説明

画像形成装置

【課題】像担持体カバーを設ける上で、装置内における各機構の配置計画上の制約を少なくでき、装置のコンパクト化を図り易くする。
【解決手段】開閉カバー6の裏側の紙搬送路に面して像担持体ドラム3が設けてあり、開閉カバー6の開に伴って、像担持体ドラム3への保護状態となる一方、開閉カバー6の閉に伴って、退避状態となる像担持体カバー7が設けてあり、像担持体カバー7をスライド移動させるカバー移動機構8が設けてあり、像担持体カバー7は可撓性シート材であり、像担持体カバー7におけるスライド移動方向前方縁部7aと後方縁部7bとのほぼ全長にわたる状態にフレーム9が取り付けてあり、像担持体カバー7のスライド移動方向に沿った張力を付加する張力付加機構Tが設けてあり、張力付加機構Tは、前方フレーム9aと後方フレーム9bとを介して像担持体カバー7に張力を付加するように構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置本体の内部に通じる開閉カバーの裏側に、転写紙を搬送する搬送路が設けてあると共に、その搬送路に面した奥側に像担持体が設けてあり、前記開閉カバーの開操作に伴って、前記像担持体の前記搬送路側に移動して前記像担持体を保護する保護状態となる一方、前記開閉カバーの閉操作に伴って、前記像担持体の前記搬送路側から退避する退避状態となる像担持体カバーが設けてあり、前記開閉カバーの開閉動作に対応して前記像担持体カバーを前記保護状態と前記退避状態とに像担持体カバー表面に沿ってスライド移動させるカバー移動機構が設けられている画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の画像形成装置においては、転写紙が搬送路中で詰まった場合(ジャム発生)に対処したり、他のメンテナンスを行えるように、装置本体の内部に通じる開閉カバーが設けられており、前記開閉カバーを開けると、その開口を通して、搬送路や、それに面した各種パーツ等が、暴露された状態となる。
従って、例えば、ジャムに対処する場合には、開閉カバーを開けることで、その開口から装置内に手を入れて詰まった転写紙を簡単に取り除く事ができる。
しかしながら、そのような作業の際に、像担持体の表面に手や紙や他物が触れると、像担持体表面の乱れや損傷によって画像形成不良の原因になりかねないので、それを防止するために、前記開閉カバーの開状態においては、像担持体カバーが前記保護状態となるように設けられている。そして、開閉カバーの閉状態においては、像担持体カバーが転写紙の搬送を妨げないように前記退避状態となるように構成されている。
従来の画像形成装置においては、図10に示すように、矩形形状のフレーム20にシート材21を張設した矩形形状の像担持体カバーの一例としてのドラムカバー22を、像担持体の一例としての感光体ドラム3の上方に、感光体ドラムの軸芯Xに平行な回転軸芯X1周りに揺動自在な状態に設置しておき、開閉カバーの開閉にリンクさせて図中の(あ)と(い)との間にわたってドラムカバー22が揺動する事によって前記保護状態と退避状態とに切り替わるように構成されたものがあった(例えば、特許文献1参照)。
また、別の画像形成装置としては、図11に示すように、開閉カバーに一端部を接続し、他端部を巻取付勢力を作用させた状態で繰り出し自在な巻き取りローラ23に接続したストラップ24を、像担持体の一例としての感光体ドラム3の両端部側に各別に設け、両ストラップ24の内の感光体ドラム3への対応部に、両ストラップ24にわたる状態に可撓性を備えたシート材25を設けて像担持体カバーの一例としてのドラムカバー26を構成し、開閉カバーの開閉にリンクさせて図中の(う)と(え)との間にわたってドラムカバー26がスライド移動する事によって前記保護状態と退避状態とに切り替わるように構成されたものがあった(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−236080号公報(図3)
