説明

画像形成装置及び加熱装置

【課題】加熱に要するエネルギーを抑えつつ、布体の熱収縮を抑えるとともに、熱収縮が発生したとしても矯正可能な画像形成装置及び加熱装置を提供する。
【解決手段】シート状の布体50上にインクジェットヘッド37によりインクを付着させ、このインクを加熱させて布体上に発色させる画像形成装置であって、布体50の両面側にそれぞれ配置した加熱部材(第1ローラ群23と第2ローラ群43に係る各ヒートローラ23a,23b,23c,43a,43b,43c)を、布体50の対応する各面(両面)にそれぞれ接触させることにより、インクを加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布体上に付着したインクを加熱して布体上に画像形成させる画像形成装置及び加熱装置に関し、例えば昇華性インク、熱定着性インク等を用いて布体上に画像を形成する画像形成装置、及び、布体を加熱してインクを昇華させたり、熱定着させる加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
布体上でのカラー画像形成には、高品質の画像形成が可能であり、布体の種類の制限が少なく、かつ、耐久性の高い昇華性インク、熱定着性インクなどが用いられることが少なくない。例えば昇華性インクを用いた画像形成装置では、インクジェットヘッドその他の機器により昇華性インクが布体上に付着される。インクが付着した布体は、加熱ドラムなどの加熱手段によって加熱され、これによりインクが昇華して布体上で発色する(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−265813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、一般に、インクを昇華させるには布体を高温にさらさなければならず、加熱のために布体の一面を加熱部材(例えばヒートローラやヒートドラム)に接触させる場合は、昇華とともに布体が熱収縮を起こしてしまって、プリント布の品質を低下させてしまうおそれがあった。
【0004】
これに対して、熱収縮の発生を緩和するために、布体を加熱部材から離間する構成として、布体周囲の環境を高温として加熱することが検討されている。これによれば、布体を高温雰囲気で加熱するため、加熱部材に接触させる従来の加熱方法に比して、熱収縮の発生を抑えることができる。しかし、布体周囲の温度を昇華可能な温度とするためには、加熱部材の温度を昇華温度よりもさらに高い温度にする必要があることから、加熱に要するエネルギーが大きくなり、かつ、加熱部材と布体との距離に応じたエネルギーロスが発生してしまう。さらに、布体と加熱部材との間には、距離に応じた熱分布が生じており、加熱部材近傍では、昇華温度よりも高い温度となっているため、布体が加熱部材付近を通過すると熱収縮を起こす可能性が高くなる。また、布体の、加熱部材のない面を装置外方に露出させている場合には、加熱部材からの熱が装置外に逃げてしまいやすいため、加熱部材をより高温にしなければならないため、より多くのエネルギーが必要であって、エネルギーロスも大きくなる。
【0005】
また、加熱部材としてヒートローラを用いる場合は、単一のヒートローラの曲面に沿うように、布体に張力がかけられるため、特定方向において熱収縮が発生しやすく、また、熱収縮により発生したしわを矯正することは困難であった。
【0006】
さらにまた、ヒートローラやヒートドラム内に、通電発熱する金属の線状部材を設けた場合は、発熱を続けることによってヒートローラやヒートドラムが形状変化し、例えば図4に示すヒートドラム100のように、ドラム100の表面のうちの中央部分102が外側部分103、104よりも太くなる、いわゆる太鼓形に湾曲変形してしまい、湾曲状態にあるヒートドラムの軸線と平行とされる基準の直線101よりも表面中央が盛り上がる現象が発生する。このように変形したヒートローラを用いて布体を加熱すると、布体の幅方向(布体の面内において、送り方向に直交する方向)における温度分布が不均一となるため、布体にしわが生じてプリント布が弓状に変形し、品質が低下してしまう現象が発生していた。
【0007】
そこで本発明は、加熱に要するエネルギーを抑えつつ、布体の熱収縮を抑えるとともに、熱収縮が発生したとしても矯正可能な画像形成装置及び加熱装置を提供することを目的とする。また、別の目的は、加熱部材の温度をインクが昇華し、あるいは定着する適正な温度とすることができ、これにより加熱部材に与えるエネルギーを小さくし、かつ、エネルギーロスを減少することにある。さらには、経時変化の少ない加熱部材を実現することによって、布体にしわが発生することを抑止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の画像形成装置においては、シート状の布体上にインクを付着させ、このインクを加熱して布体上において発色させる画像形成装置であって、布体の両面側にそれぞれ配置した加熱部材を、媒体の両面にそれぞれ接触させることにより、インクを加熱することを特徴としている。
