説明

画像形成装置

【課題】筐体内部の用紙収納部から印刷部に用紙を搬送する際に、用紙をL字形状やU字形状に曲げることなく搬送することが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】この昇華型プリンタ100(画像形成装置)は、筐体10内部の用紙収納部80に収納された用紙200を搬送するための第1の位置Aと、用紙収納部80に収納された用紙200が搬送された後に印刷部40に向かって用紙200を搬送するための第2の位置Bとにピックアップローラ33の位置を移動させる移動機構部50を備え、ピックアップローラ33が第1の位置Aに位置する状態で用紙200が第1の搬送経路に沿って矢印Z1方向側に搬送された後、ピックアップローラ33が第2の位置Bに移動されるとともに用紙200が第2の搬送経路に移動されて矢印Z2方向側に搬送されることにより印刷部40に用紙200が供給されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像形成装置に関し、特に、用紙収納部に収納された用紙を搬送するローラを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用紙収納部に収納された用紙を搬送するローラを備えた画像形成装置などが知られている(たとえば、特許文献1〜5参照)。
【0003】
上記特許文献1には、筐体内部に収容され、用紙を収納する給紙カセット(用紙収納部)と、給紙カセットに収納された用紙を画像の転写位置(印刷部)に搬送する給紙ローラとを備えた画像形成装置が開示されている。この特許文献1の画像形成装置は、給紙ローラにより、筐体内部の給紙カセットから転写位置にL字形状に形成された搬送経路に沿って用紙を搬送するように構成されている。
【0004】
上記特許文献2には、作像ユニット(印刷部)と、筐体内部に収容され、用紙を収納する給紙カセット(用紙収納部)と、給紙カセットに収納された用紙を作像ユニットに向かう搬送経路に搬送する給紙ローラとを備えた画像形成装置が開示されている。この特許文献2の画像形成装置は、給紙ローラにより、筐体内部の給紙カセットから作像ユニットにU字形状に形成された搬送経路に沿って用紙を搬送するように構成されている。
【0005】
上記特許文献3には、記録部(印刷部)と、筐体内部に配置され、用紙を収納する給紙部(用紙収納部)と、給紙部に収納された用紙を記録部に搬送する給紙ローラとを備えた記録装置(画像形成装置)が開示されている。この特許文献3の記録装置は、給紙ローラにより、筐体内部の給紙部から記録部にU字形状に形成された搬送経路に用紙を沿って搬送するように構成されている。
【0006】
上記特許文献4には、像形成ユニット(印刷部)と、筐体内部に収容され、シートを収納するシート収納部(用紙収納部)と、シート収納部に収納されたシートを像形成ユニットに搬送する給紙ローラとを備えた画像形成装置が開示されている。この特許文献4の画像形成装置は、給紙ローラにより、筐体内部のシート収納部から像形成ユニットにU字形状に形成された搬送経路に沿ってシートを搬送するように構成されている。
【0007】
上記特許文献5には、シート収納装置(用紙収納部)に収納されたシートを所定の方向へ搬送するピックアップローラを備えた給紙装置が開示されている。この特許文献5の給紙装置は、カム機構により、ピックアップローラの位置を移動することが可能なように構成されており、ピックアップローラは、シートを搬送するときにはシートに当接し、それ以外のときにはシートから離間するように構成されている。
【0008】
【特許文献1】特開平6−250475号公報
【特許文献2】特開2006−65301号公報
【特許文献3】特開2003−127484号公報
【特許文献4】特開平6−202390号公報
【特許文献5】特開平6−171771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1〜4に記載の画像形成装置では、用紙収納部から印刷部への搬送経路がL字形状またはU字形状に形成されているので、用紙を用紙収納部から印刷部にL字形状またはU字形状に曲げながら搬送する必要があるという問題点がある。
【0010】
また、上記特許文献5に記載のシート収納装置では、ピックアップローラの位置を移動することが可能である一方、シート収納装置から印刷部までのシートの搬送経路についての構成は、開示も示唆もされていない。
【0011】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、筐体内部の用紙収納部から印刷部に用紙を搬送する際に、用紙をL字形状やU字形状に曲げることなく搬送することが可能な画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0012】
この発明の一の局面による画像形成装置は、用紙に画像を印刷する印刷部と、印刷部を収容する筐体と、筐体に収容され、用紙を収納する用紙収納部と、用紙を搬送するピックアップローラと、用紙収納部に収納された用紙を搬送するための第1の位置と、用紙収納部に収納された用紙が搬送された後に印刷部に向かって用紙を搬送するための第2の位置とにピックアップローラの位置を移動させる移動機構部とを備え、ピックアップローラが第1の位置に位置する状態で用紙収納部に収納された用紙が第1の搬送経路に沿って第1の方向に搬送された後、ピックアップローラが第2の位置に移動されるとともに用紙が第2の搬送経路に移動されて第2の方向に搬送されることにより印刷部に用紙が供給されるように構成されている。
【0013】
この一の局面による画像形成装置では、上記のように、用紙収納部に収納された用紙を搬送するための第1の位置と、用紙収納部に収納された用紙が搬送された後に印刷部に向かって用紙を搬送するための第2の位置とにピックアップローラの位置を移動させる移動機構部を設け、ピックアップローラが第1の位置に位置する状態で用紙収納部に収納された用紙が第1の搬送経路に沿って第1の方向に搬送された後、ピックアップローラが第2の位置に移動されるとともに用紙が第2の搬送経路に移動されて第2の方向に搬送されることにより印刷部に用紙が供給されるように構成することによって、用紙は、用紙収納部から第1の搬送経路に沿って搬送された後、第2の搬送経路に移動されて印刷部に搬送されるので、用紙収納部から印刷部まで1つの搬送経路で用紙を搬送する場合と異なり、用紙収納部から印刷部までの搬送経路をL字形状やU字形状に形成する必要がない。その結果、用紙をL字形状やU字形状に曲げることなく、用紙収納部から印刷部に用紙を搬送することができる。
【0014】
上記一の局面による画像形成装置において、好ましくは、移動機構部は、ピックアップローラが取り付けられた回動可能なアーム部を含み、ピックアップローラは、アーム部が回動することにより、第1の位置および第2の位置に移動されるように構成されている。このように構成すれば、アーム部を回動することにより、容易に、ピックアップローラの位置を第1の位置および第2の位置に移動させることができる。