【特許文献2】特開2005−91482号公報(図5〜6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の画像形成装置の内、前者のものによれば、像担持体カバーそのものが、像担持体の上方側の定位置に設けられていると共に、像担持体カバーの前記保護状態と退避状態との切り替え時には、像担持体カバーが前記回転軸芯周りに揺動移動する必要があり、その揺動移動する広い範囲には他の者を配置することができないから、空間として確保しておかなければならず、画像形成装置内での各機構の配置計画上の制約がある。そして、余分なスペースを装置内に確保する必要があることから、その分、画像形成装置が大型化すると言った問題点がある。
また、上述した従来の画像形成装置の内、後者のものによれば、ストラップも像担持体カバーも可撓性を有しているから、屈曲経路に沿ってでもスライド移動でき、画像形成装置内の僅かな隙間であってもその部分に像担持体カバーの移動経路を設定することができ、前記前者の画像形成装置における問題点は解消できるようになったものの、例えば、ジャムに対処する際に手等が前記保護状態にある像担持体カバーに当たった場合、像担持体カバーそのものが撓み易く、保護機能が低くなり易い問題点があり、これを防止するためには、予め、像担持体の表面から、相当量の離隔距離を開けて像担持体カバーを位置させておく必要があり、何れにしても、像担持体カバーの移動経路を設定する上での制約が多く、画像形成装置のコンパクト化を図り難い問題点がある。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、像担持体カバーを設ける上で、装置内における各機構の配置計画上の制約を少なくでき、装置のコンパクト化を図り易い画像形成装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、装置本体の内部に通じる開閉カバーの裏側に、転写紙を搬送する搬送路が設けてあると共に、その搬送路に面した奥側に像担持体が設けてあり、前記開閉カバーの開操作に伴って、前記像担持体の前記搬送路側に移動して前記像担持体を保護する保護状態となる一方、前記開閉カバーの閉操作に伴って、前記像担持体の前記搬送路側から退避する退避状態となる像担持体カバーが設けてあり、前記開閉カバーの開閉動作に対応して前記像担持体カバーを前記保護状態と前記退避状態とに像担持体カバー表面に沿ってスライド移動させるカバー移動機構が設けられている画像形成装置において、前記像担持体カバーは可撓性を有するシート材で形成してあると共に、前記像担持体カバーにおける前記両状態間のスライド移動方向の前方縁部と後方縁部とのほぼ全長にわたる状態にフレームがそれぞれ取り付けてあり、前記像担持体カバーのスライド移動中に移動方向に沿った張力を前記像担持体カバーに付加する張力付加機構が設けてあり、前記張力付加機構は、前記前方縁部に取り付けられた前方フレームと、前記後方縁部に取り付けられた後方フレームとを介して前記像担持体カバーに張力を付加するように構成してあるところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、前記像担持体カバーは可撓性を有するシート材で形成してあるから、カバー移動機構による像担持体カバースライド経路を屈曲経路に設定してあっても、その経路に沿って像担持体カバーをスライド移動することができ、例えば、画像形成装置内の僅かな隙間であってもその部分に像担持体カバーの移動経路を設定することが可能となり、画像形成装置内における各機構の配置計画上の制約を少なくでき、装置のコンパクト化が図り易くなる。
また、像担持体カバーにおける前記両状態間のスライド移動方向の前方縁部と後方縁部とのほぼ全長にわたる状態にフレームがそれぞれ取り付けてあり、前記像担持体カバーのスライド移動中に移動方向に沿った張力を前記像担持体カバーに付加する張力付加機構が設けてあり、前記張力付加機構は、前記前方縁部に取り付けられた前方フレームと、前記後方縁部に取り付けられた後方フレームとを介して前記像担持体カバーに張力を付加するように構成してあるから、前記張力付加機構によって付加されるスライド移動方向に沿った張力を、前記可撓性のシート材で形成された像担持体カバーの全幅にわたって分散して作用させることができ、像担持体カバーをシワのよらない状態に張ったまま移動させることができる。従って、より小さな隙間にも像担持体カバーを引っ掛けることなく移動させたり収納する事が可能となる。