【0009】
本発明の画像形成装置において、加熱部材は、布体を搬送しつつ加熱するヒートローラを含むことが好ましい。
【0010】
本発明の画像形成装置において、ヒートローラは、布体の一方の面に接する第1ヒートローラと、布体の他方の面に接する第2ヒートローラと、を含むとよい。
【0011】
本発明の画像形成装置において、加熱部材は、複数の第1ヒートローラからなる第1ローラ群と、複数の第2ヒートローラからなる第2ローラ群と、を備えることが好ましい。
【0012】
本発明の画像形成装置において、第1ローラ群を構成する複数の第1ヒートローラの回転軸は、第1鉛直線上に配置されており、かつ、第2ローラ群を構成する複数の第2ヒートローラの回転軸は、第2鉛直線上に配置されているとよい。
【0013】
本発明の画像形成装置において、第1ローラ群を構成する複数の第1ヒートローラと、第2ローラ群を構成する複数の第2ヒートローラを、それぞれ同期する状態で回転可能とすることができる。
【0014】
本発明の画像形成装置において、第1ローラ群を構成する複数の第1ヒートローラと、第2ローラ群を構成する複数の第2ヒートローラを、それぞれ同期する状態で回転可能とするとともに、これら第1ヒートローラと第2ヒートローラを相互に同径のもとし、それぞれ同一の駆動源にて駆動させるとよい。
【0015】
本発明の画像形成装置において、第1ヒートローラと、第2ヒートローラは、布体の両面に交互に接触することができる。
【0016】
本発明の画像形成装置において、第1ローラ群及び第2ローラ群は、互いに相対移動可能であり、この相対移動によって、第2ヒートローラを、鉛直線上に並置される複数の第1ヒートローラの間に配置した状態で、布体を搬送することができる。
【0017】
本発明の画像形成装置において、第1ローラ群と第2ローラ群を互いに相対移動することによって、第2ローラ群のすべての第2ヒートローラの回転軸を、第1鉛直線上に配置した状態で、布体を搬送することができる。
【0018】
本発明の画像形成装置において、第2ローラ群の第2ヒートローラと、第1ローラ群の第1ヒートローラと、は、交互に配置されていることが好ましい。
【0019】
本発明の画像形成装置において、加熱部材は、布体のうちインクが付着していない面に、最初に接触するとよい。
【0020】
本発明の画像形成装置において、ヒートローラの内部には、その回転軸の周りに巻回されて、通電により発熱する金属の線状部材が配され、線状部材の巻回密度は、回転軸方向中央よりも外側の方が密であることが好ましい。
【0021】
本発明の加熱装置は、シート状の布体上に付着したインクを加熱して布体上に画像を形成する加熱装置であって、布体の両面側にそれぞれ配置した加熱部材を、布体に接触させることにより、インクを加熱することを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、布体の両面側にそれぞれ配置した加熱部材を、布体の両面にそれぞれ接触させることにより、インクを加熱しているため、加熱部材は昇華あるいは定着温度で足りることから、布体の加熱に要するエネルギーを小さくすることができ、エネルギーのロスも低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る画像形成装置10について図1〜図3を参照しつつ詳しく説明する。
本実施形態に係る画像形成装置は、第1本体20及び第2本体30を備える。第1本体20及び第2本体30は基台(不図示)上に配置され、第1本体20は第2本体30に対して脱着可能に相対移動可能である。第1本体20は、加熱部材として3本の第1ヒートローラ23a、23b、23cからなる第1ローラ群23を備える。第2本体30は、加熱部材として3本の第2ヒートローラ43a、43b、43cからなる第2ローラ群43と、インクジェットヘッド37と、を備える。インクジェットヘッド37により昇華性インクが付着したシート状の布体50は、第1ヒートローラ23a、23b、23c及び第2ヒートローラ43a、43b、43cが、両面に接触することにより加熱され、これによってインクが昇華して布体50上へ画像が形成される。
【0024】
ここで、本発明に係る加熱装置は、画像形成装置10のうち、第1ローラ群23及び43による布体50の加熱に関わる部材から構成される。この加熱装置は、昇華性インクを用いた画像形成装置に限らず、加熱することにより布体上に画像を形成、又は、画像を定着することのできる装置、例えば、電子写真装置において加熱によってトナーを定着する定着器や、熱可塑性又は熱硬化性インクを用いた印刷装置、に適用することができる。
