説明

画像形成装置及び画像形成方法

【課題】定着ユニットに設けられたサーミスタの出力電圧に関する異常原因の特定作業に対する工程作業者またはサービスマンの負担を軽減する。
【解決手段】ヒータを内蔵した加熱ローラと当該加熱ローラの温度を検出するサーミスタとを有する定着ユニットがコネクタを介して着脱自在に設けられた画像形成装置であって、記憶手段と、前記サーミスタの出力電圧を所定時間間隔でサンプリングして得られるサンプリングデータを前記記憶手段に記憶させる制御手段とを備え、前記制御手段は、前記サンプリングデータの今回値と前回値との差が所定の閾値以上になったと判定された場合、当該判定以後の所定時間内のサンプリングデータを前記記憶手段から読み出し、前記所定時間内のサンプリングデータの変化パターンに基づいて前記サーミスタの出力電圧に関する異常原因を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタやコピー機などの画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタやコピー機などの電子写真方式を採用する画像形成装置では、印刷用紙に転写したトナー像に対して定着ユニットによって定着処理(加熱、加圧処理)を施すことにより最終的な画像を形成する。この定着ユニットは、一般的に、内部にヒータ及びサーミスタが設けられた加熱ローラと、当該加熱ローラと対向するように設けられた加圧ローラとから構成されており、サーミスタの出力電圧を画像形成装置本体側のCPU(Central Processing Unit)によって監視することでヒータの温度、つまり定着温度の制御を行っている(例えば下記特許文献1参照)。
【0003】
このような定着ユニットは、定着ドロアに設けられたコネクタを介して画像形成装置本体と機械的及び電気的に接続されているが、コネクタのカシメ不良などが原因で画像形成装置本体側のコネクタと定着ユニット側のコネクタとが接触不良を起こし、加熱ローラのサーミスタ出力電圧を画像形成装置本体側のCPUで正確に把握することができず、定着温度制御を行えないという不具合が発生する可能性がある。
【0004】
このため、従来では製造工程においてコネクタの接触不良を選別するために、画像形成装置本体と定着ユニットを接続した状態で、20ms間隔で加熱ローラのサーミスタ出力電圧をCPUによってサンプリングし、サンプリングデータの今回値と前回値との差が閾値(例えば60mV)以上であれば、画像形成装置本体に設けられた表示部にcコール(警報メッセージ)を表示させることにより、作業者に異常発生を知らせていた。作業者は、このcコールを確認してコネクタ交換等の作業を実施していた。
【特許文献1】特開2004−296292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、従来ではコネクタの接触不良を厳密に選別するために、サーミスタ出力電圧のサンプリングデータの今回値と前回値との差に関する閾値を小さく設定してリトライも行わないため、通常動作に影響を及ぼさないレベルのノイズが瞬間的にサーミスタ出力電圧に重畳するだけで、コネクタ接触不良を誤検知してしまう可能性があった。しかしながら、従来のような閾値判定では、cコールが真にコネクタ接触不良が原因で発生したのか、その他のノイズ等の原因で発生したのかを特定することができないため、実際にはコネクタ接触不良が異常原因ではないにも拘わらず、作業者はコネクタ交換等の余分な作業を実施しなければならなかった。
【0006】
また、製造工程だけでなく、画像形成装置が市場に出回った後、例えば自己診断機能などにより定期的にサーミスタ出力電圧の異常検出動作を行うようにした場合、実際にはコネクタ接触不良が異常原因ではないにも拘わらずcコールが発生してしまい、サービスマンが訪問して対応しなければならなかった。また、サービスマンは、cコールを確認しただけでは真の異常原因が何かを判断することができず、異常原因を特定するための作業に長い時間を要していた。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、定着ユニットに設けられたサーミスタの出力電圧に関する異常原因の特定作業に対する工程作業者またはサービスマンの負担を軽減することが可能な画像形成装置及び画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、画像形成装置に係る第1の解決手段として、ヒータを内蔵した加熱ローラと当該加熱ローラの温度を検出するサーミスタとを有する定着ユニットがコネクタを介して着脱自在に設けられた画像形成装置であって、記憶手段と、前記サーミスタの出力電圧を所定時間間隔でサンプリングして得られるサンプリングデータを前記記憶手段に記憶させる制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記サンプリングデータの今回値と前回値との差が所定の閾値以上になったと判定された場合、当該判定以後の所定時間内のサンプリングデータを前記記憶手段から読み出し、前記所定時間内のサンプリングデータの変化パターンに基づいて前記サーミスタの出力電圧に関する異常原因を推定することを特徴とする。
