説明

画像形成装置

【課題】 像保持体の表面から付着物が安定して除去される画像形成装置を提供する。
【解決手段】 トナー像を該表面に保持する像保持体;像保持体表面にトナー像を形成する像形成部;像保持体表面に形成されたトナー像を記録媒体上に転写し定着させる転写定着部;像保持体表面に接触して該表面から付着物を除去する部材本体と、該部材本体に接触して該部材本体の歪みに応じた信号を出力するセンサ部とを有する清掃部材;および、センサ部からの信号に基づいて前記像保持体の表面にトナーを供給するトナー供給部を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、像保持体上にトナー像を形成し、そのトナー像を記録媒体上に転写し定着させる画像形成装置が知られている。このような画像形成装置には、像保持体上の付着物を除去するクリーニングブレードを備えたものが存在する。
【0003】
特許文献1には、クリーニングブレードと像保持体との双方に導電層を設け、クリーニングブレードがめくれ上がるとこれら導電層が接触することで、クリーニングブレードのめくれを検出する技術が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、クリーニングブレードが像保持体に接触している状態で、光弾性法により、そのクリーニングブレードにかかる内部歪みを動的に観察する技術が提案されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、クリーニングブレードに貼り付けられた磁性体をソレノイドコイルにより引き付けることで、そのクリーニングブレードの歪みを補正する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−067583号公報
【特許文献2】特開2003−005580号公報
【特許文献3】特開2003−005597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、像保持体の表面から付着物が安定して除去される画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る画像形成装置は、
表面にトナー像が形成され、このトナー像をこの表面に保持する像保持体;
上記像保持体表面にトナー像を形成する像形成部;
上記像保持体表面に形成されたトナー像を記録媒体上に転写し定着させる転写定着部;
上記像保持体表面に接触してこの表面から付着物を除去する部材本体と、この部材本体に接触してこの部材本体の歪みに応じた信号を出力するセンサ部とを有する清掃部材;および
上記センサ部からの信号に基づいて上記像保持体の表面にトナーを供給するトナー供給部;
を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る画像形成装置は、
上記トナー供給部は、上記センサ部からの信号が、上記付着物の除去に必要な歪みに対する実際の歪みの不足を表している場合に上記像保持体にトナーを供給するものであることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る画像形成装置は、
上記センサ部が、上記部材本体の、上記像保持体の表面に沿って並んだ複数の箇所それぞれの歪みに応じた複数の信号を出力するものであり、
上記トナー供給部は、上記複数の信号のうち、上記付着物の除去に必要な歪みに対する実際の歪みの不足を表している信号に対応した箇所が接触している上記像保持体上の位置にトナーを供給するものであることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る画像形成装置は、
上記清掃部材が、上記部材本体と、この部材本体が上記像保持体に接触する箇所を避けた箇所に付けられた金属膜からなるセンサ部とを有するものであることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る画像形成装置は、
上記清掃部材が、上記部材本体と、この部材本体が上記像保持体に接触する箇所を避けた箇所に蒸着された金属膜からなるセンサ部とを有するものであることを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る画像形成装置は、
上記像形成部が、フッ素系粒子が外添されたトナーで上記像保持体表面に上記トナー像を形成するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る画像形成装置によれば、像保持体の表面から付着物が安定して除去される。