以下に、画像形成装置10の各部材の詳細な構成について説明する。
【0025】
第1本体20は、加熱部材としての第1ローラ群23、第1ローラ群23を回転駆動するための駆動機構、及び、プリントした布体50を所定長さで切るカット機構27を備える。
第1ローラ群23は、鉛直線23Y(第1鉛直線)上に回転軸がそれぞれ配置された第1ヒートローラ23a、23b、23cを備える。第1ヒートローラ23a、23b、23cは、この順序で、布体50の搬送方向上流側から配置される。これら第1ヒートローラ23a、23b、23cは同一形状で同径のローラであって、鉛直方向において、第1本体20と第2本体30を合体したときに第2ヒートローラ43a、43b、43cと交互に配置できるような間隔をあけて配置されている。第1ヒートローラ23a、23b、23cの内部には、その回転軸の周りに巻回されて、電源部(不図示)からの通電により発熱する金属の線状部材(不図示)が配されている。この線状部材の巻回密度は、第1ヒートローラ23a、23b、23cそれぞれの回転軸方向中央よりも外側の方が密である。巻回密度をこのようにすると、使用を繰り返しても、第1ヒートローラ23a、23b、23cが熱収縮して、第1ヒートローラ23a、23b、23cの回転軸方向の中央部分が外側部分よりも太くなるように湾曲変形してしまうことを防止することができ、これにより高品質の印プリント物を安定して提供することができる。
【0026】
第1ヒートローラ23a、23b、23cは、その表面への昇華性インクの付着を防止する観点からは、摩擦を軽減するような処理を施すことが好ましい。このような処理としては、例えば、SUS(ステンレス鋼)への電解メッキ、テフロン(登録商標)コーティング、シリコーンコーティング、硬質クロムメッキがある。
【0027】
第1ローラ群23を回転駆動するための駆動機構は、スプロケット25a、25b、25c、第1駆動ベルト26a、駆動ローラ29(巻き取りローラ)、第2駆動ベルト26bを備える。
【0028】
第1駆動ベルト26aは、第1ヒートローラ23a、23b、23cそれぞれの両端部に設けたスプロケット23a1、23b1、23c1、及びスプロケット25a、25b、25cに掛け回されている(図3)。スプロケット25a、25b、25cのうちのスプロケット25cと、駆動ローラ29には、第2駆動ベルト26bが掛け回されている。駆動ローラ29は、駆動部(不図示)(例えばステッピングモータ、サーボ機構)の動作により、その回転軸を中心に回転可能であり、この回転は第2駆動ベルト26bを介してスプロケット25cに伝達される。これによりスプロケット25cが回転すると、第1駆動ベルト26aを介して第1ヒートローラ23a、23b、23cがそれぞれの回転軸の周りを回転する。ここで、各第1ヒートローラ23a,23b,23cのそれぞれは、同一形状で同径からなり、さらに同一の駆動源からなる駆動ベルト26aの駆動により、同期する状態で、それぞれ回転することが可能となる。第1ヒートローラ23a、23b、23cがこのように回転することにより、プリントする布体50を一定の送り量で各ローラ23a,23b,23cに接触加熱しつつ駆動ローラ29側へ搬送することができる。なお、図3においては、第1ローラ群23、43以外の要素を一部省略している。
【0029】
駆動ローラ29は、インクジェットヘッド37によりプリントされ、第1ローラ群23及び43により加熱された布体50を巻き取る。駆動ローラ29によって巻き取られる布体50は、駆動ローラ29の手前に配置されたカット機構27により所定の長さにカットされる。カット機構27は、ばね27bの弾性により布体50の張力を調整するテンションローラ27aと、テンションローラ27aに保持された布体50をカットするブレード27cと、を備える。
【0030】
第1本体20には、エアシリンダ60の一端が固定されている。このエアシリンダ60の他端は第2本体30に固定されており、エアシリンダ60を動作させることにより、第1本体20は第2本体30に対して脱着可能に相対移動する。すなわち、第1ローラ群23と43とが1本の鉛直線上に交互に配置されるように、第1本体20と第2本体30を合体することができ、また、第1ローラ群23と43を離間するように合体を解除することができる。なお、本実施形態では、第2本体30が基台に固定され、第1本体20が第2本体30側へ移動するが、これに代えて、第2本体30が第1本体20側に移動することとしてもよい。
【0031】
