説明

画像形成装置

【課題】 画像形成動作中にカバーが開放されると、画像形成動作が停止して印刷速度が低下するとともに、内部用紙などに位置ズレが生じ、動作再開による画像品質の低下を生じる。
【解決手段】 上カバー5に係合して閉状態にロックするロック部材81と、ロック部材81を駆動するソレノイド84とを含む上カバーロック機構80を備え、画像形成動作やヘッドの維持回復動作が行われているときには、ソレノイド84を駆動してロック部材81を上カバー5に係合するロック位置に移動させることで、上カバー5が開放状態にされることを禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、プリンタ/ファクシミリ/複写機の複合機などの各種画像形成装置として使用されるインクジェット記録装置においては、装置本体に対して開閉自在な本体カバーを備え、そのカバーを開いた状態において、記録液を保管する記録液カートリッジの着脱、或いは用紙詰まり時における用紙の除去作業などのメンテナンス作業をできるようにしている。
【特許文献1】特開2004−106475
【0003】
そして、従来のインクジェット記録装置としては、特許文献2に開示されているように、画像形成装置の動作中にカバーが開かれたときには、動作を停止し、記録ヘッドを搭載したキャリッジをホーム位置に戻して記録ヘッドにキャッピングを行うようにしたものがある。
【特許文献2】特開平06−218936号公報
【0004】
また、特許文献3に開示されているように、プリントデータを受信せず、エラーも発生していない待機状態でカバーが開放されたときには、ヘッド交換位置へのキャリッジの移動を許可し、画像形成動作中にカバーが開かれたときには、その状態で停止してカバーが閉じられるまで次の動作を待機するようにしたものもある。
【特許文献3】特開2001−071587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の特許文献2、3に開示された画像形成装置にあっては、カバーの開放操作と実際にキャリッジなどの可動部が停止するまでの間にはタイムラグがあり、そのタイムラグの間に操作者が画像形成装置内部の可動部に触れるなどすると、画像形成中の用紙がずれたり、キャリッジの位置ずれが生じたりして、画像品質が低下するという課題がある。また、画像形成上問題がないにもかかわらず、カバーが開放されただけで、画像形成動作を停止すると、結果として画像形成速度が低下することになる。
【0006】
また、画像形成装置としてのインクジェット記録装置にあっては、記録液の液滴を吐出する記録ヘッドのノズルの目詰まりによる吐出不良などを防止するため、所要のタイミングで記録ヘッドのノズルが形成された面(ノズル面)をキャップ部材でキャッピングして、記録ヘッドのノズルから吸引を行うヘッドの維持回復動作を行うようにしている。
【0007】
このようなヘッドの維持回復動作を行っているときに、記録液を供給する記録液カートリッジを装填するカートリッジ装填部のカバーが開放され、記録液カートリッジの脱着が行われると、記録ヘッド内に空気が混入して吐出不良が発生し、画像品質が低下することになる。
【0008】
また、記録液カートリッジにIDチップが備えられているような場合、IDチップに対する情報の読み出しや書き込み中に、カートリッジ装填部のカバーが開放され、記録液カートリッジの交換が行われると、IDチップの情報が消失するなどの不都合が生じるという課題がある。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、動作中の不必要なカバー開放による不都合を回避する画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る画像形成装置は、所定の動作が行われているときには、カバーが開状態にされることを禁止するカバーオープン禁止手段を備えている構成とした。なお、カバーが開状態にされることを禁止するとは、手動操作によってもカバーを開放できない状態にすることを意味する。
【0011】
ここで、カバーオープン禁止手段は、カバーを閉状態にロックするロック部材と、このロック部材によるロック解除を禁止する手段とを備えていることが好ましい。あるいは、カバーオープン禁止手段は、カバーを閉状態にロックするロック手段であることが好ましい。
【0012】
また、カバーは記録液を保管する記録液カートリッジを装填するカートリッジ装填部のカバーとすることができる。
【0013】
さらに、カバーオープン禁止手段は、画像形成動作が行われているとき、あるいは、記録ヘッドの性能を維持又は回復する動作で行われているときに、カバーが開状態にされることを禁止することが好ましい。
【0014】
また、カバーオープン手段は、画像形成前又は画像形成終了後の待機状態ではカバーが開状態にされることを禁止する状態を解除することが好ましい。さらに、カバーオープン手段は、所定のエラー検出により所定の動作が停止されたときにはカバーが開状態にされることを禁止する動作を解除することが好ましく、この場合、紙詰まりエラーや記録液エンドのエラー検出による動作停止でカバーが開状態にされることを禁止する状態を解除することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る画像形成装置によれば、所定の動作が行われているときには、カバーオープン禁止手段でカバーが開状態にされることを禁止するので、画像形成動作中のカバーの不必要な開放、或いは、記録ヘッドの維持回復動作中のカバーの不必要な開放ができなくなり、これらの不必要なカバー開放による不都合を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は本発明に係る画像形成装置の一例を示す同画像形成装置を前方側から見た斜視説明図である。
