説明

画像形成装置

【課題】シートと像担持体との分離を好適に行うことを可能とするとともに、オフセット現象を生じさせることのない画像形成装置を提供すること。
【解決手段】画像形成装置において、像担持体142と転写体154の間を通過し、トナー像が転写された後の前記シートの背面に前記転写体154の帯電極性と逆の極性の電圧を印加し、前記像担持体142と前記シートの分離を促す分離電極1と、前記像担持体154の下流側に配される前記シート上のトナー像を熱定着手段155と、前記分離電極1の電荷供給のタイミングを制御する制御手段からなり、前記制御手段が、前記シートの前方側端部が前記定着手段に挟持される直前に前記分離電極1の電荷供給を停止させるとともに前記シートの後方側端部が前記像担持体154から分離する直前に前記分離電極の電圧印加を開始させ、前記分離電極1と前記シート背面との離間距離を維持する離間手段2を備える画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ或いはファクシミリ等の画像形成装置に使用されるシート分離機構を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
感光体ドラムに形成されたトナー像は、シートに印加された電荷によって静電的に引き寄せられ、シート上に転写される。このシートに印加された電荷はトナー像をシートに引き寄せるのみではなく、シート自身と感光体ドラムとの吸着作用を生じせしめる。
【0003】
このシートと感光体ドラムとの間の吸着状態を解除するため、様々な方法が提案されている。
特許文献1は、このような吸着状態を解除するための手段の一例を開示する。
【0004】
図8は、特許文献1に開示される装置を示す。
図8には、一対のローラからなるレジストローラ(R)、レジストローラ(R)下流に配される感光体ドラム(D)及び感光体ドラム(D)の下流に配されるとともに一対のローラからなる定着ローラ(B)が示されている。
シート(S)は、レジストローラ(R)によって、感光体ドラム(D)へ送られる。そして、上述した如く、シート(S)に印加された電荷によって、シート(S)は感光体ドラム(D)に吸着されるとともにシート(S)上に感光体ドラム(D)周面に形成されたトナー像が転写される。
感光体ドラム(D)上のシート(S)を押圧するように転写ローラ(T)が配される。転写ローラ(T)周面には、感光体ドラム(D)上に形成されるトナー像と逆の極性を有する転写バイアスが印加され、転写ローラ(T)はシート(S)上へのトナー像の転写を促す。
【0005】
図8には、更に、分離爪(N)が示されている。分離爪(N)の先端は、感光体ドラム(D)周面に当接し、シート(S)の感光体ドラム(D)からの分離を促す。シート(S)の前方側端部の感光体ドラム(D)からの分離を促すために、分離電極(E)が配置される。分離電極(E)は、転写ローラ(T)に印加された帯電バイアスと逆の極性の電荷をシート(S)に供給する。
これにより、シート(S)の前方側先端部の感光体ドラム(D)への吸着力が低減され、シート(S)前方側先端部の感光体ドラム(D)からの分離が促される。
【0006】
分離電極(E)からの供給された電荷は、シート(S)の感光体ドラム(D)からの分離を促す作用をもたらすが、供給された電荷の一部がシート(S)を伝って下流に配された定着ローラ(B)にも電荷を供給する結果となる。
このため定着ローラ(B)が帯電し、定着ローラ(B)上の電荷は、シート(S)とシート(S)上に転写されたトナー像を形成するトナーとの間の付着力を低減させることとなる。
結果として、シート(S)上のトナーの一部が定着ローラ(B)に付着することとなり、定着ローラ(B)に付着したトナーが、次に搬送されてくるシート(S)に移り、「オフセット」現象を生じさせることとなる。
【0007】
このような現象を防止するために、特許文献1では、シート(S)の前方側端部が定着ローラ(B)によって挟持される直前に分離電極(E)からの電圧印加を停止する手段を採用している。
【0008】
【特許文献1】特開2004−354777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、定着ローラ(B)によってシート(S)の前方側端部が挟持される直前に電圧印加を停止させることにより、好適にオフセット現象が防止されるが、結果としてシート(S)後方側端部には感光体ドラム(D)からシート(S)を分離させるための電荷が供給されないこととなる。
このためシート(S)の後方側端部は、感光体ドラム(D)との高い吸着力を保った状態で下流側へ引っ張られることとなる。この結果、シート(S)には高い張力が生ずるため、シート(S)後方側端部が感光体ドラム(D)から分離する際に、シート(S)の後方側端部が跳ね上がる現象を生じ、シート(S)上に転写されたトナー像の擦れを生じさせることとなる。
