説明

画像形成装置及び記録材

【課題】 画像が形成された記録材にしわが発生する兆候をより早くより確実に検知する。
【解決手段】 画像形成装置100は、例えばパーソナルコンピュータやサーバマシンなどのホスト装置から送信されてきたりくる画像データや、画像読取ユニットによって生成された画像データに基づいて可視画像を用紙に形成する。この際、画像形成装置100は、その画像データの内容を参照して、画像の規則性を特定しておく。そして、画像形成装置100は、用紙に対する定着処理後にセンサ45によってその用紙上の可視画像を読み取り、可視画像の規則性に乱れがあるか否かを判断する。乱れがあると判断された場合には、用紙におけるしわの発生に関連した情報を出力する。よって、画質に重大な影響を及ぼすようなしわが発生する前に、しわ発生に関連する情報をユーザに伝えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像が形成された記録材にしわが発生する兆候を検知するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
カラープリンタやカラー複写機等の電子写真方式の画像形成装置は、露光、現像、転写、定着、という幾つかの工程を経ることによって用紙(記録材)にトナー像を形成する。これら各工程のうち定着を行う定着装置は、用紙の搬送路を挟んで対向するように配置された一対のロール部材を備えている。そして、これらのロール部材が互いに接触する領域(ニップ領域)を用紙が通過する際に、その用紙に熱と圧力を加えることによってトナーを用紙に定着させる。
【0003】
ところが、ニップ領域に突入する際の用紙の突入姿勢が悪かったり、用紙における熱や含水率の分布が不均一であったりすると、用紙にしわが発生してしまうことが知られている。このようなしわが連続して発生するようになると、用紙に形成されたトナー像が歪んでしまって画質が極度に劣化してしまうから、画像形成装置はそれ以上の使用に堪えることはできない。このような場合には、ユーザは直ちに、画像形成装置のメンテナンスを専門に行う者に連絡し、装置の修理や調整を依頼する必要がある。
【0004】
そこで、用紙に発生したしわを検知するための技術が従来から幾つか提案されている。その代表的なものに、例えば特許文献1〜3に記載された技術がある。特許文献1に記載された技術は、しわが発生すると用紙の一部が折れ曲がって用紙の厚みが変化する現象に着目したものである。具体的には、1対の搬送ロールの軸が変位した量を監視しておき、その変位量が極端に大きくなった場合にはしわが発生したと判断する、という仕組みである。また、特許文献2に記載された技術も、特許文献1と同様にしわが発生すると用紙の厚みが変化することに着目し、定着ロールの軸の両端の変位量をセンサで検出してしわの発生を検知するというものである。そして、特許文献3に記載された技術は、しわが発生すると用紙面が凸凹形状になることに着目したものであり、搬送路面から用紙までの距離の変位量(つまり用紙の凸凹形状)をセンサで検出してしわの発生を検知する、という構成を採っている。
【0005】
【特許文献1】特開平5−24713号公報
【特許文献2】特開平9−269697号公報
【特許文献3】特開平9−202519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜3に記載された技術(以下、従来技術という)は、用紙の一部が折れ曲がったり用紙面が凸凹形状になったりする等の比較的明瞭なしわが発生した場合には、それを検知することができる。ただし、そのようなしわが発生したことは、そもそも画質を見れば一目瞭然であるから、ユーザは従来技術に頼らずともしわの存在を自ら認知することができるはずである。要するに、これらの従来技術は、しわが発生したことをユーザに直ちに警告することによって、例えばユーザがしわの発生を見過ごしてしまった状態で連続何十枚〜何百枚もの多数枚の画像形成処理を行ってしまうような無駄を防止する、という効果を奏するにすぎない。
【0007】
本願発明者がしわの発生するメカニズムについて考察したところ、しわは唐突に発生するのではなく、最初は人間の目では知覚できない程度の兆候が徐々に現れ、それから時間が経過するに従って段々と大きなしわが発生することが解明されている。このようなしわ発生の兆候が現れた段階でそれを検知することが出来れば、その時点ではほとんど視認できない程度でしか画質が劣化していないはずだから、ユーザは当分の間は画像形成装置を使用し続けることができる。また、その使用期間中に時間的な余裕をもって装置の修理や調整等を依頼することもできる。即ち、しわが発生する兆候をいち早く察知して適切な対応を採ったほうがユーザにとっては利便性が高いと言える。
【0008】