【0015】
請求項2に係る画像形成装置によれば、単純な制御で付着物の除去が安定する。
【0016】
請求項3に係る画像形成装置によれば、付着物の除去が像保持体の表面の各箇所で安定する。
【0017】
請求項4に係る画像形成装置によれば、センサ部が部材本体に付いていても部材本体の変形を妨げない。
【0018】
請求項5に係る画像形成装置によれば、蒸着された金属膜でないセンサ部を有する場合と比べて部材本体に対するセンサ部の追随性が高い。
【0019】
請求項6に係る画像形成装置によれば、清掃部材による像保持体表面の過度な磨耗を抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】プリンタの概略構成図である。
【図2】所定の向きに移動する被クリーニング体に接触したクリーニングブレードの先端の様子を示す図である。
【図3】所定の向きに移動する被クリーニング体に対するクリーニングブレード先端の摩擦力が不足している場合の様子を示す図である。
【図4】クリーニングブレードの表面側からの外観斜視図である。
【図5】歪みゲージの詳細を示す図である。
【図6】歪みゲージの抵抗値の変化を示すグラフ図である。
【図7】図1にも示されるトナーバンド制御部の内部ブロック図である。
【図8】図7に示されるホイートストンブリッジ回路の詳細構成図である。
【図9】クリーニングブレードの表裏面に配備された歪みゲージの抵抗値の変化を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の画像形成装置の実施形態について説明する。
【0022】
図1は、プリンタの概略構成図である。
【0023】
図1に示すプリンタ1は、感光体ロール10と、この感光体ロール10の表面に電荷を付与する帯電ロール11と、外部から送信されてきた画像信号に基づいたレーザ露光光を生成し感光体ロール10に向けて照射するレーザ露光器12と、トナーを含む現像剤を収容する現像器13と、記録用紙を収容する用紙カセット16と、用紙カセット16から記録用紙を引き出して搬送する用紙搬送装置17と、感光体ロール10の表面に保持されたトナー像を、矢印B方向に搬送されてきた記録用紙上に転写する転写ロール14と、記録用紙上のトナー像を加熱および加圧することで記録用紙上にトナー像を定着させる定着器15と、感光体ロール10の表面をクリーニングするクリーニング装置20と、トナーバンドの形成を制御するトナーバンド制御部100とを有している。現像器13は、回転しながら現像剤を感光体ロール10との間の領域に搬送する現像ロール133を有している。現像器13に収容されている現像剤には、トナーの他に、このトナーとの摩擦によりトナーを摩擦帯電させる電荷付与粒子であり磁性粒子でもある磁性キャリア、および、クリーニングブレードによる感光体ロール表面の過度な磨耗を抑制するフッ素系粒子が含まれている。フッ素系粒子としては、パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
フッ素系粒子の好ましい累積体積平均粒径D50は0.1〜10μmである。
【0025】
ここで、累積体積平均粒径D50は、例えば、コールターカウンターTA−II(ベックマン−コールター社製)、マルチサイザーII(ベックマン−コールター社製)等の測定器で測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャネル)に対して体積をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積50%となる粒径を累積体積平均粒径D50と定義する。フッ素系粒子は、クリーニングブレード部分で適量溜まっていれば感光体ローラ表面の過度の磨耗を抑制する。逆に、多量に溜まっていると、クリーニングブレードと感光体間の摩擦を下げすぎることでクリーニング能力を著しく低下させる。
【0026】
このプリンタ1が、本発明の画像形成装置の一実施形態である。また、感光体ロール10が、本発明にいう像保持体の一例に相当し、帯電ロール11、レーザー露光器12、現像器13を併せたものが、本発明にいう像形成部の一例に相当する。さらに、転写ロール14および定着器15を併せたものが、本発明にいう転写定着部の一例に相当する。また、トナーバンド制御部100と帯電ロール11とレーザー露光器12と現像器13と転写ロール14とを併せたものが、本発明にいうトナー供給部の一例に相当する。尚、このプリンタ1は単色画像専用機であるが、本発明はカラー画像機に適用されてもよい。