【0010】
本発明は上記実情を鑑みてなされたものであって、シートと感光体ドラムとの分離を好適に行うことを可能とするとともに、オフセット現象を生じさせることのない画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明は、トナー像を搬送するとともにシートに前記トナー像を転写する像担持体と、該像担持体に隣接して配設されるとともに該像担持体の帯電極性と逆の帯電極性を備える転写体と、前記像担持体と前記転写体の間を通過し、トナー像が転写された後の前記シートの背面に前記転写体の帯電極性と逆の極性の電圧を印加し、前記像担持体と前記シートの分離を促す分離電極と、前記像担持体の下流側に配されるとともに前記シート上のトナー像を熱圧着する定着手段と、前記分離電極の電荷供給のタイミングを制御する分離電極制御手段からなり、前記分離電極制御手段が、前記シートの搬送方向端部のうち先に通過する側の前方側端部が前記定着手段に挟持される直前に前記分離電極の電荷供給を停止させるとともに前記シートの後方側端部が前記像担持体から分離する直前に前記分離電極の電圧印加を開始させ、前記分離電極と前記定着手段の間には、前記分離電極と前記シート背面との離間距離を維持する離間手段を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【0012】
請求項2記載の発明は、前記離間手段が、回転可能に支持される板状体であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置である。
請求項3記載の発明は、前記板状体が多角形状に形成され、該板状体の回転時に前記シートに対して点接触することを特徴とする請求項2記載の画像形成装置である。
請求項4記載の発明は、前記離間手段が、絶縁部材からなることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置である。
請求項5記載の発明は、前記離間手段の構成材料の体積抵抗値が、1012Ω/cm以上であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置である。
請求項6記載の発明は、前記離間手段が、非帯電材料からなることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置である。
【0013】
請求項7記載の発明は、前記像担持体が、アモルファスシリコン感光体で構成されることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置である。
請求項8記載の発明は、前記トナー像を構成するトナーが、一成分現像剤であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置である。
【0014】
請求項9記載の発明は、前記分離電極が、前記シート幅方向に整列した複数の針状電極からなることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置である。
請求項10記載の発明は、複数の分離爪を更に備え、該分離爪は前記像担持体幅方向に整列し、該分離爪の先端部が、前記像担持体に当接することを特徴とする請求項9記載の画像形成装置である。
請求項11記載の発明は、前記離間手段が、前記分離電極と前記シート背面間の距離を可変とすることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、シート後方側端部に分離電極から電圧を印加されるため、シートと像担持体間との付着力を低減でき、シート後方側端部の跳ね上がり現象を防止可能となる。また、離間手段によって、シート後方側端部の分離電極への過度の接近が防止でき、シートを伝う電流の発生を抑制でき、定着手段の帯電を防ぎ、オフセット現象を防止可能となる。
請求項2記載の発明によれば、離間手段が回転可能に支持される板状体であるので、シートの搬送に対して離間手段が抗することがなく、シート上に転写されたトナーの散乱を防止可能となる。
請求項3記載の発明によれば、離間手段がシートに対して点接触するので、離間手段の帯電を防止可能となる。
請求項4及び5記載の発明によれば、分離電極からの電流が離間手段に流れることを防止可能となる。
請求項6記載の発明によれば、離間手段の電荷の蓄積を防止可能となる。
【0016】
請求項7記載の発明によれば、長寿命な画像形成装置を構築することが可能となる。
請求項8記載の発明によれば、画質を向上させることが可能となる。
