説明

画像形成装置

【課題】記録ヘッドがジャム用紙と接触したままキャリッジの退避動作を行うと記録ヘッドが損傷する。
【解決手段】キャリッジ10の移動状態を判断して、キャリッジ10の移動状態が正常でなければ(異常であることが検出されたときには)、エラー処理を開始し、ギャップ調整モータ106を駆動してキャリッジ10を用紙搬送面から離れる方向に移動させ、キャリッジ10を用紙22から離間させた後、主走査モータ6を逆転駆動して、ジャム発生直前のキャリッジ10の移動方向と反対方向にキャリッジ10を移動させ、キャリッジ10を主走査範囲の両端部いずれかの用紙搬送経路外に移動して退避させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に液滴を吐出する記録ヘッドを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体にインクを着弾させて画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用いる。また、「用紙」とは、材質を紙に限定するものではなく、上述したOHPシート、布なども含み、インク滴が付着されるものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含むものの総称として用いる。
【0004】
このような画像形成装置(以下、単に「インクジェット記録装置」ともいう。)において、シリアル型の場合、記録ヘッドを搭載したキャリッジを往復移動させながら記録ヘッドから液滴を吐出させて用紙上に画像を形成することから、液滴の飛翔中の曲がりなどを低減し、所要の液滴着弾位置に着弾させるために、記録ヘッドと用紙との間の距離(ギャップ)は通常1mm程度とされている。そのため、キャリッジと用紙とが干渉しあう用紙ジャムの発生が避けられない。
【0005】
ここで、用紙ジャムが発生した場合、キャリッジと用紙が干渉した状態でエラーを発生させ、ユーザーによるジャム用紙の取り除きを行わせるようにすると、キャリッジと用紙が強く干渉している場合には、ユーザーによるジャム処理の作業性が著しく悪く、また無理な用紙の取り除きによって記録ヘッドやキャリッジなどを損傷するおそれがある。
【0006】
そこで、特許文献1には用紙を一時的に逆転させジャム処理の作業性を向上させることが記載されている。
【特許文献1】特開2005−178268号公報
【0007】
また、特許文献2、3にはキャリッジと用紙の干渉による用紙ジャムが発生したときキャリッジを退避させることが記載されている。
【特許文献2】特開2006−021370号公報
【特許文献3】特開2006−225161号公報
【0008】
また、特許文献4ないし6には記録ヘッド近傍に用紙検知センサなどを取り付け、記録ヘッドの破損を防止することが記載されている。
【特許文献4】特開2002−036523号公報
【特許文献5】特開2005−324400号公報
【特許文献6】特開2007−144633号公報
【0009】
また、特許文献7には設定された所定時間内に被記録媒体が検出手段によって検出されない場合に、複数のインクジェット記録ヘッドを記録位置からキャッピング位置へ移動させるようにヘッド移動手段を制御する制御手段を有し、記録ヘッドを退避動作することが記載されている。
【特許文献7】特許第2915605号公報
【0010】
また、特許文献8にはキャリッジの移動状態、例えばキャリッジの加速、定速、減速、停止に基づいて移動状態のエラー検出を行うことが記載されている。
【特許文献8】特開2003−211769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の構成にあっては、用紙の取り除きによって記録ヘッドやキャリッジなどが損傷することを完全には防げない。また、キャリッジが用紙搬送経路上に留まるため、用紙が記録ヘッドのノズル列と接触し続ける可能性があり、用紙がノズル列と接触し続けていると、ノズル列からインクが漏れつづけることが懸念され、さらにノズル列からインクが漏れた場合は用紙搬送経路への影響が無視できない。またノズルが乾いてしまうという課題もある。
【0012】
また、特許文献2、3に記載の構成にあっては、記録ヘッドのノズルは非常に精密な構成になっており、キャリッジと用紙との干渉そのものでも損傷しやすく、また複数あるノズルの1箇所でも損傷した場合、画像劣化への影響が大きいという課題がある。
【0013】
また、特許文献4ないし6に記載の構成にあっては、用紙検知センサの設置場所や数の問題、さらにコストが上がり、また機構が複雑になるなどの問題がある。
【0014】
また、特許文献7の構成にあっては、ヘッドとジャム用紙が接触した状態のままキャリッジが移動されてヘッドが損傷するおそれがある。
【0015】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で記録ヘッドとジャム用紙の接触によるヘッドの損傷を確実に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出する記録ヘッドを搭載したキャリッジと、
前記キャリッジの用紙搬送面に対する高さを調整するキャリッジ高さ調整手段と、
前記キャリッジを往復移動させるキャリッジ移動手段と、
前記キャリッジ移動手段を制御するキャリッジ制御手段と、
