説明

画像形成装置

【課題】電源投入直後にすぐに印刷したい場合でも初期動作を行なうためにトータル的な印刷速度が遅くなる。
【解決手段】キャリッジ初期動作では、キャリッジ速度を低速に設定してキャリッジ23を往路方向に移動させた後、カバー開閉検出回路313からの検出信号に基づいて装置本体のカバー15の開閉状態を判別し、カバー15が閉状態であれば、キャリッジ速度を高速に設定し、また、カバー15が開状態であれば、キャリッジ速度を低速に設定した後、キャリッジ23を復路方向に設定した速度で移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、記録液の液滴を吐出する記録ヘッドをキャリッジに搭載した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインクジェット記録装置が知られている。インクジェット記録装置は、液体吐出ヘッドを記録ヘッドに用いて、記録紙等の被記録媒体(以下「用紙」と称するが、材質を紙に限定するものではなく、記録媒体、転写紙、転写材、被記録材などとも称される。)に記録液としてのインク滴を吐出して記録(画像形成、印写、印字、印刷なども同義語で使用する。)を行うものである。
【0003】
このようなインクジェット記録装置において、記録ヘッドをキャリッジに搭載し、キャリッジを主走査方向に移動しながら、用紙を副走査方向に間歇的に送って画像を形成するシリアル型のものがある。
【0004】
このようなシリアル型画像形成装置において、特許文献1には、記録ヘッドの回復動作の際に、カバーの開閉状態に関連して記録ヘッドの移動速度を最適に制御することにより、使用者の安全性、利便性、および画像信頼性を確保ため、記録ヘッドが回復処理のために移動する際にカバーの開閉状態を監視し、カバーの開状態が検知されたときは、記録ヘッドの移動速度を低下させて、使用者が記録ヘッドなどに接触した場合の安全性を確保すし、更にカバーの開状態が検知されたときに、記録ヘッドを減速させると共に、記録ヘッドの回復手段の作動条件を変更するようにすることが記載されている。
【特許文献1】特開2002−067291号公報
【0005】
また、特許文献2には、プリンタヘッドの性能を維持する空吐出を効率的に行うために、空吐出させる維持動作を行うに際して、維持動作タイミングを挟んだ所定範囲(例えば、前後3走査)の印字データの印字データ位置を判定して、印字動作中の印字データ位置から維持動作位置に最も近い印字データの走査の後に維持動作を行うようにすることが記載されている。
【特許文献2】特開2003−94680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、画像形成装置においては、電源を入れた直後は、画像及び機器品質の確保を行うための初期動作が行われる。この初期動作には、上述した特許文献1に記載されているような記録ヘッドの維持回復動作に異常がないかどうかの確認動作、キャリッジの可動範囲に異常がないかどうかの動作確認などが含まれる。
【0007】
しかしながら、利用者にとっては、電源投入直後にすぐに印刷したい場合でも初期動作が行われるために、この初期動作時間が完了するまで印刷動作が開始されないことになり、印刷速度が遅いと感じるとともに、トータル的に見ても印刷時間が長くなるという課題を生じている。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、可及的に初期動作時間の短縮を図ることがで電源投入後の立ち上がりを迅速に行うことができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、キャリッジ初期動作を行うときに往路と復路で異なる速度でキャリッジを移動させる構成とした。
【0010】
ここで、装置本体の開閉可能なカバーの状態の検知結果に基づいてキャリッジの復路速度を決定することが好ましい。この場合、カバーの状態が閉であるときにはキャリッジの復路速度が往路速度に対して速いことが好ましく、また、カバーの状態が開であるときにはキャリッジの復路速度が往路速度に対して同等以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る画像形成装置によれば、キャリッジ初期動作を行うときに往路と復路で異なる速度でキャリッジを移動させる構成としたので、初期動作に要する時間を可及的に短縮して立ち上がりを迅速にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は本発明に係る画像形成装置の一例を示す同画像形成装置を前方側から見た斜視説明図である。
この画像形成装置は、装置本体1と、装置本体1に装着された用紙を装填するための給紙トレイ2と、装置本体1に着脱自在に装着されて画像が記録(形成)された用紙をストックするための排紙トレイ3とを備えている。さらに、装置本体1の前面の一端部側(給排紙トレイ部の側方)には、前面から装置本体1の前方側に突き出し、上面よりも低くなったインクカートリッジを装填するためのカートリッジ装填部4を有し、このカートリッジ装填部4の上面は操作ボタンや表示器などを設ける操作/表示部5としている。