請求項10記載の発明によれば、シートを像担持体から好適に分離可能となる。
請求項11記載の発明によれば、シートの材料に応じて、シートと分離電極の離間距離を調整可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る画像形成装置について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明に係る画像形成装置の一例を示す。本明細書において、「上流側」並びに「下流側」との文言は、シート(S)の搬送方向を基準にして、先にシート(S)が流れる側を「上流」と称し、後にシート(S)が流れる側を「下流」と称する。また、シート(S)に用いられる「前方」並びに「後方」との文言について、シート(S)が一の工程を通過する際に、先に通過する側を「前方」と称し、後に通過する側を「後方」と称する。
【0018】
図1に示す画像形成装置は、複写機であるが、本発明はこれに限られるものではなく、他の種類の画像形成装置、例えば、ファクシミリ装置やプリンタにも適用可能である。
複写機(100)は、複写機(100)上部に配される画像読取部(120)と、紙等のシート上にトナー像を形成する画像形成部(140)を備える。
【0019】
画像読取部(120)は、原稿押圧板(121)と原稿押圧板(121)下方に配される透明な原稿台(122)を備える。原稿押圧板(121)は図1中奥方の縁を軸として上方に回動可能とされる。
図1に示す例においては、原稿台(122)上面に原稿(D1)が載置されている。原稿押圧板(121)は原稿台(122)上に載置された原稿(D1)を押圧するとともに原稿台(122)上面に密着させる。
【0020】
画像読取部(120)は更に、走査ユニット(123)を備える。図1に示す例において、走査ユニット(123)は複写機(100)左方から右方に向けて移動可能である。走査ユニット(123)には、光源(124)及び第1反射ミラー(125)が接続し、光源(124)及び第1反射ミラー(125)は走査ユニット(123)の移動に追従して移動する。
画像読取部(120)内部右方には、第2反射ミラー(126)及び第3反射ミラー(127)が配される。
【0021】
走査ユニット(123)が左方から右方に移動すると、原稿台(122)上面と密着した原稿(D1)の画像面が光源(124)によって走査される。そして、第1反射ミラー(125)に映った画像面の像は第2反射ミラー(126)に送られる。第2反射ミラー(126)は、第1反射ミラー(125)により送られた像を第3反射ミラー(127)へ送る。
【0022】
画像読取部(120)は更に、レンズアレイ(128)とCCD(129)を備える。
第3反射ミラー(127)は、第2反射ミラー(126)から送られた像を更に反射させ、レンズアレイ(128)へ送る。レンズアレイ(128)は、第3反射ミラー(127)から送られた像を結像し、結像された像をCCD(129)へ送る。
【0023】
図1に示す複写機(100)は、走査ユニット(123)を移動させて画像を読み取る以外の方式でも、画像の読取が可能である。
図1に示す複写機(100)の画像読取部(120)は、原稿押圧板(121)の上方に配されるとともに原稿(D2)が載置された給紙台(130)と、給紙台(130)上の原稿(D2)を左方に送る一対のローラからなる給紙ローラ(131)と、給紙ローラ(131)から送られた原稿(D2)を排紙する一対のローラからなる排紙ローラ(132)と、排紙ローラ(132)によって送られた原稿(D2)を受け止める排紙トレイ(133)を備える。
【0024】
走査ユニット(125)は、給紙ローラ(131)と排紙ローラ(132)の下方において、これら給紙ローラ(131)と排紙ローラ(132)の中間位置を停止位置としている。そして、給紙ローラ(131)から排紙ローラ(132)へ送られる原稿(D2)の画像面に向けて、光源(124)が光を照射し、第1反射ミラー(125)が原稿(D2)の画像面の像を第2反射ミラー(126)へ送る。第2反射ミラー(126)は、上述と同様に、第1反射ミラー(125)により送られた像を第3反射ミラー(127)へ送る。第3反射ミラー(127)は、第2反射ミラー(126)から送られた像を更に反射させ、レンズアレイ(128)へ送る。レンズアレイ(128)は、第3反射ミラー(127)から送られた像を結像し、結像された像をCCD(129)へ送る。
【0025】
画像形成部(140)は、画像処理部(図示せず)を備える。CCD(129)は送られた像のデータを画像処理部へ送る。画像処理部は、送られた像のデータに対しA/D変換、濃度補正やシェーディング補正等の必要な処理を適宜施す。
【0026】