第2本体30は、加熱部材としての43、及び、布体50にプリントするためのインクジェットヘッド37のほか、布体供給ローラ31、塗布装置35、テンションローラ45a、及び、噴霧器70を備える。43は、鉛直線43Y(第2鉛直線)上に回転軸がそれぞれ配置された第2ヒートローラ43a、43b、43cを備える。これら第2ヒートローラ43a、43b、43cは同一形状で同径のローラであって、鉛直方向において、第1本体20と第2本体30を合体したときに第1ヒートローラ23a、23b、23cと交互に配置できるような間隔をあけて配置されている。布体供給ローラ31から供給された布体50は、テンションローラ45aを経て、第1ローラ群23、43、及びテンションローラ45aが収容される加熱空間(加熱室)65内で加熱された後に、駆動ローラ29まで搬送される。
【0032】
第2ヒートローラ43a、43b、43cの内部には、第1ヒートローラ23a、23b、23cと同様に、回転軸の周りに巻回されて、電源部(不図示)からの通電により発熱する金属の線状部材(不図示)が配されており、その巻回密度は、第2ヒートローラ43a、43b、43cそれぞれの回転軸方向中央よりも外側の方が密である。
【0033】
第2ヒートローラ43a、43b、43cは、この順序で、布体50の搬送方向上流側から配置される。さらに、第2ヒートローラ43aは、第1ヒートローラ23aよりも搬送方向上流側に配置されるとともに、第2ヒートローラ43aは、布体50の非プリント面に接触する。したがって、布体50は、昇華性インクが付着していない面が、最初にヒートローラ43aに接触する。このため、最初にプリント面が接触加熱される場合と比べて、ヒートローラに昇華性インクが転写されてしまう可能性を低減することができ、これにより、付着した昇華性インクが減ずることなく布体50への発色に用いられることとなるから、高画質の画像を形成することができる。
【0034】
第2ヒートローラ43a、43b、43cそれぞれの両端部に設けられたスプロケット43a1、43b1、43c1(図3)には、従動ベルト46bが巻き回されており、第2ヒートローラ43a、43b、43cのいずれかが回転軸を中心に回転すると、他の2つのローラも連動してこれに同期して回転する。すなわち、第2ヒートローラ43a,43b,43c,のそれぞれも、相互に同一形状で同径からなり、かつ第1ヒートローラ23a,23b,23cとも同一形状で同径からなるため、プリントする布体50は、第1,第2の両ヒートローラ間において一定の送り量で接触加熱され、駆動ローラ29側へ搬送可能となる。また本実施形態では、第2ヒートローラ43側において、能動的に回転する駆動機構を設けておらず、第2本体30に対する第1本体20の合体(図2に示す状態)により、不図示の歯車伝達機構によって第1駆動ベルト26aから従動ベルト46bに伝達される。これにより、第1ヒートローラ群23と第2ヒートローラ群43のそれぞれを、同一の駆動源(駆動ローラ29)で同速、同送り量にて同期回転させるようにしているが、第1ローラ群23と第2ヒートローラ群43のそれぞれが能動的に同期回転する機構を採用することもできる。
【0035】
塗布装置35は、布体50に対して例えば滲み防止材を塗布するものであって、43よりも布体供給ローラ31側に配置される。塗布装置35と43との間にはインクジェットヘッド37が配置される。このインクジェットヘッド37は、圧電素子の駆動によって昇華性インクを布体50に吐出するインクジェットヘッドである。圧電素子は駆動部(不図示)からの信号によって変形する。この駆動信号は、布体50上に形成しようとする画像に対応するものであって、これにより、布体50の搬送タイミングに合わせて、所望の画像の各画素に対応した位置に昇華性インクが付着する。なお、昇華性インクの布体50への付着には、圧電素子以外の方式のインクジェットヘッドを用いることもでき、さらに、インクジェット以外の手法(例えば印刷)によって行うこともできる。
【0036】
さらに、第2上段ローラ43bと第2下段ローラ43cとの間を搬送される布体50に対する位置には噴霧器70が配置されている。この噴霧器70は、噴霧部71、連結チューブ72、及び、タンク部73を備える。タンク部73には、例えば、撥水剤、防炎剤、表面コート剤、ラミネート剤、吸臭剤、芳香剤、光触媒コート剤の液剤が収容されており、この液剤は、噴霧器70を介して噴霧部71に供給され、第1ローラ群23及び第2ローラ群43上を搬送される布体50上に噴霧される。噴霧器70は、布体50上の昇華性インクの発色を阻害しないという観点からは、布体50の搬送方向下流側に配置することが好ましい。また、噴霧器70と同様の噴霧器を第1本体20内にも設けると、複数の液剤を噴霧することができる。
【0037】
布体供給ローラ31から供給される布体50は、ローラ33を経て、テンションローラ45aに巻き回される。布体50は、テンションローラ45aに連結したばね45bの弾性により、張力が調整される。テンションローラ45aと第2ヒートローラ43aには、ベルト46aが巻き回されており、いずれかが回転軸の周りを回転すると、他方も連動して回転する。
【0038】
