説明

画像形成装置及び転写装置

【課題】 本発明は、像保持体上に形成された画像を記録媒体に転写する転写手段にて外周面の一部が切り欠かれている場合でも画質劣化を抑制することを目的とする。
【解決手段】本発明の画像形成装置は、感光体ドラムと、感光体ドラム上に画像を形成する露光装置と、露光装置により感光体ドラム上に形成された画像を用紙に転写する転写ドラム21とを含み、転写ドラム21は、回転可能に設けられる基部21Aと、基部21Aの外周に設けられ、外周面の一部が切り欠かれた露出部21Cを備えるとともに感光体ドラムに圧接される弾性層21Bと、基部21Aとともに回転するように設けられ、基部21Aが回転することに伴い露出部21Cが感光体ドラムと対峙する際に、感光体ドラムを押圧する押圧部61とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及び転写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
公報記載の従来技術として、表面に弾性層と用紙端部を把持するグリッパを有した転写ドラムを用いて感光体上に形成された現像像を用紙に転写する画像形成装置であって、転写ドラムの周長をL1、潜像形成位置から転写位置に至る距離をL2、転写材の先端位置から弾性体層後端に至る距離をL3としたとき、L1−L3>L2を満たすようにする画像形成装置が存在する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−271209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、像保持体上に形成された画像を記録媒体に転写する転写手段にて外周面の一部が切り欠かれている場合でも画質劣化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、像保持体と、前記像保持体上に画像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段により前記像保持体上に形成された画像を記録媒体に転写する転写手段とを含み、前記転写手段は、回転可能に設けられる基部と、前記基部の外周に設けられ、外周面の一部が切り欠かれた切り欠き部を備えるとともに前記像保持体に圧接される外周材と、前記基部とともに回転するように設けられ、当該基部が回転することに伴い前記切り欠き部が前記像保持体と対峙する際に、当該像保持体を押圧する押圧部とを備えることを特徴とする画像形成装置である。
請求項2記載の発明は、前記切り欠き部に設けられ、供給される記録材を前記外周材の前記外周面に保持する保持部材をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置である。
請求項3記載の発明は、前記押圧部は、前記基部の周方向において前記切り欠き部に対応する範囲に存在することを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置である。
【0006】
請求項4記載の発明は、前記画像形成手段が前記像保持体に画像を形成する際に、前記基部が回転することに伴い前記切り欠き部が当該像保持体と対峙することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の画像形成装置である。
請求項5記載の発明は、前記押圧部は、前記外周材の前記外周面よりも外側に突出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の画像形成装置である。
請求項6記載の発明は、回転可能に設けられる基部と、前記基部の外周に設けられ、外周面の一部が切り欠かれた切り欠き部を備えるとともに像保持体に圧接される外周材と、前記切り欠き部に設けられ、供給される記録材を前記外周材の前記外周面に保持する保持部材と、前記基部とともに回転するように設けられ、当該基部が回転することに伴い前記切り欠き部が前記像保持体と対峙する際に、当該像保持体を押圧する押圧部とを含む転写装置である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、本構成を有しない場合と比較して、像保持体上に形成された画像を記録媒体に転写する転写手段にて外周面の一部が切り欠かれている場合でも画質劣化を抑制することができる。
請求項2記載の発明によれば、本構成を有しない場合と比較して、供給される記録材をより確実に保持することができる。
請求項3記載の発明によれば、本構成を有しない場合と比較して、画質劣化をより抑制することができる。
請求項4記載の発明によれば、本構成を有しない場合と比較して、画像形成手段が像保持体に画像を形成する際に生じる画質劣化を抑制することができる。
請求項5記載の発明によれば、本構成を有しない場合と比較して、押圧部が像保持体をより確実に押圧することができる。
請求項6記載の発明によれば、本構成を有しない場合と比較して、像保持体上に形成された画像を記録媒体に転写する転写装置にて外周面の一部が切り欠かれている場合でも画質劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施の形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図2】本実施の形態に係る用紙と先端グリッパ及び後端グリッパとの関係を説明するための概略図である。
【図3】本実施の形態に係る先端グリッパの概略構成図である。
【図4】本実施の形態に係る後端グリッパの概略構成図である。
【図5】本実施の形態に係る押圧部の概略構成図である。
【図6】露出部に設けられる押圧部の変形例を示す。
【図7】先端グリッパに設けられる押圧部の変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態について詳細に説明する。
<画像形成装置1の全体構成>
まず、図1乃至図2を参照して、本実施の形態が適用される画像形成装置1の各構成を説明する。ここで、図1は、本実施の形態が適用される画像形成装置1を示す概略構成図である。図2は、本実施の形態に係る用紙Sと先端グリッパ23及び後端グリッパ27との関係を説明するための概略図であり、図2(a)は、画像形成装置1の外側から見た、用紙Sを抑える先端グリッパ23及び後端グリッパ27の図であり、図2(b)は、図2(a)における矢印II方向から見た、用紙Sを抑える先端グリッパ23及び後端グリッパ27の断面図である。
【0010】