【0009】
また、画像形成装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記制御手段は、前記サンプリングデータの変化パターンが単発のパルス状ノイズを表すパターンであった場合、前記異常原因は用紙に発生した静電気であると推定することを特徴とする。
【0010】
また、画像形成装置に係る第3の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記制御手段は、前記サンプリングデータの変化パターンが複数個のパルス状ノイズを表すパターンであった場合、前記異常原因は感光体と現像器との間に生じた高圧リークであると推定することを特徴とする。
【0011】
また、画像形成装置に係る第4の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記制御手段は、前記サンプリングデータの変化パターンが前記閾値以上の電圧範囲で連続的且つ緩やかに変化するようなパターンであった場合、前記異常原因は前記コネクタの接触不良であると推定することを特徴とする。
【0012】
また、画像形成装置に係る第5の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記制御手段は、前記サンプリングデータの変化パターンが前記閾値以上の電圧範囲で連続的且つ同一値を維持するようなパターンであった場合、前記異常原因はバグであると推定することを特徴とする。
【0013】
また、画像形成装置に係る第6の解決手段として、上記第1〜第5のいずれかの解決手段において、前記制御手段は、前記異常原因の推定結果に応じて当該異常原因が再現するかを確認して異常原因を確定するための異常確認動作を実施することを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明は、画像形成方法に係る解決手段として、ヒータを内蔵した加熱ローラと当該加熱ローラの温度を検出するサーミスタとを有する定着ユニットがコネクタを介して着脱自在に設けられた画像形成装置に使用される画像形成方法であって、前記サーミスタの出力電圧を所定のサンプリング周期でサンプリングして得られるサンプリングデータの今回値と前回値との差が所定の閾値以上になったと判定された場合、当該判定以後の所定時間内のサンプリングデータの変化パターンに基づいて前記サーミスタの出力電圧に関する異常原因を推定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、サーミスタの出力電圧に関する異常原因を推定することができるため、工程作業者及びサービスマンは異常原因の推定結果に応じた作業を行うだけで良く、工程作業者及びサービスマンの負担を軽減することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る画像形成装置の一実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る画像形成装置100の概略構成図である。本実施形態に係る画像形成装置100は、例えば電子写真方式を用いたフルカラープリンタであり、ほぼ中央に画像形成部10が設けられている。画像形成部10は、感光体ドラム1を備えるとともに、感光体ドラム1の周囲に配設されている帯電部2、露光部3、現像部4、転写部5、クリーニングブレード6及びローラ7を備えている。また、感光体ドラム1の記録媒体(用紙)搬送方向下流側には定着ユニット8が定着ドロア及びコネクタ(図示略)を介して着脱自在に設置されている。画像形成装置100の下部には給紙部20が設けられており、給紙部20の給紙方向の下流側には給紙ローラ21が配設されている。さらに、画像形成装置100の上部には画像形成後の用紙22を排出する排紙部30が配設されている。
【0017】
感光体ドラム1は、表面に静電潜像が形成されるものである。感光体ドラム1としては、アモルファスシリコン感光体を用いるのが好ましく、その構成は導電性基体上にSi:H:B:Oなどからなるキャリア注入阻止層、Si:Hなどからなるキャリア励起・輸送層(光導電層)、SiC:Hなどからなる表面保護層が順次積層されている。帯電部2は、感光体ドラム1の上方に設置されており、感光体ドラム1を一様に帯電させるものである。露光部3は画像データ入力部(図示略)から読み取った原稿画像に基づいて、感光体ドラム1上に静電潜像を形成させるものである。
【0018】