【0027】
このプリンタ1における画像形成動作の流れを簡単に説明する。
【0028】
図1に示すプリンタ1では、矢印A方向に回転する感光体ロール10の表面に帯電ロール11により電荷が付与され、電荷が付与された感光体ロール10の表面に、外部から送信されてきた画像信号に基づいたレーザー露光光がレーザー露光器12から照射されることでこの表面には静電的な潜像が形成される。現像器13に収容されている現像剤は現像ロール133の表面に供給され、現像ロール133と感光体ロール10との間の領域に運ばれ、運ばれた現像剤中のトナーにより、感光体ロール10の表面の静電的な潜像が現像される。この現像により得られたトナー像が、矢印B方向に搬送されてきた記録用紙上に転写ロール14により転写される。その後、トナー像を加熱および加圧する定着器15により記録用紙上のトナー像が溶融されて記録用紙上に定着される。感光体ロール10の、トナー像の転写を終えた部分に残留する残留物は、矢印Aの向きの回転おける転写ロール14よりも下流側で帯電ロール11よりも上流側、かつ感光体ロール10の回転中心に沿った全幅にわたって先端が接触したクリーニングブレード21の掻き取りにより除去される。除去された残留物は残留物収容箱23に収容される。詳しくは後述するが、このクリーニングブレード21には、金属膜からなる歪みゲージ22が感光体ロール10の表面に沿った複数箇所に蒸着されており、これら複数の歪みゲージ22の抵抗値は、各歪みゲージ22が蒸着された、クリーニングブレード21の各箇所の歪みに応じてそれぞれ変化する。クリーニングブレード21が本発明にいう部材本体の一例に相当し、歪みゲージ22が本発明にいうセンサ部の一例に相当する。これらクリーニングブレード21と歪みゲージ22を併せたものが本発明にいう清掃部材の一例に相当する。
【0029】
ところで、被クリーニング体である感光体ロール表面に対するクリーニングブレードによるクリーニングは、感光体ロール表面に接触したクリーニングブレードとこの感光体ロール表面との間で「スティックスリップ現象」と呼ばれる現象が引き起こされることでなされる。
【0030】
このスティックスリップ現象は、「スティック状態」と「スリップ状態」とを繰り返す現象で、「スティック状態」とは、回転する感光体ロール表面に先端が接触したクリーニングブレードによって感光体ロール表面のトナーやフッ素系粒子、その他外添剤(中径シリカ、大径シリカ等)、放電生成物などの付着物が除去され、これら除去されたトナーやフッ素系粒子、その他外添剤(中径シリカ、大径シリカ等)、放電生成物等が感光体ロール表面とクリーニングブレード先端との接触部分に堆積するにつれてクリーニングブレード先端を巻き込もうとする力が次第に強くなり、これに伴いクリーニングブレードに発生する応力も次第に大きくなっていく状態をいう。また、「スリップ状態」とは、感光体ロール表面とクリーニングブレード先端との接触部分におけるトナーやフッ素系粒子、他外添剤(中径シリカ、大径シリカ等)、放電生成物等の堆積物がある程度以上の量になると、この堆積物がクリーニングブレードによって崩され、クリーニングブレード先端を巻き込もうとする力が急減した状態をいう。感光体ロール表面とクリーニングブレード先端との接触部分では、クリーニングブレードが感光体ロール表面から除去した付着物の堆積(「スティック状態」)と崩壊(「スリップ状態」)が繰り返されることで発生するクリーニングブレード先端の挙動によってクリーニングが行われる。
【0031】
図2は、感光体ロール表面に接触したクリーニングブレード先端の拡大図である。
【0032】
図2には、矢印の向きに回転する感光体ロールにクリーニングブレード先端が接触していることで感光体ロールから除去された付着物が堆積した堆積物中にフッ素系粒子200とトナー300とが混在している様子が示されている。回転する感光体ロール表面とクリーニングブレード先端との接触部分に、図2に示されるようにトナーやフッ素系粒子が混在した堆積物が堆積することでスティック状態が生じてクリーニングブレードが歪む。この様にクリーニングブレードを歪ませた応力は、感光体ロール上の付着物を取り除く力となるのでクリーニングブレード先端にはさらにフッ素系粒子200とトナー300が堆積してやがてスリップ状態となる。つまり、感光体ロール上にフッ素系粒子200とトナー300が混在していることでスティックスリップ現象が生じることとなる。
【0033】
しかしながら、感光体ロール表面の付着物におけるトナーの占める割合が低下するとクリーニングブレード先端の堆積物におけるトナーの割合も低下し、それに伴いフッ素系粒子の割合が上昇することで、上述のスティックスリップ現象が発生し難くなることが本願発明者の研究によりわかってきた。