本発明はこのような背景に鑑みてなされたものであり、その目的は、画像が形成される記録材にしわが発生する兆候をより早くより確実に検知することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、画像データによって表される画像に或る規則性が存在する場合に、その規則性を特定する特定手段と、前記画像データに基づいて可視画像を像担持体に形成し、該可視画像を記録材に転写する画像形成手段と、前記記録材の搬送路を挟んで対向する一対の部材が接触するニップ領域において、前記記録材を加熱及び加圧することによって前記可視画像を前記記録材に定着させる定着手段と、前記定着手段による定着処理を経た記録材から前記可視画像を読み取る読取手段と、前記読取手段によって読み取られた前記可視画像に、前記特定手段によって特定された規則性が存在するか否かを判断する判断手段と、前記判断手段によって前記規則性が存在しないと判断された場合には、前記記録材におけるしわの発生に関連した情報を出力する情報出力手段とを備えた画像形成装置を提供する。
【0010】
記録材にしわが発生し始める前には、記録材が不均一に延びたり縮んだりしてくる。例えそれが微少な伸び縮みであっても、記録材に形成されている画像の規則性に影響を及ぼすことになる。本発明に係る画像形成装置によれば、特定手段が、画像データによって表される画像から或る規則性を特定し、読取手段が定着処理を経た記録材から可視画像を読み取り、判断手段がその可視画像に前記規則性が存在するか否かを判断し、規則性が存在していない場合には、情報出力手段が記録材におけるしわの発生に関連した情報を出力する。よって、画質に重大な影響を及ぼすようなしわが発生する前に、しわ発生に関連する情報を伝えることができる。また、上記の画像データは、例えばパーソナルコンピュータやサーバマシンなどのホスト装置から送信されてくる画像データや、画像読取ユニットによって生成された画像データであり、要するに、ユーザが所望する任意の画像を表す画像データである。このような画像データを用いて上記のような処理を行うので、しわ発生の兆候を検知するためだけに専用の画像をその都度形成するような手間や時間を省くことができる。なお、本発明において、「可視画像」とは、その可視画像を形成する可視現像剤が可視光領域における特定の波長の吸収に起因する発色性を有するために、可視光領域において目視により認識できる画像である。
【0011】
本発明の好ましい態様においては、主走査方向に延びる複数の線分画像が副走査方向に向かって一定の距離間隔で配置されるような画像が前記画像データによって表される画像に含まれている場合、前記特定手段は、前記一定の距離間隔を求めることで前記規則性を特定し、前記読取手段は、副走査方向に搬送される前記記録材から複数の前記線分画像を順次読み取り、前記読取手段が、前記一定の距離間隔を前記記録材の搬送速度で除算して求めた一定の時間間隔で、各々の前記線分画像を読み取った場合には、前記判断手段は前記規則性が存在すると判断する一方、前記読取手段が前記一定の時間間隔で各々の前記線分画像を読み取ることができなかった場合には、前記判断手段は前記規則性が存在しないと判断する。このようにすれば、判断手段は、読取手段によって複数の線分画像が一定の時間間隔で読み取られたか否かに基づいて規則性の有無を判断することができる。即ち、比較的簡易な構成によって可視画像の規則性の有無を判断することが可能となる。
【0012】
さらに、本発明においては、前記読取手段によって各々の前記線分画像が読み取られた時間間隔と、前記一定の時間間隔との時間差を求め、その時間差に対し前記記録材の搬送速度を乗算して該記録材の伸縮量を算出する算出手段を備え、前記情報出力手段は、前記算出手段によって算出された伸縮量に応じた内容の情報を出力する。記録材の伸縮量は、しわが発生する兆候の度合いを示すものであるから、その度合いに応じて、例えばしわが発生する可能性が大きいとか、しわが発生するまでにはまだ時間的な余裕があるといったような情報を出力することが可能となる。
【0013】
また、本発明の別の好ましい態様においては、前記情報出力手段は、前記記録材にしわが発生する可能性があること乃至前記記録材にしわが発生し始めていることを表すメッセージを出力してもよい。このようにすれば、画像形成装置のユーザは、記録材にしわが発生する可能性があること乃至記録材にしわが発生し始めていることを簡単に知ることができ、直ちに適切な対応をとることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
まず、本発明の実施形態の説明に用いる主要な用語について定義しておく。
「主走査方向」とは、画像形成装置においてトナー像をライン単位で像担持体に形成する際のそのラインが延びる方向を意味しており、像担持体の回転軸方向と一致する。「副走査方向」とは、像担持体表面が移動(回転)する方向であり、用紙の搬送方向と一致する。これら主走査方向と副走査方向とは互いに直交する関係にある。
