説明

画像形成装置及び帯電方法

【課題】不安定な放電を抑制しつつ帯電の均一性を向上することができる画像形成装置及び帯電方法を提供する。
【解決手段】画像形成装置10は、帯電可能な膜が表面に形成され、像を保持する感光体ドラム62と、この感光体ドラム62の膜表面を帯電させる帯電器66と、を有し、帯電器66は、感光体ドラム62に直流電圧を印加するJIS B 0601に規定される表面粗さRaの異なる複数の帯電部を有し、感光体ドラム62の膜厚が薄くなるのに従って、表面粗さRaの小さい帯電部で印加するように設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及び帯電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、芯金と、この芯金の外周面上に形成された導電性弾性体層と、この導電性弾性体層上に形成された表面層とを有する帯電ローラにおいて、この表面層の平均膜厚が150 nm以上600 nm以下であり、かつこの表面層の最小膜厚及び最大膜厚がこの表面層の平均膜厚に対してそれぞれ-50 nm以上及び+100 nm以下であり、更にこの表面層の外周面粗さが、走査型白色干渉計により測定される面積10点平均粗さで1.5 μm以上8 μm以下である帯電ローラ及びその製造方法を開示する。
【0003】
特許文献2は、芯金と、この芯金の外周面上に形成された導電性弾性体層と、この導電性弾性体層上に形成された表面層とを有する帯電ローラにおいて、この表面層の平均膜厚が8 nm以上100 nm以下であり、かつこの表面層の最小膜厚及び最大膜厚がこの表面層の平均膜厚に対してそれぞれ70 %以上及び130 %以下であり、更にこの表面層の外周面粗さが、走査型白色干渉計により測定される面積10点平均粗さで1.5 μm以上8 μm以下である帯電ローラ及びその製造方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−225995号公報
【特許文献2】特開2008−299118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、不安定な放電を抑制しつつ帯電の均一性を向上することができる帯電装置、画像形成装置、及び帯電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る本発明は、帯電可能な膜が表面に形成され、像を保持する像保持体と、前記像保持体の膜表面を帯電させる帯電手段と、を有し、前記帯電手段は、前記像保持体との間に直流電圧を印加するJIS B 0601に規定される表面粗さRaの異なる複数の帯電部を有し、前記像保持体の膜厚が薄くなるのに従って、表面粗さRaの小さい帯電部で印加するように設定される画像形成装置である。
【0007】
請求項2に係る本発明は、前記帯電手段は、膜状に形成されている請求項1記載の帯電装置である。
【0008】
請求項3に係る本発明は、前記帯電手段は、断面円筒形状に形成されている請求項1記載の帯電装置である。
【0009】
請求項4に係る本発明は、帯電可能な膜が表面に形成され、像を保持する像保持体の膜厚を測定し、前記像保持体の膜厚が薄くなるのに従って、JIS B 0601に規定される表面粗さRaの小さい帯電部で前記像保持体との間に直流電圧を印加するように設定して前記像保持体の膜表面を帯電させる帯電方法である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る本発明によれば、不安定な放電を抑制しつつ帯電の均一性を向上することができる。
【0011】
請求項2に係る本発明によれば、請求項1に係る本発明の効果に加え、本構成を有さない場合と比較して、構成を簡略化することができる。
【0012】
請求項3に係る本発明によれば、請求項1に係る本発明の効果に加え、本構成を有さない場合と比較して、像保持体を安定して帯電させることができる。
【0013】
請求項4に係る本発明によれば、不安定な放電を抑制しつつ帯電の均一性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の側面からの断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る像形成ユニット及びその周辺構造の概略図である。
【図3】本発明の実施形態に係る感光体ドラムの断面の模式図の一例である。
【図4】本発明の実施形態に係る帯電器及びその周辺構造の概略図である。
【図5】帯電部の表面粗さ、感光体ドラムの膜厚、及び画像欠陥の関係についての測定結果である。
【図6】帯電部の表面粗さ、感光体ドラムの膜厚、及びかぶりの関係についての測定結果である。
【図7】第二実施形態にかかる帯電器及びその周辺構造の概略図である。
【図8】第三実施形態にかかる帯電器及びその周辺構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第一実施形態]
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態としての画像形成装置10の側面からの断面図を示す。
【0016】
画像形成装置10は画像形成装置本体12を有し、この画像形成装置本体12の上部は、画像の形成された記録媒体が排出される排出部14として用いられる。
【0017】
画像形成装置本体12には、装着用開閉部(非図示)と給紙用開閉部24とがそれぞれ、この画像形成装置本体12に対して開閉自在に設けられている。
【0018】
装着用開閉部は、像形成剤収容容器として用いられる収容容器30Y、30M、30C、30Kを画像形成装置本体12内に装着する際、あるいは、収容容器30Y、30M、30C、30Kを画像形成装置本体12内から取り外す際に開かれる。また、装着用開閉部は、画像形成を行う際に閉じられる。
【0019】