第1ローラ群23及び第2ローラ群43のいずれかのローラには、該ローラに接触する状態で温度センサ(不図示)が設けられている。該温度センサは、第1ローラ群23及び第2ローラ群43に通電する電源部の動作を制御する制御部に接続されている。この制御部は、加熱空間65の温度が昇華温度よりも高くなりすぎないように(例えば昇華温度よりも5°C以上高くならないように)、第1ローラ群23及び第2ローラ群43への通電量を制御する。また、第1ローラ群23及び第2ローラ群43から放たれる熱により加熱空間65が暖められていることから、布体50は、加熱空間に入ってから、第1ローラ群23、第2ローラ群43によって接触加熱される前に、加熱されて乾燥するため、従来のようにプリヒータを設ける必要がない。さらに、加熱空間65は、例えばグラスウールのような保温材で囲むことが好ましい。これにより、第1ローラ群23及び第2ローラ群43から放たれる熱が加熱空間65から外部へ逃げにくくなるため、第1ローラ群23及び第2ローラ群43へ供給する通電量を抑えることができる。
【0039】
続いて、画像形成装置10の動作について説明する。
まず、画像形成装置10への布体50のセットの際には、第1本体20と第2本体30は互いに離間している(図1)。したがって、第1ローラ群23と第2ローラ群43とは離間しており、布体供給ローラ31から供給された布体50は、ローラ33、テンションローラ45aに巻き回された後に、第1ローラ群23と第2ローラ群43との間の空間を通って、第1下段ローラ23cに巻き回される。さらに、布体50は、テンションローラ27aを経て、先端が駆動ローラ29に固定される。
【0040】
この状態から、エアシリンダ60を動作させて、第1本体20を第2本体30側へ移動させて、第1本体20と第2本体30とを合体する。これにより、鉛直線23Yと鉛直線43Yとが一致し、この鉛直線上において、第2ヒートローラ43aと第2上段ローラ43bの間に第1上段ローラ23aが、第2上段ローラ43bと第2下段ローラ43cの間に第1中段ローラ23bが、第2下段ローラ43cの下方に第1下段ローラ23cが、それぞれ配置される(図2、図3)。この配置の後に、テンションローラ45a及びテンションローラ27aで張力を調整しつつ、第1ヒートローラ23a、23b、23cを駆動し、駆動ローラ29で布体50の先端を巻き取ることにより、布体50に対して張力を与える。このとき、布体50は、搬送方向上流から順に、第2ヒートローラ43a、第1上段ローラ23a、第2上段ローラ43b、第1中段ローラ23b、第2下段ローラ43c、第1下段ローラ23cに接触している。布体50は、第2ヒートローラ43a、第2上段ローラ43b、第2下段ローラ43cに対しては非プリント面が接触し、第1ヒートローラ23a、23b、23cに対してはプリント面が接触している。すなわち、第1ローラ群23と第2ローラ群43は、布体50の両面に交互に接触している。なお、第1ヒートローラ23a、23b、23c、及び、第2ヒートローラ43a、第2上段ローラ43b、第2下段ローラ43cへの通電は、第1本体20と第2本体30との合体前に開始してもよいし、その後であってもよい。
【0041】
温度センサによりローラの加熱温度が所定温度以上に達したことを検出したところで、布体50の搬送を開始する。布体50は、塗布装置35においてバインダを塗布された後に、インクジェットヘッド37において一方の面に昇華性インクが付着される。プリントされた布体50は、加熱空間65に入ったところで雰囲気加熱(環境加熱)を受けて乾燥する。
【0042】
その後、布体50は、第2ヒートローラ43a、第1上段ローラ23a、第2上段ローラ43b、第1中段ローラ23b、第2下段ローラ43c、第1下段ローラ23cの順に接触して昇華温度に加熱される。布体50は、第1ローラ群23の回転駆動、及び、これにともなう第2ローラ群43の従動回転に追随して、第1ヒートローラ23a、23b、23c、第2ヒートローラ43a、第2上段ローラ43b、第2下段ローラ43cに密着しつつ搬送される。これにより、布体50は適度な接触圧で、第1ヒートローラ23a、23b、23c、第2ヒートローラ43a、第2上段ローラ43b、第2下段ローラ43cに接触することができることから、インクジェットヘッド37により付着したインクは、第1ローラ群23及び第2ローラ群43の各ヒートローラへの転写を抑えられつつ、昇華して布体50上に発色画像を形成する。したがって、布体50上に汚れやにじみが発生することが少なくなり、高い画像品質を実現できる。また、接触加熱によってインクを昇華させているため、温度は昇華温度であれば足りることから、加熱に要するエネルギーを小さくすることができ、エネルギーロスも少ない。さらに、布体50を昇華温度以上の高温にさらさないため、熱収縮が生じにくく、しわのない完成品を得ることができる。各ヒートローラを高温としないですむため、ヒートローラの形状を膨張により変化させることを少なくすることができる。
