説明

画像形成装置

【課題】所定の塗布パターンを昇華性インクで布地に歪みなく形成することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】塗布パターンが形成された布地を、塗布布地移送手段によって移送させつつ、所定温度に加熱することにより昇華インクを発色させる加熱手段を備え、この加熱手段は、移送される布地に接触して加熱する円筒部材を有する接触加熱手段と、円筒部材を収容する溝部が複数形成された加熱表面を備えた非接触加熱手段と、を備え、複数の溝部の少なくとも一部に、一部が加熱表面から外部へ突出するように円筒部材を収容し、円筒部材との接触により布地を接触状態で加熱するとともに、円筒部材の前後において加熱表面により布地を非接触状態で加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺状の媒体上に所定のパターンを塗布する画像形成装置に関し、特に長尺に形成された布地上にインクジェットヘッドを用いて塗布パターンを形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
布地への画像形成装置としては、従来、中間転写体であるロール状転写紙に昇華性インクあるいは熱固着インクで一旦画像を印刷形成し、この転写紙と被転写体である布とを、圧縮転写装置内で密着させて、加熱ローラで加圧加熱することで布に長尺の画像を形成するものがあった(特許文献1)。
【特許文献1】特開平9−300673号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の布地への画像形成装置にあっては、加熱ローラでの加熱時において、ポリエステル、ナイロン等で形成された布地と、転写紙と、の収縮状態の違いにより昇華性インクあるいは熱固着インクの転写の不具合が生じることがある。即ち布地と転写紙の熱膨張率の違いにより、転写紙の膨張が大きくなり、転写紙に皺が発生することとなり布地上に昇華性インクあるいは熱固着インクで形成されるプリント模様等に歪みが発生する不具合があった。
【0004】
そこで、本発明は、所定の塗布パターンを昇華性インクあるいは熱固着インクで布地に歪みなく形成することができる布地への画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の画像形成装置においては、長尺に形成された布地を移送する塗布布地移送手段と、塗布布地移送手段によって移送される布地に対して、インクジェットノズルで昇華性インクあるいは熱固着インクを塗布し、布地に昇華性インクあるいは熱固着インクによる所定の塗布パターンを形成するインク塗布手段と、塗布パターンが形成された布地を、塗布布地移送手段によって移送させつつ、所定温度に加熱することにより昇華インクあるいは熱固着インクを発色させる加熱手段と、昇華性インクあるいは熱固着インクを乾燥させる乾燥手段と、を備え、加熱手段は、移送される布地に接触して加熱する円筒部材を有する接触加熱手段と、円筒部材を収容する溝部が複数形成された加熱表面を備えた非接触加熱手段と、を備え、複数の溝部の少なくとも一部に、一部が加熱表面から外部へ突出するように円筒部材を収容し、円筒部材との接触により布地を接触状態で加熱するとともに、円筒部材の前後において加熱表面により布地を非接触状態で加熱することを特徴としている。
【0006】
本発明の画像形成装置において、円筒部材は、複数の溝部のうち、塗布バターンに対応するように選択された溝部内に収容されることが好ましい。
【0007】
本発明の画像形成装置において、非接触加熱手段のうち少なくとも加熱表面はアルミニウムにより形成されているとよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、所定の塗布パターンを昇華性インクあるいは熱固着インクで布地に歪みなく形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る画像形成装置について図面を参照しつつ詳しく説明する。
本実施形態に係る画像形成装置は、布地上に画像を形成するための装置であるが、本発明はこれに限定されず、布地以外の長尺状の媒体(例えば紙)への画像の形成にも用いることもできる。ここで、図1は、本実施形態に係る画像形成装置1の構成を示す概念図である。
【0010】
図1に示すように、本実施形態にかかる画像形成装置1は、塗布布地移送手段としての布地供給ローラ10及び巻き取りローラ90と、プリントヘッド30(インク塗布手段)と、加熱部60(加熱手段)と、プリヒータ40(乾燥手段)と、を備える。
以下に、各部材の詳細な構成について説明する。
【0011】
図1に示すように、布地2(例えばポリエステル、ナイロン(商標))は、布地供給ローラ10から供給され、ローラ21を経て、テンション調整部50によって張力を調整され、ローラ22を経て巻き取りローラ90に巻き取られる。すなわち、布地供給ローラ10、ローラ21、テンション調整部50、ローラ22、及び巻き取りローラ90が塗布布地移送手段として機能する。テンション調整部50は、スプリング51を備え、布地2が所定のテンションになるよう調整する。
【0012】