給紙用開閉部24は、画像形成装置本体12の前側から記録媒体を供給する際に開かれる。
【0020】
収容容器30Y、30M、30C、30Kにはそれぞれ、像形成剤として用いられるイエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナーが収容されている。
収容容器30Y、30M、30Cはそれぞれ、形状及び大きさが同様に構成されており、略同一の容積のトナーを収容するようになっている。
収容容器30Kは、収容容器30Y、30M、30Cよりも縦長に構成され、これら収容容器30Y、30M、30Cよりも体積が大きく、これら収容容器30Y、30M、30Cよりも収容するトナーの容積が大きくなるようになっている。
【0021】
収容容器30Y、30M、30Cと収容容器30Kとは、収容できるトナーの容積が異なるものの、有する部材及び機能は同一に構成されている。
【0022】
画像形成装置本体12内には、像形成部40と、この像形成部40に記録媒体を供給する記録媒体供給装置42と、記録媒体の搬送に用いられる搬送路44が設けられている。
像形成部40、記録媒体供給装置42、及び搬送路44によって、記録媒体に画像を形成する画像形成手段が構成される。
【0023】
像形成部40は、例えば4個の像形成ユニット52Y、52M、52C、52Kと、潜像形成装置54と、転写装置56とにより構成される。像形成ユニット52Y、52M、52C、52KはそれぞれY、M、C、Kのトナーを用いて現像剤像を形成する。
像形成ユニット52Y、52M、52C、52Kはそれぞれ、対応する色が異なるものの同様の構成となっているため、以下、各色に対応するY、M、C、Kを省略して「像形成ユニット52」のように総称する場合がある。各色に対応する他の構成(収容容器30、感光体ドラム62等)についても同様とする。
【0024】
像形成ユニット52はそれぞれ、像保持体として用いられる感光体ドラム62と、この感光体ドラム62の表面をクリーニングするクリーニング装置64と、感光体ドラム62を帯電する帯電器66と、潜像形成装置54によって感光体ドラム62の表面に形成された静電潜像を、トナーにより現像してトナー像を形成する現像装置68と、を有する。
【0025】
現像装置68にはそれぞれ、収容容器30から対応する色のトナーが供給される。
【0026】
転写装置56は、転写媒体として用いられるベルト状の中間転写体72と、1次転写装置として用いられる1次転写ロール74Y、74M、74C、74Kと、2次転写装置として用いられる2次転写ロール76と、中間転写体72の表面をクリーニングするクリーニング装置78と、を有する。
【0027】
中間転写体72は、感光体ドラム62それぞれに形成されたトナー像が重ねられるようにして転写される。中間転写体72は、支持部材として用いられる例えば4つの支持ロール82a、82b、82c、82dによって回転自在に支持されている。
【0028】
1次転写ロール74Y、74M、74C、74Kはそれぞれ、感光体ドラム62Y、62M、62C、62Kに形成された各色に対応するトナー像を、中間転写体72に転写する。
【0029】
2次転写ロール76は、中間転写体72に転写された各色のトナー像を、記録媒体に転写する。
【0030】
記録媒体供給装置42は、例えば記録媒体を積層した状態で収納する記録媒体収納容器92と、この記録媒体収納容器92に収納された最上位の記録媒体を抽出する抽出ロール94と、この抽出ロール94で抽出された記録媒体を像形成部40に向けて搬送する搬送ロール96と、この搬送ロール96に接触し、搬送ロール96との間で記録媒体を分離する分離ロール98と、を有する。
【0031】
記録媒体収納容器92は、例えば画像形成装置本体12の前側(図1における左側)に引き出せるようになっており、この画像形成装置本体12から引き出された状態で記録媒体が補充される。
【0032】
搬送路44は、主搬送路100と、反転搬送路102と、補助搬送路104とにより構成される。
【0033】
主搬送路100は、記録媒体供給装置42から供給された記録媒体を排出部14に向けて搬送する搬送路である。主搬送路100には、記録媒体の搬送方向上流側から順に、レジストロール112と、2次転写ロール76と、定着装置114と、排出ロール116とが配置されている。
【0034】
レジストロール112は、停止した状態から所定のタイミングで回転を開始し、中間転写体72にトナー像が転写されるタイミングに合致するように、記録媒体を中間転写体72と2次転写ロール76との接触部分(ニップ部分)に供給する。
【0035】
定着装置114は、転写装置56によりトナー像が転写された記録媒体にこのトナー像を定着させる。
【0036】
排出ロール116は、定着装置114によってトナー像が定着された記録媒体を排出部14に排出する。また、排出ロール116は、記録媒体の両面に画像を形成する場合、排出部14に記録媒体を排出するときとは反対方向に回転し、一方の面に画像が形成された記録媒体を、後端側から反転搬送路102へ搬送する。
【0037】
反転搬送路102は、一方の面に画像が形成された記録媒体を反転させるとともに、再度、レジストロール112の上流側に向けて搬送する搬送路である。反転搬送路102には、例えば2つの反転搬送ロール118a、118bが配置されている。
【0038】
補助搬送路104は、給紙用開閉部24が画像形成装置本体12に対して開かれた状態において、この画像形成装置本体12の前側から記録媒体を供給する際に用いられる。補助搬送路104には、レジストロール112に向けて記録媒体を搬送する補助搬送ロール120と、この補助搬送ロール120に接触し記録媒体を分離する分離ロール122とが配置されている。
【0039】
画像形成装置本体12内には、感光体ドラム62の膜厚(膜減り)を測定する膜厚測定部130が設けられている。