【0015】
この場合、好ましくは、アーム部を回動するためのカム溝を含むカム部をさらに備え、アーム部は、カム溝に嵌まり込むように構成された突起部を有し、カム部が移動するのに伴ってアーム部の突起部がカム溝に沿って移動することにより、アーム部が所定の回動中心を中心として回動するように構成されている。このように構成すれば、カム溝により突起部が容易に移動されるとともに、突起部の移動に伴ってアーム部が容易に回動されるので、より容易に、ピックアップローラの位置を第1の位置および第2の位置に移動させることができる。
【0016】
上記カム部を備えた構成において、好ましくは、カム部は、アーム部の突起部を付勢する付勢部をさらに含み、カム部が移動するのに伴ってアーム部の突起部がカム溝に沿って所定の位置まで移動された際に、付勢部によりアーム部の突起部が付勢されることによって、アーム部に取り付けられたピックアップローラが付勢部による付勢力に対応する押圧力で用紙収納部に収納された用紙を押圧するように構成されている。このように構成すれば、付勢部による付勢力に対応する押圧力で、ピックアップローラを用紙収納部に収納された用紙に押圧することができる。
【0017】
上記カム部が付勢部を含む構成において、好ましくは、付勢部は、用紙収納部に収納された用紙の枚数に応じて突起部に対する付勢部の付勢位置を移動可能なように構成されている。このように構成すれば、用紙収納部に収納された用紙の枚数にかかわらず、付勢部による付勢力に対応する押圧力で、ピックアップローラを用紙収納部に収納された用紙に押圧することができる。
【0018】
上記一の局面による画像形成装置において、好ましくは、ピックアップローラにより第1の方向に搬送される用紙を1枚ずつに分離する用紙分離部をさらに備え、用紙分離部は、ピックアップローラが移動するのに伴って移動するように構成されている。このように構成すれば、用紙収納部に収納される用紙の枚数に応じてピックアップローラの用紙に対する押圧位置(第1の位置)が移動した場合にも、用紙分離部がピックアップローラの移動に伴って移動されるので、ピックアップローラと用紙分離部との距離をほぼ一定に保ちながら、ピックアップローラおよび用紙分離部を移動させることができる。これにより、用紙収納部に収納される用紙の枚数にかかわらず、1つの用紙分離部により、第1の方向に搬送される用紙を1枚ずつに分離することができる。
【0019】
この場合、好ましくは、ピックアップローラは、用紙をピックアップローラと用紙分離部との間を通過させながら第1の方向および第2の方向に搬送するように構成され、用紙分離部は、用紙収納部に収納された用紙が第1の搬送経路に沿って第1の方向に搬送された後に移動機構部によりピックアップローラが第1の位置から第2の位置に移動されるのに伴って、用紙がピックアップローラと用紙分離部との間に挟まれた状態で第2の搬送経路に移動されるように構成されている。このように構成すれば、ピックアップローラが第1の位置から第2の位置に移動される際に、用紙がピックアップローラと用紙分離部との間に挟まれているので、容易に、ピックアップローラとともに用紙を移動することができる。これにより、容易に、第1の搬送経路で第1の方向に搬送された用紙を第2の搬送経路に移動させて第2の方向に搬送することができる。
【0020】
上記用紙分離部を備えた構成において、好ましくは、用紙収納部に収納された複数の用紙が積層される方向に、用紙分離部を移動するための移動ガイド部をさらに備え、用紙分離部は、ピックアップローラが移動するのに伴って、用紙が積層される方向に移動ガイド部に沿って移動するように構成されている。このように構成すれば、用紙収納部に収納される用紙の枚数に応じてピックアップローラの用紙に対する押圧位置(第1の位置)が移動した場合にも、用紙分離部がピックアップローラの移動に伴って移動ガイド部により用紙の積層方向に移動されるので、ピックアップローラに当接する用紙収納部に収納された用紙と用紙分離部との位置関係をほぼ一定に保つことができる。これにより、用紙収納部に収納される用紙の枚数にかかわらず、1つの用紙分離部により、第1の方向に搬送される用紙を精度よく1枚ずつに分離することができる。
【0021】
上記移動ガイド部を備えた構成において、好ましくは、移動ガイド部には、移動ガイド部が延びる方向と交差する方向に延びる凹部が形成されており、用紙分離部は、移動ガイド部に嵌まり込んで移動ガイド部に沿って移動する2つのボスを含み、ピックアップローラが第2の位置に移動された際に、2つのボスのうちの1つのボスが移動ガイド部の凹部に入り込むことによって、印刷部の方向に所定角度傾斜するように構成されている。このように構成すれば、ピックアップローラが第2の位置に移動された際に、ピックアップローラと用紙分離部との間に挟まれた用紙が、用紙分離部により印刷部の方向に傾斜されるので、用紙を印刷部の方向に搬送し易くなる。
【0022】
上記一の局面による画像形成装置において、好ましくは、画像形成装置は、縦向きに設置され、ピックアップローラが第1の位置に位置する状態で用紙収納部に収納された用紙が第1の搬送経路に沿って上方向に搬送された後、ピックアップローラが第2の位置に移動されるとともに用紙が第2の搬送経路に移動されて下方向に搬送されることにより印刷部に用紙が供給されるように構成されている。このように構成すれば、横向きに設置する場合に比べて、画像形成装置の設置面積(平面積)を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1および図2は、本発明の一実施形態による昇華型プリンタの外観を示した斜視図である。図3〜図11は、図1に示した本発明の一実施形態による昇華型プリンタの詳細を説明するための図である。まず、図1〜図11を参照して、本発明の一実施形態による昇華型プリンタ100の構成について説明する。なお、本実施形態では、画像形成装置の一例である昇華型プリンタに本発明を適用した場合について説明する。
【0025】
本発明の一実施形態による昇華型プリンタ100は、図1および図2に示すように、筐体10と、筐体10の内部に収容された装置本体20(図3参照)とを備えている。筐体10は、上面に設けられた開閉式の蓋部11と、矢印X1方向側の側面に設けられた開閉式の蓋部12とを含んでいる。また、筐体10の前面には、開口部13が形成されているとともに、筐体10の前面側の傾斜面には、表示部14と、表示部14を見ながら装置本体20の操作を行うための操作部15とが設けられている。
【0026】