画像形成装置1は、トナー像が形成される画像形成部10、用紙S(記録媒体)を供給し搬送する用紙供給部40、供給された用紙Sを保持するとともに保持した用紙S上に画像形成部10で形成したトナー像を転写する転写装置20、転写装置20から開放された用紙S上のトナー像を定着する定着装置30、画像形成装置1の全体を制御する制御部100を有している。また、画像形成装置1の各構成部材は、筺体2の内部に収容されており、この筺体2の上部には定着装置30から排出された用紙Sを積載する排紙積載部3が設けられている。
【0011】
<各部材の構成>
まず、画像形成部10は、感光体ドラム11を有する。さらに、画像形成部10は、感光体ドラム11を帯電させる帯電装置12、帯電された感光体ドラム11を露光する露光装置13、現像剤を用いて現像を行うロータリ現像装置14、感光体ドラム11上に残った現像剤を清掃する清掃装置15を含む。以下で各部材について説明をする。
【0012】
像保持体の一例である感光体ドラム11は、その表面に負の帯電極性を有する感光層11Aを備えるとともに、矢印A方向に回転するように取り付けられる。そして、帯電装置12、露光装置13、ロータリ現像装置14、清掃装置15は、感光体ドラム11の周囲に、矢印A方向に沿って、この順番に設置されている。ここで、感光体ドラム11の外径は、例えば30mmとなっている。
【0013】
画像形成手段の一例である帯電装置12は、本実施の形態においては接触ローラ型の放電装置であり、感光体ドラム11とともに回転しながら感光体ドラム11を帯電させるよう構成される。
露光装置13は、感光体ドラム11の帯電表面に照射することで、静電潜像を形成するよう構成され、本実施の形態においては複数配置されたLED(図示せず)と屈折率分布型レンズを含む。
【0014】
ロータリ現像装置14は、回転軸14Aと、回転軸14Aの周囲に設置されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の現像器14Y、14M、14C、14Kとを備えている。このロータリ現像装置14は、筺体2に対して着脱可能に設けられている。またロータリ現像装置14は、回転軸14Aを中心として矢印C方向に回転するように構成されている。
なお、多色画像ではなく単色画像のみを形成する場合には、ロータリ現像装置14を単色の現像器のみ(例えば黒(K)の現像器14Kのみ)を有する現像装置と交換してもよい。そしてロータリ現像装置14は、感光体ドラム11と対向する位置において、現像器14Y、14M、14C、14Kのいずれかの現像器が停止するようになっている。ロータリ現像装置14は、露光装置13によって形成された感光体ドラム11上の静電潜像を、トナーを用いて現像するよう構成されている。ロータリ現像装置14の外径は、例えば100mmとなっている。
【0015】
これらの現像器14Y、14M、14C、14Kには、磁性トナーまたは非磁性トナーを単独で用いる1成分現像剤が収容されている。ここで、本実施の形態においては、1成分現像剤を用いたが、トナー及びキャリアを含む2成分現像剤であってもよい。なお、以下の説明では、1成分現像剤を単に現像剤と呼ぶ。
【0016】
清掃装置15は、感光体ドラム11の表面に残った現像剤や現像剤以外の付着物を除去するよう構成されている。本実施の形態の清掃装置15は、ブレード方式のクリーナである。
【0017】
次に、転写装置20を説明する。転写装置20は、感光体ドラム11上のトナー像を用紙Sに転写する転写ドラム21を有する。また、転写装置20は、転写ドラム21上で用紙Sの先端部を把持する先端グリッパ23、転写ドラム21上で用紙Sの後端部を保持する後端グリッパ27を有する。さらに、転写装置20は、用紙Sが通過することを検知する用紙検知センサ25を含む。さらにまた、転写装置20は、転写ドラム21を転写駆動する転写ドラムモータM1(後述)、及びこの転写ドラムモータM1と回転軸21Dとを連結する転写ドラムギアG1(後述)を含む。
【0018】
転写手段の一例である転写ドラム21は、感光体ドラム11に対向し、かつ回転軸21Dを中心に回転可能に配置される。この転写装置20は、筺体2に対して着脱可能に備えられている。そして、転写ドラム21は、ドラム形状の基部21Aと、この基部21Aの外周面に形成された弾性層21Bと、この弾性層21Bが設けられていない基部21Aの外周面に設けられる押圧部61(図5参照、後述)を備えている。より具体的には、弾性層21Bは、用紙Sの搬送方向先端である弾性層先端21BLから、用紙Sの搬送方向後端である弾性層後端21BTまで、ドラム形状の基部21Aの外周に沿って延伸している。一方で、外周材の一例である弾性層21Bは、基部21Aの外周面の一部を、基部21Aの軸方向に沿って覆わないようになっており(弾性層後端21BTと弾性層先端21BLとの間)、この部位は、基部21Aが露出した露出部21C(切り欠き部)となっている。そして、押圧部61は、露出部21Cに設けられている。
【0019】
転写ドラム21は、弾性層21Bが弾性変形することにより感光体ドラム11とニップ部を形成する状態で、感光体ドラム11の回転と同期して矢印B方向に回転するように設けられている。ここで、感光体ドラム11の回転軸(図示せず)と転写ドラム21の回転軸21Dとはそれぞれ画像形成装置1に対して固定されている。すなわち、感光体ドラム11と転写ドラム21との回転軸間の距離は維持されるよう配置されている。また、転写ドラム21の露出部21Cは、感光体ドラム11と接触しない。さらに、転写ドラム21の外径は、感光体ドラム11の外径よりも大きく、例えば120mmとなっている。
【0020】
本実施の形態における基部21Aは導電性を有する中空管であり、例えば金属製である。一方、弾性層21Bは半導電性を有する弾性部材であり、例えばポリウレタン、クロロプレン、EPDM(エチレン・プロピレンゴム)、NBR(ニトリルゴム)等のゴム製である。
ここで、弾性層21Bの外周表面には誘電体シートのような誘電体は設けられていない。また、転写ドラム21には用紙Sの静電吸着を行うためのコロトロン等の帯電器は設けていない。つまり、転写ドラム21は、用紙Sを保持するために所謂静電吸着を利用するものではない。
また、転写ドラム21の周長(より具体的には弾性層21Bの周長)は、画像形成装置1によって用紙Sに形成される画像の、用紙Sの搬送方向における長さの最大長(プリント最大長)よりも長い。
【0021】
さて、基部21Aは、高圧電源(図示せず)からトナーとは逆極性の電圧から成る転写バイアスが印加されるよう構成されている。感光体ドラム11上でトナー像を構成するトナーが、転写部位Trにおいて弾性層21B上の用紙Sに転写される構成である。