膜厚測定部130は、感光体ドラム62の膜厚の測定に関して、例えば、印刷した記録媒体の枚数(以下、「印刷枚数」と称する)の測定、感光体ドラム62の回転数の測定、入力される画像のピクセルのカウント(ピクセルカウント)、現像装置66のトナー運搬部材(オーガ)の回転数等の測定、もしくはトナーの使用量の測定、又はこれらを組み合わせたもの等の測定を行うようにしてもよい。
【0040】
また、画像形成装置本体12内には、帯電器66を駆動(移動)し、この帯電器66と感光体ドラム62との接する部分を制御する移動制御部140が設けられている。
移動制御部140には、膜厚測定部130が測定した測定結果が通知されるようになっており、この移動制御部140は、膜厚測定部130の測定結果に基づいて、帯電器66を移動させるようになっている。
【0041】
次に、像形成ユニット52の詳細について説明する。
図2は、像形成ユニット52及びその周辺構造の概略図を示す。
【0042】
感光体ドラム62の周囲には、クリーニング装置64、帯電器66、現像装置68、及び、中間転写体72を介して1次転写ロール74、が配置されている。
【0043】
クリーニング装置64は、感光体ドラム62表面に残留したトナーや紙粉等を除去するクリーニングブレード200と、このクリーニングブレード200により除去したトナー等を回収する回収容器202と、この回収容器202に回収されたトナー等の漏洩を防止する漏洩防止部材204と、により構成される。
【0044】
帯電器66は、感光体ドラム62の回転方向(以下、単に「回転方向」と称する場合がある)に沿うようにして設けられている。
なお、回転方向に対して現像装置68に近い側を、回転方向下流側とする。
【0045】
本実施形態において、帯電器66は、クリーニング装置64よりも回転方向下流側に設けられている。帯電器66は、膜状(フィルム状)に形成された帯電膜(帯電フィルム)であり、感光体ドラム62に接触してこの感光体ドラム62を帯電させるようになっている。
帯電器66は、感光体ドラム62と放電を生じる程度に近接するようにしてもよい。
【0046】
帯電器66には、この帯電器66に電圧を印加する印加部210が設けられている。
本実施形態においては、印加部210が帯電器66に直流の電圧を印加する方式(DC帯電方式)となっている。
なお、印加部210が、直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加する方式(AC+DC帯電方式)としてもよい。
【0047】
次に、感光体ドラム62の詳細について説明する。
図3は、感光体ドラム62の断面の模式図の一例を示す。
【0048】
感光体ドラム62は、導電性基材170上に下引層172が設けられ、この下引層172上に、電荷発生層174、電荷輸送層176、及び保護層178これらにより形成される感光層が設けられた構成となっている。
【0049】
導電性基材170の材質としては、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、ステンレス、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等の金属又は合金を用いて構成される金属板、金属ドラム、及び金属ベルト、又は、導電性ポリマー、酸化インジウム等の導電性化合物やアルミニウム、パラジウム、金等の金属又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、プラスチックフィルム、ベルト等が用いられる。
ここで導電性とは、体積抵抗率が1013 Ωcm未満であることを示す。
【0050】
感光体ドラム62がレーザープリンターに使用される場合、レーザー光を照射する際に生じる干渉縞を防止するため、導電性基材170の表面は、例えば、中心線平均粗さ(Ra75)で0.04 μm以上0.5 μm以下とする。
中心線平均粗さ(Ra75)が0.04 μm未満であると干渉防止効果が不十分となる傾向があり、0.5 μmより大きくなると、画質が粗くなる傾向がある。
【0051】
表面粗さを調整する方法としては、研磨剤を水に懸濁させて支持体に吹き付けることによって行う液体ホーニングや、回転する砥石に支持体を圧接し連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が用いられる。
また、導電性又は半導電性粉体を樹脂中に分散させて、支持体表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法が用いられる。
【0052】
下引層172は、リーク耐性、キャリアブロック性を付与する層である。
下引層172は、例えば、結着樹脂に無機粒子を含有するようにして構成される。
【0053】
下引層172に使用される結着樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の高分子樹脂化合物、あるいは、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂等が挙げられる。
【0054】
下引層172中には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加物を用いてもよい。
添加物としては、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等が用いられる。
【0055】
無機粒子としては、例えば、粉体抵抗(体積抵抗率)102 Ωcm以上1011 Ωcm以下のものが用いられる。
体積抵抗率が102 Ωcm未満であると十分なリーク耐性が得られず、1011 Ωcmよりも高いと残留電位上昇を引き起こす場合がある。
無機粒子としては、例えば、酸化錫や酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の無機粒子(導電性金属酸化物)が用いられる。
【0056】
