説明

画像形成装置

【課題】送りローラの移動を抑制することが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】この熱転写プリンタ(画像形成装置)では、送りローラ軸受6aは、送りローラ2の外径と実質的に同一の内径を有する円弧形状に形成されるとともに、送りローラ2の外周面2b側へ突出し、かつ、送りローラ2の外周面2bを支持する送りローラ支持面部6cを含む。また、用紙25の負荷を受ける側の送りローラ支持面部6cの用紙負荷側端部6dは、用紙負荷側端部6dを中心とする送りローラ2を押圧する押圧力によるモーメントの大きさが、用紙負荷側端部6dを中心とする用紙25の負荷によるモーメントの大きさ以上の大きさになるような位置に設けられている。また、シャーシ1の開口部1fの幅は、送りローラ軸受6aの幅と同等またはそれ以下に設定されている。また、円弧形状の送りローラ支持面部6cは、送りローラ軸受6aの内面に、180度未満の角度範囲で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像形成装置に関し、特に、送りローラおよび送りローラ軸受を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、送りローラおよび送りローラ軸受を備えた画像形成装置が知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、送りローラ軸受に設けられた2個所の当接部によって送りローラを支持するとともに、送りローラに作用する作用力による送りローラの移動を考慮して、2個所の当接部の位置を設定することにより、送りローラの移動を抑制する画像形成装置が開示されている。
【0004】
また、従来、画像形成装置の一例として、熱転写プリンタが知られている。図10は、従来の一例による熱転写プリンタの全体構成を示した斜視図である。図11は、図10に示した従来の熱転写プリンタの平面図である。図12〜図14は、図10に示した従来の熱転写プリンタの詳細な構造を説明するための図である。図10〜図14を参照して、従来の熱転写プリンタの構造について説明する。
【0005】
従来の熱転写プリンタは、図10および図11に示すように、金属製のシャーシ101と、用紙125を送るための金属製の送りローラ102と、所定の押圧力で送りローラ102を押圧する金属製の押さえローラ103と、離間部材104と、送りローラ102の一方端を回転可能に支持する樹脂製の送りローラ軸受105と、送りローラ102の他方端を回転可能に支持する樹脂製の送りローラ軸受106と、押さえローラ103を回転可能に支持する樹脂製の押さえローラ軸受107と、送りローラ102に取り付けられる送りローラギア108と、押さえローラ軸受107を支持する金属製の軸受支持板109と、引張りコイルバネ110と、送りローラ102などを駆動するためのモータ111と、印字を行うためのサーマルヘッド112と、プラテンローラ113と、プラテンローラ113を回転可能に支持する樹脂製のプラテンローラ軸受114と、ねじりコイルバネ115と、サーマルヘッド112を駆動させるためのモータ116と、インクシート巻取りギア117と、ローラ軸118と、ローラ軸118に取り付けられたゴム製の給排紙ローラ119と、ローラ軸118に取り付けられるローラ軸ギア120と、モータブラケット121と、中間ギア122、123および124とを備えている。
【0006】
また、図10に示すように、シャーシ101の一方側面101aには、モータブラケット121が取り付けられている。また、シャーシ101の他方側面101bには、インクシート(図示せず)を取り付けるためのインクシート挿入部101cが設けられている。また、シャーシ101の他方側面101bには、引張りコイルバネ110の一方端が取り付けられるバネ取付孔101dが設けられている。また、図12に示すように、シャーシ101の一方側面101aには、送りローラ軸受105を支持する開口部101eが設けられている。また、シャーシ101の他方側面101bには、送りローラ軸受106を支持する開口部101fが設けられている。
【0007】
また、送りローラ102は、図12に示すように、シャーシ101の一方側面101a側の外周面102aと、シャーシ101の他方側面101b側の外周面102bと、ギア挿入部102cと、用紙搬送部102dとを有する。また、送りローラ102は、送りローラ軸受105および106に回転可能に支持されている。また、送りローラ102の外
