説明

画像形成装置

【課題】定着装置の熱によって発生した水蒸気の結露による水滴が転写紙に付着するのを防止でき、かつ、画像形成装置外部に水蒸気が多量に排出されないようにする。
【解決手段】定着後搬送路r5に配置される可動式の定着上ガイド15及び分岐ガイド18を中空の袋形状とし、その搬送路に臨む面側に複数の水蒸気進入口(スリット15c及び18c)を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置に関し、より詳細には、定着後搬送路の結露によって転写紙が濡れることを防止するようにした画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱ローラ定着方式では、内部にハロゲンランプ等の発熱体を仕込んだ加熱ローラと、表面に耐熱ゴムで被覆した加圧ローラとに挟み込んで搬出することにより転写紙にトナー像を定着する方式で、高速仕様に適している。この定着方式では、定着時に転写紙の内部に含まれている水分が蒸発し、加熱ローラの上方にある搬送路上部の搬送面が結露し、水滴が垂れて転写紙を濡らすという問題がある。
【0003】
そこで、搬送路の上部には通常搬送方向に延びる高さ10mm以下(具体的には、1mm程度)の複数のガイドリブを平行に設け、ガイドリブ以外の搬送面と転写紙が接触しないようにして水滴の付着を抑制するようにしている。この場合、ガイドリブの数が一定であれば、ガイドリブ高さは高いほど効果的であるようにも思えるが、ガイドリブ高さを高く設定すると、ガイドリブ側面の面積も大きくなりそこでの水滴量が増え、ガイドリブでの水滴付着が発生してしまう。
【0004】
また、特許文献1には、搬送路天板に吸水性の可撓性シート部材(水分吸収部材)を貼付し、結露による水滴が垂れて転写紙が濡れることを防止することが提案されている。
【特許文献1】特開平6−35360号公報(段落0022、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、転写紙の搬送性を考えた場合、天板が平滑面であると、抵抗の大きな水分吸収部材に転写紙先端が当たりやすく、紙詰まり(ジャム)の原因となる。抵抗を少なくしようとして天板を上記のようなリブ形状とすると、ガイドリブを避けるために数多くの水分吸収部材を分割して貼付する必要があり、作業性が悪くなる。また、水分吸収部材に吸収された水が定着の熱で再度蒸発し、機械本体外部に水蒸気が多量に排出され、白煙と誤認されるおそれもある。
【0006】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、結露による水滴が転写紙に付着するのを防止でき、かつ、機械本体外部に水蒸気が多量に排出されないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、転写紙上のトナー像を熱により定着する定着装置と、該定着装置下流側の搬送路に配置される可動式の搬送ガイドとを備えた画像形成装置において、前記搬送ガイドを中空の袋形状とし、その搬送路に臨む面側に複数の水蒸気進入口を形成したことを特徴とする。
【0008】
さらに、前記搬送ガイドの搬送路に臨む面に、高さ10mm以下の複数のガイドリブを凸設することにより、結露による異常画像防止、転写紙のジャムの防止に対応できる。
【0009】
また、スリットを通って水滴が搬送路に落下するのを防止するために、前記搬送ガイドの中空部の天井面に、水分吸収部材を設けたり、前記搬送ガイドの中空部の天井面に勾配をつけ、中空部に天井面を伝って流れる水滴を受ける水溜まり部を設けたりしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、定着装置下流側の搬送路に配置される可動式の搬送ガイドを中空の袋形状とし、その搬送路に臨む面側に複数の水蒸気進入口を形成したことにより、搬送路面の結露が低減でき、結露による水滴が転写紙に付着するのを防止できる。また、水蒸気の影響を中空部内にとどまらせ、他部品への影響をなくし、本体機械外部への水蒸気の排出を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係るプロセスユニットを備えた画像形成装置(本実施の形態では、電子写真方式のレーザビームプリンタ)を示す概略構成図である。まず、図1に基づいて、画像形成装置の構成について説明する。
【0013】