また、無機粒子は表面処理を行ったものでもよく、表面処理の異なるもの、又は、粒子径の異なるものなど二種以上混合して用いてもよい。無機粒子の体積平均粒径は、例えば、50 nm以上2000 nm以下の範囲である。
【0057】
無機粒子としては、例えば、BET法による比表面積が10 m2/g以上のものが用いられる。比表面積値が10 m2/g未満であると帯電性低下を招きやすく、良好な電子写真特性を得にくい傾向がある。
【0058】
下引層172は、例えば、ビッカース硬度が35以上とされる。
【0059】
下引層172は、例えば、15 μm以上50 μm以下とされる。
下引層172の厚さが15 μm未満であるときには、充分な耐リーク性能を得ることができず、50 μm以上であるときには長期使用した場合に残留電位が残りやすくなるため画像濃度異常を招く場合がある。
【0060】
電荷発生層174は、電荷発生材料及び結着樹脂を含有する層である。
【0061】
電荷発生材料としては、例えば、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、ピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料、酸化亜鉛、三方晶系セレン等が用いられる。
電荷発生材料としては、例えば、光源の露光波長が380 nm以上500 nm以下の場合には無機顔料が望ましく、700 nm以上800 nm以下の場合には、金属及び無金属フタロシアニン顔料が用いられる。
【0062】
電荷発生層174に使用される結着樹脂としては、例えば、絶縁性樹脂、あるいは、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーが挙げられる。
具体的には、結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノール類と芳香族2価カルボン酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が用いられる。
これらの結着樹脂は一種を単独で又は二種以上を混合して用いられる。電荷発生材料と結着樹脂の配合比は、例えば、質量比で10:1から1:10までの範囲内でとする。
ここで絶縁性とは、体積抵抗率が1013 Ωcm以上であることをいう。
【0063】
電荷発生層174の膜厚は、例えば、0.1 μm以上5.0 μm以下とする。
【0064】
電荷発生層174は、上記電荷発生材料及び結着樹脂を溶剤中に分散した塗布液を用いて形成される。
【0065】
分散に用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等が挙げられ、これらは一種を単独で又は二種以上を混合して用いられる。
【0066】
また、電荷発生材料及び結着樹脂を溶剤中に分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等が用いられる。これらの分散方法により、分散による電荷発生材料の結晶型の変化が防止される。
【0067】
また、電荷発生層174を形成する際には、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等が用いられる。
【0068】
電荷輸送層176は、電荷輸送材料及び結着樹脂を含有して、又は高分子電荷輸送材を含有して形成される。
【0069】
電荷輸送材料としては、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物などの正孔輸送性化合
物が用いられる。
これらの電荷輸送材料は一種を単独で又は二種以上を混合して用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
電荷輸送層176に使用される結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。
これらの結着樹脂は一種を単独で又は二種以上を混合して用いられる。
電荷輸送材料と結着樹脂との配合比は、例えば、質量比で10:1から1:5とする。
【0071】
高分子電荷輸送材としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等が用いられる。高分子電荷輸送材は単独で成膜してもよいし、結着樹脂と混合して成膜してもよい。
【0072】
電荷輸送層176の膜厚は、例えば、5 μm以上50 μm以下とする。
【0073】
電荷輸送層176は、上記構成材料を含有する電荷輸送層形成用塗布液を用いて形成される。
電荷輸送層形成用塗布液に用いる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロンゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状もしくは直鎖状のエーテル類等の有機溶剤を単独又は二種以上混合して用いられる。
【0074】
電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層174の上に塗布する際の塗布方法としては、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等が用いられる。
【0075】
保護層178は、感光体ドラム62における最表面層であり、最表面の磨耗、傷などに対する耐性を持たせ、かつ、トナーの転写効率を上げるために設けられる層である。
保護層178としては、バインダー樹脂中に導電性粒子を分散したもの、通常の電荷輸送層材料にフッ素樹脂、アクリル樹脂などの潤滑性粒子を分散したもの、シリコーンやアクリル等のハードコート剤、あるいは、強度、電気特性、画質維持性などの観点から架橋構造を有するもの、酸化しやすい電荷輸送性材料を含むもの、これらが用いられる。