なお、転写部位Trとは、感光体ドラム11と転写ドラム21とが対峙する領域であって、感光体ドラム11上のトナー像を弾性層21Bの用紙Sに転写するため、感光体ドラム11と転写ドラム21とが接触し得る領域をいう。
【0022】
用紙検知センサ25は、転写ドラム21の外周面に対向して配置されており、転写ドラム21に巻きつけられて搬送される用紙Sの通過を検知する。より具体的には、用紙検知センサ25は近赤外光を転写ドラム21の外周面に向けて出射する。そして、転写ドラム21の外周面あるいは転写ドラム21に保持される用紙Sからの反射光(近赤外光)を受光する。そして、例えばこの反射光の光量の変化を検知することによって、用紙Sの搬送方向先端及び搬送方向後端が通過したことが検出される。
この用紙検知センサ25は、後端グリッパ27の待機位置(後述)よりも、用紙Sの搬送方向上流側に設けられる。本実施の形態においては、用紙検知センサ25は、後端グリッパ27の待機位置と給紙位置Pa(後述)との間に配置される。
さらに、用紙検知センサ25は、転写ドラム21に設けられたマーク(図示せず)を検知することで、回転する転写ドラム21の位相も測定する。
【0023】
定着装置30は、加熱源(図示せず)を有し回転可能に配置される加熱ロール31と、この加熱ロール31に圧接される加圧ロール32とを有している。
【0024】
用紙供給部40は、画像形成装置1の下方、具体的には転写ドラム21の下方に備えられ用紙Sを内部に収容する用紙収容部41、取出しロール42に備えられ収容された用紙Sのサイズを検知する用紙サイズセンサ(図示せず)、この用紙収容部41から用紙Sを取り出す取出しロール42、密着した用紙Sを分離する捌きロール43、用紙Sを搬送する搬送ロール44を備える。
【0025】
なお、画像形成装置1は、転写ドラム21に巻きつけられた用紙Sを剥離させるため、転写ドラム21に接触させて配置する部材、例えば剥離爪を備えない。これは、詳細は後述するが、転写ドラム21と感光体ドラム11とのニップにより、巻きつけられた用紙Sを転写ドラム21から剥離することができるためである。剥離爪を設ける必要がないことから、本実施の形態の画像形成装置1はより小型化することが可能となる。
ここで、剥離爪を備えないという上記記載は、転写ドラム21からすでに搬送方向先端が剥離された用紙Sを、排出経路52に案内する案内部材(例えば用紙搬送路)を備えることを妨げるものではない。つまり、本発明において、排紙位置Pb(後述)よりも搬送方向下流側に転写ドラム21と接触することなく設けられ、すでに剥離された用紙Sを案内する用紙搬送路等を設けてもよい。
【0026】
制御部100は、ユーザから指示を受けたユーザ・インターフェイス(図示せず)によって信号が入力される。また、制御部100には、画像形成装置1の内部または外部に設けられた画像出力指示部(図示せず)から画像信号が入力される。さらに、制御部100には、用紙検知センサ25から送られてくる用紙Sの通過の信号及び感光体ドラム11の位相信号が入力される。
そして、制御部100は、次の各部に制御信号を出力するようになっている。すなわち、感光体ドラム11を回転駆動する感光体ドラム駆動部(図示せず)、帯電装置12、露光装置13、ロータリ現像装置14を回転/停止させることで感光体ドラム11と対向する現像位置に目的とする現像器14Y、14M、14C、14Kを位置させる現像装置駆動部(図示せず)、現像位置に配置された現像器14Y、14M、14C、14Kに供給する現像バイアスを設定する現像バイアス設定部(図示せず)、転写ドラム21を回転駆動する転写ドラム駆動部(図4の転写ドラムモータM1及び転写ドラムギアG1参照)、後端グリッパ27を回転駆動する後端グリッパ駆動部(図4の後端グリッパ駆動モータM2及び後端グリッパギアG2参照)、転写ドラム21に供給する転写バイアスを設定する転写バイアス設定部(図示せず)、先端グリッパ23、後端グリッパ27、用紙供給部40、及び定着装置30に、制御部100はそれぞれ制御信号を出力するようになっている。
【0027】
ここで、画像形成装置1は、用紙収容部41から用紙Sを転写部位Trに供給するための供給経路51と、トナー像が転写された用紙Sを定着装置30を介して排紙積載部3に排出するための排出経路52とを備えている。また、本実施の形態では、転写ドラム21に向けて供給されてくる用紙Sが、先端グリッパ23及び後端グリッパ27によって転写ドラム21に巻き付けられた状態で回転することになるが、このとき用紙Sが通る経路を回転経路53と称する。
【0028】
<先端グリッパ23及び後端グリッパ27>
次に、図1乃至図4を参照しながら、先端グリッパ23及び後端グリッパ27の構成について説明する。ここで、図3は、本実施の形態が適用される先端グリッパ23の概略構成図であり、図3(a)は開いた先端グリッパ23を転写ドラム21の回転軸21Dと交差する面で切断した断面図であり、図3(b)は、閉じた先端グリッパ23を転写ドラム21の回転軸21Dと交差する面で切断した断面図である。図4は、本実施の形態が適用される後端グリッパ27の概略構成図であり、図4(a)は開いた後端グリッパ27及び転写ドラム21を転写ドラム21の回転軸21Dに沿って切断した断面図であり、図4(b)は、閉じた後端グリッパ27及び転写ドラム21を転写ドラム21の回転軸21Dに沿って切断した断面図であり、図4(c)は図4(a)の図中の円内に示す後端グリッパ27の部分拡大図である。
【0029】
まず、先端グリッパ23及び後端グリッパ27は、それぞれ開閉可能である。また、先端グリッパ23及び後端グリッパ27は、転写ドラム21とともに回転可能である。そして、先端グリッパ23及び後端グリッパ27は、転写ドラム21上で用紙Sを保持するように構成されている。
具体的には、図2に示すように、転写ドラム21上の用紙Sの搬送方向(矢印B)の先端部(図2における用紙Sの左側の端部)を先端グリッパ23が把持し、用紙Sの搬送方向(矢印B)の後端部(図2における用紙Sの右側の端部)を後端グリッパ27が保持する。
そして、先端グリッパ23は転写ドラム21に対して固定されている(図1参照)。一方の後端グリッパ27は、転写ドラム21と別体として設けられており(図1参照)、転写ドラム21に対する後端グリッパ27の位置を変更することが可能である。
なお、先端グリッパ23が用紙Sを把持した場合、用紙Sの搬送方向へのずれを許容せず、かつ転写ドラム21から離れる方向の移動を制限する。一方、後端グリッパ27が用紙Sを保持した場合、用紙Sの搬送方向へのずれを許容し、かつ転写ドラム21から離れる方向の移動を制限する。