前記キャリッジの移動状態を検出する移動状態検出手段と、
前記キャリッジ制御手段から前記キャリッジ移動手段に与える制御量と前記移動状態検出手段の検出結果とに基づいて前記キャリッジの移動状態が異常であることを検出するキャリッジ動作異常検出手段と、
前記キャリッジ動作異常検出手段が前記キャリッジの移動状態が異常であることを検出したときに、前記キャリッジ高さ調整手段を駆動して前記キャリッジを前記用紙搬送面から離れる方向に移動させた後、前記キャリッジを主走査方向における移動方向と逆方向に移動範囲の端部まで退避移動させる退避制御手段と
を備えている構成とした。
【0017】
本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出する記録ヘッドを搭載したキャリッジと、
前記キャリッジを往復移動させるキャリッジ移動手段と、
前記キャリッジ移動手段を制御するキャリッジ制御手段と、
前記キャリッジの移動状態を検出する移動状態検出手段と、
前記キャリッジ制御手段から前記キャリッジ移動手段に与える制御量と前記移動状態検出手段の検出結果とに基づいて前記キャリッジの移動状態が異常であることを検出するキャリッジ動作異常検出手段と、
前記キャリッジ動作異常検出手段が前記キャリッジの移動状態が異常であることを検出したときに、前記キャリッジを主走査方向における移動方向と逆方向に移動範囲の端部に向かって退避移動させるとともに、前記退避移動中に前記キャリッジ動作異常検出手段が前記キャリッジの移動状態が異常であることを検出したときには前記キャリッジの退避移動を停止する退避制御手段と
を備えている構成とした。
【0018】
ここで、前記キャリッジの周辺温度を検出する温度検出手段を有し、前記キャリッジ動作異常検出手段は前記温度検出手段の検出結果に基づいて前記キャリッジの移動状態が異常であることを検出する構成とできる。
【0019】
また、前記キャリッジには前記記録ヘッドにインクを供給するサブタンクが備えられ、前記キャリッジ動作異常検出手段は前記サブタンクのインク残量の検出結果に基づいて前記キャリッジの移動状態が異常であることを検出する構成とできる。
【0020】
また、前記キャリッジ動作異常検出手段が前記キャリッジの移動状態が異常であることを検出したときには、前記記録ヘッドで画像を形成する用紙の搬送を停止する構成とできる。
【0021】
また、前記キャリッジ動作異常検出手段が前記キャリッジの移動状態が異常であることを検出したときには、前記記録ヘッドで画像を形成する用紙の搬送方向を逆転させる構成とできる。
【0022】
また、前記キャリッジの退避移動が完了した後に前記用紙の搬送方向への搬送を再開する構成とできる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る画像形成装置によれば、キャリッジ動作異常検出手段が前記キャリッジの移動状態が異常であることを検出したときに、前記キャリッジ高さ調整手段を駆動して前記キャリッジを前記用紙搬送面から離れる方向に移動させた後、前記キャリッジを移動方向と逆方向に移動範囲の端部まで退避移動させるので、簡単な構成で記録ヘッドのジャム用紙との接触によるヘッドの損傷を確実に防止でき、また、用紙の搬送領域のインク汚れが防止され、しかも用紙の取り除きを容易することができる。
【0024】
本発明に係る画像形成装置によれば、前記キャリッジ動作異常検出手段が前記キャリッジの移動状態が異常であることを検出したときに、前記キャリッジを移動方向と逆方向に移動範囲の端部に向かって退避移動させるとともに、前記退避移動中に前記キャリッジ動作異常検出手段が前記キャリッジの移動状態が異常であることを検出したときには前記キャリッジの退避移動を停止するので、簡単な構成で記録ヘッドのジャム用紙との接触によるヘッドの損傷を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の全体構成を説明する側面説明図、図2は同装置の要部平面説明図である。
この画像形成装置はシリアル型画像形成装置であり、装置本体1の左右の側板2A、2Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド3、4でキャリッジ10を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ6によって駆動プーリ7及び従動プーリ8間に張装されたタイミングベルト9を介して図2で矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0026】
キャリッジ10には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド11a、11b(区別しないときは「記録ヘッド11」という。)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0027】
記録ヘッド11は、それぞれ2つのノズル列を有し、記録ヘッド11aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、記録ヘッド11bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。なお、記録ヘッド11の構成はこれに限るものではなく、1つのノズル板に3列或いは4列もしくはそれ以上の列数のノズル列を有する構成とすることもできる。