次に、しわの方向について定義する。「記録材(用紙)の副走査方向と略平行な方向に延びるしわ」とは、図1の模式図に示したような副走査方向mに沿って発生するしわWmを指している。このような方向のしわWmが発生するのは、用紙Pが主走査方向に伸縮するからである。図1では、主走査方向の長さDmが主走査方向nにΔdだけ縮んだり伸びたりする様子を図示している。これに対し、「記録材(用紙)の主走査方向と略平行な方向に延びるしわ」とは、図1に示したような主走査方向nに沿って発生するしわWnを指している。このような方向のしわWnが発生するのは、用紙Pが副走査方向に伸縮するからである。図1では、副走査方向の長さDnが副走査方向にΔdだけ縮んだり伸びたりする様子を図示している。
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(1)装置構成
図2は、実施形態に係る画像形成装置100の全体構成を示した図である。この画像形成装置100は、例えばカラープリンタやカラー複写機、或いはこれらの複数の機能を兼ね備えた複合機等である。図2に示すように、画像形成装置100の構成は、画像形成ユニット10と、画像読取ユニット20と、用紙供給ユニット30とに大別される。さらに、画像形成装置100は、ユーザが各種の操作を行うためのユーザインタフェース装置50を備えている。このユーザインタフェース装置50は、タッチパネルとして機能する液晶ディスプレイを備えており、ユーザはこの液晶ディスプレイに触れることで各種操作を行うことができる。
【0016】
用紙供給ユニット30は、用紙供給源と、この用紙供給源から図中の点線Sによって示される搬送路を経由して画像形成ユニット10へ用紙を搬送するための搬送手段を有している。用紙供給源は、用紙トレイ31a,31b,31c及び手差しトレイ32を備えている。また、搬送手段は、搬送ロール34a〜34cやレジストロール34dを備えている。用紙トレイ31a,31b,31cにそれぞれ収容された用紙P1,P2,P3は、給紙ロール311a,311b,311cによって1枚ずつ搬送路Sに送り出される。そして、この用紙は搬送ロール34a〜34cやレジストロール34dによって画像形成ユニット10へと搬送される。また、手差しトレイ32の上面には用紙P4が複数枚載置されるようになっている。これらの用紙P4は給紙ロール321によって1枚ずつ搬送路Sに送り出され、さらに、搬送ロール34a〜34cやレジストロール34dによって画像形成ユニット10へと搬送されるようになっている。
【0017】
画像読取ユニット20は、原稿送り装置21と、CCD等により構成される光学系部材22とを備えている。画像読取ユニット20は、原稿送り装置21によって図示せぬプラテンガラスに順番に載置される原稿の画像を光学系部材22によって読み取り、読み取った画像を表す画像データを生成する。また、画像形成装置100は図示しない通信インタフェースを介してLAN(Local Area Network)等のネットワークに接続されており、パーソナルコンピュータやサーバマシンなどのホスト装置からLANを経由して送信されてくる画像データを受信する。画像形成ユニット10は、画像読取ユニット20によって生成された画像データや、通信インタフェースを介して受信した画像データに基づいて画像形成処理を行う。つまり、これらの画像データは、ユーザが所望する任意の画像を表す画像データである。
【0018】
次に、画像形成ユニット10は、感光体ドラム11と、帯電装置12と、露光装置13と、ロータリー現像装置14と、クリーニング装置15と、中間転写ベルト16と、支持ロール17と、一次転写ロール18と、二次転写ロール19と、対向ロール40と、搬送ベルト41と、定着装置42とを備えている。感光体ドラム11の外周面(ドラム表面)には感光層が形成されており、この感光体ドラム11は図示せぬ駆動機構によって図中矢印a方向に回転させられる。帯電装置12は、例えばロール型帯電装置やコロトロン型帯電装置であり、感光体ドラム11の表面を所定の電位に一様に帯電させる。露光装置13は、一様に帯電した感光体ドラム11に対し、画像データに応じて変調されたレーザ光を照射し、感光体ドラム11の表面に静電潜像を形成する。
【0019】
ロータリー現像装置14は、それぞれY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色のトナー(現像剤)をそれぞれ収容する現像器14Y,14M,14C,14Kを備えている。このロータリー現像装置14が図示せぬ駆動機構によって図中矢印b方向に回転させられることにより、これら4つの現像器14Y,14M,14C,14Kは順番に感光体ドラム11と近接した位置に移動させられる。そして、各現像器14Y,14M,14C,14Kに収容された各トナーが、それぞれの色に対応する静電潜像に電気的に転移させられることによって、感光体ドラム11の表面にトナー像が形成される。
【0020】
