説明

画像形成装置

【課題】 感光体とグリッド電極との間の距離を短く設定してもグリッド電極の振動を抑えられる画像形成装置を得る。
【解決手段】 感光体ドラム28は、回転駆動されながら、スコロトロン帯電器44のスコロトロンワイヤ44Bによって電荷が供給される。このとき、感光体ドラム28の電位は、グリッドワイヤ44Cによって制御される。ここで、グリッドワイヤ44Cに印加される電圧は、スコロトロン帯電器44による帯電領域に進入した感光体ドラム28の電位に応じて感光体ドラム28とグリッドワイヤ44Cとの間の電界が500V/mm以下となるように、制御部60によって変化させられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スコロトロン帯電器により感光体が帯電される画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置においては、感光体表面を一定電位に帯電させるために、コロトロン帯電器の下流側にスコロトロン帯電器を配置する場合がある(例えば、特許文献1参照)。このスコロトロン帯電器による帯電時には、感光体と至近距離にあるグリッド電極にバイアス電圧が印加された状態となっている。
【0003】
この従来の画像形成装置では、感光体とグリッド電極との距離を短く設定すると、電界が大きくなってグリッド電極が振動しやすく、感光体に当ったりリーク発生の原因となる。
【特許文献1】特開平3−284763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、感光体とグリッド電極との間の距離を短く設定してもグリッド電極の振動を抑えられる画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載する本発明の画像形成装置は、回転駆動される感光体と、前記感光体と対向配置され、前記感光体をコロナワイヤによって帯電させるコロトロン帯電器と、前記感光体の回転方向に対して前記コロトロン帯電器より下流側に配置され、前記感光体に電荷を供給する放電電極、及び前記放電電極と前記感光体との間にあって前記感光体の電位を制御するグリッド電極を備えるスコロトロン帯電器と、前記コロナワイヤへの電流値を段階的に変化させると共に、前記電流値を変化させる中間段階で前記グリッド電極への電圧印加を開始させる制御部と、を有することを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載する本発明の画像形成装置によれば、感光体は回転駆動されながら、コロトロン帯電器のコロナワイヤによって帯電される。ここで、制御部は、コロナワイヤへの電流値を段階的に変化させ、電流値を変化させる中間段階でスコロトロン帯電器のグリッド電極への電圧印加を開始させる。スコロトロン帯電器は、放電電極によって感光体に電荷を供給しながらグリッド電極によって感光体の電位を制御する。
【0007】
請求項2に記載する本発明の画像形成装置は、回転駆動される感光体と、前記感光体と対向配置され、前記感光体をコロナワイヤによって帯電させるコロトロン帯電器と、前記感光体の回転方向に対して前記コロトロン帯電器より下流側に配置され、前記感光体に電荷を供給する放電電極、及び前記放電電極と前記感光体との間にあって前記感光体の電位を制御するグリッド電極を備えるスコロトロン帯電器と、前記コロナワイヤへの電流値と前記グリッド電極に印加する電圧とを交互に段階的に変化させる制御部と、を有することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載する本発明の画像形成装置によれば、感光体は回転駆動されながら、コロトロン帯電器による帯電領域、スコロトロン帯電器による帯電領域の順に移動し、コロトロン帯電器及びスコロトロン帯電器によって帯電される。ここで、制御部は、コロトロン帯電器のコロナワイヤへの電流値とスコロトロン帯電器のグリッド電極に印加する電圧とを交互に段階的に変化させる。
【0009】
請求項3に記載する本発明の画像形成装置は、回転駆動される感光体と、前記感光体と対向配置され、前記感光体に電荷を供給する放電電極、及び前記放電電極と前記感光体との間にあって前記感光体の電位を制御するグリッド電極を備えるスコロトロン帯電器と、前記スコロトロン帯電器による帯電領域に進入した前記感光体の電位に応じて前記感光体と前記グリッド電極との間の電界が予め設定された電界以下となるように、前記グリッド電極に印加する電圧を変化させる制御部と、を有することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載する本発明の画像形成装置によれば、感光体は、回転駆動されながら、スコロトロン帯電器の放電電極によって電荷が供給される。このとき、感光体の電位は、グリッド電極によって制御される。ここで、グリッド電極に印加される電圧は、スコロトロン帯電器による帯電領域に進入した感光体の電位に応じて感光体とグリッド電極との間の電界が予め設定された電界以下(グリッド電極の振動が抑えられる範囲の電界)となるように、制御部によって変化させられる。
