説明

画像形成装置

【課題】画像形成条件の調整をより適切な時期に実行することが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成条件に影響し得る装置の状態変動を示す複数の変動量を取得し、それら複数の変動量をパラメータとして状態変動が画像形成条件に与える影響度合を評価するための複合評価値(想定位置ずれ量、想定濃度ずれ量)を算出し、その複合評価値の大きさに基づいて調整の実行時期を判断する。従来は、一つ一つの変動量について別個に基準を満たすかを判断し、その結果に基づいて調整を実行するか否かを判断していた。これに対し、本発明では、複数の変動量をパラメータとした複合評価値を算出し、その複合評価値の大きさに基づいて状態変動が画像形成条件に与える影響度合(調整の必要度合)を複合的に判断することにより、調整をより適切な時期に実行することができる。これにより、調整の実行頻度を抑えつつ、画像品質を確保することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特に画像形成条件に関する調整を行う機能を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像形成装置として、画像形成位置のずれや濃度のずれなどを測定し、その結果に基づいて画像形成条件を調整する機能を備えたものが知られている。こうした調整を頻繁に行うと、形成する画像の品質を確保することができる一方で、ユーザの待ち時間が長くなったり、インクやトナーの消費が増えたりといった不都合がある。
【0003】
そこで、従来では、例えば前回の調整時からの印刷枚数や経過時間など、いくつかの変動量を取得し、それらの変動量のうちいずれか一つが基準値を超えた場合に調整を実行していた(例えば特許文献1参照)。即ち、例えば、前回の調整時から一定の枚数の印刷が行われた場合には、印刷動作に伴う各部品の摩耗や振動などの影響で、画像形成位置にある程度のずれが生じていることが想定される。一般的には、想定される範囲内で最大のずれが生じたときでも要求される画質を維持できるように、調整を実行するか否かを判断する条件が定められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−292811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、調整の必要性をより的確に評価し、調整をより適切な時期に実行する技術が要望されている。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、画像形成条件の調整をより適切な時期に実行することが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、第1の発明に係る画像形成装置は、画像を形成する形成手段と、前記形成手段により形成された画像を測定し、その測定結果に基づいて画像形成条件の調整を行う調整手段と、前記調整手段による調整の実行を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、画像形成条件に影響し得る当該画像形成装置の状態変動を示す複数の変動量を取得し、前記複数の変動量をパラメータとして前記状態変動が画像形成条件に与える影響度合を評価するための複合評価値を算出し、前記複合評価値の大きさに基づいて前記調整の実行時期を判断する。
【0007】
第1の発明によれば、画像形成条件に影響し得る装置の状態変動を示す複数の変動量を取得し、それら複数の変動量をパラメータとして状態変動が画像形成条件に与える影響度合を評価するための複合評価値を算出し、その複合評価値の大きさに基づいて調整の実行時期を判断する。従来は、一つ一つの変動量について別個に基準を満たすかを判断し、その結果に基づいて調整を実行するか否かを判断していた。これに対し、本発明では、複数の変動量をパラメータとした複合評価値を算出し、その複合評価値の大きさに基づいて状態変動が画像形成条件に与える影響度合(調整の必要度合)を複合的に判断することにより、調整をより適切な時期に実行することができる。これにより、調整の実行頻度を抑えつつ、画像品質を確保することが可能である。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記制御手段は、前記複数の変動量のそれぞれについて、前記変動量をパラメータとして状態変動が画像形成条件に与える影響度合を示す個別評価値を算出し、前記各個別評価値を合算した値を前記複合評価値とする。
【0009】
第2の発明によれば、複数の変動量のそれぞれについて、個別に画像形成条件に与える影響度合を示す個別評価値を算出し、各個別評価値の合算値を複合評価値とする。これにより、画像形成条件に影響を与える要因ごとの影響度合をそれぞれ適切に評価することができる。
【0010】
第3の発明は、第2の発明において、前記制御手段は、前記変動量の大きさが大きくなる程、その変動量についての前記個別評価値の変化比率を大きくする。
【0011】
第3の発明によれば、変動量の大きさが大きくなる程、その変動量についての個別評価値の変化比率を大きくする。例えば、印刷枚数が101〜200であるときの用紙1枚当たりの影響度合(想定される位置ずれ量等)が、印刷枚数が1〜100であるときの用紙1枚当たりの影響度合よりも大きくなるような場合に、本構成を適用することで、より適切に影響度合を評価することができる。
【0012】
第4の発明は、第1から第3のいずれか一つの発明において、前記調整手段は、画像形成位置のずれを調整する位置ずれ調整と、画像形成濃度を調整する濃度調整とを含む少なくとも2種類の調整を個別に実行可能であり、前記制御手段は、調整の種類毎に異なる条件で実行時期を判断する。
【0013】