【0028】
また、キャリッジ10には、記録ヘッド11のノズル列に対応して各色のインクを供給するためのサブタンク12a、12b(区別しないときは「サブタンク12」という。)を搭載している。このサブタンク12には、カートリッジ装填部13に着脱自在に装着される各色の記録液カートリッジ14y、14m、14c、14kから、供給ポンプユニット155によって各色の供給チューブ16を介して、各色の記録液が補充供給される。
【0029】
一方、給紙トレイ20の用紙積載部(圧板)21上に積載した用紙22を給紙するための給紙部として、用紙積載部21から用紙22を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)23及び給紙コロ23に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド24を備え、この分離パッド24は給紙コロ23側に付勢されている。
【0030】
そして、この給紙部から給紙された用紙22を記録ヘッド11の下方側に送り込むために、用紙11を案内するガイド部材25と、カウンタローラ26と、搬送ガイド部材27と、加圧コロ28を有する押さえ部材29とを備えるとともに、給送された用紙22を静電吸着して記録ヘッド11に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト31を備えている。
【0031】
この搬送ベルト31は、無端状ベルトであり、搬送ローラ32とテンションローラ33との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト31の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ36を備えている。この帯電ローラ36は、搬送ベルト31の表層に接触し、搬送ベルト31の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト31は、副走査モータ41からタイミングベルト42及びタイミングローラ43を介して搬送ローラ32が回転駆動されることによって図2のベルト搬送方向(副走査方向)に周回移動する。
【0032】
さらに、記録ヘッド11で記録された用紙22を排紙するための排紙部として、搬送ベルト31から用紙22を分離するための分離爪51と、排紙ローラ52及び排紙コロである拍車53とを備え、排紙ローラ52の下方に排紙トレイ54を備えている。
【0033】
また、装置本体1の背面部には両面ユニット61が着脱自在に装着されている。この両面ユニット61は搬送ベルト31の逆方向回転で戻される用紙22を取り込んで反転させて再度カウンタローラ26と搬送ベルト31との間に給紙する。また、この両面ユニット61の上面は手差しトレイ62としている。
【0034】
そして、キャリッジ10の主走査方向に沿ってエンコーダシート(リニアスケール)71を配置し、キャリッジ10に背面側にエンコーダシート71を読み取るフォトセンサからなるエンコーダセンサ72を設けて、これらによってキャリッジ10の移動量、移動速度を検出するためのリニアエンコーダ73を構成している。また、搬送ローラ31の軸にホイールシート(エンコーダホイール)75を取り付け、このホイールシート75を読み取るフォトセンサからなるエンコーダセンサ76を設けて、これらにより搬送ベルト31の移動量、移動速度を検出するためのロータリエンコーダ77を構成している。
【0035】
さらに、キャリッジ10の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド11のノズルの状態を維持し、回復するための回復手段を含む維持回復機構81を配置している。この維持回復機構81には、記録ヘッド11の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a、82b(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84などを備えている。
【0036】
また、キャリッジ10の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける液体回収容器である回収ユニット(空吐出受け)88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド11のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
【0037】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ20から用紙22が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙22はガイド25で案内され、搬送ベルト31とカウンタローラ26との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド27で案内されて加圧コロ28で搬送ベルト31に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0038】
