説明

画像形成装置及び画像形成方法

【課題】シリアル印刷方式のプリンターでUVインクを用いて画像を形成する際に、UVインクドットの大きさや濃度を精度良く調整する。
【解決手段】キャリッジ部を前記主走査方向に移動させながらヘッド部から液体を噴出させる主走査の際に、噴出させた液体へ当該主走査において照射部から光を照射せずに当該主走査より後のキャリッジ部の移動において照射部から光を照射させる第1の液体硬化方法と、キャリッジ部を主走査方向に移動させながらヘッド部から液体を噴出させる主走査の際に、噴出させた液体へ当該主走査において照射部から光を照射させる第2の液体硬化方法と、を行う制御部を備え、第1の液体硬化方法の際に噴出させる液体の量よりも第2の液体硬化方法の際に噴出させる液体の量のほうが多い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッド部に設けられたノズルからインク等の液体を噴出し、媒体上に液滴(インクドッ
ト)を着弾させることで画像や文字の記録を行う画像形成装置が知られている。画像形成
装置の中には、紫外線(UV)を照射すると硬化する紫外線硬化型インク(UVインク)
を噴出するものがある。UVインクを噴出して画像を形成する場合、UVインクドットが
媒体に着弾してからUVの照射を受けて硬化するまでの間に、該UVインクドットは時間
の経過と共に徐々に広がり、ドット径が大きくなっていく。
【0003】
このような性質を利用して、UVインクのドット径や印刷濃度を調整しながら画像を形
成する方法が知られている。例えば、ヘッド部を媒体の搬送方向と直行する主走査方向に
往復移動させながらUVインクを噴出しつつ、ヘッド部の両端に配置された2つのUV照
射部からUV照射を行なうシリアル印刷方式のプリンターがある。このようなプリンター
を用いて、UV照射タイミングを制御しながらUVを照射することで、UVインクが硬化
するまでの時間を調整し、UVインクドットの大きさや濃度を調整する方法が提案されて
いる(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−167864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方法に関連して、UV照射部をヘッド部の主走査方向の片側に1つだけ設
け、該UV照射部を用いてUV照射を行なうようにすれば、装置の重量やUV光源にかか
るコストを抑えつつ、UVインクドットの大きさや濃度を調整することができる。しかし
、このようなプリンターでは、ヘッド部が一の方向に移動する際はUVインク噴出直後に
UVを照射することが可能だが、ヘッド部が他の方向に移動する際はUVインク噴出直後
にUVを照射することが不可能である。すなわち、ヘッド部の往動時と復動時とで、UV
インクドットが媒体に着弾してからUVが照射されるまでのタイミングが異なるため、U
Vインクドットの大きさや濃度を精度良く調整することが困難である。
【0006】
本発明は、ヘッド部が主走査方向に移動しながらUVインクを吐出し、当該移動中にU
Vインクを照射する主走査と、ヘッド部が主走査方向に移動しながらUVインクを吐出し
、当該移動中にUVインクを照射しない主走査とにより印刷を行なうシリアル印刷方式の
プリンターでUVインクを用いて画像を形成する際に、UVインクドットの大きさや濃度
を精度良く調整することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための主たる発明は、(A)光の照射を受けることにより硬化する
液体をノズルから媒体へ噴出するヘッド部と、(B)前記ヘッド部を搭載し副走査方向と
交差する主走査方向に移動するキャリッジ部と、(C)前記キャリッジ部の前記ヘッドの
前記主走査方向に設けられ、前記光を照射する照射部と、(D)前記キャリッジ部を移動
させつつ、前記ヘッド部から前記液体を噴出させ、前記照射部から前記光を照射させる制
御部であって、前記キャリッジ部を前記主走査方向に移動させながら前記ヘッド部から前
記液体を噴出させる主走査の際に、噴出させた液体へ当該主走査において前記照射部から
光を照射せずに当該主走査より後の前記キャリッジ部の移動において前記照射部から光を
照射させる第1の液体硬化方法と、前記キャリッジ部を前記主走査方向に移動させながら
前記ヘッド部から前記液体を噴出させる主走査の際に、噴出させた液体へ当該主走査にお
いて前記照射部から光を照射させる第2の液体硬化方法と、を行う制御部と、を備え、前
記第1の液体硬化方法の際に噴出させる液体の量よりも前記第2の液体硬化方法の際に噴
出させる液体の量のほうが多い、画像形成装置である。
【0008】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】プリンター1の全体構成を示すブロック図である。
【図2】図2Aは、本実施形態のプリンター1の構成を説明する図である。図2Bは、本実施形態のプリンター1の構成を説明する側面図である。
【図3】ヘッドの構造を説明する断面図である。
【図4】ヘッドに設けられたノズルNzの説明図である。
【図5】プリンタードライバーによる画像処理のフローを表す図である。
【図6】ハーフトーン処理の流れを説明するためのフローを表す図である。
【図7】ドット生成率テーブル(LUT)の一例を示す図である。
【図8】ディザ法によるドットのオン・オフ判定の様子を示す図である。
【図9】図9A及び図9Bは、UVインク硬化方法2におけるドット形成動作を説明する図である。
【図10】LUT1とLUT2との違いを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0011】
(A)光の照射を受けることにより硬化する液体をノズルから媒体へ噴出するヘッド部
と、(B)前記ヘッド部を搭載し副走査方向と交差する主走査方向に移動するキャリッジ
部と、(C)前記キャリッジ部の前記ヘッドの前記主走査方向に設けられ、前記光を照射
する照射部と、(D)前記キャリッジ部を移動させつつ、前記ヘッド部から前記液体を噴
出させ、前記照射部から前記光を照射させる制御部であって、前記キャリッジ部を前記主
走査方向に移動させながら前記ヘッド部から前記液体を噴出させる主走査の際に、噴出さ
せた液体へ当該主走査において前記照射部から光を照射せずに当該主走査より後の前記キ
ャリッジ部の移動において前記照射部から光を照射させる第1の液体硬化方法と、前記キ
ャリッジ部を前記主走査方向に移動させながら前記ヘッド部から前記液体を噴出させる主
走査の際に、噴出させた液体へ当該主走査において前記照射部から光を照射させる第2の
液体硬化方法と、を行う制御部と、を備え、前記第1の液体硬化方法の際に噴出させる液
体の量よりも前記第2の液体硬化方法の際に噴出させる液体の量のほうが多い、画像形成
装置。
【0012】
このような装置によれば、ヘッド部が主走査方向に移動しながらUVインクを吐出し、
当該移動中にUVインクを照射する主走査と、ヘッド部が主走査方向に移動しながらUV
インクを吐出し、当該移動中にUVインクを照射しない主走査とにより印刷を行なうシリ
アル印刷方式のプリンターでUVインクを用いて画像を形成する際に、UVインクドット
の大きさや濃度を精度良く調整することができる。
【0013】
かかる画像形成装置であって、前記画像形成装置へ入力した画像データの所定のデータ
に対応して噴出させる前記液体の噴出量が、前記第1の液体硬化方法の際よりも、前記第
2の液体硬化方法の際のほうが多いことが望ましい。
このような画像形成装置によれば、同じデータを用いて画像の印刷を行う場合でも、液
体硬化方法の違いに応じて最適な量のUVインクを噴出することによって、良好な画質の
画像を形成することが可能になる。
【0014】
かかる画像形成装置であって、印刷データの作成に用いるデータ変換テーブルを記憶す
る記憶部を備え、前記制御部は、前記画像形成装置へ入力した画像データから前記制御部
によって印刷データを作成し、作成した前記印刷データを用いて画像形成を行い、前記液
体を噴出する際に、前記第1の液体硬化方法と前記第2の液体硬化方法とで異なるデータ
変換テーブルを用いて印刷データを作成し、前記第1の液体硬化方法の際よりも前記第2
の液体硬化方法の際のほうが多い量の液体を噴出させることが望ましい。
このような画像形成装置によれば、登録してあるデータ変換テーブルの中から適当なテ
ーブルを選択することで、媒体上にUVインクドットが形成されてからUV照射を受けて
硬化するまでの間に時間のかかる第1の液体硬化方法について、インク噴出量を簡単に調
節することができ、良好な画質の画像を形成することが可能になる。
【0015】
かかる画像形成装置であって、前記データ変換テーブルは、媒体の単位領域あたりに噴
出されるインクの量を規定するテーブルであることが望ましい。
このような画像形成装置によれば、登録してあるドット生成率テーブルの中から適当な
テーブルを選択することで、媒体に打ち込まれるインクの量を簡単に調節することができ
、良好な画質の画像を形成することが可能になる。
【0016】
かかる画像形成装置であって、前記液体は、20℃における粘度が7mPa・S以上で
あることが望ましい。
このような画像形成装置によれば、UV照射を受けて硬化するまでの間にUVインクド
