説明

画像形成装置

【課題】多くの熱量を要する定着のための複数の定着手段を有する画像形成装置において、高温オフセットや分離性に問題がなく、ペーパーブリスターの発生を抑制して高品質の定着が得られ、かつ比較的低エネルギーで効率的に定着することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】定着手段として加熱加圧手段及び非接触加熱手段を有し、より多くの熱を発生する非接触加熱手段からの排気を加熱加圧手段に向けて流すための排気流路を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体上に形成されたトナー画像を定着するための定着手段として、加熱加圧手段及び非接触加熱手段を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
感光体(感光ドラム)に静電潜像を形成し、それをトナーで現像し、トナー画像を紙などに転写して定着する電子写真方式の画像形成装置が、広く使用されている。
【0003】
乾式の現像剤を用いて静電潜像を現像する現像方式として、トナーのみを用いる一成分現像法及びトナーとキャリヤを用いる二成分現像法が知られている。
【0004】
一成分現像法では一般的に装置の簡略化、小型化、低コスト化の面で有利であるが、現像装置の寿命が短い。二成分現像法では長寿命に有利であるが、現像された像に磁気ブラシ痕が発生する等の課題を有している。
【0005】
また近年では、トナー粒子径が小さく、トナー画像の乱れもおきにくい液体現像剤を用いる湿式現像方式も用いられるようになってきている。
【0006】
液体現像剤としては、溶媒としての「キャリヤ液」中にトナーを高濃度に分散させた液体現像剤を用いるのが一般的である。
【0007】
感光体上の潜像を現像する方式は、一成分現像剤または二成分現像剤を用いる乾式現像法、そして液体現像剤を用いる湿式現像法とで異なるが、何れも現像により感光体上に顕像としてのトナー画像を形成する。
【0008】
このトナー画像は、記録媒体に転写される。あるいは、一旦中間転写体などに一次転写された後、記録媒体に二次転写される。
【0009】
記録媒体に転写されたトナー画像は、定着装置により加圧、加熱されるなどして、通常は紙である記録媒体に定着される。
【0010】
一般的な定着手段としては、ローラ定着器のように、加熱されたローラ等で記録媒体を挟むようにして、そのニップ部で加圧しながら加熱する加熱加圧手段が用いられる。
【0011】
またニップ部での接触加圧を避けるため、記録媒体と非接触の位置にヒータ等の熱源を配置し、放射熱等で加熱定着する非接触加熱手段が用いられることもある。
【0012】
何れにしても、トナー画像の定着にはトナーを融着するため多大の熱エネルギーを要し、また定着品質確保のため適切な定着温度の制御が必要とされる。
【0013】
特に液体現像剤を用いて現像されたトナー画像の場合、トナー画像のトナー間、トナー紙間には溶媒(以後、キャリヤ液ともいう)が含まれており、通常にトナー融着させるのみの定着より多くのエネルギー投入が必要とされる。
【0014】
また、キャリヤ液によって、トナー画像の定着性の低下や、加圧定着時の画像のつぶれや乱れが生じたり、裏面に表面のトナー画像が透けて見える裏うつりが加速されるといった問題もある。
【0015】
一般的に、加熱加圧手段で多量の熱エネルギーを供給するには、ニップを拡大してより多くの熱エネルギーを付加することもできるが、定着器が大型になりやすい。またニップ時間を長くすると、コート紙などの場合、ブリスターと呼ばれる火ぶくれ現象が起こりやすくなる。また高温オフセットや分離性に問題が生じてくることもある。
【0016】
また液体現像剤に対しては、定着時に未定着トナー画像を有する記録媒体から溶媒(キャリヤ液)を揮発させることで効率的に除去するという課題も研究されてきた。
【0017】
これらに対して、複数の定着手段(加熱加圧手段)を用いて多段定着の形態としたり(例えば、特許文献1、3参照)、また非接触加熱手段を設けたり(例えば、特許文献2参照)する定着技術が開発されてきた。
【0018】
特許文献1に記載の技術によれば、複数のローラ定着器(加熱加圧手段)でニップを分割し、定着温度は最下流側の定着器が最高になるよう設定することでブリスターの発生を防止している。また特許文献2によれば、板状の発熱体(非接触加熱手段)により前加熱した後、同じく板状の発熱体で加熱した圧接加熱手段で定着し、省電力でウォームアップ時間も短くする技術が提唱されている。特許文献3によれば、2つのローラ定着器(加熱加圧手段)を多段配置し、第1定着器からの排熱経路が第2定着器を経由するよう構成することで、エネルギーの効率利用を図る技術が提唱されている。