第4の発明によれば、位置ずれ調整と濃度調整との少なくとも2種類の調整を個別に実行可能であり、調整の種類毎に異なる条件で実行時期を判断する。2種類の調整を常に同時に実行すると、ユーザの待ち時間が長くなる等の不都合が生じる。調整の種類毎に異なる条件で実行時期を判断し、必要性の低い調整を実行しないことで、こうした不都合を回避できる。
【0014】
第5の発明は、第4の発明において、前記制御手段は、調整の種類毎に異なる変動量を用いて実行時期を判断する。
【0015】
第5の発明によれば、調整の種類毎に異なる変動量を用いて実行時期を判断する。画像形成位置のずれと濃度のずれとは発生する要因が異なると考えられるため、それぞれの調整に適した変動量を用いて、複合評価値を算出し、実行時期を判断することで、各調整を適切な時期に実行することができる。
【0016】
第6の発明は、第4または第5の発明において、可動部材の動作回数をカウントするカウンタを備え、前記制御手段は、前記カウンタの値の変動量を用いて位置ずれ調整の実行時期を判断する。
【0017】
第6の発明によれば、可動部材の動作回数をカウントするカウンタの値の変動量を用いて位置ずれ調整の実行時期を判断する。例えば、カバーの開閉動作など、可動部材の動作により生じる振動等が位置ずれの要因となる。そのため、そのような可動部材の動作回数をカウントし、その値の変動量を用いて位置ずれ調整の実行時期を判断することで、位置ずれ調整を適切な時期に実行することができる。
【0018】
第7の発明は、第4から第6のいずれか一つの発明において、湿度を検出する湿度センサを備え、前記制御手段は、前記湿度センサにより検出された湿度の変動量を用いて濃度調整の実行時期を制御する。
【0019】
第7の発明によれば、湿度センサにより検出された湿度の変動量を用いて濃度調整の実行時期を判断する。湿度の変動が画像形成時の濃度に影響を与える要因となることがある。そのため、湿度の変動量を用いて濃度調整の実行時期を判断することで、濃度調整を適切な時期に実行することができる。
【0020】
第8の発明は、第1から第7のいずれか一つの発明において、前記形成手段により画像形成を行う際の画質を指定する指定手段を備え、前記制御手段は、前記指定手段によって指定された画質が高い程、調整を実行しやすくなるように実行時期の判断条件を変更する。
【0021】
第8の発明によれば、指定された画質が高い程、調整を実行しやすくなるように実行時期の判断条件を変更する。これにより、要求される画像品質を確保することができる。
【0022】
第9の発明は、第8の発明において、前記制御手段は、画像形成毎に指定された画質の頻度を求め、高画質が指定される頻度が高い程、調整を実行しやすくなるように実行時期の判断条件を変更する。
【0023】
第9の発明によれば、画像形成毎に指定された画質の頻度を求め、高画質が指定される頻度が高い程、調整を実行しやすくなるように実行時期の判断条件を変更する。これにより、要求に見合った画像品質を提供することができる。
【0024】
第10の発明は、第1から第9のいずれか一つの発明において、前記調整手段は、前記測定時にノイズ量を検出可能であり、前記制御手段は、前記調整手段により検出されるノイズ量が多い程、調整を実行しやすくなるように実行時期の判断条件を変更する。
【0025】
第10の発明によれば、測定時に検出されるノイズ量が多い程、調整を実行しやすくなるように実行時期の判断条件を変更する。即ち、測定時のノイズ量が大きい場合には、調整の精度が低下すると考えられるため、調整をより頻繁に実行することにより画像品質を確保することができる。
【0026】
第11の発明は、第1から第10のいずれか一つの発明において、前記形成手段は、担持体を有し、前記形成手段により前記担持体上に形成された画像を光学的に検出する光学センサをさらに備え、前記調整手段は、前記光学センサを用いて前記測定を行うとともに、前記担持体による光の反射率に応じて前記光学センサの感度を補正可能であり、前記制御手段は、前記調整手段による前記光学センサの感度の補正量が大きい程、調整を実行しやすくなるように実行時期の判断条件を変更する。
【0027】
第11の発明によれば、担持体上に形成された画像を測定する際に用いる光学センサの感度の補正量が大きい程、調整を実行しやすくなるように実行時期の判断条件を変更する。即ち、担持体が劣化して反射率が変わると、それに応じて光学センサの感度が補正される。光学センサの感度の補正量が大きい程、担持体が劣化していると考えられ、それに伴って画像形成条件に狂いが生じやすくなると考えられる。従って、そのような場合に、調整をより頻繁に実行することにより画像品質を確保することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、画像形成条件に影響し得る装置の状態変動を示す複数の変動量を取得し、それら複数の変動量をパラメータとして状態変動が画像形成条件に与える影響度合を評価するための複合評価値を算出し、その複合評価値の大きさに基づいて調整の実行時期を判断する。従来は、一つ一つの変動量について別個に基準を満たすかを判断し、その結果に基づいて調整を実行するか否かを判断していた。これに対し、本発明では、複数の変動量をパラメータとした複合評価値を算出し、その複合評価値の大きさに基づいて状態変動が画像形成条件に与える影響度合(調整の必要度合)を複合的に判断することにより、調整をより適切な時期に実行することができる。これにより、調整の実行頻度を抑えつつ、画像品質を確保することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態におけるプリンタの概略構成を示す側断面図
【図2】プリンタの電気的構成を概略的に示すブロック図
【図3】パターンセンサの回路構成を示す図
【図4】印刷・調整実行処理を示すフローチャート
【図5】位置ずれ調整処理を示すフローチャート
【図6】位置ずれ測定用のパターンを示す図
【図7】パターンの測定時における受光信号の時間変化を示すグラフ
【図8】調整実行判定処理を示すフローチャート
【図9】閾値決定処理を示すフローチャート