【0011】
請求項4に記載する本発明の画像形成装置は、請求項3記載の構成において、前記感光体の回転方向に対して前記スコロトロン帯電器より上流側に配置されて前記感光体をコロナワイヤによって帯電させるコロトロン帯電器を有し、前記制御部が前記コロナワイヤへの電流値を変化させることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載する本発明の画像形成装置によれば、コロトロン帯電器のコロナワイヤが、感光体の回転方向に対してスコロトロン帯電器より上流側で、感光体を帯電させる。コロナワイヤへの電流値は、制御部によって変化させられ、感光体の帯電電位も変化する。
【0013】
請求項5に記載する本発明の画像形成装置は、請求項3又は請求項4に記載の構成において、前記グリッド電極が、グリッド用ワイヤであり、前記予め設定された電界が、500V/mmであることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載する本発明の画像形成装置によれば、グリッド電極が、グリッド用ワイヤであり、予め設定された電界が、500V/mmとなっており、感光体とグリッド電極との間の電界によるグリッド電極の振動を抑える。
【0015】
請求項6に記載する本発明の画像形成装置は、請求項1から5のいずれか一項に記載の構成において、前記感光体がアモルファスシリコン感光体であることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載する本発明の画像形成装置によれば、感光体が誘電率の高いアモルファスシリコン感光体となっており、感光体とグリッド電極との間の距離を短く設定すれば、スコロトロン帯電器の放電電極によって電荷が効率的に供給される。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の画像形成装置によれば、感光体とグリッド電極との間の距離を短く設定してもグリッド電極の振動を抑えられるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明における画像形成装置の実施形態を図面に基づき説明する。
【0019】
図1に示されるように、画像形成装置としてのカラーレーザープリンタ(以下、単に「プリンタ」という)10は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー画像をそれぞれ被転写材としての連続紙Pに転写し、重ね合わせるプリント部12Y、12M、12C、12K(以下、「プリント部12Y〜12K」という)が搬送方向(矢印T方向)上流側から順に配置されている。
【0020】
プリント部12Y〜12Kの搬送方向(矢印T方向)上流側には、用紙搬送部14が設けられている。用紙搬送部14は、連続紙Pが巻き掛けられるメインドライブローラ16を備える。メインドライブローラ16の軸方向の両端部は、用紙搬送フレーム18に図示しない軸受を介して回転可能に支持されている。メインドライブローラ16には、アイドルローラ19Dが当接しており、連続紙Pをメインドライブローラ16とアイドルローラ19Dとのニップ部に挟んでプリント部12Y〜12Kに向けて搬送するようになっている。なお、メインドライブローラ16の搬送方向(矢印T方向)上流側には、アイドルローラ19A、19B、アライニングローラ17が配設され、メインドライブローラ16の搬送方向(矢印T方向)下流側には、アイドルローラ19Cが配設されている。
【0021】
プリント部12Y〜12Kの搬送方向(矢印T方向)下流側には、プリント部12Y〜12Kで転写された未定着トナー画像を連続紙Pに定着させる定着部20、定着部20を通過した連続紙Pを排紙する排紙部26が設けられている。
【0022】
定着部20は、アイドルローラ21A、21B、21C、フラッシュ定着装置22、排紙ローラ23が配設されており、これらは、搬送方向と直交する方向の両端部を定着フレーム24に支持されている。ここで、フラッシュ定着装置22は、プリント部12Y〜12Kで転写された未定着トナー画像を連続紙Pに定着させるようになっている。