架橋構造を形成するものとしては、例えば、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、シロキサン樹脂等が用いられる。
【0076】
このように、感光体ドラム62は、帯電可能な膜が表面に形成された構造となっている。
【0077】
感光体ドラム62は、上記構成に限らず、導電性基材170上に下引層172が設けられ、この下引層172上に電荷輸送層176、電荷発生層174、保護層178が順次形成された感光層が設けられるようにしてもよい。
また、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一の層(単層型感光層)として形成するようにしてもよい。
なお、下引層172を設けないようにしてもよい。
【0078】
次に、帯電器66の詳細について説明する。
図4は、帯電器66及びその周辺構造の概略図を示す。
【0079】
帯電器66は、フィルム状の基材216と、この基材216の片面に形成(被膜)され感光体ドラム62と接触する接触部218と、により構成される。
帯電器66には、この帯電器66を移動させる移動部220が設けられており、この移動部220は、移動制御部140によって制御されるようになっている。
【0080】
基材216は、例えば、導電性処理を施したプラスチックフィルムにより構成される。基材216の材質としては、ポリエステルやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリイミド、セルロース、ナイロン等が用いられる。
基材216は、例えば、電流を横方向に流したときの表面抵抗率で100 Ω / □以上106 Ω / □以下程度に構成される。
【0081】
プラスチックフィルムに導電性処理を施す方法としては、導電性材料をプラスチックフィルムに分散させる方法や、導電性材料を含有する導電性塗料をプラスチックフィルムに塗布する方法、金属をプラスチックフィルムに蒸着させる方法等が用いられる。
蒸着に用いられる金属としては、アルミニウムや金、銅、チタン、銀、真鍮、クロム等が挙げられる。
なお、基材216を、アルミニウムやステンレス鋼、ニッケル等の薄板により構成するようにしてもよい。
【0082】
接触部218は、部分により表面粗さが異なるように形成されている。
具体的には、本実施形態において接触部218は、第一の帯電部として用いられる第一の接触部218aと、第二の帯電部として用いられる第二の接触部218bと、第三の帯電部として用いられる第三の接触部218cと、により構成されている。
表面粗さは、第一の接触部218a、第二の接触部218b、第三の接触部218cの順に、小さくなっている。
【0083】
ここで、表面粗さは、JIS B 0601-2001により規定された算術平均粗さ(Ra)や十点平均粗さ(Rzjis)、最大高さ粗さ(Rz)等により示されるものである。
【0084】
接触部218は、例えば、弾性材料と、導電剤と、により構成される。導電剤により、接触部218の抵抗が調整される。
また、接触部218には、必要に応じて、添加剤が含まれる。
【0085】
接触部218の弾性材料としては、ポリウエレタンゴムやエピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、フッ素ゴム、ビニルニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム材料、あるいは、ポリカーボネートやアクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル、フェノール樹脂、メラミン樹脂等が用いられる。
【0086】
導電剤としては、電子導電剤やイオン導電剤等が用いられる。
【0087】
電子導電剤としては、例えば、ケッチェンブラックやアセチレンブラック等のカーボンブラック、熱分解カーボン、グラファイト、もしくは、アルミニウムや銅、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属又は合金、もしくは、酸化スズや酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ−酸化アンチモン固溶体、酸化スズ−酸化インジウム固溶体等の導電性金属酸化物、もしくは、絶縁性物質の表面を導電化処理したもの、これらが用いられる。
【0088】
イオン導電剤としては、例えば、テトラエチルアンモニウムやラウリルトリメチルアンモニウム等の過塩素酸素塩又は塩素酸塩等、もしくは、リチウムやマグネシウム等のアルカリ金属の過塩素酸素塩又は塩素酸塩等、もしくは、アルカリ土類金属の過塩素酸素塩又は塩素酸塩等、これらが用いられる。
導電剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
添加剤としては、例えば、軟化剤や可塑剤、硬化剤、加硫剤、加硫促進剤、酸化防止剤、界面活性剤、カップリング剤、充填剤(シリカ、炭酸カルシウム)等が用いられる。
【0090】
表面粗さを調整する方法としては、所定の表面粗さを付与する粗さ付与粒子を添加する方法、表面を研磨する研磨方法等が用いられる。
【0091】
粗さ付与粒子としては、導電性粒子や非導電性粒子が用いられる。
ここで導電性とは、体積抵抗率が1013 Ωcm未満であることを示し、非導電性とは、体積抵抗率が1013 Ωcm以上であることを示す。
【0092】
導電性粒子としては、上述した電子導電剤やイオン導電剤等が用いられる。
【0093】
非導電性粒子としては、樹脂粒子(ポリイミド樹脂粒子やメタクリル樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、フッ素樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子等)、無機粒子(クレイ粒子やカオリン粒子、タルク粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子等)、及びセラミック粒子等、これらが用いられる。