以下、先端グリッパ23及び後端グリッパ27それぞれについて詳細な構成を説明する。
【0030】
<先端グリッパ23>
まず、図1に示すように、保持部材の一例である先端グリッパ23は、転写ドラム21の露出部21Cに取り付けられている。具体的には、先端グリッパ23は、弾性層後端21BTと弾性層先端21BLとの間に設けられている。そして、先端グリッパ23は、後述するように先端グリッパ23の開閉に関わらず感光体ドラム11と接触しないように構成されている。
また、図3(a)に示すように、先端グリッパ23は、転写ドラム21の外周側(図3の上側)から用紙Sを抑える外側部材23aと、転写ドラム21の内周側(図3の下側)から用紙Sを抑える内側部材23bと、外側部材23aと一体に設けられた回転軸23cとを有する。これら外側部材23a、内側部材23b及び回転軸23cは、弾性層後端21BTと弾性層先端21BLとの間に設けられている。そして、弾性層後端21BTと弾性層先端21BLとの間で、転写ドラム21に対して固定された回転軸23cを中心に外側部材23aが回転することにより、外側部材23aと内側部材23bとの相対位置が変化し、先端グリッパ23が開閉するように構成されている。なお、図3に示すように、先端グリッパ23は用紙Sの搬送方向(矢印B)下流側を向いて開く。
【0031】
図3(a)に示すように、先端グリッパ23の外側部材23aは、回転軸23cを中心として、回転軸23cよりも転写ドラム21の外周側を回転可能に設けられている(図3の矢印F1及びF2)。そして、外側部材23aは、転写ドラム21の外周側から、用紙Sの画像が形成される側を抑える外側抑え部23a1と、回転軸23cを中心に外側部材23aが回転するのに伴い内側部材23bを押す角部23a3とを有する。この外側抑え部23a1は、内側部材23bよりも転写ドラム21の外周側に配置される。一方、角部23a3は、内側部材23bよりも転写ドラム21の内周側に配置される。
なお、外側部材23aは、転写部位Trにおいて感光体ドラム11と接触することを回避するため、厚みが薄いことが好ましい。外側部材23aは、例えばステンレス鋼(SUS)等の金属製である。
【0032】
先端グリッパ23の内側部材23bは、図示しない案内部材に沿って、転写ドラム21の外周側と内周側とを移動可能(図3(a)の矢印D5及びD6)となるよう転写ドラム21によって支持されている。そして、内側部材23bは、転写ドラム21の内周側から、用紙Sの画像が形成される側とは反対側を抑える内側抑え部23b1を有する。
回転軸23cは、転写ドラム21の回転軸21D(図1参照)と平行に延伸する。そして、転写ドラム21の内部でありかつ外周側に設けられている。
【0033】
本実施の形態においては、図3(a)に示すように、先端グリッパ23が開いた状態では、外側抑え部23a1と内側抑え部23b1との間に間隙がある。一方、図3(b)に示すように、先端グリッパ23が閉じた状態では、外側抑え部23a1と内側抑え部23b1との間に間隙をなくすべく外側抑え部23a1と内側抑え部23b1が近接する。
【0034】
<後端グリッパ27>
まず、後端グリッパ27は、図4に示すように、後端グリッパ27の回転軸27Dの方向において、転写ドラム21を跨ぐように取り付けられている。そして、回転軸27Dの周囲を転写ドラム21に対して独立に回転するように構成されている。
具体的には、図4に示すように、後端グリッパ27は、転写ドラム21の外周面に対向して用紙Sの移動を抑制する用紙抑制部27aと、この用紙抑制部27aの両端を保持する保持部27bとを有する。そして、この保持部27bは、それぞれ回転軸27Dと接続されている。また、後端グリッパ27は、保持部27bを介して用紙抑制部27aを転写ドラム21の直径方向に沿って移動させる楔型押上部材27cを有する。
そして、後端グリッパ27は、用紙抑制部27aと転写ドラム21の外周面との距離を変化させる(図4の矢印D1及びD2)ことによって、開閉するように構成されている。
【0035】
また、後端グリッパ27の回転軸27Dは、転写ドラム21の回転軸21Dと同心に配置されている。しかし、上述のように転写ドラム21と後端グリッパ27とは別駆動で回転する。詳細には、転写ドラム21は、転写ドラムモータM1及び転写ドラムギアG1によって回転駆動されるのに対して、後端グリッパ27は、後端グリッパ駆動モータM2、及びこの後端グリッパ駆動モータM2と保持部27bとを連結する後端グリッパギアG2によって回転駆動される。
【0036】
そして、用紙抑制部27aは、転写ドラム21の回転軸21Dと平行に延伸し、本実施の形態の画像形成装置1で使用することのできる用紙Sの最大の幅(用紙Sが転写ドラム21の外周面に配置された際に回転軸21Dと平行な方向の長さ)よりも長い。また、後端グリッパ27は、転写部位Trにおいて感光体ドラム11と接触する(後述)ことから、厚みが薄いことが好ましい。
また、後端グリッパ27の用紙抑制部27aにおける、感光体ドラム11と接触する部分は、角部を持たないことが望ましい。これは、後端グリッパ27が、感光体ドラム11と接触することにより生じる、感光体ドラム11の損傷を低減するためである。
なお、本実施の形態においては、用紙抑制部27aは板状の部材からなる。後端グリッパ27の用紙抑制部27aの形状としては、フィルム状、ワイヤ状、円柱状等の形状であってもよい。また、用紙抑制部27aは、例えばPET(Polyethylene terephthalate)、ポリイミド、フッ素等の樹脂からなる。
【0037】
保持部27bは、用紙抑制部27aの両端に設けられた2つの部材からなり、画像形成装置1で使用することのできる用紙Sの最大の幅よりも長い間隙を隔てて、対向して備えられる。それぞれの保持部27bは、回転軸27Dの周囲を回転可能に備えられる。さらに、この保持部27bは転写ドラム21の直径方向に延伸し、かつ転写ドラム21の半径方向に移動可能に設けられる。なお、保持部27bは、スプリング27eによって転写ドラム21の外周側から内周側に向けて付勢されている。
【0038】
楔型押上部材27cは、保持部27bとともに回転軸27Dの周囲を回転可能に備えられる。さらに、この楔型押上部材27cは、ソレノイド(図示せず)を駆動させることにより、回転軸27Dに沿う方向に移動可能に設けられる(図4の矢印E1及びE2)。なお、楔型押上部材27cが回転軸27Dに沿う方向に移動することにより、保持部27bが転写ドラム21の直径方向に移動するよう構成されている。