【0023】
排紙部26は、複数のローラ等からなる張力付与機構25を備えており、張力付与機構25の各部材は、搬送方向と直交する方向の両端部を直接、又は支持部材等を介して排紙フレーム27に支持されている。
【0024】
プリント部12Y〜12Kは、像担持体としての感光体ドラム28を備え、この感光体ドラム28にトナー画像が形成される。本実施形態の感光体ドラム28は、プラス帯電に光導電性を有するアモルファスシリコン感光体ドラムであり、OPC系の感光体ドラムと比較して耐久性に優れ、長寿命であるため、高速機分野で適用されるが、誘電率が高い。感光体ドラム28は、直径80mmであり、感光体基材としてのアルミ製の素管と、その外周表面を被覆する膜厚40μmのアモルファスシリコン感光体膜とを備えている。
【0025】
図2に示されるように、感光体ドラム28は、回転支軸28Aを軸として回転可能とされており、図示しないモータにより図2の反時計回り方向(矢印R方向)へ周速400mm/secで回転駆動されるようになっている。
【0026】
感光体ドラム28の回りには、感光体ドラム28の回転方向(矢印R方向)の順に、転写ローラ30、クリーナ40、イレーズランプ41、コロトロン帯電器42、スコロトロン帯電器44、画像露光装置46、現像装置48が配置されている。
【0027】
感光体ドラム28の回転方向(矢印R方向)に対して、転写ローラ30より下流側には、クリーナ40が配置されており、このクリーナ40は、感光体ドラム28の未転写残留トナーを除去するようになっている。
【0028】
感光体ドラム28の回転方向(矢印R方向)に対して、クリーナ40より下流側には、イレーズランプ41が配置されており、このイレーズランプ41は、クリーナ40により未転写残留トナーが除去された感光体ドラム28の表面に除電光を照射して感光体ドラム28の表面を除電するようになっている。
【0029】
感光体ドラム28の回転方向(矢印R方向)に対して、イレーズランプ41より下流側には、帯電手段としてのコロトロン帯電器42が感光体ドラム28と対向配置される。コロトロン帯電器42は、感光体ドラム28側が開口したアルミニウム製のシールドケース42Aを備える。シールドケース42Aの開口幅(開口部のうち感光体ドラム28の対向部分における移動方向に対応する開口寸法)は、本実施形態では、約15mmとなっている。シールドケース42A中には、直径40μmのタングステン線からなるコロナワイヤとしてのコロトロンワイヤ42Bが張られており、このコロトロンワイヤ42Bは、感光体ドラム28の回転支軸28A(図2参照)と平行な方向に延びている。
【0030】
コロトロンワイヤ42Bには、コロトロン用電源部50が接続されており、コロトロン帯電器42は、このコロトロンワイヤ42Bによって感光体ドラム28を帯電させるようになっている。コロトロン用電源部50には、制御部60が接続されており、この制御部60は、コロトロン用電源部50からコロトロンワイヤ42Bへの電流値を段階的に変化させるようになっている。本実施形態では、制御部60は、感光体ドラム28の回転開始時にコロトロンワイヤ42Bへの電流値を一旦300μAとし、コロトロンワイヤ42Bによって感光体ドラム28の表面電位が約300Vとされた領域がスコロトロン帯電器44による帯電領域の最下流部へ至った後、感光体ドラム28の表面電位を約600Vにするためにコロトロンワイヤ42Bへの電流値を400μAとしている。
【0031】
感光体ドラム28の回転方向(矢印R方向)に対して、コロトロン帯電器42より下流側には、スコロトロン帯電器44が感光体ドラム28と対向配置される。スコロトロン帯電器44は、感光体ドラム28側が開口したアルミニウム製のシールドケース44Aを備える。シールドケース44Aの開口幅(開口部のうち感光体ドラム28の対向部分における移動方向に対応する開口寸法)は、本実施形態では、約15mmとなっている。シールドケース44A中には、直径40μmのタングステン線からなる放電電極としてのスコロトロンワイヤ44Bが張られており、このスコロトロンワイヤ44Bは、感光体ドラム28の回転支軸28Aと平行な方向に延びている。
【0032】
スコロトロンワイヤ44Bには、スコロトロンワイヤ用電源部52が接続されており、スコロトロンワイヤ用電源部52には、制御部60が接続されている。制御部60は、スコロトロンワイヤ用電源部52からスコロトロンワイヤ44Bへの電流値を700μAとして定電流制御している。これにより、スコロトロンワイヤ44Bから電荷を発生して感光体ドラム28に供給するようになっている。