【特許文献1】特開平11−202675号公報
【特許文献2】特開平10−133506号公報
【特許文献3】特開2006−58646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上述したように、例えば記録媒体から溶媒を揮発させるなど、多くの熱量を要する定着の場合、定着品質に問題を生じさせないこと、かつ低エネルギーで効率的に定着することが課題であった。
【0020】
特許文献1に記載の技術では、複数のローラ定着器により定着温度の高騰を抑え、ブリスター防止などを行っているが、特に溶媒の揮発等、多くの熱量を要する場合には熱供給が不十分である。また、加熱加圧手段を複数配置しており、複数のニップ部による高温オフセットや分離性の問題も十分には解消されない。
【0021】
特許文献2に記載の技術では、板状の発熱体による前加熱を行っているが、非接触の加熱方式であり、このままでは多量の熱が放射によって拡散してしまい熱効率がよくない。
【0022】
また特許文献3に記載の技術では、ローラ定着器からの排熱経路が別のローラ定着器を経由するようにしているが、何れも加熱加圧手段としてローラを圧接して定着させているため、排熱の熱量がそれほど大きくなく、熱効率向上を期待できない。また溶媒の揮発促進も不十分であり、複数のニップ部による高温オフセットや分離性の問題も十分には解消されない。
【0023】
本発明は、上記のような技術的課題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、多くの熱量を要する定着のための複数の定着手段を有する画像形成装置において、高温オフセットや分離性に問題がなく、ペーパーブリスターの発生を抑制して高品質の定着が得られ、かつ比較的低エネルギーで効率的に定着することができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有するものである。
【0025】
1. 記録媒体上に形成されたトナー画像を定着するための定着手段として、加熱された部材を前記記録媒体に接触させ、加圧しながら加熱する加熱加圧手段と、前記記録媒体を、非接触の熱源からの熱放射により加熱する非接触加熱手段と、を有する画像形成装置であって、前記非接触加熱手段からの排気を前記加熱加圧手段に向けて流すための排気流路を有することを特徴とする画像形成装置。
【0026】
2. 前記排気流路は、前記非接触加熱手段からの排気を前記加熱加圧手段に向けて流さないようにするための流路変更手段を有することを特徴とする1に記載の画像形成装置。
【0027】
3. 前記流路変更手段は、前記加熱加圧手段の温度に応じて流路を変更することを特徴とする2に記載の画像形成装置。
【0028】
4. 前記非接触加熱手段は、前記加熱加圧手段の前記記録媒体通過方向下流側に配置されていることを特徴とする1から3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【0029】
5. 前記記録媒体上のトナー画像は、液体現像剤を用いて現像されたことを特徴とする1から4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る画像形成装置においては、多くの熱量を要する定着のために、定着手段として加熱加圧手段及び非接触加熱手段を有し、より多くの熱を発生する非接触加熱手段からの排気を加熱加圧手段に向けて流すための排気流路を有する。これにより、高温オフセットや分離性に問題がなく、ペーパーブリスターの発生を抑制して高品質の定着が得られ、かつ比較的低エネルギーで効率的に定着を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明に係る画像形成装置の一実施形態を、図を参照して説明する。
【0032】
液体現像剤を用いる液体現像は、複写機、簡易印刷機、プリンタなどの画像形成装置に利用される。これらには、一般的に電子写真方式の画像形成プロセスが、共通して用いられている。まずその電子写真方式による湿式の画像形成部を、図1を参照して説明し、さらに液体現像剤を用いて現像され、記録媒体に転写された定着前のトナー画像を加熱定着する定着装置について、その構成と機能動作を説明する。
【0033】
(画像形成部の構成と機能動作)