更には、像担持体カバーに張力を作用させた状態を維持できるから、仮に、ジャムに対処する際に手等が前記保護状態にある像担持体カバーに当たった場合でも、像担持体カバーそのものが撓み難く、良好な状態で保護機能を発揮することができる。
その結果、像担持体カバーとしての保護機能を良好に発揮できながら、画像形成装置内での像担持体カバー配置計画の自由性を向上できるようになり、画像形成装置の総合的なコンパクト化を叶えることが可能となる。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、前記カバー移動機構には、前記フレームの端部を嵌合させてスライド移動方向に誘導させるスライドガイド部が備えられているところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、本発明の第1の特徴構成による上述の作用効果を叶えることができるのに加えて、前記スライドガイド部によって設定されたスライド移動方向に沿ってフレーム及び像担持体カバーを移動させることができるようになる。従って、画像形成装置内の極めて僅かな隙間や空間であっても、その部分に、各機構と干渉しない状態に前記像担持体カバーを通過させたり収納する経路を設定できるようになり、装置全体のコンパクト化を図ることができる。
また、像担持体に他物が触れ難いように、前記像担持体カバーの移動経路を自由に且つ正確に設定(例えば、縦配置や横配置や傾斜配置や曲線配置等)できるから、より像担持体に対する防護効果や遮光効果を向上させることが可能となる。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、前記張力付加機構は、一端部を前記開閉カバーに取り付けると共に他端部を前記前方フレームに取り付けたアーム部材と、一端部を前記後方フレームに取り付けると共に他端部を前記装置本体の固定側に取り付けた弾性部材付き帯状体とを備えて構成されているところにある。
【0011】
本発明の第3の特徴構成によれば、本発明の第1又は2の特徴構成による上述の作用効果を叶えることができるのに加えて、極めて簡単な機構によって、前記第1の特徴構成による各作用効果を実現する事が可能となり、機能向上に伴うコストアップをできるだけ少なくすることが可能となる。
また、例えば、開閉カバーの開方向への動きを終端部で規制するエンドストッパーを前記フレーム側に設けるような場合、そのエンドストッパーによって開閉カバーの終端位置を規制することができるが、その場合でも、例えば、開閉カバーの開操作中に手が離れて、自重によって勢いよく開閉カバーが開くような事態が発生する事があり、その急激な開方向への移動を終端位置で停止させる際には大きな衝撃力が発生することになる。
しかし、本発明の特徴構成によれば、一端部を開閉カバーに取り付けてあるアーム部材の他端部を、前記前方フレームに取り付けてあるから、例えば、前記エンドストッパーを、前方フレームに対して作用するように設けるだけで、前記衝撃力の大半は、開閉カバーからアーム部材を介して前方フレームまで伝達されることになる。しかし、その後続の像担持体カバーや後方フレームや弾性部材付き帯状体には殆ど伝わることが無く、負荷を軽減する事が可能となる。その結果、像担持体カバーが破れるのを未然に防止でき、像担持体の保護機能を維持することが可能となる。
【0012】
本発明の第4の特徴構成は、前記像担持体カバーは、ポリエチレン製であるところにある。
【0013】
本発明の第4の特徴構成によれば、本発明の第1〜3の何れか一項の特徴構成による上述の作用効果を叶えることができるのに加えて、ポリエチレンが備えた高い衝撃吸収性能をフルに発揮して、像担持体カバーによる像担持体の保護機能をより好適に叶えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、図面において従来例と同一の符号で表示した部分は、同一又は相当の部分を示している。
【0015】
図1は、本発明の画像形成装置の一実施形態を示すもので、当該画像形成装置1は、例えば、複写機やファクシミリやプリンタ等として構成されている。