画像形成部(140)は、露光部(141)及び感光体ドラム(142)を備える。画像処理部は露光部(141)へ処理後の画像データの信号を送る。露光部(141)は、レーザ発振器やポリゴンミラー等(いずれも図示せず)を備える。
レーザ発振器は、ポリゴンミラー等を介して、感光体ドラム(142)周面にレーザ光を照射する。このレーザ光は、画像処理部から露光部(141)へ送られた画像データの信号に基づいて、オン・オフの制御がなされる。
【0027】
感光体ドラム(142)は、アルミニウム等の導電性ドラム基体と、ドラム基体外周を覆うように配されたOPC(有機光半導体)やアモルファスシリコン等の感光層から構成される。感光体ドラム(142)は、複写機(100)本体に回転可能に設けられ、駆動装置(図示せず)によって所定速度で回転される。
【0028】
画像形成部(140)は、帯電器(143)を備える。帯電器(143)は、感光体ドラム(142)を帯電させる。帯電器(143)としては、スコロトロン方式のコロナ帯電器が使用されている。帯電器(143)は、帯電バイアス印加電源(図示せず)によって、帯電バイアスが印加されることにより、感光体ドラム(142)の周面を所定の極性・電位に均一に帯電することが可能である。
上述の如く、レーザ発振器からのレーザ光の照射によって露光された感光体ドラム(142)周面の部分は、電荷が除去されることとなる。これにより、静電潜像を形成することとなる。
【0029】
画像形成部(140)は現像器(144)を備える。現像器(144)は、現像剤を収容する現像容器(145)と、現像容器(145)に回転可能に支持される現像ローラ(146)を備える。現像ローラ(146)には、現像バイアス印加電源(図示せず)によって現像バイアスが印加され、現像容器(145)内に収容されたトナーが現像ローラ(146)周面に付着する。
現像ローラ(146)周面は感光体ドラム(142)周面に当接し、現像ローラ(146)とともに回転する。現像ローラ(146)に付着したトナーは感光体ドラム(142)周面上に形成された静電潜像に乗り移り、感光体ドラム(142)上にトナー像が形成される。
【0030】
画像形成部(140)は、シート(S)を収容する給紙カセット(150)と、給紙カセット(150)からシート(S)を送出す給紙ローラ(151)と、給紙ローラ(151)から送られたシート(S)を更に下流へ送出す搬送ローラ(152)と、一対のローラからなるレジストローラ(153)を備える。
レジストローラ(153)は停止及び回転の動作を繰り返し、シート(S)の流れ方向位置を感光体ドラム(142)上に形成されたトナー像の位置に合わせる。
【0031】
画像形成部(140)は、転写ローラ(154)を備える。転写ローラ(154)は、感光体ドラム(142)に隣接して配され、感光体ドラム(142)の周面の移動速度と同速或いはそれ以上の周面移動速度で回転動作する。これにより、転写工程が好適に行われることとなる。
転写ローラ(154)は、転写バイアス印加電源(図示せず)によって、感光体ドラム(142)上のトナー像と逆極性の転写バイアスが印加される。
【0032】
レジストローラ(153)によって、位置調整がなされたシート(S)は、感光体ドラム(142)と転写ローラ(154)の間に供給される。転写ローラ(154)と感光体ドラム(142)の間でシート(S)が押圧されることにより、感光体ドラム(142)上に形成されたトナー像がシート(S)上に転写される。
【0033】
画像形成部(140)は、定着ローラ(155)を備える。定着ローラ(155)は、内部に熱源を有するヒートローラ(156)と加圧ローラ(157)から構成される。感光体ドラム(142)から送られたシート(S)は、ヒートローラ(156)と加圧ローラ(157)の間に配され、これらヒートローラ(156)と加圧ローラ(157)で押圧される。これにより、シート(S)上に転写されたトナー像が熱圧着されることとなり、シート(S)上に定着する。
【0034】
画像形成部(140)は、一対のローラからなる排紙ローラ(158)及び排紙トレイ(159)を備える。
シート(S)は、定着ローラ(155)から排紙ローラ(158)へ送られる。その後、排紙ローラ(158)は排紙トレイ(159)にシート(S)を送出す。
【0035】
図2は、レジストローラ(153)から定着ローラ(155)までのシート(S)の経路の拡大図である。
図2に示す如く、感光体ドラム(142)上方にクリーニング器(200)が配される。クリーニング器(200)に備えられたクリーニングブレードは、感光体ドラム(142)周面に当接する。これにより、感光体ドラム(142)がシート(S)にトナー像を転写した後、感光体ドラム(142)周面に残留したトナーがクリーニング器(200)により除去される。
【0036】