図1を用いて、本実施形態の画像形成装置におけるトナー画像形成部の構成と動作の例を説明する。図1は、湿式画像形成装置におけるトナー画像形成部と転写装置、定着装置の概略構成例を示す断面図である。
【0034】
図1において、1は感光体ドラムであり、像担持体として機能する。トナー画像形成部10はこの感光体ドラム1を中心に、その周囲に配設された、前記感光体ドラム1の表面を均一に帯電させる帯電装置2、帯電した感光体ドラム1上にLEDまたはレーザビームを照射して静電潜像を形成する露光装置3、その静電潜像を、液体現像剤を用いて現像する液体現像装置4、現像されたトナー像が転写される中間転写体5、そして転写後の感光体ドラム1の表面に残存する液体現像剤を除去するクリーニング装置6などを備える。
【0035】
液体現像装置4は、一般的には、表面に液体現像剤の薄層を担持し、像担持体である感光体ドラム1上の潜像を現像する現像ローラ41、その表面に液体現像剤8を供給する現像剤槽44等を備える。
【0036】
また、液体現像装置4の前後には、予め液体現像剤の一部を塗布したり、回収したりする装置を設ける場合もある。ここでは、液体現像装置4の後に、現像されたトナー像から余分な液体現像剤を除去するスクイズ装置61を設けている。
【0037】
感光体ドラム1上の現像されたトナー像は、中間転写体5ではなく、そのまま直接に記録用紙などの記録媒体7に転写される形態であってもよい。本実施形態では、中間転写体5に一次転写されたトナー像を、転写ローラ51を用いて、再度記録媒体7に転写(二次転写)するような構成としている。記録媒体7としては通常紙が用いられ、以降、本実施形態では記録媒体7は記録紙であるとして説明する(以後、記録紙7と呼ぶ)。
【0038】
また図1においては、トナー画像形成部10が1組のみ配置されているが、カラー画像形成のために、中間転写体5の周囲に複数組配置されていてもよい。カラー現像の方式、中間転写の有無などは任意に設定すればよく、それに合わせた任意の構成配置をとることができる。
【0039】
感光体ドラム1は、図1に示す矢印A方向に回転し、帯電装置2は、回転する感光体ドラム1の表面をコロナ放電などにより数百V程度に帯電させる。帯電装置2より感光体ドラム回転方向下流側においては、露光装置3から照射されたレーザビームにより、表面電位が百V程度以下に低下させられた静電潜像が形成される。
【0040】
露光装置3のさらに下流側には、液体現像装置4が配設されており、感光体ドラム1に形成された静電潜像が、液体現像剤8を用いて現像される。
【0041】
液体現像装置4には、絶縁性の溶媒(以後キャリヤ液とも呼称する)中にトナーを分散させた液体現像剤8が現像剤槽44内に収容されており、現像ローラ41表面に液体現像剤8が供給され、現像ローラ41上には液体現像剤8の薄層が担持される。
【0042】
さらに現像ローラ41と感光体ドラム1の静電潜像との電位差により、現像ローラ41上に担持された液体現像剤8の薄層内のトナー粒子が感光体ドラム1上の静電潜像に移動して、静電潜像が現像される。
【0043】
感光体ドラム1上の現像されたトナー像には、液体現像剤8、すなわちトナーとキャリヤ液が含まれている。スクイズ装置61は、例えばスクイズローラであり、現像されたトナー像から余分なキャリヤ液を除去する。スクイズローラ上のキャリヤ液は、ブレード62で除去する。
【0044】
中間転写体5は、図1に示す矢印B方向に回転し、同様に接触回転する感光体ドラム1とのニップ部でバイアス電圧が印加されることにより、感光体ドラム1上の現像されたトナー像が中間転写体5上に一次転写される。
【0045】
カラー画像形成のために、トナー画像形成部10が中間転写体5の周囲に複数組配置されている場合は、各トナー画像形成部で現像された各色のトナー画像が中間転写体5上で重ね合わされるようにそれぞれ一次転写される。
【0046】
トナー画像形成部10において、中間転写体5の下流側には、一次転写後に感光体ドラム1の表面上に残存する液体現像剤8を除去するクリーニング装置6(例えば、クリーナブレード)が配設されている。このクリーニング装置6により感光体ドラム1上に残存する液体現像剤8が除去される。
【0047】
中間転写体5上に一次転写されたトナー像は、中間転写体5の周速と同速度で図1の矢印C方向に搬送される記録紙7が転写ローラ51とのニップ部で挟持され、バイアス電圧を印加されることで、記録紙7上に二次転写される。
【0048】
転写ローラ51によりトナー像が転写された記録紙7は、定着装置9へと搬送され、加熱定着の上、排出される。
【0049】
定着時のトナー画像の加熱手段とそれによるキャリヤ液の揮発及び定着についての詳細は、定着装置9の実施形態として後述する。