また、図2に示すように、筐体10の上面の蓋部11の内側には、用紙200の給紙および排紙を行う際に用紙200が露出される給排紙口16が形成されている。また、筐体10の側面の蓋部12の内側には、用紙収納部80(図4参照)を筐体10の内部に挿入するための用紙収納部挿入口17と、インクシート90(図5参照)が収納されたインクシートカートリッジ91(図5参照)を筐体10の内部に挿入するためのカートリッジ挿入口18とが形成されている。用紙収納部80は、図4に示すように、約0.2mmの厚みを有する用紙200が40枚収納可能に構成されており、用紙200は、用紙収納部80の装置本体20への装着時に、用紙200の長手方向が上下方向(矢印Z1方向および矢印Z2方向)となるように用紙収納部80の内部にセットされる。そして、用紙収納部80は、内部に収納した用紙200の長手方向を上下方向にした状態で、筐体10の矢印X1方向側から矢印X2方向に向かって用紙収納部挿入口17から筐体10の内部に挿入されるように構成されている。また、筐体10の内部には、図5に示すように、後述するプラテンローラ23の近傍から前面に設けられた開口部13まで連続して形成された、なだらかな円弧形状のリブ19が設けられている。
【0027】
装置本体20は、図3に示すように、金属製のシャーシ21と、印刷を行うための印字ヘッド22と、印字ヘッド22に対向するように配置されたプラテンローラ23と、金属製の送りローラ24と、所定の押圧力で送りローラ24を押圧する金属製の押さえローラ25と、板金製の給紙ガイド26と、樹脂製の下部用紙ガイド27と、シート状で弾性変形可能な上部用紙ガイド28(図5参照)とを備えている。ここで、印字ヘッド22と、プラテンローラ23と、送りローラ24と、押さえローラ25とにより、本実施形態による昇華型プリンタ100の印刷部40(図5参照)が構成されている。装置本体20は、さらに、ゴム製の排紙ローラ29と、排紙ローラ29に対向する位置に配置された樹脂製の従動ローラ30と、排紙された用紙200を収納する排紙用紙受け部31と、押し出しローラ32とを備えている。また、装置本体20は、さらに、用紙200を印刷部40に搬送するピックアップローラ33と、ピックアップローラ33近傍に設けられた従動ローラ34と、ピックアップローラ33の位置を移動させる移動機構部50と、用紙分離部60と、用紙分離部60の外側に配置された2つのレール部70とを備えている。また、装置本体20は、上記した複数のローラおよび印字ヘッド22などを駆動させるためのギアが設けられたギア部35と、ギア部35を介してそれぞれのローラを回転させるためのモータ36と、印字ヘッド22を回動させるためのモータ37と、インクシート90が収納されたインクシートカートリッジ91(図5参照)を支持するカートリッジ支持部38(図5参照)とを備えている。
【0028】
また、図3に示すように、シャーシ21は、互いに対向するように配置された一方側面21aと、他方側面21bと、後面21cとを有している。また、シャーシ21の一方側面21aおよび他方側面21bの外側には、それぞれ樹脂製の支持板39aおよび39bが設けられており、支持板39aおよび39bの所定の位置には、シャーシ21の内側に配置されているプラテンローラ23、送りローラ24および押さえローラ25などを回動可能に支持する軸受け部23a、24aおよび25aが一体的に設けられている。
【0029】
また、印字ヘッド22は、図3および図5に示すように、支持軸22aと、プラテンローラ23に対向するように配置されたヘッド部22bと、支持軸22aとヘッド部22bとを連結する一対のアーム部22cとを含んでいる。また、印字ヘッド22は、図5に示すように、モータ37(図3参照)により駆動される図示しない印刷ヘッド移動部材によって、支持軸22aを中心に矢印P1方向および矢印P2方向に回動可能に構成されている。
【0030】
プラテンローラ23は、図3に示すように、支持板39aおよび39bに一体的に設けられた軸受け部23aによって回転可能に支持されている。このプラテンローラ23は、印刷時に用紙200およびインクシート90を印字ヘッド22とともに挟み込んで押圧するように構成されている。送りローラ24は、支持板39aおよび39bに一体的に設けられた軸受け部24aに回転可能に支持されるように構成されている。また、送りローラ24は、シャーシ21の一方側面21aおよび支持板39aの外側に設けられたギア部35を介してモータ36の駆動力が伝達されることにより、回転するように構成されている。押さえローラ25は、支持板39aおよび39bに一体的に設けられた軸受け部25aに回転可能に支持されるように構成されている。
【0031】
板金製の給紙ガイド26は、図5に示すように、用紙分離部60の近傍から印刷部40に向かって延びるような形状に形成されている。樹脂製の下部用紙ガイド27は、給紙ガイド26から連続するように、給紙ガイド26の傾斜角度とほぼ同様の傾斜角度で延びる傾斜部27aと、送りローラ24および押さえローラ25の間に向かって延びる垂直部27bとを含み、傾斜部27aと垂直部27bとが一体的に形成されている。また、下部用紙ガイド27の垂直部27bには、上部用紙ガイド28の矢印Z2方向側の端部が挿入される切欠部27cが形成されている。上部用紙ガイド28は、樹脂製の弾性変形可能なシート状に形成されており、排紙ローラ29の近傍から、下部用紙ガイド27の切欠部27cに向かって延びるように配置されている。また、上部用紙ガイド28は、矢印Z1方向側の端部だけが筐体10の所定の位置に固定されている。
【0032】
排紙ローラ29は、図5に示すように、支持板39a(図3参照)および39b(図3参照)に一体的に形成された軸受け部29a(図3参照)により回転可能に支持されている。また、排紙ローラ29は、シャーシ21の一方側面21aおよび支持板39aの外側に設けられたギア部35を介してモータ36の駆動力が伝達されることにより、回転するように構成されている。従動ローラ30は、支持板39aおよび39bに一体的に形成された軸受け部30a(図3参照)により回転可能に支持されている。排紙用紙受け部31は、排紙ローラ29の矢印Y2方向側に配置され、上側(矢印Z1方向側)が若干矢印Y2方向側に傾斜するように形成されている。これにより、排紙された用紙200は、上側(矢印Z1方向側)が矢印Y2方向側に傾いた状態で排紙用紙受け部31に収容される。
【0033】
押し出しローラ32は、図3に示すように、支持板39aおよび39bに一体的に形成された軸受け部32aにより回動可能に支持された押し出しプレート32bにより支持されている。また、押し出しプレート32bは、図5に示すように、矢印Z1方向側が若干矢印Y2方向側に傾斜するように設けられており、押し出しローラ32が、押し出しプレート32bの回動中心32cよりも矢印Y2方向側に配置されている。具体的には、押し出しプレート32bは、矢印Z2方向側の端部近傍を回動中心32cとして所定角度だけ回動可能に構成されている。押し出しプレート32bの矢印Z1方向側の端部近傍に取り付けられた押し出しローラ32の自重により、押し出しプレート32bが矢印Y2方向に傾斜されている。これにより、排紙ローラ29と従動ローラ30との間を通過して押し出しローラ32に到達する用紙200を、排紙用紙受け部31側に押し出すことが可能である。