【図10】係数C(カバー開閉1回あたりの位置ずれ量)とカバー開閉回数との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に本発明の一実施形態について図1から図10を参照して説明する。
【0031】
(プリンタの全体構成)
図1は、本発明の画像形成装置の一例であるプリンタ1の概略構成を示す側断面図である。本プリンタ1は4色(ブラックK、イエローY、マゼンタM、シアンC)のトナーを用いてカラー画像を形成するダイレクトタンデム式のカラープリンタである。以下の説明においては、図1における左側を前方とする。また、図1において、各色間で同一の構成部品については、適宜符号を省略する。
【0032】
プリンタ1は、本体ケーシング2を備えており、その上面には開閉可能なカバー2Aが設けられている。本体ケーシング2内の底部には、複数の用紙3(被記録媒体の一例)を積載可能な供給トレイ4が設けられている。供給トレイ4に積載された用紙3は、給紙ローラ5によりレジストローラ6へ送り出され、レジストローラ6により画像形成部20のベルトユニット11上に搬送される。
【0033】
画像形成部20(形成手段の一例)は、ベルトユニット11、露光部17K〜17C、プロセス部19K〜19C、定着部31などを備えている。
【0034】
ベルトユニット11は、前側に配置されたベルト支持ローラ12Aと、後側に配置されたベルト駆動ローラ12Bとの間に、環状のベルト13(担持体の一例)を張架した構成となっている。ベルト13は、ポリカーボネート等によって形成され、外周面が鏡面状に加工されている。ベルト13は、後側のベルト駆動ローラ12Bの回転によって図1の時計周り方向に循環移動し、ベルト13上面に静電吸着した用紙3を後方に搬送する。
【0035】
ベルト13の内側には、後述する各プロセス部19K〜19Cの感光ドラム28とベルト13を挟んで対向する位置に転写ローラ14が設けられている。ベルトユニット11は、本体ケーシング2のカバー2Aを開け、全てのプロセス部19K〜19Cを取り外した状態で、本体ケーシング2に対して着脱可能である。
【0036】
また、ベルト13の下面に対向して、後述する位置ずれ測定時にベルト13上に形成されるパターンの検出などを行うためのパターンセンサ15(光学センサの一例)が設けられている。なお、パターンセンサ15の詳細な構成については後述する。さらに、ベルトユニット11の下側には、ベルト13表面に付着したトナーや紙粉等を回収するクリーナ16が設けられている。
【0037】
ベルトユニット11の上方には、4つの露光部17K,17Y,17M,17Cと、4つのプロセス部19K,19Y,19M,19Cとが前後方向に交互に並んで設けられている。各露光部17K〜17Cは、カバー2Aの下面に支持されており、その下端部に複数のLEDが一列に並んで設けられたLEDヘッド18を備えている。露光部17K〜17Cは、それぞれ画像データに基づいて発光制御され、LEDヘッド18から対応する感光ドラム28の表面に一ライン毎に光を走査する。
【0038】
各プロセス部19K〜19Cは、カートリッジフレーム21と、このカートリッジフレーム21に対し着脱可能に装着される現像カートリッジ22とを備えている。カバー2Aを開放すると、各露光部17K〜17Cがカバー2Aと共に上方に退避して、各プロセス部19K〜19Cが本体ケーシング2に対して個別に着脱可能となる。
【0039】
各現像カートリッジ22は、トナー(現像剤の一例)を収容するトナー収容部23を備え、その下側に供給ローラ24、現像ローラ25、層厚規制ブレード26等を備えている。トナー収容部23から放出されたトナーは、供給ローラ24により現像ローラ25上に供給され、両ローラ24,25間で正に摩擦帯電される。現像ローラ25上のトナーは、層厚規制ブレード26により薄層となり、さらに摩擦帯電される。
【0040】
カートリッジフレーム21の下部には、表面が正帯電性の感光層によって覆われた感光ドラム28と、スコロトロン型の帯電器29とが設けられている。感光ドラム28の表面は、帯電器29により正帯電され、その正帯電された部分が露光部17K〜17Cの走査により露光されて静電潜像が形成される。そして、その静電潜像に現像ローラ25からトナーが供給されることで、感光ドラム28上にトナー像(現像剤像)が形成される。
【0041】
各感光ドラム28上に担持されたトナー像は、ベルト13上の用紙3が、感光ドラム28と転写ローラ14との間の各転写位置を通る間に、転写ローラ14に印加される負極性の転写電圧によって用紙3に順次転写される。トナー像が転写された用紙3は、定着器31によってトナー像の熱定着が行われた後、カバー2Aの上面に排出される。
【0042】
(プリンタの電気的構成)
図2は、プリンタ1の電気的構成を概略的に示すブロック図である。
【0043】
プリンタ1は、同図に示すように、CPU40、ROM41、RAM42、NVRAM(不揮発性メモリ)43、ネットワークインターフェイス44を備え、これらに既述の画像形成部20、パターンセンサ15が接続されている。
【0044】
ROM41には、後述する印刷・調整実行処理や調整実行判定処理など、プリンタ1の各種動作を実行するためのプログラムが記憶されており、CPU40(調整手段、制御手段の一例)は、ROM41から読み出したプログラムに従って、その処理結果をRAM42またはNVRAM43に記憶させながら各部の制御を行う。ネットワークインターフェイス44は、通信回線を介して外部のコンピュータ(図示せず)等に接続され、これにより相互のデータ通信が可能となっている。
【0045】
また、プリンタ1は、表示部45、操作部46を備えている。表示部45は、液晶ディスプレイやランプ等を備え、各種の設定画面や装置の動作状態等を表示することが可能である。操作部46は、複数のボタンを備え、ユーザにより各種の入力操作が可能である。
【0046】
さらにプリンタ1は、カバー2Aの開閉状態を検知するカバーセンサ47、装置内の温度を検知する温度センサ48、湿度を検知する湿度センサ49、装置に加わる振動や衝撃などによる加速度の大きさを検知する加速度センサ50等を備えている。