布地供給ローラ10とローラ21との間には、滲み止め剤であるバインダを布地2に塗布するバインダ塗布部20が配置され、ローラ21とテンション調整部50との間には、プリントヘッド30、プリヒータ40が順に配置されている。プリントヘッド30は、ピエゾ素子で駆動されるインクジェットノズル31を備え、所定色の昇華性インクあるいは熱固着インクを布地2に塗布し、これにより、布地に昇華性インクあるいは熱固着インクによる所定の塗布パターンを形成する。プリントヘッド30の下部を移送する布地2はプリントヘッド30の昇華インクあるいは熱固着インクの吐出タイミングにあわせ、間欠的に矢印の方向に移送していくよう駆動される。プリヒータ40は遠赤外線ランプを備え、布地2上に塗布された昇華性インクあるいは熱固着インクを加熱して乾燥させる。
【0013】
テンション調整部50とローラ22との間には、加熱部60が配置されている。加熱部60は、非接触加熱手段としてのヒータユニット61、62と、接触加熱手段としての加熱ローラ65と、を備える。
【0014】
ヒータユニット61、62は不図示の導線を用いて通電によって発熱する同一のユニットであって、不図示の装置本体に対して、布地2の移送経路に沿って順に着脱可能に設けられている。図2は、ヒータユニット61、62の構成を示す側面図である。図3は、ヒータユニット61、62の詳細構成を示す、図2のIII部分の拡大図である。図2、図3に示すように、ヒータユニット61、62の外側の表面、すなわち布地2移送経路側に配置された面が、布地を非接触状態で加熱する加熱表面63をなしている。この加熱表面63には、布地2の移送方向(図1の矢印)において、内側に凹んだ溝部64が一定の間隔で複数形成されている。このヒータユニット61、62は、例えばアルミニウムを成形することにより形成する。また、ヒータユニット61とヒータユニット62は、互いに独立して配置してもよいが、互いに連設させることもできる。
【0015】
なお、溝部64は、任意の間隔で形成することができ、その間隔は一定でなくてもよい。また、加熱部60は、単一のヒータユニット、又は、3以上のヒータユニットで形成することもできる。
【0016】
複数の溝部64の少なくとも一部には、加熱ローラ65(円筒部材)が収容される。加熱ローラ65は、内挿されたワイヤ66に通電することによって発熱する。この加熱ローラ65は、例えばシリコーン、セラミックによって形成され、ワイヤ66の両端部をヒータユニット61、62の所定位置に係止することによって固定される。また、加熱ローラ65は、溝部64内に収容したときに、一部が加熱表面63から外部へ、すなわち布地2側へ突出するような外径を備える。加熱ローラ65は、複数の溝部64のうちの任意の溝部に収容させることができるが、布地2への塗布バターンに対応するように選択された溝部内に収容させると、乾燥効率が高まるため好ましい。
【0017】
以上のように溝部64内に加熱ローラ65を収容させた加熱部60を用いると、一定の張力を与えられた布地2は、加熱ローラ65に接触し、かつ、加熱表面63との間に一定の間隔Dを有して移送される(図3)。したがって、布地2は、加熱ローラ65によって接触状態で加熱されるとともに、加熱表面63によって非接触状態で加熱(環境加熱)される。加熱表面63による加熱温度は、150〜220°Cが好ましいが、布地2の種類によって、例えばポリエステルの場合170〜180°C、ナイロンの場合150〜160°Cとするのが好適である。このように加熱することによって、布地2を所定温度に加熱して昇華性インクを発色させ、布地2を染色することができる。
【0018】
布地2は、加熱部60によって加熱発色された後に、仕上げヒータ70に密着した状態で加熱される。これにより、加熱部60によって発色していなかった昇華性インクを発色させ、及び/又は、プリヒータ40によって乾燥していなかった昇華性インクを乾燥させ、布地2の塗布品質を向上させる。仕上げヒータ70による加熱温度は、170〜240°Cが好ましい。
【0019】
仕上げヒータ70の下流には、布地を幅方向の一定寸法に裁断するカッタ部80が配置されている。カッタ部80は、電気ヒータで加熱されたブレード81と、ブレード81との間で布地2を挟むローラ82とを備え、布地2を溶解して切断する。なお、布地2の移送が間欠的であると、布地2が静止したとき過加熱により布地2が焦げるおそれがあるため、自動テンションバー(不図示)を設け、布地2の間欠移送を連続移送にすることが好ましい。このカッタ部80は布地2に印刷された範囲をセンサ(不図示)で検知してその幅にブレード81を移送する。カッタ部80において所定幅に裁断された布地2は、巻き取りローラ90によって巻き取られる。
【0020】
本実施形態に係る布地への画像形成装置1によれば、加熱表面63と布地2とを非接触とした状態で加熱することができ、かつ、加熱ローラ65の間隔を任意に調整できるため、布地2と加熱ローラ65との接触時間及び間隔を少なくすることができることから、布地2を痛めることなく、かつ、昇華性インクあるいは熱固着インクの混色を防止することができる。
【0021】