【0034】
ここで、本実施形態では、ピックアップローラ33は、図3に示すように、移動機構部50の後述する第1アーム部51および第2アーム部52に形成された軸受け部33aと、用紙分離部60の後述する側壁部61および62に形成された軸受け部33bとにより回転可能に支持されている。また、ピックアップローラ33は、図5に示すように、モータ36(図3参照)からの駆動力が移動機構部50の後述する複数のギア55a〜55dを介して伝達されることにより、矢印P3方向および矢印P4方向に回転するように構成されている。また、ピックアップローラ33は、移動機構部50により、用紙収納部80に収納された用紙200を第1の搬送経路に沿って矢印Z1方向側に搬送するための第1の位置Aと、矢印Z1方向側に搬送された用紙200を印刷部40に向かって第2の搬送経路に沿って矢印Z2方向側に搬送するための第2の位置Bとに移動されるように構成されている。ピックアップローラ33が移動機構部50により移動される具体的な構成については後述する。
【0035】
移動機構部50は、樹脂製であり、図6および図7に示すように、矢印X2方向側に形成された第1アーム部51と、矢印X1方向側に形成された第2アーム部52と、第1アーム部51および第2アーム部52を連結する連結部53と、カム部54(図7参照)と、複数のギア55a〜55d(図7参照)とを含んでいる。また、第1アーム部51、第2アーム部52および連結部53は、一体的に形成されている。また、第1アーム部51と第2アーム部52とは、図6に示すように、連結部53に加えて、板金製の補強部材57により連結されている。これにより、一体的に形成された第1アーム部51、第2アーム部52および連結部53の剛性が高められている。なお、第1アーム部51は、本発明の「アーム部」の一例である。
【0036】
第1アーム部51および第2アーム部52には、図6に示すように、ピックアップローラ33を回転可能に支持する軸受け部33aが形成されている。また、第1アーム部51には、複数のギア55a〜55cを回転可能に支持するギア取付部51a〜51cが形成されている。また、第1アーム部51の矢印Z2方向側の端部近傍には、矢印X2方向に突出する突起部51dが第1アーム部51に一体的に形成されている。突起部51dは、図7および図8に示すように、後述するカム部54のカム溝58gに嵌まり込むとともにカム溝58gに沿って移動するカムフォロアとして機能する。また、第1アーム部51のギア取付部51a〜51cには、それぞれ、ギア55a〜55cが取り付けられ、モータ36からの駆動力がギア部35およびギア55a〜55cを介して、ピックアップローラ33の軸端部に取り付けられたギア55dに伝達される。これにより、ピックアップローラ33を、矢印P3方向および矢印P4方向(図5参照)に回転させることが可能となる。また、第1アーム部51は、図8に示すように、ギア55aの回転中心を回動中心50aとして、矢印Q1方向および矢印Q2方向に回動可能に構成されている。また、第2アーム部52は、この第1アーム部51の回動に伴って、矢印Q1方向および矢印Q2方向に回動するように構成されている。
【0037】
カム部54は、図7および図8に示すように、カム本体部58と、付勢部59とを含んでいる。カム本体部58は、矢印Z2方向に延びるように形成されたギア部58aと、付勢部59を内部に収容する開口部58bと、開口部58bから連続して形成された溝部58cと、ギア部58aと係合するように配置されたウォームホイール58d(図8参照)と、ウォームホイール58dと係合するように配置されたウォーム58e(図8参照)と、ウォーム58eを駆動するモータ58f(図8参照)とを有している。なお、ウォームホイール58d(図8参照)とウォーム58e(図8参照)とによりウォームギアを構成している。カム部54は、モータ58fからの駆動力がウォーム58eおよび58dを介してギア部58aに伝達されることにより、矢印Z1方向および矢印Z2方向に直線移動するように構成されている。また、溝部58cは、図8に示すように、開口部58bから、矢印Y2方向に傾斜しながら矢印Z1方向に延びるように形成されており、矢印Z1方向側の端部近傍では、溝部58cは、矢印Z1方向に平行に延びるように形成されている。また、開口部58bには、圧縮コイルバネからなるバネ部材59aにより支持された付勢部59が収容されている。付勢部59は、バネ部材59aの付勢力に抗する方向(矢印Y2方向)に所定の押圧力が加えられると、矢印Y2方向に移動するように構成されている。また、付勢部59は、溝部58cの内側面に連続するように形成された傾斜部59bを有しており、付勢部59の傾斜部59b、溝部58cおよび開口部58bの内側面とによりカム溝58gが構成されている。また、付勢部59は、傾斜部59bの矢印Y1方向側の端部に連続するように、矢印Z2方向に延びるように形成された平坦部59cを有している。
【0038】
用紙分離部60は、図7に示すように、矢印X2方向側および矢印X1方向側にそれぞれ形成された側壁部61および62と、側壁部61および62を連結する本体部63と、本体部63に形成された3つの分離爪63a、63bおよび63cとを含んでいる。また、側壁部61には、ピックアップローラ33を回転可能に支持するための軸受け部33b(図3参照)と、従動ローラ34を回転可能に支持する軸受け部を兼ねた外側(矢印X2方向側)に突出するボス61aと、ボス61aの矢印Y2方向側に外側に突出するボス61bとが形成されている。ボス61aは、図11に示すように、ボス61bよりも外側(矢印X2方向側)への突出量が大きくなるように形成されており、ボス61aと61bとは、断面半径が実質的に同じになるように形成されている。また、側壁部61は、図8に示すように、ピックアップローラ33の回転中心を回動中心60aとして、第1アーム部51に回動可能に取り付けられている。また、側壁部62には、側壁部61と同様の構成で、軸受け部33bと、従動ローラ34を回転可能に支持する軸受け部を兼ねた外側(矢印X1方向側)に突出するボス62aと、ボス62aの矢印Y2方向側に外側に突出するボス62bとが形成されている。また、側壁部62は、ピックアップローラ33の回転中心を回動中心60aとして、第2アーム部52に回動可能に取り付けられている。また、本体部63に形成された3つの分離爪63a〜63cは、図7および図8に示すように、それぞれ、ピックアップローラ33に対向する側に傾斜面を有しており、ピックアップローラ33により搬送された用紙200の前端部200aがこの傾斜面に当接されることにより、複数の用紙200を1枚ずつに分離するように構成されている。
【0039】