この画像形成装置は、装置本体1と、装置本体1に装着した用紙を装填するための給紙トレイ2と、装置本体1に装着され画像が記録(形成)された用紙をストックするための排紙トレイ3とを備えている。
【0017】
装置本体1の上側には上カバー5を開閉可能に設けている。また、装置本体1の前面4の一端部側には、前面4から前方側に突き出し、上カバー5よりも低い位置にカートリジ装填部6を有し、このカートリッジ装填部6の上面に操作キーや表示器などの操作部7を配置している。カートリッジ装填部6には、その前面に開閉可能な前カバー8を備えて、この前カバー8を開状態にすることにより記録液カートリッジであるインクカートリッジ10の脱着を行えるようにしている。
【0018】
次に、この画像形成装置の機構部について図2及び図3を参照して説明する。なお、図2は同機構部の全体構成を説明する概略構成図、図3は同機構部の要部平面説明図である。
この画像形成装置の機構部は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材であるガイドロッド11とステー12とでキャリッジ13を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによって図3でキャリッジ主走査方向(矢示方向)に移動走査する。
【0019】
このキャリッジ13には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する4個のインクジェットヘッドからなる記録ヘッド14を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0020】
記録ヘッド14を構成するインクジェットヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどをインクを吐出するためのエネルギー発生手段として備えたものなどを使用できるが、ここでは圧電アクチュエータ(圧電素子)をエネルギー発生手段に用いたヘッドを搭載している。
【0021】
また、キャリッジ13には、記録ヘッド14に各色のインクを供給するための各色の液体容器であるサブタンク15を搭載している。このサブタンク15にはインク供給チューブ16を介して前述した各色のメインタンク(インクカートリッジ)10からインクが補充供給される。ここで、メインタンク10は、それぞれ各色に対応してイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインクを収容しているが、ブラックインクを収容するメインタンク10は、他のカラーインクを収容するメインタンク10よりもインクの収容容量を大きくしている。
【0022】
一方、給紙トレイ3の用紙積載部(圧板)21上に積載した用紙22を給紙するための給紙部として、用紙積載部21から用紙22を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)23及び給紙コロ23に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド24を備え、この分離パッド24は給紙コロ23側に付勢されている。
【0023】
そして、この給紙部から給紙された用紙22を記録ヘッド14の下方側で搬送するための搬送部として、用紙22を静電吸着して搬送するための搬送ベルト31と、給紙部からガイド25を介して送られる用紙22を搬送ベルト31との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ32と、略鉛直上方に送られる用紙22を略90°方向転換させて搬送ベルト31上に倣わせるための搬送ガイド33と、押さえ部材34で搬送ベルト31側に付勢された先端加圧コロ35とを備えている。また、搬送ベルト31表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ36を備えている。
【0024】
ここで、搬送ベルト31は、無端状ベルトであり、搬送ローラ37とテンションローラ38との間に掛け渡されて、図3のベルト搬送方向に周回するように構成している。帯電ローラ36は、搬送ベルト31の表層に接触し、搬送ベルト31の回動に従動して回転するように配置され、加圧力として軸の両端に各2.5Nをかけている。
【0025】
また、搬送ベルト31の裏側には、記録ヘッド14による印写領域に対応してガイド部材41を配置している。このガイド部材41は、上面が搬送ベルト31を支持する2つのローラ(搬送ローラ37とテンションローラ38)の接線よりも記録ヘッド14側に突出している。これにより、搬送ベルト31は印写領域ではガイド部材41の上面にて押し上げられてガイドされるので、高精度な平面性が維持される。
【0026】
さらに、記録ヘッド14で記録された用紙22を排紙するための排紙部として、搬送ベルト31から用紙22を分離するための分離爪51と、排紙ローラ52及び排紙コロ53とを備え、排紙ローラ52の下方に排紙トレイ3を備えている。ここで、排紙ローラ52と排紙コロ53との間から排紙トレイ3までの高さは排紙トレイ3にストックできる量を多くするためにある程度高くしている。
