとを備えて構成され、このオフセットグラビアコータは、最下部に配置されるとともに内部に塗工液が収容された液槽に浸したグラビアロールと、このグラビアロールの上方に配置され表面にコーティングラバーが施されたオフセットロールと、このオフセットロールの上方に配置され被塗工材をオフセットロールに押圧するバックアップロールとを有し、グラビアロール、オフセットロールおよびバックアップロールがそれぞれモータに連結されて単独駆動可能となっているものが知られている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−137378号公報
【特許文献2】特開2005−138502号公報
【特許文献3】特開2003−205673号公報
【特許文献4】特開2009−012394号公報
【特許文献5】特開2005−193109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、被記録媒体に処理液を塗布する塗布ローラと塗布ローラ上の液膜を薄くするスクイーズローラとを備えて、処理液をローラで被記録媒体に塗布するようにした場合、処理液を微量塗布するために、スクイーズローラの線速度を塗布ローラの線速度よりも遅く設定するようにされている。
【0009】
しかしながら、スクイーズローラと塗布ローラの間に処理液が無い場合、ローラ間で線速が異なると、駆動負荷が増加するので、処理液が無い場合は等速で、処理液がある場合には速度差を設けるようにするため、スクイーズローラの駆動には可変減速手段を設けたり、あるいは、各ローラを別々の駆動系で駆動したりするようにしている。その結果、構成が複雑になるという課題がある。
【0010】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で、塗布ムラやバラツキのない微量塗布を安定して行なえるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
被記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、
前記被記録媒体に処理液を塗布する塗布装置と、を備え、
前記塗布装置は、
前記被記録媒体に処理液を塗布する塗布ローラと、
前記塗布ローラに当接して前記塗布ローラ上の液膜を薄くするスクイーズローラと、
前記塗布ローラ及びスクイーズローラに駆動力を伝達する駆動力伝達手段と、を有し、
前記駆動力伝達手段は、前記スクイーズローラの線速度が前記塗布ローラの線速度よりも遅くなるように前記駆動力を伝達するとともに、前記スクイーズローラには塗布時の回転方向にのみ前記駆動力を伝達する手段を備えている
構成とした。
【0012】
また、前記スクイーズローラに所定の回転負荷を付与する駆動負荷手段が設けられている構成とできる。
【0013】
本発明に係る処理液塗布装置は、
被記録媒体に処理液を塗布する処理液塗布装置であって、
前記被記録媒体に処理液を塗布する塗布ローラと、
前記塗布ローラに当接して前記塗布ローラ上の液膜を薄くするスクイーズローラと、
前記塗布ローラ及びスクイーズローラに駆動力を伝達する駆動力伝達手段と、を有し、
前記駆動力伝達手段は、前記スクイーズローラの線速度が前記塗布ローラの線速度よりも遅くなるように前記駆動力を伝達するとともに、前記スクイーズローラには塗布時の回転方向にのみ前記駆動力を伝達する手段を備えている
構成とした。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る画像形成装置によれば、被記録媒体に処理液を塗布する塗布ローラと、塗布ローラに当接して塗布ローラ上の液膜を薄くするスクイーズローラと、塗布ローラ及びスクイーズローラに駆動力を伝達する駆動力伝達手段と、を有し、駆動力伝達手段は、スクイーズローラの線速度が塗布ローラの線速度よりも遅くなるように駆動力を伝達するとともに、スクイーズローラには塗布時の回転方向にのみ駆動力を伝達する手段を備えている構成としたので、塗布ローラとスクイーズローラの間の摩擦力が所定以上のときにはスクイーズローラは塗布ローラに連れ回りし、塗布ローラとスクイーズローラの間の摩擦力が所定未満のときにはスクイーズローラに駆動力が伝達されて所定の周速度で回転することで、塗布ローラとスクイーズローラの間の摩擦力が所定以上のときの周速度差による駆動負荷を低減でき、簡単な構成で、塗布ムラやバラツキのない微量塗布を安定して行なうことができる。