【0047】
(パターンセンサ)
図3は、パターンセンサ15の回路構成を示す図である。パターンセンサ15は、同図に示すように、ベルト13に向けて光を照射する投光素子51を有する投光回路15Aと、ベルト13からの反射光を受光する受光素子54を有する受光回路15Bと、受光回路15Bからの出力を基準レベルと比較する比較回路15Cとを備えている。
【0048】
投光回路15Aは、LEDからなる投光素子51のカソード側をPWM信号平滑回路52に接続し、アノード側を電源ラインVccに接続した構成となっている。CPU40は、PWM信号平滑回路52にPWM信号(制御信号)を与えるとともに、そのPWM信号のPWM値(デューティ比)を変化させることで投光素子51に流れる電流を調整し、投光回路15Aの投光量を調整する。
【0049】
受光回路15Bは、フォトトランジスタからなる受光素子54のエミッタ側を接地し、コレクタ側を、抵抗55を介して電源ラインVccに接続した構成となっている。受光素子54のコレクタからは、ベルト13からの反射光の受光量に応じたレベル(電圧値)の受光信号S1が、ローパスフィルタ56を介して比較回路15Cに与えられる。ローパスフィルタ56は、例えばCRフィルタやLCフィルタであり、受光信号S1に含まれるスパイクノイズ等を低減する。
【0050】
比較回路15Cは、オペアンプ58、抵抗59,60、可変抵抗61を備えて構成されている。オペアンプ58の負入力端子には、ローパスフィルタ56の出力が接続されている。オペアンプ58の出力端子は、プルアップ抵抗59を介して電源ラインVccに接続されると共に、CPU40に接続されている。オペアンプ58の正入力端子には、抵抗60,61からなる分圧回路の分圧電圧が、基準レベルとして与えられている。CPU40は、可変抵抗61の抵抗値を変更することで、基準レベルを設定することができる。このような構成により、オペアンプ58は、負入力端子に入力される受光信号S1のレベルと、基準レベルとを比較し、その比較結果に応じた二値化信号S2をCPU40に出力する。
【0051】
(印刷・調整実行処理)
図4は、印刷・調整実行処理を示すフローチャートであり、図5は、位置ずれ調整処理を示すフローチャートである。また、図6は、位置ずれ測定用のパターンPを示す図であり、図7は、パターンPの測定時における受光信号S1の時間変化を示すグラフである。
【0052】
この印刷・調整実行処理は、印刷処理及び調整処理の実行を制御するための処理であって、待機状態においてCPU40の制御により定期的に実行される。CPU40は、画像形成位置のずれを調整する位置ずれ調整と、画像形成濃度を調整する濃度調整との2種類の調整処理を実行可能である。CPU40は、後述する調整実行判定処理において、位置ずれ調整優先実行フラグ、位置ずれ調整通常実行フラグ、濃度調整優先実行フラグ、濃度調整通常実行フラグの4種類のフラグの値を設定する。この印刷・調整実行処理では、これらのフラグの値を用いて印刷処理及び調整処理の実行時期を制御する。
【0053】
CPU40は、図4に示す印刷・調整実行処理において、まず位置ずれ調整優先実行フラグがオンであるかを判断し(S101)、オンである場合(S101:Yes)には、以下に示す位置ずれ調整処理を実行する(S102)。
【0054】
位置ずれ調整処理では、図5に示すように、まずパターンセンサ15の感度補正が必要かを判断する(S201)。ここでは、例えば、前回の感度補正から所定期間以上経過している場合など、所定の条件が満たされた場合に感度補正が必要と判断し(S201:Yes)、感度補正を実行する(S202)。
【0055】
この感度補正では、パターンPの測定時におけるパターンセンサ15の感度を適正にするための設定を行う。より具体的には、ベルト13表面からの反射光を受光したときの受光信号S1のレベルが飽和レベル付近(3.0V付近)に達するように、投光回路15Aの投光量を設定するための設定値(PWM値)を測定によって求める。なお、ベルト13が比較的新しい場合には、ベルト13表面の反射率が高いため、設定される投光量は比較的小さくなる。そして、ベルト13が古くなって傷や汚れが増えるにつれ、ベルト13の反射率が下がるために、設定される投光量が大きくなる。
【0056】
次に、CPU40は、画像形成部20によりベルト13上に位置ずれ測定用のパターンPを形成する(S203)。このパターンPは、図6に示すように、主走査方向に細長い各色のマーク65K,65Y,65M,65Cから構成され、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの順に並んだ4つのマーク65K〜65Cを一組として、複数組のマーク65K〜65Cを副走査方向に間隔を開けて、例えばベルト13の全周にわたって配置したものである。隣り合うマーク65K〜65Cの間隔は、各マーク65K〜65Cが位置ずれのない理想位置に形成された場合に等しくなる。そしてCPU40は、各組のマーク65K〜65Cについて、各マーク65K〜65Cがパターンセンサ15の検出位置を通過するタイミングをパターンセンサ15からの信号により測定する(S204)。
【0057】
図7は、パターンPの測定時における受光信号S1の時間変化の一例を示している。同図に示すように、受光信号S1のレベルは、ベルト13表面からの反射光を受光したとき(Bで示す箇所)に高く、各マーク65K〜65Cからの反射光を受光したとき(Mk,My,Mm,Mcで示す箇所)に低くなる。なお、ここでは、受光回路15Bの電源ラインVccに加えられる電圧を3.3Vとしており、ベルト13からの反射光を受光したときの受光信号S1のレベルは、飽和レベル付近(3.0Vを超える程度を飽和レベルとする)となる。CPU40は、ベルト13表面からの反射光に対応するレベルとマーク65K〜65Cからの反射光に対応するレベルとの中間のレベルを基準レベルTH(例えば1.6V)としてオペアンプ58に与える。