周面102bは、図14に示すように、送りローラ軸受106の送りローラ支持部106aにより、紙面と垂直方向に線状に支持されている。また、送りローラ102の用紙搬送部102dの表面には、転造加工によって所定の高さを有する凸部が形成されている。
【0008】
また、金属製の離間部材104は、押さえローラ103の直径よりも大きい直径を有するとともに、押さえローラ103の外周面103aおよび103bに取り付けられている。この離間部材104を送りローラ102の最外周面に接触することによって、送りローラ102の用紙搬送部102dの凸部の先端が押さえローラ103に接触するのを防止している。また、押さえローラ103の外周面103aおよび103bは、押さえローラ軸受107により回転可能に支持されている。この押さえローラ軸受107は、シャーシ101の一方側面101aおよび他方側面101bのそれぞれの内側に設けられた軸受支持板109に取り付けられている。この軸受支持板109は、図10に示すように、支持部109aを中心として回動可能にシャーシ101の一方側面101aおよび他方側面101bに取り付けられている。また、軸受支持板109のバネ取付部109bには、押さえローラ103を送りローラ102に対して押圧させる方向に付勢するための引張りコイルバネ110の他方端が取り付けられている。
【0009】
また、サーマルヘッド112は、図10および図11に示すように、シャーシ101の一方側面101aおよび他方側面101bの内側に、支持軸112aを中心として回動可能に取り付けられている。この支持軸112aには、上記したねじりコイルバネ115が取り付けられている。このねじりコイルバネ115は、サーマルヘッド112をプラテンローラ113から離間させる方向に付勢する機能を有する。また、印画時には、サーマルヘッド112は、プラテンローラ113を押圧する方向(図10の矢印E方向)に回動し、プラテンローラ113を押圧する。また、サーマルヘッド112は、プラテンローラ113に対向するように配置されている。
【0010】
また、送りローラギア108には、図10および図11に示すように、モータ111からの駆動力が中間ギア122を介して伝達される。また、送りローラギア108は、中間ギア122および123に係合している。この中間ギア123は、送りローラギア108からの駆動力をインクシート巻取り部材(図示せず)に嵌め込まれたインクシート巻取りギア117に伝達する。また、中間ギア123は、送りローラギア108からの駆動力をローラ軸ギア120を介して、給排紙ローラ119が取り付けられたローラ軸118に伝達する。
【0011】
次に、図10および図11を参照して、従来の一例による熱転写プリンタの用紙125の送り動作について説明する。図10および図11に示すように、モータ111の駆動力が、中間ギア122を介して、送りローラギア108に伝達される。これにより、送りローラ102が回転する。また、モータ111の駆動力が、送りローラギア108から中間ギア123を介して、インクシート巻取りギア117に伝達される。これにより、インクシート巻取り部材(図示せず)が回転する。また、モータ111の駆動力が、送りローラギア108から複数の中間ギア123を介して、ローラ軸ギア120に伝達される。これにより、ローラ軸118が回転する。また、給紙時には、サーマルヘッド112は、ねじりコイルバネ115によって、プラテンローラ113から離間する方向(図10の矢印F方向)に回動する。また、給紙時には、用紙125は、送りローラ102および給排紙ローラ119によって、給紙方向(図10の矢印H方向)に搬送される。また、印画時には、サーマルヘッド112は、モータ111によって、プラテンローラ113を押圧する方向(図10の矢印E方向)に回動するとともに、プラテンローラ113を押圧する。また、印画時には、用紙125とインクシート(図示せず)は、サーマルヘッド112とプラテンローラ113に挟み込まれた状態で搬送される。また、印画時には、用紙125は、送りローラ102、押さえローラ103および給排紙ローラ119によって、排紙方向(
図10の矢印G方向)に搬送される。また、印画時には、インクシート(図示せず)は、送りローラ102、押さえローラ103およびインクシート巻取り部材(図示せず)によって、排紙方向(図10の矢印G方向)に搬送される。