【0015】
本発明に係る処理液塗布装置によれば、被記録媒体に処理液を塗布する塗布ローラと、塗布ローラに当接して塗布ローラ上の液膜を薄くするスクイーズローラと、塗布ローラ及びスクイーズローラに駆動力を伝達する駆動力伝達手段と、を有し、駆動力伝達手段は、スクイーズローラの線速度が塗布ローラの線速度よりも遅くなるように駆動力を伝達するとともに、スクイーズローラには塗布時の回転方向にのみ駆動力を伝達する手段を備えている構成としたので、塗布ローラとスクイーズローラの間の摩擦力が所定以上のときにはスクイーズローラは塗布ローラに連れ回りし、塗布ローラとスクイーズローラの間の摩擦力が所定未満のときにはスクイーズローラに駆動力が伝達されて所定の周速度で回転することで、塗布ローラとスクイーズローラの間の摩擦力が所定以上のときの周速度差による駆動負荷を低減でき、簡単な構成で、塗布ムラやバラツキのない微量塗布を安定して行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る処理液塗布装置を備える本発明に係る画像形成装置の一例を示す全体構成図である。
【図2】同実施形態における塗布装置の塗布部の詳細な説明に供する斜視説明図である。
【図3】同じく塗布部の模式的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の一例について図1を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の全体構成図である。
この画像形成装置は、被記録媒体である用紙100に液滴を吐出して画像を形成する画像形成手段としての記録ヘッドユニット101と、用紙100を搬送する搬送ベルト102と、用紙100を収容する給紙トレイ103と、記録ヘッドユニット101よりも用紙搬送方向上流側で被塗布部材である用紙100に処理液を塗布する本発明に係る処理液塗布装置200とを備えている。
【0018】
記録ヘッドユニット101は、液滴を吐出する複数のノズルを用紙幅相当分の長さに配列したノズル列を有するライン型液体吐出ヘッドから構成され、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインク滴を記録ヘッド101y、101m、101c、101kを備えている。なお、シリアル型画像形成装置として記録ヘッドをキャリッジに搭載する構成とすることもできる。
【0019】
搬送ベルト102は、無端状ベルトであり、搬送ローラ121とテンションローラ122との間に掛け渡されて周回するように構成している。この搬送ベルト102に対する用紙100の保持は、例えば静電吸着、空気の吸引による吸着などを行う構成とすることやその他の公知の搬送手段を用いることができる。また、ローラ対による搬送手段を用いることもできる。
【0020】
給紙トレイ103に収容された用紙100はピックアップローラ131で1枚ずつ分離給紙されて搬送ローラ対132によって搬送路135aを介してレジストローラ対133に送られ、レジストローラ対133から所定のタイミングで塗布装置200を配設した搬送路135bに送られて、塗布装置200で処理液が塗布された後、搬送ローラ対134によって搬送ベルト102上に送り込まれて保持される。
【0021】
そして、搬送ベルト102の周回移動で搬送されてヘッドユニット101から各色の液滴が吐出されて画像が形成され、その後排紙トレイ104に排出される。
【0022】
処理液塗布装置200は、処理液201を収容した変形可能な可撓性部材、例えばPETフィルムを袋状に形成してなる処理液容器202と、処理液201を被記録媒体である用紙100に塗布する塗布部208と、処理液容器202から処理液201を塗布部208に供給し、塗布部208から処理液201を容器202に回収する可逆型ポンプ203を設けた供給回収経路205とを有し、供給回収経路205には、一部の内径を処理液201のメニスカスが保持できない大きさに形成された拡大経路204が設けられている。
【0023】
この処理液塗布装置200においては、処理液容器202内の処理液201はポンプ203によって吸上げられ、供給回収経路205を通じて塗布部208内の液室206へと供給され、塗布の準備がなされる。
【0024】