【0034】
図3は、回転する感光体ロール表面とクリーニングブレード先端との接触部分の堆積物がフッ素系粒子で占められている様子を示す図である。
【0035】
図3には、回転中の感光体ロール表面とクリーニングブレード先端との接触部分の堆積物におけるトナーの占める割合が低下してフッ素系粒子で占められたことで、クリーニングブレードの歪み量が図2に示されるよりも少なくなっている様子が示されている。これは、堆積物中におけるトナーの占める割合が低いと堆積物の粘性も低くなり、また、フッ素系粒子の割合が高いことでクリーニングブレード先端を巻き込もうとする作用の源である感光体ロール表面とクリーニングブレード先端との間の摩擦力が著しく低下するためと考えられる。
【0036】
図3に示されるような、堆積物におけるトナーの占める割合が低い状態が放置されると、感光体ロール表面とクリーニングブレード先端との間の摩擦力の確保が困難になり、スティックスリップ現象が生じずクリーニングが不充分となる。その結果、感光体ロール表面の付着物の除去も不充分となる。逆に言えば、クリーニングブレードが充分歪んでいるならば、感光体ロール表面とクリーニングブレード先端との間の摩擦力が充分確保されて、スティックスリップ現象により充分なクリーニング性が得られると言える。
【0037】
そこで、本実施形態のプリンタ1では、歪みに応じて抵抗値が変化する歪みゲージ22をクリーニングブレード21に付け、メカニズムについては後述するが、付けた歪みゲージ22の抵抗値の大きさを表す信号をリアルタイムで検出し、ブレード先端の感光体ロール表面に対する摩擦力の大きさを推定している。
【0038】
また、このプリンタ1では、この歪みゲージ22を、感光体ロール10の表面に対し、感光体ロール10の回転中心に沿って先端が接触するクリーニングブレード21の、感光体ロール10の回転中心に沿った5箇所に配備し、これら5箇所それぞれの近傍のブレード先端における摩擦力の大きさをそれぞれ推定している。例えば、最大A3判のプリントが可能な感光体ロール10の中央付近のみを使用するA4判のプリントが連続するような場合には、感光体ロール10の中央部分の付着物にはトナーが多く分布していると考えられるのに対し、感光体ロール10の中央部分を除く両端部分では、トナー像が形成されないことから四フッ素化樹脂粒子の割合が高いと考えられる。このため、クリーニング性は、クリーニングブレード21の先端に沿った各位置で異なると考えられ、本実施形態ではそのような各位置のクリーニング性を確認するために上述の5箇所の歪みゲージ22を用いている。
【0039】
図4は、本実施形態におけるクリーニングブレードの外観斜視図である。
【0040】
図4には、図1にも示される歪みゲージ22が、クリーニングブレード21の表面211の、感光体ロール10の表面に沿った5箇所に配置されている様子が示されている。
【0041】
このプリンタ1では、クリーニングブレード21の表面211の5箇所に付着させた歪みゲージ22の抵抗値の大きさを表す信号をそれぞれ検出し、歪みゲージ22が付されているクリーニングブレード上の各箇所の近傍のブレード先端における摩擦力の大きさを推定している。
【0042】
ここで、クリーニングブレード21に付着させた歪みゲージ22の詳細、および、クリーニングブレード21の歪みと歪みゲージ22の抵抗値との関係についてまず説明する。
【0043】
図5は、歪みゲージの詳細を示す図である。
【0044】
図5に示される歪みゲージ22は、つづら折り状に繋がった幅の細いパターンからなるゲージパターン部221と、このゲージパターン部221の両端にそれぞれ接続されたゲージタブ部222とからなる金属膜であり、これらゲージパターン部221とゲージタブ部222は、クリーニングブレード21に蒸着されている。このため、歪みゲージ22は、クリーニングブレード21の表面211から剥がれ難く、また、クリーニングブレード21の表面211に対する追随性が高い。
【0045】
クリーニングブレード21は、図4に示される矢印Aの向きに感光体ロール10が回転すると、先端210側が図5における手前側に隆起するように湾曲するため(図2参照)、ゲージパターン部221はL方向に縮む。これにより、ゲージパターン部221の断面積は大きくなるとともに距離がわずかながら短縮されるため、歪みゲージ22の抵抗値は小さくなる。
【0046】