中間転写ベルト16は、無端のベルト部材であり、その内周面を複数の支持ロール17(図2では2つ)と一次転写ロール18と二次転写ロール19とによって張架された状態で、矢印c方向に周回移動させられる。一次転写ロール18は、感光体ドラム11との間で中間転写ベルト16を挟持しつつ、感光体ドラム11表面に形成されたトナー像を中間転写ベルト16の外周面に転写(一次転写)する。感光体ドラム近傍に設けられたクリーニングブレード15は、一次転写後の感光体ドラム11表面に残ったトナーを除去する。二次転写ロール19は、対向ロール40との間に形成されるニップ領域において、中間転写ベルト16の外周面に転写されているトナー像を用紙へ転写(二次転写)する。二次転写後の中間転写ベルト16の表面に残留しているトナーはベルトクリーナ23によって除去される。
【0021】
定着装置42は、搬送路Sを挟んで互いに対向する定着ロール42a及び加圧ロール42bを備えている。定着ロール42aは、例えばアルミニウム等の金属製コアの周囲にシリコンゴム等の弾性体層が形成され、さらに弾性体層の表面にPFA(四フッ化エチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)チューブ等からなる離型層が形成されたロール部材である。この金属製コアの内部には、例えばハロゲンランプ等の熱源が設けられており、定着ロール42aの表面温度が所定の温度となるようにロールの内部から加熱する。加圧ロール42bは、金属製コアの周囲に弾性体層が形成され、さらにPFAチューブからなる離型層が形成されたロール部材であり、図示せぬ加圧バネ等によって定着ロール42aの方向に付勢されている。定着装置42は、トナー像が二次転写された用紙に対し、定着ロール42a及び加圧ロール42bによって圧力を加えながら急速に加熱することによってトナー像を用紙に定着させる。この定着処理がなされた後に、用紙は排紙ロール43a,43bによって排紙トレイ46に排出される。
【0022】
定着装置42と排紙ロール43a,43bとの間には、用紙搬送路を形成するためのガイド44が設けられている。搬送路上方に設けられたガイドの一部には穴44aが開けられており、その穴44aの上方には可視光感度を有するセンサ45が設けられている。図2ではセンサ45を1つのみ図示しているが、実際には2つのセンサ45が紙面奥行き方向に一列に並ぶようにして配置されている。このセンサ45は用紙に現れるしわ発生の兆候を検知するために利用される。
【0023】
次に、図3のブロック図を参照しながら、画像形成装置100の制御系の構成について説明する。図3において、制御部110は、例えばMPU(Micro Processor Unit)や各種の特定用途向けのASIC(Application Specific Integrated Circuit)を備えており、記憶部120に記憶されている制御プログラムなどに従って、画像形成装置100の画像形成ユニット10、画像読取ユニット20及び用紙供給ユニット30の動作を制御する。画像形成ユニット10には前述したセンサ45が含まれている。制御部110はこのセンサ45からの出力信号に基づいてしわが発生する兆候について監視しており、しわ発生の兆候が現れたらその旨のメッセージをユーザインタフェース装置50に表示させる。
【0024】
(2)しわ発生の兆候を検知するための原理
用紙にしわが発生し始める前には、まず、用紙が不均一に延びたり縮んだりしてくる。例えそれが微少な伸び縮みであっても、この伸縮現象は用紙に形成されている画像に影響を及ぼすことになる。従って、用紙に或る規則性を有する画像を形成しておけば、定着処理を経てその用紙に伸縮現象が現れると、用紙上の画像の規則性が乱されることになる。そこで、画像形成装置100は、その規則性の乱れをセンサ45で検知することにより、しわ発生の兆候をいち早く察知することができる。これが、本実施形態における、しわ発生の兆候を検知するための原理である。
【0025】
ここで、「或る規則性を有する画像」とは、例えば、用紙において主走査方向に延びる複数の線分画像が副走査方向に向かって一定の距離間隔で配置されたような画像である。ただし、しわが発生する虞があるかどうかを検査しようとするたびに、このような規則性を有する画像をわざわざ用紙に形成するのでは、手間や時間を要するし、用紙の消費によってコストもかかってしまう。そこで、本実施形態では、制御部110が、画像読取ユニット20によって生成された画像データや、通信インタフェースを介して受信した画像データを参照し、これらの画像データが表す画像の中に上記のような規則性を有する画像部分が含まれているか否かを判断する。そして、そのような画像部分が含まれている場合には、制御部110は、その規則性を特定しておき、センサ45が用紙から読み取った画像中に、特定しておいた規則性が存在しているか否かを判断する。用紙の画像中にその規則性が存在していれば、しわ発生の兆候はないし、その規則性が存在していなければ、しわ発生の兆候があると判断することができる。このようにすれば、しわ発生の兆候を検知するためだけに専用の画像を用紙にその都度形成するような手間や時間を省くことができるし、用紙を無駄に消費することもない。
