説明

画像形成装置

【課題】 感光体ドラムを保護するシャッターの厚さを薄くしてしかもその変形を防止する。
【解決手段】 画像形成装置は静電潜像が形成される感光体ドラムを有するドラムユニットと、感光体ドラムと対面して静電潜像を現像する現像ユニットと、ドラムユニット及び現像ユニットの少なくとも一方が画像形成装置本体から取り外された際遮蔽位置に位置づけられて感光体ドラムの表面を保護する保護カバー32とを有し、保護カバーは現像ユニット及び像担持体ユニットが画像形成装置本体に取り付けられると退避位置に位置づけられて現像ユニットと像担持体とを対面させる。保護カバーが退避位置に位置する際に静電潜像を形成する露光光の光路が保護カバーの近傍に配置され、保護カバーが退避位置にある際、保護カバーを光路から離れる方向に矯正する矯正機構(41,51)を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、又はファクシミリ装置等の電子写真プロセスを用いた画像形成装置に関し、特に、感光体ドラム等の像担持体を保護する保護カバーを備える画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機、プリンター、又はファクシミリ装置等の画像形成装置において、用紙ジャム等の用紙送り不良が生じた際には、用紙送り不良を処置するため、現像ユニットを画像形成装置から取り外して用紙送り不良の処置を行うことがある。そして、現像ユニットは感光体ドラムに対面しているため、現像ユニットが取り外されると、感光体ドラムが露出した状態となって、用紙送り不良処置の際誤って感光体ドラムに触れてしまい、感光体ドラムに不具合が生じることがある。
【0003】
このため、現像ユニットを画像形成装置から取り外し際には、保護カバー(シャッター)を閉じて感光体ドラムを保護するようにしたものが知られている。つまり、現像ユニットを画像形成装置に装着した際には、シャッターが開いて現像ユニットと感光体ドラムとを対面した状態とし、現像ユニットを画像形成装置から取り外すと、シャッターが閉じて感光体ドラムを保護するようにしたものが知られている。
【0004】
一般に、上記のシャッターは薄い部材であるため、変形しやすく、シャッターが変形すると、例えば、感光体ドラムを露光する際のレーザ光の光路を遮断してしまうことがあり、極力シャッターの変形を阻止する必要がある。
【0005】
従来、シャッターの変形を防止するため、シャッターの内面に略鉛直方向にリブを多数並設して、シャッターの強度を向上させるようにしたものがある(特許文献1参照)。また、シャッターの変形を防止するため、シャッター31を、回動アームとシャッター本体とを連結して形成し、その連結部に、シャッター本体が長手方向へ移動自在となる遊びを設けて、シャッター本体33が長手方向へ膨張しても、シャッター本体の長手方向の両端部が回動アームに押し付けられることを防止して、シャッター本体がV字形に変形することを防止するようにしたものがある(特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2001−13847公報
【特許文献2】特開2000−131903公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1においては、シャッターの内面にリブを多数並設している関係上、不可避的にシャッターが厚くなってしまい、シャッターの強度を向上できるものの、シャッターを退避した際(開いた際)のシャッター収納スペースを広くしなければならず、結果的に画像形成装置自体が大型化、コストアップしてしまうという課題がある。
【0008】
また、特許文献2においては、シャッターの熱による長手方向への膨張に起因するV字状変形を防止しているだけで、シャッターの厚みが薄い際の他の方向への変形は何ら考慮されておらず、シャッターの変形による光路遮断という不具合を防止することは困難であるという課題がある。
【0009】
いずれにしても、特許文献1及び2ともに、シャッターの厚さを薄くしてしかもその変形を防止することが難しいという課題がある。
【0010】
従って、本発明はかかる従来技術の問題に鑑み、シャッターの厚さを薄くしてしかもその変形を防止することのできる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、静電潜像が形成される像担持体を有する像担持体ユニットと、前記像担持体と対面して前記静電潜像を現像する現像ユニットと、前記像担持体ユニット及び前記現像ユニットの少なくとも一方が画像形成装置本体から取り外された際遮蔽位置に位置づけられて前記像担持体の表面を保護する保護カバーとを有し、該保護カバーは前記現像ユニット及び前記像担持体ユニットが前記画像形成装置本体に取り付けられると退避位置に位置づけられて前記現像ユニットと前記像担持体とを対面させる画像形成装置において、前記保護カバーが前記退避位置に位置する際に前記静電潜像を形成する露光光の光路が前記保護カバーの近傍に配置されており、前記保護カバーが前記退避位置にある際前記保護カバーを前記光路から離れる方向に矯正する矯正機構を有することを特徴とするものである。