塗布部208は、用紙100を搬送する搬送ローラ210と、搬送ローラ210に対向して用紙100に処理液201を圧接して塗布する塗布ローラ209と、塗布ローラ209に処理液201を供給して塗布ローラ209と圧接し共同で塗布ローラ209上の液膜を薄くするスクイーズローラ207とを有している。
【0025】
ここで、搬送ローラ210に塗布ローラ209が接し、塗布ローラ209にスクイーズローラ207が接して配置されている。そして、スクイーズローラ207によって供給された処理液201がスクイーズローラ207と塗布ローラ209によって塗布ローラ209の表層に液膜層が形成されて、塗布ローラ209の回転によって搬送ローラ210側の被記録媒体(用紙100)に液膜層が移送され、塗布される。
【0026】
処理液201の塗布が終了した後所定の時間が経過すると、塗布部208の液室206の処理液201はポンプ203により供給回収経路205を通じて処理液容器202に回収する。
【0027】
この供給回収経路205に設けた拡大経路204は、回収時に液室206から入ってくる空気と処理液201を分離し、処理液201のみが処理液容器202に回収される。拡大経路204で分離された空気は、拡大経路204内に溜まっていくので、拡大経路204に所定量の空気が溜まると回収を止める。これにより、確実に空気が、処理液容器202に侵入することを防止できる。
【0028】
処理液201の回収が終了すると、拡大経路204に処理液201を満たした状態で待機する。これにより、処理液201と空気が接触している表面積が減り乾燥を防止することができる。
【0029】
ここで、処理液201は、用紙100の表面に塗布することで用紙100の表面を改質する改質材である。例えば、処理液201は、予め用紙100(前述したように材質としての紙に限定されない。)にムラなく塗布しておくことで、インクの水分を速やかに用紙100に浸透させると共に色成分を増粘させ、更には乾燥も早めることによって滲み(フェザリング、ブリーディング等)や裏抜けを防止し、生産性(単位時間当たりの画像出力枚数)をあげることを可能にする定着剤(セット剤)である。
【0030】
この処理液201は、組成的には、例えば界面活性剤(アニオン系、カチオン系、ノニオン系のいずれか、若しくはこれらを2種類以上混合させたもの)に対して、水分の浸透を促進するセルロース類(ヒドロキシプロピルセルロース等)とタルク微粉体の様な基剤を加えた溶液等を挙げることができる。更に微粒子を含有することもできる。
【0031】
次に、本発明に係る処理液塗布装置の塗布部の駆動系の詳細について図2及び図3を参照して説明する。なお、図2は同塗布部の斜視説明図、図3は同じく模式的側面説明図である。
塗布部208は、前述したように搬送ローラ210と、塗布ローラ209と、スクイーズローラ207とを備え、塗布ローラ209及びスクイーズローラ207は略密閉されたハウジング211内に収容され、ハウジング211の一部で液室206が形成され、スクイーズローラ207は液室206内の処理液201に浸漬されるように配置されている。
【0032】
そして、前述したように、搬送ローラ210に塗布ローラ209が接し、塗布ローラ209にスクイーズローラ207が接して配置され、液室206内に保持されている処理液201がスクイーズローラ207によって汲み上げられ、スクイーズローラ207の回転によってスクイーズローラ207と塗布ローラ209の圧接部に供給され、また、圧接により塗布ローラ209の表層に液膜層が形成されて、塗布ローラ209の回転によって搬送ローラ210側の被記録媒体(用紙100)に液膜層が移送され、塗布される。この塗布時の各ローラ207、209、210の回転方向は図3の矢印方向となる。
【0033】
次に、塗布ローラ209及びスクイーズローラ210に駆動力を伝達する機構(手段)について説明する。
図示しない駆動源の駆動力は駆動力伝達機構(手段)400を介して塗布ローラ209及びスクイーズローラ207に伝達される。この駆動力伝達機構400は、駆動源で回転されるモータギヤ或いは中間ギヤ404と、中間ギヤ404に噛み合う塗布ローラ209のローラ軸209に設けたギヤ403と、ギヤ403に噛み合うスクイーズローラ207のギヤ402とを有している。
【0034】