【0013】
このカートリッジ装填部4には、色の異なる記録液(インク)、例えば黒(K)インク、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インクをそれぞれ収容した複数の記録液カートリッジであるインクカートリッジ10k、10c、10m、10y(色を区別しないときは「インクカートリッジ10」という。)を、装置本体1の前面側から後方側に向って挿入して装填可能とし、このカートリッジ装填部4の前面側には、インクカートリッジ10を着脱するときに開く前カバー(カートリッジカバー)6を開閉可能に設けている。
【0014】
また、操作/表示部5には、各色のインクカートリッジ10k、10c、10m、10yの装着位置(配置位置)に対応する配置位置で、各色のインクカートリッジ10k、10c、10m、10yの残量がニアーエンド及びエンドになったことを表示するための各色の残量表示部11k、11c、11m、11yを配置している。さらに、この操作/表示部5には、電源ボタン12、用紙送り/印刷再開ボタン13、キャンセルボタン14も配置している。
【0015】
そして、装置本体1の上面には本体カバー15を矢示方向に開閉可能に装着している。
【0016】
次に、この画像形成装置の機構部について図2及び図3を参照して説明する。なお、図2は同機構部の全体構成を説明する概略構成図、図3は同機構部の要部平面説明図である。
図示しない左右の側板間に横架したガイド部材であるガイドロッド21とステー22とでキャリッジ23を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ24によって駆動プーリ25と従動プーリ26間に架け渡したタイミングベルト27を介して図3で矢示方向(キャリッジ走査方向:主走査方向)に移動走査する。
【0017】
このキャリッジ23には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する液滴吐出ヘッドからなる記録ヘッド31k、31c、31m、31y(区別しないときは「記録ヘッド31」という。)を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0018】
記録ヘッド31を構成するインクジェットヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものなどを使用できる。
【0019】
また、キャリッジ23には、記録ヘッド31に各色のインクを供給するための各色のサブタンク32を搭載している。この各色のサブタンク32には各色のインク供給チューブを介して、カートリッジ装填部4に装着された各色のインクカートリッジ10から各色のインクが補充供給される。
【0020】
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給送手段である給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0021】
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド31の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド31に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0022】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。この搬送ベルト51は、例えば、抵抗制御を行っていない純粋な厚さ40μm程度の樹脂材、例えばETFEピュア材で形成した用紙吸着面となる表層と、この表層と同材質でカーボンによる抵抗制御を行った裏層(中抵抗層、アース層)とを有している。
【0023】
そして、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置され、加圧力として軸の両端に所定の押圧力をかけている。なお、搬送ローラ52はアースローラの役目も担っており、搬送ベルト51の中抵抗層(裏層)と接触配置され接地している。
【0024】
また、搬送ベルト51の裏側には、記録ヘッド31による印写領域に対応してガイド部材57を配置している。このガイド部材57は、上面が搬送ベルト51を支持する2つのローラ(搬送ローラ52とテンションローラ53)の接線よりも記録ヘッド35側に突出させることで搬送ベルト51の高精度な平面性を維持するようにしている。
【0025】
この搬送ベルト51は、副走査モータ58によって駆動ベルト59及びプーリ60を介して搬送ローラ52が回転駆動されることによって図3のベルト搬送方向(副走査方向)に周回移動する。
【0026】
さらに、記録ヘッド31で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロ63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
【0027】
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0028】