2つのレール部70は、それぞれ、用紙分離部60の側壁部61および62の外側に配置されている。また、レール部70は、図9に示すように、矢印Y1方向および矢印Y2方向に延びるように形成された貫通孔71を有し、その貫通孔71には、用紙分離部60の側壁部61に設けられたボス61aおよび61bが嵌め込まれることにより、用紙分離部60を矢印Y1方向および矢印Y2方向に直線移動させるようにボス61aおよび61bをガイドする機能を有している。すなわち、用紙分離部60は、貫通孔71により、用紙収納部80に収納された用紙200が積層される方向(矢印Y1方向および矢印Y2方向)に直線移動されるように構成されている。なお、貫通孔71は、本発明の「移動ガイド部」の一例である。また、レール部70の貫通孔71の矢印Y1方向側の端部近傍には、矢印Z2方向に延びる切欠部72が形成されている。切欠部72は、図10に示すように、ボス61bが半分程度入り込むことが可能な大きさに形成されている。また、図11に示すように、レール部70を矢印X2方向に貫通しないように形成されている。具体的には、切欠部72は、ボス61aよりも突出長が小さいボス61bだけが入り込むことが可能なように構成されている。また、切欠部72は、図10に示すように、ボス61aが貫通孔71の矢印Y1方向側の最も端部に位置しているときに、ボス61bが入り込むように配置されている。また、用紙分離部60は、ボス61bが切欠部72に入り込むことにより、矢印Z2方向側が矢印Y1方向側に傾斜される。なお、切欠部72は、本発明の「凹部」の一例である。
【0040】
また、図5に示すように、インクシートカートリッジ91は、インクシート90を供給するための供給ボビン92と、供給されたインクシート90を巻き取るための巻取ボビン93とを備えている。また、供給ボビン92および巻取ボビン93に巻き付けられたインクシート90は、供給ボビン92と巻取ボビン93との間で、外部に露出された状態となる。また、インクシート90は、Y色(イエロー色)インクシート、M色(マゼンダ)インクシートおよびC色(シアン色)インクシートの3色のインクシートが順に繋げられて構成されている。
【0041】
図12〜図14は、図1に示した本発明の一実施形態による昇華型プリンタのピックアープローラの移動動作について説明するための図である。次に、図8および図12〜14を参照して、本実施形態による昇華型プリンタ100のピックアープローラ33の移動動作について説明する。
【0042】
まず、図8に示すように、初期状態として、第1アーム部51の突起部51dは、カム溝58gの矢印Z1方向側の端部近傍に位置しており、突起部51dは、移動機構部50の回動中心50aに対して矢印Y2方向側に位置している。これにより、ピックアップローラ33は、回動中心50aよりも矢印Y1方向側に位置しており、用紙収納部80に収納された用紙200から離間した状態となる。この際、用紙分離部60は、移動機構部50に連動して、ボス61aが貫通孔71の矢印Y1方向側の最も端部に移動されており、ボス61bの一部が切欠部72に入り込んだ状態となっている。
【0043】
そして、図12に示すように、モータ58fによりウォーム58eを駆動することによって、カム部54を矢印Z1方向に移動すると、突起部51dはカム溝58gに沿って徐々に矢印Y1方向側に移動される。これにより、第1アーム部51が矢印Q1方向に回動されるので、ピックアップローラ33は矢印Y2方向側へ移動される。そして、ピックアップローラ33が用紙収納部80に収納された用紙200に当接されると、第1アーム部51の矢印Q1方向への回動が規制されるので、突起部51dの矢印Y1方向への移動が規制される。また、用紙分離部60は、ピックアップローラ33が矢印Y2方向側へ移動されると、矢印Z2方向側が矢印Y1方向側に傾斜していたのが矢印Y2方向側に押し戻され、ボス61bが切欠部72から貫通孔71側に戻される。そして、用紙分離部60は、ピックアップローラ33が矢印Y2方向側に移動するのに連動して、貫通孔71に沿って矢印Y2方向に移動される。
【0044】
この状態で、カム部54を矢印Z1方向にさらに移動させると、図13に示すように、付勢部59の傾斜部59bが突起部51dにより矢印Y2方向および矢印Z2方向に押圧される。そして、矢印Y2方向への押圧力が所定の大きさを超えると、バネ部材59aの付勢力に抗して付勢部59が矢印Y2方向に移動されて、カム部54が矢印Z1方向にさらに移動される。これにより、突起部51dが付勢部59の平坦部59cまで移動され、突起部51dは、付勢部59により矢印Y1方向に付勢される。この付勢力により、第1アーム部51は、矢印Q1方向に付勢されるので、用紙収納部80の用紙200は、所定の付勢力でピックアップローラ33により押圧される。この状態のピックアップローラ33の位置が、用紙収納部80に収納された用紙200を第1の搬送経路に沿って矢印Z1方向側に搬送するための上記した第1の位置Aである。
【0045】
また、図14に示すように、用紙収納部80に収納された用紙200の枚数に応じて、ピックアップローラ33の用紙200に当接する位置(第1の位置A)が移動された場合にも、突起部51dは付勢部59により矢印Y1方向に付勢される。すなわち、用紙200が1枚である場合にも、突起部51dは付勢部59により矢印Y1方向に付勢される。また、用紙収納部80に収納された用紙200の枚数に応じて、ピックアップローラ33の用紙200に当接する位置(第1の位置A)が移動された場合に、用紙分離部60はピックアップローラ33の移動に伴って、レール部70の貫通孔71に沿って矢印Y1方向および矢印Y2方向に直線移動されるので、ピックアップローラ33と当接する用紙200の表面と、ピックアップローラ33と、3つの分離爪63a〜63cとの相対的な位置関係がほぼ一定に保たれる。これにより、用紙収納部80に収納された用紙200の枚数にかかわらず、分離爪63a〜63cにより用紙200を精度よく1枚ずつに分離することが可能となる。
【0046】
そして、カム部54が矢印Z2方向へ戻されると、図12に示すように、付勢部59の平坦部59cに当接している突起部51dは、傾斜部59bに沿って徐々に矢印Y2方向へ移動される。カム部54をさらに矢印Z2方向へ移動すると、図8に示すように、突起部51dは、傾斜部59bから溝部58cに移動され、そのまま溝部58cの矢印Z1方向側の端部まで移動される。これにより、ピックアップローラ33は用紙収納部80に収納された用紙200から矢印Y1方向に離間されるとともに、用紙分離部60はピックアップローラ33の移動に伴ってレール部70の貫通孔71の矢印Y1方向側の端部まで移動される。そして、用紙分離部60は、ボス61bが切欠部72に入り込むことによって、矢印Z2方向側が矢印Y1方向側に傾斜される。この状態のピックアップローラ33の位置が、用紙200を印刷部40に向かって第2の搬送経路に沿って矢印Z2方向側に搬送するための上記した第2の位置Bである。
【0047】
図15〜図20は、図1に示した本発明の一実施形態による昇華型プリンタの用紙搬送動作および印刷動作を説明するための図である。次に、図3、図5、図8および図15〜図20を参照して、本実施形態による昇華型プリンタ100の用紙搬送動作および印刷動作について説明する。
