説明

画像形成装置

【課題】画像形成装置において、定着器のウォーミングアップ動作直後におけるトナー像の定着性を改善する。
【解決手段】記録紙を加熱及び加圧することにより該記録紙に転写されたトナー像を定着させて出力する画像形成装置10であって、ヒータ31を内蔵するヒートローラ32と、前記ヒートローラ32に接触するプレスローラ36と、前記プレスローラ36の表面温度を検出するプレスローラ温度センサー39と、前記記録紙に転写するトナーの印字濃度Dを補正する印字濃度補正手段51と、を備え、前記印字濃度補正手段51は、プレスローラ温度センサー39によって検出されるプレスローラ36の表面温度が所定温度Tpa以下の場合には、印字濃度Dを初期設定濃度D1よりも濃く補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録紙を加熱及び加圧することにより記録紙に転写されたトナー像を定着させて出力する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置において、加熱部を内蔵するヒートローラと、ヒートローラに接触するプレスローラとを備えた定着器は公知である。定着器は、ヒートローラとプレスローラとのニップ部において、記録紙を加熱及び加圧することにより、記録紙に転写されたトナー像を定着させるものである。
【0003】
記録紙に転写されたトナー像を定着させるためには、記録紙がヒートローラとプレスローラとのニップ部を通過する際に、ヒートローラとプレスローラとが所定の温度まで加熱されている必要がある。このため、定着器のウォーミングアップ動作を行い、ヒートローラを加熱部で定着温度まで加熱するとともに、プレスローラをヒートローラの熱によって加熱している。
【0004】
例えば、特許文献1は、ヒートローラに温度センサーを設け、該温度センサーの検出値によって印字濃度を補正する画像形成装置を開示している。また、特許文献2は、定着装置の装置環境温度によって印字濃度を補正する画像形成装置を開示している。
【0005】
印字濃度を濃くすることで、トナーの粒子を増加させ、周囲のトナー粒子との結合をより密にすることで、トナー像の定着性を向上できる。また、印字濃度を濃くすることで、周囲のトナー粒子同士の結合が密になると、トナー粒子同士が互いの熱を補い合って溶解しやすくなるため、記録紙に定着しやすくなる。すなわち、印字濃度を濃くすることで、トナー像の定着性が良好となる。
【特許文献1】特開平9−211963号公報
【特許文献2】特開2002−372813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、例えば寒冷な環境、或いはオフィスにおける朝一番の始動において、定着器のウォーミングアップ動作直後では、ヒートローラが所定温度まで加熱されているが、プレスローラが充分に温まっていない状況が発生する。このような状況では、ヒートローラの熱は記録紙だけでなく、プレスローラにも大量に奪われてしまい、少なくとも最初の1、2枚はトナー像の定着性が劣化しやすい傾向にある。
【0007】
そこで、解決しようとする課題は、画像形成装置において、定着器のウォーミングアップ動作直後におけるトナー像の定着性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、第1の発明は、記録紙を加熱及び加圧することにより該記録紙に転写されたトナー像を定着させて出力する画像形成装置であって、加熱部を内蔵するヒートローラと、前記ヒートローラに接触するプレスローラと、前記プレスローラの表面温度を検出するプレスローラ温度検出部と、前記記録紙に転写するトナーの印字濃度を補正する印字濃度補正手段と、を備え、前記印字濃度補正手段は、前記プレスローラ温度検出部による検出温度が所定温度以下の場合には、印字濃度を初期設定濃度よりも濃く補正するものである。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、出力した記録紙の枚数を検出する出力枚数検出部を備え、前記印字濃度補正手段は、前記出力枚数検出部による検出枚数が所定枚数以上となった場合には、印字濃度を初期設定濃度に戻すものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
第1の発明においては、プレスローラ温度が所定温度以下の場合には、印字濃度を濃く補正するため、定着器のウォーミングアップ動作直後におけるトナー像の定着性を改善できる。
【0013】
第2の発明においては、印字濃度を濃く補正した場合であっても、所定枚数出力した場合には印字濃度を初期設定に戻すため、不必要な印字濃度の補正を回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の実施例に係る画像形成装置の概略構成を示すブロック図、図2は同じく印字濃度補正手段を示すフロー図である。
【0015】
まず、本実施例である画像形成装置10について、詳細に説明する。
図1に示すように、画像形成装置10は、例えばファクシミリ又はコピー機に組み込まれる装置である。画像形成装置10は、感光ドラム12と、記録紙搬送路を挟んで感光ドラム12に接触して対向するように設置される転写ローラ13と、それらの記録紙搬送方向(図1における白抜き矢印の向き)の下流側に設置される定着器30と、感光ドラム12の周囲に設置される現像器14と、画像形成装置10の各部を制御する制御装置100と、を備えて構成されている。