クリーニング器(200)の下方には、分離爪(201)が配される。分離爪(201)の先端は鋭角に形成され、感光体ドラム(142)周面に当接する。これにより、分離爪(201)の先端が機械的にシート(S)を感光体ドラム(142)から分離させる。尚、分離爪(201)は、絶縁性の合成樹脂やセラミックで形成されることが好ましい。より好ましくは、分離爪(201)の体積抵抗値が、1012Ω/cm以上であることが好ましい。
感光体ドラム(142)と対向して配されるレジストローラ(154)上方には、分離電極(1)が配される。分離電極(1)先端は、感光体ドラム(142)周面から離れて位置している。
【0037】
図3は、感光体ドラム(142)、転写ローラ(154)及び分離電極(1)の印加電圧のバイアスの関係を示す。
本実施例において、感光体ドラム(142)の周面をアモルファスシリコンで形成している。また、感光体ドラム(142)の周面が正の帯電をするものとする。このとき、感光体ドラム(142)上でトナー像を形成するトナーは正の帯電を示す。
このとき、転写ローラ(154)にバイアスをかけ、負の帯電を生じさせる。そして、シート(S)が転写ローラ(154)と感光体ドラム(142)の間を通過すると、正の帯電を示すトナーは負の電荷に引き寄せられ、シート(S)上に移動することとなる。この結果、感光体ドラム(142)上のトナー像がシート(S)上に転写することとなる。
【0038】
シート(S)が転写ローラ(154)と感光体ドラム(142)の間を通過することによって、シート(S)の転写面側(感光体ドラム(142)上のトナー像が転写される面)には正の電荷が付着する。一方、シート(S)の背面側(シート(S)の転写面と反対側の面)には負の電荷が付着する。この結果、シート(S)の背面側に付着した負の電荷が、感光体ドラム(142)上の正の電荷に引き寄せられ、シート(S)が感光体ドラム(142)に吸着されることとなる。
【0039】
ここで、分離電極(1)から正の電圧を印加することで、シート(S)背面側の負の電荷と分離電極(1)から飛ばされた正の電荷が打ち消しあい、シート(S)の感光体ドラム(142)への吸着が解消されることとなる。
【0040】
図4は、分離爪(201)と分離電極(1)の位置関係を示す図であり、分離電極(1)を上方から見た図である。尚、図4において、明瞭化のためシート(S)は示されていない。
分離電極(1)は、板状の電極であり、先端部が針状に尖った形状とされている。全体として分離電極(1)先端部は鋸刃状となっている。分離電極(1)は、感光体ドラム(142)幅方向に延びている。
図4において、4つの分離爪(201)が感光体ドラム(142)上に示される。分離爪(201)は互いに所定間隔をおいて、配設されている。分離爪(201)の配設間隔は感光体ドラム(142)周面によって搬送されるシート(S)の幅に応じて適宜定められる。
【0041】
感光体ドラム(142)幅方向位置において、分離爪(201)が配された位置に対応する分離電極(1)の先端部には、凹部(11)が形成される。凹部(11)の形成によって、凹部(11)からの電圧印加が抑止される。
分離電極(1)基端部を保持する電極ホルダ(12)上面に、アーム部(21)が載置され、アーム部(21)は分離電極(1)先端方向に延出する。分離電極(1)幅方向位置において、アーム部(21)は凹部(11)に対応する位置にそれぞれ配置される。
アーム部(21)先端部には離間板片(22)が回転可能に支持される。離間板片(22)は、分離電極(1)先端から突出し、感光体ドラム(142)に対して分離電極(1)先端部よりも近接した位置にある。
離間板片(22)は、絶縁性の合成樹脂やセラミックで形成されることが好ましい。より好ましくは、離間板片(22)の体積抵抗値が、1012Ω/cm以上であることが好ましい。更には、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体樹脂などの非帯電性材料からなることが好ましい。
離間板片(22)の形状は特に限定されないが、星型などの凸部と凹部が繰り返す多角形状に形成されることが好ましい。また、この凸部の先端は鋭角に形成されることが好ましい。これにより、離間板片(22)がシート(S)背面に対して点接触し、シート(S)の移動に抗する力を最小限化でき、シート(S)に転写されたトナーの散乱を防止可能となる。
アーム部(21)と離間板片(22)とで、離間手段(2)が構成される。
【0042】
図3を再度参照する。
シート(S)の後方側端部が感光体ドラム(142)と転写ローラ(154)の間を通過すると、シート(S)後方側端部に分離電極(1)から正の電圧が印加され、シート(S)後方側端部の感光体ドラム(142)の吸着が解除される。結果として、シート(S)の後方側端部は転写ローラ(154)を通過した後、感光体ドラム(142)から離れ、分離電極(1)へ近づくこととなる。