【0026】
ここで、上記のような規則性を有する画像の具体例について説明する。
図4は、規則性を有する画像の一例であり、格子状の画像(いわゆる「表」)を表している。図4を見て分かるように、この格子状の画像ptは、主走査方向nに沿って伸びる線分画像pt−a,pt−b,pt−c,pt−d,pt−e・・・が副走査方向mに沿って一定の距離間隔dで配列される、という規則的な構造を有している。このような画像の場合、制御部110は、画像データの内容を参照して、各々の線分画像pt−a,pt−b,pt−c,pt−d,pt−e・・・の距離間隔を求めることでその画像ptの規則性を特定し、その規則性の内容を記憶部120に記憶しておく。そして、制御部110は、定着処理を経た用紙から画像ptを読み取り、この画像ptに含まれる線分画像pt−a,pt−b,pt−c,pt−d,pt−e・・・の距離間隔が、記憶部120に記憶しておいた規則性に合致するか否かを判断する。このため、記憶部120に記憶されている制御プログラムには、画像データの内容を参照して画像の規則性を特定し、特定した規則性に基づいてしわ発生の兆候があるか否かを判断するためのコンピュータプログラムが含まれている。
【0027】
また、図5はセンサ45の平面図である。図5に示すように、センサ45は2つのフォトダイオードD1,D2によって構成されている。これらフォトダイオードD1,D2は、検出レベルに応じた大きさの出力信号を出力する。
【0028】
次に、図6は、用紙Pが定着装置42を通過する際の様子を図2の矢印x方向から見たときの平面図である。なお、説明をわかりやすくするため、定着装置42と排紙ロール43a,43bとの間に設けられたガイド44は図示していない。図6において、定着ロール42aと排紙ロール43aが図中矢印e方向に回転することによって、用紙Pは副走査方向mへと搬送され、画像形成装置100の筐体1に設けられた排紙口から排紙トレイ46に排出される。また、センサ45として2つのセンサ45a,45bが主走査方向nに沿って並ぶようにして設けられている。これらのセンサ45a,45bは、それぞれのセンサの下方を搬送されていく用紙Pから画像ptを読み取る。
【0029】
ここで、図7は、主走査方向nと略平行な方向に延びるしわが発生する兆候が現れた時の様子を模式的に示した図である。図7において、副走査方向に沿って一定の距離間隔で配列された線分画像に対しては、図中上から順にpt−a,pt−b,pt−c,pt−d,pt−eという符号を付している。図7に示すように、主走査方向nと略平行な方向に延びる領域Rにおいて、しわの兆候である微少な縮み(縮み量Δd)が発生した場合、領域Rの発生位置から見て副走査方向mの反対側(図中下側)に存在する線分画像pt−c,pt−d,pt−eの位置は副走査方向m(図中上側)にΔdだけ移動する。図7では、線分画像pt−c,pt−d,pt−eが、点線pt−c’,pt−d’,pt−e’で表した本来の位置から、領域Rに近づくように実線で表した位置へと上に移動していることを示している。
【0030】
このような場合、線分画像pt−aと線分画像pt−bとの間隔は一定の距離間隔dである。これに対し、線分画像pt−c,pt−d,pt−eが領域Rに近づく方向にΔdだけずれると、線分画像pt−bと線分画像pt−cとの間隔はd−Δdとなる。従って、センサ45が線分画像pt−aを読み取ってから線分画像pt−bを読み取るまでの時間間隔と、線分画像pt−bを読み取ってから線分画像pt−cを読み取るまでの時間間隔とが異なる値になる。
【0031】
このように、連続する2つの線分をそれぞれ表す2本の線分が一定の時間間隔とは異なる時間間隔で読み取られた場合には、制御部110は、主走査方向と略平行な方向に延びるしわが発生する兆候がある旨のメッセージをユーザインタフェース装置50に表示させる。なお、図7は、領域Rに縮みが発生した場合で説明したが、これとは逆に、領域Rに伸びが発生した場合も上記と同様の原理に基づいて、制御部110は主走査方向と略平行な方向に延びるしわが発生する兆候があることを認識することができる。
【0032】
(3)動作例
図8は、図4に示すような画像ptに含まれる各々の線分画像がセンサ45の検出領域に進入するタイミングと、センサ45によって検知されるレベル波形と、センサ45によって出力される出力信号との関係を例示した図である。フォトダイオードD1,D2は、検出レベルに応じた大きさの出力信号を出力する。従って、線分画像ptがセンサ45の検出領域に進入すると、まず、フォトダイオードD1によって出力信号が出力され、次いで、フォトダイオードD2によって出力信号が出力される。図8に示した波形r1が、フォトダイオードD1によって出力された出力信号を表しており、波形r2がフォトダイオードD2によって出力された出力信号を表している。なお、波形r1はO1を原点としており、波形r2はO2を原点としている。センサ45は、減少傾向の波形r1と増加傾向の波形r2とが重なり合った時点から、波形r2が原点O2に到達するまでの期間はハイ(H)レベル信号を制御部110に出力し、それ以外の期間は、ロー(L)レベル信号を制御部110に出力する。