より詳細に説明すると、この楔型押上部材27cは、一方の端部が楔型の形状である。すなわち、この楔型端部の先端に向かうに従い、転写ドラム21の半径方向の幅が狭くなる。本実施の形態では、一対の楔型押上部材27cが、楔型端部側を対向させて、回転軸27Dの両端側に備えられる。そして、それぞれの楔型押上部材27cは回転軸27Dと平行に延伸するよう配置される。また、楔型押上部材27cの楔型端部は、それぞれ保持部27bの内周側端部と対向するように配置される。
楔型押上部材27cは、保持部27bとともに回転軸27Dの周囲を回転し、例えば用紙抑制部27aが後述する待機位置で停止した際に、保持部27bの内周側に入り込み、保持部27bを介して用紙抑制部27aを転写ドラム21の外周面から遠ざける。このことにより後端グリッパ27が開くように構成されている。
【0039】
本実施の形態においては、図4(a)に示すように、後端グリッパ27が開いた状態では、楔型押上部材27cが保持部27bの内周側端部を支持している。また、用紙抑制部27aと転写ドラム21の外周に備えられた弾性層21Bとの間に形成される間隙が大きい。
一方、図4(b)に示すように、後端グリッパ27が閉じた状態では、楔型押上部材27cが保持部27bの内周側端部を支持していない。用紙抑制部27aと弾性層21Bとの間に形成される間隙が小さい。
なお、図4(a)に示すように、後端グリッパ27が開いた状態では、用紙抑制部27aと転写ドラム21の回転中心との間を、用紙Sを保持した先端グリッパ23が通過し得る。
【0040】
<画像形成装置1の動作>
次に、図1及び図2を参照しながら、画像形成装置1の全体の動作について説明する。なお、ここでは画像形成装置1によって1枚の用紙Sに複数色の画像形成を行う場合を説明する。
【0041】
まず原稿読み取り装置(図示せず)によって読み取られた原稿の色材反射光像や、パーソナルコンピュータ(図示せず)等によって形成された色材画像データは、例えばR(赤)、G(緑)、B(青)の各データとして、画像信号処理装置(図示せず)に入力され、予め定められた画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の4色の色材階調データに変換され、露光装置13に出力される。
【0042】
記録画像形成動作の開始に伴い、感光体ドラム11及び転写ドラム21は同期して回転を開始する。このとき、先端グリッパ23及び後端グリッパ27は、ともに開いている。
また、このとき先端グリッパ23は転写ドラム21とともに回転するのに対して、後端グリッパ27は、転写ドラム21とともに回転することなく待機位置に静止している(周速度がゼロである)。具体的には、後端グリッパ27は、図1に示すように転写ドラム21の外周であって、給紙位置Paと転写部位Trとの間の位置に対向するように配置されている。
【0043】
そして、回転する感光体ドラム11の感光層11Aが帯電装置12により帯電された後、露光装置13により画像情報に応じた一色目(たとえばイエロー)の静電潜像が形成される。また、転写ドラム21が回転を開始するのに伴い、用紙検知センサ25が転写ドラム21の位相の測定を行う。測定された位相は、制御部100へと送られる。
【0044】
一方、ロータリ現像装置14では、感光体ドラム11上に形成される静電潜像に対応する色成分トナーを有する現像装置(例えばイエローの場合にはイエローの現像器14Y)が、感光体ドラム11との対向位置に配置されるよう予め回転させられ、停止している。
そして、例えば現像器14Yにより感光体ドラム11上の静電潜像が現像され、感光体ドラム11上にトナー像が形成される。そして、このトナー像(ここではイエローのトナー像)は、感光体ドラム11の回転に伴って転写装置20と対向する転写部位Trに向かって送られていく。
【0045】
また、記録画像形成動作の開始に対応して、用紙Sの供給も行われる。具体的には、取出しロール42により用紙収容部41から取り出した用紙Sを、捌きロール43を経て、搬送ロール44を用いて供給経路51に送り出す。そして、用紙検知センサ25が用紙Sの搬送方向先端が通過したことを検出し、検出信号を制御部100へと送る。検出信号を受けた制御部100は、用紙検知センサ25によって得られた検出信号及び位相に基づき、先端グリッパ23が給紙位置Paに到達するのに合わせて、用紙Sが給紙位置Paに到達するように搬送を制御する。
【0046】
そして、給紙位置Paにおいて、先端グリッパ23が開いた状態から閉じた状態へと移行する。これに伴って、用紙Sの搬送方向先端側の端部が先端グリッパ23によって把持される。なお、このとき後端グリッパ27は、転写ドラム21の外周であって、待機位置に静止している。そして、用紙Sを把持した先端グリッパ23は、静止した後端グリッパ27と転写ドラム21の回転中心との間を通過する。
【0047】
後端グリッパ27と転写ドラム21の回転中心との間を通過した先端グリッパ23は、用紙Sを把持したまま転写部位Trを通過する。先端グリッパ23によって把持されて転写部位Trを通過した用紙Sは、先端グリッパ23に把持されたまま転写ドラム21の外周面に巻きついた状態となって回転経路53(図1参照)を搬送される。
そして、露光装置13により画像情報に応じた一色目(たとえばイエロー)の静電潜像が形成された後に、用紙検知センサ25によって用紙Sの搬送方向後端が通過したことが検知される。そして、この用紙検知センサ25からの信号を受けた制御部100が、後端グリッパ27へと指示を出す。指示を受けた後端グリッパ27は、開いた状態から閉じた状態へと移行する(図2(b)の矢印D1)。
【0048】
さて、閉じた後端グリッパ27は、転写ドラム21と同期して回転を開始する。言い換えると、用紙Sは、搬送方向の先端側の端部を先端グリッパ23によって把持され、かつ後端側の端部を後端グリッパ27によって保持されながら転写ドラム21とともに回転する。感光体ドラム11上に形成された一度目(例えばイエロー)のトナー像は、感光体ドラム11と転写ドラム21とが対向する転写部位Trにおいて、転写ドラム21上の用紙Sに転写される。なお、転写後に感光体ドラム11上に残ったトナーは、清掃装置15(図1参照)によって除去される。
【0049】
そして、二色目から、最終色(例えば黒)前の潜像形成(例えばマゼンタ、シアン)、現像及び転写が、上述した手順に従って同様に繰り返される。ただし、各色のトナー像を形成するに際しては、ロータリ現像装置14が回転を行い、対応する現像器14M、14Cが停止位置に配置される。