【0043】
さらにまた、第1ローラ群23及び第2ローラ群43により、布体50を順次逆方向に湾曲させつつ接触乾燥させ、かつ、両面を加熱するため、しわが発生したとしても容易に矯正することができる。
【0044】
発色した布体50には、噴霧器70により液剤が噴霧される。噴霧された液剤は、加熱空間65の温度によって、媒体50上で硬化、又は、主剤が定着する。画像が形成され、液剤が塗布された媒体50は、駆動ローラ29によって巻き取られるとともに、カット機構27において所定長さにカットされる。
【0045】
以上のように構成されたことから、上記実施形態によれば、次の効果(1)〜(5)を奏する。
(1)布体50を各ヒートローラに接触させて加熱するため、ヒートローラの温度は昇華性インクが昇華する温度(昇華温度)であればよい。このため、布体50を加熱するのに要するエネルギーを小さくすることができ、エネルギーのロスも少なくてすむ。さらに、布体50を昇華温度を超える高温にさらさなくてすむため、熱収縮が生じにくく、画質向上、しわのない完成品を提供することができる。
【0046】
(2)布体50が、各ヒートローラの同期回転に追随するように搬送されるため、布体50上のインクがヒートローラに転写されて媒体50の別の箇所を汚したりするなど、布体50とヒートローラ間で汚れが転写されることが少なくなり、高い画像品質を実現することができる。
【0047】
(3)第1ローラ群23、第2ローラ群43を構成する複数のヒートローラの間を布体50が順次通過することにより、布体50が両面から加熱されるため、しわができにくく、さらに、しわがあっても容易に矯正しやすい。しかもこれらローラ群を構成する各ローラがそれぞれ同一の駆動源にて同期回転するため、布体50の送り量が一定となり高品質のプリントが可能となる。
【0048】
(4)布体50の周囲に第1ローラ群23、第2ローラ群43の各ヒートローラが配置され、かつ、これらが閉じた加熱空間65内に収容されるため、布体50の一方の面側が装置外部に露出する従来のものよりも、ヒートローラの加熱温度を低くすることができ、エネルギー消費が少なくてすむ。
【0049】
(5)ヒートローラの温度を従来よりも低くすることができるため、太鼓上に湾曲化する膨張変化を少なくすることができ、これにより、布体50の幅方向の品質を均一にすることができる
【0050】
以下に変形例について説明する。
第1ローラ群23、第2ローラ群43を構成するヒートローラは、布体50の両面を接触加熱することができれば、上述の実施形態のような数、形状でなくてもよい。例えば、第1ヒートローラ及び第2ヒートローラは一つずつでもよいし、同数でなくてもよい。また、ローラ以外の形状(例えば平板状)のものを含んでもよい。さらに、鉛直線23Y、鉛直線43Yから外れた位置にあってもよい。
【0051】
なお、上記実施形態において、第1ローラ群23、第2ローラ群43を構成する各ヒートローラにおいて、その加熱装置としてローラ内部の回転軸の周り巻回去れ、通電により発熱する金属の線状部材を採用するようにしている。しかし本発明はこうした加熱機構に限定されるものではなく、例えばローラ内部に加熱し、温度制御されたオイルを循環させる方式や、輻射熱方式によりローラ全体を内部から加熱するセラミックヒータなど、様々な加熱機構を採用することも可能である。また第1ローラ群23、第2ローラ群43を構成するヒートローラの配置についても、布体50の両面を接触加熱することができれば、上述の実施形態とは異なるものとすることができる。例えば、被加熱面は、プリント面と非プリント面の両面が加熱されれば、これらを交互に加熱しなくてもよい。また、第1本体20と第2本体30とを合体したときに、鉛直線23Yと鉛直線43Yは一致しなくてもよい。
【0052】
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的または本発明の思想の範囲内において改良または変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の合体前の内部の状態を示す側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る画像形成装置の合体後の内部の状態を示す側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る画像形成装置の合体後の内部の状態を示す正面図である。
【図4】従来の画像形成装置のヒートローラの形状を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
10 画像形成装置
23 第1ローラ群
23a 第1ヒートローラ
23b 第1ヒートローラ
23c 第1ヒートローラ
23Y 鉛直線(第1鉛直線)
37 インクジェットヘッド
43 第2ローラ群