【0033】
シールドケース44Aの開口側には、スコロトロンワイヤ44Bと感光体ドラム28との間にグリッド電極としてのグリッドワイヤ44Cがピッチ1mmで複数本配置される。これらのグリッドワイヤ44Cは、直径100μmのSUSワイヤからなり、シールドケース44Aに電気的に絶縁された状態で懸架されている。各グリッドワイヤ44Cは、スコロトロンワイヤ44B及び感光体ドラム28の回転支軸28Aと平行な方向に延びており、両端部が図示しない取付部に固定され、両端側から張力が付与されている。複数のグリッドワイヤ44Cの軸心を結ぶ線は、感光体ドラム28の表面に沿って円弧状になるように配置されている。これにより、感光体ドラム28と各グリッドワイヤ44Cとの距離が一定(本実施形態では、0.8mm)となる。
【0034】
グリッドワイヤ44Cには、スコロトロングリッド用電源部54が接続されており、グリッドワイヤ44Cに所定電圧が印加されることで、スコロトロンワイヤ44Bから感光体ドラム28への電荷供給量がコントロールされ、感光体ドラム28の電位が制御される。
【0035】
スコロトロングリッド用電源部54には、制御部60が接続されている。制御部60は、スコロトロンワイヤ用電源部52からコロトロンワイヤ42Bへの電流値を段階的に変化させる中間段階でグリッドワイヤ44Cへの電圧印加を開始させ、スコロトロンワイヤ用電源部52からコロトロンワイヤ42Bへの電流値とスコロトロングリッド用電源部54からグリッドワイヤ44Cに印加する電圧とを交互に段階的に変化させると共に、スコロトロン帯電器44による帯電領域に進入した感光体ドラム28の電位に応じて感光体ドラム28とグリッドワイヤ44Cとの間の電界が予め設定された電界以下となるように、スコロトロングリッド用電源部54からグリッドワイヤ44Cに印加する電圧を変化させるようになっている。
【0036】
ここで、前記予め設定された電界は、グリッドワイヤ44Cの振動が抑えられる範囲の電界であり、具体的には、500V/mmとするのが良い。表1は、このことを示すものであり、コロトロン帯電器で帯電した感光体帯電電位Vhと、スコロトロン帯電器のグリッド電圧Vgと、を変化させた場合における、グリッドワイヤの振動状態の観察結果である。グリッドワイヤと感光体ドラムとの間の距離は、0.8mm、スコロトロンワイヤへの電流は、700μAで一定にした。
【0037】
【表1】

【0038】
表1に示されるように、VhとVgとの電位差が400V以下(=電界500V/mm)では、グリッドワイヤの振動は発生しないが、VhとVgとの電位差が400V(=電界500V/mm)を超えると振動が発生することが分かる。なお、感光体ドラム28と各グリッドワイヤ44Cとの距離が0.8mmの場合には、特許文献1に記載されたようなVhが300V、Vgが900Vのときにもグリッドワイヤの振動が発生しており、感光体ドラムとグリッドワイヤとの間の距離を短く設定した場合には、特許文献1で示された対策では不十分である。
【0039】
本実施形態では、図2に示される感光体ドラム28において、コロトロン帯電器42により表面電位が約300Vとされた領域が、スコロトロン帯電器44による帯電領域の最下流部へ至る前は、グリッドワイヤ44Cに電圧を印加せず、コロトロン帯電器42により表面電位が約300Vとされた領域が、スコロトロン帯電器44による帯電領域の最下流部へ至った段階(コロトロンワイヤ42Bへの電流値を段階的に変化させる中間段階)で、グリッドワイヤ44Cに600Vの電圧を印加し、コロトロン帯電器42により表面電位が約600Vとされた領域が、スコロトロン帯電器44による帯電領域の最下流部へ至った段階で、グリッドワイヤ44Cに900Vの電圧を印加するように、制御部60によりシーケンス制御されている。これにより、感光体ドラム28とグリッドワイヤ44Cとの間の電界を375V/mm(=最大電位差300V/距離0.8mm)以下に抑えることができる(図3参照)。
【0040】
なお、図2に示されるアモルファスシリコン感光体ドラム28は、誘電率が高いので、高速機分野に適用して良好な感光体帯電電位を得るためには、本実施形態のように、感光体ドラム28とグリッドワイヤ44Cとの距離を短く設定する必要がある。図6は、このことを示したグラフである。この図6では、スコロトロン帯電器のグリッド電圧Vgを900V(定電圧制御)として、条件1では、コロトロンワイヤの全電流値Ic(定電流制御)を650μA、スコロトロンワイヤの全電流値Is(定電流制御)を700μAとし、条件2では、コロトロンワイヤの全電流値Ic(定電流制御)を700μA、スコロトロンワイヤの全電流値Is(定電流制御)を750μAとし、感光体ドラムとグリッドワイヤとの間の距離を変化させたときの感光体帯電電位を示している。ここで、コロトロンワイヤの全電流値Ic、スコロトロンワイヤの全電流値Isのどちらかをこれ以上大きくするとアーク放電が発生してしまい、これ以上電流値を上げることは不可能であった。図6に示されるように、感光体ドラムとグリッドワイヤとの間の距離が大きくなると感光体帯電電位は低下してしまい、1mmを超えると良好な感光体帯電電位が得られないことが確認できる。