【特許文献1】特開2004−25587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図10〜図14に示した従来の熱転写プリンタでは、用紙125の負荷を受けたときに、送りローラ支持部106aを中心とした用紙125の負荷によるモーメントによって、送りローラ102の送りローラ軸受106に対する接触位置が、送りローラ支持部106aから用紙125の負荷の方向(図14の矢印H方向)に移動するという問題点があった。以下、この問題点について、図14を参照して、詳細に説明する。まず、用紙125の負荷の大きさをWとし、送りローラ支持部106aから用紙125の負荷の作用線までの垂直距離をaとすると、送りローラ支持部106aには、用紙125の負荷によるモーメントの大きさW×aが働く。この場合、送りローラ支持部106aは、押さえローラ103による押圧力の作用線上に存在するために、送りローラ支持部106aに、押さえローラ103の押圧力によるモーメントが働くことはない。このように、送りローラ支持部106aには、用紙125の負荷によるモーメントが働くので、その用紙125の負荷によるモーメントの大きさW×aに起因して、送りローラ102の送りローラ軸受106に対する接触位置が送りローラ支持部106aから用紙125の負荷の方向(図14の矢印H方向)に移動するという問題点が発生する。
【0013】
また、上記特許文献1に開示された構造では、送りローラ軸受に設けられた2個所の当接部は、線状に送りローラを支持するため、支持面積が非常に少ない。このため、送りローラから押さえつけられる押圧力と送りローラの回転とによる動摩擦力によって、支持面積の少ない当接部が磨耗しやすい。このように、送りローラ軸受の当接部が磨耗すると、送りローラ軸受の当接部の送りローラに対する当接位置がずれるという不都合が生じる。ここで、上記特許文献1に開示された構造では、送りローラ軸受の当接部の設置位置によって送りローラの移動を抑制しているため、上記のように、送りローラ軸受当接部の位置がずれるという不都合が生じると、送りローラの移動を抑制することができないという問題点がある。
【0014】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、送りローラの移動を抑制することが可能な画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明の第1の局面による画像形成装置は、用紙を搬送する送りローラと、所定の押圧力で送りローラを押圧する押さえローラと、送りローラを回転可能に支持する送りローラ軸受と、送りローラが挿入される開口部を有するシャーシとを備えた画像形成装置において、送りローラ軸受は、送りローラの外径と実質的に同一の内径を有する円弧形状に形成されるとともに、送りローラの外周面側へ突出し、かつ、送りローラの外周面を支持する送りローラ支持面部を含み、用紙の負荷を受ける側の送りローラ支持面部の用紙負荷側端部は、用紙負荷側端部を中心とする、送りローラを押圧する押圧力によるモーメントの大きさが、用紙負荷側端部を中心とする用紙の負荷によるモーメントの大きさ以上の大きさになるような位置に設けられており、シャーシの開口部の幅は、送りローラ軸受の幅と同等またはそれ以下に設定されており、円弧形状の送りローラ支持面部は、送りローラ軸受の内面に、180度未満の角度範囲で形成されている。
【0016】
この第1の局面による画像形成装置では、上記のように、送りローラ軸受に、送りロー
ラの外径と実質的に同一の内径を有する円弧形状に形成されるとともに、送りローラの外周面を支持する送りローラ支持面部を設けることによって、送りローラの外周面を面状に支持することができる。これにより、線状に支持する場合に比べて、支持面積が増加するので、送りローラ支持面部が磨耗するのを有効に抑制することができる。その結果、摩擦に起因する送りローラ支持面部の送りローラに対する接触位置の位置ずれを抑制することができる。また、送りローラ軸受に、送りローラの外周面側へ突出する送りローラ支持面部を設けることによって、容易に送りローラ支持面部を円弧形状に形成することができる。また、用紙の負荷を受ける側の送りローラ支持面部の用紙負荷側端部を、用紙負荷側端部を中心とする、送りローラを押圧する押圧力によるモーメントの大きさが用紙負荷側端部を中心とする用紙の負荷によるモーメントの大きさ以上の大きさになるような位置に設けることによって、用紙負荷側端部を中心として用紙の負荷の方向に送りローラが回動するのを抑制することができる。これにより、送りローラ軸受に対する送りローラの移動を抑制することができる。また、送りローラ軸受が挿入されるシャーシの開口部の幅を、送りローラ軸受の幅と同等またはそれ以下に設定することによって、送りローラ軸受とシャーシの開口部との間の嵌合隙間を無くすことができるので、送りローラ軸受のシャーシに対する水平方向の移動を抑制することができる。