【0033】
制御部110は、この出力信号がローレベルからハイレベルへ立ち上がったタイミングと、その次の立ち上がりのタイミングとの間の時間tが所定の値t0であれば、しわ発生の兆候はないと判断する。即ち、一定の距離間隔dで形成されている線分画像を一定の時間間隔t0で読み取った場合には、線分画像が本来の規則性を有しているから、用紙は伸び縮みしておらず、しわ発生の兆候はないというわけである。なお、このt0は、線分画像の距離間隔dを用紙の搬送速度で除算することで予め求めておくことができるので、制御部110はこのt0を記憶部120に記憶させておけばよい。また、計測値である時間tは誤差を含む場合もあり得るので、計測値tがt0から一定の微少な値Δt0だけずれたとしても、t0に一致するとみなすようにしてもよい。
【0034】
これに対し、図9に示すように、時間tが所定の値t0ではないt1の場合には、線分画像の位置がずれてきていることを意味するので、制御部110はしわ発生の兆候があると判断する。即ち、一定の距離間隔dで形成されているはずの線分画像を一定の時間間隔t0で読み取ることができなかった場合には、線分画像が規則性を有していないから、用紙が伸び縮みしており、しわ発生の兆候があるというわけである。図9に示す例では、t0>t1であるから、制御部110は、図7を用いて説明したような原理に基づいて、主走査方向と略平行な方向に延びるしわが発生する兆候があると判断し、その判断結果に応じた情報を出力する。例えば、主走査方向に沿ってしわが発生する兆候がある旨のメッセージをユーザインタフェース装置50に表示させるといった具合である。
【0035】
さらに、制御部110は、個々の線分画像が読み取られた時間間隔t1と、予め決められた一定の時間間隔t0との時間差に基づいて、しわの発生する兆候の度合いを予測することも可能である。具体的には、時間間隔t1と時間間隔t0との時間差に対して用紙の搬送速度を乗算してΔdを求めれば、そのΔdが用紙(領域R)の伸縮量にほぼ相当することになる。この伸縮量はしわが発生する兆候の度合いを示すものであるから、制御部110は、この度合いに応じて、例えばしわが発生する可能性が大きいとか、しわが発生するまでにはまだ時間的な余裕があるといったような各種情報をユーザインタフェース装置50に表示させればよい。なお、線分画像が読み取られた後の用紙Pはそのまま排紙トレイ46に排出する等すればよい。
【0036】
以上説明したように、用紙にしわが発生し始める前には、用紙が不均一に延びたり縮んだりしてくるため、用紙に形成されている画像の規則性が乱れてくる。本実施形態に係る画像形成装置100は、その規則性に乱れがあるか否かを判断し、乱れがあると判断された場合には、用紙におけるしわの発生に関連した情報を出力する。よって、画質に重大な影響を及ぼすようなしわが発生する前に、しわ発生に関連する情報をユーザに伝えることができる。また、ユーザが所望する任意の画像データを用いてしわ発生の兆候を検査するので、それ専用の画像を形成するような手間を省くことができるし、用紙を無駄に消費することもない。
【0037】
(4)変形例
上述した実施形態は次のような変形が可能である。
実施形態においては、像担持体としての感光体ドラム11とロータリー現像装置14とを備えたいわゆるサイクル方式や画像形成装置を例に挙げて説明したが、この他にも、例えば、複数の感光体ドラムを中間転写ベルトに外周に沿って直列に配置したいわゆるタンデム方式の画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置100はY,M,C,K4色のトナー(現像剤)を用いたカラー画像を形成するものに限定されず、レッド、ブルー、グリーン等の色の現像剤を用いるものであってもよいし、モノクロ画像を形成するものであってもよい。
【0038】
ここで、図10は、タンデム方式の画像形成装置に本発明を適用した場合の画像形成装置101の構成を示した図である。図10において、画像形成エンジン1Y,1M,1C,1Kはそれぞれ、イエロー(Y)色、マゼンダ(M)色、シアン(C)色およびブラック(K)色の各色のトナー像を形成する。例えば画像形成エンジン1Yは、矢印A方向に回転する感光体11ドラムYと、感光体ドラム11Yを決められた帯電電位に一様に帯電させる帯電装置12Yと、Y,M,C,K各色の画像データのうちY(イエロー)の画像データに応じた光を感光体ドラム11Yに照射して静電潜像を形成する露光装置13Yと、静電潜像にイエローのトナーを供給し感光体ドラム11Yの表面にトナー像を形成させる現像装置14Yと、中間転写ベルト2にトナー像を一次転写するための一次転写ロール15Yと、一次転写後の感光体ドラム11Yの表面に残留するトナーを除去するクリーニング装置16Yとを備えている。これ以外の画像形成エンジン1M,1C,1Kの構成も、トナーの種類が異なる点を除けば、画像形成エンジン1Yと同様である。