【0050】
(現像剤の構成)
現像に用いる液体現像剤8について説明する。液体現像剤8は、溶媒であるキャリヤ液体中に着色されたトナー粒子を高濃度で分散している。また液体現像剤8には、分散剤、荷電制御剤などの添加剤を適宜、選んで添加してもよい。
【0051】
キャリヤ液としては、一般に電子写真用現像液として用いるものであれば、特に制限することなく使用できる。安全性を考慮して、絶縁性の、常温で不揮発性の溶媒が用いられる。不揮発性の溶媒としては、例えばシリコンオイル、ミネラルオイル、パラフィンオイル、鉱物油等を上げることができる。
【0052】
トナー粒子は、主として樹脂と着色のための顔料や染料からなる。樹脂には、顔料や染料をその樹脂中に均一に分散させる機能と、記録材に定着される際のバインダとしての機能がある。
【0053】
樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができる。また、これらの樹脂を複数、混合して用いてもよい。
【0054】
トナーの着色に用いる顔料及び染料も一般市販のものを用いることができる。例えば、顔料として、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタン、シリカ、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、スカイブルー、ベンジジンイエロー、レーキレッドD等を用いることができる。染料としては、ソルベントレッド27やアシッドブルー9等を用いることができる。
【0055】
液体現像剤の調整方法としては、一般に用いられる技法に基づいて調整することができる。例えば、樹脂と顔料とを所定の配合比で、加圧ニーダ、ロールミルなどを用いて溶融混練し、均一に分散させ、得られた分散体を、例えばジェットミルによって微粉砕する。さらに得られた微粉末を、例えば風力分級機などにより分級することで、所定の粒径の着色トナーを得ることができる。
【0056】
続いて、得られたトナーをキャリヤ液としての絶縁性液体と所定の配合比で混合する。この混合物をボールミル等の分散手段により均一に分散させ、液体現像剤を得ることができる。
【0057】
トナーの体積平均粒子径は、0.1μm以上、5μm以下の範囲が適当である。トナーの平均粒子径が0.1μmを下回ると現像性が大きく低下する。一方、平均粒子径が5μmを超えると画像の品質が低下する。
【0058】
液体現像剤に対するトナー粒子の割合は、10〜50質量%程度が適当である。10質量%未満の場合、トナー粒子の沈降が生じやすく、長期保管時の経時的な安定性に問題がある。また必要な画像濃度を得るため、多量の現像剤を供給する必要があり、紙上に付着するキャリヤ液が増加し、定着時に乾燥せねばならず、蒸気が発生し環境上の問題が生じる。50質量%を超える場合には、液体現像剤の粘度が高くなりすぎ、製造上も、また取り扱いも困難になる。
【0059】
液体現像剤の粘度は、25℃において0.1mPa・s以上、10000mPa・s以下が好ましい。10000mPa・s以上になると、キャリヤ液とトナーの撹拌が困難となり、均一な液体現像剤を得るための装置面での負担が大きい。
【0060】
(定着装置の構成と機能動作)
図2には、図1の画像形成装置における定着装置の概略構成例を示す。図2を参照して、定着装置の構成例と機能動作について説明する。
【0061】
定着装置9は、定着のための複数の加熱手段を有する。加熱加圧手段であるローラ定着器101と非接触加熱手段である非接触ヒータ102である。それぞれの加熱手段は、未定着のトナー画像を担持する記録紙7が加熱加圧手段(ローラ定着器101)を通過した後、記録紙7の通紙方向下流側で、非接触加熱手段(非接触ヒータ102)の熱放射を受けるように配置されている。すなわち、多段定着方式となるように配置され、それに応じたそれぞれの温度制御がなされる。
【0062】
<ローラ定着器>
加熱加圧手段であるローラ定着器101について説明する。
【0063】
91aは定着ローラ、91bは加圧ローラである。定着ローラ91aと加圧ローラ91bは、図に示すように上下に回転軸が並行になるよう配置され、それぞれ軸方向両端側を不図示の軸受け部材に回転自在に支持させてある。また、バネなどを用いた不図示の加圧機構によって、加圧ローラ91bを所定の圧接力で定着ローラ91aの方向に付勢し、定着ローラ91aの下面部に圧接ニップ部を形成させている。
【0064】