これにより、送りローラが水平方向へ移動するのを抑制することができる。また、円弧形状の送りローラ支持面部を、送りローラ軸受の内面に180度未満の角度範囲で形成することによって、送りローラの外周面を180度未満の角度範囲で支持することができる。これにより、円弧形状の送りローラ支持面部を送りローラの外径と実質的に同一の内径を有するように形成しても、円弧形状の送りローラ支持面部に送りローラの外周面が嵌らなくなるという不都合が生じない。その結果、円弧形状の送りローラ支持面部に送りローラの外周面を嵌めることができるので、送りローラを送りローラ軸受に取り付けることができる。
【0017】
この第2の局面による画像形成装置は、用紙を搬送する送りローラと、所定の押圧力で送りローラを押圧する押さえローラと、送りローラを回転可能に支持する送りローラ軸受とを備え、送りローラ軸受は、送りローラの送りローラ軸受によって支持される部分の外径と実質的に同一の内径を有する円弧形状に形成されるとともに、送りローラの外周面側へ突出し、かつ、送りローラの外周面を支持する送りローラ支持面部を含み、用紙の負荷を受ける側の送りローラ支持面部の用紙負荷側端部は、用紙負荷側端部を中心とする、送りローラを押圧する押圧力によるモーメントの大きさが、用紙負荷側端部を中心とする用紙の負荷によるモーメントの大きさ以上の大きさになるような位置に設けられている。
【0018】
この第2の局面による画像形成装置では、上記のように、送りローラ軸受に、送りローラの送りローラ軸受によって支持される部分の外径と実質的に同一の内径を有する円弧形状に形成されるとともに、送りローラの外周面を支持する送りローラ支持面部を設けることによって、送りローラの外周面を面状に支持することができる。これにより、線状に支持する場合に比べて、支持面積が増加するので、送りローラ支持面部が磨耗するのを有効に抑制することができる。その結果、摩擦に起因する送りローラ支持面部の送りローラに対する接触位置の位置ずれを抑制することができる。また、送りローラ軸受に、送りローラの外周面側へ突出する送りローラ支持面部を設けることによって、容易に送りローラ支持面部を円弧形状に形成することができる。また、用紙の負荷を受ける側の送りローラ支持面部の用紙負荷側端部を、用紙負荷側端部を中心とする、送りローラを押圧する押圧力によるモーメントの大きさが用紙負荷側端部を中心とする用紙の負荷によるモーメントの大きさ以上の大きさになるような位置に設けることによって、用紙負荷側端部を中心として用紙の負荷の方向に送りローラが回動するのを抑制することができる。これにより、送りローラ軸受に対する送りローラの移動を抑制することができる。
【0019】
上記第2の局面による画像形成装置において、好ましくは、用紙の負荷の大きさをWとし、用紙負荷側端部から用紙の負荷の作用線までの垂直距離をaとし、押さえローラによ
る押圧力の大きさをPとし、用紙負荷側端部から押圧力の作用線までの垂直距離をbとした場合、以下の式を満たすように、用紙負荷側端部から押圧力の作用線までの垂直距離bを設定することによって、用紙負荷側端部の位置が設定されている。
【0020】
W×a≦P×b
このように構成すれば、上記式を用いて、送りローラ軸受に対して送りローラが移動しないように、用紙負荷側端部の位置を容易に設定することができる。
【0021】
上記第2の局面による画像形成装置において、好ましくは、送りローラが挿入される開口部を有するシャーシをさらに備え、送りローラ軸受が挿入されるシャーシの開口部の幅は、送りローラ軸受の幅と同等またはそれ以下に設定されている。このように構成すれば、送りローラ軸受とシャーシの開口部との間の嵌合隙間を無くすことができるので、送りローラ軸受のシャーシに対する水平方向の移動を抑制することができる。これにより、送りローラが水平方向へ移動するのを抑制することができる。
【0022】
上記第2の局面による画像形成装置において、好ましくは、円弧形状の送りローラ支持面部は、送りローラ軸受の内面に180度未満の角度範囲で形成されている。このように構成すれば、送りローラの外周面を180度未満の角度範囲で支持することができる。これにより、円弧形状の送りローラ支持面部を送りローラの送りローラ軸受によって支持される部分の外径と実質的に同一の内径を有するように形成しても、円弧形状の送りローラ支持面部に送りローラの外周面が嵌らなくなるという不都合が生じない。その結果、円弧形状の送りローラ支持面部に送りローラの外周面を嵌めることができるので、容易に、送りローラを送りローラ軸受に取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態による熱転写プリンタの全体構成を示した斜視図である。図2は、図1に示した一実施形態による熱転写プリンタのモータおよび各ギアを示した正面図である。図3〜図9は、図1に示した熱転写プリンタの詳細な構造を説明するための図である。図1〜図9を参照して、本発明の一実施形態による熱転写プリンタの構造について説明する。なお、本実施形態では、本発明の画像形成装置の一例としての熱転写プリンタについて説明する。