【0058】
CPU40は、二値化信号S2が各マーク65K〜65Cに対応する箇所(Mk〜Mc)においてハイからローに切り替わるタイミングに基づいて各マーク65K〜65Cの位置を測定する。ここで、受光信号S1には、図7に示すように、ベルト13面の傷等の影響でノイズNが入り込むことがある。そこで、CPU40は、二値化信号S2がローになる期間が所定期間以上連続したときマーク65K〜65Cを検出したと判断し、ローの期間が所定期間に満たないときにノイズを検出したと判断する。そして、ノイズを検出した回数をNVRAM43に記憶する。
【0059】
続いて、CPU40は、各マーク65K〜65Cの位置を測定した結果に基づいてブラックのマーク65Kを基準とする他の色(補正色という)のマーク65Y,65M,65Cの副走査方向の位置ずれ量を求める。そして、各補正色の位置ずれ量について、全組の平均値をそれぞれ算出し、この平均値の位置ずれを打ち消すための新たな補正値を算出し、その値でNVRAM43に記憶される各補正色の位置ずれ補正値を更新して(S205)、この位置ずれ調整処理を終了する。
【0060】
CPU40は、図4のS102にて位置ずれ調整を実行した後、位置ずれ調整優先実行フラグの値をオフとする(S103)。そして、NVRAM43に記憶されているカバー2Aの開閉回数、調整時温度、ベルト駆動ローラ12Bの回転数、最大加速度のそれぞれの値をリセットする(S104)。
【0061】
CPU40は、カバーセンサ47によってカバー2Aの開閉動作が検出される毎にカバー2Aの開閉回数をカウントしてNVRAM43に記憶させており、ここでは、その開閉回数を0とする。また、CPU40は、位置ずれ調整実行時の温度をNVRAM43に記憶させており、ここでは、温度センサ48により検知される現在の温度を調整時温度として記憶する。さらに、CPU40は、ベルト13を駆動する毎にベルト駆動ローラ12Bの回転数をNVRAM43に記憶させており、ここでは、その回転数を0とする。また、CPU40は、所定以上の加速度が加速度センサ50によって検知されたときに、その加速度の大きさを示す値(電圧値)の最大値をNVRAM43に記憶させており、ここでは、その値を0とする。
【0062】
CPU40は、S101にて、位置ずれ調整優先実行フラグがオフであった場合(S101:No)には、濃度調整優先実行フラグがオンであるかを判断し(S105)、オンであった場合(S105:Yes)には、濃度調整処理を実行する(S106)。この濃度調整処理では、画像形成部20によりベルト13上に濃度測定用のパターンを形成し、パターンセンサ15によりそのパターンの測定を行った結果に基づいて、NVRAM43に記憶される画像形成時の各色の濃度を調整するための濃度補正値を更新する。
【0063】
CPU40は、図4のS106にて濃度調整を実行した後、濃度調整優先実行フラグの値をオフとする(S107)。そして、NVRAM43に記憶されている調整時湿度及び現像ローラ回転数の値をリセットする(S108)。CPU40は、濃度調整実行時の温度をNVRAM43に記憶させており、ここでは、湿度センサ49により検知される現在の湿度を調整時湿度として記憶させる。また、CPU40は、現像動作を行う毎に現像ローラ25の回転数をNVRAM43に記憶させており、ここでは、その回転数を0とする。
【0064】
CPU40は、S105にて、濃度調整優先実行フラグがオフであった場合(S105:No)には、未処理の印刷ジョブがあるかを判断する(S109)。そして、外部のコンピュータ等から送信された印刷ジョブ(印刷指令)をネットワークインターフェイス44を介して受信している場合(S109:Yes)には、その印刷ジョブに従って印刷を実行する(S110)。このとき、CPU40は、NVRAM43に記憶された位置ずれ補正値及び濃度補正値に基づいて、例えば各露光部17K〜17Cによる走査開始タイミングを調整すること等により、各色間の画像形成位置のずれを補正するとともに、画像形成濃度を補正する。
【0065】
また、未処理の印刷ジョブがない場合(S109:No)には、位置ずれ調整通常実行フラグがオンかを判断する(S111)。位置ずれ調整通常実行フラグがオンの場合(S111:Yes)には、図5に示す位置ずれ調整処理を実行した後(S112)、位置ずれ調整通常実行フラグをオフとする(S113)。そして、S104同様、NVRAM43に記憶されているカバー2Aの開閉回数、調整時温度、ベルト駆動ローラ12Bの回転数、最大加速度の値をリセットする(S114)。
【0066】
また、S111にて、位置ずれ調整通常実行フラグがオフの場合(S111:No)には、濃度調整通常実行フラグがオンであるかを判断する(S115)。濃度調整通常実行フラグがオンの場合(S115:Yes)には、既述の濃度調整処理を実行した後(S116)、濃度調整通常実行フラグをオフとする(S117)。そして、S108同様、NVRAM43に記憶されている調整時湿度及び現像ローラ回転数の値をリセットする(S118)。また、S115にて、濃度調整通常実行フラグがオフである場合(S115:No)には、そのままこの印刷・調整実行処理を終了する。
【0067】
以上のように、この印刷・調整実行処理では、位置ずれ調整優先実行フラグ若しくは濃度調整優先実行フラグのいずれかがオンであった場合には、印刷ジョブの有無にかかわらず、それらの調整を優先的に実行する。また、位置ずれ調整通常実行フラグ若しくは濃度調整通常実行フラグのいずれかがオンであった場合には、印刷ジョブがあれば、その印刷ジョブを先に実行してから調整を実行する。
【0068】
(調整実行判定処理)
図8は、調整実行判定処理を示すフローチャートであり、図9は、閾値決定処理を示すフローチャートである。また、図10は、係数C(カバー開閉1回あたりの位置ずれ量)とカバー開閉回数との関係を示すグラフである。
【0069】