シート(S)の分離電極(1)への過度の近接状態は、シート(S)へ正の電荷を過度に与えることとなり、必要以上にシート(S)へ転写されたトナー像の付着力を弱めることとなる。この結果、下流工程において、定着ローラ(155)をシート(S)後方端が通過すると、シート(S)の後方端に位置するトナー像のトナーが定着ローラ(155)に付着することとなる。定着ローラ(155)へ付着したトナーは次に流れるシート(S)に付着し、「オフセット現象」を引き起こす。
【0043】
離間板片(22)は、分離電極(1)先端よりも感光体ドラム(1)側に位置するので、シート(S)後端は離間板片(22)先端部の位置を超えて分離電極(1)先端に近づくことはない。
これにより、シート(S)への過度の電圧印加が防止されることとなる。
尚、アーム部(21)の取付形態は特に限定されないが、例えば、電極ホルダ(12)上に配されたシリンダによってアーム部(21)基端部が固定されることにより、シリンダロッドの伸縮で離間板片(22)の分離電極(1)先端からの突出量を増減可能となる。
【0044】
図5は、シート(S)の前方側端部が感光体ドラム(142)と転写ローラ(154)の間を通過している状態を示す。
この状態において、分離電極(1)は電圧を印加し、シート(S)前方側端部と感光体ドラム(142)周面間の吸着状態を解除する。そして、シート(S)の前方側端部は分離爪(201)によって、機械的に感光体ドラム(142)周面から引き剥がされる。
【0045】
図6は、シート(S)の前方側端部が定着ローラ(155)直前に達した状態を示す。
図5の状態から図6の状態に至るまでシート(S)が搬送されている間、分離電極(1)はシート(S)背面に電圧を印加し続ける。そして、シート(S)の前方側端部が定着ローラ(155)に達する直前に、分離電極(1)からの電圧の印加が停止する。
尚、電圧印加の停止のタイミングを早めて、シート(S)の前方側端部のみに分離電極(1)からの電圧印加を行ってもよい。その後、分離爪(201)による引き剥がし作用のみによって、シート(S)の感光体ドラム(142)周面からの引き剥がしを行ってもよい。これにより、シート(S)とシート(S)に転写されたトナー像との間の付着力を高い状態に保ったまま定着ローラ(155)までシート(S)を搬送可能となる。
【0046】
図7は、シート(S)の後方側端部が転写ローラ(154)と感光体ドラム(142)の間を通過した直後の状態を示す。
この状態において、分離電極(1)からシート(S)に対して電圧が印加される。これにより、シート(S)と感光体ドラム(142)周面との間の吸着状態が解除される。その後、シート(S)の後方側端部は分離電極(1)の方向へ移動するが、離間板片(22)によって、その移動が妨げられる。
これにより、上述の如く、分離電極(1)からの過度の電圧印加が防止される。
【0047】
上記の分離電極(1)の電圧印加の開始並びに停止は、分離電極(1)に電気的に接続する分離電極制御手段(マイクロプロセッサなど)により行われる。マイクロプロセッサが、レジストローラ(153)直前に配されたセンサ(図示せず)の信号やレジストローラ(153)の駆動を制御するコントローラ(図示せず)の出力信号を受け、これによりシート(S)の位置を判別し、上述の分離電極(1)の電圧印加の開始並びに停止の信号を分離電極(1)に送り、分離電極(1)が分離電極制御手段からの信号に基づき電圧印加の開始並びに停止を行う。
【0048】
以下に示す表1は、離間板片(22)の分離電極(1)先端からの突出量とオフセット現象の発生との関係を示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1に示す如く、離間板片(22)の分離電極(1)からの突出量の増加に応じて、オフセット現象の発生が低減されることが明らかである。
【0051】
上記実施例において、像担持体として、感光体ドラム(142)を用いて説明してきたが、他の形式の像担持体(例えば、中間転写体を用いる場合など)も本発明に適宜採用可能である。
更に、上記例において、転写体として転写ローラを用いて説明してきたが、他の形式の転写体(例えば、転写チャージャ方式など)も本発明に適宜採用可能である。
加えて、上記例において、定着手段として、一対のローラからなる定着ローラ(155)を用いて説明してきたが、ベルト等を用いてトナー像を定着させる手段等も本発明に適宜採用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、複写機、ファクシミリ装置或いはプリンタ等の画像形成装置に好適に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る画像形成装置の概略図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置の主要部を示す図である。