【0025】
本発明の一実施形態による熱転写プリンタは、図1〜図3に示すように、金属製のシャーシ1と、用紙25を搬送する金属製の送りローラ2と、所定の押圧力で送りローラ2を押圧する金属製の押さえローラ3と、離間部材4と、樹脂製の送りローラ軸受5aおよびプラテンローラ軸受5bを含む側板5と、樹脂製の送りローラ軸受6aおよびプラテンローラ軸受6bを含む側板6と、押さえローラ3を回転可能に支持する樹脂製の押さえローラ軸受7と、送りローラ2に取り付けられる送りローラギア8と、押さえローラ軸受7を支持する金属製の軸受支持板9と、引張りコイルバネ10と、送りローラ2などを駆動するためのモータ11と、印字を行うためのサーマルヘッド12と、プラテンローラ13と、ねじりコイルバネ14と、サーマルヘッド12を駆動させるためのモータ15と、インクシート巻取りギア16と、ローラ軸17と、ローラ軸17に取り付けられたゴム製の給排紙ローラ18と、ローラ軸17に取り付けられるローラ軸ギア19と、モータブラケット20と、中間ギア21〜24とを備えている。
【0026】
また、図1に示すように、シャーシ1の一方側面1aには、モータブラケット20が取り付けられている。また、シャーシ1の他方側面1bには、インクシート(図示せず)を取り付けるためのインクシート挿入部1cが設けられている。また、シャーシ1の他方側
面1bには、引張りコイルバネ10の一方端が取り付けられるバネ取付孔1dが設けられている。また、シャーシ1の一方側面1aには、送りローラ軸受5aを支持する開口部1eが設けられている。また、シャーシ1の他方側面1bには、送りローラ軸受6aを支持する開口部1fが設けられている。
【0027】
また、送りローラ2は、図5に示すように、シャーシ1の一方側面1a側の外周面2aと、シャーシ1の他方側面1b側の外周面2bと、ギア挿入部2cと、用紙搬送部2dとを有する。また、送りローラ2の一方端は、側板5と一体的に形成された送りローラ軸受5aに回転可能に支持されている。また、送りローラ2の他方端は、側板6と一体的に形成された送りローラ軸受6aに回転可能に支持されている。また、送りローラ2の用紙搬送部2dの表面には、図5に示すように、転造加工によって所定の高さを有する凸部が形成されている。
【0028】
ここで、本実施形態では、図6および図7に示すように、送りローラ軸受6aは、上方が開放された半円筒形状を有するとともに、その送りローラ軸受6aの内面には、送りローラ2の外周面2bを支持する送りローラ支持面部6cが設けられている。送りローラ支持面部6cは、送りローラ2の送りローラ軸受6aによって支持される部分の外径と実質的に同一の内径を有する円弧形状に形成されている。また、送りローラ支持面部6cは、送りローラ2の外周面2b側に突出するように形成されている。また、送りローラ支持面部6cには、用紙25の負荷を受ける側の端部に用紙負荷側端部6dが設けられている。また、用紙25の負荷の大きさをWとし、用紙負荷側端部6dから用紙25の負荷の作用線までの垂直距離をaとし、押さえローラ3による押圧力の大きさをPとし、下記式を満たすようなbを、用紙負荷側端部6dから押圧力の作用線までの垂直距離とすることによって、用紙負荷側端部6dの位置を設定している。
【0029】
W×a≦P×b
これにより、用紙負荷側端部6dを中心とする、押さえローラ3による押圧力によるモーメントの大きさが、用紙負荷側端部6dを中心とする用紙25の負荷によるモーメントの大きさ以上の大きさになる。その結果、用紙負荷側端部6dを中心として用紙25の負荷方向に、送りローラ2が回動するのが抑制される。
【0030】