【0094】
表面を研磨する方法としては、バフ研磨やサンドブラスト処理、液体ホーニング等が用いられる。
【0095】
上述したように、移動制御部140には、膜厚測定部130から測定結果が通知される。このように、移動制御部140は、膜厚測定部130の測定結果に基づいて、その測定結果(膜厚)に対応する表面粗さの接触部218で感光体ドラム62を帯電するように制御する。
なお、移動制御部140及び移動部220によって、感光体ドラム62に印加する帯電部(感光体ドラム62に接触する接触部)の表面粗さを設定する表面粗さ設定部が構成される。
【0096】
移動制御部140は、膜厚測定部130の測定結果に基づいて、第一〜第三の接触部218a−218cのいずれかを感光体ドラム62と接触させるように移動部220を制御する。
以下、感光体ドラム62と接触し、この感光体ドラム62を帯電する接触部218(放電を生じる接触部)を「放電接触部」と称する場合がある。
【0097】
本実施形態においては、感光体ドラム62の膜厚が薄くなるのに従って、この感光体ドラム62に電圧を印加する帯電部の表面粗さ(放電部の表面粗さ)が小さくなるように設定されている。
【0098】
なお、帯電器66の移動を案内する部材、及び、放電接触部以外の接触部(例えば、放電接触部が第一の接触部218aの場合、第二の接触部218b及び第三の接触部218c)と感光体ドラム62との接触を防止ように、放電接触部以外の接触部を被覆する部材を設けるようにしてもよい。
また、帯電器66は、移動部220に巻き取られるようにして移動するようにしてもよい。
【0099】
次に、放電の特性について、感光体ドラム62と帯電器66を用いて説明する。
帯電器66による感光体ドラム62の帯電が不良(帯電不良)であると、形成される画像の質が低下する。ここで、「帯電不良」には、不安定な放電や不均一な帯電等の現象が含まれるものとする。
【0100】
放電が不安定であると、画像形成に欠陥(画像欠陥:例えば、横筋状のディフェクト等)が生じる。
不安定な放電は、感光体ドラム62の膜厚が大きいほど発生し易く、帯電器66の表面粗さが小さいほど発生し易い。
【0101】
このため、例えば、帯電器66の表面粗さが比較的小さい場合、感光体ドラム62の膜厚が比較的大きければ画像欠陥が生じるときでも、感光体ドラム62の膜厚が比較的小さければ画像欠陥が生じないときがある。
【0102】
図5は、帯電器66の放電接触部の表面粗さ、感光体ドラム62の膜厚、及び画像欠陥の関係についての測定結果を示す。
図5中「画像欠陥水準」は、数値が大きいほど画像欠陥の度合が大きいことを示し、水準の値が「2」以下であれば画像欠陥が生じていない(画像形成に支障がない)ことを意味する。
【0103】
図5に示すように、帯電器66の放電接触部の表面粗さ(Ra)が大きくなるほど、画像欠陥水準が小さくなっている。
【0104】
また、放電接触部の表面粗さ(Ra)が比較的小さい0.5 μmにおいて、感光体ドラム62の膜厚が比較的大きい25 μmであると画像欠陥が生じている(画像欠陥水準が「5」と大きい値)のに対し、感光体ドラム62の膜厚が比較的小さい15 μmであると画像欠陥が生じていない(画像欠陥水準が「1」と小さい値)。
このように、放電接触部の表面粗さ(Ra)が比較的小さい場合でも、感光体ドラム62の膜厚が比較的小さいと、画像欠陥が抑制される。
【0105】
一方、帯電が不均一であると、「かぶり」が生じる。「かぶり」とは、非画像形成部にトナーが転写され、画像品位が低下する現象である。
かぶりは、感光体ドラム62の膜厚が小さいほど発生し易く、放電接触部の表面粗さが大きいほど発生し易い。
【0106】
このため、例えば、放電接触部の表面粗さが比較的大きい場合、感光体ドラム62の膜厚が比較的大きければかぶりが生じないときでも、感光体ドラム62の膜厚が比較的小さければかぶりが生じるときがある。
【0107】
図6は、帯電器66の放電接触部の表面粗さ、感光体ドラム62の膜厚、及びかぶりの関係についての測定結果を示す。
図6中「かぶり水準」は、数値が大きいほどかぶりの度合が大きいことを示し、水準の値が「2」以下であればかぶりが生じていない(画像品位に支障がない)ことを意味する。
【0108】
図6に示すように、放電接触部の表面粗さ(Ra)が大きくなるほど、かぶり水準が大きくなっている。
【0109】
また、放電接触部の表面粗さ(Ra)が比較的大きい2.5 μmにおいて、感光体ドラム62の膜厚が比較的大きい25 μmであるとかぶりが生じていない(画像欠陥水準が「1」と小さい値)のに対し、感光体ドラム62の膜厚が比較的小さい15 μmであるとかぶりが生じている(画像欠陥水準が「5」と大きい値)。
このように、放電接触部の表面粗さ(Ra)が比較的大きい場合でも、感光体ドラム62の膜厚が比較的大きいと、かぶりが抑制される。
【0110】
しかし、感光体ドラム62の膜厚は、画像形成の量の増加(印刷枚数の増加)に伴い減少する(膜減りする)。このため、感光体ドラム62の使用状況に応じて、適する(画像欠陥及びかぶりが生じない)表面粗さは変化することとなる。
【0111】
次に、表面粗さを変更して帯電した場合の実験結果について説明する。
【0112】
表1は、感光体ドラム62を所定回数まで回転し(所定の印刷枚数まで画像形成を継続し)、実施例1、比較例1〜3により画像形成した場合の、画像欠陥及びかぶりの発生の有無を示す。
【0113】
実施例1では、第一の接触部218a、第二の接触部218b、第三の接触部218cそれぞれの表面粗さ(Ra)を、2.5 μm、1.5 μm、0.5 μm、とし、感光体ドラム62の膜厚に応じて、この感光体ドラム62に印加する帯電部の表面粗さを変更した。
具体的には、感光体ドラム62の膜厚が薄くなる(画像形成の量が増加する)のに伴って、この感光体ドラム62に接触させる接触部218の表面粗さが小さくなるように(放電接触部の表面粗さが小さくなるように)設定した。