加圧ローラ91bは、不図示の駆動機構により矢印の方向に所定の周速度で回転駆動される。定着ローラ91aは、圧接ニップ部での加圧ローラ91bとの圧接摩擦力によって加圧ローラ91bの回転に従動回転する。なお、定着ローラ91aを回転駆動させて、加圧ローラ91bを従動回転させてもよい。
【0065】
定着ローラ91a及び加圧ローラ91bは、それぞれヒータランプ92a、92bが内蔵され、不図示の制御手段により所望の温度に表面温度が制御される。
【0066】
定着ローラ91a及び加圧ローラ91bは、アルミ等熱伝導率の良好な金属製芯金の外周に、ニップ幅確保のための弾性層としてのシリコンゴムの層と、表面の離型性を高めるために離型層として例えばPTFEやPFA等の厚さ10〜50μmのフッ素系樹脂製離型層を設けたローラである。
【0067】
<非接触ヒータ>
非接触加熱手段である非接触ヒータ102について説明する。
【0068】
非接触ヒータ102は、断熱カバー95内にヒータ94が設置されている。ヒータ94は、不図示の制御手段により所望の温度に表面温度が制御される。非接触ヒータ102において記録紙7は、非画像面側に配置される不図示の記録紙搬送手段により搬送される。ヒータ94は黒トナーとイエロー、マゼンタ、シアン及び非画像部との光吸収の差を考慮してセラミックヒータ等の長波長のものを用いればよい。
【0069】
セラミックヒータの表面温度は500〜700℃程度である。非接触ヒータ102内を高温に保つための断熱カバー95は、セラミックファイバー等の高断熱性、高耐熱性の材料を用いればよい。
【0070】
<定着動作>
中間転写体5から記録紙7へ二次転写されたトナー画像及びキャリヤ液はローラ定着器101に達する。
【0071】
ローラ定着器101の圧接ニップ部にてトナー画像とキャリヤ液をのせた記録紙7は加熱加圧され、トナーは溶融し、キャリヤ液の一部はニップ出口にて揮発し、一部は定着ローラ91aにより除去される。しかし、記録紙7へ転写されたキャリヤ液の大部分はトナー画像中あるいは記録紙7中に残留する。
【0072】
加熱加圧手段であるローラ定着器101を記録紙7が通過する時点では、まだ十分な定着性を確保する必要はない。本定着装置9は2段定着方式であり、下流に配置された非接触加熱手段である非接触ヒータ102においてもトナーは溶融され、キャリヤ液は揮発するためである。
【0073】
記録紙7が非接触ヒータ102による熱放射下に達すると、トナー画像とキャリヤ液をのせた記録紙7は、主にヒータ94からの熱放射により加熱され、残留していたキャリヤ液の大部分が揮発する。
【0074】
効率よく揮発するためには、記録紙7の温度(キャリヤ液の温度)を高温に維持するだけでなく、揮発したキャリヤ液の飽和蒸気圧を上げて揮発しやすくするため、非接触ヒータ102の内部も高温に保つ必要がある。
【0075】
また、揮発したキャリヤ液の蒸気が非接触ヒータ102の内部に留まると新たな揮発を抑制するので、揮発したキャリヤ液の蒸気を外部に移動させる必要がある。従って後述するように、非接触ヒータ102内の蒸気を含む空気は排気される。
【0076】
(多段定着方式の効果)
既述したように、定着装置9は加熱加圧手段(ローラ定着器101)と非接触加熱手段(非接触ヒータ102)との2段定着方式となっている。その意図は、単に十分な定着のための熱量を提供するだけでなく、より熱効率のよい定着を実施し、過大な熱量による定着品質への影響を抑制するためである。
【0077】
その一例として、ペーパーブリスターなどの発生防止について、図3を用いて説明する。図3は、加熱手段による加熱時間と記録紙の温度の関係を示すグラフである。
【0078】
図3において、L1は加熱加圧手段(ローラ定着器101)のみで加熱した場合、L2は非接触加熱手段(非接触ヒータ102)のみで加熱した場合、L3は本実施形態のように2段定着方式にした場合の、それぞれ加熱時間と記録紙の温度の関係を示している。
【0079】
L1のローラ定着器101は、ニップ部で圧接するため記録紙への熱効率がよいので、記録紙の温度の立ち上がりは早い。しかしそれ故、ニップ時間を長くしていくと高温になりすぎ、特にコート紙に対してペーパーブリスターが発生してしまうことがある(図中G点)。また高温オフセットが発生したり、分離性に問題が生じたりする懸念もある。
【0080】
一方、L2の非接触ヒータ102は、非接触の熱放射による加熱のため記録紙の温度上昇が緩やかなのでペーパーブリスターに対して有利である。しかし、記録紙への熱供給効率が悪く、ヒータを高温に維持し、加熱時間を長く取らなければならないので、必要な投入エネルギーが大きくなりすぎてしまう。
【0081】