この調整実行判定処理は、各調整の実行時期を判定し、既述の各フラグの値を設定するものであり、待機状態においてCPU40の制御により定期的に実行される。この調整実行判定処理では、位置ずれ調整及び濃度調整の必要度合いを評価するための評価値として、想定位置ずれ量と想定濃度ずれ量とを算出し、それらの値をそれぞれ閾値と比較した結果に基づいて、各フラグの値を設定する。
【0070】
CPU40は、図8に示す調整実行判定処理において、まず既述の4つのフラグの値を全てオフとする(S301)。続いて、想定位置ずれ量及び想定濃度ずれ量と比較するための2つの閾値を決定する閾値決定処理を実行する(S302)。この閾値決定処理では、例えば図9に示すように、想定位置ずれ量の閾値及び想定濃度ずれ量の閾値として、それぞれ予め定められた大中小の3種類の値のいずれかを設定する。
【0071】
ここで、ユーザが外部のコンピュータ等から印刷ジョブを送信する際には、印刷画質として、高画質若しくは通常画質のいずれかを指定することができる。CPU40は、印刷ジョブを受けるごとに、その印刷ジョブにおいて指定された画質を画質指定情報としてNVRAM43に記憶させる。この閾値決定処理では、CPU40は、画質指定情報に基づき、1ヶ月分の印刷ジョブにおいて高画質が指定された頻度(割合)を算出する。
【0072】
CPU40は、図9に示す閾値決定処理において、高画質が指定された頻度が大中小の3段階のいずれかを判別し、頻度が大の場合(S401:Yes)には、各閾値を小にセットし(S402)、頻度が中の場合(S403:Yes)には、各閾値を中にセットし(S404)、頻度が小の場合(S403:No)には、各閾値を大にセットする(S405)。即ち、高画質が指定される頻度が多い程、閾値を低く設定することで、調整を実行し易くしている。
【0073】
なお、印刷ジョブにおける印刷画質の指定に替えて、印刷ジョブにおけるカラー印刷の指定頻度が大きい程、閾値を低く設定するようにしても良い。即ち、モノクロ印刷に比べてカラー印刷が指定される頻度が高いほど、高画質が要求される可能性が高く、従って調整の必要性が高まると考えられるためである。また、プリンタ1の管理者が印刷画質を指定できる場合には、その指定に応じて閾値を変更しても良い。また、これらの印刷画質やカラーの指定などの複数の要素を組み合わせて閾値を決定しても良い。
【0074】
続いて、CPU40は、図8のS303にて、画像形成条件に影響を与え得る要因ごとに、その影響度合を評価するための要因別想定位置ずれ量及び要因別想定濃度ずれ量を算出する。要因別想定位置ずれ量は、例えば次の式1によって算出され、要因別想定濃度ずれ量は、例えば式2によって算出される。
【0075】
[式1]
要因別想定位置ずれ量=(C×前回の位置ずれ調整後のカバー開閉回数)+(T×前回の位置ずれ調整後の温度変化)+(B×前回の位置ずれ調整後のベルト駆動ローラ回転数)+(S×前回の位置ずれ調整後の最大加速度)
[式2]
要因別想定濃度ずれ量=(H×前回の濃度調整後の湿度変化)+(D×前記の濃度調整後の現像ローラ回転数)
【0076】
上記カバー開閉回数、温度変化、ベルト駆動ローラ回転数、最大加速度、湿度変化、現像ローラ回転数は、それぞれ画像形成条件に影響し得る装置の状態変動を示す複数の変動量の一例である。また、上記C,T,B,S,H,Dは、それぞれの変動量をパラメータとして個別に位置ずれ量(個別評価値の一例)若しくは濃度ずれ量(個別評価値の一例)を求めるための係数であり、Cは、カバー開閉1回あたりの位置ずれ量、Tは、単位温度あたりの位置ずれ量、Bは、ベルト駆動ローラ1回転あたりの位置ずれ量、Sは、単位加速度(単位電圧)あたりの位置ずれ量、Hは、単位湿度あたりの濃度ずれ量、Dは、現像ローラ1回転あたりの濃度ずれ量、に相当する。
【0077】
上述のように、想定位置ずれ量と想定濃度ずれ量とは、異なる変動量に基づいて求められる。要因別想定位置ずれ量は、カバー2Aの開閉による振動等の影響に起因する位置ずれ量と、温度変化による各部の膨張・収縮等に起因する位置ずれ量、ベルトの駆動による部品の摩耗等に起因する位置ずれ量と、加速度、即ちプリンタ1が受けた衝撃に起因する位置ずれ量と、を合算した値となる。また、要因別想定濃度ずれ量は、湿度変化に起因する濃度ずれ量と、現像ローラの駆動によるトナーの劣化に起因する濃度ずれ量と、を合算した値となる。
【0078】
上記各係数C,T,B,S,H,Dの値は、それぞれ一定でも良いが、他の変数の値に応じて変化させても良い。例えば、図10は、係数C(カバー開閉1回あたりの位置ずれ量)をカバー開閉回数に応じて変化させる例を示しており、ここでは開閉回数が増えるにつれ係数Cが大きくなる。他の係数の値も適宜変更でき、例えば、係数Sのプリンタ1の印刷枚数が増えるにつれ、係数S(単位加速度(単位電圧)あたりの位置ずれ量)が大きくなるようにしても良い。これは、プリンタ1の印刷枚数が増え、各部品が劣化する(例えば部品の摩耗によりガタつきが大きくなる等)につれ、同じ大きさの衝撃に対して生じる位置ずれの量が増加する可能性が高いことに対応している。
【0079】
次に、CPU40は、前回の位置ずれ調整において検出されたノイズ量に基づいて、想定位置ずれ量及び想定濃度ずれ量を算出する際に加える補正量をそれぞれ算出する(S304)。ここでは、例えば、位置ずれ調整時にノイズが検出された回数が基準値以上のときに、それぞれの補正量を正の一定値として、基準値未満のときに補正量を0とする。即ち、ノイズ量が多い場合には調整の精度が落ちるため、ここでは、想定されるずれ量に補正量を加えることで、調整をより実行しやすくする。
【0080】
続いて、CPU40は、前回の感度補正における感度調整量に基づいて、想定位置ずれ量及び想定濃度ずれ量を算出する際に加える補正量をそれぞれ算出する(S305)。ここでは、感度補正に基づく補正量を、例えば次の式3により求める。
[式3]
感度補正に基づく補正量=L×投光量調整量