また、図5に示される歪みゲージ22は、クリーニングブレード全体の歪みに大きな影響をあたえる先端210の歪みを妨げないように、クリーニングブレード21の先端210から距離を空けて蒸着されている。
【0047】
ゲージタブ部222は、ゲージリード223の接続でゲージパターン部221の伸び縮みに影響が生じないように、ゲージパターン部221よりも幅の広いパターンからなる。
【0048】
ゲージパターン部221のゲージ長Lは、0.2mm〜5mmの範囲内であることが好ましい。また、ゲージパターン部221のゲージ幅Wは、0.5mm〜5mmの範囲内であることが好ましい。この範囲より小さいと、高い精度での加工が必要になり、また信号に対するノイズが多くなる。一方、この範囲よりも大きいと、クリーニングブレード21の表面212に占める割合が大きくなるために、クリーニングブレード21の歪みに対する抵抗値の追随性が低下する。尚、ゲージタブ部222は、ゲージリード223によってトナーバンド制御部100と繋がっている。また、金属膜の材料としては、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、バナジウム、クロム、タンタル、鉄、マンガン、シリコン、およびそれらの合金、酸化物、窒化物、ケイ化物からなる群から選択された材料が挙げられる。
【0049】
図6は、歪みゲージの抵抗値の変化を示すグラフ図である。
【0050】
図6には、クリーニングブレード21の表面211の1箇所に蒸着された歪みゲージ22の抵抗値の変化が示されている。
【0051】
図6における実線は、この歪みゲージ22が蒸着された箇所の近傍のブレード先端210と感光体ロール10との間に強い応力が生じた適正状態における歪みゲージ22の抵抗値の変化を示しており、図6における点線が、この歪みゲージ22が蒸着された箇所の近傍のブレード先端210と感光体ロール10との間の応力が弱い非適正状態における歪みゲージ22の抵抗値の変化を示している。
【0052】
図6には、上述した適正状態にある場合、感光体ロール10の停止中は歪みゲージ22の抵抗値RvはRv0であったのが、感光体ロール10の回転中はRv1まで大幅に低下する様子が示されている。一方、上述した非適正状態にある場合、感光体ロール10の停止中は歪みゲージ22の抵抗値Rvは適正状態と同様にRv0であったのが、感光体ロール10の回転中は、適正状態と比べてクリーニングブレード21の先端210と感光体ロール10との間の摩擦力が小さくクリーニングブレード21の歪みも小さいために、適正状態にある場合のRv1よりも大きいRv2までしか低下しない。この様に、歪みゲージ22の抵抗値は、その歪みゲージ22が蒸着されている箇所の近傍のブレード先端210の、感光体ロール10に対する摩擦力を反映したものとなる。
【0053】
次に、歪みゲージ22の抵抗値の大きさを表す信号の検出方法について説明する。
【0054】
図7は、図1にも示されるトナーバンド制御部の内部ブロック図である。
【0055】
図7に示されるトナーバンド制御部100は、ホイートストンブリッジ回路101、検出部102、判定部103、およびトナーバンド形成指示部104を備えている。尚、図7における図示は省略したが、ホイートストンブリッジ回路101および検出部102については、歪みゲージ22と同じ数だけ、すなわちそれぞれ5つずつ備えられている。
【0056】
図7には、図1に示される感光体ロール10、歪みゲージ22が付されたクリーニングブレード21、帯電ロール11、レーザー露光器12、現像器13、および転写ロール14も示されている。尚、5つのホイートストンブリッジ回路101と5つの歪みゲージ22は、それぞれゲージリード223を介して繋がれている。
【0057】
図8は、図7に示されるホイートストンブリッジ回路の詳細構成図である。
【0058】
図8に示されるホイートストンブリッジ回路101は、抵抗値R1の第1抵抗素子1011、抵抗値R2の第2抵抗素子1012、抵抗値R3の第3抵抗素子1013、および直流電源1010を備え、ホイートストンブリッジ回路101には、4つ目の抵抗素子として、抵抗値Rvが変化する歪みゲージ22が用いられている。
【0059】
歪みゲージ22と第3抵抗素子1013の間の第1接続点Aと、第1抵抗素子1011と第2抵抗素子1012の間の第2接続点Bとには、直流電源1011が繋がれている。また、第1抵抗素子1011と歪みゲージ22の間の第3接続点Cと、第2抵抗素子1012と第3抵抗素子1013の間の第4接続点Dとには、図7にも示される検出部102が接続されている。尚、検出部102は内部に抵抗を備えている。
【0060】