その間、用紙Sは、先端グリッパ23及び後端グリッパ27によって転写ドラム21に巻きつけられた状態で回転搬送され、転写部位Trを通過するたびに二色目以降のトナー像が重ねあわされるようにして順次転写される。その結果、例えばフルカラーの画像形成を行う場合には、黒(K)を除く、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)各色のトナー像が転写ドラム21上の用紙Sに多重転写される。
【0050】
そして、最終色が転写される場合には、最終色(例えば黒)前の転写の場合と異なり、転写部位Trにおいて、先端グリッパ23が閉じた状態から開いた状態へと移行する。このことにより、先端グリッパ23による把持が解除され、フルカラーの画像が形成された用紙Sは、弾性層21Bと感光体ドラム11とのニップにより、用紙Sの搬送方向先端が転写ドラム21から剥離され排紙位置Pbから排出経路52へと進入する。
【0051】
その後、用紙Sが搬送されるに従い、用紙Sの搬送方向後端を保持する後端グリッパ27は閉じた状態から開いた状態へと移行する(図2(b)の矢印D2参照)。なお、この後端グリッパ27が閉じた状態から開いた状態へと移行するときは、露光装置13により画像情報に応じた最終色(例えば黒)の静電潜像はすでに形成された後である。そして、開いた状態の後端グリッパ27は、待機位置にて停止する。
【0052】
そして、後端グリッパ27による保持が解除された用紙Sの搬送方向後端は、転写ドラム21から剥離され排紙位置Pbから排出経路52へと進入する。排出経路52へと進入した用紙Sは、定着装置30に送られる。そして、定着装置30の加熱ロール31及び加圧ロール32によって、用紙Sのトナー像が定着される。
定着終了後の用紙Sは、搬送ロール44によって画像形成装置1の機外に排出され、排紙積載部3に積載される。
【0053】
<押圧部61>
ここで、図5を参照しながら、転写ドラム21に設けられる押圧部61について説明をする。なお、図5は、本実施の形態に係る押圧部61の概略構成図である。より詳細には、図5(a)は押圧部61が設けられる転写ドラム21の斜視図であり、図5(b)は、図5(a)の矢印Vからみた押圧部61周辺の構成図である。また、図5(b)においては、先端グリッパ23を図示していない。
【0054】
まず、上述のように、本実施の形態の転写ドラム21においては、押圧部61が設けられている。また、図5(b)に示すように、押圧部61は、転写ドラム21における基部21Aが露出した露出部21Cに設けられる。
図5(b)に示すように、転写ドラム21上の用紙Sの搬送方向(矢印B、基部21Aの周方向)においては、押圧部61が弾性層先端21BLから弾性層後端21BTまでの間で弾性層21Bが設けられていない箇所に存在する。
また、押圧部61の外側の面は、回転軸21D(図1参照)に対して、弾性層21Bの外側の面よりも突出している(符号h1参照)。本実施の形態においては、押圧部61の厚みを弾性層21Bよりも厚くすることにより、押圧部61の外側の面が突出した形状を形成している。具体的には、押圧部61は、弾性層21Bよりもh1厚い寸法で構成されている。
【0055】
さらに、押圧部61は、露出部21Cであって、画像形成装置1のフロント側(図5(a)の紙面左手前側)の端部と、画像形成装置1のリア側(図5(a)の紙面右奥側)の端部とにそれぞれ設けられる。付言すると、押圧部61は、転写ドラム21の回転軸21D(図1参照)に沿う方向において、先端グリッパ23を間に挟む位置に設けられる。なお、押圧部61は、先端グリッパ23とは接触せずに設けられており、先端グリッパ23の動作を妨げない。
【0056】
押圧部61は、弾性層21Bと同一の材質で形成されている。具体的には、半導電性を有する弾性部材であり、例えばポリウレタン、クロロプレン、EPDM(エチレン・プロピレンゴム)、NBR(ニトリルゴム)等のゴム製である。
【0057】
さて、この押圧部61は、転写ドラム21の回転に伴い転写部位Trを通過する際に、感光体ドラム11を押圧する。すなわち、押圧部61は、感光体ドラム11に対してニップ圧を付与する。
なお、上述のように、転写部位Trを通過する際に、先端グリッパ23及び露出部21Cは感光体ドラム11と接触しないように構成されている。したがって、先端グリッパ23及び押圧部61が設けられた露出部21Cが、転写部位Trを通過する際に、感光体ドラム11に対してニップ圧を付与するのは押圧部61のみである。
また、本実施の形態においては、押圧部61が転写部位Trを通過する際に、押圧部61が感光体ドラム11と接する面積は、弾性層21Bが転写部位Trを通過する際に、弾性層21Bが感光体ドラム11と接する面積よりも、小さい。
【0058】
付言すると、押圧部61が転写部位Trを通過する際に感光体ドラム11に対して加えるニップ圧は、弾性層21Bが転写部位Trを通過する際に感光体ドラム11に対して加えるニップ圧とほぼ等しくなるように、本実施の形態の押圧部61は構成されている。
【0059】
具体的には、上述のように、回転軸21D(図1参照)に対する押圧部61の外側の面が、弾性層21Bの外側の面よりも突出する寸法となるように構成されている。ここで、押圧部61が突出する構成とすることにより、弾性層21Bの外側の面よりも押圧部61を突出させない場合と比較して、押圧部61が感光体ドラム11との接触によって感光体ドラム11への食い込み量が大きくなる。結果として単位面積当たりで感光体ドラム11に対して加えるニップ圧は増加する。
【0060】
上記のように、弾性層後端21BTが転写部位Trを通過することに伴い、感光体ドラム11とニップを形成する部材は弾性層21Bから押圧部61へと変化する。そして、転写部位Trにおいて、押圧部61が感光体ドラム11と接する面積は、弾性層21Bが感光体ドラム11と接する面積よりも小さいが、単位面積当たりで感光体ドラム11に対して加えるニップ圧は、押圧部61の方が弾性層21Bよりも大きい。このことにより、弾性層後端21BTが転写部位Trを通過することに伴い、感光体ドラム11とニップを形成する部材が弾性層21Bから押圧部61へと変化した際に、ニップ圧はほぼ変化しない。
また、弾性層先端21BLが転写部位Trを通過する場合においては、感光体ドラム11とニップを形成する部材は押圧部61から弾性層21Bへと変化するが、この場合においてもニップ圧はほぼ変化しない。
【0061】
さて、本実施の形態とは異なる構成を採用した2つの場合と比較しながら、本実施の形態について説明する。