ットが潰れずに球状の形状を維持しやすくなるため、インクドットが濡れ広がることによ
って発生する混色等を抑制し、良好な画質の画像を形成することができる。
【0017】
かかる画像形成装置であって、前記液体は、下記、一般式(1)
CH=CR−COOR−O−CH=CH−R ・・・(1)
(式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数2〜20の2価の有機残基
であり、Rは炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
で表される成分を含有することが望ましい。
このような画像形成装置によれば、より硬化性の高いUVインクを用いることで、UV
インクドットを硬化しやすくし、UVインクドットが濡れ広がることを抑制することがで
きる。
【0018】
かかる画像形成装置であって、粘度の異なる複数種の液体を噴出し、前記第1の液体硬
化方法の際に、前記複数種の液体のうちの粘度が低い液体を噴出する場合は、粘度が高い
液体を噴出する場合よりも、前記ヘッド部から噴出される前記液体の量を少なくすること
が望ましい。
このような画像形成装置によれば、UVインクの粘度の高さに応じてインクの打ち込み
量を適切にコントロールすることができ、混色性・濃度の面において良好な画像を形成す
ることができる。
【0019】
また、(A)副走査方向と交差する主走査方向にキャリッジ部を移動させながら、前記
キャリッジ部に搭載されたヘッド部から光の照射を受けることにより硬化する液体を媒体
へノズル噴出させる主走査の際に、噴出させた液体へ当該主走査において前記照射部から
前記光を照射させずに当該主走査より後の前記キャリッジ部の移動において前記照射部か
ら前記光を照射させることと、(B)前記キャリッジ部を前記主走査の方向に移動させな
がら前記ヘッド部から前記液体を媒体へ噴出させる主走査の際に、噴出させた液体へ当該
主走査において前記照射部から前記光を照射させることと、を有し、(C)前記主走査(
A)の際よりも、前記主走査(B)のほうが、液体の噴出の量が多い、画像形成方法が明
らかとなる。
【0020】
===画像形成装置の基本的構成===
発明を実施するための画像形成装置の形態として、インクジェットプリンター(プリン
ター1)を例に挙げて説明する。
【0021】
<プリンター1の構成>
プリンター1は、紙、布、フィルムシート等の媒体に向けて、インク等の液体を噴出す
ることで画像を記録する画像形成装置の形態である。本実施形態では、紫外線(以下、U
V)を照射することによって硬化する紫外線硬化型インク(以下、UVインク)を噴出す
ることにより、媒体に画像を記録する。UVインクは、紫外線硬化樹脂を含むインクであ
り、UVの照射を受けると紫外線硬化樹脂において光重合反応が起こることにより硬化す
る。UVインクの詳細については後で説明する。なお、本実施形態のプリンター1は、U
Vインクとして、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンダ(M)、及びイエロー(Y)
の4色のカラーインクを用いて画像の記録を行う。
【0022】
図1は、プリンター1の全体構造を示すブロック図である。プリンター1は、搬送ユニ
ット10、キャリッジユニット20、ヘッドユニット30、照射ユニット40、検出器群
50、及びコントローラー60を有する。コントローラー60は、外部装置であるコンピ
ューター110から受信した印刷データに基づいてヘッドユニット30や照射ユニット4
0等の各ユニットを制御する制御部である。プリンター1内の状況は検出器群50によっ
て監視されており、検出器群50は検出結果をコントローラー60に出力する。コントロ
ーラー60は検出器群50から出力された検出結果に基づいて各ユニットを制御する。
【0023】
<コンピューター110>
プリンター1は、外部装置であるコンピューター110と通信可能に接続されている。
コンピューター110にはプリンタードライバーがインストールされている。プリンター
ドライバーは、表示装置にユーザーインターフェースを表示させ、アプリケーションプロ
グラムから出力された画像データを印刷データ(画像形成データ)に変換させるためのプ
ログラムである。このプリンタードライバーは、フレキシブルディスクFDやCD−RO
Mなどの記録媒体(コンピューターが読み取り可能な記録媒体)に記録されている。また
、プリンタードライバーはインターネットを介してコンピューター110にダウンロード
することも可能である。なお、このプログラムは、各種の機能を実現するためのコードか
ら構成されている。プリンタードライバーによる画像処理については後で説明する。
【0024】
コンピューター110はプリンター1に画像を印刷させるため、印刷させる画像に応じ
た印刷データをプリンター1に出力する。印刷データは、プリンター1が解釈できる形式
のデータであって、各種のコマンドデータと、画素データとを有する。コマンドデータと
は、プリンター1に特定の動作の実行を指示するためのデータである。このコマンドデー
タには、例えば、媒体供給を指示するコマンドデータ、媒体の搬送量を示すコマンドデー
タ、媒体排出を指示するコマンドデータがある。また、画素データは、印刷される画像の
画素に関するデータである。
【0025】
ここで、画素とは画像を構成する単位要素であり、記録解像度で規定される記録の単位
要素である。この画素が2次元的に並ぶことにより画像が構成される。印刷データにおけ
る画素データは、媒体(例えば媒体など)上に形成されるドットに関するデータ(例えば
、階調値)である。画素データは画素毎に例えば2ビットのデータによって構成される。
この2ビットの画素データは1つの画素を4階調で表現できるデータである。
【0026】
<搬送ユニット10>
図2Aは本実施形態のプリンター1の構成を表した鳥瞰図であり、図2Bはプリンター
1の構成を表した側面図である。
【0027】
搬送ユニット10は、媒体を所定の方向(以下、搬送方向または副走査方向という)に
搬送させるためのものである。この搬送ユニット10は、媒体供給ローラー11と、搬送
モーター12と、搬送ローラー13と、プラテン14と、媒体排出ローラー15とを有す
る(図2A及び図2B)。
【0028】
媒体供給ローラー11は、媒体の挿入口に挿入された媒体をプリンター1内に供給する
ためのローラーである。搬送ローラー13は、媒体供給ローラー11によって供給された
媒体を印刷可能な領域まで搬送するローラーであり、搬送モーター12によって駆動され
る。搬送モーター12の動作はプリンター側のコントローラー60により制御される。プ
ラテン14は、印刷中の媒体を裏側から支持する部材である。媒体排出ローラー15は、
媒体をプリンターの外部に排出するローラーであり、印刷可能な領域に対して搬送方向下
流側に設けられている。
【0029】
なお、ヘッドと媒体を相対的に副走査方向に移動させる副走査の際には、ヘッドに対し
て媒体を搬送方向(副走査方向)へ搬送する副走査でもよいし、媒体に対してヘッドを搬
送方向(副走査方向)へ搬送する副走査でもよい。
【0030】
<キャリッジユニット20>
キャリッジユニット20は、ヘッドユニット30が取り付けられたキャリッジ21を副
走査方向と交差する方向に移動(「走査」とも呼ばれる)させるためのものである。以下
、この移動方向を主走査方向とも呼ぶ。キャリッジユニット20は、キャリッジ21と、
キャリッジモーター22(CRモータともいう)とを有する(図2A及び図2B)。
【0031】
キャリッジ21は、主走査方向に往復移動可能であり、キャリッジモーター22によっ
て駆動される。キャリッジモーター22の動作はプリンター側のコントローラー60によ
り制御される。また、キャリッジ21は、インクを収容するインクカートリッジを着脱可
能に保持している。
【0032】
<ヘッドユニット30>
ヘッドユニット30は、媒体にインクを噴出するためのものである。ヘッドユニット3
0は、複数のノズルを有するヘッド31を備える。このヘッド31はキャリッジ21に設
けられ、キャリッジ21が主走査方向に移動すると、ヘッド31も主走査方向に移動する
。そして、ヘッド31が主走査方向に移動中にノズルからインクを断続的に噴出すること
によって、主走査方向に沿ったドットライン(ラスタライン)が媒体上に形成される。
【0033】
図3は、ヘッド31の構造を示した断面図である。ヘッド31は、ケース311と、流
路ユニット312と、ピエゾ素子群PZTとを有する。ケース311はピエゾ素子群PZ
Tを収納し、ケース311の下面に流路ユニット312が接合されている。流路ユニット
312は、流路形成板312aと、弾性板312bと、ノズルプレート312cとを有す
る。流路形成板312aには、圧力室312dとなる溝部、ノズル連通口312eとなる貫
通口、共通インク室312fとなる貫通口、インク供給路312gとなる溝部が形成され
ている。弾性板312bはピエゾ素子PZTの先端が接合されるアイランド部312hを
有する。そして、アイランド部312hの周囲には弾性膜312iによる弾性領域が形成
されている。インクカートリッジに貯留されたインクが、共通インク室312fを介して