ここで、塗布ローラ209側のギヤ403とスクイーズローラ207側のギヤ402の歯数(ギヤ比)は、スクイーズローラ207の周速度が塗布ローラ209の周速度より遅くなるように設定されている。また、スクイーズローラ207の周速度が、塗布ローラ209とスクイーズローラ207の圧接部に必要以上に処理液201を供給しない周速度になるように設定されている。なお、スクイーズローラ207の周速度を調整することで、塗布ローラ209とスクイーズローラ207の圧接部を通過する処理液201の量を調整し、用紙100に塗布される塗布量の調整することができる。
【0035】
すなわち、駆動力伝達機構400による駆動力伝達は、スクイーズローラ207の周速度が、塗布ローラ209とスクイーズローラ207の圧接部に処理液201を供給できる範囲(速度)であって、かつ用紙100に対する処理液201の塗布量が所定の塗布量になる周速度になるよう設定されている。
【0036】
また、スクイーズローラ207側のギヤ402とスクイーズローラ207のローラ軸207aとの間には、一方向クラッチ401を介在させている。この一方向クラッチ401は、スクイーズローラ207を塗布時の回転方向に回転させる方向には駆動力を伝達し、逆方向には駆動力を伝達しない構成としている。
【0037】
このように構成したので、まず、図示しない駆動源によってギヤ404が回転することでギヤ403に駆動力が伝達されて塗布ローラ209が回転する。次に、ギヤ403に噛み合うギヤ402が回転する。このとき、一方向クラッチ401によってギヤ302からスクイーズローラ207には図2の矢印方向の回転のみ駆動力が伝達される。
【0038】
このとき、塗布ローラ209とスクイーズローラ207間の摩擦力で、スクイーズローラ207が所定の周速度以上で塗布ローラ209に連れ周りしているときは、ギヤ402の駆動力はスクイーズローラ207には伝達されない(遮断されている)。なお、ここでいう所定の周速度とは、上述したように、処理液201を塗布ローラ209に供給可能な範囲で、かつ所定の塗布量になるよう周速度である。
【0039】
これにより、塗布ローラ209とスクイーズローラ207の圧接部に処理液201がない状態又は処理液201が十分でない状態となって、塗布ローラ209とスクイーズローラ207との摩擦力が大きくなるときには、スクイーズローラ207が塗布ローラ209に連れ周りすることで、塗布ローラ209とスクイーズローラ207の周速度差による駆動負荷の増大を防止することができる。また、摩擦力が大きいときのローラ209、207間で発生するスリップによるローラ207、209の磨耗を防止できる。
【0040】
これに対し、スクイーズローラ207によって処理液201が塗布ローラ209とスクイーズローラ207の圧接部に供給されると、塗布ローラ209とスクイーズローラ207間の摩擦力が低下し、所定の摩擦力以下になる。これにより、スクイーズローラ207が塗布ローラ209に連れ回りする時の周速度が遅くなり、駆動力伝達機構400のギヤ402の駆動力が一方向クラッチ401を介してスクイーズローラ207に伝達されるので、スクイーズローラ207は所定の周速度で回転することになる。
【0041】
なお、所定の摩擦力、即ちスクイーズローラ207がスリップを起こす摩擦力は回転駆動に作用する回転軸受け等の負荷を用いてもよいが、例えばスクイーズローラ207のローラ軸207a上に駆動負荷手段405(例えばトルクリミッタ)のような強制負荷手段を用いるとさらに安定してスリップが発生し、スクイーズローラ207を所定の周速度で回転させることができる。
【0042】
つまり、駆動負荷手段を備えることで、スクイーズローラに駆動力が伝達される状態になる、塗布ローラとスクイーズローラとの摩擦力を任意に設定することができるようになり、塗布時におけるスクイーズローラの回転数を所定の回転数に制御することができる。
【0043】
また、ここでは塗布ローラ209とスクイーズローラ207間のスリップを利用してスクイーズローラ207を所定の周速度になるよう制御しているが、制御手段はこの限りでない。例えば、所定の周速度を塗布ローラ209と略同一として、周速度差(スクイーズローラ207が塗布ローラ209の周速度より遅い)は、ローラ間の部品精度で発生する周速差程度で設けるようにしてもよい。
【0044】
また、スクイーズローラ207は通常の負荷では塗布ローラ209に連れ周りし、液室206内の処理液201の蒸発により粘度が増加した場合にのみスリップが発生し、所定の周速度になるように、スクイーズローラ207の周速度を決めることもできる。この場合には、処理液201が増粘していると判断し、駆動力伝達手段400によってスクイーズローラ208に駆動力が伝達されるときのスクイーズローラ207の周速度を通常に比べ遅く設定することが好ましい。