さらに、図3に示すように、キャリッジ23の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド31のノズルの状態を維持し、回復するための回復手段を含む維持回復機構81を配置している。
【0029】
この維持回復機構81には、記録ヘッド31の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a〜82d(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84などを備えている。ここでは、キャップ82aを吸引及び保湿用キャップとし、他のキャップ82b〜82dは保湿用キャップとしている。
【0030】
また、キャリッジ23の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド31のノズル列方向に沿った開口89a〜89dを設けている。
【0031】
このように構成したインクジェット記録装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0032】
このとき、図示しない制御部によってACバイアス供給部から帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
【0033】
そこで、キャリッジ23を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド31を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0034】
また、印字(記録)待機中にはキャリッジ23は維持回復機構81側に移動されて、キャップ82で記録ヘッド31がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、キャップ82で記録ヘッド31をキャッピングした状態で図示しない吸引ポンプによってノズルから記録液を吸引し(「ノズル吸引」又は「ヘッド吸引」という。)し、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行う。また、記録開始前、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出動作を行う。これによって、記録ヘッド31の安定した吐出性能を維持する。
【0035】
ここで、維持回復機構81の一例について図4を参照して説明する。なお、図4は維持回復機構の模式的正面説明図である。
維持回復機構81のフレーム200には、前述した各記録ヘッド31のノズル面31aをそれぞれキャッピングするキャップ82a、82bを保持するキャップホルダ201Aと、キャップ82c、82dを保持するキャップホルダ201Bと、ノズル面31aをワワイピング(払拭)して清浄化するワイピング部材であるワイパーブレード83と、空吐出受け84と、図示しないキャリッジロック部材とがそれぞれ昇降可能に保持されている。ここで、キャップ82はキャップホルダ201A、201Bとの間に設けた弾性部材202によって上方(キャッピング方向)に付勢され、記録ヘッド31のノズル面31に当接するとキャップ用弾性部材202が縮み、ノズル面31aにキャップ82を密着させるようにしている。
【0036】
また、キャップホルダ201A、201B(区別しないときには「キャップホルダ201」という。)の下方にはフレーム200にカム軸205を回転可能に配置し、このカム軸205は図示しない駆動モータによってギヤ206を介して回転される。そして、カム軸205にはキャップホルダ201A、201Bを昇降させるためのキャップカム211A、211B(区別しないときには「キャップカム211」という。)と、ワイパーブレード83を昇降させるためのワイパーカム212と、キャリッジロック部材87を昇降させる図示しないキャリッジロックカムなどをそれぞれ設けている。
【0037】
したがって、カム軸205を回転することによってキャップカム211が回転して、キャップホルダ201がキャップ82を伴って上昇してキャップ82によって記録ヘッド31のノズル面31aに当接してキャッピングし、またキャップホルダ201がキャップ82を伴って下降してキャップ82によって記録ヘッド31のノズル面31aから離間する接離動作を行うことができる。
【0038】
また、カム軸205を回転させるための図示しない駆動モータによって駆動されるチューブポンプなどの吸引ポンプ207を設け、吸引用キャップ82aにチューブ207を接続して、記録ヘッド31のノズル面31aをキャップ82aでキャッピングした状態で吸引ポンプ207を駆動することで、記録ヘッド31のノズルから記録液が強制吸引され(ノズル吸引)、キャップ82a内に排出された記録液の廃液は吸引ポンプ207からチューブ208を介して下方の図示しない廃液タンクに投下される。また、空吐出動作によって空吐出受け84に排出された記録液の廃液もそのまま下方の廃液タンクに投下される。