、各ノズルNzに対応した圧力室312dに供給される。ノズルプレート312cはノズ
ルNzが形成されたプレートである。
【0034】
ノズル面では、画像を形成するカラーインク噴出ノズル列としてイエローインクを噴出
するイエローノズル列Yと、マゼンタインクを噴出するマゼンタノズル列Mと、シアンイ
ンクを噴出するシアンノズル列Cと、ブラックインクを噴出するブラックノズル列Kとが
設けられる。
【0035】
図4は、ヘッド31に設けられたノズルNzの説明図である。なお、図4はノズルを上
面側から仮想的に見た図である。図4に示されるように各ノズル列では、各色のインクを
噴出するための噴出口であるノズルNzが搬送方向に180dpiの間隔で並ぶことによ
り構成されている。そして、各ノズル列において、#1〜#360の360個のノズルN
zを備えている。なお、1列あたりのノズル数は任意であり、必ずしも360個とする必
要はない。例えば、1列あたりのノズル数を180個や240個であってもよい。
【0036】
ピエゾ素子群は、櫛歯状の複数のピエゾ素子PZT(駆動素子)を有し、ノズルNzに
対応する数分だけ設けられている。配線基板であるフレキシブルケーブル(不図示)によ
ってピエゾ素子PZTに駆動信号が印加され、該駆動信号の電位に応じてピエゾ素子は上
下方向に伸縮する。ピエゾ素子PZTが伸縮すると、図3に示されるアイランド部312
hは圧力室312d側に押されたり、反対方向に引かれたりする。このとき、アイランド
部312h周辺の弾性膜312iが変形し、圧力室312d内の圧力が上昇・下降するこ
とにより、ノズルからインク滴(ドット)が噴出される。
【0037】
<照射ユニット40>
照射ユニット40は、媒体に着弾したインクドットに向けてUVを照射するものである
。媒体上に形成されたドットは、照射ユニット40からのUVの照射を受けることにより
、硬化する。本実施形態の照射ユニット40は、照射部41を備えている。
【0038】
照射部41は、キャリッジ21の片側端部に搭載されており、主走査方向に並べられた
KCMYの各ノズル列に隣接して配置される。照射部41は、キャリッジ21の移動に伴
ってヘッド31と一体的に主走査方向に移動する。そして、ヘッド31が一端側から他端
側へ走査する間に噴出されたUVインクドットに対してUVを照射することができるよう
に構成されている。すなわち、ヘッド31の各色のノズル列が主走査方向を移動する際、
照射部41は各色のノズル列に対する相対位置を維持しながら移動しつつUVを照射する
。例えば、図4において、ヘッド31が主走査方向を右側から左側に移動(往復動作のう
ちの往動)する際に、各ノズル列(KCMY)から噴出されたUVインクドットに対して
、同じ走査において、照射部41からUVを照射させる。これにより、媒体に着弾した直
後のUVインクドットをすぐに硬化させることができる。一方、ヘッド31が主走査方向
を左側から右側に移動(往復動作のうちの復動)する際には、照射部41がノズル列より
も移動方向の手前側になる。したがって、復動時に各ノズル列から噴出されたUVインク
ドットに対して、同じ走査においてUVを照射させることはできない。この場合、復動時
に噴出されたUVインクドットは次の往動時のUV照射によって硬化される。
【0039】
照射部41の搬送方向の長さは、ヘッド31に設けられた各ノズル列の搬送方向長さよ
りも下流側に長くなっている。そして、該ノズル列よりも搬送方向の下流側まで伸びるよ
うに設けられる(図4参照)。上述の復動時において各ノズル列の搬送方向最下流側のノ
ズル(図4では#360のノズル)によって噴出されるインクドットは、次の往動時のU
V照射によって硬化される。復動と次の往動との間で、媒体は搬送方向に所定量だけ搬送
されているため、該インクドットはノズル列よりもさらに搬送方向の下流側の位置でUV
照射を受けることになる。そのため、照射部41は各ノズル列よりも搬送方向下流側に長
くなるようにして設けられる。
【0040】
本実施形態において、照射部41は、UV照射の光源として発光ダイオード(LED:
Light Emitting Diode)を備える。LEDの波長ピークは好ましくは360〜420nm
に発光ピーク波長を有するものを使用する。LEDは入力電流の大きさを制御することに
よって、照射エネルギーを容易に変更することが可能である。本実施形態では好ましくは
150〜300mJ/cmの範囲で照射エネルギーを変更することによって、UV照射
強度を制御してUVインクドットを最適な硬さに硬化させる。なお、照射部41の光源は
、照射部41内に収容されることによりヘッド31から隔離されている。これにより、光
源から照射されるUVがヘッド31の下面へ漏れるのを防ぎ、以って、当該下面に形成さ
れた各ノズルの開口付近でUVインクが硬化すること(ノズルの目詰まり)を防止している

【0041】
なお、照射部41がキャリッジ21の片側端部のみに搭載されていることに限られるも
のではなく、照射部41がキャリッジ21の両側端部に搭載されており、そのうちの一方
の照射部を照射させ他方の照射部の照射を停止させることで、ヘッド31の往動の際には
、当該往動で噴出させたインクを当該往動にて照射し、ヘッド31の復動の際には、当該
復動で噴出させたインクを当該復動にて照射しない構成としても良い。
【0042】
<検出器群50>
検出器群50は、プリンター1の状況を監視するためのものである。検出器群50には
、リニア式エンコーダ51、ロータリー式エンコーダ52、媒体検出センサ53、及び光
学センサ54等が含まれる(図2A及び図2B)。
【0043】
リニア式エンコーダ51は、キャリッジ21の移動方向の位置を検出する。ロータリー
式エンコーダ52は、搬送ローラー13の回転量を検出する。媒体検出センサ53は、供
給中の媒体の先端の位置を検出する。光学センサ54は、キャリッジ31に取付けられて
いる発光部及び受光部により、対向する位置の媒体の有無を検出し、例えば、走査方向に
移動しながら媒体の端部の位置を検出し、媒体幅を検出することができる。また、光学セ
ンサ54は、状況に応じて、媒体の先端(搬送方向下流側の端部であり、上端ともいう)
・後端(搬送方向上流側の端部であり、下端ともいう)も検出できる。
【0044】
<コントローラー60>
コントローラー60は、プリンターの制御を行うための制御ユニット(制御部)である
。コントローラー60は、インターフェース部61と、CPU62と、メモリー63と、
ユニット制御回路64とを有する(図1)。
【0045】
インターフェース部61は、外部装置であるコンピューター110とプリンター1との
間でデータの送受信を行う。CPU62は、プリンター1の全体の制御を行うための演算
処理装置である。メモリー63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等
を確保するための記憶部であり、RAM、EEPROM等の記憶素子によって構成される
。そして、CPU62は、メモリー63に格納されているプログラムに従って、ユニット
制御回路64を介して搬送ユニット10等の各ユニットを制御する。
【0046】
<画像形成動作について>
プリンター1による画像形成動作について簡単に説明する。コントローラー60は、コ
ンピューター110からインターフェース部61を介して印刷命令を受信し、各ユニット
を制御することにより、媒体供給処理・ドット形成処理・搬送処理等を行う。
【0047】
媒体供給処理は、印刷すべき媒体をプリンター内に供給し、印刷開始位置(頭出し位置
とも言う)に媒体を位置決めする処理である。コントローラー60は、媒体供給ローラー
11を回転させ、印刷すべき媒体を搬送ローラー13まで送る。続いて、搬送ローラー1
3を回転させ、媒体供給ローラー11から送られてきた媒体を印刷開始位置に位置決めす
る。
【0048】
ドット形成処理は、主走査方向に沿って移動するキャリッジ21に搭載されたヘッド3
1からインクを断続的に噴出させ、媒体上にドットを形成する処理である。コントローラ
ー60は、キャリッジ21を主走査方向に移動させ、キャリッジ21が移動している間に
、印刷データに基づいてヘッド31からインクを噴出させる。噴出されたインク滴が媒体
上に着弾すると、媒体上にドットが形成され、媒体上には移動方向に沿った複数のドット
からなるドットラインが形成される。形成されたドットに照射ユニット40の照射部41
からUVを照射することにより、ドットが硬化される。ただし、前述のように、プリンタ
ー1では照射部41がキャリッジ21(ヘッド31)の主走査方向の片側のみに搭載され
ているため、インクドットの噴出とUV照射を同じ走査で行なうことができるのは、キャ
リッジ21が主走査方向の一方向に移動する間のみである。
【0049】
搬送処理は、媒体をヘッドに対して搬送方向に沿って相対的に移動させる処理である。
コントローラー60は、搬送ローラー13を回転させて媒体を搬送方向に搬送する。この
搬送処理により、ヘッド31は、先ほどのドット形成処理によって形成されたドットライ
ンの位置とは異なる位置にドットラインを形成することが可能になる。
【0050】
なお、本実施形態で、1回の搬送処理で搬送される距離が、ノズル列の印刷に使用する
ノズルの媒体搬送方向の距離(ヘッド31のノズル間距離(180dpi)×(ノズル列