43a 第2ヒートローラ
43b 第2ヒートローラ
43c 第2ヒートローラ
43Y 鉛直線(第2鉛直線)
50 布体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の布体上にインクを付着させ、このインクを加熱して前記布体上において発色させる画像形成装置であって、前記布体の両面側にそれぞれ配置した加熱部材を、前記布体の両面にそれぞれ接触させることにより、前記インクを加熱することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記加熱部材は、前記布体を搬送しつつ加熱するヒートローラを含む請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ヒートローラは、前記布体の一方の面に接する第1ヒートローラと、前記布体の他方の面に接する第2ヒートローラと、を含む請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記加熱部材は、複数の前記第1ヒートローラからなる第1ローラ群と、複数の前記第2ヒートローラからなる第2ローラ群と、を備える請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1ローラ群を構成する複数の第1ヒートローラの回転軸は、第1鉛直線上に配置されており、かつ、前記第2ローラ群を構成する複数の第2ヒートローラの回転軸は、第2鉛直線上に配置されている請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1ローラ群を構成する複数の第1ヒートローラ、並びに前記第2ヒートローラ群を構成する複数の第2ヒートローラは、それぞれ同期する状態で回転可能としてなる請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第1ローラ群を構成する複数の第1ヒートローラ、並びに前記第2ヒートローラ群を構成する複数の第2ヒートローラは、それぞれ同期する状態で回転可能とされ、かつ相互に同径のものとされ、それぞれ同一の駆動源にて駆動可能とされる請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第1ヒートローラと、前記第2ヒートローラは、前記布体の両面に交互に接触する請求項3から請求項7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記第1ローラ群及び前記第2ローラ群は、互いに相対移動可能であり、この相対移動によって、前記第2ヒートローラを、前記鉛直線上に並置される複数の前記第1ヒートローラの間に配置した状態で、前記布体を搬送する請求項4から請求項8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記第1ローラ群と前記第2ローラ群を互いに相対移動することによって、前記第2ローラ群のすべての第2ヒートローラの回転軸を、前記第1鉛直線上に配置した状態で、前記布体を搬送する請求項4から請求項9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記第2ローラ群の第2ヒートローラと、前記第1ローラ群の第1ヒートローラと、は、交互に配置されている請求項4から請求項10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記加熱部材は、前記布体のうち前記インクが付着していない面に、最初に接触する請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記ヒートローラの内部には、その回転軸の周りに巻回されて、通電により発熱する金属の線状部材が配され、前記線状部材の巻回密度は、前記回転軸方向中央よりも外側の方が密である請求項2から請求項12のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項14】
シート状の布体上に付着したインクを加熱して前記布体上に画像を形成する加熱装置であって、
前記布体の両面側にそれぞれ配置した加熱部材を、前記布体に接触させることにより、前記インクを加熱することを特徴とする加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−214805(P2008−214805A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−54344(P2007−54344)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(597131118)株式会社ジャパンネットワークサービス (4)
【Fターム(参考)】