【図3】本発明に係る画像形成装置の分離メカニズムを示す図である。
【図4】本発明に係る画像形成装置の分離電極並びに離間手段の配置を示す図である。
【図5】シート前方側端部が感光体ドラムと転写ローラの間を通過した直後の状態を示す図である。
【図6】シート前方側端部が定着ローラ直前に達した状態を示す図である。
【図7】シート後方側端部が感光体ドラムと転写ローラの間を通過した直後の状態を示す図である。
【図8】従来の感光体ドラムとシートとの分離機構を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
S・・・・・・・・・・・・・シート
1・・・・・・・・・・・・・分離電極
142・・・・・・・・・・・感光体ドラム
154・・・・・・・・・・・転写ローラ
155・・・・・・・・・・・定着ローラ
2・・・・・・・・・・・・・離間手段
22・・・・・・・・・・・・離間板片
201・・・・・・・・・・・分離爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を搬送するとともにシートに前記トナー像を転写する像担持体と、
該像担持体に隣接して配設されるとともに該像担持体の帯電極性と逆の帯電極性を備える転写体と、
前記像担持体と前記転写体の間を通過し、トナー像が転写された後の前記シートの背面に前記転写体の帯電極性と逆の極性の電圧を印加し、前記像担持体と前記シートの分離を促す分離電極と、
前記像担持体の下流側に配されるとともに前記シート上のトナー像を熱圧着する定着手段と、
前記分離電極の電荷供給のタイミングを制御する分離電極制御手段からなり、
前記分離電極制御手段が、前記シートの搬送方向端部のうち先に通過する側の前方側端部が前記定着手段に挟持される直前に前記分離電極の電荷供給を停止させるとともに前記シートの後方側端部が前記像担持体から分離する直前に前記分離電極の電圧印加を開始させ、
前記分離電極と前記定着手段の間には、前記分離電極と前記シート背面との離間距離を維持する離間手段を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記離間手段が、回転可能に支持される板状体であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記板状体が多角形状に形成され、該板状体の回転時に前記シートに対して点接触することを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記離間手段が、絶縁部材からなることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記離間手段の構成材料の体積抵抗値が、1012Ω/cm以上であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記離間手段が、非帯電材料からなることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記像担持体が、アモルファスシリコン感光体で構成されることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記トナー像を構成するトナーが、一成分現像剤であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記分離電極が、前記シート幅方向に整列した複数の針状電極からなることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項10】
複数の分離爪を更に備え、
該分離爪は前記像担持体幅方向に整列し、
該分離爪の先端部が、前記像担持体に当接することを特徴とする請求項9記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記離間手段が、前記分離電極と前記シート背面間の距離を可変とすることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−225814(P2007−225814A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−45824(P2006−45824)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】