【0012】
本発明では、前記矯正機構は前記保護カバーの移動に同期して前記保護カバーが前記退避位置となると前記保護カバーを前記光路から離れる方向に矯正する。
【0013】
本発明では、前記矯正機構は、前記像担持体の軸方向に延び回転支点回りに回動されるワイヤー部材と、前記保護カバーに形成され前記像担持体の軸方向両端部に位置するリブ部とを備え、該ワイヤー部材には前記保護カバーの支持支点と同軸の同軸部と、該同軸部と段差をおいて平行に延び前記軸方向に交差する交差方向で前記同軸部よりも外側に位置する当接部とが形成され、前記リブ部は前記当接部に対応する位置に形成されており、前記保護カバーの前記支持支点回りの移動に同期して前記ワイヤー部材が前記回転支点回りに回動して前記保護カバーが前記退避位置に位置づけられると前記当接部によって前記リブ部が押圧される。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明の画像形成装置は、保護カバーが退避位置に位置すると、保護カバーを光路から離れる方向に矯正するようにしたので、シャッターの厚さが薄いため、シャッターが変形してもシャッターによって光路が妨げられることがない。つまり、シャッターを薄くしても実質的にその変形を防止することができるという効果がある。
【0015】
本発明では、保護カバーの移動に同期して、保護カバーが退避位置となると保護カバーを前記光路から離れる方向に矯正するようにしたので、保護カバーが退避位置にある際にのみ、シャッターを矯正することになってシャッターに無用の圧力を加えることがないという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【実施例1】
【0017】
図1は本発明の実施例1による画像形成装置の断面図であり、図示の画像形成装置10は感光体ドラム11及び現像ユニット12を有しており、少なくとも現像ユニット12は画像形成装置本体13から取り外し可能となっている。図示のように、感光体ドラム11の周囲には、露光器14、現像ユニット12、転写ローラ15、及びクリーニングユニット16が配置され、現像ユニット12の現像ローラ12aが感光体ドラム11と対面している。
【0018】
画像形成(例えば、コピー)を行う際には、給紙トレイ17から用紙が用紙搬送路18を通って感光体ドラム11と転写ローラ15とのニップ部に送られる。一方、感光体ドラム11の表面は帯電器14によって均一に帯電された後、露光ユニット19からのレーザ光によって露光されて、感光体ドラム11上に静電潜像が形成される。レーザ光は、図中、符号Pで示す光路を通って感光体ドラム11に照射されることになるが、この際、レーザ光は、後述する保護カバー近傍を通過して感光体ドラム11に照射される。
【0019】
感光体ドラム11上の静電潜像は現像ローラ12aによって現像されて、トナー像となり、このトナー像は転写ローラ15によって用紙に転写される。そして、用紙は用紙搬送路20を通って定着ユニット21に至り、ここで用紙上のトナー像が定着されて、用紙は排紙通路22を通って排紙トレイ23に排紙される。
【0020】
後述するように、ドラムユニットには保護カバー(以下シャッターと呼ぶ)31が取り付けられており、このシャッター31は、現像ユニット12が画像形成装置本体13に装着された状態では、退避位置に移動して、感光体ドラム11と現像ローラ12aとが対面した状態となる。
【0021】
図示の例においては、後述するように、シャッター31は第1及び第2のシャッター部32及び33を有しており、退避位置において、シャッター部32及び33はその間に隙間をもって重なった(オーバーラップ)した状態となって、隙間を通過してレーザ光が感光体ドラム11に照射される。一方、現像ユニット12が画像形成装置本体13から取り外されると、シャッター31は遮蔽位置に移動して感光体ドラム11がシャッター31によって遮蔽される。この状態では、後述するように、シャッター部32及び33は一枚の板状となる。
【0022】