また、本実施形態では、図7に示すシャーシ1の開口部1fの幅は、送りローラ軸受6aの幅と同等またはそれ以下に設定されている。これにより、送りローラ軸受6aは、シャーシ1の開口部1fの一対の内側面間に、隙間の無い状態で取り付けられているので、6aは、シャーシ1の開口部1fの一対の内周面と底面との3箇所で支持された状態になる。また、送りローラ支持面部6cは、送りローラ軸受6aの内面に、180度未満の角度範囲で形成されている。また、図6および図7に示す送りローラ支持面6cの排紙方向(図7の矢印C方向)側の排紙側端部6eは、押さえローラ3の押圧力の作用線上に位置する送りローラ支持面部6cの最下点6fより排紙方向側(図7の矢印C方向)に存在するとともに、送りローラ支持面部6cの最下点6fより高い位置に存在している。これにより、送りローラ2の自重および押さえローラ3による押圧力によって、送りローラ2が排紙方向(図7の矢印C方向)側に移動するのを抑制している。
【0031】
また、図5に示すように、押さえローラ3の外周面3aおよび3bには、押さえローラ3の直径よりも大きい直径を有する金属製の離間部材4が取り付けられている。これにより、離間部材4を送りローラ2の最外周面に接触させることによって、送りローラ2の用紙搬送部2dの凸部の先端が押さえローラ3に接触するのを防止している。また、押さえローラ3の外周面3aおよび3bは、押さえローラ軸受7により回転可能に支持されている。この押さえローラ軸受7は、送りローラ2と対向する部分が開口している。また、押さえローラ軸受7は、シャーシ1の一方側面1aおよび他方側面1bのそれぞれの内側に
設けられた軸受支持板9に取り付けられている。この軸受支持板9は、図4に示すように、支持部9aを中心として回動可能にシャーシ1の一方側面1aおよび他方側面1bに取り付けられている。また、軸受支持板9のバネ取付部9bには、押さえローラ3を送りローラ2に対して押圧させる方向に付勢するための引張りコイルバネ10の他方端が取り付けられている。なお、この引張りコイルバネ10の一方端は、上記したように、シャーシ1のバネ取付孔1d(図1参照)に取り付けられている。
【0032】
また、サーマルヘッド12は、図1および図3に示すように、シャーシ1の一方側面1aおよび他方側面1bの内側に、支持軸12aを中心として回動可能に取り付けられている。また、シャーシ1の一方側面1a側の支持軸12aには、ねじりコイルバネ14が取り付けられている。このねじりコイルバネ14は、サーマルヘッド12をプラテンローラ13から離間させる方向に付勢する機能を有する。また、印画時には、サーマルヘッド12は、プラテンローラ13を押圧する方向(図1の矢印A方向)に回動し、プラテンローラ13を押圧する。また、サーマルヘッド12は、プラテンローラ13に対向するように配置されている。
【0033】
また、送りローラギア8は、図2および図3に示すように、モータ11からの駆動力が中間ギア21を介して伝達される。また、送りローラギア8は、中間ギア22および23にも係合している。この中間ギア22は、送りローラギア8からの駆動力をインクシート巻取り部材(図示せず)に嵌め込まれたインクシート巻取りギア16に伝達する。また、中間ギア23は、送りローラギア8からの駆動力をローラ軸ギア19を介して、給排紙ローラ18が取り付けられたローラ軸17に伝達する。
【0034】
図8および図9は、本発明の一実施形態による熱転写プリンタの送りローラ2の送りローラ軸受5aおよび6aに対する組立工程を説明するための断面図である。図8および図9を参照して、送りローラ2の組立工程について説明する。まず、図8に示すように、送りローラ2のギア挿入部2cを送りローラギア8の挿入孔8aに嵌め込む。この状態から、送りローラ2の他方端部を側板5の外側から送りローラ軸受5aに挿入する。その後、送りローラ2をシャーシ1の底面に対して垂直下方に移動することにより、送りローラ軸受5aおよび6aに送りローラ2を取り付ける。これにより、図9に示す状態となる。
【0035】
次に、図1〜図3を参照して、本発明の一実施形態による熱転写プリンタの用紙25の送り動作について説明する。図2および図3に示すように、モータ11の駆動力が、中間ギア21を介して、送りローラギア8に伝達される。これにより、送りローラ2が回転する。また、モータ11の駆動力が、送りローラギア8から中間ギア22を介して、インクシート巻取りギア16に伝達される。これにより、インクシート巻取り部材(図示せず)が回転する。また、モータ11の駆動力が、送りローラギア8から複数の中間ギア23を介して、ローラ軸ギア19に伝達される。これにより、給排紙ローラ18が回転する。また、図1に示すように、給紙時には、サーマルヘッド12は、ねじりコイルバネ14によって、プラテンローラ13から離間する方向(図1の矢印B方向)に回動する。また、給紙時には、用紙25は、送りローラ2および給排紙ローラ18によって、給紙方向(図1の矢印D方向)に搬送される。また、印画時には、サーマルヘッド12は、モータ15によって、プラテンローラ13を押圧する方向(図1の矢印A方向)に回動するとともに、プラテンローラ13を押圧する。また、印画時には、用紙25とインクシート(図示せず)は、サーマルヘッド12とプラテンローラ13に挟み込まれた状態で搬送される。また、印画時には、用紙25は、送りローラ2、押さえローラ3および給排紙ローラ18によって、排紙方向(図1の矢印C方向)に搬送される。また、印画時には、インクシート(図示せず)は、送りローラ2、押さえローラ3およびインクシート巻取り部材(図示せず)によって、排紙方向(図1の矢印C方向)に搬送される。