【0039】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図5を参照して説明する。なお、同図は同制御部の全体ブロック説明図である。
この制御部は、この画像形成装置全体の制御を司る、本発明に係る初期動作に関する制御をする手段などを兼ねたマイクロコンピュータで構成した主制御部301及び印刷制御を司るマイクロコンピュータで構成した印刷制御部302とを備えている。
【0040】
そして、主制御部301は、通信回路300から入力される印刷処理の情報に基づいて用紙42に画像を形成するために、前述したように、主走査モータ24や副走査モータ58を主走査モータ駆動回路303及び副走査モータ304を介して駆動制御するとともに、印刷制御部302に対して印刷用データを送出するなどの制御を行う。
【0041】
また、主制御部301には、キャリッジ23の位置を検出するキャリッジ位置検出回路305からの検出信号が入力され、主制御部301はこの検出信号に基づいてキャリッジ23の移動位置及び移動速度を制御する。キャリッジ位置検出回路305は、例えばキャリッジ23の走査方向に配置されたエンコーダシートのスリット数を、キャリッジ23に搭載されたフォトセンサで読み取って計数することで、キャリッジ23の位置を検出する。主走査モータ駆動回路303は、主制御部301から入力されるキャリッジ移動量に応じて主走査モータ24を回転駆動させて、キャリッジ23を所定の位置に所定の速度で移動させる。
【0042】
また、主制御部301には搬送ベルト51の移動量を検出する搬送量検出回路306からの検出信号が入力され、主制御部301はこの検出信号に基づいて搬送ベルト51の移動量及び移動速度を制御する。搬送量検出回路306は、例えば搬送ローラ52の回転軸に取り付けられた回転エンコーダシートのスリット数を、フォトセンサで読み取って計数することで搬送量を検出する。副走査モータ駆動回路304は、主制御部301から入力される搬送量に応じて副走査モータ58を回転駆動させて、搬送ローラ52を回転駆動して搬送ベルト51を所定の位置に所定の速度で移動させる。
【0043】
主制御部301は、給紙コロ駆動回路307に給紙コロ駆動指令を与えることによって給紙コロ43を一回転させる。主制御部301は、維持回復機構駆動用モータ駆動回路308を介して維持回復機構81の図示しない前述したモータを回転駆動することにより、キャップ82の昇降、ワイパーブレード83の昇降、吸引ポンプ207の駆動などを行わせる。
【0044】
主制御部301は、インク供給モータ駆動回路311を介して供給ユニットのポンプを駆動するためのインク供給モータを駆動制御し、カートリッジ装填部4に装填されたインクカートリッジ10からサブタンク42に対してインクを補充供給する。このとき、主制御部301には、サブタンク42が満タン状態にあることを検知するサブタンク満タンセンサ312からの検知信号に基づいて補充供給を制御する。
【0045】
また、主制御部301は、カートリッジ通信回路314を通じて、カートリッジ装填部4に装着された各インクカートリッジ10に設けられる記憶手段である不揮発性メモリ115k、115c、115m、115yに記憶されている情報を取り込んで、所要の処理を行って、本体記憶手段である不揮発性メモリ(例えばEEPROM)315に格納保持する。
【0046】
印刷制御部302は、主制御部301からの信号とキャリッジ位置検出回路305及び搬送量検出回路306などからのキャリッジ位置や搬送量に基づいて、記録ヘッド41の液滴を吐出させるための圧力発生手段を駆動するためのデータを生成して、ヘッド駆動回路310に与える。
【0047】
ヘッド駆動回路310は、印刷制御部302からの印刷データに基づいて記録ヘッド31の圧力発生手段(ピエゾ型ヘッドであれば圧電素子)を駆動して、所要のノズルから液滴を吐出させる。
【0048】
また、主制御部301には、装置本体1のカバー15の開閉を検出するカバー開閉検出回路313からの検出信号が入力され、次に説明するように、この検出信号に基づいて、初期動作におけるキャリッジ23の速度制御を行うようにしている。カバー開閉検出回路313は、カバー15に設けた凸部とこの凸部が入り込む透過型フォトセンサで構成したり、あるいは、カバー15を閉じたときに押されるプッシュ型スイッチなどで構成することができる。
【0049】
そこで、主制御部301が行う初期動作(イニシャル動作)に関する処理について図6を参照して説明する。
先ず、電源が投入されると、主制御部301は各ユニットのイニシャル動作を開始し、維持回復機構用モータ駆動回路308を介して維持回復機構81のカム軸205及び吸引ポンプ207を駆動するモータの初期動作を行い、維持回復系に異常が無いか否かを判別し、異常であれば以後の動作を不可とする処理を行う。
【0050】
維持回復系に異常がなければ、副走査モータ駆動回路304を介して副走査モータ58を駆動して搬送ベルト51を周回移動させながら搬送駆動系に異常が無いか否かを判別し、異常であれば以後の動作を不可とする処理を行う。
【0051】
搬送駆動系に異常がなければ、主走査モータ駆動回路303を介して主走査モータ24を駆動してキャリッジ23を往復(往路及び復路)移動させながらキャリッジ(主走査駆動系)に異常が無いか否かを判別し、異常であれば以後の動作を不可とする処理を行い、異常がなければ、このイニシャル動作処理を終了する。