このとき、帯電ローラ36に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト31が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト31上に用紙32が給送されると、用紙22が搬送ベルト31に吸着され、搬送ベルト31の周回移動によって用紙22が副走査方向に搬送される。
【0039】
そこで、キャリッジ10を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド11を駆動することにより、停止している用紙22にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙22を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙22の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙22を排紙トレイ54に排紙する。
【0040】
次に、この画像形成装置におけるキャリッジ10の用紙搬送面に対する高さ位置を調整するキャリッジ高さ位置調整手段について図3及び図4を参照して説明する。なお、図3はキャリッジ高さ調整機構の説明図、図4は同じくキャリッジ高さ調整機構の異なる状態の説明図である。
【0041】
右側のメイン側板2Bにキャリッジ高さ調整機構101を備えている。このキャリッジ高さ調整機構101は、ガイドロッド(ガイド軸)3、ガイドロッド(軸体)4の端部3a、4aが偏心されて装着され、メイン側板2Bに取付けられた図示しない調整板に回転可能に保持した第1、第2の軸受部材である調整用軸受102A、102Bと、これらの調整用軸受102A、102Bを直接連結するリンク部材103と、ガイドロッド31側の調整用軸受102Aと同動するギア104と、ギヤ104に噛み合うギヤ105及びギヤ105を回転するモータ106とを備えている。
【0042】
リンク部材103は2つの調整用軸受102A、102B間に支軸111、112によって回転可能に軸支されている。したがって、一方の調整用軸受102Aを回動することによって他方の調整用軸受102Bも同じく回動させることができ、2つの調整用軸受102A、102Bを同時に同じ量だけ回転させて、ガイドロッド3、4の高さを調整することができる。
【0043】
このキャリッジ高さ調整機構101において、モータ106を駆動することによって、ギヤ105及びギヤ104を介して調整用軸受102Aが回動し、リンク部材103を介して他方の調整用軸受102Bも同期して回動することで、図4に示すように、調整用軸受102A、102Bに偏心させて取り付けたガイドロッド3、4の高さが変化し、キャリッジ10の高さが変化し、記録ヘッド11と用紙搬送面(搬送ベルト31表面)との間の距離(ギャップ)を調整することができる。
【0044】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図5のブロック説明図を参照して説明する。
この制御部500は、この装置全体の制御を司るCPU501と、CPU501が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM502と、画像データ等を一時格納するRAM503と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ504と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC505と、ホストI/F506と、I/O507とを備えている。
【0045】
また、記録ヘッド11を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動信号発生手段を含む印刷制御部508と、キャリッジ10側に設けた記録ヘッド11を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)509と、キャリッジ10を移動走査する主走査モータ6、搬送ベルト31を周回移動させる副走査モータ41、キャリッジ10の高さを調整するギャップ調整用モータ106を駆動するためのモータ駆動部510と、帯電ローラ36にACバイアスを供給するACバイアス供給部511などを備えている。
【0046】
また、この制御部500には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル514が接続されている。
【0047】
この制御部500は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのI/F506を持っていて、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト側から、ケーブル或いはネットワークを介してI/F506で受信する。
【0048】
そして、制御部500のCPU501は、I/F506に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC505にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、この画像データを印刷制御部508からヘッドドライバ509に転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成はホスト側のプリンタドライバで行っている。