の印刷に使用するノズル数−1)よりも短くなり、キャリッジ21が主走査方向に1回移
動する間に記録されるラスタラインの間に記録されないラスタラインが挟まれるような印
刷方式(所謂インターレース方式)や、1ラスタラインに対して複数回の主走査にてドッ
ト形成を行なう印刷方式、の印刷を行うことが可能である。これらの印刷方式の場合、記
録解像度で規定される記録単位である画素のうち縦方向あるいは横方向に隣接する画素に
同一主走査でドット形成する可能性が低くなったり、あるいは、1つの画素に1回の主走
査で打ち込むインク量が少なくなるために、隣接ドット間のにじみが少なくなり好ましい

【0051】
コントローラー60は、印刷すべきデータがなくなるまで、ドット形成処理と搬送処理
とを交互に繰り返し、ドットラインにより構成される画像を徐々に媒体に印刷する。そし
て、印刷すべきデータがなくなると、媒体排出ローラー15を回転させて印刷後の媒体を
排出する。なお、媒体の排出を行うか否かの判断は、印刷データに含まれる排出コマンド
に基づいても良い。
次の印刷を行う場合は同処理を繰り返し、行わない場合は、印刷動作を終了する。
【0052】
===プリンタードライバーによる画像処理について===
プリンタードライバーは、アプリケーションプログラムから画像データを入力し、プリ
ンター1が解釈できる形式の画像形成データ(印刷データ)に変換し、該画像形成データ
をプリンターに出力する。アプリケーションプログラムから画像データを記録データに変
換する際に、プリンタードライバーは、解像度変換処理、色変換処理、ハーフトーン処理
、ラスタライズ処理、コマンド付加処理などを行う。以下に、プリンタードライバーが行
う各種の処理について説明する。なお、プリンタードライバーをプリンター1のコントロ
ーラー60にインストールして、プリンター1自体によって画像処理が行なわれるのであ
ってもよい。
【0053】
図5に、プリンタードライバーによる画像処理のフローを示す。本実施形態において、
画像処理はS101〜S106の各処理を実行することによって行われる。
【0054】
まず、コンピューター110とプリンター1が接続され(図1参照)、プリンタードラ
イバーが、コンピューター110にインストールされて印刷準備が整えられる。ユーザー
がアプリケーションプログラム上から印刷を指示して印刷が開始されると、プリンタード
ライバーが呼び出され、印刷対象となる画像データ(原画像データ)をアプリケーション
プログラムから受け取り(S101)、該画像データに対して以下に説明する各処理(S
102〜S106)が順次実行される。
【0055】
解像度変換処理(S102)は、アプリケーションプログラムから出力された画像デー
タ(テキストデータ、イメージデータなど)を、媒体に記録する際の解像度(記録解像度
)に変換する処理である。例えば、記録解像度が720×720dpiに指定されている
場合、アプリケーションプログラムから受け取ったベクター形式の画像データを720×
720dpiの解像度のビットマップ形式の画像データに変換する。
なお、解像度変換処理後の画像データの各画素データは、RGB色空間により表される
各階調(例えば256階調)のRGBデータである。
【0056】
色変換処理(S103)は、RGBデータをKCMY色空間のデータに変換する処理で
ある。KCMY色空間の画像データは、プリンターが有するインクの色に対応したデータ
である。この色変換処理は、RGBデータの階調値とKCMYデータの階調値とを対応づ
けたテーブル(色変換ルックアップテーブルLUT)に基づいて行われる。
なお、色変換処理後の画素データは、KCMY色空間により表される256階調の8ビ
ットKCMYデータである。
【0057】
ハーフトーン処理(S104)は、高階調数のデータを、プリンターが形成可能な階調
数のデータに変換する処理である。例えば、ハーフトーン処理により、256階調を示す
データが、2階調を示す1ビットデータや、4階調を示す2ビットデータに変換される。
ハーフトーン処理では、ディザ法・γ補正・誤差拡散法などが利用される。ハーフトーン
処理されたデータは、記録解像度(例えば720×720dpi)と同等の解像度である
。本実施形態では、ハーフトーン処理後の画像データでは、画素ごと2ビットの画素デー
タが対応しており、この画素データは各画素でのドット形成状況(大ドット・中ドット・
小ドットのいずれかが形成される、もしくはドットが形成されない)を示すデータになる
。ハーフトーン処理についての詳細は後述する。
【0058】
ラスタライズ処理(S105)は、マトリクス状に並ぶ画素データを、プリンター1に
転送すべきデータ順に、画素データごとに並び替える。例えば、各ノズル列のノズルの並
び順に応じて、画素データを並び替える。
コマンド付加処理(S106)は、ラスタライズ処理されたデータに、記録方法に応じ
たコマンドデータを付加する処理である。コマンドデータとしては、例えば媒体の搬送速
度を示す搬送データなどがある。
【0059】
これらの処理を経て生成された画像形成データは、プリンタードライバーによりプリン
ター1に送信される。
【0060】
<ハーフトーン処理の詳細>
図6は、ハーフトーン処理の流れを説明するためのフローである。本実施形態のハーフ
トーン処理はディザ法によるハーフトーン処理とする。但しこれに限らず、例えば誤差拡
散法などを用いてもよい。
【0061】
プリンタードライバーは、色変換処理(S103)後の画像データ(Y画像データ、M
画像データ、C画像データ、K画像データ)を取得する(図6のS201)。4つのY、
M、C、K画像データのいずれについても同じハーフトーン処理が行われる。よって、以
下では、説明の簡略のため、K画像データのハーフトーン処理について説明する。K画像
データが有する全ての画素データ(K画素データ)を対象として、処理対象のK画素デー
タを順次変えながら、図6のステップS202からステップS212までの処理が実行さ
れる。その結果、K画像データが有する全てのK画素データが、「ドット形成なし[00
]」、「小ドット形成[01]」、「中ドット形成[10]」、「大ドット形成[11]
」のいずれかを示すドット識別データ(2ビットデータ)に変換される。
【0062】
図7は、ドット生成率を規定するドット生成率テーブル(LUT)の一例を示す図であ
る。図の横軸は画素データの示す階調値(0〜255)、左側の縦軸はドット生成率(%
)、右側の縦軸はレベルデータ(0〜255)を示す。図中の破線で示されるプロファイ
ルSDが小ドットの生成率を示し、また、実線で示されるプロファイルMDが中ドットの
生成率を示し、一点鎖線で示されるプロファイルLDが大ドットの生成率を示している。
【0063】
なお、「ドット生成率」とは、媒体上の単位領域に属する全ての画素の示す階調値が一
定である場合、その単位領域に属する画素の中でドットが形成される画素の割合を意味す
る。例えば、単位領域が16画素×16画素から構成され、単位領域内の全ての画素デー
タの階調値が一定値であり、単位領域内にドットがn個形成されるとする。この場合、そ
の一定の階調値におけるドット生成率は、{n/(16×16)}×100(%)となる
。また、レベルデータとは、ドット生成率を256段階の数値0〜255に変換したデー
タをいう。
【0064】
つまり、ドット生成率テーブルは画像データから印刷データを作成するのに用いられる
データ変換テーブルであり、具体的には、媒体の単位領域あたりに噴出されるインクの量
を規定するテーブルである。
【0065】
ドット生成率テーブル(LUT)は記憶部であるメモリー63に記憶されている。画像
形成動作を行う際に、プリンタードライバーは、まず大ドット用のプロファイルLD(図
7の一点鎖線)から処理対象のK画素データが示す階調値に応じたレベルデータLVLを
読み取る(図6のS202)。例えば、図7に示すように、処理対象のK画素データの階
調値がgrであれば、大ドットに関するレベルデータLVLは大ドット用のプロファイル
LDに基づき1dと求められる。
【0066】
図8は、ディザ法によるドットのオン・オフ判定の様子を示す図である。本実施形態で
はディザ法によりディザマスクを用いてドットのオン・オフ判定を行う。ディザマスクは
2次元に並ぶ複数の閾値から構成され、ドットサイズ毎にディザマスクが設定されている
。プリンタードライバーは、大ドットに関するレベルデータLVLを求めた後、大ドット
用のディザマスクにおいて処理対象のK画素データに対応するディザマスクの閾値THL
を参照し、レベルデータLVLと閾値THLの比較を行う(S203)。例えば、S20
2で求められた大ドットに関するレベルデータ1dの方が閾値THLよりも大きい場合(
S203→YES)、プリンタードライバーは処理対象のK画素データを、大ドット作成
を示すドット識別データ[11]に変換する(S211)。
【0067】
一方、レベルデータLVLが閾値THL以下である場合(S203→NO)、プリンタ
ードライバーは、中ドットのレベルデータLVMを設定する(S204)。中ドットのレ
ベルデータLVMは、処理対象のK画素データが示す階調値に応じて中ドット用のプロフ
ァイルMD(図7の実線)から読み取る。例えば、K画素データの階調値がgrとすると