【0016】
感光ドラム12は、露光により帯電する感光体であり、図示しない駆動源により回転される。感光ドラム12の周囲には、ブラシローラ式の帯電器15、露光部であるLEDプリントヘッド17、除電器18が設けられている。帯電バイアス印加回路16により所定のバイアス電圧が印加された帯電器15は、回転しながら感光ドラム12の外周面を一様に帯電させる。多数のLEDを並設させたLEDプリントヘッド17は、入力された画像情報に基づいて感光ドラム12の外周面に光を照射し、その外周面に画像情報に対応する静電潜像を形成する。除電器電圧印加回路19により所定のバイアス電圧が印加される除電器18は、転写後に感光ドラム12上に残った電荷を除去する。
【0017】
転写ローラ13は、感光ドラム12の回転に追従して回転し、転写器として感光ドラム12の外周面に形成されたトナー像を記録紙に転写する。転写ローラ13には、転写バイアス印加回路21により所定のバイアス電圧が印加され、転写ローラ13と転写バイアス印加回路21との間に設けられる電流検出部22が転写バイアス電圧印加時に流れる電流を検出し、制御装置100に信号が送られる。
【0018】
現像器14は、供給ローラ23、現像ローラ24及びクリーニングブレード25を備えている。供給ローラ23は、トナーを収容した図示しないトナーケースからトナーを帯電させながら現像ローラ24に供給する。現像ローラ24は、供給ローラ23と感光ドラム12との間に双方に接触して設置され、感光ドラム12へトナーを転移する。クリーニングブレード25は、現像ローラ24の外周面に弾性的に接触され、現像ローラ24の外周面に付着したトナー層の層厚を均一にする。供給ローラ23、現像ローラ24及びクリーニングブレード25には、現像器バイアス印加回路26により所定のバイアス電圧が印加される。
【0019】
定着器30は、ヒートローラ32と、ヒートローラ32に内蔵される加熱部としてのヒータ31と、ヒートローラ32に加圧された状態で接触するように設置されるプレスローラ36と、を備えて構成されている。ヒータ31には、ヒータ作動回路38が接続されており、制御装置100からの制御信号に基づいてヒータ作動回路38が作動して、ヒータ31が作動する。ヒータ31には例えばハロゲンランプが用いられる。
ヒートローラ温度センサー37は、ヒートローラ32の表面に接触するように設けられている。また、プレスローラ温度検出部としてのプレスローラ温度センサー39は、プレスローラ36の表面に接触するように設けられている。
【0020】
出力枚数検出部としての出力枚数検出センサー40は、画像形成装置10が出力する記録紙の枚数を検出するために設けられている。本実施例において、出力枚数検出センサー40は、画像形成装置10を備える本体であるファクシミリ又はコピー機等が従来から有するセンサーとする。出力枚数センサー40は、記録紙の搬送経路上に配置された記録紙有無センサーと、この記録紙有無センサーからの検出出力が入力される都度“1”をインクリメントするカウンタと、により構成される。
【0021】
制御装置100は、画像形成装置10の各部を制御する制御部50と、後述する定数を記憶する記憶部60、画像形成装置10に対して各設定を行う設定部70と、を備えて構成されている。制御部50は、後述する定着温度制御手段及び印字濃度補正手段51としての機能を有する。記憶部60は、後述する初期設定濃度D1、補正濃度Da、所定温度Tpa、及び所定枚数Naの定数が予め記憶されている。設定部70は、電源ボタン、コピーボタン、及びFAX送信ボタン等を備えて構成されている。
【0022】
制御装置100は、ヒートローラ温度センサー37、プレスローラ温度センサー39、及びその他各部と接続されている。制御部50は、ヒートローラ温度センサー37によって、ヒートローラ32の表面温度であるヒートローラ温度Thを読み込み、プレスローラ温度センサー39によって、プレスローラ36の表面温度であるプレスローラ温度Tpを読み込む機能を有する。また、制御部50は、出力枚数検出センサー40によって出力枚数Nを読み込む機能を有する。
【0023】
制御部50は、定着温度制御手段として、ヒートローラ温度Thが定着温度より高くなった場合にヒータ31をOFFとし、ヒートローラ温度Thが定着温度より低くなった場合にヒータ31をONとすることにより定着温度を維持する機能を有する。
【0024】
制御部50は、印字濃度補正手段51としてのプレスローラ温度Tpに基づいて、トナーの印字濃度Dを初期設定濃度D1から補正濃度Daに補正する機能を有する。本実施例において、初期設定濃度D1は、マクベス濃度計にて1.2倍、補正濃度Daはマクベス濃度計にて1.4倍としている。すなわち、印字濃度Dを初期設定濃度D1から補正濃度Daに補正することは、印字濃度を初期設定濃度より濃く補正することになる。ここで、印字濃度Dは、トナーの帯電量、露光量、又は現象バイアスによって補正することができる。本実施例では感光ドラム12にかけるバイアス電圧を増加させ、トナーの帯電量を増加させ、定着させるトナー量を増加させることで印字濃度Dを濃く補正している。
【0025】
次に、印字濃度補正手段51のフローについて、詳細に説明する。
図2に示すように、制御部50は、画像形成装置10が組み込まれた本体(例えばファクシミリ又はコピー機)において電源ON、あるいはカバー閉とされれば(S101)、画像形成装置10の初期設定を行うイニシャライズ処理を実行する(S102)。次に、制御部50は、プレスローラ温度センサー39によって、プレスローラ温度Tpを取得し(S103)、プレスローラ温度Tpが所定温度Tpa以下であるかを判定する(S104)。