【0036】
本実施形態では、上記のように、送りローラ軸受6aに、送りローラ2の送りローラ軸受6aによって支持される部分の外径と実質的に同一の内径を有する円弧形状に形成されるとともに、送りローラ2の外周面2bを支持する送りローラ支持面部6cを設けることによって、送りローラ2の外周面2bを面状に支持することができる。これにより、線状に支持する場合に比べて、支持面積が増加するので、送りローラ支持面部6cが磨耗するのを有効に抑制することができる。その結果、摩擦に起因する送りローラ支持面部6cの送りローラ2に対する接触位置の位置ずれを抑制することができる。また、送りローラ軸受6aに、送りローラ2の外周面2b側へ突出する送りローラ支持面部6cを設けることによって、容易に送りローラ支持面部6cを円弧形状に形成することができる。
【0037】
また、本実施形態では、用紙25の負荷を受ける側の送りローラ支持面部6cの用紙負荷側端部6dを、用紙負荷側端部6dを中心とする、送りローラ2を押圧する押圧力によるモーメントの大きさが用紙負荷側端部6dを中心とする用紙25の負荷によるモーメントの大きさ以上の大きさになるような位置に設けることによって、用紙負荷側端部6dを中心として用紙25の負荷の方向に送りローラ2が回動するのを抑制することができる。これにより、送りローラ軸受6aに対する送りローラ2の移動を抑制することができる。
【0038】
また、本実施形態では、送りローラ軸受6aが挿入されるシャーシ1の開口部1fの幅を、送りローラ軸受6aの幅と同等またはそれ以下に設定することによって、送りローラ軸受6aとシャーシ1の開口部1fの内側面との間の嵌合隙間を無くすことができるので、送りローラ軸受6aのシャーシ1に対する水平方向の移動を抑制することができる。これにより、送りローラ2が水平方向へ移動するのを抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態では、円弧形状の送りローラ支持面部6cを、送りローラ軸受6aの内面に180度未満の角度範囲で形成することによって、送りローラ2の外周面2bを180度未満の角度範囲で支持することができる。これにより、円弧形状の送りローラ支持面部6cを送りローラ2の送りローラ軸受6aによって支持される部分の外径と実質的に同一の内径を有するように形成しても、円弧形状の送りローラ支持面部6cに送りローラ2の外周面2bが嵌らなくなるという不都合が生じない。その結果、円弧形状の送りローラ支持面部6cに送りローラ2の外周面2bを嵌めることができるので、送りローラ2を送りローラ軸受6aに取り付けることができる。
【0040】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0041】
たとえば、上記実施形態では、画像形成装置の一例として熱転写プリンタを示したが、本発明はこれに限らず、送りローラを有する画像形成装置であれば、熱転写プリンタ以外の他の画像形成装置にも適用可能である。
【0042】
また、上記実施形態では、本発明を、シャーシ1の他方側面1b側の送りローラ軸受6aおよび開口部1fに適用した例を示したが、本発明はこれに限らず、シャーシ1の一方側面1a側の送りローラ軸受5aおよび開口部1eに適用してもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、図4に示すように、送りローラ軸受6aを、上方が開放された半円筒形状に形成した例を示したが、本発明はこれに限らず、送りローラ軸受6aを、円筒形状に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態による熱転写プリンタの全体構成を示した斜視図である。
【図2】図1に示した一実施形態による熱転写プリンタのモータおよび各ギアを示した正面図である。
【図3】図1に示した一実施形態による熱転写プリンタの平面図である。