前記画像形成装置1は、図に示してあるように、給紙カセット、給紙トレイ等の用紙収納手段に収納した転写紙Pをピックアップコロによって1枚ずつ取り出し、中間コロを経てレジストローラにまで搬送した後、レジストローラによって所定のタイミングで転写部2に給紙し、転写部2で像担持体の一例としての感光体ドラム3に作成されたトナー画像を転写紙Pに転写後、定着部4に搬送するように構成されており、これら一連の転写紙Pの搬送路5が、装置本体1A内で縦方向に設定された所謂「縦搬送形式」の装置として構成してある。
また、装置本体1Aにおいて、前記搬送路5に近いハウジングの片側壁部分には、内部に通じる開閉カバー6が設けてあり、例えば、ジャム処理や保守点検などの際に、この開閉カバー6を開いて簡単に実施できるように構成されている。
【0016】
また、前記開閉カバー6を開いた状態にすると、感光体ドラム3の一部が外部に露出した状態となるため、作業者の手や装身具、工具等が感光体ドラム3に当たって感光体ドラム3を傷つけてしまったり、感光体ドラム3に外光が直接照射することによって感光体ドラム3が劣化する危険性があるが、当該実施形態の画像形成装置1には、このような問題を未然に防止できるように、像担持体カバーの一例としてのドラムカバー7と、そのドラムカバー7をドラムカバー表面に沿ってスライド移動させるカバー移動機構8とが設けられている。
即ち、前記ドラムカバー7は、前記開閉カバー6の開操作に伴って、前記感光体ドラム3の前記搬送路5側に移動して前記感光体ドラム3を保護する保護状態となる一方(図5参照)、前記開閉カバー6の閉操作に伴って、前記感光体ドラム3の前記搬送路5側から退避する退避状態となるように構成されている(図3参照)。
そして、カバー移動機構8は、前記開閉カバー6の開閉動作に対応して前記ドラムカバー7を、前記保護状態と前記退避状態とにドラムカバー表面に沿ってスライド移動させるように構成されている。
【0017】
以下に、ドラムカバー7とカバー移動機構8とについて説明する。
前記ドラムカバー7は高分子量ポリエチレン製で、可撓性を有する矩形形状のシート材で形成してあり、幅寸法(感光体ドラムの長さ方向に沿う方向における寸法)が前記感光体ドラム3の長さとほぼ等しい(又は、少し長い)値に設定してあると共に、長さ寸法(感光体ドラムの径方向に沿う方向における寸法)が感光体ドラム3の外径の約2倍程度の値に設定してある。
そして、図2、図3に示すように、前記ドラムカバー7における前記退避状態から保護状態におけるスライド移動方向の前方縁部7aと後方縁部7bとには、ほぼ全幅にわたる状態にフレーム9がそれぞれ取り付けてある。又、ドラムカバー7における前方縁部7aと後方縁部7bとには、図6〜図8に示すように、フレーム9における第1壁部15の係止爪18が嵌入可能な係合孔17が、その幅方向に沿って複数設けられている。
【0018】
前記フレーム9は、ドラムカバー7の幅寸法と同程度の長さを有しており、基底部14、第1壁部15、及び第2壁部16を備えてある。第1壁部15と第2壁部16は、所定の間隔(T)を空けて互いに対向するように基底部14から立設しており、第1壁部15は、基底部14の長手方向に沿って複数箇所に設けられている。
また、第1壁部15においては、ドラムカバー7の端部に設けられる係合孔17に嵌入可能な係止爪18が設けられていると共に、第2壁部16においては、各第1壁部15の係止爪18の対向する位置に、少なくとも係止爪18の先端部が収容され得る収容凹部19がそれぞれ設けられている。
【0019】
前記ドラムカバー7にフレーム9を取付ける際は、図6に示すように、ドラムカバー7の各係合孔17と、フレーム9の各第1壁部15との位置合わせをし、ドラムカバー7の端部を、フレーム9の第1壁部15と第2壁部16との間に挿入する(ドラムカバー7の前方縁部7aと後方縁部7bをそれぞれ、フレーム9の前フレーム(前方フレームに相当)9a及び後フレーム(後方フレームに相当)9bにおける第1壁部15と第2壁部16との間に挿入する)。
このとき、ドラムカバー7の端部は、第1壁部15の係止爪18と第2壁部16の収容凹部19との間に挿入され、係止爪18のテーパー面を乗り越えると、ドラムカバー7の各係合孔17に、各第1壁部15の係止爪18がそれぞれ嵌入して係止され、取付けが完了する。