ここで、以下の式(1)が成立するときには、第3接続点Cと第4接続点Dとの間の電位差は零となり、検出部102で検出される電流はゼロとなる。
【0061】
Rv/R1=R3/R2…(1)
このホイートストンブリッジ回路101では、クリーニングブレード21が図3に示される様に歪みが殆ど無い状態にある場合の歪みゲージ22の抵抗値Rv0にあわせて上記の式(1)が成立するように、すなわちRv0/R1=R3/R2が成立するようにその他の抵抗値R1、R2、R3が設定されている。したがって、クリーニングブレード21が図3に示されるような歪みが殆ど無い状態から図2に示される様な歪んだ状態に変化すると、歪みゲージ22の抵抗値Rvは、前述したRv0よりも小さいRv1となる。そうなると、第4接続点Dの電位は第3接続点Cの電位よりも高くなるために、これら第4接続点Dと第3接続点Cとの間の検出部102には、第4接続点Dから第3接続点Cへ向かう向きの電流が流れる。したがって、歪みゲージ22の抵抗値Rvが低下するほど、すなわちクリーニングブレード21の歪みが大きくなるほど検出部102を流れる電流は大きくなる。したがって、上述の適正状態から非適正状態に変化するに従い、検出部102で検出される電流値は減少していくこととなる。
【0062】
5つの検出部102では、検出した電流値の大きさに応じた信号、すなわち検出した電流値が大きいほど高レベルの信号を、図7に示される判定部103にリアルタイムで送信する。
【0063】
判定部103では、5つの検出部102から送信されてくる信号のレベルが、予め設定されている基準レベルを下回るか否かを監視し、基準レベルを下回るレベルの信号が送信されてきた場合には、その信号を送信してきた検出部102に繋がれている歪みゲージ22が付されているクリーニングブレード上の箇所が上述の非適正状態にあるとしてその箇所を表す位置情報と、基準レベルを下回っている受信信号レベルの、その基準レベルに対する差分を表す差分情報との双方をトナーバンド形成指示部104に送信する。
【0064】
トナーバンド形成指示部104では、受信した位置情報に応じた感光体ロール上の位置に、受信した差分情報が表す差分が大きいほど高濃度のトナーバンドが形成されるように帯電ロール11、レーザー露光器12、および現像器13を制御する。この様にして形成されたトナーバンドは、転写ロール14によって記録用紙上に転写されることなく、非適正状態にあるブレード先端210へと向かい、そのブレード先端210にトナーを供給する。このようなトナーの供給が、非適正状態にあるブレード先端210を適正状態に戻すこととなる。これにより、そのブレード先端210の、感光体ロール10に対する摩擦力は回復して適切に歪むようになるため、そのブレード先端210の近傍に付されている歪みゲージ22の抵抗値は充分に低下するようになる。その結果、検出部102で検出される電流が大きくなることから、その歪みゲージ22から判定部103に送信されている信号レベルが予め設定されている基準レベルを上回ることとなり、判定部103からのトナーバンド形成指示部104への位置情報等の送信は停止される。
【0065】
以上に説明した実施形態は、クリーニングブレード21の表面211と裏面のうちの表面211にのみ歪みゲージ22を蒸着した例であるが、本発明では、以下に説明するように、クリーニングブレード21の表面211と裏面との双方にセンサを蒸着してもよい。
【0066】
図9は、クリーニングブレードの表裏面に1つずつ配備された歪みゲージの抵抗値の変化を示すグラフ図である。
【0067】
図9に示されるグラフのうち、上段に示される方は、図6に示されるグラフと同じグラフ、すなわちクリーニングブレード21の表面211に配置された歪みゲージ22の抵抗値の変化を表している。一方、下段に示されている方は、同じクリーニングブレード21の裏面に配置された歪みゲージ22の抵抗値の変化を表している。
【0068】
図9には、クリーニングブレード21の表面211に配置されている歪みゲージ22の抵抗値は、クリーニングブレード21の先端210が歪んでいる場合の方が歪んでいない場合よりも低下するのに対し(図9上方のデータ)、クリーニングブレード21の裏面に配置されている歪みゲージ22の抵抗値は、クリーニングブレードの表面と裏面では湾曲の向きが逆向きとなるため、クリーニングブレード21の先端210が歪んでいる場合の方が歪んでいない場合よりも上昇する様子が示されている(図9下方のデータ)。
【0069】
この様に、歪みゲージ22の抵抗値は、クリーニングブレード21の表面211であれ裏面であれ、配置された箇所のブレード先端の歪みを反映したものとなることから、歪みゲージ22の配置位置は、クリーニングブレード21の裏面のみであってもよく、さらには、表裏面の双方に配置されてもよい。