【0052】
このようにして、維持回復機構用モータ初期動作、搬送駆動初期動作、キャリッジ駆動初期動作を実施して異常検出を行い、機器品質の動作確認を行う。
【0053】
ここで、本発明に係る画像形成装置のキャリッジ初期動作の一例について図7を参照して説明する。
先ず、キャリッジ初期動作を開始すると、キャリッジ速度を低速に設定し、キャリッジ23を往路方向に移動させる指示を行い、キャリッジ23の移動が終了したか否かを判別する。
【0054】
そして、キャリッジ23の往路方向への移動が終了したときには、カバー開閉検出回路313からの検出信号に基づいて装置本体のカバー15の開閉状態を判別する。このとき、カバー15が閉状態であれば、キャリッジ速度を高速に設定し、また、カバー15が開状態であれば、キャリッジ速度を低速に設定した後、キャリッジ23を設定した速度で復路方向に移動させる指示を行い、キャリッジ23の移動が終了したか否かを判別して、移動終了でこのキャリッジ初期動作処理を終了する。
【0055】
つまり、このキャリッジ初期動作処理では、キャリッジ23を往路方向に移動させ、往路移動が終了した後復路方向に移動させることで、キャリッジ可動範囲に異常がないか否かを確認する。このとき、初期動作時間の短縮及び利用者の安全性を考慮して、キャリッジ速度を往路と復路で異なる速度とする。
【0056】
このように、往路と復路で異なるキャリッジ速度で移動させることで、例えば、キャリッジに触れることが可能になる開閉可能な装置本体のカバー15を備えている場合、カバー15が開かれているときには利用者の安全性を考慮してキャリッジ23をゆっくり移動させ、カバー15が閉じされているときには利用者の安全性が確保されているので速く移動させることができる。これにより、利用者の安全性を確保しつつ、初期動作時間を可及的に短縮することができ、装置の立ち上がり(印刷可能な状態になる)を迅速に行うことができる。
【0057】
具体的には、カバー開閉状態の判定でカバーが閉じているときには、利用者の安全性が確保できているため初期動作時間の短縮を図る。つまり、往往路移動ではキャリッジ速度が速いと、異常があるときにキャリッジ23の破損が懸念されるため、例えば100mm/secの速度で移動させるが、復路では、キャリッジ23がホーム位置に戻るだけの動作であるため、例えば、1200mm/secの最速で移動させる。
【0058】
一方、カバー開閉状態の判定で、カバー開の場合には、利用者の安全性を考慮する必要がある。したがって、往路では、上述したように、例えば100mm/secで移動させ、復路も同様に100mm/secで移動させる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一例を示す前方側から見た斜視説明図である。
【図2】同画像形成装置の機構部の概略を示す構成図である。
【図3】同機構部の要部平面説明図である。
【図4】同画像形成装置の維持回復機構の模式的正面説明図である。
【図5】同画像形成装置の制御部の概要を示すブロック説明図である。
【図6】主制御部によるイニシャル動作処理の説明に供するフロー図である。
【図7】同イニシャル動作処理のうちのキャリッジ初期動作処理の一例の説明に供するフロー図である。
【符号の説明】
【0060】
10…インクカートリッジ
15…カバー
23…キャリッジ
24…主走査モータ
31…記録ヘッド
58…副走査モータ
81…維持回復機構
313…カバー開閉検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録液の液滴を吐出する記録ヘッドを搭載したキャリッジを主走査方向に移動させながら、被記録媒体を副走査方向に間歇的に搬送して、前記被記録媒体に画像を形成する画像形成装置において、キャリッジ初期動作を行うときに往路と復路で異なる速度で前記キャリッジを移動させることを特徴とした画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、装置本体の開閉可能なカバーの状態の検知結果に基づいて前記キャリッジの復路速度を決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像形成装置において、前記カバーの状態が閉であるときには前記キャリッジの復路速度が往路速度に対して速いことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の画像形成装置において、前記カバーの状態が開であるときには前記キャリッジの復路速度が往路速度に対して同等以下であることを特徴とした画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−98914(P2007−98914A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−295334(P2005−295334)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】