【0114】
比較例1〜3では、感光体ドラム62の膜厚に関わらず、放電接触部の表面粗さを一定として帯電させた。
比較例1では、放電接触部の表面粗さ(Ra)を2.5 μmで一定とした。
比較例2では、放電接触部の表面粗さ(Ra)が1.5 μmで一定とした。
比較例3では、放電接触部の表面粗さ(Ra)が0.5 μmで一定とした。
【0115】
【表1】

【0116】
表1に示すように、実施例1においては、感光体ドラム62の膜厚が減少しても、画像欠陥及びかぶりの発生が確認されなかった(表1中「○」で示す)。
これに対し、比較例1においては、感光体ドラム62の膜厚の減少に伴いかぶりの発生が確認された(同「×」で示す)。
比較例2においては、感光体ドラム62の膜厚が比較的大きい場合(22 μm以上)に画像欠陥が確認され、膜厚が比較的小さい場合(17 μm未満)にかぶりが確認された。
比較例3においては、感光体ドラム62の膜厚が比較的大きい場合(17 μm以上)に、画像欠陥が確認された。
【0117】
このように、感光体ドラム62の膜厚に応じて、放電接触部の表面粗さ(Ra)を変化させる構成とすることで、本構成を有さない場合と比較して、帯電不良(不安定な放電、及び不均一な帯電)が抑制される。
【0118】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態について説明する。
第一実施形態においては、フィルム状の帯電器66を用いるのに対し、第二実施形態においては、断面円筒形状(ロール状)の帯電器226を用いる点で、異なる。
図7は、第二実施形態にかかる帯電器226及びその周辺構造の概略図を示す。
【0119】
帯電器226は、ロール状に形成され、感光体ドラム62と接触(あるいは近接)して帯電させる帯電ロールとして構成されている。帯電器226は、感光体ドラム62の回転に従動しない固定型として設けられている。
帯電器226には、この帯電器226を回転移動させる移動部228が設けられており、この移動部228は、移動制御部140によって制御されるようになっている。
【0120】
帯電器226は、芯金(シャフト)230と、この芯金230の外周面に配設された弾性層232と、この弾性層232の外周面に配設された接触部234と、により構成される。
帯電器226は、上記構成に限らず、芯金230と弾性層232との間に接着層(プライマー層)を、弾性層232と接触部234との間に抵抗調整層又は以降防止層を、接触部234の外側に保護層(コーティング層)を設けるようにしてもよい。
【0121】
芯金230に移動部228が固定され、この移動部228により芯金230が回転移動されることで、帯電器226が回転移動するように構成されている。
【0122】
芯金230は、導電性の部材により棒状に形成されている。芯金230は、中空状(筒状)の部材であってもよいし、非中空状の部材であってもよい。
芯金230の材質としては、例えば、鉄や銅、真鍮、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等の金属、あるいは、外周面にメッキ処理を施した部材(例えば、樹脂やセラミック等)、導電剤が分散された部材等が用いられる。
【0123】
弾性層232は、例えば、弾性材料と、導電剤と、により構成される。また、弾性層232には、必要に応じて添加剤が含まれる。
【0124】
弾性層232の弾性材料としては、例えば、イソプレンゴムやクロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、ポリウレタン、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロリルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、天然ゴム、及びこれらのブレンドゴム等が用いられる。
弾性材料は、発砲したものであってもよいし、無発泡のものであってもよい。
【0125】
導電剤としては、上述した導電性粒子と同様のものが用いられる。
【0126】
弾性層232の厚みは、例えば、1 mm以上10 mm以下程度であり、体積抵抗率は、103 Ωcm以上1014 Ωcm以下程度に構成される。
【0127】
接触部234は、部分により表面粗さが異なるように形成されている。
具体的には、本実施形態において接触部234は、第一の帯電部として用いられる第一の接触部234aと、第二の帯電部として用いられる第二の接触部234bと、第三の帯電部として用いられる第三の接触部234cと、により構成されている。
表面粗さは、第一の接触部234a、第二の接触部234b、第三の接触部234cの順に、小さくなっている。
【0128】
接触部234は、例えば、樹脂により構成される。接触部234には、必要に応じて、導電剤、添加剤が含まれる。
【0129】
樹脂としては、アクリル樹脂やセルロース樹脂、ポリアミド樹脂、共重合ナイロン、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、スチレンブタジエン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂(例えば、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン等)、尿素樹脂等、これらが用いられる。
【0130】
共重合ナイロンは、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12、これらの内のいずれか1種又は複数種を重合単位として含むものである。また、この共重合体には、重合単位としてナイロン6やナイロン66等が含まれるようにしてもよい。
さらに、樹脂としては、弾性層232に用いられる弾性材料を適用するようにしてもよい。