【0020】
図5に示すように、前方フレーム9aは、ドラムカバー7の前方縁部7aを保持する第1保持部91aと、該第1保持部91aの両側から前記スライド移動方向に突設された突設片92aと、各突設片92aの突設先端部から感光体ドラム3の軸方向外側に突設された第1係合部93aとを備えている。後方フレーム9bは、ドラムカバー7の後方縁部7bを保持する第2保持部91bと、該第2保持部91bの両側から感光体ドラム3の軸方向外側に突設された第2係合部92bとを備えている。
第1係合部93a及び第2係合部92bの突設先端部は、感光体ドラム3の両端側に位置する装置本体1A側の固定フレーム112、113に各別に形成されている縦スライドガイド溝10a、横スライドガイド溝10b(カバー移動機構)にそれぞれ係合され、案内支持されている。第1係合部93a及び第2係合部92bは、スライドガイド溝10の長手方向に沿ってスライド移動が自在である。
【0021】
このスライドガイド溝10には、スライド方向が縦方向のものと横方向のものとの二種類があり、感光体ドラム3の軸芯方向視において、感光体ドラム3の前方(搬送路側)で縦配置となった縦スライドガイド溝10aと、感光体ドラム3の上方で横配置となった横スライドガイド溝10bとを備えて構成されている。
感光体ドラム3の両端側の縦スライドガイド溝10aには、前記前方縁部7aに取り付けられた前フレーム9aの両端部がそれぞれ嵌合されている。
一方、横スライドガイド溝10bには、前記後方縁部7bに取り付けられた後フレーム9bの両端部がそれぞれ嵌合されている。
【0022】
また、先に説明した開閉カバー6は、図2に示すように、その下縁部を、装置本体1A
のハウジングに対して枢支連結されており、その枢支軸芯周りに揺動操作することで、開状態と閉状態とに切り替えることができる。そして、開閉カバー6の裏面部には、前記前フレーム9aにわたる左右一対のリンクアーム(アーム部材に相当)11の一端部がそれぞれ揺動自在な状態に取り付けてある。この一対のリンクアーム11によって開閉カバー6と前記前フレーム9aとの連動が可能となっており、開閉カバー6が閉状態においては、縦スライドガイド溝10aの上端部に前フレーム9aが位置すると共に、開状態においては、図4に示すように、縦スライドガイド溝10aの下端部に前フレーム9aが位置するように構成されている。
【0023】
一方、後フレーム9bの両端部には、左右一対のスプリング付き帯状体(弾性部材付き帯状体の一例)12の一端部がそれぞれ取り付けてあり、この帯状体12はポリエステル(PET)樹脂製フィルムから成り、その他端部は、前記装置本体1Aの固定側に取り付けられている(図3参照)。
従って、この帯状体12のスプリング機能によって、後フレーム9bを後方側(前フレーム9aとは反対方向側)に引き寄せており、その引っ張り力は、前端側が開閉カバー6に取り付けられているドラムカバー7に作用し、常に、ドラムカバー7を弛まない状態に保持することができる。
そして、開閉カバー6の開操作に伴って、ドラムカバー7が前方側にスライド移動する際には、前記帯状体12のスプリング部12aが伸びることで、ドラムカバー7のスライド移動を許容しながら張力を維持するように構成されている(図5参照)。開閉カバー6を終端部まで開操作した状態では、前記ドラムカバー7が感光体ドラム3の前面を覆う状態になり、この状態を前述の保護状態という。
また、開閉カバー6の閉操作に伴っては、後フレーム9bをスプリング部12aの縮まろうとする力で引き戻し、ドラムカバー7のスライド移動を許容しながら張力を維持するものである。このように、開閉カバー6を完全に閉まるまで閉操作した状態では、前記ドラムカバー7が感光体ドラム3の上方の隙間にスライド移動によって退避する状態になり、この状態を前述の退避状態という(図3参照)。
前記リンクアーム11と、帯状体12とで本発明に係わる張力付加機構Tが構成されている。
尚、前記退避状態のドラムカバー7の下面に沿う状態に、左右一対のシートガイド13が配置されており、前記開閉カバー6の開閉操作に伴ってスライド移動するドラムカバー7は、シートガイド13の前端部の曲面に沿った屈曲経路として案内され、装置内の僅かな隙間であってもスライド移動して保護・退避状態への切り替えが可能となる。