ここで、投光量調整量は、プリンタ1の製造時のパターンセンサ15における投光量(PWM値)と、前回の感度補正時に設定した投光量(PWM値)との差であり、Lは係数であり、正の一定値をとる。即ち、投光量調整量は、ベルト13が劣化することによるベルト13表面の反射率の変化に応じて大きくなることから、ここでは、想定ずれ量に補正量を加えることで、ベルト13が劣化するのに応じてより調整を実行しやすくする。
【0081】
次に、CPU40は、想定位置ずれ量(複合評価値の一例)を式4、想定濃度ずれ量(複合評価値の一例)を式5によって算出する。
[式4]
想定位置ずれ量=要因別想定位置ずれ量+測定ノイズに基づく補正量+感度補正に基づく補正量
[式5]
想定濃度ずれ量=要因別想定濃度ずれ量+測定ノイズに基づく補正量+感度補正に基づく補正量
【0082】
そして、想定位置ずれ量が閾値の0.8倍よりも小さい場合(S307:Yes)には、位置ずれ調整に関するフラグをオフのままとする。また、想定位置ずれ量が閾値の0.8倍と等しいかそれよりも大きく(S307:No)、かつ閾値よりも小さい場合(S308:Yes)には、位置ずれ調整通常実行フラグをオンとする(S309)。また、想定位置ずれ量が閾値と等しいかそれよりも大きい場合(S308:No)には、位置ずれ調整優先実行フラグをオンとする(S310)。
【0083】
同様に、想定濃度ずれ量についても、閾値の0.8倍よりも小さい場合(S311:Yes)には、濃度ずれ調整に関するフラグをオフのままとする。また、想定濃度ずれ量が閾値の0.8倍と等しいかそれよりも大きく(S311:No)、かつ閾値よりも小さい場合(S312:Yes)には、濃度調整通常実行フラグをオンとする(S313)。また、想定濃度ずれ量が閾値と等しいかそれよりも大きい場合(S312:No)には、濃度調整優先実行フラグをオンとする(S314)。
【0084】
以上により、例えば、想定位置ずれ量に対する閾値が100のときに位置ずれ調整を優先的に実行させるとすると、プリンタ1が新品のときには、測定ノイズに基づく補正量及び感度補正に基づく補正量が0であるため、要因別想定位置ずれ量が100に到達したときに位置ずれ調整が優先的に実行される。これに対し、プリンタ1の各部が劣化して、測定ノイズに基づく補正量及び感度補正に基づく補正量の合計が20になった場合には、要因別想定位置ずれ量が80に到達したときに位置ずれ調整が優先的に実行されることになる。このように、装置の状態に応じて適切な時期に調整を行うことができる。
【0085】
(本実施形態の効果)
以上のように本実施形態によれば、画像形成条件に影響し得る装置の状態変動を示す複数の変動量を取得し、それら複数の変動量をパラメータとして状態変動が画像形成条件に与える影響度合を評価するための複合評価値(想定位置ずれ量、想定濃度ずれ量)を算出し、その複合評価値の大きさに基づいて調整の実行時期を判断する。従来は、一つ一つの変動量について別個に基準を満たすかを判断し、その結果に基づいて調整を実行するか否かを判断していた。これに対し、本発明では、複数の変動量をパラメータとした複合評価値を算出し、その複合評価値の大きさに基づいて状態変動が画像形成条件に与える影響度合(調整の必要度合)を複合的に判断することにより、調整をより適切な時期に実行することができる。これにより、調整の実行頻度を抑えつつ、画像品質を確保することが可能である。
【0086】
また、複数の変動量のそれぞれについて、個別に画像形成条件に与える影響度合を示す個別評価値を算出し、各個別評価値の合算値を複合評価値とする。これにより、画像形成条件に影響を与える要因ごとの影響度合をそれぞれ適切に評価することができる。
【0087】
また、変動量の大きさが大きくなる程、その変動量についての個別評価値の変化比率(係数)を大きくする。例えば、印刷枚数が101〜200であるときの用紙1枚当たりの影響度合(想定される位置ずれ量等)が、印刷枚数が1〜100であるときの用紙1枚当たりの影響度合よりも大きくなるような場合に、本構成を適用することで、より適切に影響度合を評価することができる。
【0088】
また、位置ずれ調整と濃度調整との少なくとも2種類の調整を個別に実行可能であり、調整の種類毎に異なる条件で実行時期を判断する。2種類の調整を常に同時に実行すると、ユーザの待ち時間が長くなる等の不都合が生じる。調整の種類毎に異なる条件で実行時期を判断し、必要性の低い調整を実行しないことで、こうした不都合を回避できる。
【0089】
また、調整の種類毎に異なる変動量を用いて実行時期を判断する。画像形成位置のずれと濃度のずれとは発生する要因が異なると考えられるため、それぞれの調整に適した変動量を用いて、複合評価値を算出し、実行時期を判断することで、各調整を適切な時期に実行することができる。
【0090】
また、カバー2A等の可動部材の動作回数をカウントするカウンタの値の変動量を用いて位置ずれ調整の実行時期を判断する。カバーの開閉動作などの可動部材の動作により生じる振動等が位置ずれの要因となる。そのため、そのような可動部材の動作回数をカウントし、その値の変動量を用いて位置ずれ調整の実行時期を判断することで、位置ずれ調整を適切な時期に実行することができる。
【0091】
また、湿度センサ49により検出された湿度の変動量を用いて濃度調整の実行時期を判断する。湿度の変動が画像形成時の濃度に影響を与える要因となることがある。そのため、湿度の変動量を用いて濃度調整の実行時期を判断することで、濃度調整を適切な時期に実行することができる。
【0092】
また、指定された画質が高い程、調整を実行しやすくなるように実行時期の判断条件を変更する。これにより、要求される画像品質を確保することができる。
【0093】
また、画像形成毎に指定された画質の頻度を求め、高画質が指定される頻度が高い程、調整を実行しやすくなるように実行時期の判断条件を変更する。これにより、要求に見合った画像品質を提供することができる。
【0094】
また、測定時に検出されるノイズ量が多い程、調整を実行しやすくなるように実行時期の判断条件を変更する。即ち、測定時のノイズ量が大きい場合には、調整の精度が低下すると考えられるため、調整をより頻繁に実行することにより画像品質を確保することができる。