【0131】
本実施形態において、移動制御部140は、膜厚測定部130の測定結果に基づいて、帯電器226の回転移動を制御するように構成されている。
移動制御部140は、膜厚測定部130の測定結果に基づいて、接触部234のうちその測定結果(膜厚)に対応する表面粗さの部分(第一〜第三の接触部234a−234c)で感光体ドラム62を帯電するように制御する。
【0132】
具体的には、移動制御部140は、感光体ドラム62の膜厚の減少に伴って、放電接触部の表面粗さが小さくなるように、移動部228によって帯電器226を回転移動するように制御する。
【0133】
このように、感光体ドラム62の膜厚が薄くなるのに従って、この感光体ドラム62に電圧を印加する帯電部の表面粗さ(放電接触部の表面粗さ)が小さくなるように設定されている。
【0134】
[第三実施形態]
次に、第三実施形態について説明する。
第一実施形態においては、フィルム状の帯電器66を用いるのに対し、第三実施形態においては、筒状(ベルト状)の帯電器246を用いる点で、異なる。
図8は、第二実施形態にかかる帯電器246及びその周辺構造の概略図を示す。
【0135】
第三実施形態において、帯電器246は、ベルト状に形成され、感光体ドラム62と接触(あるいは近接)して帯電させる帯電ベルトとして構成されている。
帯電器246は、移動部250と従動部252とにより回転自在に支持されている。
帯電器246は、移動部250により回転移動されるように構成されており、この移動部250は移動制御部140によって制御されるようになっている。
【0136】
帯電器246の感光体ドラム62と接触する接触部254は、部分ごとに、異なる六つの表面粗さを有するように形成されている。
具体的には、本実施形態において接触部254は、第一の接触部254aと、この第一の接触部254aよりも表面粗さが小さい第二の接触部254bと、この第二の接触部254bよりも表面粗さが小さい第三の接触部254cと、この第三の接触部254cよりも表面粗さが小さい第四の接触部254dと、この第四の接触部254dよりも表面粗さが小さい第五の接触部254eと、この第五の接触部254eよりも表面粗さが小さい第六の接触部254fと、により構成されている。
【0137】
本実施形態において、移動制御部140は、膜厚測定部130の測定結果に基づいて、帯電器246の回転移動を制御するように構成されている。
移動制御部140は、膜厚測定部130の測定結果に基づいて、接触部254のうちその測定結果(膜厚)に対応する表面粗さの部分(第一〜第六の接触部254a−254f)で、感光体ドラム62を帯電するように制御する。
【0138】
具体的には、移動制御部140は、感光体ドラム62の膜厚の減少に伴って、放電接触部の表面粗さが小さくなるように、移動部250によって帯電器246を回転移動するように制御する。
【0139】
このように、感光体ドラム62の膜厚が薄くなるのに従って、この感光体ドラム62に電圧を印加する帯電部の表面粗さ(放電接触部の表面粗さ)が小さくなるように設定されている。
【0140】
上記実施形態においては、表面粗さの異なる複数の帯電部材が一体として用いられている場合について説明したが、これに限らず、表面粗さの異なる帯電部材を別個に複数設けるようにしてもよい。
【0141】
また、感光体ドラム62の膜厚に応じて、移動制御部140が放電接触部の表面粗さを設定する構成について説明したが、これに限らず、作業者が放電接触部の表面粗さを設定する構成としてもよい。
具体的には、帯電器66を装脱着自在とし、感光体ドラム62の膜厚に応じて、予め定められた表面粗さの帯電器66を作業者が装着するようにしてもよい。
【0142】
放電接触部の表面粗さを変更する感光体ドラム62の膜厚の閾値や、表面粗さの値、表面粗さの異なる接触部の数、構成等は、これらの実施形態に限られず、目的に応じて適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0143】
10 画像形成装置
12 画像形成装置本体
40 像形成部
42 記録媒体供給装置
44 搬送路
52 像形成ユニット
54 潜像形成装置
56 転写装置
62 感光体ドラム
64 クリーニング装置
66 帯電器
68 現像装置
72 中間転写体
114 定着装置
116 排出ロール
130 膜厚測定部
140 移動制御部
210 印加部
216 基材
218 接触部
220 移動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電可能な膜が表面に形成され、像を保持する像保持体と、
前記像保持体の膜表面を帯電させる帯電手段と、
を有し、
前記帯電手段は、前記像保持体との間に直流電圧を印加するJIS B 0601に規定される表面粗さRaの異なる複数の帯電部を有し、
前記像保持体の膜厚が薄くなるのに従って、表面粗さRaの小さい帯電部で印加するように設定される画像形成装置。
【請求項2】
前記帯電手段は、膜状に形成されている請求項1記載の帯電装置。
【請求項3】
前記帯電手段は、断面円筒形状に形成されている請求項1記載の帯電装置。
【請求項4】
帯電可能な膜が表面に形成され、像を保持する像保持体の膜厚を測定し、
前記像保持体の膜厚が薄くなるのに従って、JIS B 0601に規定される表面粗さRaの小さい帯電部で前記像保持体との間に直流電圧を印加するように設定して前記像保持体の膜表面を帯電させる帯電方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−173406(P2012−173406A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33380(P2011−33380)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】