そこで、L3のような2段定着が効果的である。最初にローラ定着器101に通紙し、記録紙の温度を効率よく上昇させ、L1と同等のグラフを描かせる。しかしもちろん、ローラ温度及びニップ時間はペーパーブリスターが発生する温度以下に設定し、ローラ定着器101を通過し、下流側の非接触ヒータ102に到達する。
【0082】
その後非接触ヒータ102により、キャリヤ液低減に必要な時間だけ加熱が加えられる。これにより、定着の品質に悪影響を及ぼすことなく、かつ全体としての投入エネルギーを低減することが可能となる。
【0083】
(非接触加熱手段での排気熱の利用)
非接触ヒータ102においては、揮発したキャリヤ液の蒸気が非接触ヒータ102の内部に留まると新たな揮発を抑制するので、蒸気を外部に移動させる必要がある。従って、非接触ヒータ102内の蒸気を含む空気は排気されることを既に述べた。
【0084】
また、非接触ヒータ102は、非接触の熱放射による加熱のため記録紙7への熱供給効率が悪く、ヒータ94を高温に維持しなければならないことも既述した。ローラ定着器101の表面温度は耐熱性から250℃程度以下である。
【0085】
すなわち、非接触加熱手段(非接触ヒータ102)のヒータ94は加熱加圧手段(ローラ定着器101)と比較して高温であり、従って非接触ヒータ102の排気はローラ定着器101の周辺温度よりも高温となる。
【0086】
<排気流路の設定>
この高温の排気を利用して、定着装置9全体の熱効率をより改善するため、本実施形態に係る画像形成装置では、非接触加熱手段(非接触ヒータ102)からの排気を加熱加圧手段(ローラ定着器101)に向けて流すための排気流路を設けている。
【0087】
図4に、非接触加熱手段(非接触ヒータ102)の排気を加熱加圧手段(ローラ定着器101)周辺に流す排気流路103を設けた例を模式図で示す。
【0088】
記録紙7の通紙方向は矢印Cで示す。非接触加熱手段102は記録紙7の通紙方向で加熱加圧手段101の下流側に設けられている。
【0089】
104は排気ファンである。排気ファン104により、非接触加熱手段102の高温の排気が排気流路103を通り、加熱加圧手段101の周辺を経由して矢印F方向に排気されていく。
【0090】
これにより、ローラ定着器101の周辺温度をより高温に保つことが可能になり、ひいてはローラ定着器101の消費電力を低減することが可能となる。
【0091】
これは、通紙中はもちろんのこと、待機中であってもローラ定着器101の周辺温度よりも非接触ヒータ102の排気温度が高い場合には、ローラ定着器101の低消費電力化に繋がる。例えば、すぐに印字モードに入ることが可能な待機モード中は、非接触ヒータ102のヒータ94及びローラ定着器101は高温に維持される必要がある。
【0092】
<排気流路の形態>
非接触加熱手段(非接触ヒータ)からの排気を加熱加圧手段(ローラ定着器)に向けて流すための排気流路は様々な形態が可能である。
【0093】
図5に、非接触加熱手段(非接触ヒータ202)の排気を加熱加圧手段(ローラ定着器201)周辺に流す別の形態の排気流路203を設けた例を模式図で示す。
【0094】
記録紙7の通紙方向は矢印Cで示す。非接触加熱手段202が記録紙7の通紙方向で加熱加圧手段201の下流側に設けられているのは同様である。
【0095】
204は排気ファンである。排気ファン204により、非接触加熱手段202の高温の排気が排気流路203を通り、加熱加圧手段201の周辺を経由して矢印F方向に排気されていく。
【0096】
排気流路203がコの字型に曲がり、加熱加圧手段201の周辺を記録紙7の通紙方向と垂直に通過していく点のみが前述の形態と異なっている。
【0097】
これによりやはり、ローラ定着器201の周辺温度をより高温に保つことが可能になり、ひいてはローラ定着器201の消費電力を低減することが可能となる。
【0098】
図6には、非接触加熱手段(非接触ヒータ302)の排気を加熱加圧手段(ローラ定着器301)周辺に流す排気流路303に加えて、熱風供給器305を設けた例を模式図で示す。
【0099】
既述の形態と同様に、記録紙7の通紙方向は矢印Cで示す。非接触加熱手段302が記録紙7の通紙方向で加熱加圧手段301の下流側に設けられているのは同様である。
【0100】
また304は排気ファンであり、非接触加熱手段302の高温の排気が排気流路303を通り、加熱加圧手段301の周辺を経由して矢印F方向に排気されていく。
【0101】
しかしながら、非接触加熱手段302に高温の熱風を供給するための熱風供給器305を設けている点が、既述した形態とは異なる。
【0102】