この画像形成装置(レーザビームプリンタ)1は、電子写真画像形成プロセスによって像担持体としての感光体ドラム2上に形成されたトナー像を転写紙3に転写して画像形成を行う。
【0014】
詳しくは、帯電手段としての帯電ローラ4aを有する帯電器4によって回転している感光体ドラム2に帯電を行ない、次いでこの感光体ドラム2に露光装置5から入力される画像情報に応じたレーザ光を照射して感光体ドラム2に画像情報に応じた静電潜像を形成する。露光装置5は、レーザダイオード(不図示)から画像情報に応じて照射されるレーザ光を高速回転するポリゴンミラー(不図示)で反射させ、レンズ(不図示)と反射ミラー(不図示)を介して感光体ドラム2表面を走査露光する。
【0015】
そして、この静電潜像を現像ローラ6aを有する現像装置6のトナー(現像剤)によって現像してトナー像を形成する。なお、本実施の形態で使用した現像剤としてのトナーは、磁性粒子を樹脂中に分散した1成分磁性トナーである。
【0016】
そして、トナー像の形成と同期して、複数の給送カセット7にセットした所定サイズの用紙などの転写紙3を、ピックアップローラ8、フィードローラ及びこれに圧接するリタードローラから構成される給送ローラ対9によって給送路r1を給送し、反転ローラとこれに当接する2つの従動ローラとから構成される反転ローラセット10によりレジスト前搬送路r2を搬送する。レジスト前搬送路r2を搬送される転写紙3はレジスト前検知スイッチ28によって検知され、これに基づいて本体制御部(不図示)はレジストローラ対11の動作を制御し、レジストローラ対11によってトナー像の転写のタイミングに合わせるように転写前搬送路r3を搬送され、感光体ドラム2と転写手段としての転写ローラ12間の転写ニップ部に到達する。
【0017】
そして、感光体ドラム2に形成されたトナー像を、転写バイアスが印加された転写ローラ12によって転写紙3の第1面に転写する。その後、トナー像の転写を受けた転写紙3を搬送ガイド13で定着前搬送路r4を搬送し、定着手段としての定着装置14へと搬送する。この定着装置14は、加圧ローラ14c及びヒータ14aを内蔵する加熱ローラ14bを有しており、トナー像が転写された転写紙3を加圧ローラ14cと加熱ローラ14b間の定着ニップ部で定着後搬送路r5へと挟持搬送しながら通過する転写紙3に熱及び圧力を印加して転写されたトナー像を定着する。
【0018】
そして、後述する分岐ガイド18を図1の実線位置に揺動させた場合には、トナー像が定着された転写紙3は、搬送ローラ対19,20によってフェースダウン排出路r6を搬送され、排出ローラ対21によって画像が記録された面を下側(いわゆるフェースダウン)にして画像形成装置本体23の上面のフェースダウン排出トレイ22へと排出される。
【0019】
他方、分岐ガイド18を図1の点線位置に揺動させた場合には、トナー像が定着された転写紙3は、フェースアップ排出路r7を搬送され、排出ローラ対24によって画像が記録された面を上側(いわゆるフェースアップ)にして画像形成装置本体23の側面のフェースアップ排出トレイ25へと排出される。
【0020】
そして、前記トナー像を転写紙3に転写した後に、クリーニング器26のクリーニングローラ26aによって感光体ドラム2上の残留トナーを除去して、次の画像形成動作に備える。除去された残留トナーは、回転駆動される廃トナー回収ローラ26bによってクリーニング器26内の廃トナー回収部に移動し、回収される。なお、図1中符号27は、未使用のトナーを収容し、必要に応じて現像装置6にこのトナーを供給するトナーカートリッジである。
【0021】
次に、本発明に特徴的な構成について図2及び図3を参照して説明する。図2は、図1における定着後搬送路r5周辺の構成を拡大して示す断面図であり、図3は、定着上ガイド15の図2の矢視A−A線断面図である。
【0022】
図2に示すように、定着後搬送路r5の上部には、回動自在な定着上ガイド15が配設されている。定着上ガイド15は、加熱ローラ14bの軸方向(紙面に対して垂直な方向)に延びる、断面の輪郭形状が略直角三角形をしている部材であり、内部に空洞を有するように、所定の厚みで袋状に形成されている。定着上ガイド15は、その上壁の直角エッジ部に配された回動支点15aを中心に回動自在に配されている。図3に示すように、定着上ガイド15の定着後搬送路r5に臨む面には、所定の間隔を開けて交互に並ぶ複数のガイドリブ15b及びスリット15cがそれぞれ凸設及び開口形成されている。また、定着上ガイド15は搬送方向上流側に突出する分離爪16を備えている。この分離爪16の先端は定着上ガイド15の自重で加熱ローラ14bに当接し、加熱ローラ14bの表面に貼り付いてくる定着後の転写紙3の前端を引き剥がし、転写紙3を定着後搬送路r5の方へ分離(剥離)する。定着上ガイド15の空洞部の天井面には、シート状の水分吸収部材17を貼付している。なお、ガイドリブ15bの高さは、水滴がリブ壁を伝って垂れるのを防ぐため、10mm以下(好ましくは1mm程度)に設定されている(図4(a)及び(c)参照)。