現像部4は、静電潜像が形成された感光体ドラム1表面にトナーを供給してトナー像を形成させるものである。ここで、現像部4は、ロータリラック40と、複数の現像器4Y,4M,4C,4Kとを備えている。ロータリラック40は、回転手段(図示略)により回転軸41を中心に回転しながら複数の現像器4Y,4M,4C,4Kを感光体ドラム1に対向する現像位置に順次移動させて現像を行わせるものである。これら現像器のうち、イエロー現像器4Y、マゼンタ現像器4M、シアン現像器4C、ブラック現像器4Kは、4Y,4M,4C,4Kの順にロータリラック40の円周方向に並べて保持され、隣接する現像器は円周方向に約90度の間隔で配置される。
【0019】
転写部5は、感光体ドラム1のトナー像を用紙に転写するものであり、中間転写ベルト51、一次転写ローラ52および53、駆動ローラ54、二次転写対向ローラ55、二次転写ローラ56を備えている。中間転写ベルト51は、一次転写ローラ52および53、駆動ローラ54、二次転写対向ローラ55にエンドレス状に巻きかけられ、駆動ローラ54によって駆動されており、感光体ドラム1に形成されたトナー像が転写され一時的に保持される転写体の役割を果たしている。二次転写ローラ56は、中間転写ベルト51の外周面において二次転写対向ローラ55に対向する位置に配置され、用紙にトナー像を二次転写する役割を果たしている。
【0020】
クリーニングブレード6は、感光体ドラム1に残留した残留現像剤などの付着物をクリーニングするものであり、例えばウレタンゴムを感光体ドラム1に圧接している。ローラ7は、感光体ドラム1の表面に当接して、トナーを回収したり吐き出したりするバッファの機能を有している。このローラ7は、金属シャフトの周りを発泡ゴムで覆った構成となっており、バネ(図示略)により感光体ドラム1に付勢されている。また、ローラ7は感光体ドラム1に対して、接触部における表面速度がドラムの表面速度より速く、1.2倍で回転している。
【0021】
定着ユニット8は、図2に示すように、回転自在に配設された定着体たる加熱ローラ81と、加熱ローラ81に圧接しながら回転する加圧体たる加圧ローラ82から構成されている。加熱ローラ81の内部には、ハロゲンランプ等のヒータ83及び加熱ローラ81の温度を検出するサーミスタ84が配設されている。ヒータ83用の電源は、定着ユニット8と画像形成装置100本体とを接続するコネクタ90を介して、画像形成装置100本体側から供給されており、また、サーミスタ84の出力電圧は上記コネクタ90を介して画像形成装置100本体側に設けられたA/Dコンバータ91に出力される。A/Dコンバータ91は、サーミスタ84の出力電圧をデジタルデータに変換して画像形成装置100本体側のCPU(制御手段)92に出力する。
【0022】
また、図2に示すように、画像形成装置100本体側にはメモリ(記憶手段)93及び操作表示部94が設けられている。メモリ93は例えばRAM(Random Access Memory)であり、CPU92の制御の下、各種データを記憶するものである。操作表示部94は例えば液晶ディスプレイ上にタッチパネルが設けられた構成となっており、操作部と表示部との両方の機能を担うものである。この操作表示部94は、タッチパネルに対する操作入力に応じた操作信号をCPU92に出力する一方、CPU92から入力される画像信号に応じた画像を液晶ディスプレイに表示する。
【0023】
CPU92は、操作表示部94から入力される操作信号や、通信インタフェース(図示略)を介して外部のPC(Personal Computer)から受信した印刷指示信号及び印刷用画像データに基づいて画像形成装置100の全体動作を制御する。また、詳細は後述するが、このCPU92は、本実施形態における特徴的な動作として、サーミスタ84の出力電圧(A/Dコンバータ91から出力されるデジタルデータ)を所定のサンプリング周期でサンプリングして得られるサンプリングデータをメモリ93に記憶させると共に、サンプリングデータの今回値と前回値との差が所定の閾値以上になったと判定された場合、当該判定以後の所定時間内のサンプリングデータをメモリ93から読み出し、この所定時間内のサンプリングデータの変化パターンに基づいてサーミスタ84の出力電圧に関する異常原因を推定する。
【0024】
定着ユニット8に用紙22が搬送されてくると、加熱ローラ81と加圧ローラ82は一定速度で回転し、用紙22が加熱ローラ81と加圧ローラ82との間を通過する際に表裏両面から一定の温度、圧力で加熱、加圧され用紙表面上の未定着トナー像は溶融して定着され、用紙22上にフルカラー画像が形成される。画像が定着された用紙22は分離爪(図示略)によって加熱ローラ81から分離され、排紙部30へ排出される。なお、画像形成装置100が電子写真方式を用いたフルカラープリンタのように、特に画質を重視するものである場合は、加熱ローラ81にはシリコーンゴムをローラの外層としたものを用いるのが好ましい。一方、加圧ローラ82としては、特に制限されないが、例えば、中実鉄棒などを芯にもつ、シリコーンゴムローラを用いるのが好ましい。