【0026】
制御部50は、S104において所定温度Tpa以下であれば、印字濃度Dを初期設定濃度D1から補正濃度Daに補正する(S105)。一方、S104において所定温度Tpaより大きければ、印字濃度Dは初期設定濃度D1のままとする。次に、制御部50は、設定部70のコピーボタンがONとされたか否かを判定する(S107)。
【0027】
制御部50は、S107において、コピーボタンがONとされた場合は、出力枚数検出センサー40によって、記録紙の出力枚数Nを取得し(S108)、出力枚数Nが所定枚数Na以上であるか否かを判定する(S109)。ここで、制御部50は、S109において、所定枚数Na以上であれば、印字濃度Dを初期設定濃度D1に戻す(S110)。一方、S109において、所定枚数Naより少なければ、S108へ移行する。
【0028】
制御部50は、S107において、コピーボタンがONとされていない場合は、S105へ移行し、プレスローラ温度センサー39によって、プレスローラ温度Tpを取得し(S103)、プレスローラ温度Tpが所定温度Tpa以下であるかを判定する(S104)。
以上が印字濃度補正手段51のフローである。
【0029】
従来、例えば寒冷な環境、或いはオフィスにおける朝一番の始動において、定着器30のウォーミングアップ動作直後では、ヒートローラ32が所定温度Tqまで加熱されているが、プレスローラ36が充分に温まっていない状況が発生していた。このような状況では、ヒートローラ32の熱は記録紙だけでなく、プレスローラ36にも大量に奪われてしまい、少なくとも最初の1、2枚はトナー像の定着性が劣化しやすい傾向にあった。
【0030】
一方、プレスローラ36を充分に温めるまでヒートローラ32を過剰に加熱することにより、ウォーミングアップ動作に時間が掛かるという問題がある。また、過剰にヒートローラ32を加熱することにより、記録紙がカールする、或いは記録紙に皺が発生する原因ともなる。また、ヒートローラ32を加熱するのに要する消費電力を増加させることとなる。
【0031】
そこで、本実施例では、間接的に加熱されるプレスローラ36のプレスローラ温度Tpに基づいて、印字濃度Dを初期設定濃度D1から補正濃度Da(Da>D1)に補正する。そのため、ウォーミングアップ動作直後におけるトナー像の定着性を改善できる。
【0032】
ここで、印字濃度を濃くすることで、トナーの粒子が増加され、周囲のトナー粒子との結合をより密とすることで、トナー像の定着性を向上できる。また、印字濃度を濃くすることで、周囲のトナー粒子同士の結合が密になると、トナー粒子同士が互いの熱を補い合って溶解しやすくなるため、記録紙に定着しやすくなる。すなわち、印字濃度を濃くすることで、トナー像の定着性が良好となる。
このようにして、プレスローラ温度Tpが所定温度Tpa以下の場合には、印字濃度Dを濃く補正するため、ウォーミングアップ動作直後のトナー像の定着性を改善できる。
【0033】
また、プレスローラ36に十分に熱が伝達されれば、印字濃度Dが補正濃度Daのままでは不必要に濃い印字濃度によってトナー像を定着させることとなる。
【0034】
そこで、印字濃度Dを初期設定濃度D1から補正濃度Daに補正した場合であっても、定着器30が所定枚数Na以上出力した場合には、プレスローラ36が充分に温められたと判断する。そして、印字濃度Dを補正濃度Daから初期設定D1に戻すため、不必要な印字濃度Dの補正を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施例に係る画像形成装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】同じく印字濃度補正手段を示すフロー図。
【符号の説明】
【0036】
10 画像形成装置
31 ヒータ
32 ヒートローラ
37 プレスローラ
39 プレスローラ温度センサー
40 出力枚数検出センサー
50 制御部
51 印字濃度補正手段
60 記憶部
70 設定部
100 制御装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録紙を加熱及び加圧することにより該記録紙に転写されたトナー像を定着させて出力する画像形成装置であって、
加熱部を内蔵するヒートローラと、
前記ヒートローラに接触するプレスローラと、
前記プレスローラの表面温度を検出するプレスローラ温度検出部と、
前記記録紙に転写するトナーの印字濃度を補正する印字濃度補正手段と、を備え、
前記印字濃度補正手段は、前記プレスローラ温度検出部による検出温度が所定温度以下の場合には、印字濃度を初期設定濃度よりも濃く補正することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
出力した記録紙の枚数を検出する出力枚数検出部を備え、
前記印字濃度補正手段は、前記出力枚数検出部による検出枚数が所定枚数以上となった場合には、印字濃度を初期設定濃度に戻すことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−271252(P2009−271252A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120529(P2008−120529)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】