【0023】
また、図2に示すように、定着後搬送路r5の下流位置には、揺動可能な分岐ガイド18が配設されている。分岐ガイド18は、上記定着上ガイド15と同様に加熱ローラ14bの軸方向(紙面に対して垂直な方向)に延びる、断面の輪郭形状が略ブーメラン型をしている部材であり、内部に空洞を有するように、所定の厚みで袋状に形成されている。分岐ガイド18は、紙面に垂直な方向の側端壁にそれぞれ凸設された揺動支点18a(図1参照)を中心に揺動可能に配設され、ソレノイド(不図示)を用いた揺動機構により転写紙3の排出方向に応じて、図1の実線位置と点線位置との間で姿勢を変えるよう揺動される。また、上記定着上ガイド15と同様に分岐ガイド18のフェースダウン排出路r6に臨む面には、所定の間隔を開けて交互に並ぶ複数のガイドリブ18b及びスリット18cがそれぞれ凸設及び開口形成されている。分岐ガイド18のフェースアップ排出路r7に臨む面には、所定の間隔を開けて並ぶ複数のガイドリブ18dが凸設されている。
【0024】
次に、上記本発明に特徴的な構成による作用効果について図4を参照して説明する。図4は、トナー像を定着後の転写紙3が定着上ガイド15に案内されて定着後搬送路r5を搬送される際の様子を定着上ガイド15に設けられた転写紙幅方向の中央部で隣接するガイドリブ15b間(図3のB部参照)に着目し、本発明構成(a)と従来技術構成(b)、(c)とを比較して模式的に示す図2の矢視A−A線断面図である。
【0025】
転写紙3が定着装置14により熱定着されるとき、含有している水分が水蒸気になって、定着上ガイド15の定着後搬送路r5に臨む面を結露させるが、本発明構成によると、図4(a)に示すように、水蒸気がスリット15cを通過して定着上ガイド15の中空部に進入できるため、水滴Wがガイドリブ15bの突出面よりも高い位置にある中空部の天井面に生じる。従って、転写紙3が幅方向の中央部で山形に撓んだとしてもガイドリブ15bの突出面より上方に転写紙3の頂部が到達することがないため、転写紙3が濡れる心配がない。このとき、ガイドリブ15bの先端は加熱定着後の高温の転写紙3に触れ、加熱されるが、本発明構成ではガイドリブ15bの高さが10mm以下(好ましくは1mm程度)に設定されているため、ガイドリブ15bが全体的に高い温度になり、リブ壁に水滴が付着することがなく、リブ壁を伝って水滴が垂れて転写紙3を濡らす心配もない。
【0026】
これに対して、図4(b)のように定着上ガイド15の中空部への水蒸気進入口のない従来技術の構成では、ガイドリブ15bの突出面に水滴Wが付着してしまうため、転写紙3が幅方向の中央部で山形に撓むと、ガイドリブ15bの突出面に転写紙3の頂部が接触し転写紙3が濡れてしまう。また、図4(c)のようにガイドリブ15bの高さを10mmよりも大きく設定する従来技術の構成では、ガイドリブ15bの突出面に転写紙3が接触することはないものの、ガイドリブ15bの先端部と根元部で温度差(根元部が低い)が生じ、根元に近いリブ壁に水滴Wが付着してしまうため、リブ壁を伝って水滴Wが垂れて転写紙3を濡らすおそれがある。
【0027】
なお、詳しい説明は省略するが、上記本発明構成の定着上ガイド15による効果は、本発明構成の分岐ガイド18にも当てはまり、転写紙3が定着装置14により熱定着されるときに生じる水蒸気をスリット18cから分岐ガイド18の中空部に進入させ、水滴Wとして中空部に回収することにより、分岐ガイド18のガイドリブ18cに案内されてフェースダウン排出路r6を搬送される転写紙3を濡らさないようにすることが可能となる。(図2参照)。
【0028】
このように本発明構成によると、定着後搬送路r5に配置される可動式の定着上ガイド15及び分岐ガイド18を中空の袋形状とし、その搬送路に臨む面側に複数の水蒸気進入口(スリット15c及び18c)を形成したことにより、搬送路面の結露が低減でき、結露による水滴が転写紙3に付着するのを防止できる。また、水蒸気の影響を中空部内にとどまらせ、他部品への影響をなくし、本体機械外部への水蒸気の排出を低減させることができる。定着上ガイド15及び分岐ガイド18の搬送路に臨む面に高さ10mm以下の複数のガイドリブ15b及び18bを凸設したことにより、結露による異常画像防止、転写紙のジャムの防止に対応できる。