第1に、本実施の形態とは異なり押圧部61が転写ドラム21に設けられない場合と比較しながら、本実施の形態について説明する。
まず、押圧部61が転写ドラム21に設けられない場合を説明する。この場合において、露出部21Cが転写部位Trを通過する際は、感光体ドラム11に対してニップ圧が加わらない(先端グリッパ23及び露出部21Cは感光体ドラム11と接触せず、感光体ドラム11にニップ圧を加えない)。一方で、弾性層21Bが転写部位Trを通過する際には、弾性層21Bが感光体ドラム11に対してニップ圧を加える。このため、転写ドラム21が回転することに伴い、露出部21Cが転写部位Trを通過する際と、弾性層21Bが転写部位Trを通過する際とで、加わるニップ圧が変化する。よって、転写ドラム21が回転することに伴い、露出部21Cが転写部位Trを通過する際と、弾性層21Bが転写部位Trを通過する際とで、感光体ドラム11のたわみ量が変化する。
【0062】
そして、この感光体ドラム11のたわみ量の変化は、本実施の形態における画像形成装置1によって用紙Sに形成される画像の品質に影響する。具体的には、感光体ドラム11のたわみ量の変化は、感光体ドラム11の表面に露光装置13が照射することで形成される静電潜像に影響を与える。
すなわち、露光装置13が感光体ドラム11の表面に照射する(書き込みを行う)際に、感光体ドラム11のたわみ量が変化すると、感光体ドラム11の表面が移動し、所謂ピントの位置ずれが起きる。特に、焦点深度の浅い屈折率分布型レンズ等を用いた場合、ピントの位置ずれの影響が大きい。そして、このピントの位置ずれが起こった際に形成された静電潜像が、現像され、用紙Sに転写された場合、用紙Sに形成される画像の画質は劣化する。例えば、用紙Sに形成される画像のハイライト部の濃度変動が大きくなることや、細線の再現性が悪化することなどにつながる。
【0063】
次に、本実施の形態について説明をする。本実施の形態においては、上述のように露出部21Cに押圧部61が設けられる。この押圧部61が感光体ドラム11に対してニップ圧を加える。このことにより、露出部21Cが転写部位Trを通過する際に生じるニップ圧の変動が抑制され、結果として画質劣化が抑制される。
【0064】
第2に、本実施の形態とは異なり押圧部61が弾性層21Bよりも突出しない場合と比較しながら、本実施の形態について説明する。なお、ここでは、押圧部61を弾性層21Bと同じ材質で構成するものとして説明をする。
まず、押圧部61が弾性層21Bよりも突出しない場合を説明する。この場合、転写ドラム21が回転することに伴い、押圧部61が転写部位Trを通過する際と、弾性層21Bが転写部位Trを通過する際とで、感光体ドラム11に加わるニップ圧が変化する。
詳細に説明すると、上述のように、感光体ドラム11と転写ドラム21との回転軸間の距離は維持されるよう配置されている。したがって、押圧部61における感光体ドラム11への食い込み量と、弾性層21Bにおける感光体ドラム11への食い込み量とは等しい。したがって、押圧部61と弾性層21Bとが単位面積当たりで感光体ドラム11を押圧する力は等しい。一方で、押圧部61が転写部位Trを通過する際に、押圧部61が感光体ドラム11と接する面積は、弾性層21Bが転写部位Trを通過する際に、弾性層21Bが感光体ドラム11と接する面積よりも、小さい。したがって、感光体ドラム11に対する押圧部61のニップ圧が、感光体ドラム11に対する弾性層21Bのニップ圧よりも小さくなる。この感光体ドラム11に対するニップ圧の変動は、上述のように画質を劣化させる。
【0065】
一方で、本実施の形態においては、押圧部61が弾性層21Bよりも突出することにより、食い込み量が大きくなる。したがって、押圧部61が単位面積当たりで感光体ドラム11を押圧する力は、弾性層21Bが単位面積当たりで感光体ドラム11を押圧する力よりも大きい。したがって、露出部21Cが転写部位Trを通過する際のニップ圧の変動がより抑制され、結果として画質劣化が抑制される。
【0066】
さて、押圧部61は、転写部位Trを通過することに伴いニップ圧を受けた際に、転写ドラム21の直径方向においては伸縮するとともに、用紙Sの搬送方向(矢印B)においては伸長する。また、本実施の形態においては、押圧部61は、転写部位Trを通過することに伴いニップ圧を受けた際に、弾性層先端21BLから弾性層後端21BTまでにわたって存在すればよい。したがって、押圧部61がニップ圧の影響を受けない状態(弾性変形していない状態)において、押圧部61と弾性層先端21BLとの間、あるいは押圧部61と弾性層後端21BTとの間に、間隙が形成される寸法で押圧部61が形成されてもよい。
【0067】
<変形例>
ここで、図6及び図7を参照しながら、押圧部61の変形例について説明をする。なお、図6は、露出部21Cに設けられる押圧部61の変形例を示す。より詳細には、図6(a)乃至図6(c)は、それぞれ第1乃至第3の変形例をそれぞれ示す。図7は、先端グリッパ23に設けられる押圧部61の変形例を示す。より詳細には、図7(a)は押圧部61が設けられる転写ドラム21の斜視図であり、図7(b)は、図7(a)の矢印VIIからみた押圧部61周辺の構成図である。なお、図7(a)において先端グリッパ23は閉じており、図7(b)において先端グリッパ23は開いている。
【0068】
<変形例1>
まず、図6(a)に示すように、第1の変形例として、基部21Aの高さを変更した例について説明する。第1の変形例においては、基部21Aにおける露出部21Cとなる部分が上述の実施の形態とは異なる。すなわち、露出部21Cとなる基部21Aの回転軸21D(図1参照)に対する外側の面が、他の部分における基部21Aの外側の面よりも突出している(符号h1参照)。なお、この例においては、押圧部61と弾性層21Bとは同じ厚みである。
このことにより、回転軸21D(図1参照)に対する押圧部61の外側の面は、弾性層21Bの外側の面よりも突出する(符号h1参照)。
【0069】
<変形例2>
次に、図6(b)に示すように、第2の変形例として、押圧部61の材質を変更した例について説明する。第2の変形例においては、押圧部61と弾性層21Bとが異なる材質で形成されている。具体的には、押圧部61は、弾性層21Bよりも、硬度の高い材質によって形成されている。このことにより、押圧部61が転写部位Trを通過する際に感光体ドラム11に対して加えるニップ圧を、弾性層21Bが転写部位Trを通過する際に感光体ドラム11に対して加えるニップ圧とほぼ等しくする。なお、この例においては、押圧部61は弾性層21Bと同じ厚みで形成されており、弾性層21Bの外側の面よりも突出することなく構成されている。