図2はドラムユニットに備えられたシャッターを閉じた状態(つまり、遮蔽位置に位置づけた状態)を示す断面図であり、図3は図2に符号Aで示す部分を拡大して示す図、図4はシャッターを閉じた状態を示す斜視図である。シャッター部32は後述するワイヤー部材に形成されたシャッター保持軸部34(図3参照)よってドラムユニット筐体36に支持されており、一方、リンク機構35によってシャッター部33はシャッター部32に連動(同期して)して動作し、シャッター31を閉じた際には、シャッター部33はシャッター部32よりも下側に位置づけられて、シャッター部32及び33によって感光体ドラム11が遮蔽される。
【0023】
図5はシャッター部32を矯正するためのワイヤー部材を示す斜視図であり、ワイヤー部材41は感光体ドラム11の軸方向に沿って延び、その両端部を回転支点42としてドラムユニット筐体36に回転可能に支持されている。図5に示すように、ワイヤー部材41は、感光体ドラム11の軸方向に延びる本体部43を有しており、本体部43の両端部は本体部43に交差(直交)する方向に折り曲げられて、矯正部44を形成している。そして、この矯正部44は再度本体部43に交差する方向に折り曲げられて、リンク部37を形成し、リンク部37の両端部が前述の回転支点42とされる。
【0024】
矯正部44の略中央部には段差44aが形成されており、この段差44aによって矯正部44は本体部43側に位置する当接部45と回転支点42(つまり、リンク部37)側に位置する同軸部46とに分けられている。そして、同軸部46が前述のシャッター保持軸部34となる。当接部45は、本体部43に対して同軸部46よりも離れた位置に位置づけられている。つまり、あたかも同軸部46がシャッター部32の回動支点(シャッター保持軸部34)と同軸になるように、ワイヤー部材41はドラムユニット筐体36に支持される。
【0025】
シャッター部32の両端部側には、図4に示すように、シャッター矯正リブ部51が形成されており、図6及び図7に拡大して示すように、リブ部51は当接部45に対応する位置に形成されている。シャッター31が閉じている状態では、ワイヤー部材41は回動支点42(つまり、回動支点34)回りに回動されて、図3に示す状態となっており、前述のように同軸部46と当接部45との境には段差44aが形成されているから、当接部45はリブ部51に当接した状態となっておらず、当接部45とリブ部51との間にはクリアランスRが存在している。
【0026】
いま、現像ユニット12を画像形成装置本体13に装着すると、シャッター31は図2に実線矢印で示す方向に退避する。一方、ワイヤー部材41は回転支点42回りに、図2に実線矢印で示す方向に回動する。図8はシャッター31が退避位置に位置づけられた状態を示す断面図であり、図9は図8における符号Bで示す部分を拡大して示す図、図10はシャッター31を開いた状態を示す斜視図である。図8乃至図10を参照して、ワイヤー部材41が回転支点42回りに回転すると、シャッター保持軸部34と同軸部46とは同軸であるから、当接部45がリブ部51の方向に移動することになって、つまり、クリアランスRがなくなる方向に当接部45が移動することになる。
【0027】
リブ部51が存在しない場合には、図9に破線の丸印で示す位置まで当接部45は移動することになるが、リブ部51が存在すると、図9に実線丸印で示すように、当接部45がリブ部51に当接して、当接部45がリブ部51を押圧することになる。つまり、当接部45によってシャッター部32が外側(シャッター部33から離れる方向)に押されることになって、シャッター部32とシャッター部33との間隔が増大する。
【0028】
このようにして、シャッター部32とシャッター部33との間隔が増大するから、つまり、退避位置においてシャッター部32とシャッター部33との間にレーザ光の光路が規定される際、シャッター部32は光路から離れる方向に押されて矯正される結果、シャッター部32によって光路が妨げられることはない。言い換えると、シャッター部32の変形によって光路が妨げられることがない。
【0029】
このようにして、シャッター部32の変形を矯正するようにしたから、シャッター部32の厚みを薄くしても、シャッター部32の変形に対処することができ、その結果、シャッター部32の変形(反り等)に無関係に光路の遮断を防止できることになる。
【0030】
なお、上述の例では、シャッター31がシャッター部32及び33を備えて、遮蔽位置においてシャッター部32及び33によって感光体ドラム11を遮蔽し、退避位置においてシャッター部32とシャッター部33との間に光路を規定するようにしたが、シャッター31を単一のシャッター部で構成して、シャッター31と感光体ドラム11との間に光路が形成される際においても、同様にしてシャッター31を外側に押圧するようにすれば、シャッター31の変形によって光路が妨げられることはない。上述の例では、リブ部51とワイヤー部材41とによって矯正機構が構成される。
【0031】