熱風供給器305は、非接触加熱手段302の通紙パス周辺をより高温に保つため設けている。記録紙7からのキャリヤ液の揮発を促進するため、通紙パス近傍の温度は200℃以上が望ましい。
【0103】
この形態によってもまた、高温の排気を利用してローラ定着器301の周辺温度をより高温に保つことが可能になり、ひいてはローラ定着器301及び非接触ヒータ302の消費電力をさらに低減することが可能となる。
【0104】
<排気流路の変更>
加熱加圧手段(ローラ定着器)の設定温度は、例えば記録紙の坪量、紙種(コート紙、非コート紙等)によって変更されることがある。一般的に薄紙の方が低い温度に設定される。従って、記録紙の坪量の設定が厚紙から薄紙へ変更された場合、ローラ定着器の温度を下げる必要が生じる。
【0105】
その場合は、非接触加熱手段(非接触ヒータ)の排気を加熱加圧手段(ローラ定着器)周辺に流さない方がよい。ローラ定着器の温度を早く下げるためである。
【0106】
図7には、非接触加熱手段(非接触ヒータ402)の排気を加熱加圧手段(ローラ定着器401)周辺に流す第1の排気流路403aに加えて、加熱加圧手段(ローラ定着器401)周辺に流さない第2の排気流路403bを分岐させ、流路変更手段(切換器406)を設けた例を模式図で示す。
【0107】
既述の形態と同様に、記録紙7の通紙方向は矢印Cで示す。非接触加熱手段402が記録紙7の通紙方向で加熱加圧手段401の下流側に設けられているのは同様である。
【0108】
また第1の排気流路403aには第1の排気ファン404aが設けられ、非接触加熱手段402の排気が加熱加圧手段401の周辺を経由して矢印Fa方向に排気されていく。
【0109】
一方、第2の排気流路403bには第2の排気ファン404bが設けられ、非接触加熱手段402の排気が加熱加圧手段401を経由せず、そのまま矢印Fb方向に排気されていく。
【0110】
流路変更手段(切換器406)は、第1の排気流路403aと第2の排気流路403bの分岐箇所に設けられ、図示しない制御手段により排気流路を切り換える。流路変更手段(切換器406)としては、通常のバルブによる切換でよい。
【0111】
第1と第2の排気流路を変更する手順については後述する。
【0112】
この形態によってもまた、ローラ定着器401の周辺温度をより高温に保つことが可能になり、また設定温度の変更に対しても迅速に対応し、ローラ定着器401の消費電力を効率的に利用することが可能となる。
【0113】
<排気流路の変更手順>
上述したように、記録紙の坪量、紙種等が変更された場合、それに応じて加熱加圧手段(ローラ定着器)の温度設定を変更することが一般に行われる。もちろんその設定温度に合わせて、ローラ定着器の温度制御が行われる。
【0114】
すなわち、定着ローラ91a及び加圧ローラ91bの内蔵するヒータランプ92a、92bによる加熱の制御が行われるが、それとともに、非接触加熱手段(非接触ヒータ)の排気を加熱加圧手段(ローラ定着器)周辺に流すか流さないかの制御も合わせて行うことが望ましい。
【0115】
具体的には、定着ローラの温度制御と同調して、流路変更手段(切換器406)により、第1の排気流路403aと第2の排気流路403bを切り換える。
【0116】
図8は排気流路を変更する手順の例を示すフロー図である。図8を参照して排気流路を変更する手順について説明する。
【0117】
図8のステップS11では、ローラ定着器401を設定温度に制御するための、定着ローラ温度Tが検知される。
【0118】
次にステップS12で、定着ローラ温度Tが設定温度を上回るかどうかを判定する。
【0119】
実際には、定着ローラ温度Tが「設定温度+リップル分」以下の場合のみ、非接触加熱手段(非接触ヒータ)の排気を加熱加圧手段(ローラ定着器)周辺に流すという判定にすればよい。各温度設定における温度リップルは、プリントモード、動作環境等に応じて予め測定した値をメモリに記憶しておけばよい。
【0120】
ステップS12で定着ローラ温度Tが「設定温度+リップル分」以下の場合(ステップS12;YES)は、ステップS13を実行し、排気流路として第1の排気流路403aを選択する。
【0121】
ステップS12で定着ローラ温度Tが「設定温度+リップル分」を上回る場合(ステップS12;NO)は、ステップS14を実行し、排気流路として第2の排気流路403bを選択する。
【0122】
ステップS15では、ステップS13もしくはステップS14での選択に応じて、排気流路の変更が必要ならば、流路変更手段(切換器406)により、第1の排気流路403aと第2の排気流路403bの切り換えが行われる。