【0048】
まず、印刷開始前の状態では、図5に示すように、印字ヘッド22のヘッド部22bが、プラテンローラ23に対して矢印P2方向に離間された位置に保持されている。また、ピックアップローラ33は、上記したピックアップローラ33の移動動作により、用紙収納部80に収納された用紙200から矢印Y1方向に離間された位置(第2の位置B)に保持されている。
【0049】
そして、上記したピックアップローラ33の移動動作により、図15に示すように、カム部54が矢印Z1方向に移動されて、ピックアップローラ33は、用紙収納部80に収納された用紙200に当接する第1の位置Aに移動される。この際、ピックアップローラ33は、第1アーム部51の突起部51dが付勢部59により所定の付勢力で矢印Y1方向に付勢されているので、用紙収納部80の用紙200を所定の付勢力で押圧している状態である。
【0050】
次に、モータ36(図3参照)からの駆動力がギア部35(図3参照)および移動機構部50の複数のギア55a〜55d(図8参照)を介してピックアップローラ33に伝達され、ピックアップローラ33が矢印P4方向に回転される。これにより、ピックアップローラ33に当接された用紙200は矢印Z1方向に搬送されて、前端部200aが3つの分離爪63a〜63cの傾斜面に当接される。これにより、用紙200が重なって搬送されていた場合でも、用紙200が1枚ずつに分離され、1枚の用紙200だけがピックアップローラ33と分離爪63a〜63cとの間に挟まれた状態で矢印Z1方向に搬送される。この際、搬送された用紙200は、筐体10の上面に設けられた給排紙口16から筐体10の外側に露出される。
【0051】
その後、矢印Z1方向への用紙200の搬送が継続されて、用紙200の後端部200bがピックアップローラ33近傍の所定の位置まで到達されると、ピックアップローラ33の矢印P4方向への回転が停止される。すなわち、用紙200の矢印Z1方向への搬送が停止される。そして、図16に示すように、上記したピックアップローラ33の移動動作により、ピックアップローラ33は第2の位置Bに移動される。この際、矢印Z1方向に搬送された用紙200は、ピックアップローラ33と用紙分離部60との間に挟まれた状態で、第2の位置Bに移動されるピックアップローラ33とともに第2の搬送経路に移動される。また、ピックアップローラ33が第2の位置Bに移動されるのに伴って、用紙分離部60のボス61bおよび62bがレール部70の切欠部72に入り込むことによって、用紙分離部60は、矢印Z2方向側が矢印Y1方向側に傾斜される。すなわち、用紙分離部60は、印刷部40の方向に向かって所定角度傾斜される。この際、用紙200の後端部200b近傍が、傾斜された3つの分離爪63a〜63cによって印刷部40の方向に向けられるので、用紙200が確実にピックアップローラ33に当接される。
【0052】
次に、モータ36(図3参照)からの駆動力がギア部35(図3参照)および移動機構部50の複数のギア55a〜55d(図8参照)を介してピックアップローラ33に伝達されることにより、ピックアップローラ33が矢印P3方向に回転される。これにより、用紙200は矢印Z2方向に搬送され、給紙ガイド26および下部用紙ガイド27に導かれながら後端部200bが上部用紙ガイド28に到達される。この際、用紙200は、3つの分離爪63a〜63cにより後端部200bが印刷部40の方向に向けられているので、ピックアップローラ33により搬送される際に、印刷部40の方向に搬送され易くなっている。その後、図17に示すように、弾性変形可能なシート状に形成された上部用紙ガイド28は、用紙200の後端部200bにより容易に弾性変形されるので、用紙200は、上部用紙ガイド28と下部用紙ガイド27との間を通過しながら送りローラ24と押さえローラ25との間に導かれる。そして、用紙200は、図18に示すように、モータ36(図3参照)を駆動源とする送りローラ24により、送りローラ24と押さえローラ25との間を通過しながら給紙方向(矢印T1方向)へ搬送される。その後、用紙200は、所定の位置まで搬送され、図示しない用紙センサにより頭出しが行われる。この際、用紙200の後端部200bは、筐体10の内部に形成された円弧形状のリブ19に沿って開口部13まで導かれ、開口部13から筐体10の外側に露出される。なお、給紙時には、モータ36からの駆動力はインクシートカートリッジ91の巻取ボビン93には伝達されず、供給ボビン92に巻きつけられたインクシート90は、巻取ボビン93によって巻き取られない。
【0053】
次に、図19に示すように、モータ37(図3参照)からの駆動力がギア部35を介して図示しない印刷ヘッド移動部材に伝達されることにより、ヘッド部22bが矢印P1方向に回動される。これにより、印字ヘッド22はインクシート90および用紙200を押圧する位置に移動されるとともに、さらに矢印P1方向に駆動力が加えられることにより、ヘッド部22bが、インクシート90(Y色インクシート)および用紙200を介して、プラテンローラ23に押圧される。そして、モータ36が駆動するのに伴って、ギア部35を介して、送りローラ24が回転し、用紙200は、排紙方向(矢印U1方向)に搬送される。また、モータ36の駆動力がギア部35を介して巻取ボビン93にも伝達されることにより、供給ボビン92に巻き付けられたインクシート90が巻取ボビン93に巻き取られる。これにより、用紙200およびインクシート90は、ともに排紙方向(矢印U1方向)に搬送されながら、インクシート90(Y色インクシート)のインクが連続して用紙200に転写される。
【0054】
ここで、用紙200は、給紙時とは異なり上部用紙ガイド28の矢印Y1方向側を通って搬送される。具体的には、排紙方向(矢印U1方向)に搬送される用紙200の前端部200aが上部用紙ガイド28に到達されると、用紙200は、排紙ローラ29の方向へ延びる上部用紙ガイド28に沿って、排紙ローラ29と従動ローラ30との間に導かれる。この際、上部用紙ガイド28の矢印Z2方向側の端部が下部用紙ガイド27の切欠部27cに挿入されていることによって、用紙200の前端部200aが上部用紙ガイド28の矢印Y2方向側に搬送されるのを規制されている。そして、排紙ローラ29に到達された用紙200は、排紙方向(矢印U1方向)への搬送がさらに継続されることにより、押し出しローラ32の矢印Y2方向側を通過しながら、後端部200bが印字ヘッド22を越えるまで搬送される。これにより、用紙200へのY色(イエロー色)インクシートの印刷が終了される。
【0055】
次に、Y色(イエロー色)インクシートの印刷が終了されると、モータ37の駆動力が、ギア部35を介して印字ヘッド22に伝達されることにより、印字ヘッド22が、矢印P2方向に回動される。これにより、印字ヘッド22のヘッド部22bがプラテンローラ23に対して離間された位置に移動される。