付言すると、押圧部61を弾性層21Bと異なる材質で形成し、かつ押圧部61の外側の面を弾性層21Bの外側の面よりも突出するように構成してもよい。
【0070】
<変形例3>
次に、図6(c)に示すように、第3の変形例として、押圧部61を他の部材と一体として形成した例について説明する。上述の実施形態においては、押圧部61と弾性層21Bとを別体として説明したが、これに限定されることなく、図6(c)に示すように、押圧部61と弾性層21Bとを一体として形成してもよい。
【0071】
<変形例4>
次に、図7(a)及び(b)に示すように、押圧部61を先端グリッパ23に設ける例について説明する。
上述の各例においては、押圧部61がドラム形状の基部21Aに固定される構成を説明したがこれに限定されない。押圧部61は、転写ドラム21が回転することに伴って押圧部61が感光体ドラム11と対峙する際(転写部位Trを通過する際)に、感光体ドラム11を押圧する構成であればよい。したがって、図7(a)及び(b)に示すように、押圧部61は、ドラム形状の基部21A以外の箇所、例えば先端グリッパ23に設けられてもよい。
【0072】
この例においては、先端グリッパ23の外側部材23aに押圧部61が設けられている。したがって、外側部材23aの動作に伴い、押圧部61は基部21Aに対して相対移動する。そして、図7(b)に示すように、先端グリッパ23が閉じた状態において、押圧部61が弾性層先端21BLから弾性層後端21BTまでの間で弾性層21Bが設けられていない箇所に存在するように構成されている。
【0073】
また、図7(a)に示すように、押圧部61は、露出部21Cであって、画像形成装置1のフロント側(図7(a)の紙面左手前側)の端部から、画像形成装置1のリア側(図1(a)の紙面右奥側)の端部にわたって存在するように構成されている。このため、押圧部61が転写部位Trを通過する際に、押圧部61が感光体ドラム11と接する面積は、弾性層21Bが転写部位Trを通過する際に、弾性層21Bが感光体ドラム11と接する面積とほぼ等しい。
なお、この例においては、押圧部61を弾性層21Bと同じ材質(同じ硬度)で構成し、かつ回転軸21D(図1参照)に対する押圧部61及び弾性層21Bの外側の面を同じ面上に配置してもよい。また、図7(b)に示すように、弾性層21Bの用紙搬送方向における両端(弾性層先端21BL、弾性層後端21BT)、および押圧部61の用紙搬送方向における両端を、先端グリッパ23の外側部材23aの回転方向(図3(a)の矢印F1及びF2)に沿って形成してもよい。このことにより、先端グリッパ23の開閉がより容易になる。
【0074】
この例においては、図5に示す例と異なり、転写ドラム21の回転軸21D(図1参照)に沿う方向において、転写ドラム21の両端(先端グリッパ23の両側)に押圧部61を設ける構成ではない。したがって、転写ドラム21の回転軸21D(図1参照)に沿う方向のサイズにおいて小型化することが可能である。
【0075】
さて、上記の説明においては、転写部位Trを通過する際に、先端グリッパ23は感光体ドラム11と接触しないとして説明したがこれに限定されず、先端グリッパ23が感光体ドラム11と接触する構成であってもよい。この場合、先端グリッパ23が設けられた露出部21Cが、転写部位Trを通過する際に、感光体ドラム11に対してニップ圧を付与するのは押圧部61及び先端グリッパ23となる。
【符号の説明】
【0076】
1…画像形成装置、2…筺体、3…排紙積載部、10…画像形成部、11…感光体ドラム、12…帯電装置、13…露光装置、14…ロータリ現像装置、15…清掃装置、20…転写装置、21…転写ドラム、21A…基部、21B…弾性層、21C…露出部、23…先端グリッパ、25…用紙検知センサ、27…後端グリッパ、30…定着装置、40…用紙供給部、41…用紙収容部、51…供給経路、52…排出経路、61…押圧部、100…制御部、S…用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像保持体と、
前記像保持体上に画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段により前記像保持体上に形成された画像を記録媒体に転写する転写手段と
を含み、前記転写手段は、
回転可能に設けられる基部と、
前記基部の外周に設けられ、外周面の一部が切り欠かれた切り欠き部を備えるとともに前記像保持体に圧接される外周材と、
前記基部とともに回転するように設けられ、当該基部が回転することに伴い前記切り欠き部が前記像保持体と対峙する際に、当該像保持体を押圧する押圧部と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記切り欠き部に設けられ、供給される記録材を前記外周材の前記外周面に保持する保持部材をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記押圧部は、前記基部の周方向において前記切り欠き部に対応する範囲に存在することを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記画像形成手段が前記像保持体に画像を形成する際に、前記基部が回転することに伴い前記切り欠き部が当該像保持体と対峙することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記押圧部は、前記外周材の前記外周面よりも外側に突出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項6】
回転可能に設けられる基部と、
前記基部の外周に設けられ、外周面の一部が切り欠かれた切り欠き部を備えるとともに像保持体に圧接される外周材と、
前記切り欠き部に設けられ、供給される記録材を前記外周材の前記外周面に保持する保持部材と、
前記基部とともに回転するように設けられ、当該基部が回転することに伴い前記切り欠き部が前記像保持体と対峙する際に、当該像保持体を押圧する押圧部と
を含む転写装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−155041(P2012−155041A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12464(P2011−12464)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】