、レベルデータLVMは2dとして求められる。そして、プリンタードライバーは、中ド
ット用のディザマスクにおいて処理対象のK画素データに対応するディザマスクの閾値T
HMを参照し、レベルデータ2dと閾値THMの比較を行う(S205)。レベルデータ
LVMの方が閾値THMよりも大きい場合(S205→YES)、プリンタードライバー
は処理対象のK画素データを、中ドット作成を示すドット識別データ[10]に変換する
(S210)。
【0068】
レベルデータLVMが閾値THM以下である場合(S205→NO)、プリンタードラ
イバーは、小ドットのレベルデータLVSを設定する(S206)。小ドットのレベルデ
ータLVSは、処理対象のK画素データが示す階調値に応じて小ドット用のプロファイル
SD(図7の破線)から読み取る。そして、プリンタードライバーは、小ドット用のディ
ザマスクにおいて処理対象のK画素データに対応するディザマスクの閾値THSを参照し
、レベルデータLVSと閾値THSの比較を行う(S207)。レベルデータLVSの方
が閾値THSよりも大きい場合(S207→YES)、プリンタードライバーは処理対象
のK画素データを、小ドット作成を示すドット識別データ[01]に変換する(S209
)。レベルデータLVSが閾値THS以下である場合(S207→NO)、プリンタード
ライバーは処理対象のK画素データを、ドット無しを示すドット識別データ[00]に変
換する(S208)。
【0069】
こうして、処理対象のK画素データが4つのドット識別データの何れかに変更された後
(S208〜S211)、プリンタードライバーは、全てのK画素データについての処理
が終了したか否かを判定する(S212)。プリンタードライバーは、全てのK画素デー
タについての処理が終了している場合にはK画像データのハーフトーン処理を終了し(S
212→YES)、終了していない場合には処理対象を未処理のK画素データに移してス
テップS202に戻る。同様にして、他の色の画像データについてもハーフトーン処理を
実行する。
【0070】
===液体について===
本実施形態において画像を形成するのに用いられる液体について説明する。液体は、例
えばUVインクとすることができる。本実施形態で用いられるUVインクは、重合性化合
物、及び必要に応じて、光重合開始剤、その他の添加物により構成される。UVインクは
、20℃における粘度を7mPa・S以上とすることが好ましく、特に、7mPa・S以
上、25mPa・S以下とすることが好ましい。粘度が上記範囲内であるとインクの広が
りを少なくすることができ、さらに、インクの加温を少なくできる。また、UVインクは
、表面張力を35mN/m以上とすることが好ましく、35〜45mN/mとすることが
より好ましい。この範囲であると、ドットの広がり具合の揃ったドット形成をおこなうこ
とができる。
【0071】
重合性化合物は、光の照射を受けることにより重合反応が可能な化合物である。重合性
化合物の具体例としては、各種の(メタ)アクリレートモノマー、各種の(メタ)アクリ
レートオリゴマー、各種のビニルモノマー、各種のビニルエーテルモノマーなどがあげら
れる。重合性化合物の液体中の含有量は60〜95質量%が好ましい。
【0072】
重合性化合物として、特に下記一般式(1)で表されるモノマーAを用いることで硬化
性がよく低粘度のUVインクとすることができる。
CH=CR−COOR−O−CH=CH−R ・・・(1)
(式中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数2〜20の2価の有機残基で
あり、Rは水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
【0073】
上記の一般式(1)において、Rで表される炭素数2〜20の2価の有機残基として
は、炭素数2〜20の直鎖状、分枝状又は環状の置換されていてもよいアルキレン基、構
造中にエーテル結合及び/又はエステル結合による酸素原子を有する炭素数2〜20の置
換されていてもよいアルキレン基、炭素数6〜11の置換されていてもよい2価の芳香族
基が好適である。これらの中でも、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、
及びブチレン基などの炭素数2〜6のアルキレン基、オキシエチレン基、オキシn−プロ
ピレン基、オキシイソプロピレン基、及びオキシブチレン基などの構造中にエーテル結合
による酸素原子を有する炭素数2〜9のアルキレン基が好適に用いられる。
【0074】
上記の一般式(1)において、Rで表される炭素数1〜11の1価の有機残基として
は、炭素数1〜10の直鎖状、分枝状又は環状の置換されていてもよいアルキル基、炭素
数6〜11の置換されていてもよい芳香族基が好適である。これらの中でも、メチル基又
はエチル基である炭素数1〜2のアルキル基、フェニル基及びベンジル基などの炭素数6
〜8の芳香族基が好適に用いられる。
【0075】
上記の各有機残基が置換されていてもよい基である場合、その置換基は、炭素原子を含
む基及び炭素原子を含まない基に分けられる。まず、上記置換基が炭素原子を含む基であ
る場合、当該炭素原子は有機残基の炭素数にカウントされる。炭素原子を含む基として、
以下に限定されないが、例えばカルボキシル基、アルコキシ基等が挙げられる。次に、炭
素原子を含まない基として、以下に限定されないが、例えば水酸基、ハロ基が挙げられる
。モノマーAの液体中の含有量は特に限られないが、10質量%以上が好ましく、10質
量%〜70質量%が特に好ましい。
【0076】
UVインクは必要に応じて光重合開始剤を含んでいてもよい。光重合開始剤は、光の照
射を受けて重合性化合物の重合を効率よく開始させる機能を有する化合物である。光開始
剤の具体例としては、アルキルフェノン系開始剤、アシルフォスフィン系開始剤、チタノ
セン系開始剤、チオキサントン系開始剤などがあげられる。光重合開始剤のUVインク中
の含有量は5〜15質量%が好ましい。UVインクはさらに必要に応じてその他の添加剤
として、溶剤、界面活性剤、重合禁止剤、重合促進剤、顔料や染料などの色材、などを含
んでいてもよい。
【0077】
===実施形態===
<インクの説明>
表1に、以下の説明で使用される4種類のUVインク(インク番号1〜4)の組成成分
を示す。なお、インク1〜4はシアンまたはマゼンタの顔料を含むカラーUVインクであ
る。以下の実施形態において、インク1〜4のうち顔料としてシアンを含むインクをそれ
ぞれ1C,2C,3C,4Cと表記し、顔料としてマゼンタを含むインクをそれぞれ1M
,2M,3M,4Mと表記することとする。また、UVインクはシアンやマゼンタ以外の
顔料(例えばイエロー)を含むものであってもよい。
【0078】
なお、表1において、重合性化合物VEEAが前述のモノマーAに相当する。
【表1】

【0079】
・VEEA:アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(日本触媒社製)
・DEGDA:ジエチレングリコールジアクリレート(大阪有機化学工業社製)
・TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学社製)
・IBXA:イソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業社製)
・2−MTA:2−メトキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業社製)
・EBECRYL 600:ビスフェノールAタイプエポキシアクリレート(ダイセルサ
イテック社製)
・819:IRGACURE 819(BASF社製)
・TPO:DAROCUR TPO(BASF社製)
・DETX−S:KAYACURE DETX−S(日本化薬社製)
・顔料:PIGMENT BLUE 15:4(DIC社製)
・レベリング剤:BYK−UV3500(BYK社製)
・重合禁止剤:MEHQ(関東化学社製)
【0080】
<インクの特性評価>
また、インクの特性に関して、以下に説明する粘度及び硬化性について評価を行なう。
インク1〜4についての評価内容は表1に示される。
【0081】
(1)粘度評価
レオメーター(MCR−300、Physica社製)を用いて20℃におけるインク
の粘度を測定する。評価基準は以下の通りである。
1:7未満(mPa・s)
2:7以上15未満 (mPa・s)
3:15以上30以下(mPa・s)
4:30超(mPa・s)
【0082】
(2)硬化性評価
「硬化性」は、形成された画像の表面をユーザー等が触れても画像が乱れない程度(こ
の状態を「タックフリー」とも言う)にインクドットが硬化しているかを示す。硬化性の
評価は、720×720dpiの解像度で、膜厚10μm(硬化後の厚み)、1cm×1
cmの領域にベタ印刷を行い、印刷したインクにUV照射を行い、表面を綿棒(例えば、
Johnson & Johnson社製のジョンソン綿棒)で擦って、タックフリー時(綿棒にインクが
付着せず、媒体上に形成されたインク硬化物に擦り傷が付かない状態)に達するまでに照
射した照射エネルギーで判断する。擦る回数は往復10回とし、擦る強さは100g荷重
とする。照射は、発光ピーク波長395nmのLEDを用い、照射強度800mW/cm