【0095】
また、ベルト13上に形成された画像を測定する際に用いるパターンセンサ15の感度の補正量が大きい程、調整を実行しやすくなるように実行時期の判断条件を変更する。即ち、ベルト13が劣化して反射率が変わると、それに応じてパターンセンサ15の感度が補正される。パターンセンサ15の感度の補正量が大きい程、ベルト13が劣化していると考えられ、それに伴って画像形成条件に狂いが生じやすくなると考えられる。従って、そのような場合に、調整をより頻繁に実行することにより画像品質を確保することができる。
【0096】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)複合評価値(想定位置ずれ量、想定濃度ずれ量)を算出する際に用いた変動量は、適宜変更することができる。例えば、ベルト駆動ローラ回転数や現像ローラ回転数に替えて、印刷枚数のカウントを代用することができる。また、複合評価値の算出方法も主旨に沿った範囲で適宜変更することができる。
【0097】
(2)上記実施形態では、本発明を直接転写タンデム方式のカラーLEDプリンタに適用した例を示したが、これに限らず、本発明は、例えば中間転写方式や、4サイクル方式、若しくはインクジェット方式など他の方式の画像形成装置に適用することができる。また、本発明は、カラーの画像形成装置のみならず、モノクロの画像形成装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0098】
1…プリンタ(画像形成装置)
13…ベルト(担持体)
15…パターンセンサ(光学センサ)
10…画像形成部(形成手段)
40…CPU(調整手段、制御手段、カウンタ)
49…湿度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を形成する形成手段と、
前記形成手段により形成された画像を測定し、その測定結果に基づいて画像形成条件の調整を行う調整手段と、
前記調整手段による調整の実行を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、画像形成条件に影響し得る当該画像形成装置の状態変動を示す複数の変動量を取得し、前記複数の変動量をパラメータとして前記状態変動が画像形成条件に与える影響度合を評価するための複合評価値を算出し、前記複合評価値の大きさに基づいて前記調整の実行時期を判断する画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記制御手段は、前記複数の変動量のそれぞれについて、前記変動量をパラメータとして状態変動が画像形成条件に与える影響度合を示す個別評価値を算出し、前記各個別評価値を合算した値を前記複合評価値とする。
【請求項3】
請求項2に記載の画像形成装置において、
前記制御手段は、前記変動量の大きさが大きくなる程、その変動量についての前記個別評価値の変化比率を大きくする。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記調整手段は、画像形成位置のずれを調整する位置ずれ調整と、画像形成濃度を調整する濃度調整とを含む少なくとも2種類の調整を個別に実行可能であり、
前記制御手段は、調整の種類毎に異なる条件で実行時期を判断する。
【請求項5】
請求項4に記載の画像形成装置において、
前記制御手段は、調整の種類毎に異なる変動量を用いて実行時期を判断する。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の画像形成装置において、
可動部材の動作回数をカウントするカウンタを備え、
前記制御手段は、前記カウンタの値の変動量を用いて位置ずれ調整の実行時期を判断する。
【請求項7】
請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
湿度を検出する湿度センサを備え、
前記制御手段は、前記湿度センサにより検出された湿度の変動量を用いて濃度調整の実行時期を制御する。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記形成手段により画像形成を行う際の画質を指定する指定手段を備え、
前記制御手段は、前記指定手段によって指定された画質が高い程、調整を実行しやすくなるように実行時期の判断条件を変更する。
【請求項9】
請求項8に記載の画像形成装置において、
前記制御手段は、画像形成毎に指定された画質の頻度を求め、高画質が指定される頻度が高い程、調整を実行しやすくなるように実行時期の判断条件を変更する。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記調整手段は、前記測定時にノイズ量を検出可能であり、
前記制御手段は、前記調整手段により検出されるノイズ量が多い程、調整を実行しやすくなるように実行時期の判断条件を変更する。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記形成手段は、担持体を有し、
前記形成手段により前記担持体上に形成された画像を光学的に検出する光学センサをさらに備え、
前記調整手段は、前記光学センサを用いて前記測定を行うとともに、前記担持体による光の反射率に応じて前記光学センサの感度を補正可能であり、
前記制御手段は、前記調整手段による前記光学センサの感度の補正量が大きい程、調整を実行しやすくなるように実行時期の判断条件を変更する。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−231024(P2010−231024A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79045(P2009−79045)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】