【0056】
そして、モータ36が駆動するのに伴って、ギア部35を介して、送りローラ24が回転することにより、用紙200は給紙方向(矢印T1方向)に再び搬送され、図示しない用紙センサによって、用紙200の頭出しが行われる。また、給紙方向(矢印T1方向)に用紙が搬送される際には、ギア部35によって巻取ボビン93に駆動力は伝達されないため、供給ボビン92に巻き付けられたインクシート90が巻取ボビン93に巻き取られることなく、用紙200のみが給紙方向(矢印T1方向)に搬送される。
【0057】
その後、M色(マゼンタ色)インクシートおよびC色(シアン色)インクシートについて、図18および図19に示した上記のY色(イエロー色)インクシートを印刷する際の印刷動作と同様の動作が繰り返し行われる。
【0058】
そして、全ての色のインクシート90の印刷が終了されると、図20に示すように、用紙200は、後端部200bが排紙ローラ29を通過するまで搬送される。その後、用紙200は、押し出しローラ32により、矢印Y2方向側に押し出されるように、排紙用紙受け部31に落下される。そして、印字ヘッド22のヘッド部22bが、モータ37により駆動される図示しない印刷ヘッド移動部材によってプラテンローラ23に対して矢印P2方向に離間された位置まで回動され、用紙200への印刷動作が終了される。
【0059】
本実施形態では、上記のように、用紙収納部80に収納された用紙200を搬送するための第1の位置Aと、用紙収納部80に収納された用紙200が搬送された後に印刷部40に向かって用紙200を搬送するための第2の位置Bとにピックアップローラ33の位置を移動させる移動機構部50を設け、ピックアップローラ33が第1の位置Aに位置する状態で用紙収納部80に収納された用紙200が第1の搬送経路に沿って矢印Z1方向側に搬送された後、ピックアップローラ33が第2の位置Bに移動されるとともに用紙200が第2の搬送経路に移動されて矢印Z2方向側に搬送されることにより印刷部40に用紙200が供給されるように構成することによって、用紙200は、用紙収納部80から第1の搬送経路に沿って搬送された後、第2の搬送経路に移動されて印刷部40に搬送されるので、用紙収納部80から印刷部40まで1つの搬送経路で用紙200を搬送する場合と異なり、用紙収納部80から印刷部40までの搬送経路をL字形状やU字形状に形成する必要がない。その結果、用紙200をL字形状やU字形状に曲げることなく、用紙収納部80から印刷部40に用紙200を搬送することができる。
【0060】
また、本実施形態では、第1アーム部51を回動するためのカム溝58gを含むカム部54を設け、カム溝58gに嵌まり込むように構成された突起部51dを第1アーム部51に形成し、カム部54が移動するのに伴って突起部51dがカム溝58gに沿って移動することにより所定の回動中心50aを中心として回動するように第1アーム部51を構成することによって、カム溝58gにより突起部51dが容易に移動されるとともに、突起部51dの移動に伴って第1アーム部51が容易に回動されるので、容易に、ピックアップローラ33の位置を第1の位置Aおよび第2の位置Bに移動させることができる。
【0061】
また、本実施形態では、カム部54に第1アーム部51の突起部51dを付勢する付勢部59を設け、カム部54が移動するのに伴って突起部51dがカム溝58gに沿って所定の位置まで移動された際に、付勢部59により第1アーム部51の突起部51dが付勢されることによって、第1アーム部51に取り付けられたピックアップローラ33が付勢部59による付勢力に対応する押圧力で用紙収納部80に収納された用紙200を押圧するように構成することによって、付勢部59による付勢力に対応する押圧力で、ピックアップローラ33を用紙収納部80に収納された用紙200に押圧することができる。
【0062】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0063】
たとえば、上記実施形態では、画像形成装置の一例としての昇華型プリンタに本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限らず、用紙が用紙収納部から印刷部へ搬送される画像形成装置であれば、昇華型プリンタ以外の他の画像形成装置にも適用可能である。
【0064】
また、上記実施形態では、カム部が移動することにより移動機構部を回動させる例を示したが、本発明はこれに限らず、ピックアップローラを第1の位置と第2の位置とに移動させるように移動機構部が移動可能であれば、たとえば、カム部を介さずにモータからの駆動力を直接移動機構部に伝達することにより移動機構部を移動させてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、付勢部を圧縮コイルバネからなるバネ部材により支持する例を示したが、本発明はこれに限らず、付勢部が移動機構部の突起部を所定の方向に付勢可能であれば、たとえば、付勢部自体を板バネとして構成し、付勢部としての板バネをカム溝の傾斜部に沿った形状に形成することにより、付勢部に当接される突起部を板バネの撓みを利用して所定の方向に付勢してもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、ピックアップローラの位置が第2の位置に移動された場合に、用紙分離部を印刷部の方向に所定角度傾斜させる例を示したが、本発明はこれに限らず、ピックアップローラの位置が第2の位置に移動された場合にも、用紙分離部を傾斜させなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施形態による昇華型プリンタの外観を示した斜視図である。
【図2】図1に示した一実施形態による昇華型プリンタの外観を示した斜視図である。
【図3】図1に示した一実施形態による昇華型プリンタの内部構造を示した正面図である。
【図4】図1に示した一実施形態による昇華型プリンタの用紙収納部を示した斜視図である。
【図5】図1に示した一実施形態による昇華型プリンタの内部構造を示した断面図である。
【図6】図1に示した一実施形態による昇華型プリンタの移動機構部を示した斜視図である。
【図7】図1に示した一実施形態による昇華型プリンタの移動機構部の近傍を示した斜視図である。
【図8】図1に示した一実施形態による昇華型プリンタの移動機構部の近傍を示した断面図である。
【図9】図1に示した一実施形態による昇華型プリンタのレール部を示した側面図である。
【図10】図1に示した一実施形態による昇華型プリンタのレール部を示した側面図である。
【図11】図10の100−100線に沿った断面図である。
【図12】図1に示した本発明の一実施形態による昇華型プリンタのピックアープローラの移動動作について説明するための図である。
【図13】図1に示した本発明の一実施形態による昇華型プリンタのピックアープローラの移動動作について説明するための図である。