【0045】
処理液201の粘度と塗布量には相関があり、粘度が高い方が塗布量が多くなる。また、スクイーズローラ207の周速度と塗布量には相関があり、周速度が遅い方が塗布量が少なくなる。スクイーズローラ207の周速度はスクイーズローラ207の表面粗さや塗布ローラ209がゴムローラであるときにはゴムの物性、硬度、表面粗さや処理液の物性、塗布速度等により決まるもので実験結果から求めることが好ましい。
【0046】
実験結果によると。通常5〜10mPa・sの粘度の処理液を20%蒸発させ20〜30mPa・sに増粘させた処理液201においては、スクイーズローラ207の周速を通常時と比較して1/1.5から1/5程度に減速すると良好な塗布量が得られた。すなわち、この場合はスクイーズローラ207の周速度を塗布ローラ209に対し1/1.5から1/5程度の周速度になるように駆動力伝達手段400(ギヤ)を設定する。
【0047】
上述したように、駆動源を一つにすることで、低コストで、安定した塗布量で塗布することができ、かつ少ないエネルギーで塗布することができる。
【0048】
この場合、塗布ローラの周速を一定にすることで、塗布条件を一定に保つことができ、塗布量の変化やムラを低減することができる。
【0049】
なお、上記実施形態では処理液塗布装置が画像形成前の用紙に対して処理液を塗布する構成で説明しているが、記録ヘッドユニットの下流側で画像形成が行われた用紙上に処理液を塗布する構成とすることもできる。
【0050】
また、本発明に係る画像形成装置は、例えば電子写真方式の画像形成装置にも適用することができる。例えば、紙等の媒体上のトナー等の樹脂を含有する微粒子を乱すことなく、かつ当該樹脂微粒子を付着した媒体に定着液を塗布後は素早く樹脂微粒子の媒体への定着が行われ、更に媒体に残油感が発生しない程度の微量塗布が可能な樹脂微粒子の定着液を用いた、定着方法及び定着装置、並びに画像形成方法及び画像形成装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0051】
100 被記録媒体(用紙)
101 記録ヘッドユニット
102 搬送ベルト
103 給紙トレイ
200 処理液塗布装置
201 処理液
207 スクイーズローラ
208 塗布部
209 搬送ローラ
400 駆動力伝達機構
401 一方向クラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、
前記被記録媒体に処理液を塗布する塗布装置と、を備え、
前記塗布装置は、
前記被記録媒体に処理液を塗布する塗布ローラと、
前記塗布ローラに当接して前記塗布ローラ上の液膜を薄くするスクイーズローラと、
前記塗布ローラ及びスクイーズローラに駆動力を伝達する駆動力伝達手段と、を有し、
前記駆動力伝達手段は、前記スクイーズローラの線速度が前記塗布ローラの線速度よりも遅くなるように前記駆動力を伝達するとともに、前記スクイーズローラには塗布時の回転方向にのみ前記駆動力を伝達する手段を備えている
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記スクイーズローラに所定の回転負荷を付与する駆動負荷手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
被記録媒体に処理液を塗布する処理液塗布装置であって、
前記被記録媒体に処理液を塗布する塗布ローラと、
前記塗布ローラに当接して前記塗布ローラ上の液膜を薄くするスクイーズローラと、
前記塗布ローラ及びスクイーズローラに駆動力を伝達する駆動力伝達手段と、を有し、
前記駆動力伝達手段は、前記スクイーズローラの線速度が前記塗布ローラの線速度よりも遅くなるように前記駆動力を伝達するとともに、前記スクイーズローラには塗布時の回転方向にのみ前記駆動力を伝達する手段を備えている
ことを特徴とする処理液塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−24989(P2012−24989A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164222(P2010−164222)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】