【0049】
印刷制御部508は、上述した画像データをシリアルデータで転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、制御信号などをヘッドドライバ509に出力する以外にも、ROMに格納されている駆動パルスのパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動信号生成部を含み、1の駆動パルス或いは複数の駆動パルスで構成される駆動信号をヘッドドライバ509に対して出力する。
【0050】
ヘッドドライバ509は、シリアルに入力される記録ヘッド11の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部508から与えられる駆動信号を構成する駆動パルスを選択的に記録ヘッド11の液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(例えば圧電素子)に対して印加することで記録ヘッド11を駆動する。このとき、駆動信号を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴、中滴、小滴など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
【0051】
I/O部507は、装置に装着されている各種のセンサ群からの情報を取得し、プリンタの制御に必要な情報を抽出し、印刷制御部508やモータ駆動部510、ACバイアス供給部511の制御に使用する。センサ群は、用紙の位置を検出するための光学センサや、機内の温度を監視するためのサーミスタからなる温度センサ515、搬送ベルト31の電圧を監視するセンサ、カバーの開閉を検出するためのインターロックスイッチなどがあり、I/O部513は様々のセンサ情報を処理することができる。また、I/O部513には、リニアエンコーダ73からのエンコーダ信号、ロータリエンコーダ77からのエンコーダ信号も入力される。
【0052】
この制御部500においては、CPU501がキャリッジ移動手段である主走査モータ6を制御するキャリッジ制御手段と、キャリッジ制御手段からキャリッジ移動手段に与える制御量とキャリッジ10の移動状態を検出する移動状態検出手段であるリニアエンコーダ73の検出結果とに基づいてキャリッジの移動状態が異常であることを検出するキャリッジ動作異常検出手段と、キャリッジ動作異常検出手段がキャリッジの移動状態が異常であることを検出したときに、キャリッジ高さ調整機構101を駆動してキャリッジ10を用紙搬送面から離れる方向に移動させた後、キャリッジ10を主走査方向における移動方向と逆方向に移動範囲の端部まで退避移動させるキャリッジ退避制御手段、あるいは、キャリッジ動作異常検出手段がキャリッジ10の移動状態が異常であることを検出したときに、キャリッジ10を主走査方向における移動方向と逆方向に移動範囲の端部に向かって退避移動させるとともに、退避移動中に前記キャリッジ動作異常検出手段がキャリッジ10の移動状態が異常であることを検出したときにはキャリッジの退避移動を停止する退避制御手段を兼ねている。
【0053】
次に、主走査モータの駆動制御について図6をも参照して説明する。なお、図6は制御部500における主走査の駆動制御に係わる部分を機能的に説明するブロック説明図である。
リニアエンコーダ73の出力信号(A相、B相の2種類の出力パルスで構成される)は、エンコーダ信号処理部601に与えられ、このエンコーダ信号処理部601で速度及び位置情報に変換される。そして、得られた速度及び位置情報をASICなどでも構成できる信号処理合成部602にて合成処理した後、比較演算部603に与える。
【0054】
一方、この比較演算部603には速度・位置プロファイル格納部604に格納されている図6に示すようなキャリッジの速度プロファイルや位置プロファイルの情報が与えられており、比較演算部603はこれらの信号処理合成部602から与えられる速度及び位置情報(の合成情報)と速度・位置プロファイル格納部604に格納されている速度・位置プロファイルの情報とを比較して、目標位置と現在位置との偏差を演算する。
【0055】
そして、この比較演算部603で得られた偏差に基づいてPID制御演算部605はPID演算を行ってPWM信号を生成する。つまり、PID制御演算部605は、比較演算部603からの偏差に対してPID(比例、積分、微分)制御を行って制御値を演算する。ここでは、主走査モータ6をPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御で駆動するものとして、PID制御演算部605は偏差に対してPID制御を行ってPWMのデューティ比を求め、このPWMのデューティ比をモータドライバ510Aに与えてPWM制御で主走査モータ11を駆動させることにより、キャリッジ10を目標とする速度で目標とする移動量だけ移動させて目標とする位置に駆動するようにしている。なお、PID制御に代えて、PI制御を行う構成とすることもできる。
【0056】
次に、この画像形成装置に適用した本発明の第1実施形態におけるキャリッジの退避制御について図7のフロー図を参照して説明する。