【0070】
また、以上では、歪みゲージとしての金属膜をクリーニングブレードに蒸着した例を挙げたが、本発明では、歪みゲージとしての金属膜をクリーニングブレードに接着剤で貼り付けてもよい。以下、金属膜を接着剤で貼りつけた場合について説明する。
【0071】
この場合、金属薄膜の長さ(ゲージ長)Lと幅(ゲージ幅)W、および材料は、図2に示す歪みゲージ22のものと同じである。また、膜厚は、特に限定されるものではないが、生産性を高めるためには数μmの厚さのものを用いるのがよい。また、クリーニングブレードの歪みを高精度に検出するためには、0.1μm〜2.0μmの厚さのものを用いるのがよい。さらに、接着剤としては、熱硬化性のものと液型のものとがある。熱硬化性の接着剤としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂などが用いられる。また、液型の接着剤としては、シアノアクリレート系の接着剤、エポキシ系、フェノールエポキシなどが用いられる。
【0072】
この様に金属膜を接着剤で接着した場合、金属膜を蒸着した場合と較べて、接着剤の分だけ応答性が劣るため、接着剤は可能な限り薄く用いる必要がある。
【0073】
尚、以上では、本発明にいう画像形成装置としてプリンタを例に挙げて説明したが、本発明にいう画像形成装置は、電子写真方式を採用した画像形成装置であれば複写機はもとよりファクシミリ等でもよい。
【0074】
さらに、本発明にいう画像形成装置として、搬送されてきた記録用紙に、転写ロールを用いて感光体ロール上の現像像を直接転写する直接転写方式プリンタを例に挙げて説明したが、本発明にいう画像形成装置は、転写ベルトを介して現像像を記録用紙に転写する間接転写方式の画像形成装置であってもよい。
【0075】
また、本発明にいう像保持体として、ロール方式を採用した感光体ロールを例に挙げて説明したが、本発明にいう像保持体は、循環ベルト方式を採用した感光体ベルトであってもよい。
【0076】
さらに、本発明にいう像形成部として、帯電ロールと露光器と現像器とを備えた例で説明したが、本発明にいう像形成部は、帯電や現像を経ずに像保持体上に像を直接に形成するものであってもよい。
【0077】
また、本発明にいう転写定着部として、転写ロールで転写した後定着器で定着する例で説明したが、本発明にいう転写定着部は、転写と定着とを同時に行うものであってもよい。
【0078】
(実施例)
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこの実施例に何ら限定されるものではない。
【0079】
市販のプリンタを、図1から図8にかけて説明した実施形態と同じ構成のプリンタに改造すると共に、トナーバンド制御部100の機能の起動と停止を切換自在とし、以下に示す実施例1、2、3、および比較例について実験を行った。これらの実施例1、2、3および比較例は、A4用紙(富士ゼロックスオフィスサプライ社製、P紙)を用いて、ハーフトーン30%の画像チャートを3万枚プリントした後、A3用紙を用いて、全面ハーフトーン画像を1枚をプリントし、このA3用紙のハーフトーン画像のうち、先のA4用紙の通過部分と非通過部分との間の濃度差(ΔSAD)を検出し評価したものである。
【0080】
実施例1は、トナーと共に現像剤に含まれる感光体磨耗制御剤を四フッ素化樹脂粒子の一種であるポリテトラフルオロエチレン(以下、このポリテトラフルオロエチレンをPTFEと称す。ダイキン工業株式会社 商品名「ルブロンL2」。平均粒径 1次粒径:電子顕微鏡で0.3(μm)、二次粒径:光透過法で5(μm))とし、トナーバンド制御部100の機能を起動させていた場合である。
【0081】
実施例2は、感光体磨耗制御剤をパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(以下では、このパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体をPFAと称す。)とした以外は、現像剤中のトナー量および感光体磨耗制御剤量を含めて実施例1と同じである。
【0082】
実施例3は、感光体磨耗制御剤を四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(以下、この四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体をFEPと称す。)とした以外は、現像剤中のトナー量および感光体磨耗制御剤量を含めて実施例1と同じである。