【0027】
また、装置本体1の背面部には両面給紙ユニット61が着脱自在に装着されている。この両面給紙ユニット61は搬送ベルト31の逆方向回転で戻される用紙22を取り込んで反転させて再度カウンタローラ32と搬送ベルト11との間に給紙する。また、この両面給紙ユニット61の上面には手差し給紙部62を設けている。
【0028】
さらに、図3に示すように、キャリッジ13の走査方向の一方の非印字領域には、記録ヘッド14のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構71を配置し、他方の非印字領域には空吐出受け部材81を配置している。
【0029】
維持回復機構71には、記録ヘッド14のノズル面をキャピングするためのキャッピング手段であるキャップ部材72a、72b、72c、72dと、ノズル面をワイピングするためのワイピング手段であるワイパーブレード73と、空吐出受け部材74などを備えている。
【0030】
次に、上カバー5の開放を禁止するカバーオープン禁止手段を構成するロック手段を構成するロック機構の一例について図4を参照して説明する。
この上カバーロック機構80は、装置本体1に対して上方に開閉可能に設けた上カバー5の内面側に設けた係合部材5aに係合可能な係止部81aを有するロック部材81を備えている。
【0031】
このロック部材81は、本体カバー111の内面に設けたピン112、112に長穴81b、81bを嵌め合わせることで、矢示A、B方向に移動可能に設けている。そして、このロック部材81の一端部と固定部材82との間に引っ張りスプリング83を介装して、矢示B方向に、つまり、ロック部材81を係止部81aが上カバー5の係合部材5aに係合しない位置(ロック解除位置、図示の位置)に付勢している。他方、このロック部材81の他端部にソレノイド84のプランジャ84aを連結し、ソレノイド84を駆動することで、ロック部材81を矢示A方向に引いて係止部81aが上カバー5の係合部材5aに係合する位置(ロック位置)にすることができる。
【0032】
次に、前カバー4の開放を禁止するカバーオープン禁止手段を構成するロック手段を構成するロック機構の一例について図5を参照して説明する。
この前カバーロック機構90は、カートリッジ操典部に対して前方向に開放可能な前カバー8の内面側に設けた係合部材8aに係合可能な係止部91aを有するロック部材91を備えている。
【0033】
このロック部材91は、カートリッジ装填部6のカバー113の内面に設けたピン114、114に長穴91b、91bを嵌め合わせることで、矢示C,D方向に移動可能に設けている。そして、このロック部材91の一端部と固定部材92との間に引っ張りスプリング93を介装して、矢示D方向に、つまり、ロック部材91を係止部91aが前カバー8の係合部材8aに係合しない位置(ロック解除位置、図示の位置)に付勢している。他方、このロック部材91の他端部にソレノイド94のプランジャ94aを連結し、ソレノイド94を駆動するで、ロック部材91を矢示C方向に引いて係止部91aが前カバー8の係合部材8aに係合する位置(ロック位置)にすることができる。
【0034】
なお、図示しないが、手動操作で上カバー5を閉状態に保持するためのロック手段を有している。本実施形態におけるカバーオープン禁止手段を構成するロック機構は、この手動操作によるロック手段とは別個のものであり、手動操作によるロック手段をロック解除位置にしても、上カバー5を開放できない状態にロックするためのものである。カートリッジ装填部6の前カバー8についても手動操作で前カバー8を閉状態に保持するためのロック手段を有した場合も同様である。
【0035】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図6を参照して説明する。なお、同図は同制御部の全体ブロック説明図である。
この制御部280は、装置全体の制御を司るCPU281と、CPU281が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM282と、画像データ等を一時格納するRAM283と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための不揮発性メモリ(NVRAM)284と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC285とを備えている。
【0036】
また、この制御部280は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのI/F286と、記録ヘッド14を駆動制御するためのヘッド駆動制御部287及びヘッドドライバ288と、主走査モータ290を駆動するための主走査モータ駆動部291と、副走査モータ292を駆動するための副走査モータ駆動部293と、上カバーロック機構80のソレノイド84及び前カバーロック機構90のソレノイド94を駆動するためのソレノイド駆動部294と、図示しないが帯電ローラ36に高電圧を印加するACバイアス供給部などを備えている。
【0037】