ヒータユニット61、62の加熱表面64に溝部64を形成したため、繰り返し加熱されることによるヒータユニット61、62の変形を抑えることができる。また、ヒータユニット61、62に、熱膨張の少ない材料(例えばアルミニウム)を用いると、熱による変形を防ぐことができる。
【0022】
また、転写紙を使用せず布地2に直接昇華性インクあるいは熱固着インクを塗布して塗布パターンを形成することができるため、加熱時における熱膨張率の差に起因する塗布パターンの歪みを防止することができる。
【0023】
また、布地2には昇華性インクあるいは熱固着インク塗布前に布地への滲み防止剤が塗布されるので、昇華性インクあるいは熱固着インクの塗布時布地への滲みを防止することができる。また、加熱部60による加熱前に、プリヒータ40により昇華性インクあるいは熱固着インクを乾燥させるため、加熱による布地の染色を効率よく行うことができる。
【0024】
さらにまた、昇華性インクあるいは熱固着インクは、インクジェットノズル31を用いて布地2に塗布されるので適正な量のインクを精緻に塗布することができる。また、加熱部60において加熱を行うため、昇華性インクあるいは熱固着インクが塗布された布地2を効率よく均一に加熱することができる。
【0025】
なお、バインダが塗布された布地あるいは滲みが発生しない布地を用いる場合には、バインダ塗布部20を備える必要はない。また、昇華性インクあるいは熱固着インクは、インクジェットノズル以外の手段によって、塗布してもよい。さらにまた、加熱部60において昇華性インクの発色及び乾燥を十分行うことができれば、プリヒータ40及び仕上げヒータ70を設けなくても良い。
【0026】
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的または本発明の思想の範囲内において改良または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上のように、本発明に係る画像形成装置は、長尺に形成された媒体への品質の高い塗布パターンの形成に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概念図である。
【図2】本発明の実施形態に係るヒータユニットの構成を示す側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るヒータユニットの詳細構成を示す、図2のIII部分の拡大図である。
【符号の説明】
【0029】
1 画像形成装置
2 布地
10 布地供給ローラ(塗布布地移送手段)
20 バインダ塗布部
21 ローラ(塗布布地移送手段)
22 ローラ(塗布布地移送手段)
30 プリントヘッド(インク塗布手段)
31 インクジェットノズル
40 プリヒータ
50 テンション調整部(塗布布地移送手段)
51 スプリング
60 加熱部(加熱手段)
61 ヒータユニット
62 ヒータユニット
63 加熱表面
64 溝部
65 加熱ローラ
66 ワイヤ
70 仕上げヒータ(塗布布地移送手段)
80 カッタ部
81 ブレード
82 ローラ(塗布布地移送手段)
90 巻き取りローラ(塗布布地移送手段)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺に形成された布地を移送する塗布布地移送手段と、
前記塗布布地移送手段によって移送される前記布地に対して、インクジェットノズルで昇華性インクあるいは熱固着インクを塗布し、前記布地に昇華性インクあるいは熱固着インクによる所定の塗布パターンを形成するインク塗布手段と、前記塗布パターンが形成された布地を、前記塗布布地移送手段によって移送させつつ、所定温度に加熱することにより前記昇華インクあるいは熱固着インクを発色させる加熱手段と、前記昇華性インクあるいは熱固着インクを乾燥させる乾燥手段と、を備え、前記加熱手段は、移送される前記布地に接触して加熱する円筒部材を有する接触加熱手段と、前記円筒部材を収容する溝部が複数形成された加熱表面を備えた非接触加熱手段と、を備え、前記複数の溝部の少なくとも一部に、一部が前記加熱表面から外部へ突出するように前記円筒部材を収容し、前記円筒部材との接触により前記布地を接触状態で加熱するとともに、前記円筒部材の前後において前記加熱表面により前記布地を非接触状態で加熱することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記円筒部材は、前記複数の溝部のうち、前記塗布バターンに対応するように選択された溝部内に収容される請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記非接触加熱手段のうち少なくとも前記加熱表面はアルミニウムにより形成されている請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−256821(P2009−256821A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−105532(P2008−105532)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(597131118)株式会社ジャパンネットワークサービス (4)
【Fターム(参考)】