で行い、照射時間を変更することで行う。評価基準は以下の通りである。
A:タックフリー時の積算UV照射エネルギー≦200mJ/cm以下
B:200mJ/cm<タックフリー時の積算UV照射エネルギー
【0083】
===形成される画像の評価===
画像を形成するUVインクドットについて、印刷条件を変えながら各種評価を行なうこ
とで、良好な画像を形成することが可能な条件の検証を行なう。具体的には、使用される
インク(インク1〜4)毎にテストパターンを形成し、「硬化性」、「混色性」、「濃度
」の3項目について、それぞれ評価を行なう。テストパターンは上述のシアンのインク1
C〜4C(もしくはマゼンタのインク1M〜4M)を用いて、720×720dpiの解
像度で、膜厚10μm(最大値)、1cm×1cmの領域にベタ印刷を行うことで形成さ
れる。また、インクジェットプリンターのヘッドに加温機構を取り付けて、インクの粘度
が高いインクを使用する場合はインクを加温して、インクの粘度をおよそ10mPa・s
として吐出を行なう。また、インクジェットプリンターへ搬入した記録媒体への加温は行
なわない。また、インクジェットプリンターのキャリッジ部に上記粘度評価で用いたLE
Dと同じものを取り付け、照射エネルギーは各インクがタックフリーになるエネルギー量
とした。
以下、各評価項目について説明する。
【0084】
(1)混色性について
「混色性」は、形成された画像で、色の異なるインクドット同士が滲んで混色していな
いかを示す。
まず、混色の発生原理について説明する。混色は、色の異なるインクドット同士が隣り
合って存在する場合に、該ドットが硬化する前に(UV照射を受ける前に)お互いに接触
することによって混ざり合い、色が滲むことによって生じる。特に、インク噴出量が多く
、大きなドットが形成される場合には隣り合うドットが接触しやすくなるため、混色が発
生しやすくなる。また、インク自体の粘度にも影響される。すなわち、粘度の高いインク
(例えばインク1)ではドットが球状を維持しやすい。そのため、ドットの直径は小さく
保たれる。これに対して、粘度の低いインク(例えばインク4)ではドットが潰れて広が
り、円盤形状になりやすく、ドットの直径も大きくなる。色の異なるインクドット同士が
隣り合う場合、隣り合うインクドットの直径が大きいほど、ドット同士が接触しやすくな
り、混色が生じやすい。
【0085】
本実施形態では、シアンのカラーインクで形成されたテストパターンに隣接するように
、マゼンタのカラーインクでテストパターンを形成する。そして、両テストパターンの境
界部分において混色が発生しているか否かを肉眼で確認する。なお、隣り合うテストパタ
ーンは同種類のインクを用いて形成される。たとえば、インク1Cのテストパターンに対
してはインク1Mのテストパターンが隣り合って形成され、インク1Cのテストパターン
とインク2M〜4Mのテストパターンが隣り合って形成されることはない。実際の印刷時
においては同等の成分のカラーインクを用いて画像が形成されるため、異なる成分のカラ
ーインクドットが隣り合って形成される可能性は極めて低いからである。評価基準は以下
の通りである。
○:境界部分において混色が確認されない
×:境界部分において混色が確認される
【0086】
(2)濃度について
原画像データで示された色の濃度が、データの指示通りに再現されているかを示す。濃
度の評価は、測色器(例えばSpectrolino, DretagMacbeth社製)を用いてテストパターン
の光学濃度(OD値)を測定することによって行なう。光学濃度は、光がどれだけ透過ま
たは反射しないかの度合いを表したもので、光の透過率100%のとき光学濃度はゼロと
なり、透過率が小さくなるほど光学濃度は大きくなる。
【0087】
本実施形態では、インク1〜4毎に、あらかじめ基準となる光学濃度(基準濃度)を測
定しておく。基準濃度は画像形成装置に入力した画像データにより媒体上に再現すべき画
像の濃度である。そして、条件(インク噴出量、UV照射方法等)を変更して画像を形成
した際に測定された光学濃度との差を比較することで濃度評価を行う。評価基準は以下の
通りである。
AA:基準濃度と測定濃度との差≦0.1
A:0.1<基準濃度と測定濃度との差≦0.3
B:0.3<基準濃度と測定濃度との差
【0088】
===基準例===
はじめに、基準例として、インク1〜4によって上述のテストパターンを形成させたと
きの評価例について説明する。なお、以下の例では、媒体としてPETフィルム(例えば
、パナソニック社製 ルミラー125E20)を使用している。
【0089】
表2に、基準例におけるテストパターン形成条件、及び各種評価のデータを示す。
【表2】

【0090】
表2で、「UVインク硬化方法1」とは、ヘッド31が主走査方向を移動しながらUV
インクドットを噴出する際に、同じ走査において照射部41からUVを照射してインクド
ットを硬化させるようなインク硬化方法である。すなわち、UVインク硬化方法1ではイ
ンクドット噴出直後にUVが照射される。なお、基準例におけるUV照射時のLED波長
ピークは前述のとおり395nmとする。また、噴出されたインクが媒体に着弾してから
UVの照射が開始されるまでの時間は約0.3秒である。
「使用LUT1」は、ハーフトーン処理において基準として用いられるドット生成率テ
ーブルであり、本基準例においては、前述の図7で示されるLUTを用いる。
【0091】
基準例1〜4のいずれについても混色性の評価は○であり、混色は生じない。また、基
準例1〜4について測定された光学濃度の値は、それぞれインク1〜4の基準濃度となる

【0092】
===実施例===
本実施形態では、ヘッド31が主走査方向を一方側から他方側へ移動する際(往動とす
る)にUVインクドットを噴出する。そして、ヘッド31が主走査方向を他方側から一方
側へ移動する際(復動とする)にUVを照射することで往動時に形成されたUVインクド
ットを硬化させる。
【0093】
表3に、本実施形態の方法で、使用インク及び印刷条件を変更しながら画像(テストパ
ターン)を形成させた場合の、各種評価についてのデータを示す。
【表3】

【0094】
表3で、「UVインク硬化方法2」とは、照射部41がキャリッジ21の主走査方向の
一の方向側に搭載されている場合において、キャリッジ21が主走査方向を一の方向に移
動する主走査の際(往動時)にヘッド31からUVインクドットを噴出する。この際、U
Vは照射されない。そして、当該主走査より後に、キャリッジ21が主走査方向を他の方
向に移動する際(復動時)に照射部41からUVを照射してインクドットを硬化させるよ
うなインク硬化方法である。言い換えると、往動時においてインクドットは噴出されるが
UVは照射されず、復動時においてUVが照射されることで、往動時に形成されたインク
ドットを硬化させる。すなわち、インク硬化方法2ではインクドットが噴出されてから所
定時間の経過後にUVが照射され、ドットが硬化される。
【0095】
図9A及び図9Bに、UVインク硬化方法2におけるドット形成動作を説明する図を示
す。図9Aが往動時の動作を表し、図9Bが復動時の動作を表す。
【0096】
往動時(図9A)において、コントローラー60は、ヘッド31(キャリッジ21)を
主走査方向の左側から右側(一の方向とする)へ移動させつつ、各ノズル列から媒体に所
定量のUVインクドットを噴出する。これにより、主走査方向に並ぶドットラインが形成
される。このとき、照射部41はUVを照射しないので、該ドットラインは未硬化状態で
ある。
【0097】
次に、復動時(図9B)において、ヘッド31(キャリッジ21)を主走査方向の右側
から左側(他の方向とする)へ移動させつつ、照射部41からUVを照射して、往動時に
形成されたドットラインを硬化させる。これにより、複数のドットラインからなる画像が
形成される。
【0098】
なお、復動時においてヘッド31の各ノズル列からインクを噴出しつつ、照射部41か
らUVを照射させるようにしてもよい。つまり、ヘッド31が主走査方向を往復運動しな
がらドットラインが形成されるようにすることも可能である。この場合、往動から復動に
移行する前に、媒体を搬送方向に所定量だけ搬送させる必要がある(前述の搬送処理)。
【0099】
また、本実施形態において、ヘッド31が主走査方向の一の方向に移動(走査)を開始
してから、他の方向への移動(走査)を終えるまでの時間は約7秒である。つまり、キャリ
ッジ21が主走査方向を一往復するのに7秒を要する。
【0100】
本実施形態では、往動時に形成されたドットが復動時にUV照射を受けて硬化するまで
に要する時間が、前述の基準例の場合よりも長くなる。そのため、往動時に噴出されるイ
ンクドットの量が多いと、硬化する前に濡れ広がってしまい、未硬化ドット同士で混色等
が生じる恐れがある。そこで、往動時において単位領域(単位面積)あたりに噴出される
インク量を小さくすることで、そのような混色を抑制する。言い換えると、プリンター1
に入力した画像データの所定のデータに対応して噴出されるUVインクの量は、UVイン
ク硬化方法2の場合よりもUVインク硬化方法1の場合の方が多くなる。詳細は後述する

【0101】
表3の「使用LUT」に示されるLUT2〜4は、LUT1(基準例で使用したLUT