【0041】
図2に示されるように、感光体ドラム28の回転方向(矢印R方向)に対して、スコロトロン帯電器44より下流側には、露光手段としての画像露光装置46が配置される。画像露光装置46は、LED光等の光線を出射することで、感光体ドラム28の感光層に光像を照射し、これにより、コロトロン帯電器42及びスコロトロン帯電器44により帯電された感光体ドラム28を露光して静電潜像を形成するようになっている。
【0042】
感光体ドラム28の回転方向(矢印R方向)に対して、画像露光装置46より下流側には、現像手段としての現像装置48が配置される。現像装置48は、現像器カートリッジ48Aを備えており、この現像器カートリッジ48A内にトナーとキャリアとで構成される二成分現像剤が充填されている。現像器カートリッジ48A内には、攪拌スクリュー48B、搬送マグネットローラ48C及び現像マグネットローラ48Dが配置され、これらにより、感光体ドラム28に形成された潜像上にトナーを付着させてトナー画像を形成するようになっている。
【0043】
感光体ドラム28の上方には、転写手段としての転写ローラ30が設けられ、転写ローラ30よりも搬送方向(矢印T方向)上流側及び下流側には、それぞれガイドローラ31、32を配置している。転写ローラ30は、感光体ドラム28の上面に当接し、感光体ドラム28と共に連続紙Pを挟持搬送して感光体ドラム28上に形成されたトナー画像を連続紙Pに転写させるようになっている。
【0044】
次に、上記の実施形態の作用を説明する。
【0045】
図1に示されるように、連続紙Pは、用紙搬送部14からプリント部12Y〜12Kへ搬送され、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー画像が転写される。このときの各プリント部12Y〜12Kにおける作用は、ほぼ同様であるので、これらをまとめて以下により説明する。
【0046】
図2に示される感光体ドラム28は、回転しながら、クリーナ40によって未転写残留トナーを除去された後、イレーズランプ41により除電される。感光体ドラム28の回転開始時に、コロトロン帯電器42のコロトロンワイヤ42Bへは、コロトロン用電源部50から300μAが供給され、感光体ドラム28を帯電させる。
【0047】
ここで、図4(A)に示される感光体ドラム28の回転開始時にコロトロン帯電器42による帯電領域の最下流部に位置する感光体領域A0は、コロトロン帯電器42によってほとんど帯電されることなくスコロトロン帯電器44による帯電領域へ進入する。これに対して感光体ドラム28の回転開始時にコロトロン帯電器42による帯電領域の最上流部に位置する感光体領域A1は、コロトロン帯電器42によってその全帯電領域に渡って電荷を供給されるので、約300Vに帯電されてスコロトロン帯電器44による帯電領域へ進入する。感光体領域A0から感光体領域A1までの間の感光体領域では、スコロトロン帯電器44による帯電領域への進入時の電位が、この中間の値を連続的にとる(図3参照)。なお、感光体ドラム28の回転開始時に、スコロトロン帯電器44(図2に示されるスコロトロンワイヤ44B及びグリッドワイヤ44C)は、電源オフの状態になっている。
【0048】
感光体ドラム28が回転することにより、図4(B)に示されるように、感光体領域A1は、スコロトロン帯電器44による帯電領域へ進入した後、図4(C)に示されるように、スコロトロン帯電器44による帯電領域の最下流部へ至る。この段階で、スコロトロン帯電器44のスコロトロンワイヤ44Bへは、スコロトロンワイヤ用電源部52(図2参照)から所定電流(700μA)が供給されると共に、グリッドワイヤ44Cには、スコロトロングリッド用電源部54(図2参照)から600Vの電圧が印加される。
【0049】