さらに、この制御部280は、上カバー5が開放されたことを検知する上カバーオープンセンサ295と、前カバー8が開放されたことを検知する前カバーオープンセンサ296と、その他の図示しない各種センサからの検知信号を入力するためのI/O297などを備えている。この制御部280には、この装置に必要な情報の入力及び表示をおこなうための操作パネル298(操作部7)が接続されている。
【0038】
制御部280は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト側からの印刷データ等をケーブル或いはネットを介してI/F286で受信する。
【0039】
そして、CPU281は、I/F286に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC285にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行ってヘッド駆動制御部287に画像データを転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成は、例えばROM282にフォントデータを格納して行っても良いし、ホスト側のプリンタドライバで画像データをビットマップデータに展開してこの装置に転送するようにしても良い。
【0040】
ヘッド駆動制御部287は、記録ヘッド14の1行分に相当する画像データ(ドットパターンデータ)を受け取ると、この1行分のドットパターンデータを、クロック信号に同期して、ヘッドドライバ288にシリアルデータで送出し、また所定のタイミングでラッチ信号をヘッドドライバ288に送出する。
【0041】
このヘッド駆動制御部287は、駆動波形(駆動信号)のパターンデータを格納したROM(ROM282で構成することもできる。)と、このROMから読出される駆動波形のデータをD/A変換するD/A変換器を含む波形生成回路及びアンプ等で構成される駆動波形発生回路を含む。
【0042】
また、ヘッドドライバ288は、ヘッド駆動制御部287からのクロック信号及び画像データであるシリアルデータを入力するシフトレジスタと、シフトレジスタのレジスト値をヘッド駆動制御部287からのラッチ信号でラッチするラッチ回路と、ラッチ回路の出力値をレベル変化するレベル変換回路(レベルシフタ)と、このレベルシフタでオン/オフが制御されるアナログスイッチアレイ(スイッチ手段)等を含み、アナログスイッチアレイのオン/オフを制御することで駆動波形に含まれる所要の駆動波形を選択的に記録ヘッド14のアクチュエータ手段に印加してヘッドを駆動する。
【0043】
さらに、制御部280は、この画像形成装置の動作状態に基づいて、ソレノイド駆動部294を介して上カバーロック機構80のソレノイド84及び前カバーロック機構90のソレノイド94を駆動して、ロック部材81、91をロック位置に移動させて、上カバー5、前カバー8が開放(開状態に)されることを禁止する制御を行う。つまり、制御部280と前述した上カバーロック機構80及び前カバーロック機構90によって本発明におけるカバーオープン禁止手段を構成している。
【0044】
このように構成した画像形成装置においては、給紙トレイ2から用紙22が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙22はガイド25で案内され、搬送ベルト31とカウンタローラ32との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド33で案内されて先端加圧コロ35で搬送ベルト31に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0045】
このとき、図示しない高圧電源から帯電ローラ36に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト31が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト31上に用紙22が給送されると、用紙22が搬送ベルト31に静電的に吸着され、搬送ベルト31の周回移動によって用紙22が副走査方向に搬送される。
【0046】
そこで、キャリッジ13を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド14を駆動することにより、停止している用紙22にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙22を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙22の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙22を排紙トレイ3に排紙する。
【0047】
また、印字(記録)待機中にはキャリッジ13は維持回復機構71側に移動されて、キャップ72a〜72dで記録ヘッド14をキャッピングされ、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止し、また、ノズル吸引を行ってノズルの状態を回復し、さらに、記録開始前、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出などの回復動作を行って安定した吐出性能を維持する。
【0048】
そこで、制御部が実行するカバーロック及びロック解除に係わる制御について図7ないし9を参照して説明する。なお、カバーロックとは、カバーが開状態(開放状態)にされることを禁止した状態にすることを、ロック解除とはカバーが開放状態にされることを禁止した状態を解除した状態にすることを意味する。