【0025】
次に、上記のように構成された画像形成装置100におけるサーミスタ84の出力電圧の異常原因推定動作について、図3のフローチャートを参照して説明する。
まず、CPU92は、制御変数Kを「0」に初期化する(ステップS1)。そして、CPU92は、サーミスタ84の出力電圧(A/Dコンバータ91から出力されるデジタルデータ)の今回値をサンプリングし(ステップS2)、制御変数Kが「0」か否かを判定する(ステップS3)。このステップS3において、制御変数K=0の場合(「Yes」)、CPU92は、サンプリングデータの今回値とメモリ93に記憶されている前回値との差が所定の閾値(例えば60mV)以上か否かを判定する(ステップS4)。このステップS4において、サンプリングデータの今回値と前回値との差が閾値以上になったと判定された場合(「Yes」)、CPU92は制御変数Kを「1」にセットし(ステップS5)、サンプリングデータの今回値をメモリ93に記憶させる(ステップS6)。
【0026】
一方、上記ステップS3において、制御変数K=0ではない場合(「No」)、CPU92はステップS6の処理に移行する。また、上記ステップS4において、サンプリングデータの今回値とメモリ93に記憶されている前回値との差が閾値未満の場合(「No」)、CPU92はステップS6の処理に移行する。
【0027】
続いて、CPU92は、内蔵タイマーの計時結果を基にサンプリング周期が到来したか否かを判定し(ステップS7)、サンプリング周期が到来している場合(「Yes」)、ステップS2の処理に戻り、一方、サンプリング周期が到来していない場合(「No」)、制御変数Kが「0」か否かを判定する(ステップS8)。このステップS8において、制御変数K=0の場合(「Yes」)、CPU92はステップS7の処理に戻る。一方、ステップS8において、制御変数K=0ではない場合(「No」)、つまりステップS4にて1度サンプリングデータの今回値と前回値との差が閾値以上になったと判定され、ステップS5にて制御変数Kが「1」にセットされている場合、CPU92はステップS4の判定以後、所定時間Tが経過したか否かを判定する(ステップS9)。この所定時間Tは、サーミスタ84の出力電圧に関する異常原因を推定できる程度のサンプリングデータの変化パターンを得られるような時間に設定されている。
【0028】
このステップS9において、所定時間Tが経過していない場合(「No」)、CPU92はステップS7の処理に戻る。つまり、ステップS4にて今回値と前回値との差が閾値以上と判定されてから所定時間Tが経過するまでの間、メモリ93にはサーミスタ84の出力電圧のサンプリングデータが所定のサンプリング周期で記憶される。一方、ステップS9において、所定時間Tが経過している場合(「Yes」)、CPU92はステップS4の判定以後の所定時間T内のサンプリングデータをメモリ93から読み出し(ステップS10)、この所定時間T内のサンプリングデータの変化パターンを基づいてサーミスタ84の出力電圧に関する異常原因を推定する(ステップS11)。
【0029】
図4に、各種の異常原因に対応するサーミスタ84の出力電圧の変化パターンを例示する。図4(a)は、加熱ローラ81と用紙22との摩擦により生じる静電気が原因でサーミスタ84の出力電圧にノイズが発生した場合の変化パターンを示している。図4(b)は、現像器4Y、4M、4C、4Kと感光体ドラム1との間で発生する高圧リークが原因でサーミスタ84の出力電圧にノイズが発生した場合の変化パターンを示している。図4(c)は、コネクタ90の接触不良が原因でサーミスタ84の出力電圧にノイズが発生した場合の変化パターンを示している。図4(d)は、CPU92のバグが原因でサーミスタ84の出力電圧にノイズが発生した場合の変化パターンを示している。
【0030】
図4(a)に示すように、加熱ローラ81と用紙22との摩擦により生じる静電気が原因である場合は、単発のパルス状ノイズがサーミスタ84の出力電圧に発生するので、このような変化パターンの場合にはサーミスタ84の出力電圧に関する異常原因は静電気であると推定することができる。また、図4(b)に示すように、現像器4Y、4M、4C、4Kと感光体ドラム1との間で発生する高圧リークが原因である場合は、複数個のパルス状ノイズがサーミスタ84の出力電圧に発生するので、このような変化パターンの場合にはサーミスタ84の出力電圧に関する異常原因は高圧リークであると推定することができる。
【0031】