次に、図5(A)に示されるコロトロン帯電器42のコロトロンワイヤ42Bへは、コロトロン用電源部50(図2参照)からの電流値が400μAに上げられ、感光体ドラム28を帯電させる。このとき、コロトロン帯電器42による帯電領域の最下流部に位置する感光体領域A2は、電流値の上がった後のコロトロン帯電器42によってほとんど帯電されることなく約300Vでスコロトロン帯電器44による帯電領域へ進入する。これに対して電流値を上げた時にコロトロン帯電器42による帯電領域の最上流部に位置する感光体領域B1は、電流値の上がった後のコロトロン帯電器42によってその全帯電領域に渡って電荷を供給されるので、約600Vに帯電されてスコロトロン帯電器44による帯電領域へ進入する。感光体領域A2から感光体領域B1までの間の感光体領域では、スコロトロン帯電器44による帯電領域への進入時の電位が、この中間の値を連続的にとる(図3参照)。
【0050】
感光体ドラム28が回転することにより、図5(B)に示されるように、感光体領域B1は、スコロトロン帯電器44による帯電領域へ進入した後、図5(C)に示されるように、スコロトロン帯電器44による帯電領域の最下流部へ至る。この段階で、スコロトロン帯電器44のグリッドワイヤ44Cには、スコロトロングリッド用電源部54(図2参照)から900Vの電圧が印加される。
【0051】
グリッドワイヤ44Cに900Vの電圧が印加された際にスコロトロン帯電器44による帯電領域の最上流部に位置する感光体領域B2以降の領域は、グリッドワイヤ44Cに900V電圧が印加されたスコロトロン帯電器44によってその全帯電領域に渡って電荷を供給されると、均一に900Vに帯電される。
【0052】
以上の電流及び電圧の制御は、図2に示される制御部60によってシーケンス制御で行われる。上記によれば、感光体ドラム28の電位を900Vにしても、感光体ドラム28とグリッドワイヤ44Cとの間の電界を375V/mm(=最大電位差300V/距離0.8mm)以下に抑えることができる。
【0053】
均一に900Vに帯電された感光体ドラム28は、図2に示されるように、画像露光装置46により露光され、現像装置48により現像された後、転写ローラ30が感光体ドラム28と共に連続紙Pを挟持搬送して感光体ドラム28上に形成されたトナー画像を連続紙Pに転写させる。
【0054】
上記実施形態の作用を確認するために、以下に示す実施例に係る画像形成装置(以下、単に実施例という)と比較例に係る2種類の画像形成装置(以下、比較例1、比較例2という)との比較実験を行い、感光体ドラムの回転開始時からのグリッドワイヤの振動を観察した。
【0055】
実施例は、上記実施形態と同様の構成及び条件である。比較例1及び比較例2は、以下に記載する点を除き、実施例と同様であり、グリッドワイヤと感光体ドラムとの間の距離は、0.8mmである。比較例1及び比較例2は、コロトロン帯電器で感光体ドラムを約500Vに帯電させた後、スコロトロン帯電器で感光体ドラムの電位を上げる。
【0056】
図7及び図8には、比較例1及び比較例2における、スコロトロン帯電器による帯電領域に進入した時の感光体ドラムの帯電電位と、グリッドワイヤの電位(グリッドワイヤに印加する電圧)と、の関係が示されている。図7及び図8において、横軸は、時間を示し、縦軸は、電位を示す。また、図7及び図8において、t1、t2は、スコロトロン帯電器による帯電領域に進入した時の感光体ドラムの帯電電位がそれぞれ400V、500Vとなった時である。
【0057】
図7に示されるように、比較例1では、感光体ドラムの回転開始時には、グリッドワイヤに印加する電圧を0Vとしており、スコロトロン帯電器による帯電領域に進入した時の感光体ドラムの帯電電位が500Vとなった後に(t3の時に)グリッドワイヤに印加する電圧を900Vとしている。図8に示されるように、比較例2では、感光体ドラムの回転開始時には、グリッドワイヤに印加する電圧を0Vとしており、スコロトロン帯電器による帯電領域に進入した時の感光体ドラムの帯電電位が400Vとなった時(t1の時)にグリッドワイヤに印加する電圧を900Vとしている。
【0058】
図7に示されるように、比較例1では、t1<t<t3で感光体ドラムとグリッドワイヤとの間の電界が500V/mmを超え(図7の斜線部分)、グリッドワイヤの振動が開始した。図8に示されるように、比較例2では、t1<t<t2で感光体ドラムとグリッドワイヤとの間の電界が500V/mmを超え(図8の斜線部分)、グリッドワイヤの振動が開始した。これに対して実施例では、図3に示されるように、感光体ドラムとグリッドワイヤとの間の電界が500V/mm未満に抑えられ、グリッドワイヤの振動は発生しなかった。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態に係るカラーレーザープリンタの概略構成を示す模式的断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るカラーレーザープリンタのプリント部の概略構成を示す模式的断面図である。