この処理がエントリイされると、キャリッジ10のジャム検出処理を開始し、キャリッジ移動状態判断処理を行ってキャリッジ10の移動状態の異常を検出し、キャリッジ移動状態は正常か否かの判別を行う。
【0057】
キャリッジ10の移動状態が正常であるか異常であるかの検出は、キャリッジ10の移動情報(加速度や速度)と入力情報(PWM入力値:制御値)、及びキャリッジ10内のインク残量を監視し、キャリッジ10の負荷に異常がある場合にキャリッジ10の移動状態が異常であると判断する。例えば、キャリッジ10の移動状態が異常であるか否かの検出は、キャリッジ3の加速度と主走査モータ6に与える制御値(モータ入力値)の関係を予め測定しておき、制御値が予め定めた値以上になったときに異常と判断することができる。また、キャリッジ10の加速中は、入力と速度との関係にキャリッジ10の質量も影響するため、キャリッジ10に搭載されているサブタンク12のインク残量を監視し、キャリッジ10の質量による補正を行う。サブタンク12内のインク残量は、吐出滴数をカウントし、カウント値に吐出滴質量を乗じてインク使用量を算出し、サブタンク10への初期インク量から減算することによって得られる。
【0058】
ここで、キャリッジ10の移動状態が正常でなければ、つまり、キャリッジ10の移動状態が異常であることが検出されたときには、エラー処理を開始し、ギャップ調整モータ106を駆動してキャリッジ10を用紙搬送面から離れる方向、即ちキャリッジ10の高さを高くする方向(上方)に退避移動させる。これにより、キャリッジ10と搬送ベルト31との間のギャップが広がり、用紙22のジャムが発生した場合に、キャリッジ10を用紙22から離間させることができる。
【0059】
その後、主走査モータ6を逆転駆動して、キャリッジ10の主走査方向における移動方向と反対方向、即ちジャム発生直前のキャリッジ10の移動方向と反対方向にキャリッジ10を移動させ(移動方向を反転させ)、キャリッジ10を主走査範囲の両端部いずれかの用紙搬送経路外に移動して退避させる。
【0060】
これによって、記録ヘッド11がジャム用紙と干渉して記録ヘッド11のノズル面などが損傷することが低減する。また、キャリッジ10を左右の両端部いずれかの搬送経路外に移動することで、ジャム紙の取り除きが容易になる。さらに、キャリッジ10と用紙22の干渉によるジャムでは記録ヘッド11のノズル面と用紙22との接触によるインク漏れの可能性が想定されるが、インク漏れが発生した場合でもキャリッジ10を退避させることによって用紙搬送面へのインクによるダメージを最小限に留めることができる。
【0061】
そして、キャリッジ10を反転移動させているときに、キャリッジ10の移動状態を判断する処理を行って、キャリッジ10の移動状態が正常であるか異常であるかを判別する。このとき、キャリッジ10の移動状態が正常であれば、そのままキャリッジ10の反転移動を継続して用紙搬送路外への退避が完了すればユーザーに対してジャム処理を要請する通知を行う。これに対して、キャリッジ10の移動状態が正常でなければ、つまり、キャリッジ10の移動状態が異常であることが検出されたときには、直ちにキャリッジ10の退避移動を停止し、ユーザーに対してジャム処理を要請する通知を行う。
【0062】
これにより、キャリッジ10の退避移動中もキャリッジ10の移動状態が異常であることを検出する処理を行って、異常検出されたときにはキャリッジ10の停止することによって、ジャム紙が挟まったままキャリッジ10の退避移動が行われて記録ヘッド11が損傷することを低減できる。
【0063】
このように、キャリッジ動作異常検出手段がキャリッジの移動状態が異常であることを検出したときに、キャリッジ高さ調整手段を駆動してキャリッジを用紙搬送面から離れる方向に移動させた後、キャリッジを移動方向と逆方向に移動範囲の端部まで退避移動させるので、簡単な構成で記録ヘッドのジャム用紙との接触によるヘッドの損傷を確実に防止でき、また、用紙の搬送領域のインク汚れが防止され、しかも用紙の取り除きを容易することができる。
【0064】
また、キャリッジ動作異常検出手段がキャリッジの移動状態が異常であることを検出したときに、キャリッジを移動方向と逆方向に移動範囲の端部に向かって退避移動させるとともに、退避移動中にキャリッジ動作異常検出手段がキャリッジの移動状態が異常であることを検出したときにはキャリッジの退避移動を停止するので、簡単な構成で記録ヘッドのジャム用紙との接触によるヘッドの損傷を確実に防止することができる。
【0065】
次に、この画像形成装置に適用した本発明の第2実施形態におけるキャリッジの退避制御について図8のフロー図を参照して説明する。
ここでは、上記第1実施形態の処理において、エラー開始処理を開始した後、用紙22の搬送を停止する処理を行い、その後キャリッジ10を上昇させる処理を行うようにしている。これにより、エラー発生後用紙22が搬送されて記録ヘッド11のノズル面を擦るようなことを防止できる。
【0066】
次に、この画像形成装置に適用した本発明の第3実施形態におけるキャリッジの退避制御について図8のフロー図を参照して説明する。
ここでは、上記第1実施形態の処理において、エラー開始処理を開始した後、用紙22を逆方向(画像形成時の用紙搬送方向と逆方向)の搬送する処理を行い、その後キャリッジ10を上昇させる処理を行うようにしている。これにより、エラー発生後用紙22が搬送されて記録ヘッド11のノズル面を擦るようなことを防止できる。