また、上述の例では、現像ユニットを画像形成装置本体から取り外した際、シャッターによって感光体ドラムを保護する例について説明したが、ドラムユニットも画像形成装置本体から着脱可能として、ドラムユニット及び現像ユニットの少なくとも一方が画像形成装置本体から取り外された際、シャッターは遮蔽位置に位置づけられて感光体ドラムの表面を保護するようにしてもよい。そして、シャッターは現像ユニット及びドラムユニットが画像形成装置本体に取り付けられると退避位置に位置づけられて現像ユニットと像担持体とを対面させることになる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
シャッターが退避位置に位置すると、シャッターを露光光の光路から離れる方向に矯正するようにしたから、シャッターの厚さを薄いためシャッターが変形してもシャッターによって光路が妨げられることがない結果、退避位置においてシャッター近傍に光路が規定される画像形成装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例1による画像形成装置を示す断面図である。
【図2】ドラムユニットに備えられたシャッターを閉じた状態を示す断面図である
【図3】図2に符号Aで示す部分を拡大して示す図である。
【図4】ドラムユニットに備えられたシャッターを閉じた状態を示す斜視図である。
【図5】シャッターを矯正するためのワイヤー部材を示す斜視図である。
【図6】図4に符号C1で示す部分を拡大して示す図である。
【図7】図4に符号C2で示す部分を拡大して示す図である。
【図8】シャッターが退避位置に位置づけられた状態を示す断面図である。
【図9】図8に符号Bで示す部分を拡大して示す図である。
【図10】シャッターを開いた状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
10 画像形成装置
11 感光体ドラム
12 現像ユニット
13 画像形成装置本体
14 露光器
15 転写ローラ
16 クリーニングユニット
17 給紙トレイ
18,20 用紙搬送路
19 露光ユニット
21 定着ユニット
22 排紙通路
23 排紙トレイ
31 保護カバー(シャッター)
32,33 シャッター部
41 ワイヤー部材
42 回転支点
43 本体部
44 矯正部
44a 段差
45 当接部
46 同軸部
51 リブ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像が形成される像担持体を有する像担持体ユニットと、前記像担持体と対面して前記静電潜像を現像する現像ユニットと、前記像担持体ユニット及び前記現像ユニットの少なくとも一方が画像形成装置本体から取り外された際遮蔽位置に位置づけられて前記像担持体の表面を保護する保護カバーとを有し、該保護カバーは前記現像ユニット及び前記像担持体ユニットが前記画像形成装置本体に取り付けられると退避位置に位置づけられて前記現像ユニットと前記像担持体とを対面させる画像形成装置において、
前記保護カバーが前記退避位置に位置する際に前記静電潜像を形成する露光光の光路が前記保護カバーの近傍に配置されており、
前記保護カバーが前記退避位置にある際前記保護カバーを前記光路から離れる方向に矯正する矯正機構を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記矯正機構は前記保護カバーの移動に同期して前記保護カバーが前記退避位置となると前記保護カバーを前記光路から離れる方向に矯正するようにしたことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記矯正機構は、前記像担持体の軸方向に延び回転支点回りに回動されるワイヤー部材と、前記保護カバーに形成され前記像担持体の軸方向両端部に位置するリブ部とを備え、
該ワイヤー部材には前記保護カバーの支持支点と同軸の同軸部と、該同軸部と段差をおいて平行に延び前記軸方向に交差する交差方向で前記同軸部よりも外側に位置する当接部とが形成され、
前記リブ部は前記当接部に対応する位置に形成されており、
前記保護カバーの前記支持支点回りの移動に同期して前記ワイヤー部材が前記回転支点回りに回動して前記保護カバーが前記退避位置に位置づけられると前記当接部によって前記リブ部が押圧されるようにしたことを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−309004(P2006−309004A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−133468(P2005−133468)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】