【0029】
本発明は、上記の実施形態に限られず、種々の変更を加えて実施することができる。例えば、図5に示すように、定着上ガイド15の中空部の天井面に、シート状の水分吸収部材17を貼付することにより、スリット15cを通って水滴Wが定着後搬送路r5に落下するのを防止するようにしてもよい。また、図6に示すように、定着上ガイド15の中空部の天井面に勾配をつけ、スリット15cの前方に堰15dを形成して中空部に天井面を伝って流れる水滴Wを受ける水溜まり部を作ることにより、スリット15cを通って水滴Wが定着後搬送路r5に落下するのを防止するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】は、本発明の実施の形態に係るプロセスユニットを備えた画像形成装置(本実施の形態では、電子写真方式のレーザビームプリンタ)を示す概略構成図である。
【図2】は、図1における定着後搬送路周辺の構成を拡大して示す断面図である。
【図3】は、本発明構成の定着上ガイドの図2の矢視A−A線断面図である。
【図4】は、トナー像を定着後の転写紙が定着上ガイドに案内されて定着後搬送路を搬送される際の様子を転写紙幅方向の中央部で隣接するガイドリブ間(図3のB部参照)に着目し、本発明構成(a)と従来技術構成(b)、(c)とを比較して模式的に示す図2の矢視A−A線断面図である。
【図5】は、本発明構成の定着上ガイドの変形例であり、定着上ガイドの中空部の天井面に、水分吸収部材を設けた実施形態を示す断面図である。
【図6】は、本発明構成の定着上ガイドの他の変形例であり、定着上ガイドの中空部の天井面に勾配をつけ、中空部に天井面を伝って流れる水滴を受ける水溜まり部を設けた実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 画像形成装置
2 感光体ドラム
3 転写紙
4 帯電器
4a 帯電ローラ
5 露光装置
6 現像装置
6a 現像ローラ
7 給送カセット
8 ピックアップローラ
9 給送ローラ対
10 反転ローラセット
11 レジストローラ対
12 転写ローラ
13 搬送ガイド
14 定着装置
14a ヒータ
14b 加熱ローラ
14c 加圧ローラ
15 定着上ガイド(可動式の搬送ガイド)
15a 回動支点
15b ガイドリブ
15c スリット(水蒸気進入口)
15d 堰
16 分離爪
17 水分吸収部材
18 分岐ガイド(可動式の搬送ガイド)
18a 揺動支点
18b ガイドリブ
18c スリット(水蒸気進入口)
18d ガイドリブ
19,20 搬送ローラ対
21 排出ローラ対
22 フェースダウン排出トレイ
23 画像形成装置本体
24 排出ローラ対
25 フェースアップ排出トレイ
26 クリーニング器
r1 給送路
r2 レジスト前搬送路
r3 転写前搬送路
r4 定着前搬送路
r5 定着後搬送路
r6 フェースダウン排出路
r7 フェースアップ排出路
W 水滴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写紙上のトナー像を熱により定着する定着装置と、該定着装置下流側の搬送路に配置される可動式の搬送ガイドとを備えた画像形成装置において、前記搬送ガイドを中空の袋形状とし、その搬送路に臨む面側に複数の水蒸気進入口を形成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記搬送ガイドの搬送路に臨む面に、高さ10mm以下の複数のガイドリブを凸設したことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記搬送ガイドの中空部の天井面に、水分吸収部材を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記搬送ガイドの中空部の天井面に勾配をつけ、中空部に天井面を伝って流れる水滴を受ける水溜まり部を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−240966(P2007−240966A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−64468(P2006−64468)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】