また、図4(c)に示すように、コネクタ90の接触不良が原因である場合、サーミスタ84の出力電圧は閾値以上の電圧範囲で連続的且つ緩やかに変化するため、このような変化パターンの場合にはサーミスタ84の出力電圧に関する異常原因はコネクタ90の接触不良であると推定することができる。また、図4(d)に示すように、CPU92のバグが原因である場合、サーミスタ84の出力電圧は閾値以上の電圧範囲で連続的且つ同一値を維持するため、このような変化パターンの場合にはサーミスタ84の出力電圧に関する異常原因はCPU92のバグであると推定することができる。
【0032】
CPU92は、上記のような手法でサーミスタ84の出力電圧に関する異常原因を推定し、その推定結果を操作表示部94の液晶ディスプレイに表示する(ステップS12)。
【0033】
以上のように、本実施形態に係る画像形成装置100によれば、サーミスタ84の出力電圧に発生した異常が真にコネクタ90の接触不良が原因で発生したのか、その他のノイズ等の原因で発生したのかを推定することができるため、工程作業者及びサービスマンは画像形成装置100の操作表示部94に表示される異常原因の推定結果に応じた作業を行うだけで良く、工程作業者及びサービスマンの負担を軽減できる。
【0034】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、サンプリングデータの変化パターンを基にサーミスタ84の出力電圧に関する異常原因を推定した後、その推定結果を操作表示部94の液晶ディスプレイに表示する場合を例示して説明した。これに限らず、異常原因を推定した後、確実に異常原因が推定したものと一致するかを確認するための異常確認動作を行っても良い。具体的には、図3のステップS11の後に、異常確認動作モードに移行し、異常原因の推定結果に応じた異常確認動作を行う機能をCPU92に持たせる。
【0035】
このような異常確認動作モードでは、例えば、異常原因の推定結果がコネクタ90の接触不良であった場合、定着動作のオン/オフを繰り返して定着ユニット8を揺さぶるか、または定着温度(加熱ローラ81の温度)を常温−制御温度−限度温度と振って、推定結果と同様の異常が再現した場合はその異常原因をコネクタ90の接触不良と確定する。また、例えば異常原因の推定結果が高圧リークノイズであった場合、現像器4Y、4M、4C、4Kと感光体ドラム1との間に高電圧を印加し、用紙無しで印刷シミュレーションを行い、推定結果と同様の異常が再現した場合はその異常原因を高圧リークノイズと確定する。また、例えば異常原因の推定結果が加熱ローラ81と用紙22との摩擦による静電気ノイズであった場合、用紙有り帯電無しの印刷シミュレーションを行い、推定結果と同様の異常が再現した場合はその異常原因を静電気ノイズと確定する。
【0036】
また、このような異常確認動作モードにおいて、異常原因がコネクタ90の接触不良であることを確認するために、図5に示すようなコネクタ接触専用確認回路を設けても良い。このコネクタ接触専用確認回路では、画像形成装置100本体と定着ユニット8とを接続するコネクタ90の各ピンを往復するように配線し、この配線の一端を画像形成装置100本体側に設けられたインピーダンス200を介して電源210に接続し、上記配線の他端を画像形成装置100本体側に設けられた増幅器220及びA/Dコンバータ230を介してCPU92と接続するような構成となっている。このようなコネクタ接触専用確認回路の出力信号をCPU92によって監視することで、コネクタ90の各ピンP1〜Pnのいずれかに接触不良が発生していることを確認することができる。
【0037】
(2)上述したサーミスタ84の出力電圧の異常原因推定動作は、製造工程で実施する場合と市場に出回った後に実施する場合とで変更しても良い。例えば、製造工程では作業者が常駐しており、異常が発生した場合にはすぐに対応可能であるので、図3に示すようにサンプリングデータの今回値と前回値との差が1回でも閾値以上となれば異常原因の推定動作を行って操作表示部94に推定結果(異常動作確認モードを備える場合は異常原因の確定結果)を表示させることが好ましい。
【0038】
これに対し、画像形成装置100が市場に出回った後に、自己診断機能などにより定期的に異常原因推定動作を行う場合は、サンプリングデータの今回値と前回値との差が1回でも閾値以上となった場合に即座に異常原因の推定動作を行うと、頻繁に異常推定結果が表示されることになり、ユーザはその都度サービスマンを呼ぶことになるため、ユーザに負担を強いることになる。従って、画像形成装置100が市場に出回った後は、サンプリングデータの今回値と前回値との差が複数回閾値以上となった場合に異常原因の推定動作を行うようにすることが好ましい。また、必ずしもサービスマンを呼ぶ必要のない異常原因であった場合は、異常原因推定結果を表示してユーザには知らせるが、その後は通常動作に復帰するようにしても良い。さらに、異常原因推定結果をサービスマンに電子メール等で通知するような機能を画像形成装置100に持たせても良い。
【0039】