【0039】
中間転写ベルト2は、複数の各種ロール3に掛け渡されており、これらロール3によって矢印B方向に周回移動させられる。このように周回移動させられる中間転写ベルト2には、画像形成エンジン1Y,1M,1C,1Kによって形成されたトナー像が重ね合わされるようにして一次転写される。また、この中間転写ベルト2には、画像形成エンジン1Fによって形成された線分画像が一次転写される。
【0040】
用紙トレイ4には用紙が複数枚収容されており、給紙ロール4aによって搬送路に送り出された用紙は複数の搬送ロール5によって矢印C方向に搬送される。二次転写ロール6は、上述したように中間転写ベルト2に一次転写されたトナー像を、搬送路上を搬送される用紙に二次転写する。定着装置7は、用紙に二次転写されたトナー像を加熱および加圧することによって用紙に定着させる。定着装置7と排紙ロール8との間には、用紙搬送路を形成するためのガイド9が設けられている、搬送路上方に設けられたガイドの一部には穴9aが開けられており、その穴9aの上方には可視光感度を有するセンサ9bが設けられている。図10ではセンサ9bを1つのみ図示しているが、実際には2つのセンサ9bが紙面奥行き方向に一列に並ぶようにして配置されている。このセンサ9bは用紙上の画像を読み取り、その読み取り結果に応じて図8乃至図9に示すような出力信号を出力する。画像形成装置101の制御部はこのセンサ9bからの出力信号に基づいて、しわが発生する兆候について監視しており、しわ発生の兆候が現れたらその旨のメッセージを画像形成装置101の筐体上面に設けられたユーザインタフェース装置50に表示させる。
以上が、タンデム方式の画像形成装置に本発明を適用した場合の実施例である。
【0041】
画像データによって表される画像が有する規則性は、図4に例示したものに限らず、一定の規則性を有するものであれば、様々な形状や配置パターンの画像であってもよい。例えば、図4に示したような格子状の画像(「表」)を用いる場合、各々の線分画像の距離間隔が常に一定ではなく、異なる場合もある。このような場合であっても、それぞれの線分画像の距離間隔は画像データに基づいて予め特定し得るため(つまり、センサ45がどの程度の時間間隔で各線分画像を読み取るべきかを特定し得るため)、しわ発生の兆候を検知するために利用することが可能である。
【0042】
また、センサ45はフォトダイオードに限定されず、画像を読み取ることが可能なセンサであればよい。例えばCCDであっても良い。また、センサ45の数は2つに限らず、もっと多くてもよいし、少なくてもよい。また、画像データの内容には様々なものがあるため、本発明では、規則性が存在する画像部分とセンサ45との位置関係をどのようにうまく対応させるかが問題となる。例えば、画像のある一部分にのみ規則性が存在していたとしても、その画像部分を読み取ることができるような位置にセンサを設けておかないと、その画像部分を利用してしわ発生の兆候を検知することはできない。そこで、画像のどの部分に規則性が存在したとしても、それを読み取ることが可能なように、例えば数十個程度のセンサを分散して設置しておいてもよい。この場合、規則性が存在する画像部分を読み取ることができる位置に設置されているセンサが読み取った結果のみを利用し、それ以外のセンサの読み取り結果は利用しないようにすればよい。また、数個のセンサだけを用いる場合であっても、各々のセンサを移動させることが可能なように構成しておけば、これらセンサを規則性が存在する画像部分を読み取ることが可能な位置に移動させて画像を読み取らせることができる。
【0043】
また、定着装置42は2つのロール部材によって構成されるものに限らず、要は、用紙の搬送路を挟んで対向する一対の部材が接触するニップ領域において、その用紙を加熱及び加圧することによってトナー像を用紙に定着させるような構成であればよい。例えば定着ロールと加圧ロールとの間にベルト部材を挟みこみ、加圧ロールを定着ロール側に付勢することでニップ領域を形成した定着装置であってもよい。また、チューブ部材の内側にパッド乃至ロールを設けておき、そのパッド乃至ロールを、チューブを介して定着ロール側に付勢することでニップ領域を形成した定着装置であってもよい。
【0044】
また、実施形態においては、画像が形成される記録材の一例として用紙を挙げて説明したが、これ以外にも、例えばOHPフィルム等のプラスティックや布などの種々の記録材を用いることができる。
【0045】