)よりもそれぞれドット生成率が少なくなるように変更したドット生成率テーブルである
。図10に、LUT1とLUT2との違いを説明する図を示す。図の点線で示されるのが
LUT1におけるドット発生率を表し、実線で示されるのがLUT2におけるドット発生
率を表わす。図のように、同じ階調値を示すデータの場合、大ドット(LD)・中ドット
(MD)・小ドット(SD)の全てのドット生成率について、LUT1よりもLUT2の
方が低くなっている。すなわち、同じ印刷データに基づいて印刷を行う場合、LUT1を
用いた時よりもLUT2を用いた時の方が、媒体の単位面積当たりに打ち込まれるインク
量が少なくなる。
【0102】
同様に、LUT3はLUT2よりもドット生成率が小さく設定され、LUT4はLUT
3よりもドット生成率が小さく設定されている。すなわち、番号が大きいLUTほど、ド
ット生成率が低くなる。
【0103】
UVインク硬化方法2では、UVインクを噴出する際に、前述のUVインク硬化方法1
とは異なるデータ変換テーブルを用いて印刷データを作成する。そして、UVインク硬化
方法1によって噴出されるUVインクの量よりも少ない量のUVインクを噴出させること
により、往動時に形成されるドットの生成率が少なくなるように調整する。
【0104】
<各実施例の結果>
実施例1では、インク1(表1参照)を使用し、LUT2を用いてテストパターンを形
成させている。LUT1よりも単位領域あたりのインク打ち込み量が少ないLUT2を使
用しているため、UVインク硬化方法2でも良好な混色試験結果(○)を得ることができ
る。上述のように、UVインク硬化方法2では往動時にドットが形成されてから復動時に
UV照射を受けて硬化されるまでに所定の時間を要する。もし、LUT1を用いて通常の
インク打ち込み量でドットが形成されると、硬化されるまでの間に該ドットが大量に濡れ
広がって、混色が生じるおそれがある。しかし、単位領域あたりのインク打ち込み量の少
ないLUT2を用いることで、往動時において発生するドットが少なくなるため、該ドッ
トが硬化前に大量に濡れ広がることを抑制し、混色を抑えることができる。
【0105】
また、基準例1と比較して、濃度試験も良好な結果(AA)となる。LUT2を使用し
て単位領域あたりのインク打ち込み量を減らすことにより、画像表面上に形成されるドッ
トの絶対数は少なくなるが、基準濃度(基準例1の濃度)と同程度の発色は得られること
を示している。
【0106】
一方、実施例1ではインク1を用いているため、表1に示されるように硬化性試験の結
果がBである。したがって、ドットを十分に硬化させるためには、UV照射出力を高くす
るか、UV照射時間を長くする必要がある。前者の場合、照射部41の光源を高性能なも
のに変更したり、消費電力を高くしたりする等の対策が必要となり、コストが高くなる。
後者の場合、照射時間を稼ぐためにキャリッジ21の移動速度を遅くする必要が生じ、印
刷速度が遅くなる。
【0107】
このように、実施例1では、硬化性が劣っている。つまり、本実施形態において、VE
EAが全く含まれないUVインクは、硬化性の点で不利である。
【0108】
実施例2は、インク2を使用し、LUT2を用いてテストパターンを形成させる例であ
る。実施例1と同様、単位領域あたりのインク打ち込み量の少ないLUT2を使用してい
るため、UVインク硬化方法2でも良好な混色試験結果(○)を得ることができる。また
、基準例2と比較して、濃度試験も良好な結果(AA)となる。
また、実施例2では、実施例1のインク1とは異なり、VEEAを10%含有するイン
ク2を使用しているため、硬化性試験も良好な結果(A)が得られる(表1参照)。
【0109】
実施例3は、インク3を使用し、LUT3を用いてテストパターンを形成させる例であ
る。インク3はVEEAを70%含有することから、前述したように硬化性が高くなり、
硬化性試験については良好な結果(A)が得られる。一方で、インク3ではインクの粘度
が低くなる(表1参照)。インクの粘度が低い場合、UV照射を受けて硬化するまでの間
にインクドットが潰れて球状の形状を維持できなくなるため、濡れ広がりやすくなる。そ
の結果混色を引き起こし、画質を悪化させるおそれがある。
このような濡れ広がりを抑制するために、実施例3では、実施例2の場合よりもさらに
単位領域あたりのインク打ち込み量の少ないLUT3を用いて、ドット発生量を調整する
。使用LUTを適切に選択することにより、インクドットの濡れ広がりを抑制し、混色試
験(○)、および、濃度試験(A)では、共に良好な結果が得られる。
【0110】
実施例4は、インク4を使用し、LUT3を用いてテストパターンを形成させる例であ
る。インク4はインク1〜3と比較してインク組成が異なり、表1に示されるように2−
MTAを60質量%含むことからインクの粘度が低くなり、20℃におけるインク粘度は
7MPa・s未満である。この結果、濃度試験については概ね良好な結果(A)が得られ
るが、混色試験の結果が×になる。これは、インクの粘度が低すぎて、ドットの硬化前に
潰れて濡れ広がりやすくなるので、シアンインクドットとマゼンタインクドットとの間で
混色が発生することによる。
したがって、インク4を使用する場合には、LUT3ではインク打ち込み量が多すぎる
ということが言える。
【0111】
そこで、実施例5では、インク4を使用し、LUT3よりもさらに単位領域あたりのイ
ンク打ち込み量の少ないLUT4を用いてテストパターンを形成させる。実施例5では混
色試験については良好な評価結果(○)が得られる。LUT4を用いることにより、混色
が生じるほどの量のドットが媒体上に形成されなくなるからである。
しかし、実施例5では、濃度試験の結果がBになり、形成される画像の濃度が大きく悪
化する。混色が生じない程度までインク打ち込み量を減らすと、逆に濃度が低下してしま
い、画質を満足させることができないことがわかる。
すなわち、本実施形態において、20℃におけるインク粘度を7mPa・S未満とする
と、使用LUTを適当に選択したとしても、混色性および濃度を同時に満足させる画像を
形成することはできない。
【0112】
実施例6は、インク2を使用して、LUT1を用いてテストパターンを形成させる例で
ある。使用LUT以外の条件は実施例2と同様である。前述のように、インク2は粘度が
適当であり、VEEA含有率も適当であるため、濃度試験、および、硬化性試験について
良好な評価が得られる(表1及び表2参照)。しかし、実施例6では混色試験の評価が×
になる。実施例2の場合よりもインク打ち込み量の大きいLUT1を用いているため、イ
ンクドット量が多くなりすぎ、UVインク硬化方法2においては該インクドットが硬化す
る前に濡れ広がって混色を生じてしまうことがわかる。
つまり、粘度やVEEA含有率が適当なUVインクを用いても、使用LUTの選択を誤
ると、良好な画質の画像は得られない。
【0113】
以上のことから、本実施形態の画像形成方法(上述のUVインク硬化方法2)では、2
0℃におけるインク粘度が7以上(mPa・S)のUVインクを用いて印刷を行うことが
好ましい。また、粘度の異なる複数種のインクのうち、当該インクの粘度に応じて適切な
量のドットを生成するLUTを選択し、使用する。具体的には、粘度が低いほどドット生
成率が小さくなるようなLUTを選択する。これにより、粘度が低いインクを噴出する場
合は、粘度が高いインクを噴出する場合よりも、単位領域あたりに噴出されるインクの量
が少なくなり、混色性・濃度・硬化性の面において良好な画像を形成することができる。
【0114】
なお、粘度が高いインクを使用する際は、ヘッド内のインクを加温してインクの粘度を
低下させ吐出させているが、媒体は加温していないため、ヘッドから噴出した後のインク
は温度が低下して常温におけるインクの粘度付近に下がる。また、20℃におけるインク
粘度が30mPa・Sを越えるインクの場合、インクの粘度を下げる為に加温温度をより
高くする必要がありプリンターの省電力化や耐久性の点で好ましくない。
【0115】
===その他の実施形態===
一実施形態としてのプリンター等を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容
易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、
その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含ま
れることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれる
ものである。
【0116】
<画像形成装置について>
前述の各実施形態では、画像形成装置の一例としてプリンターが説明されていたが、こ
れに限られるものではない。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置
、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造型機、液体気化装置、有機EL製造装置(特
に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置など
のインクジェット技術を応用した各種の画像形成装置に、本実施形態と同様の技術を適用