【0049】
まず、図7に示すように、ホスト側から印刷要求(画像形成要求)があったとき、あるいは、記録ヘッド24の維持回復動作を開始するときには、上カバーオープンセンサ295及び前カバーオープンセンサ296の各検知結果に基づいて上カバー5及び前カバー8が閉じているか否かを判別する。
【0050】
そして、上カバー5及び前カバー8が閉じていると判別されたときには、各カバーロック機構80、90の各ソレノイド84、94を駆動して、ロック部材81、91をロック位置に移動させ、上カバー5及び前カバー8を閉状態にロックして開状態にされることを禁止した後、画像形成又は記録ヘッドの維持回復動作を開始する。
【0051】
その後、紙詰まりエラー、インク切れ(記録液エンド)のエラーが発生することなく、画像形成又は記録ヘッドの維持回復動作が完了したか否かを判別し、画像形成又は記録ヘッドの維持回復動作が完了したときには、各カバーロック機構80、90の各ソレノイド84、94を非駆動にし、これによりロック部材81、91が非ロック位置に復帰移動して、上カバー5及び前カバー8を開状態にされることを禁止したロック状態を解除するロック解除を行う。
【0052】
このように、エラーが発生することなく正常な画像形成動作を行っているときには、装置本体1内部を開放する上カバー5が開状態にされることを禁止する。これにより、画像形成動作中に上カバー5が開放状態にされて、画像形成動作を停止することがなくなり、画像形成中の用紙がユーザーによって動かされたまま、その後の画像形成を再開して画像品質が低下するようにことがなくなり、また動作停止に伴う印刷速度の低下を防止できる。
【0053】
また、エラーが発生することなく正常な画像形成動作を行っているとき、あるいは、待機中でもヘッドの維持回復動作を行っているときには、インクカートリッジ10を装填するカートリッジ装填部6の前カバー8が開状態にされることを禁止する。これにより、不必要に前カバー8が開放されて、維持回復動作を停止することがなくなるだけでなく、インクカートリッジの脱着が行われて、記録ヘッド14内に空気が混入して吐出不良が発生することを防止でき、さらに、インクカートリッジ10にIDチップが備えた場合に、IDチップに対する情報の読み出しや書き込み中に、インクカートリッジ10の交換が行われてIDチップの情報が消失することを防止できる。
【0054】
このように、所定の動作が行われているとき、ここでは印刷中あるいはヘッドの維持回復動作中には、カバーが開状態にされることを禁止するカバーオープン禁止手段を備えているので、不必要にカバーが開放状態にされることによる不都合を回避することができる。
【0055】
また、上述したように画像形成の開始前又は画像形成終了後の待機状態では上カバー5及び前カバー8が開状態にされることを禁止するロック状態を解除しているので、画像形成やヘッドの維持回復動作に影響を与えない状態では、必要に応じて上カバー5及び前カバー8を開放状態することができる。
【0056】
一方、画像形成又は記録ヘッドの維持回復動作を行っているときに、紙詰まりエラーが発生したときには、図8に示すように、当該動作が停止しているか否かを判別して、当該動作が停止状態になったときに、上カバー5を開放状態することを禁止するロック状態を解除するロック解除を行う。その後、紙詰まりエラーが解消し、かつ、上カバー5が閉じられたときには、再度上カバー5を開放状態することを禁止するカバーロック状態にした後、図7の処理に戻る。
【0057】
このように、紙詰まりエラーが検出されたときには、カバーを開放状態にすることを禁止する状態を解除することで、カバーを開放して内部のジャム用紙を取り除くなどのジャム処理を行うことができる。
【0058】
同様に、画像形成又は記録ヘッドの維持回復動作を行っているときに、インク切れエラーが発生したときには、図9に示すように、当該動作が停止しているか否かを判別して、当該動作が停止状態になったときに、前カバー8を開放状態することを禁止する状態を解除するロック解除を行う。その後、カートリッジ交換が完了し、かつ、前カバー8が閉じられたときには、再度前カバー8が開放状態にされることを禁止する状態(カバーロック状態)にした後、インクの補充動作を行い、インク切れが解消したときには、図7の処理に戻る。
【0059】
このように、インク切れエラーが検出されたときには、カバーを開放状態にすることを禁止する状態を解除することで、カバーを開放してインクカートリッジを交換することができる。
【0060】
つまり、所定の動作中でもエラー検出によって動作が停止したときには、カバーが開放状態にされることを禁止する状態を解除することによって、カバーを開放してエラー解消のための必要な処置を行うことができるようになる。
【0061】
なお、上記実施形態においては、カバーオープン禁止手段をロック手段で構成したが、カバーを閉状態にロックする手動操作が可能なロック部材(ロック手段)と、このロック部材の手動操作を所定の動作が行われているときには禁止する手段とを備える構成とすることもできる。
【0062】