【0024】
本実施形態の画像形成装置によれば、ドラムカバーを、画像形成装置内の僅かな隙間であってもその部分にスライド移動自在に配置でき、画像形成装置内における各機構の配置計画上の制約を少なくでき、装置のコンパクト化が図り易くなる。
また、ドラムカバーが衝撃性の高い素材で構成されていることに加えて、張力を作用させた状態が維持されているから、仮に、ジャムに対処する際に手等が前記保護状態にあるドラムカバーに当たった場合でも、ドラムカバーそのものが撓み難く、良好な状態で保護機能を発揮することができる。
その結果、ドラムカバーとしての保護機能を良好に発揮できながら、画像形成装置内でのドラムカバー配置計画の自由性を向上できるようになり、画像形成装置の総合的なコンパクト化を叶えることが可能となる。
【0025】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0026】
〈1〉 前記画像形成装置1は、先の実施形態で説明した装置構成に限るものではなく、公知の他の装置構成を採用するものであってもよい。
また、画像形成装置1は、所謂「縦搬送形式」のものを例に挙げたが、それ以外の搬送形式のものであってもよく、要するに、ドラムカバーを使用するものであればよい。更に、搬送路として、主搬送路と副搬送路とを備えた両面印刷タイプの画像形成装置であってもよいことは勿論である
〈2〉 また、ドラムカバーは、先の実施形態で説明したポリエチレン製のものに限るものではなく、例えば、他の合成樹脂シート(例えば、ポリスチレンシート、ポリエステルシート、ポリプロピレンシート等)や、布や紙や金属シート(例えば、アルミニウムシート、ステンレスシート等)等であってもよく、それらを含めてドラムカバーと言う。また、ドラムカバーの厚さは0.2mm〜0.4mmであることが望ましい。
〈3〉 前記スライドガイド部10は、溝形状に限るものではなく、例えば、レール形状であってもよく、それらを総称してスライドガイド部という。また、スライドガイド部10に、そのものの誘導経路の形状や位置を変更できるガイド変更手段を備えてあれば、ドラムカバーのスライド経路を、適宜変更する事ができる。その結果、例えば、ジャム処理の際に取り除き難い位置に紙が詰まっているような場合でも、前記ガイド変更手段によってスライドガイド部10の位置を変更すれば、ドラムカバーの位置や姿勢を、詰まった紙を取り除き易い状態に変更でき、ジャム処理やメンテナンス作業をより効率的に実施することが可能となる。
【0027】
〈4〉像担持体が感光体ドラム3である構成を例示したが、像担持体が転写ベルトであってもよい。要するに、像を担持する部材であればよい。
【0028】
〈5〉像担持体カバーが、感光体ドラム3を傷つけることを防止するためのドラムカバー7である構成を例示したが、像担持体カバーが、転写ベルトを傷つけることを防止するための転写ベルトカバーであってもよい。
【0029】
〈6〉開閉カバー6は、その下縁部を、装置本体1Aのハウジングに対して枢支連結されており、その枢支軸芯周りに揺動操作することで、開状態と閉状態とに切り替えることができる。そして、開閉カバー6の裏面部には、前フレーム9aにわたる左右一対のリンクアーム(アーム部材に相当)11の一端部がそれぞれ揺動自在な状態に取り付けてある構成を例示したが、
図9に示すように、開閉カバー6は、その下縁部を、装置本体1Aのハウジングに対して枢支連結されており、その枢支軸芯周りに揺動操作することで、開状態と閉状態とに切り替えることができる。開閉カバー6を開いた状態で支持する帯体Vが、開閉カバー6の裏面部分と、装置本体1Aの固定部分とにわたって取り付けられている。一方、中間搬送装置Sも、開閉カバー6と同様に、その下縁部を、装置本体1Aのハウジングに対して枢支連結されており、揺動開閉カバー6の開閉操作に連動して、枢支軸芯周りに揺動し、開状態と閉状態とに切り替わる。そして、前記開閉カバー6は、上述のように帯体Vによって所定の開角度を維持できるように支持されているのに対して、中間搬送装置Sは、前フレーム9aにわたる左右一対のリンクアーム11によって所定の開角度を維持できるように支持されている。そして、中間搬送装置Sの開角度は、揺動開閉カバー6の開角度より小さくなるように、帯体Vとリンクアーム11の長さが設定されている構成としてもよい。