【図3】本発明の実施形態において、スコロトロン帯電器による帯電領域に進入した時の感光体ドラムの帯電電位とグリッドワイヤの電位との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の実施形態におけるコロトロン帯電器及びスコロトロン帯電器による帯電処理の一部を示す状態図である。図4(A)〜図4(C)の順で帯電処理する。
【図5】図4(C)に続く帯電処理を示す状態図である。図5(A)〜図5(C)の順で帯電処理する。
【図6】感光体ドラムとグリッドワイヤとの距離に対する帯電電位を示すグラフである。
【図7】比較例1において、スコロトロン帯電器による帯電領域に進入した時の感光体ドラムの帯電電位とグリッドワイヤの電位との関係を示すグラフである。
【図8】比較例2において、スコロトロン帯電器による帯電領域に進入した時の感光体ドラムの帯電電位とグリッドワイヤの電位との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0060】
10 カラーレーザプリンタ(画像形成装置)
28 感光体ドラム(アモルファスシリコン感光体(感光体))
42 コロトロン帯電器
42B コロトロンワイヤ(コロナワイヤ)
44 スコロトロン帯電器
44B スコロトロンワイヤ(放電電極)
44C グリッドワイヤ(グリッド用ワイヤ(グリッド電極))
60 制御部
R 回転方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動される感光体と、
前記感光体と対向配置され、前記感光体をコロナワイヤによって帯電させるコロトロン帯電器と、
前記感光体の回転方向に対して前記コロトロン帯電器より下流側に配置され、前記感光体に電荷を供給する放電電極、及び前記放電電極と前記感光体との間にあって前記感光体の電位を制御するグリッド電極を備えるスコロトロン帯電器と、
前記コロナワイヤへの電流値を段階的に変化させると共に、前記電流値を変化させる中間段階で前記グリッド電極への電圧印加を開始させる制御部と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
回転駆動される感光体と、
前記感光体と対向配置され、前記感光体をコロナワイヤによって帯電させるコロトロン帯電器と、
前記感光体の回転方向に対して前記コロトロン帯電器より下流側に配置され、前記感光体に電荷を供給する放電電極、及び前記放電電極と前記感光体との間にあって前記感光体の電位を制御するグリッド電極を備えるスコロトロン帯電器と、
前記コロナワイヤへの電流値と前記グリッド電極に印加する電圧とを交互に段階的に変化させる制御部と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
回転駆動される感光体と、
前記感光体と対向配置され、前記感光体に電荷を供給する放電電極、及び前記放電電極と前記感光体との間にあって前記感光体の電位を制御するグリッド電極を備えるスコロトロン帯電器と、
前記スコロトロン帯電器による帯電領域に進入した前記感光体の電位に応じて前記感光体と前記グリッド電極との間の電界が予め設定された電界以下となるように、前記グリッド電極に印加する電圧を変化させる制御部と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記感光体の回転方向に対して前記スコロトロン帯電器より上流側に配置されて前記感光体をコロナワイヤによって帯電させるコロトロン帯電器を有し、前記制御部が前記コロナワイヤへの電流値を変化させることを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記グリッド電極が、グリッド用ワイヤであり、前記予め設定された電界が、500V/mmであることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記感光体がアモルファスシリコン感光体であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−251473(P2006−251473A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−68984(P2005−68984)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】