例えば、図10に示すように、上カバー5には矢示E,F方向に手動操作でスライド可能なロック部材301を設ける。このロック部材301には上カバー5の内面側に係止部301aを一体的に設け、ロック部材301を矢示E方向にスライドさせて、係止部301aを本体カバー111に設けた係合部302に係止させることにより、上カバー5を閉状態にロックできる構成とする。なお、ロック部材301が同図の位置にあるときをロック位置とする。
【0063】
そして、プッシュタイプのソレノイド303を設けて、このソレノイド303を駆動することによりプランジャ303aが破線図示の位置まで突出し、これにより、ロック部材301が矢示F方向に係止部301aが係合部302から外れる位置(ロック解除位置)まで手動操作で移動されることを禁止できるようにする。
【0064】
このように構成すれば、上記実施形態と同様に、制御部によって、所定の動作が行われているときにはソレノイド303を駆動することで、ロック部材301がロック解除位置に手動操作で移動され、上カバー5が開状態にされることを禁止することができる。
【0065】
なお、カートリッジ装填部6の前カバー8についても上述したと同様の構成を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一例を示す前方側から見た斜視説明図である。
【図2】同画像形成装置の機構部の概略を示す構成図である。
【図3】同機構部の要部平面説明図である。
【図4】同画像形成装置の上カバーロック機構の説明図である。
【図5】同前カバーロック機構の説明図である。
【図6】同画像形成装置の制御部の概略ブロック説明図である。
【図7】同制御部が実行するカバーロック及びロック解除の処理の説明に供するフロー図である。
【図8】同じく紙詰まりエラー発生時の処理の説明に供するフロー図である。
【図9】同じくインク切れエラー発生時の処理の説明に供するフロー図である。
【図10】カバーオープン禁止手段の他の例の説明に供する説明図である。
【符号の説明】
【0067】
1…画像形成装置本体
5…上カバー
5a…係合部
6…カートリッジ装填部
7…操作部
8…前カバー
8a…係合部
10…インクカートリッジ
14…記録ヘッド
80…上カバーロック機構
81…ロック部材
84…ソレノイド
90…前カバーロック機構
91…ロック部材
94…ソレノイド
280…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に対して開閉可能なカバーを備えた画像形成装置において、所定の動作が行われているときには、前記カバーが開状態にされることを禁止するカバーオープン禁止手段を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、前記カバーオープン禁止手段は、前記カバーを閉状態にロックするロック部材と、このロック部材によるロック解除を禁止する手段とを備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像形成装置において、前記カバーオープン禁止手段は、前記カバーを閉状態にロックするロック手段であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置において、前記カバーは、記録液を保管する記録液カートリッジを装填するカートリッジ装填部のカバーであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置において、前記カバーオープン禁止手段は、画像形成動作が行われているときに前記カバーが開状態にされることを禁止することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成装置において、前記カバーオープン禁止手段は、記録ヘッドの性能を維持又は回復する動作が行われているときに前記カバーが開状態にされることを禁止することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の画像形成装置において、前記カバーオープン禁止手段は、画像形成動作を行う前又は画像形成動作を行った後の待機状態では前記カバーが開状態にされることを禁止する状態を解除することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の画像形成装置において、前記カバーオープン禁止手段は、所定のエラー検出で所定の動作が停止されたときには前記カバーが開状態にされることを禁止する状態を解除することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項8に記載の画像形成装置において、前記カバーオープン禁止手段は、紙詰まりのエラー検出で所定の動作が停止されたときには前記カバーが開状態にされることを禁止する状態を解除することを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の画像形成装置において、前記カバーオープン禁止手段は、記録液エンドのエラー検出で所定の動作が停止されたときには前記カバーが開状態にされることを禁止する状態を解除することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−44128(P2006−44128A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−230256(P2004−230256)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】