【0067】
なお、上述した第2、第3実施形態において、キャリッジの退避動作完了後に用紙22の用紙搬送方向への搬送を再開するようにすることもできる。このようにすれば、用紙搬送手段(上記の例では搬送ベルト31)上に残存するジャム用紙を排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一例の全体構成を説明する側面説明図である。
【図2】同装置の要部平面説明図である。
【図3】キャリッジ高さ調整機構の一例を示す説明図である。
【図4】同じく異なる状態の説明図である。
【図5】同装置の制御部の概要を説明するブロック説明図である。
【図6】同制御部のキャリッジ制御に係る部分の機能ブロック説明図である。
【図7】本発明の第1実施形態におけるキャリッジ退避制御の説明に供するフロー図である。
【図8】本発明の第2実施形態におけるキャリッジ退避制御の説明に供するフロー図である。
【図9】本発明の第3実施形態におけるキャリッジ退避制御の説明に供するフロー図である。
【符号の説明】
【0069】
6…主走査モータ
10…キャリッジ
11a、11b…記録ヘッド
12a、12b…サブタンク
73…リニアエンコーダ
101…キャリッジ高さ調整機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する記録ヘッドを搭載したキャリッジと、
前記キャリッジの用紙搬送面に対する高さを調整するキャリッジ高さ調整手段と、
前記キャリッジを往復移動させるキャリッジ移動手段と、
前記キャリッジ移動手段を制御するキャリッジ制御手段と、
前記キャリッジの移動状態を検出する移動状態検出手段と、
前記キャリッジ制御手段から前記キャリッジ移動手段に与える制御量と前記移動状態検出手段の検出結果とに基づいて前記キャリッジの移動状態が異常であることを検出するキャリッジ動作異常検出手段と、
前記キャリッジ動作異常検出手段が前記キャリッジの移動状態が異常であることを検出したときに、前記キャリッジ高さ調整手段を駆動して前記キャリッジを前記用紙搬送面から離れる方向に移動させた後、前記キャリッジを主走査方向における移動方向と逆方向に移動範囲の端部まで退避移動させる退避制御手段と
を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
液滴を吐出する記録ヘッドを搭載したキャリッジと、
前記キャリッジを往復移動させるキャリッジ移動手段と、
前記キャリッジ移動手段を制御するキャリッジ制御手段と、
前記キャリッジの移動状態を検出する移動状態検出手段と、
前記キャリッジ制御手段から前記キャリッジ移動手段に与える制御量と前記移動状態検出手段の検出結果とに基づいて前記キャリッジの移動状態が異常であることを検出するキャリッジ動作異常検出手段と、
前記キャリッジ動作異常検出手段が前記キャリッジの移動状態が異常であることを検出したときに、前記キャリッジを主走査方向における移動方向と逆方向に移動範囲の端部に向かって退避移動させるとともに、前記退避移動中に前記キャリッジ動作異常検出手段が前記キャリッジの移動状態が異常であることを検出したときには前記キャリッジの退避移動を停止する退避制御手段と
を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置において、前記キャリッジの周辺温度を検出する温度検出手段を有し、前記キャリッジ動作異常検出手段は前記温度検出手段の検出結果に基づいて前記キャリッジの移動状態が異常であることを検出することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置において、前記キャリッジには前記記録ヘッドにインクを供給するサブタンクが備えられ、前記キャリッジ動作異常検出手段は前記サブタンクのインク残量の検出結果に基づいて前記キャリッジの移動状態が異常であることを検出することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置において、前記キャリッジ動作異常検出手段が前記キャリッジの移動状態が異常であることを検出したときには、前記記録ヘッドで画像を形成する用紙の搬送を停止することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置において、前記キャリッジ動作異常検出手段が前記キャリッジの移動状態が異常であることを検出したときには、前記記録ヘッドで画像を形成する用紙の搬送方向を逆転させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の画像形成装置において、前記キャリッジの退避移動が完了した後に前記用紙の搬送方向への搬送を再開することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−166370(P2009−166370A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7406(P2008−7406)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】