なお、実施形態で述べた制御部110によって実行される制御プログラムは、磁気テープ、磁気ディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、光記録媒体、光磁気記録媒体、CD(Compact Disk)−ROM、DVD(Digital Versatile Disk)、RAMなどの記録媒体に記録した状態で提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態において発生するしわの方向を説明する模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る画像形成装置の構成を示す図である。
【図3】同画像形成装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図4】用紙に形成されている画像の一例を示す平面図である。
【図5】センサの構成を示す図である。
【図6】用紙が定着装置と排紙ロールとを通過する様子を示した平面図である。
【図7】主走査方向に平行なしわの兆候が発生したときの様子を模式的に示した図である。
【図8】線分画像がセンサの検出領域に差し掛かるタイミングと、センサによって検知される検知信号の波形及びセンサによって出力される出力信号の波形との関係を例示した図である。
【図9】線分画像がセンサの検出領域に差し掛かるタイミングと、センサによって検知される検知信号の波形及びセンサによって出力される出力信号の波形との関係を例示した図である。
【図10】本発明の変形例に係る画像形成装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
100・・・画像形成装置、10・・・画像形成ユニット、11・・・感光体ドラム、12・・・帯電装置、13・・・露光装置、14・・・ロータリー現像装置、14Y,14M,14C,14K・・・現像器、16・・・中間転写ベルト、18・・・一次転写ロール、19・・・二次転写ロール、20・・・画像読取ユニット、30・・・用紙供給ユニット、31a,31b,31c・・・用紙トレイ、42・・・定着装置、43・・・排紙ロール、44・・・ガイド、45(45a,45b)・・・センサ、50・・・ユーザインタフェース装置、110・・・制御部、120・・・記録部、pt・・・画像、D1,D2・・・フォトダイオード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データによって表される画像に或る規則性が存在する場合に、その規則性を特定する特定手段と、
前記画像データに基づいて可視画像を像担持体に形成し、該可視画像を記録材に転写する画像形成手段と、
前記記録材の搬送路を挟んで対向する一対の部材が接触するニップ領域において、前記記録材を加熱及び加圧することによって前記可視画像を前記記録材に定着させる定着手段と、
前記定着手段による定着処理を経た記録材から前記可視画像を読み取る読取手段と、
前記読取手段によって読み取られた前記可視画像に、前記特定手段によって特定された規則性が存在するか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段によって前記規則性が存在しないと判断された場合には、前記記録材におけるしわの発生に関連した情報を出力する情報出力手段と
を備えた画像形成装置。
【請求項2】
主走査方向に延びる複数の線分画像が副走査方向に向かって一定の距離間隔で配置されるような画像が前記画像データによって表される画像に含まれている場合、前記特定手段は、前記一定の距離間隔を求めることで前記規則性を特定し、
前記読取手段は、副走査方向に搬送される前記記録材から複数の前記線分画像を順次読み取り、
前記読取手段が、前記一定の距離間隔を前記記録材の搬送速度で除算して求めた一定の時間間隔で、各々の前記線分画像を読み取った場合には、前記判断手段は前記規則性が存在すると判断する一方、
前記読取手段が前記一定の時間間隔で各々の前記線分画像を読み取ることができなかった場合には、前記判断手段は前記規則性が存在しないと判断する請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記読取手段によって各々の前記線分画像が読み取られた時間間隔と、前記一定の時間間隔との時間差を求め、その時間差に対し前記記録材の搬送速度を乗算して該記録材の伸縮量を算出する算出手段を備え、
前記情報出力手段は、前記算出手段によって算出された伸縮量に応じた内容の情報を出力する請求項2記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−89207(P2006−89207A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−275894(P2004−275894)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】