【図4】図1に示した一実施形態による熱転写プリンタの押さえローラが送りローラを押圧する機構を示した斜視図である。
【図5】図3の100−100の線に沿った断面図である。
【図6】図1に示した一実施形態による熱転写プリンタの送りローラ軸受および開口部の斜視図である。
【図7】図5の200−200の線に沿った断面図である。
【図8】図1に示した一実施形態による熱転写プリンタの送りローラの送りローラ軸受に対する組立工程を説明するための断面図である。
【図9】図1に示した一実施形態による熱転写プリンタの送りローラの送りローラ軸受に対する組立工程を説明するための断面図である。
【図10】従来の一例による熱転写プリンタの全体構成を示した斜視図である。
【図11】図10に示した従来の一例による熱転写プリンタの平面図である。
【図12】図11の300−300の線に沿った断面図である。
【図13】図10に示した従来の一例による熱転写プリンタの送りローラ軸受および開口部の斜視図である。
【図14】図12の400−400の線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 シャーシ
1f 開口部
2 送りローラ
2b 外周面
6a 送りローラ軸受
6c 送りローラ支持面部
6d 用紙負荷側端部
25 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を搬送する送りローラと、所定の押圧力で前記送りローラを押圧する押さえローラと、前記送りローラを回転可能に支持する送りローラ軸受と、前記送りローラが挿入される開口部を有するシャーシとを備えた画像形成装置において、
前記送りローラ軸受は、前記送りローラの外径と実質的に同一の内径を有する円弧形状に形成されるとともに、前記送りローラの外周面側へ突出し、かつ、前記送りローラの外周面を支持する送りローラ支持面部を含み、
用紙の負荷を受ける側の前記送りローラ支持面部の用紙負荷側端部は、前記用紙負荷側端部を中心とする、前記送りローラを押圧する押圧力によるモーメントの大きさが、前記用紙負荷側端部を中心とする前記用紙の負荷によるモーメントの大きさ以上の大きさになるような位置に設けられており、
前記シャーシの開口部の幅は、前記送りローラ軸受の幅と同等またはそれ以下に設定されており、
前記円弧形状の送りローラ支持面部は、前記送りローラ軸受の内面に、180度未満の角度範囲で形成されている、画像形成装置。
【請求項2】
用紙を搬送する送りローラと、
所定の押圧力で前記送りローラを押圧する押さえローラと、
前記送りローラを回転可能に支持する送りローラ軸受とを備え、
前記送りローラ軸受は、前記送りローラの前記送りローラ軸受によって支持される部分の外径と実質的に同一の内径を有する円弧形状に形成されるとともに、前記送りローラの外周面側へ突出し、かつ、前記送りローラの外周面を支持する送りローラ支持面部を含み、
用紙の負荷を受ける側の前記送りローラ支持面部の用紙負荷側端部は、前記用紙負荷側端部を中心とする、前記送りローラを押圧する押圧力によるモーメントの大きさが、前記用紙負荷側端部を中心とする前記用紙の負荷によるモーメントの大きさ以上の大きさになるような位置に設けられている、画像形成装置。
【請求項3】
前記用紙の負荷の大きさをWとし、前記用紙負荷側端部から前記用紙の負荷の作用線までの垂直距離をaとし、前記押さえローラによる押圧力の大きさをPとし、前記用紙負荷側端部から前記押圧力の作用線までの垂直距離をbとした場合、以下の式を満たすように、前記用紙負荷側端部から前記押圧力の作用線までの垂直距離bを設定することによって、前記用紙負荷側端部の位置が設定されている、請求項2に記載の画像形成装置。
W×a≦P×b
【請求項4】
前記送りローラが挿入される開口部を有するシャーシをさらに備え、
前記シャーシの開口部の幅は、前記送りローラ軸受の幅と同等またはそれ以下に設定されている、請求項2または3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記円弧形状の送りローラ支持面部は、前記送りローラ軸受の内面に、180度未満の角度範囲で形成されている、請求項2〜4のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−21909(P2006−21909A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203138(P2004−203138)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】