【図14】図1に示した本発明の一実施形態による昇華型プリンタのピックアープローラの移動動作について説明するための図である。
【図15】図1に示した本発明の一実施形態による昇華型プリンタの用紙搬送動作および印刷動作を説明するための図である。
【図16】図1に示した本発明の一実施形態による昇華型プリンタの用紙搬送動作および印刷動作を説明するための図である。
【図17】図1に示した本発明の一実施形態による昇華型プリンタの用紙搬送動作および印刷動作を説明するための図である。
【図18】図1に示した本発明の一実施形態による昇華型プリンタの用紙搬送動作および印刷動作を説明するための図である。
【図19】図1に示した本発明の一実施形態による昇華型プリンタの用紙搬送動作および印刷動作を説明するための図である。
【図20】図1に示した本発明の一実施形態による昇華型プリンタの用紙搬送動作および印刷動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0068】
10 筐体
33 ピックアップローラ
40 印刷部
50 移動機構部
50a 回動中心
51 第1アーム部(アーム部)
51d 突起部
54 カム部
58g カム溝
59 付勢部
60 用紙分離部
61a、61b、62a、62b ボス
71 貫通孔(移動ガイド部)
72 切欠部
80 用紙収納部
100 昇華型プリンタ(画像形成装置)
200 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙に画像を印刷する印刷部と、
前記印刷部を収容する筐体と、
前記筐体に収容され、前記用紙を収納する用紙収納部と、
前記用紙を搬送するピックアップローラと、
前記用紙収納部に収納された前記用紙を搬送するための第1の位置と、前記用紙収納部に収納された前記用紙が搬送された後に前記印刷部に向かって前記用紙を搬送するための第2の位置とに前記ピックアップローラの位置を移動させる移動機構部とを備え、
前記ピックアップローラが前記第1の位置に位置する状態で前記用紙収納部に収納された前記用紙が第1の搬送経路に沿って第1の方向に搬送された後、前記ピックアップローラが前記第2の位置に移動されるとともに前記用紙が第2の搬送経路に移動されて第2の方向に搬送されることにより前記印刷部に前記用紙が供給されるように構成されている、画像形成装置。
【請求項2】
前記移動機構部は、前記ピックアップローラが取り付けられた回動可能なアーム部を含み、
前記ピックアップローラは、前記アーム部が回動することにより、前記第1の位置および前記第2の位置に移動されるように構成されている、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記アーム部を回動するためのカム溝を含むカム部をさらに備え、
前記アーム部は、前記カム溝に嵌まり込むように構成された突起部を有し、
前記カム部が移動するのに伴って前記アーム部の突起部が前記カム溝に沿って移動することにより、前記アーム部が所定の回動中心を中心として回動するように構成されている、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記カム部は、前記アーム部の前記突起部を付勢する付勢部をさらに含み、
前記カム部が移動するのに伴って前記アーム部の突起部が前記カム溝に沿って所定の位置まで移動された際に、前記付勢部により前記アーム部の突起部が付勢されることによって、前記アーム部に取り付けられた前記ピックアップローラが前記付勢部による付勢力に対応する押圧力で前記用紙収納部に収納された前記用紙を押圧するように構成されている、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記付勢部は、前記用紙収納部に収納された前記用紙の枚数に応じて前記突起部に対する前記付勢部の付勢位置を移動可能なように構成されている、請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記ピックアップローラにより前記第1の方向に搬送される前記用紙を1枚ずつに分離する用紙分離部をさらに備え、
前記用紙分離部は、前記ピックアップローラが移動するのに伴って移動するように構成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記ピックアップローラは、前記用紙を前記ピックアップローラと前記用紙分離部との間を通過させながら前記第1の方向および前記第2の方向に搬送するように構成され、
前記用紙分離部は、前記用紙収納部に収納された前記用紙が前記第1の搬送経路に沿って前記第1の方向に搬送された後に前記移動機構部により前記ピックアップローラが前記第1の位置から前記第2の位置に移動されるのに伴って、前記用紙が前記ピックアップローラと前記用紙分離部との間に挟まれた状態で前記第2の搬送経路に移動されるように構成されている、請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記用紙収納部に収納された複数の前記用紙が積層される方向に、前記用紙分離部を移動するための移動ガイド部をさらに備え、
前記用紙分離部は、前記ピックアップローラが移動するのに伴って、前記用紙が積層される方向に前記移動ガイド部に沿って移動するように構成されている、請求項6または7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記移動ガイド部には、前記移動ガイド部が延びる方向と交差する方向に延びる凹部が形成されており、
前記用紙分離部は、前記移動ガイド部に嵌まり込んで前記移動ガイド部に沿って移動する2つのボスを含み、前記ピックアップローラが前記第2の位置に移動された際に、前記2つのボスのうちの1つのボスが前記移動ガイド部の前記凹部に入り込むことによって、前記印刷部の方向に所定角度傾斜するように構成されている、請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記画像形成装置は、縦向きに設置され、
前記ピックアップローラが前記第1の位置に位置する状態で前記用紙収納部に収納された前記用紙が第1の搬送経路に沿って上方向に搬送された後、前記ピックアップローラが前記第2の位置に移動されるとともに前記用紙が第2の搬送経路に移動されて下方向に搬送されることにより前記印刷部に前記用紙が供給されるように構成されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−280329(P2009−280329A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132891(P2008−132891)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】