してもよい。
【0117】
<液体の噴出量について>
前述の各実施形態において、画像形成装置は、入力した画像データからデータ変換テー
ブルを用いて印刷データを作成し、作成した印刷データを用いて液体の噴出を行なうこと
で、画像データに対応して液体を噴出させる。前述の実施形態では、ハーフトーン処理に
おいて使用するLUTを変更することにより、画像データの所定のデータに対応して1画
素に噴出される液体の量が、例えば、第1の液体硬化方法の際は中ドットであり、第2の
液体硬化方法の際は大ドットとし、第1の硬化方法よりも第2の硬化方法のほうが、記録
媒体の単位領域あたりに噴出される液体の合計量を多くなるようにしていた。第1の液体
硬化方法の際よりも第2の液体噴出方法の際のほうが液体噴出量が多いという場合の液体
の噴出量とは、記録媒体の所定の単位領域あたりに噴出される液体の合計量とする。例え
ば、10×10画素からなる単位領域に含まれる各画素に対応する画像データがそれぞれ
所定の値であった場合に、上記画像データに対応して上記10×10画素からなる単位領
域に噴出される液体の合計量が、第1の液体硬化方法よりも第2の液体硬化方法のほうが
多くなるとする。なお、1画素に対して噴出される液体の量は、3種類の場合に限らず1
種類でも4種類以上でも良く、1画素に対して噴出する液体の量がゼロ(液体を噴出しな
い)である画素があってもよい。また、単位領域あたりに噴出されるインク量を少なくす
る工程は上記の例に限らず、画像データから最終的にドットを噴出する印刷データを生成
するいずれの工程で行われてもよい。例えば、RGBデータをKCMY色空間のデータに
変換する色変換処理において行ってもよい。同様に、画像データから印刷データを作成す
る際に用いるデータ変換テーブルは、ハーフトーン処理において使用するLUTに限られ
ず、画像データから印刷データを作成するまでの何れかの工程で用いるテーブルであって
もよい。
【0118】
<インクについて>
前述の実施形態では、紫外線(UV)の照射を受けることによって硬化するインク(U
Vインク)をノズルから吐出していた。しかし、噴射する液体は、このようなインクに限
られるものではなく、UV以外の他の電磁波の照射を受けることによって硬化するもので
あってもよい。
【0119】
<ノズル列について>
前述の実施形態では、KCMYの4色、及び、クリアインクを使用して画像を形成する
例が説明されていたが、これに限られるものではない。例えば、ライトシアン、ライトマ
ゼンタ、ホワイト等、KCMY以外の色のインクを用いて画像の記録を行ってもよい。
【0120】
また、ヘッド部のノズル列の配列順も任意である。例えば、KとCのノズル列の順番が
入れ替わっていてもよいし、Kインクのノズル列数が他のインクのノズル列数より多い構
成などであってもよい。
【0121】
<ピエゾ素子について>
前述の各実施形態では、液体を噴出させるための動作を行う素子としてピエゾ素子PZ
Tを例示したが、他の素子であってもよい。例えば、発熱素子や静電アクチュエーターを
用いてもよい。
【0122】
<プリンタードライバーについて>
前述の各実施形態では、プリンタードライバーの処理はコンピューター110(PC)
によって行われていたが、プリンタードライバーをコントローラー60にインストールし
て、プリンター自体でプリンタードライバーの処理を行ってもよい。
【符号の説明】
【0123】
1 プリンター
10 搬送ユニット、11 媒体供給ローラー、12 搬送モーター、
13 搬送ローラー、14 プラテン、15 媒体排出ローラー、
20 キャリッジユニット、21 キャリッジ、22 キャリッジモーター、
30 ヘッドユニット、31 ヘッド、311 ケース、312 流路ユニット、
312a 流路形成板、312b 弾性板、312c ノズルプレート、
312d 圧力室、312e ノズル連通口、312f 共通インク室、
312g インク供給路、312h アイランド部、312i 弾性膜、
40 照射ユニット、41照射部、
50 検出器群、51 リニア式エンコーダ、52 ロータリー式エンコーダ、
53 紙検出センサ、54 光学センサ、
60 コントローラー、61 インターフェース部、62 CPU、63 メモリー、
64 ユニット制御回路、
110 コンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)光の照射を受けることにより硬化する液体をノズルから媒体へ噴出するヘッド部と

(B)前記ヘッド部を搭載し副走査方向と交差する主走査方向に移動するキャリッジ部と

(C)前記キャリッジ部の前記ヘッドの前記主走査方向に設けられ、前記光を照射する照
射部と、
(D)前記キャリッジ部を移動させつつ、前記ヘッド部から前記液体を噴出させ、前記照
射部から前記光を照射させる制御部であって、
前記キャリッジ部を前記主走査方向に移動させながら前記ヘッド部から前記液体を
噴出させる主走査の際に、噴出させた液体へ当該主走査において前記照射部から光を照射
せずに当該主走査より後の前記キャリッジ部の移動において前記照射部から光を照射させ
る第1の液体硬化方法と、
前記キャリッジ部を前記主走査方向に移動させながら前記ヘッド部から前記液体を
噴出させる主走査の際に、噴出させた液体へ当該主走査において前記照射部から光を照射
させる第2の液体硬化方法と、
を行う制御部と、
を備え、前記第1の液体硬化方法の際に噴出させる液体の量よりも前記第2の液体硬化
方法の際に噴出させる液体の量のほうが多い、画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記画像形成装置へ入力した画像データの所定のデータに対応して噴出させる前記液体
の噴出量が、前記第1の液体硬化方法の際よりも前記第2の液体硬化方法の際のほうが多
い、画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像形成装置であって、
印刷データの作成に用いるデータ変換テーブルを記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、
前記画像形成装置へ入力した画像データから前記データ変換テーブルを用いて印刷デー
タを作成し、作成した前記印刷データを用いて画像形成を行い、
前記液体を噴出する際に、前記第1の液体硬化方法と前記第2の液体硬化方法とで異な
るデータ変換テーブルを用いて印刷データを作成し、
前記第1の液体硬化方法の際よりも前記第2の液体硬化方法の際のほうが多い量の液体
を噴出させる、画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成装置において、前記データ変換テーブルは、媒体の単位領域
あたりに噴出されるインクの量を規定するテーブルである、画像形成装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成装置であって、前記液体は、20℃にお
ける粘度が7mPa・S以上である、画像形成装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像形成装置であって、
前記液体は、下記、一般式(1)
CH=CR−COOR−O−CH=CH−R ・・・(1)
(式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数2〜20の2価の有機残基
であり、Rは炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
で表される成分を含有する、画像形成装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像形成装置であって、
粘度の異なる複数種の液体を噴出し、
前記制御部は、
前記第1の液体硬化方法の際に、前記複数種の液体のうちの粘度が低い液体を噴出する
場合は、粘度が高い液体を噴出する場合よりも、
前記ヘッド部から噴出される前記液体の量を少なくする、画像形成装置。
【請求項8】
(A)副走査方向と交差する主走査方向にキャリッジ部を移動させながら、前記キャリッ
ジ部に搭載されたヘッド部から光の照射を受けることにより硬化する液体を媒体へノズル
噴出させる主走査の際に、
噴出させた液体へ当該主走査において前記照射部から前記光を照射させずに当該主走査
より後の前記キャリッジ部の移動において前記照射部から前記光を照射させることと、
(B)前記キャリッジ部を前記主走査の方向に移動させながら前記ヘッド部から前記液体
を媒体へ噴出させる主走査の際に、噴出させた液体へ当該主走査において前記照射部から
前記光を照射させることと、
を有し、
(C)前記主走査(A)の際よりも、前記主走査(B)のほうが、液体の噴出の量が多い
、画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−232540(P2012−232540A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104096(P2011−104096)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】