(3)上記実施形態では、画像形成装置100としてフルカラープリンタを例示して説明したが、この他、コピー機や複合機(プリンタ、コピー機、ファクシミリ等の機能を有するもの)、その他のOA機器など、定着ユニットを用いて画像形成を行うものであればどのような画像形成装置にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置100の構成概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る画像形成装置100における定着ユニット8の詳細説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る画像形成装置100の動作フローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態に係る画像形成装置100の異常原因推定動作に関する詳細説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る画像形成装置100の変形例である。
【符号の説明】
【0041】
100…画像形成装置、10…画像形成部、1…感光体ドラム、2…帯電部、3…露光部、4…現像部、5…転写部、6…クリーニングブレード、7…ローラ、8…定着ユニット、20…給紙部、30…排紙部、81…加熱ローラ、82…加圧ローラ、83…ヒータ、84…サーミスタ、90…コネクタ、91…A/Dコンバータ、92…CPU、93…メモリ、94…操作表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータを内蔵した加熱ローラと当該加熱ローラの温度を検出するサーミスタとを有する定着ユニットがコネクタを介して着脱自在に設けられた画像形成装置であって、
記憶手段と、
前記サーミスタの出力電圧を所定のサンプリング周期でサンプリングして得られるサンプリングデータを前記記憶手段に記憶させる制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記サンプリングデータの今回値と前回値との差が所定の閾値以上になったと判定された場合、当該判定以後の所定時間内のサンプリングデータを前記記憶手段から読み出し、前記所定時間内のサンプリングデータの変化パターンに基づいて前記サーミスタの出力電圧に関する異常原因を推定する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記サンプリングデータの変化パターンが単発のパルス状ノイズを表すパターンであった場合、前記異常原因は用紙に発生した静電気であると推定することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記サンプリングデータの変化パターンが複数個のパルス状ノイズを表すパターンであった場合、前記異常原因は感光体と現像器との間に生じた高圧リークであると推定することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記サンプリングデータの変化パターンが前記閾値以上の電圧範囲で連続的且つ緩やかに変化するようなパターンであった場合、前記異常原因は前記コネクタの接触不良であると推定することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記サンプリングデータの変化パターンが前記閾値以上の電圧範囲で連続的且つ同一値を維持するようなパターンであった場合、前記異常原因はバグであると推定することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記異常原因の推定結果に応じて当該異常原因が再現するかを確認して異常原因を確定するための異常確認動作を実施することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
ヒータを内蔵した加熱ローラと当該加熱ローラの温度を検出するサーミスタとを有する定着ユニットがコネクタを介して着脱自在に設けられた画像形成装置に使用される画像形成方法であって、
前記サーミスタの出力電圧を所定のサンプリング周期でサンプリングして得られるサンプリングデータの今回値と前回値との差が所定の閾値以上になったと判定された場合、当該判定以後の所定時間内のサンプリングデータの変化パターンに基づいて前記サーミスタの出力電圧に関する異常原因を推定する、
ことを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−169076(P2009−169076A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6770(P2008−6770)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】