【0083】
比較例は、トナーバンド制御部100の機能を停止させていたこと以外は、現像剤中のトナー量および感光体磨耗制御剤量を含めて実施例1と同じである。
【0084】
また、評価については、ΔSADが0.02未満は‘◎’、0.02以上0.03未満は‘○’、0.03以上0.04未満は‘△’、0.04以上を‘×’とした。
【0085】
【表1】

【0086】
表1に示されるように、実験結果は、実施例1における濃度差(ΔSAD)の評価は‘△’、実施例2における濃度差の評価は‘○’、実施例3における濃度差の評価は‘◎’、比較例における濃度差の評価は‘×’であった。実施例1と比較例とからは、トナーバンド制御部100の機能が、クリーニングブレード21による感光体ロール10の表面からの付着物の除去に有効である点が確認できた。また、実施例1から実施例3までからは、現像剤中のトナー量および感光体磨耗制御剤量が同じ場合は、トナーバンド制御部100の機能は、感光体磨耗制御剤がFEPである場合に特に有効である点が確認できた。これはFEPの摩擦係数がPTFE、PFAに比べ大きい為と推測される。
【符号の説明】
【0087】
1 プリンタ
10 感光体ロール
100 トナーバンド制御部
101 ホイートストンブリッジ回路
102 検出部
103 判定部
104 トナーバンド形成指示部
11 帯電ロール
12 レーザー露光器
13 現像器
14 転写ロール
15 定着器
16 用紙カセット
17 用紙搬送装置
20 クリーニング装置
21 クリーニングブレード
210 先端
211 表面
22 歪みゲージ
221 ゲージパターン部
222 ゲージタブ部
223 ゲージリード
23 残留物収容箱
200 フッ素系粒子
300 トナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にトナー像が形成され、該トナー像を該表面に保持する像保持体;
前記像保持体表面にトナー像を形成する像形成部;
前記像保持体表面に形成されたトナー像を記録媒体上に転写し定着させる転写定着部;
前記像保持体表面に接触して該表面から付着物を除去する部材本体と、該部材本体に接触して該部材本体の歪みに応じた信号を出力するセンサ部とを有する清掃部材;および
前記センサ部からの信号に基づいて前記像保持体の表面にトナーを供給するトナー供給部;
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記トナー供給部は、前記センサ部からの信号が、前記付着物の除去に必要な歪みに対する実際の歪みの不足を表している場合に前記像保持体にトナーを供給するものであることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記センサ部が、前記部材本体の、前記像保持体の表面に沿って並んだ複数の箇所それぞれの歪みに応じた複数の信号を出力するものであり、
前記トナー供給部は、前記複数の信号のうち、前記付着物の除去に必要な歪みに対する実際の歪みの不足を表している信号に対応した箇所が接触している前記像保持体上の位置にトナーを供給するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記清掃部材が、前記部材本体と、該部材本体が前記像保持体に接触する箇所を避けた箇所に付けられた金属膜からなるセンサ部とを有するものであることを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記清掃部材が、前記部材本体と、該部材本体が前記像保持体に接触する箇所を避けた箇所に蒸着された金属膜からなるセンサ部とを有するものであることを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記像形成部は、フッ素系粒子が外添されたトナーで前記像保持体表面に前記トナー像を形成するものであることを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか1項記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−217766(P2010−217766A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66816(P2009−66816)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】