このような構成を採用することによって、開閉カバー6と中間搬送装置Sとを開いた状態で、一対の搬送路5の何れもが開放されることになり、紙詰まり除去やメンテナンスが、より簡単に迅速に実施することができるようになる。
【0030】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】画像形成装置の要部を示す感光体ドラム軸芯方向視断面図
【図2】ドラムカバーの作用を示す感光体ドラム軸芯方向視の説明図
【図3】ドラムカバーの作用を示す要部斜視図
【図4】ドラムカバーの作用を示す感光体ドラム軸芯方向視の説明図
【図5】ドラムカバーの作用を示す要部斜視図
【図6】ドラムカバーとフレームを示す斜視図
【図7】図6の矢視線X−Xにおけるフレームの断面図
【図8】フレームを第2壁部側からみたときの斜視図
【図9】別実施形態における開閉カバー及び中間搬送装置を示す図。
【図10】従来のドラムカバーを示す説明図
【図11】従来のドラムカバーを示す説明図
【符号の説明】
【0032】
1A 装置本体
3 像担持体としての感光体ドラム
5 搬送路
6 開閉カバー
7 像担持体カバーとしてのドラムカバー
7a 前方縁部
7b 後方縁部
8 カバー移動機構
9 フレーム
9a 前フレーム(前方フレームに相当)
9b 後フレーム(後方フレームに相当)
10 スライドガイド溝(スライドガイド部に相当)
11 リンクアーム(アーム部材に相当)
12 スプリング付き帯状体(弾性部材付き帯状体の一例)
P 転写紙
T 張力付加機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体の内部に通じる開閉カバーの裏側に、転写紙を搬送する搬送路が設けてあると共に、その搬送路に面した奥側に像担持体が設けてあり、前記開閉カバーの開操作に伴って、前記像担持体の前記搬送路側に移動して前記像担持体を保護する保護状態となる一方、前記開閉カバーの閉操作に伴って、前記像担持体の前記搬送路側から退避する退避状態となる像担持体カバーが設けてあり、前記開閉カバーの開閉動作に対応して前記像担持体カバーを前記保護状態と前記退避状態とに像担持体カバー表面に沿ってスライド移動させるカバー移動機構が設けられている画像形成装置であって、
前記像担持体カバーは可撓性を有するシート材で形成してあると共に、前記像担持体カバーにおける前記両状態間のスライド移動方向の前方縁部と後方縁部とのほぼ全長にわたる状態にフレームがそれぞれ取り付けてあり、前記像担持体カバーのスライド移動中に移動方向に沿った張力を前記像担持体カバーに付加する張力付加機構が設けてあり、前記張力付加機構は、前記前方縁部に取り付けられた前方フレームと、前記後方縁部に取り付けられた後方フレームとを介して前記像担持体カバーに張力を付加するように構成してある画像形成装置。
【請求項2】
前記カバー移動機構には、前記フレームの端部を嵌合させてスライド移動方向に誘導させるスライドガイド部が備えられている請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記張力付加機構は、一端部を前記開閉カバーに取り付けると共に他端部を前記前方フレームに取り付けたアーム部材と、一端部を前記後方フレームに取り付けると共に他端部を前記装置本体の固定側に取り付けた弾性部材付き帯状体とを備えて構成されている請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記像担持体カバーは、ポリエチレン製である請求項1〜3の何れか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−268902(P2008−268902A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54949(P2008−54949)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】