【0123】
ステップS16では、温度制御を終了するがどうかの判定を行う。終了する場合(ステップS16;YES)は、排気流路の変更手順も終了する。
【0124】
温度制御を終了しない場合(ステップS16;NO)は、ステップS11に戻り、定着ローラ温度Tを検知するところから、すべてのステップを繰り返す。ステップS16で温度制御を終了するまで、反復を継続する。
【0125】
以上で排気流路を変更する手順についての説明を終了する。
【0126】
上述してきたように、本実施形態に係る画像形成装置においては、多くの熱量を要する定着のために、定着手段として加熱加圧手段及び非接触加熱手段を有し、より多くの熱を発生する非接触加熱手段からの排気を加熱加圧手段に向けて流すための排気流路を有する。これにより、高温オフセットや分離性に問題がなく、ペーパーブリスターの発生を抑制して高品質の定着が得られ、かつ比較的低エネルギーで効率的に定着を行うことができる。
【0127】
なお、加熱加圧手段としてローラ定着器を説明してきたが、圧接ニップ部を形成する定着器であれば、上ベルト定着器、下フリーベルト定着器等、どのような形態でもよい。
【0128】
また光沢度等の定着品質を制御するなどの要求によっては、さらに下流に定着器を追加してもよい。
【0129】
上述の実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】湿式画像形成装置におけるトナー画像形成部と転写装置、定着装置の概略構成例を示す断面図である。
【図2】図1の画像形成装置における定着装置の概略構成例を示す断面図である。
【図3】加熱手段による加熱時間と記録紙の温度の関係を示すグラフである。
【図4】非接触加熱手段の排気を加熱加圧手段周辺に流す排気流路を設けた例を示す模式図である。
【図5】別の形態の排気流路を設けた例を示す模式図である。
【図6】排気流路に加えて、熱風供給器を設けた例を示す模式図である。
【図7】第1の排気流路に加えて、第2の排気流路を分岐させ、流路変更手段を設けた例を示す模式図である。
【図8】排気流路を変更する手順の例を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0131】
1 感光体ドラム(像担持体)
2 帯電装置
3 露光装置
4 液体現像装置
5 中間転写体
6 クリーニング装置
7 記録紙
8 液体現像剤
9 定着装置
41 現像ローラ(現像剤担持体)
44 現像剤槽
51 転写ローラ
91a 定着ローラ
91b 加圧ローラ
92a、92b ランプヒータ
94 ヒータ
95 断熱カバー
101 ローラ定着器(加圧加熱手段)
102 非接触ヒータ(非接触加熱手段)
103 排気流路
104 排気ファン
305 熱風供給器
406 切換器(流路変更手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上に形成されたトナー画像を定着するための定着手段として、
加熱された部材を前記記録媒体に接触させ、加圧しながら加熱する加熱加圧手段と、
前記記録媒体を、非接触の熱源からの熱放射により加熱する非接触加熱手段と、
を有する画像形成装置であって、
前記非接触加熱手段からの排気を前記加熱加圧手段に向けて流すための排気流路を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記排気流路は、
前記非接触加熱手段からの排気を前記加熱加圧手段に向けて流さないようにするための流路変更手段を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記流路変更手段は、
前記加熱加圧手段の温度に応じて流路を変更する
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記非接触加熱手段は、
前記加熱加圧手段の前記記録媒体通過方向下流側に配置されている
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記記録媒体上のトナー画像は、液体現像剤を用いて現像された
ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−127967(P2010−127967A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299249(P2008−299249)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】